JP2010180479A - 硬質皮膜および硬質皮膜の製造方法 - Google Patents

硬質皮膜および硬質皮膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】チップやドリル、エンドミルなどの切削工具や鍛造金型や打ち抜きパンチなどの冶工具などに形成する硬度と潤滑性に優れた硬質皮膜およびその関連技術を提供する。
【解決手段】(Al1-a-d-eaMod)(C1-XX)からなる硬質皮膜であって、0.2≦a≦0.75、0<d+e≦0.3、0.3≦X≦1(式中、a、d、eおよびXは互いに独立して原子比を示す:なおdおよびeは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはない)である組成を特徴とする硬質皮膜を、例えば、チャンバー1、アーク式蒸発源2、支持台3、バイアス電源4、ターゲット6、アーク電源7、磁界形成手段8、排気口11、ガス供給口12、被処理体WからなるAIP装置を用いて成膜する。
【選択図】図1

Description

本発明は、チップやドリル、エンドミルなどの切削工具や、鍛造金型や打ち抜きパンチなどの冶工具などに形成する硬質皮膜および硬質皮膜の製造方法に関するものである。
従来、切削工具では、耐摩耗性を高めるために高速度鋼や超硬合金、サーメットなどの基材に、TiNやTiCN、TiAlNなどの硬質皮膜を形成している。特にTiAlNは耐摩耗性が高いため、高速切削用工具や焼入れ鋼などの高硬度材切削用工具で好適に用いられている。さらに近年の被切削材の高硬度化や切削速度の高速化に伴い、より優れた耐摩耗性を有する硬質皮膜の開発が求められている。例えば特許文献1では、TiAlNの代わりにTiCrAlNを用いることで、皮膜中の岩塩構造型AlNの割合を高め、皮膜の硬度を高めることができ、同時に耐酸化性も向上させることができると記載されている。
特開2003−71610号公報
しかし、TiAlNやTiCrAlNなどの硬質皮膜は、高温下での耐酸化性には優れているものの、潤滑性に乏しい。そのため、前記硬質皮膜を形成した切削工具では、切削時に被削材の一部が工具の表面に付着することがあり、前記硬質皮膜を形成した冶工具(鍛造金型、打ち抜きパンチなど)でも、接触面での摩擦抵抗が大きくなり、鍛造やプレス成形する際に、冶工具への焼付きが起こることがあった。
本発明は、これらの問題に着目してなされたものであり、硬度と潤滑性に優れた硬質皮膜およびその関連技術を提供することにある。
前記課題を解決し得た本発明の硬質皮膜は、
(1)
(Al1-a-d-eaMod)(C1-XX)からなる硬質皮膜であって、
0.2≦a≦0.75、
0<d+e≦0.3、
0.3≦X≦1
(式中、a、d、eおよびXは互いに独立して原子比を示す:なおdおよびeは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはない)であるか、または
(2)
(Al1-a-b-c-d-eaSibcMod)(C1-XX)からなる硬質皮膜であって、
0.2≦a≦0.75、
0<b+c≦0.20、
0<d+e≦0.3、
0.3≦X≦1
(式中、a、b、c、d、eおよびXは互いに独立して、原子比を示す:なおbおよびcは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはなく、dおよびeは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはない)
であることを特徴とする。
上記Moおよび/またはWを含有させた硬質皮膜では、600℃以上の高温条件下において、潤滑性や切削工具での耐久性の点で特に優れている。
また本発明の硬質皮膜は、
(3)
(Al1-a-f-gaHfZr)(C1-XX)からなる硬質皮膜であって、
0.01≦a≦0.75、
0<f+g≦0.5、
0.3≦X≦1
(式中、a、f、gおよびXは互いに独立して原子比を示す:なおfおよびgは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはない)であるか、または
(4)
(Al1-a-b-c-f-gaSibcHfZr)(C1-XX)からなる硬質皮膜であって、
0.01≦a≦0.75、
0<b+c≦0.20、
0<f+g≦0.5、
0.3≦X≦1
(式中、a、b、c、f、gおよびXは互いに独立して、原子比を示す:なおbおよびcは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはなく、fおよびgは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはない)
であることを特徴とする。
上記Zrおよび/またはHfを含有させた硬質皮膜では、600℃以上の高温条件下において、硬度の点で特に優れている。
また上記(1)〜(4)の硬質皮膜は、NaCl型の結晶構造を示すことが好ましい。
また(Al1-aa)(C1-XX)からなり、
0.27≦a≦0.75、0.3≦X≦1(式中、aおよびXは互いに独立して、原子比を示す)の組成、または、
(Al1-a-b-caSibc)(C1-XX)からなり、0.1≦a≦0.75、0<b+c≦0.20、0.3≦X≦1(式中、a、b、cおよびXは互いに独立して、原子比を示す:なおbおよびcは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはない)の組成を満足する硬質皮膜からなる層(以下、A層と称する)と、
Mo、Wの1種以上と、C、Nの1種以上とを選択して得られる化合物からなる層(以下、B層と称する)
とを積層してなる積層型硬質皮膜とすることも好ましい。その際、上記A層とB層の厚みは、B層の厚み≦A層の厚み≦200nmであることが好ましい。
さらに上記A層と、
Zr、Hfの1種以上と、C、Nの1種以上とを選択して得られる化合物からなる層(以下、C層と称する)
とを積層してなる積層型硬質皮膜とすることも好ましい。その際、上記A層とC層の厚みが、C層の厚み≦A層の厚み≦200nmであることが好ましい。
上記硬質皮膜は、例えば、成膜ガス雰囲気中で金属を蒸発させイオン化して、前記金属とともに成膜ガスのプラズマ化を促進しつつ成膜することによって製造できる。
特に、ターゲットを構成する金属の蒸発およびイオン化をアーク放電にて行なうアークイオンプレーティング法において、該ターゲットの蒸発面にほぼ直交して前方に発散ないし平行に進行する磁力線を形成し、この磁力線によって被処理体近傍における成膜ガスのプラズマ化を促進しつつ成膜することが好ましい。
その際、前記被処理体の硬質皮膜を形成する面の中央部の磁束密度が、10ガウス以上であることが好ましい。また、前記磁力線と、該ターゲットの蒸発面の法線とで形成される角度が±30°以下となるように、該ターゲットと該被処理体との間に磁界を形成することが好ましい。
