JP2010173312A - 樹脂被覆金属板用積層シ−ト、積層シート被覆金属板、ユニットバス部材、建築内装部材、鋼製家具部材、および樹脂被覆金属板用積層シートの製造方法 - Google Patents
樹脂被覆金属板用積層シ−ト、積層シート被覆金属板、ユニットバス部材、建築内装部材、鋼製家具部材、および樹脂被覆金属板用積層シートの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】A層(10)、B層(20)、およびC層(30)の少なくとも3層からなり、A層:所定の融点を有するポリブチレンテレフタレート系樹脂を所定量と、所定のガラス転移温度を有するポリエステル系樹脂所定量から成る、所定厚みの無配向の樹脂層。B層:所定の融点を有するポリブチレンテレフタレート系樹脂を所定量と、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂所定量から成り着色剤を添加された所定厚みの無配向の樹脂層。C層:実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体として成り、該C層の樹脂組成物が所定のガラス転移温度を有し、厚みが所定以下の無配向の樹脂層。
【選択図】図1
Description
しかし、これらのようなガラス転移温度が80℃程度で、且つ結晶性を有しないポリエステル系樹脂から成るシートの表面にエンボス意匠を付与して樹脂被覆金属板の用途に供した場合は、金属板へのラミネート時など後工程での加熱を受けた際に著しいエンボス戻りを生じてしまう問題があった。また、同様に樹脂組成物のガラス転移温度が80℃程度であることと結晶性を有しないことから、ユニットバス用途に使用される樹脂被覆金属板の評価試験項目として含まれることの多い沸騰水浸漬試験に供した場合、エンボス戻りを生ずるのみならず、樹脂層自体が弾性を保持し得ず流動変形を生じ、著しい外観不良をもたらす問題点もあった。
(1) 熱硬化性の塗膜層等をシート表面のエンボスが付与された面に設けることで、その架
橋構造により物理的に固定してしまう。
(2) シートの厚みを厚くすることで、ラミネート時に加熱された金属板からの熱伝達によ
るシート表面の温度上昇を低く抑える。
(3) エンボスが付与される層の樹脂組成として、ガラス転移温度が高いポリエステル系
樹脂を用いることで、金属板へのラミネートの際にエンボスが付与されているシート表面近傍の温度が上昇しても、樹脂組成のガラス転移温度がそれを越えないようにする。
(4) エンボスが付与される層の樹脂組成として、結晶性を有するポリエステル系樹脂を
用い、エンボス付与と同時に、もしくはエンボス付与後に結晶化させることで、結晶融点に至る温度までシートの弾性率が保持されることを利用する。
(3)の方法は、ポリエステル系樹脂の共重合成分として、ジカルボン酸成分もしくは、ジオール成分に剛直な分子構造を有するものを導入することでガラス転移温度を高めることが可能であり、100℃を越えるガラス転移温度を有するポリエステル系樹脂であれば、結晶性を有しない場合においても、良好なエンボス耐熱性を得られると同時に沸騰水浸漬試験で樹脂層の流動変形を生じないものとすることができる。しかし、このようなポリエステル系樹脂は、汎用用途の市販品としては存在せず、原料価格が高価なものとなってしまう。従って、(4)の方法が性能面やコスト面から最も好ましいと考えられる。
押出しキャストエンボス法によりエンボスを付与する場合は、前述のようにPBT樹脂層も溶融状態にある為、エンボス転写性がPBT樹脂層の厚みに依存することはない。
なお、特許文献6の実施例においては、押出し製膜設備とは別ラインであるエンボス加工装置によりシート表面温度を160℃としてエンボス付与を実施しているが、該温度はホモPBT樹脂の融点約225℃に比べて相当に低く、PBT層自体は熔融していないことになる。
特許文献7においても、段落[0010]に「透明多層保護フィルム層の上層と下層の厚さの比が上層:下層=0.5:9.5〜5:5であると、得られる積層化粧シートのシボ転写性が良好である。本発明において、上層の厚さは薄いほどシボ転写性が良好となる。」との記載があり、やはり特許文献6と同様に、押出しキャストエンボス法により熔融した樹脂層にエンボスを付与するのではなく、オフラインの所謂アフターエンボス法により表層にPBT系樹脂を60〜85質量%含む層を有しながら、その融点以下の温度でエンボスを付与することができるのが特許文献7の技術上の特徴であると解釈できる。
しかしながら、樹脂組成物の結晶化が充分に進行していない内に、キャスティングロールの剥離箇所まで達した場合は非晶状態でガラス転移温度の低い樹脂組成物を該ガラス転移温度より高い表面温度を有するロールから剥がすこととなるため、キャスティングロールへの粘着が発生し、安定した引取りが困難となる。
即ち、エンボスロールから離れた後のシートを加熱により結晶化しようとした場合には、結晶化速度が遅いことから、結晶化よりも速くエンボス戻りが発生してしまう虞があり、この為、特許文献8においては、「エンボスを施すと同時に結晶化させる」と表現しているように、エンボスロールに接した状態で、即ちエンボスロールによる押圧と言う外力が存在することで物理的にエンボス戻りが発生しない環境化で、結晶化処理を施す必要がある。 しかし、前述の如く、PET系の樹脂では結晶化速度が遅いことから、エンボス付与ラインの処理速度が制約を受けることとなるものである。また、該方法はガラス転移温度が低く、結晶化速度が速いことから、通常の保管条件においても結晶化が進行する虞があるPBT系樹脂には適用することが難しい。
前記A層が、A層における樹脂成分全体の質量を基準として、融点が210℃以上、230℃以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂を75質量%以上、95質量%以下と、ガラス転移温度が70℃以上であるポリエステル系樹脂を25質量%以下、5質量%以上とから成り、厚み5μm以上、100μm以下の無配向の樹脂層であり、
前記B層が、B層における樹脂成分全体の質量を基準として、融点が210℃以上、230℃以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂を45質量%以上、70質量%以下と、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を55質量%以下、30質量%以上とから成り、着色剤を添加した厚み200μm以下の無配向の樹脂層であり、
