JP2004035693A - 化粧鋼板用ポリエステル樹脂 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコール85〜60モル%とスピログリコール15〜40モル%をグリコール成分とする共重合ポリエステル樹脂からなることを特徴とする化粧鋼板用ポリエステル樹脂。
好ましくは、該共重合ポリエステル樹脂中にエステル結合形成性官能基を3又は4個有する化合物を0.1〜2.0モル%含有する。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧鋼板用ポリエステル樹脂に関し、さらに詳しくは加工性、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性、耐汚染性に優れた化粧鋼板用ポリエステル樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、表面処理された鋼板に樹脂からなるフィルムを直接または接着層を介して貼り合せることにより成形された樹脂被覆化粧鋼板として、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂層を被覆した鋼板が家電品、内外装建材の化粧鋼板として広く用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリ塩化ビニル被覆鋼板は製造時の加熱によって発生する可塑剤、塩素などにより作業環境を悪化させ、また、燃焼処理時に大気汚染の原因となる。また、ポリオレフィン被覆鋼板は比較的環境に優しい素材であるが、耐薬品性および耐汚染性が劣るという欠点を有する。
【0004】
一方、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと記す)に代表されるポリエステルは、優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性を有するために繊維、フィルム、シートとして広く使用されている。しかしながら、ポリエステル樹脂フィルムは未延伸状態の場合、耐熱性および耐衝撃性が劣り化粧鋼板の表面に被覆するフィルムとして不適であるため、化粧鋼板に使用されるポリエステル樹脂フィルムは延伸された状態で使用されているのが現状である。
【0005】
本発明者らは、未延伸状態でも耐熱性に優れ、かつ透明性と耐衝撃性を有する化粧鋼板用ポリエステル樹脂の開発に取り組み、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールとスピログリコールをジオール成分とする共重合ポリエステル樹脂を用いることにより、耐熱性、透明性、耐衝撃性に優れたポリエステル樹脂被覆化粧鋼板が得られることを発見し本発明に到達した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点を解消し、加工性、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性、耐汚染性に優れた化粧鋼板用ポリエステル樹脂を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコール85〜60モル%とスピログリコール15〜40モル%をグリコール成分とする共重合ポリエステル樹脂からなることを特徴とする化粧鋼板用ポリエステル樹脂によって達成される。尚、この化粧鋼板は必要に応じて樹脂表面に任意の凹凸を施してもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とグリコール成分を通常公知の方法により重縮合して得られるものである。
【0009】
本発明で用いられるジカルボン酸成分は主としてテレフタル酸である。テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、ダイマー酸などが挙げられる。これらは単独でも2種以上を使用することもできるが、ジカルボン酸成分全体の10モル%以下であることが好ましい。
【0010】
本発明で用いられるグリコール成分は主としてエチレングリコールとスピログリコールであり、前記成分以外のグリコール成分としては、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリアルキレングリコール、ビスフェノールAまたはビスフェノールSのジエトキシ化合物などが挙げられる。これらは単独でも2種以上を使用することもできるが、ジオール成分全体の10モル%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の共重合ポリエステル樹脂に含まれるスピログリコールは、全グリコール成分に対して15〜40モル%である。スピログリコールの含有量が15モル%に満たない場合は、得られるポリエステル樹脂製成形品の耐熱性が十分ではなく、40モル%を超える場合は、得られるポリエステル樹脂被覆化粧鋼板の耐衝撃性が低下する。