本発明の硬質皮膜は、Al窒化物またはAl炭窒化物系硬質皮膜のAlを適量のVで置換しているため、硬度および潤滑性が極めて優れている。そのため切削工具ではその寿命を延ばすことができ、冶工具では焼付きを低減できる。
図1は、本発明の製造方法で用いる製造装置の概念図である。 図2は、本発明の製造方法を用いた際に、被処理体付近に形成される磁力線の分布を示すための模式図である。 図3は、本発明の製造方法を用いた際に、被処理体付近に形成される磁力線の分布を示すための模式図である。 図4は、従来のアークイオンプレーティング法での磁力線の分布を示した模式図である。 図5は、本発明の製造方法で用いる製造装置の概念図である。
本発明者は、TiAlNやTiAlCN(以下、TiAl系硬質皮膜と総称する場合がある)よりも優れた硬質皮膜を探索すべく、種々の硬質皮膜を形成し、結晶構造や硬度、表面での摩擦抵抗、切削工具での耐久性を評価した。その結果、Tiに代えてVをAlと組み合わせた窒化物または炭窒化物(VAlN、VAlCNなど:以下、VAl系硬質皮膜と総称する場合がある)が、硬度および潤滑性(表面での摩擦抵抗)の点で極めて優れていることを見出し、本発明に至った。
より詳細に説明すると、TiAl系硬質皮膜のTiの代わりにVを用いてVAl系硬質皮膜を形成すると、Vは比較的酸化されやすいため、切削材または被加工材と硬質皮膜との界面での摩擦熱でV酸化物(V25など)が優先的に形成されると考えられ、このV酸化物は、比較的融点が低く軟質であるため、前記界面での摩擦抵抗を低減させていると考えられる。さらにVAl系硬質皮膜は、TiAl系硬質皮膜と同様、NaCl型(岩塩型、立方晶型などと称する場合もある)の結晶構造を維持する限りAlの割合が高くなるにつれて硬度が高まり、Alの割合が高くなり過ぎたところでNaCl型の結晶構造が崩れて六方晶型(ZnS型などと称する場合もある)に転移して軟質化する傾向を有する。VAl系硬質皮膜ではTiAl系硬質皮膜に比べ、立法晶型を維持できるAl濃度が高Al濃度側にシフトしており、結果として皮膜硬度を飛躍的に向上させることができる。以上の結果、VAl系硬質皮膜によれば、硬度と潤滑性を極めて優れたレベルで両立できる。
前記VAl系硬質皮膜は、(Al1-aa)(C1-XX)と表記できる。なお式中、“a”および“X”は、互いに独立して原子比を示す。前記“a”は、0.27以上である。“a”の値が小さすぎると、Alの割合が高くなりすぎて皮膜が六方晶構造になり、硬度が低下(摩擦係数が増大)する。好ましい“a”の値は、0.3以上、特に0.35以上である。“a”の値が大きくなる程、硬度および潤滑性が向上する。しかし“a”の値が大きくなりすぎると、AlとVの併用による歪の蓄積量が低下するため硬度が低下し、摩擦係数も増大してしまう。従って“a”は、0.75以下、好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.5以下とする。
また前記“X”は1であってもよい(すなわち硬質皮膜が窒化物であってもよい)が、Xの値が小さくなるほど(すなわちC量が増大するほど)皮膜の潤滑性が向上する。しかしXを小さくし過ぎると、不安定なAlC化合物が形成されやすくなる。従ってXは0.3以上、好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.6以上とする。
前記VAl系硬質皮膜は、さらにSiおよび/またはBが追加されていてもよく、このSi・B追加型のVAl硬質皮膜は、(Al1-a-b-caSibc)(C1-XX)と表記できる。なお、(Al1-a-b-caSibc)(C1-XX)は、Bが炭窒化物を形成する場合のみならず、BがAl、V、Siなどと硼化物を形成する場合をもあわせた総合的な意味を有するものである。また式中、“a”、“b”、“c”および“X”は、互いに独立して原子比を示す。SiやBを追加すると、VAl系硬質皮膜の結晶粒を微細化でき、硬度がさらに向上する。結晶粒の微細化作用の詳細は明らかではないが、結晶粒界にSi−N結合やB−N結合が形成されることによって、結晶粒の成長が抑制されるためと考えられる。Si・B追加型のVAl硬質皮膜において、前記“a”の値は、0.1以上(好ましくは0.27以上、さらに好ましくは0.3以上、特に0.35以上)、0.75以下(好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.5以下)である。SiやBの追加量(b+c)は、0超、好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.05以上である。なおSiやBは両方を追加してもよく、片方だけを追加してもよく、従って“b”および“c”のうち片方は0であってもよい。ただしBは、潤滑作用のあるB−N結合を形成するため、Siよりも優れている。従って潤滑性向上を重視する場合には、SiおよびBの両方、またはBだけを追加することが推奨される。一方、SiやBを過剰に追加すると、VAl系硬質皮膜の結晶構造が、六方晶型に転移しやすく、硬度が低下しやすくなる。従ってSiやBの追加量(b+c)は、0.20以下、好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.10以下とする。その際、前記“a”と“b+c”を合わせた値の下限は、0.4以上、特に0.5以上とすることが好ましい。
本発明の硬質皮膜は、上述のように組成が均一である皮膜に限られず、上記VAl系硬質皮膜(Si・B追加型のVAl系硬質皮膜を含む。以下、同様)又は後述するMo・W併用型硬質皮膜、Zr・Hf併用型硬質皮膜と同等の組成を皮膜全体として示す皮膜も、本発明の硬質皮膜に含まれる。例えば、繰り返し周期が80nm以下程度になるような極めて薄い薄膜が、複数繰り返して積層された皮膜(多層型硬質皮膜と称する)は、その平均組成が前記VAl系硬質皮膜(又は後述のMo・W併用型硬質皮膜、Zr・Hf併用型硬質皮膜)の組成を満たしていれば、本発明の硬質皮膜に含まれる。この多層型硬質皮膜(以下、第1の多層型硬質皮膜と称する場合がある)は、各層が極めて薄いために各層が個性を失っており、全体としてあたかも単層の皮膜であるかのような特性を示すためである。また多層型硬質皮膜は、皮膜の組成に合わせた固有のターゲットを製造しなくとも、公知のターゲット(例えばAlNやAlVNなど)を適宜組み合わせることで簡便に製造できるという利点もある。なお前記平均組成は、積層体の単位面積あたりに存在する原子数の割合を意味しており、下記する方法などで求めることができる。例えばA層が(VaSib)N(膜厚Xnm)、B層が(Alcd)N(膜厚Ynm)からなる積層体では、106nm2あたりに存在するA層、B層を構成する化合物の格子定数(α)ならびに単位格子中の分子数(Z)をX線回折により算出する。そしてA、B各層の組成についてはAESなどを用いて算出し、膜厚についてはTEMなどを用いて算出する。得られた値を用いて、A層のVについては106X×Z×a/(α3)/(a+b)の式から単位面積あたりの原子数(Vm)を求め、Siについては106X×Z×b/(α3)/(a+b)の式から単位面積あたりの原子数(Sim)を求める。同様にしてB層の単位面積あたりのAlとBの原子数[(Alm)および(Bm)]を求める。得られた各々の原子数の値を用い、単位面積あたりに占める各々の原子数の割合[Vでは(Vm/(Vm+Sim+Alm+Bm))]を算出して平均組成を求めることができる。