前記C層が、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体とするガラス転移温度が60℃以上である樹脂組成物からなる厚み60μm以下の無配向の樹脂層であり、
該A層表面にエンボス転写による柄意匠を備えてなる、樹脂被覆金属板用積層シート。
更に、このような樹脂組成物は、実質的に非晶性、または低晶性である為、積層シート、或いは積層シート被覆金属板を長期間の保管に供した後も、結晶化が進行し折り曲げ加工性などの二次加工性が低下する虞が少ない点からも好ましい。
これらの材料として好適に使用できる。
本発明の金属板被用積層シートは、表面側から順に、A層10、B層20、C層30、の少なくとも3層を備える。以下に、各層について説明する。
A層10は、押出し機により溶融軟化状態としたA層10の組成物をTダイから流下させ、キャスティングロール(引き取りロール)と接触させて冷却固化させ、その後、巻取り工程等に導く一般的な押出し製膜法により製膜される層である。本発明においては、キャスティングロールとして、各種柄意匠の凹凸彫刻が施されたエンボスロールを用いることで、A層10の、B層20と積層される側の表面とは反対側の表面に各種のエンボス意匠が付与される。
該柄意匠のエンボスは、後工程での加熱の際にエンボス戻りを生じることがあってはならず、その為に本発明においては、A層10の樹脂組成として、A層10における樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、融点が210℃以上、230℃以下であるPBT系樹脂を70質量%以上、95質量%以下含有して成る。
A層10はPBT系樹脂の結晶化によって、その表面に付与されたエンボスの意匠感を確保・維持する層であると言える。
ただし、これらに限定されるものでは無く、イソフタル酸共重合PBT樹脂で、融点が210℃以上のものや、ポリテトラメチレングリコール共重合PBTで、融点が210℃以上であるもの等も用いることができる。
そこで、本発明においては、ガラス転移温度が70℃以上であるポリエステル系樹脂をA層10に5質量%以上、25質量%以下ブレンドすることにより、ブレンド組成物のガラス転移温度を若干上昇させ、これらの問題が生じ難くしたものである。
エンボス耐熱性確保の点からは、A層10におけるPBT系樹脂の配合量は、A層の樹脂成分の全量を基準として、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが特に好ましい。一方、キャスティングロールからの剥離の安定性確保や過度な反りの防止の点からは、PBT系樹脂は92質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが特に好ましい。
A層10のPBT系樹脂以外の樹脂成分である、ガラス転移温度が70℃以上のポリエステル系樹脂成分としては、後述のC層30の主体として用いることかできる実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂の中からガラス転移温度が70℃以上であるものを好ましく用いることができる。A層10のPBT系樹脂以外の樹脂成分は、その添加量が限定的である為、後述するB層20やC層30の場合と異なり、結晶性を有するポリエステル系樹脂でも問題なく使用できる場合があるが、ホモPET等の結晶性の高い樹脂を用いた場合は、経時的にPET系樹脂の結晶化が進行し、その結晶相の加工性がPBT系樹脂の結晶相の加工性より劣ることから、A層10の加工性が劣化し、結果的に積層シートを被覆した金属板の加工性が経時的に低下する虞があることによる。無論、上記のような加工性低下が問題とならないような軽度な二次加工のみが施される用途では、ガラス転移温度が70℃以上である結晶性を有するポリエステル系樹脂を用いても良い。
また、A層に好ましく用いることのできる前述の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂は、PBT系樹脂と相容性のブレンド組成物を形成する為、効率的にA層10の樹脂組成物のガラス転移温度を高めることができる。ただし、一般的に用いられているポリエステル系樹脂は、殆どの場合においてPBT系樹脂との相容性を有しているため、その点については本発明の範囲を限定する用件としては用いなかった。
ただし、ポリエステル系樹脂に分類されることのある芳香族ポリカーボネート系樹脂等は、ガラス転移温度は高いが、PBT系樹脂との相容性に劣る為好ましくない。
A層10には、その結晶化速度を速める為に、結晶核剤を添加しても良く、ソルビトール系や燐酸エステル系などの有機核剤や、微細シリカ粒子などの無機核剤等各種の市販核剤を適宜な量添加しても良い。また、核剤として市販されているものでは無いが、ポリエステル系樹脂の結晶化速度を速める効果を有する添加剤(例えばモンタン酸ワックス類やタルクなど)を同様に適宜な量添加しても良い。
一般的な添加量としては、A層の樹脂成分の全量を基準(100質量部)として、0.1質量部〜2質量部程度の範囲である。
B層20は、着色剤を添加することにより着色の意匠付与と、下地となる金属板等の視覚的隠蔽機能を受け持つ層であり、且つ、共押出し積層されるA層10、およびC層30と強固な界面密着力を得ることができる層であることが求められる。
また、下地の視覚的隠蔽性確保の点から、ある程度の厚みがある層とする必要があり、積層シート被覆金属板を沸騰水浸漬試験に供した場合、B層20の耐熱不足(弾性率低下)により積層シートが流動変形し外観不良を生ずることがない層である必要がある。
PBT系樹脂としては、前述したA層10に用いることができるPBT系樹脂と同様のものを用いることができる。また、中でも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸、ジオール成分として1,4−ブタンジオールの各単一成分を用いた、いわゆるホモPBT樹脂(意図せざる共重合成分が入っていても良い)を用いることが、コストや入手の容易さの点から好ましい。該B層20に配合されるPBT系樹脂と、A層10に配合されるPBT系樹脂は、組成、融点などが異なるものであっても構わないが、原料購入の面や製膜設備における原料関係の設備の簡易化の点からは、いずれの層にも、ホモPBT樹脂を用いることが特に好ましい。B層20に配合されるPBT系樹脂の量は、50質量%以上、65質量%以下であることが更に好ましい。