【0012】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、テレフタル酸と、エチレングリコールおよびスピログリコールとを、エステル化反応により水を除去した後、アンチモン金属化合物を触媒として添加し重縮合反応を行うことにより製造する。必要に応じて、ゲルマニウム金属化合物やチタン金属化合物などを触媒として併用しても良い。エステル化反応工程は、ジカルボン酸とグリコールを250〜280℃の温度で、20〜300kPaの圧力において行われる。この際、グリコールは還流され、エステル化反応によって生成した水のみ系外に放出される。
【0013】
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂は、テレフタル酸のエステル形成性誘導体(テレフタル酸ジメチルなど)と、エチレングリコールおよびスピログリコールとを、エステル交換触媒の存在下でエステル交換反応によりメタノールを除去した後、アンチモン金属化合物を触媒として添加し重縮合反応を行うことにより製造することもできる。必要に応じて、ゲルマニウム金属化合物やチタン金属化合物などを触媒として併用しても良い。エステル交換反応工程は、ジカルボン酸とグリコールを230〜250℃の温度で、20〜300kPaの圧力において行われる。この際、グリコールは還流され、エステル交換反応によって生成したメタノールのみ系外に放出される。エステル交換触媒としては、酢酸カルシウム、酢酸コバルト、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、チタンテトラアルコキシドなどの有機酸金属塩が用いられる。
【0014】
本発明のエステル化反応工程またはエステル交換反応工程において、塩基性化合物を少量添加した場合、副反応生成物の少ないポリエステルが得られる。このような塩基性化合物として、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルメチルアミンなどの3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどの4級アミンなどが挙げられる。
【0015】
本発明の重縮合反応工程は、重縮合触媒の存在下、250〜300℃の温度で、13.3〜665Paの減圧下において行われる。重縮合工程では、上記エステル化工程において得られたジカルボン酸とジヒドロキシ化合物との低次縮合物から、未反応のグリコールおよび重縮合触媒を含む留出物を系外に留去させる。
【0016】
本発明で用いられるアンチモン金属化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酒石酸アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物が挙げられる。重縮合触媒は、所定触媒濃度の水溶液またはグリコール溶液として添加される。重縮合触媒の添加量は、得られる共重合ポリエステルに対して金属原子量換算で80〜300ppmの量であることが、重縮合反応速度の点から好ましい。
【0017】
本発明の重縮合工程において、共重合ポリエステル樹脂の熱分解などの副反応を防止するために安定剤を添加しても良い。安定剤としては、トリメチルリン酸、トリエチルリン酸、トリフェニルリン酸などのリン酸エステル、亜リン酸、ポリリン酸などのリン化合物、ヒンダードフェノール系の化合物などが挙げられる。安定剤の添加量は、得られる共重合ポリエステルに対して金属原子量換算で10〜100ppmの量であることが、熱分解防止効果および重縮合反応速度の点から好ましい。
【0018】
本発明の重縮合工程で得られるポリエステルの極限粘度は、0.40〜0.90dl/gの範囲にあることが好ましく、0.60〜0.90dl/gの範囲にあることがより好ましい。
【0019】
本発明のポリエステル樹脂には、加熱処理における樹脂物の熱劣化を防止し、耐衝撃性を維持するために酸化防止剤を添加することが好ましい。有用な酸化防止剤としては、下記式に示したヒンダードフェノール系の有機化合物が特に好ましい。酸化防止剤の添加量は、ポリエステル樹脂に対して0.05〜0.5重量%が好ましい。添加量が0.05重量%未満の場合、樹脂の熱劣化を防止する効果がなく、0.5重量%超える場合、効果は飽和し樹脂被覆層の白濁が著しくなる。酸化防止剤の添加時期は、ポリエステル樹脂被覆化粧鋼板の製造工程におけるいずれの段階でもかまわないが、ポリエステル樹脂中に均一に分散させるためには、共重合ポリエステル樹脂の重合工程において添加することが好ましい。