繰り返し周期の上限は、好ましくは50nm、さらに好ましくは30nm、特に好ましくは15nmである。繰り返し周期の上限が小さくなるほど、膜としての均一性が高まり、硬度および潤滑性が高まる。繰り返し周期の下限は特に限定されず、小さくなるほど上述の均一組成の硬質皮膜と区別し難くなるに過ぎない。なおこの下限は、例えば、1nm程度(特に3nm程度)であってもよい。繰り返し周期が上述の範囲になる限り、各層の厚さも特には限定されないが、例えば、50nm以下、好ましくは30nm以下、さらに好ましくは10nm以下の範囲から設定してもよい。
なお多層型にしたVAl系硬質皮膜では、通常、各層は、いずれも、Al、V、SiおよびBから選択される少なくとも1種の元素の窒化物または炭窒化物[以下、窒化物および炭窒化物を総合して(炭)窒化物と表記することがある]で構成されている。好ましい(炭)窒化物には、Al系(炭)窒化物[Al(CN)、AlSi(CN)、AlB(CN)、AlSiB(CN);および前記(CN)部分が(N)である化合物など]、Si(CN)、B(CN)などが含まれる。各層の組み合わせもまた特には限定されないが、例えば、Alを含有する(炭)窒化物[Al系(炭)窒化物、AlV系(炭)窒化物など]と、Alを含有しない(炭)窒化物[V系(炭)窒化物、Si(CN)、B(CN)など]とを組み合わせてもよい。具体的にはAl(CN)/V(CN)、Al(CN)/VSi(CN)、AlSi(CN)/V(CN)、AlSi(CN)/VB(CN)、AlB(CN)/V(CN)、AlB(CN)/VSi(CN)、AlSiB(CN)/V(CN)、AlV(CN)/Si(CN)、AlV(CN)/B(CN)、AlVSi(CN)/B(CN)、AlVB(CN)/Si(CN)、AlVSiB(CN)/AlV(CN)などの組み合わせが例示でき、前記(CN)部分は(N)であってもよい。
さらに上記多層型硬質皮膜は、例えば、少なくとも1つの層の組成が前記VAl系硬質皮膜(Si・B追加型を含む)、又は後述のMo・W併用型硬質皮膜、Zr・Hf併用型硬質皮膜(これらもSi・B追加型を含む)と同じである硬質層であり、かつ残りの層がこの硬質層の特性を著しく減殺しないもの(第2の多層型硬質皮膜)であってもよい。この第2の多層型硬質皮膜は、硬質層の特性によって硬質皮膜全体の特性が定まっているため、硬度および潤滑性に優れ、本発明の硬質皮膜に含まれる。
硬質層の特性を著しく減殺しない前記残りの層としては、TiAlの窒化物または炭窒化物からなる層、CrAlの窒化物または炭窒化物からなる層などが挙げられる。これらの層は、耐酸化性に優れているため、前記硬質皮膜(VAl系硬質皮膜またはSi・B追加型VAl系硬質皮膜)に積層させることで硬質皮膜の耐酸化性を向上させることができると考えられる。また残りの層と硬質層とが繰り返されている限り、繰り返し単位内での残りの層の数は、1つであってもよく複数であってもよい。
繰り返し周期の上限および下限ならびに各層の上限および下限は、好ましくは、前記第1の多層型硬質皮膜と同様であってもよい。
また硬質層(複数の場合はその合計)の厚さは、前記残りの層に対して、例えば、0.5倍以上(好ましくは0.8倍以上、特に1.0倍以上)であり、2.0倍以下(好ましくは1.5倍以下)である。残りの層に対して硬質層が厚くなる程、残りの層の影響を受けにくくなる。残りの層に対する硬質層の厚さの上限は特に限定されず、大きくなるほど上述の均一組成の硬質皮膜と区別し難くなるに過ぎない。なおこの上限は、例えば、10倍程度(特に5倍程度、例えば2倍程度)であってもよい。
上記VAl系硬質皮膜(Si・B追加型を含む)では、前述のように切削材または被加工材と硬質皮膜との界面での摩擦熱によって比較的低融点で軟質なV酸化物が優先的に形成され、その結果、硬度と潤滑性が高まると考えられる。しかし上記V酸化物の融点は600℃前後であり、これ以上高温条件下で摺動を行うと、皮膜中のV成分が酸化し易くなり、皮膜が劣化し易くなる。そこで本発明者はV酸化物より融点の高い酸化物を形成するMoやWに着目した。そして(AlV)や(AlVSiB)成分と共にMoやWなども併用することで、上記V酸化物よりも融点の高い酸化物[WO2(融点1500℃)、WO3(融点1470℃)、MoO2(融点1100℃)、MoO3(融点795〜801℃)]を形成させることができた。そして、そのような硬質皮膜(以下、Mo・W併用型のVAl系硬質皮膜と称し、単にMo・W併用型硬質皮膜と称する場合もある。このMo・W併用型のVAl系硬質皮膜は、Si・B追加型であってもよい)では、600℃以上の高温条件下においても酸化速度を抑えることができ、かつ耐摩耗性を高め、摩擦係数も低く抑えられることを見出した。
上記Moおよび/またはWの含有量(原子比)(すなわち上記VAl系硬質皮膜と同様にして、(Al1-a-d-eaMod)(C1-XX)、(Al1-a-b-c-d-eaSibcMod)(C1-XX)のように表記したときのd+eの値)は、例えば0超、好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上であれば硬質皮膜の摩擦係数を低く抑え、かつ耐摩耗性も高めることができる。しかし、これら元素を過剰に含有させると硬質皮膜の結晶構造が高硬度なNaCl型から軟質な六方晶型に転移し易くなり、耐摩耗性が低下する。そのため上記元素の含有量(d+eの値)は0.3以下(好ましくは0.2以下)に抑えることが望ましい。
ところで硬質皮膜中に存在するVNやAlN(純安定立方晶型)の格子定数は各々0.414nmと0.412nmであるのに対し、例えばZrNやHfNでは格子定数は各々0.456nmと0.452nmであり、VNやAlNより大きな値を示している。そこで硬質皮膜中に、VNやAlNとは格子定数が異なる化合物(例えばZrNやHfNなど)を形成させた硬質皮膜(以下、Zr・Hf併用型のVAl系硬質皮膜と称し、単にZr・Hf併用型硬質皮膜と称する場合もある。このZr・Hf併用型のVAl系硬質皮膜は、Si・B追加型であってもよい)では、格子歪により硬化を生じさせ、硬度を高めることができる。