B層20の樹脂組成として、A層10と同様にPBT系樹脂を70質量%を超える量含むものとした場合は、押出製膜ラインでの積層シートの加熱によるA層10の結晶化処理の際に、A層10とB層20とが同時に結晶化することとなり、積層シートへの流れ方向の皺入りが顕著に発生する虞がある。逆にB層20がPBT系樹脂を45質量%未満しか含まない場合は、積層シートを被覆した金属板を沸騰水浸漬試験に供した場合に、耐熱性不足(弾性率低下)により外観不良を生ずる虞がある。
B層20は着色剤を添加することが必須の層である。使用される着色剤としては、上記のようにPETG樹脂をベースレジンとして、予備混練を施すことで分散性を向上させた顔料マスターバッチを用いることが好ましい。また、着色剤の添加量は、上記目的のために一般的に添加される量で良く、B層20の全質量に対して、下限値は0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、上限値は、60質量%以下好ましくは50質量%以下である。一例としては、白系の着色では隠蔽効果の高い酸化チタン顔料をベースとして、色味の調整を無機系および/または有機系の各種有彩色顔料で行うことができる。黒系の着色では、カーボンブラック等の黒色顔料をベースとして、上記酸化チタンなどの白色顔料により明度を適宜調整すると同時に、色味の調整を無機系および/または有機系の各種有彩色顔料で行うことができる。
また、B層20に配合できるPETG樹脂の量には制限があり、従ってPETG樹脂をベースレジンとした顔料マスターバッチの配合量も制約を受けることとなり、その条件下で充分な着色意匠や下地の隠蔽機能を付与するためにも、B層20の厚みとして60μm以上であることが好ましい。
逆に、厚みをこれより厚くしても、必要な機能は飽和すると同時に、後述するように、積層シート全体としての厚みに制約があることから、相対的に他の層を薄くする必要を生じ、これらの層の機能発現不全をもたらす恐れがある。
C層30に求められる機能の一つは、積層シートを金属板にラミネートする際の熱接着性を良好なものとする層であり、この目的の為にC層30の樹脂組成として実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主成分として用いるのであるが、更に本発明においては、製膜ラインのキャスティングロール以降の工程に熱処理ロールを設置してA層10の結晶化を促進する場合に、C層30側を熱処理ロールとの接触面とすることで、より高温の熱処理ロールを用いることができる層であることが必要である。従ってC層は、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体として構成されるが、その樹脂組成物のガラス転移温度が60℃以下であってはならない。
また、共押出し積層されるB層20と強固な界面密着力を得ることができる樹脂組成物より成る層であることが求められる。
更に、押出製膜ラインにおいて、A層10の結晶化を促進する為に、C層30の表面を加熱ロールと接触させる場合も、PETG樹脂を主成分としたC層30を用いた場合よりも、更に加熱ロールの表面温度を高く設定することが可能となり、より効率的にA層の結晶化処理を実施することが可能となる。
該組成範囲では、これら2種の共重合ポリエステル系樹脂は良好な相容性を示し、スピログリコール共重合PET系樹脂の配合量に応じてC層30のガラス転移温度を高めることができる。これよりスピログリコール共重合PET系樹脂の配合量が少ない場合は、1,4−CHDM共重合PET系樹脂との相容性がやや悪くなるようであり、ガラス転移温度を向上させる効果が乏しくなることから、あえてブレンド組成物とする理由が乏しくなる。
また、三菱瓦斯化学社製の「アルテスター20」(ガラス転移温度約98℃、ジオール成分の約20モル%がスピログリコールである共重合PET系樹脂)も同様の目的で用いることができる。
C層30にも、A層10に用いることのできる各種添加剤を適宜な量添加しても良い。
また、C層30に関しては、その表面側に着色意匠と視覚的隠蔽効果の付与を受け持つB層20が存在することから顔料等の着色剤は添加の必要がない。
共押出し法で製膜されるA層10、B層20、およびC層30が積層されたシートの厚みとしては、下限が好ましくは48μm以上、より好ましくは60μm以上であり、上限が好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
厚みがこれより薄い場合は、シートとしての取り扱い性に問題を生じる恐れがあり、また、厚みをこれより厚くしても、必要な機能は飽和すると同時に、積層シートとしての合計厚みに制限があることから他の層の機能発現不全をもたらす恐れがある。
また、A層10とB層20、C層30が積層されたシートの厚みは、エンボス意匠の良好な転写という点からは、エンボスロールの版深さ(最大深さ・Ry値)の1.2倍以上、6倍程度以下であることが好ましく、1.3倍以上で、2倍以下であることがより好ましい。これより厚みが薄いと、版の種類にもよるが「裏シボ」と呼ばれる、エンボスロールを押圧したシート表面とは反対側の表面(本願の場合はB層20の表面)へのエンボス柄の反映による凹凸が発生する虞があり、該「裏シボ」による凹凸が顕著なシートは、加熱された金属板へラミネートする際に裏シボが潰れることにより、A層10表面に付与されたエンボスの意匠感が悪化したり、裏シボ部分に気泡を抱き込んだままラミネートされることで、ブリスター状の膨れを生じることで外観不良を生ずる虞がある。エンボスロールの版深さに対するシート厚みの比が3倍を超えても、それ以上の転写の改善は得られない場合が多い。
本発明のA層10の樹脂組成物は、そのガラス転移温度より低い温度に調整されたキャスティングロールにより熔融状態から冷却固化されたものである為、該ロールを離れた時点では高い結晶性は有していない。しかし、融点が210℃以上であるPBT系樹脂を主成分として構成された層である為、結晶化速度が速く、結晶化温度も低い層であり、押出し製膜ラインのキャスティングロール以降の工程に簡易な結晶化処理工程を組み込むことで、オンラインで容易にエンボス戻りを生じずに結晶化によるエンボス耐熱の確保ができる。該結晶化処理の方法としては、加熱ロール(熱処理ロール)への密着による方法が結晶化収縮に起因する皺の発生等の虞が少ない点から特に好ましい。本発明においては、C層30を構成する樹脂組成物が、A層10の樹脂組成物より相対的にガラス転移温度が高く、且つ、C層30側の表面は比較的平滑な面であるため、C層30側を熱処理ロールへの密着面とすることで、より効率的な結晶化処理を行うことができる。ただし、C層30は、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体として成り、ガラス転移温度が60℃以上である層と規定される為、熱処理ロールの表面温度としては60℃弱程度が上限となる場合もある。しかし、本発明のA層10の樹脂組成物は、この程度の温度でも充分に結晶化が促進され、エンボス戻りを生じずに、エンボスの耐熱性を確保することができる。