【0020】
更に本発明のポリエステルには、フィルム成形性向上のために、その製造工程でエステル結合形成性官能基を1分子中に3個又は4個有する多官能性化合物(以下単に多官能性化合物と記す)を含有させることが好ましい。多官能性化合物とは、ポリエステル分子鎖中のカルボキシル基又は水酸基と反応してエステル結合を形成する化合物であり、具体的にはカルボキシル基、水酸基、或いはメチルエステル基、エチルエステル基等のアルキルエステル基を有する化合物である。このような多官能性化合物を含有させることによりポリエステル分子鎖中に架橋構造が形成され、溶融特性が改善され、フィルム成形性や他の押出し成形性が向上する。
【0021】
多官能性化合物として具体的には、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメリット酸及びそれらの酸無水物、ピロメリット酸及びそれらの酸無水物、トリメシン酸等の多官能性のアルコール及び酸等を挙げることができる。
多官能性化合物の含有量はポリマー全量に対して0.1〜2.0モル%であることが必要であり、0.2〜0.5モル%であることが好ましい。かかる多官能性化合物の含有量が0.1モル%より少ない場合はフィルム成形性の改善が充分でなく、2.0モル%を超える場合はゲル化物の発生が起こることがあり、又、架橋が進みすぎてフィルム成形時にフィルムの膜割れが生じるおそれがある。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂を用いる化粧鋼板は、表面処理された鋼板に直接または接着層を介してその上層に透明な本発明のポリエステル樹脂フィルム層を積層してなるエンボス加工された化粧鋼板である。鋼板と接着層の間または接着層の上に着色層を用いても良く、層厚みは本発明のポリエステル樹脂フィルム層で5〜500μmである。
【0023】
本発明のポリエステル樹脂被覆化粧鋼板は、表面処理された鋼板と本発明の共重合ポリエステル樹脂からなるフィルムとをラミネート加工するか、または加熱溶融した共重合ポリエステル樹脂を鋼板上に直接押出しラミネートすることにより製造される。この中では、工程の簡略化が図れることから、鋼板の上に直接フィルム状に押出しラミネートする方法が好ましい。鋼板への被覆は、目的や用途に応じ鋼板の両面を被覆しても、片面のみを被覆しても構わない。
【0024】
【発明の効果】
本発明のポリエステル樹脂を被覆した鋼板は、加工性、耐衝撃性、耐薬品性、耐汚染性に優れ、家電品および内外装建材の化粧鋼板として好適に用いることができる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。各物性の測定及び評価は下記の方法に従った。
【0026】
(1)ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)
共重合ポリエステル樹脂を、示差走査熱量計(パーキン・エルマー社製DSC−7型)により、10℃/分の昇温速度で測定した。
【0027】
(2)極限粘度(IV)
共重合ポリエステル樹脂をフェノール/テトラクロロエタン=60/40(重量比)の混合液に溶かし、20℃にて測定した。
【0028】
(3)フィルム成形性
共重合ポリエステル樹脂を押出し機に供給して溶融し、スリット厚み1mm、幅方向長さ300mmのT型ダイスから押出した後急冷することにより、厚さ300μmの未延伸フィルムを製膜する。得られた未延伸フィルムの幅方向長さ及び耳部の揺れの有無により評価した。
○:幅方向長さ250mm以上、耳部の揺れなし
△:幅方向長さ250mm以上、耳部の揺れあり
×:幅方向長さ250mm未満
【0029】
(4)フィルムの透明性
共重合ポリエステル樹脂を減圧下80℃で24時間乾燥し、水分を100ppm以下にした後、幅40cmのTダイを有する小型押出し機に供給し、厚み100μmのフィルムを製膜した。このフィルムのヘーズをJIS K 7105により測定して評価した。
◎:ヘーズ3%未満
○:3%以上、6%未満
△:6%以上、10%未満
×:10%以上
【0030】
(5)耐衝撃性
上述したフィルムを180℃に加熱した厚さ0.5mmのZnめっき鋼板上に置き冷却ロールとニップゴムロール間を2m/minの速度で通過させ仮ラミネートする。この樹脂被覆鋼板を使用し、30℃、水中で2週間放置した後、デユポン衝撃試験(JIS K 5400)により、500gのおもりを50cmの高さから樹脂を被覆した面と反対の面上に落とし、樹脂被覆面の割れを観察した。