上記Zrおよび/またはHfの含有量(原子比)(すなわち上記VAl系硬質皮膜と同様にして、(Al1-a-f-gaHfZr)(C1-XX)、(Al1-a-b-c-f-gaSibcHfZr)(C1-XX)のように表記したときのf+gの値)は、例えば0超、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上であれば硬度や耐摩耗性を向上させることができるが、過剰に添加すると硬質皮膜の結晶構造が六方晶型に転移し易くなり、耐摩耗性が低下し易くなる。そのため上記元素の含有量は0.5以下(好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下)とすることが望ましい。
上記Mo・W併用型硬質皮膜やZr・Hf併用型硬質皮膜のV、Si、B、C、Nの含有量(すなわち上記化学式のaの値、b+cの値、Xの値など)については、上記VAl系硬質皮膜(Si・B追加型を含む)と同様な範囲であればよい。しかし上述のようにMo、W、Hf、Zrは耐摩耗性を向上させる効果を有しているため、Vの含有量(aの値)の下限は、VAl系硬質皮膜やSi・B追加型のVAl系硬質皮膜よりも少なくてよい。Mo・W併用型硬質皮膜では、Vの含有量(aの値)の下限は、0.2(好ましくは0.27、さらに好ましくは0.3、特に好ましくは0.35)にすることができ、Zr・Hf併用型硬質皮膜では、Vの含有量(aの値)の下限は、0.01(好ましくは0.2、さらに好ましくは0.27、特に好ましくは0.3、最も好ましくは0.35)とすることができる。
またMoおよび/またはW、またはZrおよび/またはHfは、上述のように皮膜内部に含有させた単層の型とする以外に、上述のVAl系硬質皮膜(Si・B追加型を含む。以下、A層と称する)と、Mo、Wの1種以上及びC、Nの1種以上から得られる化合物の層(以下、B層と称する)、またはZr、Hfの1種以上及びC、Nの1種以上から得られる化合物の層(以下、C層と称する)とを積層させた積層型硬質皮膜としてもよい。
その際、MoやW、HfやZrといった金属は硬度が低く、単体のままで積層させると積層型硬質皮膜全体としての耐摩耗性が低下してしまう。そのため、上記のようにC、Nと共に炭窒化物系化合物にして用いる必要がある。しかしMo、W、Hf、Zrなどは炭窒化物系化合物にしても、VAl系硬質皮膜(Si・B追加型を含む)よりも硬度が低いため、このMo、W、Hf、Zrなどの炭窒化物系化合物の層がVAl系硬質皮膜の層よりも厚くなると、硬質皮膜全体としての硬度や耐摩耗性が損なわれてしまう。そのため上記B層やC層はA層よりも薄くすることが好ましい。さらに各層の厚みが大きくなりすぎると積層型とする効果が得られなくなるため、各層の厚みは200nm以下(好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下)とすることが望ましい。
本発明の硬質皮膜[前記VAl系硬質皮膜(Si・B追加型を含む)、Mo・W併用型硬質皮膜(Si・B追加型を含む)、Zr・Hf併用型硬質皮膜(Si・B追加型を含む)、多層型硬質皮膜など]は、所望の硬度と潤滑性(摩擦係数)を満足できる限り、立方晶と六方晶とが混在する結晶構造であってもよいが、好ましくは実質的に立方晶であるNaCl型の結晶構造を示す。立方晶の割合が高くなる程、皮膜の硬度が高くなる。
NaCl型であるか否かは、X線回折によって決定できる。より詳細には、立方晶の(111)面、(200)面および(220)面のピーク強度、ならびに六方晶の(100)面、(102)面、(110)面のピーク強度を測定し、下記式(1)に基づいて立方晶の割合を算出する。この立方晶の割合が0.7以上、好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上であるとき、NaCl型であるといえる。なお、0.7未満の混成型では、0.4以上、特に0.5以上が好ましい。
Figure 2010180479
(式中、IB(111)、IB(200)およびIB(220)は立方晶の各面のピーク強度を示す。IH(100)、IH(102)およびIH(110)は六方晶の各面のピーク強度を示す)。
なおX線回折は、θ−2θ法によって行なう。また立方晶のX線回折は、CuKαの線源を用いて行い、(111)面については例えば2θ=37.78°付近の、(200)面については例えば2θ=43.9°付近の、(220)面については例えば2θ=63.8°付近のピーク強度を測定する。六方晶のX線回折は、CuのKα線を用い、(100)面については例えば2θ=32°〜33°付近の、(102)面については例えば2θ=48°〜50°付近の、(110)面については例えば2θ=57°〜58°付近のピーク強度を測定する。
なお上記立方晶および六方晶のピーク位置は、JCPDSカードに従ったものであるが、結晶[特に六方晶(ZnS型)]の各面のピーク位置は、TiやV、Cr、Mo、Ta、Wなどが含まれていると、JCPDSカードに示された値から若干ずれる場合がある。このような場合には、他のピークとの位置関係や他の化合物のピークとの関係から、目的とするピークの位置を定めればよい。
硬質皮膜の片面または両面にその他の硬質皮膜や金属層または合金層を積層させて異種複合型硬質皮膜としてもよい。
前記その他の硬質皮膜は、正確には金属窒化物系、金属炭化物系または金属炭窒化物系のNaCl型の結晶構造を有する硬質皮膜であり、用途などに応じて適宜選択すればよい。具体的には、Cr系硬質皮膜[Cr(CN)、CrAl(CN)など;および前記(CN)部分が(N)または(C)]、Ti系硬質皮膜[Ti(CN)、TiAl(CN)、TiSi(CN)など;および前記(CN)部分が(N)または(C)]、TiCr系硬質皮膜[TiAlCr(CN);および前記(CN)部分が(N)または(C)]などが例示される。
前記金属層または合金層は、正確には、周期律表第4A属元素、5A属元素、6A属元素、AlまたはSiから選択される少なくとも1種の金属層または合金層であり、これらの層は、本発明の硬質皮膜よりも硬度が低いため、金属層または合金層を介して、被処理体(特に、硬質皮膜との密着性が比較的低い鉄系基材例えば高速度工具鋼(SKH51やSKDなど)の上に硬質皮膜を形成することで、硬質皮膜と被処理体との密着性を高めることができる。金属層または合金層は、Cr、Ti、Nbや、Ti−Alなどからなる層が例示される。
硬質皮膜(積層型硬質皮膜、異種複合型硬質皮膜を含む)の厚さは、用途によって異なるが、0.5μm以上(好ましくは1μm以上)であり、20μm以下(好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下)とすることが好ましい。
硬質皮膜を形成させる鉄系基材としては、例えば、高速度工具鋼(SKH51やSKD11、SKD61など)や超硬合金などが挙げられる。
硬質皮膜は、物理気相成長法(PVD法)や化学気相成長法(CVD法)など公知の方法を用いて製造できる。密着性などの観点から、PVD法を用いて製造することが好ましい。具体的には、スパッタリング法や真空蒸着法、イオンプレーティング法などが挙げられるが、好ましくは気相コーティング法[スパッタリング法やイオンプレーティング法(特に、アークイオンプレーティング法)]を採用することが推奨される。