積層シート全体(A層10+B層20+C層30)での好ましい厚みの下限値は、48μm以上好ましくは60μm以上、上限値は、300μm以下好ましくは200μm以下の範囲である。積層シートの総厚みが薄すぎる場合は、下地の視覚的隠蔽確保のために、着色意匠の付与を担う層であるB層20に多量の顔料を添加する必要があり、その結果加工性の低下を来すおそれがある。また、総厚みが薄過ぎる場合には、A層10の表面に付与可能なエンボス意匠も凹凸の浅いものに限定され、充分な意匠感を得ることが難かしくなる。一方、積層シートの厚みが厚すぎる場合は、軟質PVC樹脂被覆金属板の折り曲げ加工などの成形加工に従来から用いて来た成形金型の使用が困難になるなど、2次加工性に問題を生じる虞がある。
そして、製膜ラインのキャスティングロール以降にC層30のガラス転移温度よりやや低い程度の表面温度に温調された結晶化ロールを設けておき、C層30側の表面を接触面としてロールと当接することによりA層10の結晶化を促進させ、A層10の表面に付与されたエンボスの耐熱性を確保しておく。
ここでの、着色インキに使用する顔料としては、通常の印刷インキ用に用いられる顔料を用いることができる。該樹脂被覆金属板用意匠シートのエンボス凹部へワイピング印刷を付与すること自体は、軟質PVCシートを用いたエンボス意匠シートの時代から実施されてきたものであり、ドクターブレード法、ロールコート法などの各種公知の方法によって、ワイピングインキ層を付与することができる。
本発明の積層シートのC層30側を接着剤を用いて金属板40にラミネートすることにより、積層シート被覆金属板が得られる。
本発明に用いる金属板40としては、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、スズメッキ鋼板、アルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム・マグネシウム・亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板等の各種鋼板やアルミニウム板、アルミニウム系合金板、アルミニウム合金系クラッド板、チタン系合金板、ハステロイ等ニッケル系合金板、マグネシウム系合金板等が使用でき、これらは通常の化成処理を施した後に使用しても良い。基材金属板の厚さは、積層シート被覆金属板の用途等により異なるが、0.1mm〜10mmの範囲で選ぶことができ、内装建材用途等では通常0.25mm〜1.6mm程度の厚みのものが用いられる。
ラミネート方法についても、従来法によることが、既存設備を利用できる点から好ましい。
即ち、金属板40にリバースコーター、キスコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用して、積層シートを貼り合せる側の金属板40の表面に、乾燥後の接着剤膜厚が1〜10μm程度になるように上記の加熱硬化型接着剤を塗布する。
[A層+B層+C層の一体シートの作成]
実施例1〜35、および比較例1〜19に用いるA層、B層、C層の三層共押出シートは、A層、および、B層の樹脂組成物の押出し用として、シリンダー直径φ65mmの2箇所にベント装置を有する2台の同方向二軸混練押出機(JSW社製の「TEX−65」)を夫々使用し、C層の樹脂組成物の押出し用として、シリンダー直径φ37mmの2箇所にベント装置を有する同方向二軸混練押出機(東芝機械社製の「TEM−37」)を使用し、計3台の押出機によりフィードブロック方式の共押出法によって、Tダイより流出した樹脂をキャスティングロール(引き取りロール)で引き取る一般的方法により得た。押出し機のシリンダー設定温度は、フィード側200℃、口金側250℃で、各押出し機について同様である。Tダイの設定温度は250℃を基準とし、厚み分布等製膜の状況に応じて適宜幅方向の温度設定の微調整を行った。各種接続導管やフィードブロック部の設定温度も250℃である。尚A層として、表1中のa−20、a−21、および、a−23、a−24を用いたシートのみ、原料の融点が高いものを用いる為、Tダイや、フィードブロック部の温度設定を265℃を基準とし、A層側押出し機の口金側温度設定や、接続導管類も265℃としている。
なお、キャスティングロールは、20℃の水を循環させることにより温度調整されており、表面に中心線平均粗さ(Ra)が9μm、最大高さ(Ry)が54μmの石目の柄を基調とした抽象柄の凹凸を付与する為のエンボスが彫刻された直径400mmの表面メッキ処理された金属ロールである。Tダイから流下した積層構成の熔融樹脂は、A層を形成する側をキャスティングロール側となるように押し出され、C層を形成する側には、水を循環させることにより40℃程度の表面温度に調整されたシリコーンゴム製のタッチロールが当接されるようにした。キャスティングロールを離れた時点でのシートの流れ速度(製膜速度)は、30m/分であった。
C層の樹脂組成物のガラス転移温度の測定値に関しても同様に表3に示した。ただし、表3中の「(78)」のような括弧書きの表記は、原料樹脂ペレットに関する測定値をそのまま用いている。
また、B層は、着色剤を含有する層であるが、該着色剤の添加方法としては、市販のPETG樹脂をベースレジンとした、酸化チタン白顔料のマスターバッチを用いている。該顔料マスターバッチは、酸化チタン顔料50質量%+PETG樹脂50質量%から成るものを用いており、表2中の「PETGベース顔料マスターバッチ」の欄は、B層の樹脂成分の全量が100質量部となるようにした場合の顔料マスターバッチの「添加質量部」を示している。また、同欄の括弧内の表記は、B層の樹脂成分全体の合計を100質量%とした場合に、顔料マスターバッチに含まれるPETG樹脂が占める量(質量%)を示す。
(イースターPETG・6763)
イーストマン・ケミカル・カンパニー社製の非結晶性ポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の約30mol.%が1,4−シクロヘキサンジメタノール、約70mol.%がエチレングリコールである。融点は観察されず、ガラス転移温度は78℃である。