○:目視割れなし
×:目視割れあり
【0031】
(6)耐薬品性(耐汚染性)
上述した樹脂被覆鋼板の樹脂被覆面に油性マーカーを塗布し、24時間放置した後でエタノール20%水溶液により拭き取った。拭き取り後の化粧鋼板に汚れが残るか否かにより評価した。
○:汚れが残らない
△:ある程度汚れが残る
×:汚れが激しい
【0032】
(7)耐熱性
前述した樹脂被覆鋼板を250℃に予熱し、エンボスロール(表面光沢度が60°グロスで0.5を示すもの)間に線圧4.9MPa(50kg/cm2)で3m/minの速度で通したあと水冷することで、表面粗度Ra=4.0〜5.0の樹脂被覆鋼板を得た。このエンボス加工を施した樹脂被覆鋼板を90℃、5日間オーブン中で経時させた場合の表面粗度の経時前からの低下率にて評価した。
低下率(%)=経時後の表面粗度Ra(μm)/経時前の表面粗度Ra(μm)×100
○:70%以上
△:50%以上70%未満
×:50%未満
【0033】
共重合ポリエステルの製造
ステンレス製オートクレーブに所定量のテレフタル酸ジメチルと、エチレングリコールおよびスピログリコールを、グリコール成分が酸成分に対してモル比2.0となるように仕込み、酢酸カルシウムをエステル交換触媒として、230℃、常圧にてエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、三酸化アンチモンを300ppm(対ポリマー重量)と、トリメチルリン酸をリン原子量換算値80ppm(対ポリマー重量)、さらにチバガイギー社製イルガノックス1010を0.2重量%(対ポリマー重量)と必要に応じて無水トリメリット酸0.4モル%(対ポリマー比率)を加え、285℃、133Paの減圧下で重縮合反応を行なった。三酸化アンチモンは2.0重量%のエチレングリコール溶液で、トリメチルリン酸は7.0重量%エチレングリコール溶液として添加した。重縮合反応終了後、ポリマーをガット状に押出しカッティングして共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂の物性評価結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例1〜4、比較例1〜4
フィルムの製造
表1に示した共重合ポリエステル樹脂を減圧80℃で24時間乾燥し、水分を100ppm以下にした後、幅40cmのTダイを有する小型押出し機に供給し、厚み100μmのフィルムを製膜した。押出し機のシリンダー温度は250℃、Tダイの温度は250℃、冷却ロールの温度は40℃にて行った。フィルムの物性評価結果を表2に示す。
【0036】
樹脂被覆鋼板の製造
上述したフィルムを180℃に加熱した厚さ0.5mmのZnめっき鋼板上に置き冷却ロールとニップゴムロール間を2m/minの速度で通過させ仮ラミネートする。更にこの樹脂被覆鋼板を250℃に予熱し、エンボスロール(表面光沢度が60°グロスで0.5を示すもの)間に線圧4.9MPa(50kg/cm2)で3m/minの速度で通したあと水冷することで、表面粗度Ra=4.0〜5.0の樹脂被覆鋼板を得た(実施例1〜3、比較例1〜2)。
得られた樹脂被覆鋼板の耐衝撃性、耐汚染性、耐熱性を評価し、結果を表2に示した。
【0037】
【表2】
【0038】
比較例5、6
本発明の共重合ポリエステル樹脂の代わりに高密度ポリエチレン樹脂(比較例3)、ポリプロピレン樹脂(比較例4)を使用する以外は、実施例と同様の実験、評価を行った。フィルムの物性を表2に、化粧鋼板の評価結果を表3に示す。
【0039】
表3の結果から、本発明の樹脂組成物は化粧鋼板用として適した性能を示すことが分かる。
Claims (2)
- テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコール85〜60モル%とスピログリコール15〜40モル%をグリコール成分とする共重合ポリエステル樹脂からなることを特徴とする化粧鋼板用ポリエステル樹脂。
- テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコール80〜60モル%とスピログリコール20〜40モル%をグリコール成分とする共重合ポリエステル樹脂であって、該共重合ポリエステル樹脂中にエステル結合形成性官能基を3又は4個有する化合物を0.1〜2.0モル%含有する共重合ポリエステル樹脂からなることを特徴とする化粧鋼板用ポリエステル樹脂。
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2002
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