具体的には、上記VAl系硬質皮膜やSi・B追加型VAl系硬質皮膜は、下記する(i)〜(iv)のターゲットを用い、成膜ガスの存在下で、気相コーティング法(好ましくはアークイオンプレーティング法)にて製造することができる。
(i)AlおよびV
(ii)Al、VおよびSi
(iii)Al、VおよびB
(iv)Al、V、SiおよびB
具体的には、
(Al1-aa)(C1-XX)からなる硬質皮膜を得るときには
(Al1-aa)からなり、0.27≦a≦0.75であるターゲット(式中、aは原子比を示す)を用い、
(Al1-a-b-caSibc)(C1-XX)からなる硬質皮膜を得るときには
(Al1-a-b-caSibc)からなり、0.1≦a≦0.75および0<b+c≦0.2であるターゲット(式中、a、bおよびcは互いに独立して原子比を示す:なおbおよびcは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはない)を用いればよい。
またMo・W併用型硬質皮膜やZr・Hf併用型硬質皮膜の製造で用いるターゲットとしては、上記(i)〜(iv)のターゲットに、Moおよび/またはW,またはZrおよび/またはHfをさらに含有させたターゲットを用いることができる。
本発明者らは、ターゲットの特性についても検討したところ、相対密度が低いターゲットでは、ターゲット中にミクロポアなどが形成され易くなり、ターゲットの蒸気化にむらが生じ、組成や膜厚などが均一な硬質皮膜が製造されてしまい、密度が低いターゲットでは、成膜時に、ターゲット中の空孔部分が局所的かつ急速に消耗し、ターゲットの減耗速度が速くなり、ターゲットの寿命が短くなり、さらに空孔部分が多いと、ターゲットの強度が劣化して割れなどが生じさせてしまうことをつきとめた。そこでターゲットの相対密度を95%以上(好ましくは98%以上)とすることで、上記問題を解決することができ、同時にアーク放電にてターゲットを構成する合金成分の蒸発またはイオン化する際に、放電状態を安定にさせることができ、良好に硬質皮膜を得ることができた。
なお上記ターゲットの相対密度は、[(用いたターゲット1cm角の重量)/(純粋な組成からなるターゲットの密度(理論密度))×100]の式から求めた値を意味する。理論密度の算出方法は、公知の方法を用いて算出することができる。
ターゲットの製造方法は、特には限定されないが、例えば、量比や粒径などを適切に調整した原材料(V粉末およびAl粉末)を、V型ミキサー等で均一に混合して混合粉末とした後、冷間静水圧加圧処理(CIP処理)あるいは熱間静水圧加圧処理(HIP処理)、熱間押出法、超高圧ホットプレス法などを用いて製造することができる。
本発明者らは、硬質皮膜をアークイオンプレーティング法で製造する際の装置についても検討したところ、従来のAIP法で用いる装置では、図4にその機能の概略図を示すように、磁界を発生させる磁石109と被処理体Wとの間にターゲット106を配置させているため、磁石109から発生した磁力線102が、ターゲットの蒸発面近傍で、ターゲットの表面とほぼ平行となり、磁力線102は被処理体Wの近傍にまで伸びにくい。そのため、成膜ガスのプラズマの密度はターゲット近傍では高いが、被処理体Wに近づくに従って低くなっている。そこで磁力線をターゲットの蒸発面にほぼ直交するように形成し、放電によって生じた電子eの一部を、ガス中のNおよび/またはCと衝突させることで、Nおよび/またはCのプラズマ化を促進することができ、より効率よく硬質皮膜を製造することができることを見出した。具体的には、磁石や、コイルとコイル電源とを備えた電磁石などの磁界を発生させるもの(本明細書では、磁界形成手段とも称する)8または9を、図2や3に示すように、ターゲット6と被処理体Wとの間に配設し、磁力線とターゲット6の蒸発面の法線とのなす角度が±30°以上(好ましくは20°以上)となるようにすることで行なうことができる。さらにターゲット近傍および被処理体近傍での磁束密度を従来のAIP装置よりも高くすることで、本来、常温、常圧下では非平衡層である岩塩型の結晶構造を有するAlNが形成されやすくなり、皮膜の硬度を高めることができる。また、ターゲットから蒸気化した皮膜材料のプラズマ化と、雰囲気ガスとしてNのプラズマ化を促進することで、プラズマ化されたNが高エネルギーの粒子となり、非平衡相である岩塩型のAlNを生成し易くなると考えられる。
磁界形成手段を配設させる位置は、図2に例示するように、ターゲット6の上、および/またはターゲットの蒸発面S側で、ターゲット6を挟むまたは取り囲むようにして配設させてもよいし、図3に例示するように、磁界形成手段9を、ターゲット6の蒸発面Sと被処理体Wとの間に配設させてもよい。また図2に例示するようにチャンバーをアノードとしてもよいし、ターゲットの側面前方を取り囲むような円筒形状の専用アノードを設けてもよい。
発生させる磁界の強度は、被処理体硬質皮膜を形成させる面の中央部の磁束密度が10ガウス以上(好ましくは30ガウス以上)となるように調整することが好ましい。
成膜ガスは、所望とする硬質皮膜の組成に応じて設定すればよく、具体的には、Nを、NとC原子の合計に対して、0.3%以上(好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.6以上、特に好ましくは0.8以上)の範囲内で設定すればよい。
成膜時の被処理体の温度は、被処理体の種類に応じて適宜選択すればよいが、高すぎれば硬質皮膜の残留応力が低減する場合があり、硬質皮膜に過大な残留応力が作用し、被処理体との密着性が損なわれる場合がある。そのため300℃以上、好ましくは400℃以上に設定することが推奨される。また被処理体の温度が高すぎれば、残留応力は低減するものの、同時に圧縮応力も小さくなり、被処理体の抗折力増加作用が損なわれる場合がある上に、高温に曝されることで被処理体が変形することがある。そのため、被処理体の温度は800℃以下、好ましくは700℃以下とすることが推奨される。また被処理体として、HSS(高速度工具鋼、SKH51など)あるいはSKD11、SKD61などの熱間工具鋼などの基板を用いた場合、製造時の基板温度を基板材料の焼き戻し温度以下に設定し、基板の機械的特性を維持することも好ましい。焼き戻し温度は、基板材料によって適宜選択することができるが、一般に、基材としてSKH51を用いた場合には550〜570℃、SKD61を用いた場合には550〜680℃、SKD11を用いた場合には500〜530℃でよい。その場合、製造時の基板の温度はこれら焼き戻し温度よりも低く設定することが好ましく、具体的には、焼き戻し温度に対して50℃以下に設定することが好ましい。