イーストマン・ケミカル・カンパニー社製の実質的に非結晶性ポリエステル樹脂として扱うことが可能なポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の約65mol.%が1,4−シクロヘキサンジメタノール、約35mol.%がエチレングリコールである。融点は観察されず、ガラス転移温度は86℃である。
ベルポリエステルプロダクツ社製の実質的に非晶性のポリエステルエラストマーである。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の約26モル%が1,4−シクロヘキサンジメタノール、約68モル%がエチレングリコール、約6モル%が数平均分子量約1000のポリテトラメチレングリコールである。測定されたガラス転移温度は19℃で、融点は観察されなかった。
三菱瓦斯化学社製の非結晶性ポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の44モル%がスピログリコール、約53モル%がエチレングリコール、約3モル%のジエチレンクリコールが含まれている。測定されたガラス転移温度は111℃で、融点は観察されなかった。
三菱エンジニアリングプラスチックス社製の(ホモ)ポリブチレンテレフタレート樹脂である。融点は225℃である。結晶化した状態の原料ペレットでは明確なガラス転移温度が確認できなかった。結晶性が高く、非晶領域の体積が少ない為と思われる。
ウィンテックポリマー社製のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂である。融点は204℃である。
三菱化学社製のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂である。融点は247℃であり、ガラス転移温度は76℃である。各原料のガラス転移温度、または融点は以下の方法により測定している。
パーキンエルマー(株)製の示差走査熱量計「DSC−7」を用いて、試料10mgをJIS K−7121「プラスチックの転移温度測定方法」に準じて、加熱速度を10℃/分で−40℃から250℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温、同温度で1分間保持した後、再度10℃/分で昇温した際のサーモグラムからガラス転移温度(Tg)を求めた。尚、BK−2180のみ、同様の昇温速度で−40℃から270℃迄昇温し、270℃で1分間保持した後、同様に測定している。各原料のペレットをそのまま試料として用いている。
パーキンエルマー(株)製の示差走査熱量計「DSC−7」を用いて、試料10mgをJIS K−7121「プラスチックの転移温度測定方法・融解温度の求め方」に準じて、加熱速度を10℃/分で−40℃から250℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温、同温度で1分間保持した後、再度10℃/分で昇温した際のサーモグラムから融点(Tm)を求めた。尚、BK−2180のみ、同様の昇温速度で−40℃から270℃迄昇温し、270℃で1分間保持した後、同様に測定している。各原料のペレットをそのまま試料として用いている。
軟質PVCから成るシートを金属板にラミネートする際に一般的に用いられている、市販の加熱硬化型ポリエステル系接着剤を、積層シートを貼り合わせる金属面に乾燥後の接着剤膜厚が1μm〜3μmの範囲になるよう塗布した。次いで赤外線ヒーターおよび熱風加熱炉に、該金属板を導入し塗布面の溶剤乾燥、および加熱を行い、金属板の表面温度が235℃となるように保持しつつ、直ちにロールラミネーターを用いて積層シートのD層側表面を接着積層面として被覆した。その後、直ちに水噴射による冷却を行い、エンボス意匠性積層シート被覆金属板を得た。金属板としては、厚み0.45mmの電気亜鉛メッキ鋼板を用いた。
上記の実施例および比較例で得た、積層シートおよびエンボス意匠シート被覆金属板について、以下の各項目を評価した。結果は、表2、表4、表6中に示した。
Tダイよりキャスティングロールに流下させ、冷却固定されたA層+B層+C層の積層樹脂がキャスティングロールより剥離され後工程へと導かれる状態を目視で観察した。シートが全くロールへの粘着なく良好な剥離状態を示す場合を「○」、やや粘着気味であるが問題なく生産が可能である場合を「△」、粘着が著しく安定した生産が困難と判断された場合を「×」とした。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。尚、キャスティングロールへの粘着が著しかったものに関しては、以降の評価を実施していない。
押出製膜ラインのキャスティングロールの後工程に設置した熱処理ロールに、A層+B層+C層の積層シートをC層側表面を接触面として巻き付かせた後、結晶化ロールより剥離され後工程へと導かれる状態を目視で観察した。シートが全くロールへの粘着なく良好な剥離状態を示す場合を「○」、やや粘着気味であるが問題なく生産が可能である場合を「△」、粘着が著しく安定した生産が困難と判断された場合を「×」とした。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。尚、積層シートの熱処理ロールへの粘着が著しかったものに関しては、以降の評価を実施していない。
押出製膜ラインのキャスティングロールの後工程に設置した熱処理ロールに、A層+B層+C層の積層シートをC層側表面を接触面として巻き付かせた後、結晶化ロールより剥離され後工程へと導かれる状態を目視で観察した。シートに結晶化収縮による皺の発生が全く認められない場合を「○」、ややシートの流れ方向に走る皺が発生するが、金属板にラミネートした後の外観としては問題なく使用できる程度である場合を「△」、シートの流れ方向に走る皺の発生が著しく、金属板にラミネートした後も外観不良として残存する程度である場合や、安定したシートの引取りが困難で生産の継続ができないと判断された場合を「×」とした。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。尚、「×」と判定されたものに関しては、以降の評価を実施していない。