なお、成膜時に被処理体に負の電位を印加することで、より効率よく硬質皮膜を形成することができる。バイアス電圧の大きさは、高ければプラズマ化した成膜ガスや金属イオンのエネルギーも高くなり、得られる立方晶の結晶構造を示す硬質皮膜が得られ易くなるため、負の値で、絶対値で10V以上、特に30V以上とすることが好ましい。しかしバイアス電圧が高まると、プラズマ化した成膜ガスによって膜がエッチングされ、成膜速度が極端に小さくなる場合がある。そのため負の値で、絶対値で200V以下、特に150V以下とすることが好ましい。なお、Alの割合が比較的少ない場合には、バイアス電圧が多少低くても前述の引き込み効果が有効に作用し、立方晶の結晶構造を示す硬筆皮膜が得られ易くなる。
また、前述のように硬質皮膜を複数の層からなる積層体として製造する場合には、例えば図5に示すような複数のターゲット6A、磁界形成手段8Aなどを備えた装置を用い、上記製造方法にて、各層毎に製造することで、積層体からなる硬質皮膜を製造することができる。
以下の実験例で得られた硬質皮膜の物性は、下記の方法に従って求めた。
[硬質皮膜の組成]
EPMAにより測定した。その際、硬質皮膜中の金属元素および窒素以外の不純物元素量が、酸素および炭素の各々が5at%以下のレベルであることを確認した。
[結晶構造の解析条件]
結晶構造の評価は、硬質皮膜を、リガク電機社製のX線回折装置を用いて、θ−2θ法にてX線解析する。その際、立方晶ではCuKα線源を用いて行い、(111)面については2θ=37.78°付近の、(200)面については2θ=43.9°付近の、(220)面については2θ=63.8°付近のピーク強度を測定する。六方晶のX線回折は、CuのKα線を用い、(100)面については2θ=32°〜33°付近の、(102)面については2θ=48°〜50°付近の、(110)面については2θ=57°〜58°付近のピーク強度を測定する。それらの値を用いて下記式(1)
Figure 2010180479
(式中、IB(111)、IB(200)およびIB(220)は立方晶の各面のピーク強度を示す。IH(100)、IH(102)およびIH(110)は六方晶の各面のピーク強度を示す)
に導入して算出した値(表中、「式(1)の値」)が0.8以上のものをNaCl型(表中、Bと表示)であると認定し、0のものを六方晶構造のものからなる(表中、Hと表示)とし、0より大きく、0.8未満のものを混合型(表中、B+Hと表示)とした。
[硬度の測定]
マイクロビッカース硬度測定器を用い、荷重0.25N、保持時間15秒で測定した。
[摩擦係数の測定]
摺動試験用ディスク(SKD61製:φ55mm×5mm厚み、片面鏡面研磨)の表面に、本発明の硬質皮膜を形成したものを用い、下記する試験条件にてボールオンディスク試験を行い、摩擦係数を測定した。
摺動試験条件
試験方法:ボールオンディスク
ボール:SUJ2(直径9.54mm)、硬度HRC60
垂直荷重:5N
摺動速度:1m/s
雰囲気温度:実験例1〜4については500℃、実験例5〜8については800℃
摺動距離:1000m
[摩耗幅の観察]
超硬合金製ボールエンドミル(直径10mm、2枚刃)の表面に、本発明の硬質皮膜を形成し、下記条件A(実験例1〜4)又は下記条件B(実験例5〜8)で所定の切削長まで切削した後、硬質皮膜が被覆されたエンドミルの刃先を光学顕微鏡で観察した。
−条件A−
被削材:SKD61焼き入れ鋼(HRC50)
切削速度:220m/分
刃送り速度:0.06mm/刃
軸切り込み:4.5mm
径方向切り込み:1mm
その他:ダウンカット、ドライカット、エアーブローのみ
切削長:20m
−条件B−
被削材:SKD11(HRC60)
切削速度:150m/分
刃送り速度:0.04mm/刃
軸切り込み:4.5mm
径方向切り込み:0.2mm
その他:ダウンカット、ドライカット、エアーブローのみ
切削長:50m
[硬質皮膜の形成に用いた装置]
実験例1、2および4〜6については図1に示す概要からなるAIP装置を用いた。図中、1はチャンバーを示し、2はアーク式蒸発源を示し、3は支持台を示し、4はバイアス電源を示し、6はターゲットを示し、7はアーク電源を示し、8は磁界形成手段(磁石)を示し、11は排気口を示し、12はガス供給口を示し、Wは被処理体を示している。
実験例3、7および8については図5に示す概要からなるAIP装置を用いて硬質皮膜を製造した。図5のAIP装置は、図1のAIP装置に、さらにアーク式蒸発源2A、バイアス電源4A、ターゲット6A、アーク電源7Aおよび磁界形成手段(磁石)8Aを備えたものである。
[被処理体の種類]
各実験例では、[1]超硬合金製チップ(結晶構造および硬度測定用)、[2]超硬合金製エンドミル(直径10mm、二枚刃)(摩耗幅測定用)および[3]摺動試験用ディスク(SKD61製:φ55mm×5mm厚み、片面鏡面研磨)(摩擦係数測定用)の3種類の被処理体を使用した。
(実験例1)
[硬質皮膜の形成]
ターゲット6には、表1の「ターゲットの組成比(原子比)」からなる組成のものを作製して用いた。
チャンバー1内を真空状態にした後、ヒーター(図示せず)にて被処理体を500℃に加熱した。そしてガス供給口12から表1の「成膜ガスの組成比(原子比)」の組成からなる単一または混合ガスを、チャンバー1内の圧力が2.66Paとなるように供給した。被処理体Wがアース電圧に対して負の電位となるように、バイアス電源4にて、被処理体に20〜100Vの電圧を印加し、アーク電源7にてアーク放電を開始してターゲット6を蒸気化、イオン化して被処理体Wの表面に厚さ3μmの硬質皮膜を形成した。
[硬質皮膜の物性]
得られた硬質皮膜の結晶構造と式(1)の値、硬度、摩擦係数および摩耗幅の測定結果を表1に記載した。
Figure 2010180479
Al、V、CおよびNからなる本発明の硬質皮膜(実施例1〜14)は、従来のTiAlN(比較例1)やCrAlN(比較例2)、VN(比較例3)と比べ、いずれも硬度が高く、摩擦係数が小さく、摩耗幅も狭かった。本発明で限定した組成の範囲外のもの(比較例4〜8)では、結晶構造に六方晶構造を含み、従来の硬質皮膜(比較例1〜3)と比べ、硬度や摩擦係数、摩耗幅のいずれかが劣っていた。さらに成膜ガスにCを含むもの(実施例10〜14)は、成膜ガスにCを含まないもの(実施例5)よりも摩擦抵抗が低く潤滑性に優れていた。
(実験例2)
[硬質皮膜の形成]
ターゲット6に、表2の「ターゲットの組成比(原子比)」からなる組成のものを作製して用いた以外は、実験例1と同様にして実験を行なった。
[硬質皮膜の物性]
得られた硬質皮膜の結晶構造と式(1)の値、硬度、摩擦係数および摩耗幅の測定結果を表2に記載した。
Figure 2010180479
本発明の硬質皮膜(実施例15〜33)は、従来のTiAlN(比較例1)やCrAlN(比較例2)と比べて、いずれも硬度が高く、摩擦係数が小さく、摩耗幅が狭かった。また、硬質皮膜にSiやBを含めた硬質皮膜(実施例16〜33)は、SiやBを含まない本発明の硬質皮膜(実施例15)と同等かそれ以上の効果を有していた。しかし本発明で限定した組成の範囲外のもの(比較例9〜11)では、結晶構造にZnS構造を含み、従来の硬質皮膜(比較例1および2)よりも硬度や摩耗幅の点で同等か、それより劣っていた。
(実験例3)
[硬質皮膜の形成]
図5に概略を示した装置を用い、ターゲット2には、表3の「A層(上段)」の「ターゲットの組成比(原子比)」からなる組成のものを作製して用いた。ターゲット2Aには、表3の「B層(下段)」の「ターゲットの組成比(原子比)」からなる組成のもの作製して用いた。なお、実施例39および41についてはターゲット2を用いずに成膜した。
・実施例34〜38および40の硬質皮膜の形成
チャンバー1内を真空状態にした後、ヒーター(図示せず)にて被処理体Wを500℃に加熱した。そしてガス供給口12から表3の「成膜ガスの組成(原子比)」からなる単一または混合ガスをチャンバー1内の圧力が2.66Paとなるように供給した。アーク電源7にてアーク放電を開始してターゲット6を蒸気化、イオン化し、被処理体Wがアース電圧に対して負の電位となるように、バイアス電源4にて20〜100Vを被処理体Wに印加し、被処理体の表面に表3に記載されている厚みとなるようにA層を形成した。次にアーク電源7Aにてアーク放電を開始してターゲット6Aを蒸気化、イオン化し、被処理体Wがアース電圧に対して負の電位となるように、バイアス電源4Aにて20〜100Vを被処理体Wに印加し、A層が形成された被処理体Wの表面に、表3に記載されている厚みとなるようにB層硬質皮膜を形成した。上記操作を表3の「積層数」の数繰り返して積層体からなる硬質皮膜を形成した。
・実施例39および41の硬質皮膜の形成
表面に、表3に記載の「A層」の硬質皮膜が形成された被処理体を用い、ヒーター(図示せず)にて被処理体Wを500℃に加熱した。そしてガス供給口12から表3の「成膜ガスの組成比(原子比)」からなる単一または混合ガスをチャンバー1内の圧力が2.66Paとなるように供給した。アーク電源7Aにてアーク放電を開始してターゲット6Aを蒸気化、イオン化し、被処理体Wがアース電圧に対して負の電位となるように、バイアス電源4Aにて20〜100Vを被処理体Wに印加し、被処理体Wの表面に表3に記載されている厚みとなるようにB層を形成した。
[硬質皮膜の評価]
得られた硬質皮膜の結晶構造と式(1)の値、硬度、摩擦係数および摩耗幅の測定結果を表3に記載した。
Figure 2010180479
本発明の積層構造からなる硬質皮膜(実施例34〜41)は、従来のTiAlN(比較例1)やCrAlN(比較例2)と比べ、いずれも硬度が高く、摩擦係数が小さく、摩耗幅が狭かった。
(実験例4)
V、Al、SiおよびBの粉末(各々の粒度は100メッシュ以下)をV型ミキサーにて混合し、表4に記載の組成となるように調製した。そして、得られたものを焼結(還元雰囲気中、焼成温度:550℃)、HIP(10000気圧、480℃)、熱間鋳造(余熱温度:450℃)の条件下で、各々ターゲットを製造した。それらを図1に記載のAIP装置に取り付け、被処理体Wの表面に硬質皮膜を形成し、放電の状況ならびに形成された皮膜の状態を観察し、その結果を表4に記した。なお成膜ガスは、実施例42および43については、窒素100%、44および45については窒素とメタンの混合ガス(窒素:メタン=80:20(原子比))のものを用いた。
Figure 2010180479
相対密度が95%未満のターゲット(比較例14および15)を用いて得られたものでは、成膜でできず、相対密度が95%以上のターゲットを用いて得られた硬質皮膜(実施例42〜45)では成膜することができた。
(実験例5)
[硬質皮膜の形成]
ターゲット6に、表5の「ターゲットの組成比(原子比)」からなる組成のものを作製して用いた以外は、実験例1と同様にして実験を行なった。
[硬質皮膜の物性]
得られた硬質皮膜の結晶構造と式(1)の値、硬度、摩擦係数および摩耗幅の測定結果を表5に記載した。
Figure 2010180479
実施例47〜59の硬質皮膜は、WやMoを含有する本発明の硬質皮膜の結果を示したものであり、比較としてWやMoを含有しない本発明の硬質皮膜(実施例46)と従来の硬質皮膜(比較例1および2)の結果も記載した。800℃の摺動条件下では、MoやWを含有させた硬質皮膜(実施例47〜59)では、硬度、摩擦係数、摩耗幅の何れにおいても従来の硬質皮膜よりも優れていた。特にVの含有量が0.27以上の場合には、実施例46の硬質皮膜と比べて、硬質皮膜にWやMoを含有させることで硬度、摩擦係数、摩耗幅共に向上させることができた(実施例47〜52および54〜56)。しかしWとMoの合計含有量が0.39以上になると、六方晶構造型の結晶構造が出現し、その結果、硬度の低下や摩耗幅の増加がみられた(比較例16)。
(実験例6)
[硬質皮膜の形成]
ターゲット6に、表6の「ターゲットの組成比(原子比)」からなる組成のものを作製して用いた以外は、実験例1と同様にして実験を行なった。
[硬質皮膜の物性]
得られた硬質皮膜の結晶構造と式(1)の値、硬度、摩擦係数および摩耗幅の測定結果を表6に記載した。
Figure 2010180479
実施例60〜75の硬質皮膜は、ZrやHfを含有する本発明の硬質皮膜の結果を示したものであり、比較としてZrやHfを含有しない本発明の硬質皮膜(実施例46)と従来の硬質皮膜(比較例1および2)の結果も記載した。800℃の温度下での摺動条件下では、実施例60〜75の硬質皮膜は、硬度、摩擦係数、摩耗幅の何れにおいても従来の硬質皮膜よりも優れていた。また実施例46の硬質皮膜と比べて、ZrやHfを含有させることによって摩擦係数をあまり変化させることなく、硬度を高め、摩耗幅を減少させることができた。なお上記元素(Zr、Hf)の含有量が0.45以上になると、六方晶構造型の結晶構造が出現し、硬度の低下や摩耗幅の増加が始まった(実施例64および65)。実施例64及び65程度の低下であれば従来例(比較例1および2)を下まわることはないが、ZrとHfの合計含有量がさらに増大すると、硬度の低下や摩耗幅の増加が顕著になってくる。
(実験例7)
[硬質皮膜の形成]
図5に概略を示した装置を用い、実施例77〜87については、ターゲット2に表7の「A層(上段)」の「ターゲットの組成比(原子比)」からなる組成のものを作製して用い、ターゲット2Aに表7の「B層(下段)」の「ターゲットの組成比(原子比)」からなる組成のもの作製して用い、実施例76についてはターゲット2を用いずに硬質皮膜を製造した。上記以外については、実験例3の製造方法に準じて行なった。
[硬質皮膜の評価]
得られた硬質皮膜の硬度、摩擦係数および摩耗幅の測定の結果を表7に記載した。
Figure 2010180479
本発明の積層型硬質皮膜(実施例77〜87)は、従来の硬質皮膜(比較例1および2)と比べ、いずれも硬度が高く、摩擦係数も小さく、摩耗幅も狭かった。さらに積層型とすることで(実験例77〜83)、単層の硬質皮膜(実施例46)よりも摩擦係数や摩耗幅を減少させることができた。さらに実施例76の単層の硬質皮膜と実施例84〜87の積層型硬質皮膜の結果から、本発明の態様はSiを含有した硬質皮膜に対しても十分な効果があることを示していた。