A層+B層+C層の積層シートを15cm(TD方向)×30cm(MD方向)に切り出して、定盤の上に置き、反りの程度を観察した。反りが強く完全に円筒状になってしまう場合や、定盤面から10cm以上の高さのアーチ状になる場合を取り扱い性が悪いとして「×」、10cm未満であるが5cm以上の反りが出る場合を「△」、それ未満の反りの場合、取り扱い性は良いとして「○」とした。なお、「TD方向」とは、シートの幅方向(Transverse direction)をいい、MD方向に直交する方向をいう。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。尚、積層シートの反りが著しく、後工程での取り扱いに支障を生じたものに関しては、以降の評価を実施していない。
A層+B層+C層の積層シートのA層側表面に付与されたエンボス凹凸を表面粗さ計(小坂研究所製「サーフコーダ」SE−40D)で測定し、最大高さRy1(μm)を求めた。一方、エンボス版ロール(キャスティングロール)の最大高さをRy0(μm)とし、(エンボス転写率:Ry1/Ry0×100(%))を算出した。
転写率が80%以上である場合を「○」、転写率が80%未満であるが、視覚的には良好なエンボス意匠が付与されている場合を「△」、転写率が80%未満であり、視覚的にもあきらかにエンボスの意匠感が劣っている場合を「×」で示した。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。
JIS K5400 7・2「塗料一般試験方法・隠ぺい率」に準拠して、A層+B層+C層の積層シートを隠ぺい率試験紙の上に載置し、白地上の部分と黒地上の部分の各拡散反射率を測定し、黒地上の反射率(%)/白地上の反射率(%)の比を隠ぺい率として求めた。隠ぺい率が0.99以上である場合を「○」、0.99未満で、0.97以上である場合を「△」、0.97に満たない場合を「×」で示した。
評価結果は、表4中に示した。
尚、この評価は、顔料添加による隠ぺい性に直接的に関与するB層20の樹脂組成、厚みを変更した、実施例17〜22、および、比較例9〜14についてのみ実施した。
A層+B層+C層の積層シートのA層側表面に付与されたエンボス凹凸を表面粗さ計(小坂研究所製「サーフコーダ」SE−40D)で測定しておき、該積層シートを金属板にラミネートした後に再度粗さ測定を実施し、ラミネートする前の最大高さをRy1(μm)、ラミネート後のそれをRy2(μm)としてエンボスの残存率を求めた(残存率:Ry2/Ry1×100(%))。
残存率が80%以上である場合を「○」、残存率が80%未満であるが、視覚的には顕著な異常として認められない場合を「△」、残存率が80%未満であり、視覚的にもあきらかにエンボスの意匠感が低下している場合を「×」で示した。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。
A層+B層+C層の積層シートを金属板にラミネートした積層シート被覆金属板を
100mm×100mmの大きさに切断し、沸騰水中に3時間浸漬した。取り出し乾燥後、A層側表面に付与されたエンボス凹凸を、表面粗さ計(小坂研究所製「サーフコーダ」SE−40D)で測定し、前記評価項目(6)で測定したラミネート後の最大高さRy2(μm)を基にして、沸騰水浸漬後のエンボスの残存率を求めた。(沸騰水浸漬後の最大高さの測定値をRy3(μm)として、残存率:Ry3/Ry2×100(%))。
残存率が80%以上であり、且つ、エンボス戻り以外の沸騰水浸漬に起因する樹脂層の軟化・流動に起因する変形なども認められない場合を「○」、残存率が80%未満であるが、視覚的には顕著な異常として認められない場合、および、残存率が80%以上であるが、沸騰水浸漬に起因する樹脂層の軟化・流動に起因する変形が僅かに認められる場合を「△」、残存率が70%未満であり、視覚的にもあきらかにエンボスの意匠感が低下している場合、および、残存率に関わらず、樹脂層の軟化・流動に起因する変形により著しく意匠性が低下している場合を「×」で示した。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。
A層+B層+C層の積層シートを被覆した金属板に衝撃密着曲げ試験を行い、曲げ加工部の積層シートの面状態を目視で判定し、ほとんど変化がないものを「○」、若干クラックが発生したものを「△」、割れが発生したものを「×」として評価した。なお、衝撃密着曲げ試験は次のようにして行った。積層シート被覆金属板の長さ方向および幅方向からそれぞれ50mm×150mmの試料を作製し、23℃で1時間以上保った後、積層シートが被覆された側が外表面となるようにして、折り曲げ試験機を用いて180°(内曲げ半径2mm)に折り曲げ、その試料に直径75mm、質量5Kgの円柱形の錘を50cmの高さから落下させ、折り曲げ部分を密着させた。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。
A層+B層+C層の積層シートを被覆した金属板から幅方向および長さ方向それぞれ20mm×100mmの試料を作成し、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法−試験片に対する180度引き剥がし粘着力」に準拠した剥離強度測定を測定幅20mmで行い、積層シートと金属板間の接着強度を測定した。十分な接着強度があると判断されたもの(40N/20mm以上)を「○」、相対的に接着強度が劣るが実用上は支障ないと判断されるもの(20N/20mm以上、40N/20mm未満)を「△」、さらに接着強度が低いもの(20N/20mm未満)を「×」とした。尚、この評価は、基材金属との接着力に対し直接的な影響を及ぼすC層30の樹脂組成を変更した、実施例23〜35、および、比較例15〜19についてのみ実施した。評価結果は表6中に記載した。
A層+B層+C層の積層シートを金属板にラミネートした積層シート被覆金属板について、JIS K5600 5.4(1999)「引っかき硬度(鉛筆法)」に従い実施した。23℃の恒温室内で、80mm×60mmに切り出した樹脂被覆金属板の樹脂シート面に対し45°の角度を保ちつつ9.8Nの荷重を掛けた状態で線引きをできる治具を使用して線引きを行い、該部分の樹脂シートの面状態を目視で判定し、Bの鉛筆で全く傷が付かなかったものを「○」、Bでは傷が入るが、2Bの鉛筆では全く傷が付かなかったものを「△」、2Bの鉛筆でも傷が付いたものを「×」として表示した。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。
B層の樹脂組成、顔料添加量、および厚みに関しては、表2中のb−5と同一とし、C層の樹脂組成、および厚みに関しては、表3中のc−7と同一として、A層の樹脂組成、および厚みを変化させたものである。A層の樹脂組成と厚みに関しては、表1に示した。また、評価結果を表2に示した。
A層の樹脂組成、および厚みに関しては、表1中のa−6と同一とし、C層の樹脂組成、および厚みに関しては、表3中のc−10と同一として、B層の樹脂組成、顔料添加量、および厚みを変化させたものである。B層の樹脂組成と顔料添加量、厚みに関しては、表2に示した。また、評価結果を表4に示した。
A層の樹脂組成、および厚みに関しては、表1中のa−7と同一とし、B層の樹脂組成、顔料添加量、および厚みに関しては、表2中のb−6と同一として、C層の樹脂組成、および厚みを変化させたものである。C層の樹脂組成と顔料添加量、厚みに関しては、表5に示した。また、評価結果を表6に示した。
<実施例1〜16、比較例1〜8 (表2記載)>
比較例4、および比較例5は、A層のPBT系樹脂として、本発明の範囲より融点が低いものを用いた場合であるが、キャストエンボス法によるエンボスの転写自体は、良好であったが、金属板へのラミネートの際の加熱によって著しいエンボス戻りを生じ、ラミネート後の意匠感は低下を来たした。A層に用いるPBT系樹脂の融点が低いことそれ自体よりも、結晶化速度が遅いため熱処理ロールを用いることによっても、押出製膜ラインのキャスティングロールにより転写されたエンボス意匠を結晶化により固定することができなかったと考えられる。
これは、A層の結晶性ポリエステル系樹脂として、イソフタル酸共重合PET樹脂を用いた比較例6、および7についても同様であった。
実施例8は、A層の樹脂組成物に占める、ガラス転移温度が70℃以上であるポリエステル系樹脂の比率が少ない場合であり、引取りロールに僅かな粘着の傾向を示したが、押出製膜が困難となるほどではなかった。また、A層とB層とC層の共押出し積層シートには反りも発生しているが、後工程の作業が困難となるほどのものではなかった。PBT樹脂の配合割合が高いことにより、エンボスの転写率自体に問題はなく、ラミネート後のエンボス残存率や沸騰水浸漬後のエンボス残存率については良好な結果が得られている。
比較例9は、B層の樹脂組成物にPBT樹脂が配合されておらず、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂のみから成る場合であるが、沸騰水浸漬試験で著しい外観不良を生じた。これは、着色剤の添加により隠ぺい性を付与する為、比較的厚みのある層とする必要があるB層の樹脂組成物として、ガラス転移温度が78℃であるPETG樹脂のみからなる配合を用いたことにより、沸騰水浸漬時にB層の樹脂組成物の弾性率が低下し、樹脂層の流動変形を生じたこと、および、顔料として添加した酸化チタン粒子と、マトリクスであるPETG樹脂との間に不可避的に存在するボイド(空隙)が、沸騰水浸漬時に温度上昇と樹脂組成物の弾性率低下とにより膨張したことで表面外観が悪化したものと推定される。エンボスの残存率自体には大きな低下は無いように見えるが、表面全体にうねりのような波打ちと、水泡状の荒れが認められた。
比較例12は、B層の樹脂組成物として、本発明の範囲よりPBT系樹脂の配合量が多いものを用いた場合であるが、積層シートを押出し製膜ラインの熱処理ロールと接触させた時点で、著しい収縮皺がシートの流れ方向(MD方向)に発生し、巻取りが困難となった。積層シートの構成として、高い結晶性を有するA層に加えて、B層までもが高い結晶性を備えたことにより著しい結晶化収縮を生じ、皺入りを生じたものと判断される。また、B層の着色顔料として、市販のPETG樹脂をベースレジンとした顔料マスターバッチを用いていることから、PETG樹脂の配合量が限定される比較例12においては、積層シートの隠蔽性についても充分なものとはならなかった。
比較例13は、B層の樹脂組成物のPBT系樹脂量を比較例12よりも更に増やした場合であるが、熱処理ロールでの皺入りは更に著しいものとなり、また積層シートの隠蔽性は完全に不足する結果となった。
比較例14は、B層の樹脂組成に関しては本発明の範囲にあるが、B層の厚みが厚過ぎる場合であり、A層+B層+C層の積層シートの押出し、エンボス転写、結晶化処理や金属板へのラミネートには特に問題は生じず、またエンボス耐熱性も充分であったが、樹脂被覆金属板としての折り曲げ加工性が悪化する結果となっている。
また、実施例21では、B層の厚みが比較的厚いことに起因し、積層シートの総厚みがやや厚いものとなっており、加工性が多少悪くなっている。これに対して、実施例22は、B層の厚みとしては実施例21よりも充分に薄いのであるが、やはり加工性がやや悪い結果となっている。これは、比較的厚みの薄いB層で充分な隠蔽性を確保する為に、酸化チタン顔料を多量添加したことに起因すると考えられる。
参考例1は、C層の厚み薄く、フィードブロック方式の共押出し法ではC層の樹脂組成物がA層+B層+C層の積層シートの端部まで充分に展開しなかったようであり、積層シートの端部において熱処理ロールと若干粘着を生じてしまい、作業性が低下した。
比較例15は、C層の樹脂組成は本発明の範囲にあるが、厚みが過剰である場合であり、
積層シートをラミネートした金属板を沸騰水浸漬試験に供した際、著しい水泡状の表面荒れを生じてしまった。また、C層の樹脂組成物のガラス転移温度が、押出し製膜ラインの熱処理ロールの表面温度に漸近していることから、該ロールとの接触に際し、軽い粘着を生じたが、作業が困難になる程ではなく、また該ロールへの粘着により意匠感が悪化することも無かった。
比較例16は、C層の樹脂組成物のガラス転移温度が本発明よりも低い場合であり、押出し製膜ラインの熱処理ロールに対し著しい粘着を示す結果となり、作業の継続が困難であった。
C層の樹脂組成物のガラス転移温度が、比較例16よりも更に低い比較例17、および比較例18において該粘着は更に著しいものとなった。
また、C層の厚みは実施例27と同一としながら、C層の樹脂組成にPBT系樹脂を配合した実施例29においても、沸騰水浸漬後の外観悪化は軽減されており、更にPBT系
樹脂の配合量を増やした実施例30では同問題は発生していない。ただし、実施例30では、PBT系樹脂の添加によりC層の樹脂組成物のガラス転移温度が低下したことにより、押出し製膜ラインの熱処理ロールにやや粘着気味となっている。