(実験例8)
[硬質皮膜の形成]
図5に概略を示した装置を用い、実施例88〜98については、ターゲット2に表7の「A層(上段)」の「ターゲットの組成比(原子比)」からなる組成のものを作製して用い、ターゲット2Aに表7の「B層(下段)」の「ターゲットの組成比(原子比)」からなる組成のもの作製して用いて硬質皮膜を製造した。上記以外については、実験例7の製造方法に準じて行なった。
[硬質皮膜の評価]
得られた硬質皮膜の硬度、摩擦係数および摩耗幅の測定の結果を表8に記載した。
Figure 2010180479
本発明の積層型硬質皮膜(実施例88〜98)は、従来の硬質皮膜(比較例1および2)と比べ、いずれも硬度が高く、摩擦係数が小さく、摩耗幅が狭かった。さらに積層型硬質皮膜(実験例87〜93)では、単層の硬質皮膜(実施例46)と同程度の摩擦係数を保ったまま、硬度を向上させることができ、摩耗幅も減少させることができた。
さらに本発明の態様はSiを含有した硬質皮膜に対しても十分な効果が得られていた(実施例95〜98)。
本発明の硬質皮膜は、硬度や潤滑性が極めて優れていることから、切削工具(チップやドリル、エンドミルなど)や、冶工具(鍛造金型や打ち抜きパンチなど)など以外に、自動車用の摺動部材などにも用いることができる。
1.真空容器
2、2A.アーク式蒸発源
3.支持台
4、4A.バイアス電源
6、6A.ターゲット
7、7A.アーク電源
8、8A、9、109.磁界形成手段(磁石または永久磁石)
11.排気口
12.ガス供給口
W、106.被処理体
102.磁力線

Claims (13)

  1. (Al1-a-d-eaMod)(C1-XX)からなる硬質皮膜であって、
    0.2≦a≦0.75、
    0<d+e≦0.3、
    0.3≦X≦1
    (式中、a、d、eおよびXは互いに独立して原子比を示す:なおdおよびeは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはない)
    であることを特徴とする硬質皮膜。
  2. (Al1-a-b-c-d-eaSibcMod)(C1-XX)からなる硬質皮膜であって、
    0.2≦a≦0.75、
    0<b+c≦0.20、
    0<d+e≦0.3、
    0.3≦X≦1
    (式中、a、b、c、d、eおよびXは互いに独立して、原子比を示す:なおbおよびcは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはなく、dおよびeは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはない)
    であることを特徴とする硬質皮膜。
  3. (Al1-a-f-gaHfZr)(C1-XX)からなる硬質皮膜であって、
    0.01≦a≦0.75、
    0<f+g≦0.5、
    0.3≦X≦1
    (式中、a、f、gおよびXは互いに独立して原子比を示す:なおfおよびgは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはない)
    であることを特徴とする硬質皮膜。
  4. (Al1-a-b-c-f-gaSibcHfZr)(C1-XX)からなる硬質皮膜であって、
    0.01≦a≦0.75、
    0<b+c≦0.20、
    0<f+g≦0.5、
    0.3≦X≦1
    (式中、a、b、c、f、gおよびXは互いに独立して、原子比を示す:なおbおよびcは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはなく、fおよびgは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはない)
    であることを特徴とする硬質皮膜。
  5. NaCl型の結晶構造を示す請求項1〜4のいずれか1つに記載の硬質皮膜。
  6. (Al1-aa)(C1-XX)からなり、
    0.27≦a≦0.75、0.3≦X≦1(式中、aおよびXは互いに独立して、原子比を示す)の組成、または、
    (Al1-a-b-caSibc)(C1-XX)からなり、0.1≦a≦0.75、0<b+c≦0.20、0.3≦X≦1(式中、a、b、cおよびXは互いに独立して、原子比を示す:なおbおよびcは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはない)の組成を満足する硬質皮膜からなる層(以下、A層と称する)と、
    Mo、Wの1種以上と、C、Nの1種以上とを選択して得られる化合物からなる層(以下、B層と称する)
    とを積層してなる積層型硬質皮膜。
  7. 上記A層とB層の厚みが、
    B層の厚み≦A層の厚み≦200nm
    である請求項6に記載の積層型硬質皮膜。
  8. (Al1-aa)(C1-XX)からなり、
    0.27≦a≦0.75、0.3≦X≦1(式中、aおよびXは互いに独立して、原子比を示す)の組成、または、
    (Al1-a-b-caSibc)(C1-XX)からなり、0.1≦a≦0.75、0<b+c≦0.20、0.3≦X≦1(式中、a、b、cおよびXは互いに独立して、原子比を示す:なおbおよびcは、一方が0であってもよいが、両方が0になることはない)の組成を満足する硬質皮膜からなる層(以下、A層と称する)と、
    Zr、Hfの1種以上と、C、Nの1種以上とを選択して得られる化合物からなる層(以下、C層と称する)
    とを積層してなる積層型硬質皮膜。
  9. 上記A層とC層の厚みが、
    C層の厚み≦A層の厚み≦200nm
    である請求項8に記載の積層型硬質皮膜。
  10. 請求項1〜9のいずれか1つに記載の硬質皮膜の製造方法であって、成膜ガス雰囲気中で金属を蒸発させイオン化して、前記金属とともに成膜ガスのプラズマ化を促進しつつ成膜することを特徴とする硬質皮膜の製造方法。
  11. ターゲットを構成する金属の蒸発およびイオン化をアーク放電にて行なうアークイオンプレーティング法において、該ターゲットの蒸発面にほぼ直交して前方に発散ないし平行に進行する磁力線を形成し、この磁力線によって被処理体近傍における成膜ガスのプラズマ化を促進しつつ成膜する請求項10に記載の硬質皮膜の製造方法。
  12. 前記被処理体の硬質皮膜を形成する面の中央部の磁束密度が、10ガウス以上である請求項10または11に記載の硬質皮膜の製造方法。
  13. 前記磁力線と、前記ターゲットの蒸発面の法線とで形成される角度が±30°以下となるように、該ターゲットと前記被処理体との間に磁界を形成する請求項11または12に記載の硬質皮膜の製造方法。
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