これに対し、C層の樹脂組成として、ガラス転移温度が100℃以上である実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂のみを用いた実施例34においては、比較的厚みのあるC層を用いていながら、沸騰水浸漬試験による外観悪化は生じていない。
50:接着剤層
Claims (12)
- 表面側から順に、以下のA層、B層、およびC層の少なくとも3層を有する積層シートであって、
前記A層が、A層における樹脂成分全体の質量を基準として、融点が210℃以上、230℃以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂を75質量%以上、95質量%以下と、ガラス転移温度が70℃以上であるポリエステル系樹脂を25質量%以下、5質量%以上とから成り、厚み5μm以上、100μm以下の無配向の樹脂層であり、
前記B層が、B層における樹脂成分全体の質量を基準として、融点が210℃以上、230℃以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂を45質量%以上、70質量%以下と、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を55質量%以下、30質量%以上とから成り、着色剤を添加した厚み200μm以下の無配向の樹脂層であり、
前記C層が、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体とするガラス転移温度が60℃以上である樹脂組成物からなる厚み60μm以下の無配向の樹脂層であり、
該A層表面にエンボス転写による柄意匠を備えてなる、樹脂被覆金属板用積層シート。 - A層のガラス転移温度が70℃以上であるポリエステル系樹脂が、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、20モル%以上、80モル%以下の1,4−シクロヘキサンジメタノールと、80モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆金属板用積層シート。
- B層の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂が、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、20モル%以上、80モル%以下の1,4−シクロヘキサンジメタノールと、80モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂被覆金属板用積層シート。
- C層の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂が、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、20モル%以上、80モル%以下の1,4−シクロヘキサンジメタノールと、80モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂被覆金属板用積層シート。
- C層における樹脂成分全体の質量を基準として、前記C層に15質量%以上の融点が210℃以上、230℃以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂が配合されている請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂被覆金属板用積層シート。
- C層の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂が、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、25モル%以上、45モル%以下のスピログリコールと、75モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルであるか、または、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、25モル%以上、45モル%以下のスピログリコールと、75モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステル系樹脂50質量%以上と、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、20モル%以上、80モル%以下の1,4−シクロヘキサンジメタノールと、80モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルのブレンド組成物より成ることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂被覆金属板用積層シート。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂被覆金属板用積層シートおよび金属板を備え、該樹脂被覆金属板用積層シートのC層の表面が金属板に積層されている積層シート被覆金属板。
- 請求項7に記載の積層シート被覆金属板を用いたユニットバス部材。
- 請求項7に記載の積層シート被覆金属板を用いた建築内装材。
- 請求項7に記載の積層シート被覆金属板を用いた鋼製家具部材。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂被覆金属板用積層シートの製造方法であって、A層とB層とC層とを共押出し製膜法により積層すると同時に、キャスティングロールとして柄意匠の凹凸彫刻が施されたエンボスロールを用いることにより、A層表面に柄意匠のエンボスを付与する工程、および、加熱処理によりA層の結晶化を促進することで、A層表面のエンボスに耐熱性を付与する工程を備えてなる樹脂被覆金属板用積層シートの製造方法。
- 請求項11において、キャスティングロールの表面温度をA層の樹脂組成物のガラス転移温度より低い温度に調整しておき、押出し製膜設備のキャスティングロールの後工程に、C層の樹脂組成物のガラス転移温度より低く、且つ、A層の樹脂組成物のガラス転移温度より高い表面温度に調整された熱処理ロールを設け、A層とB層、およびC層とから成る共押出シートのC層側の表面を該熱処理ロール表面に当接することにより、A層の結晶化を促進する表面にエンボス意匠を有する樹脂被覆金属板用積層シートの製造方法。
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