JP2008279686A - 積層シ−ト、エンボス意匠シートおよびエンボス意匠シート被覆金属板 - Google Patents

積層シ−ト、エンボス意匠シートおよびエンボス意匠シート被覆金属板 Download PDF

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Abstract

【課題】エンボスを付与する際にシートの幅縮み、皺入り、破断等が生じず、エンボス加工装置での作業性と金属板への接着性とのバランスが良好な積層シートおよび建築内装材等を提供する。
【解決手段】A10、B20およびC30の少なくとも3層からなる積層シート100A、100Bにおいて、A層を実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなる厚み45μm以上の樹脂層とし、B層を所定のPBT系樹脂および/またはPTT系樹脂を合計量として75質量%以上100質量%以下含有し、厚み15μm以上200μm以下の樹脂層とし、C層を実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂、または、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と芳香族ポリカーボネート系樹脂との所定割合のブレンド組成物を主体としてなり、120℃に加熱された金属表面に対し非粘着性を有する、厚み5μm以上の樹脂層とし、総厚みを65μm以上300μm以下とする。
【選択図】図1

Description

本発明はユニットバス部材や、AV機器、エアコンカバー等の家庭電化製品外装や合板製家具、鋼製家具、建築物内装等のエンボス意匠を有する被覆材用途に好適に用いることができる、エンボス付与適性に優れた積層シートおよび、それにエンボス付与を施したエンボス意匠シート、さらには、このエンボス意匠シートにより被覆されたエンボス意匠シート被覆金属板に関する。
従来、上記用途にはエンボス意匠を付与した軟質塩化ビニル系樹脂シート(以下、「軟質PVCシ−ト」という。)で合成樹脂成形品や合板、木質繊維板、金属板等を被覆したものが用いられてきた。軟質PVCシ−トの特徴としては、
(1)エンボス付与適性に優れることから、意匠性に富んだ被覆材を得ることができる。
(2)一般的に背反要素である加工性と表面の傷入り性のバランスが比較的良好である。
(3)各種添加剤との相容性に優れること、および長年にわたり添加剤による物性向上検討が行われて来たことから、耐久性に優れた樹脂皮膜を得ることが容易である。
等の点を挙げることができる。
この軟質PVCの長尺シ−トに連続的にエンボスを付与する方法としては、製膜後のシートを再加熱により軟化させ、エンボス柄を彫刻したロール(エンボス版ロール)で抑えて柄を連続的に転写させる方法が一般的に用いられている。シートを加熱する方法として、加熱した金属ロールに接触させて加熱するような接触型や、赤外ヒーターや、熱風ヒーターなどによってロール等に接触させることなく加熱する非接触型等が考えられる。実際の製造ラインでは、どちらか一方だけが用いられる場合もあるが、一般的には双方が併用されることが多い。また、これら一連の工程を有する設備をエンボス加工装置等と称する。
このエンボス加工装置においては、エンボス版ロールの交換脱着を容易に行える設計が盛り込まれているのが一般的であり、エンボス版ロールの直径は押出し製膜設備のキャスティングロール等と比較して小さく、多種のエンボス版ロールを用意しておくことでエンボス柄の変更を容易かつ経済的に行うことができることから、小ロット対応に適したエンボス付与の方法といえる。
また、エンボス意匠と同時に印刷意匠を有する軟質PVCシートについては、着色された軟質PVCシートの表面に印刷を施した後、透明な軟質PVCシートを積層一体化し、この積層シートをエンボス加工装置へ連続的に通すことで得られていた。この場合、エンボス付与機でのシート予熱を利用して、2層のシートを熱融着で積層一体化すること等が行われており、積層のための特別な工程を必要としないことから生産性が良く、コスト面でも優れたものであった。
このように、優れた特徴を有する軟質PVCシ−トであるが、近年VOC問題や内分泌撹乱作用の問題、燃焼時に塩化水素ガスその他の塩素含有ガスを発生する問題等から、塩化ビニル系樹脂の使用は、制限を受けるようになってきた。
そこで、軟質PVCシートに替えて、加工性と表面傷付き性に優れたポリエステル系樹脂よりなるシートをエンボス意匠を有する樹脂被覆金属板の用途に用いることが検討された。このようなシートとして、特許文献1には非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材フィルム層と、透明な非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする保護フィルム層を積層した化粧シートが提案されている。
また、特許文献2では、実質的に非晶性あるいは低結晶性である樹脂組成物又は前記実質的に非晶性あるいは低結晶性である樹脂組成物を多く含むエンボス付与可能層(A層)と、実質的に結晶性である樹脂組成物もしくは前記実質的に結晶性である樹脂組成物を多く含む基材層(B層)とで構成される2層構造のシートとすることで、現行のPVC用のエンボス加工装置を用いてもシート溶断、加熱ロールへの貼り付きや巻き付きの不具合が生じずに、現行のPVC用のエンボス加工装置を用いることができることが提案されている。
特許文献3には、特許文献2においてはエンボス加工装置でのシート溶断の防止、加熱ロールへの貼り付きの防止、金属板へのラミネート適性の付与を1つの層が受け持っていたのを、2つの層へ機能分化することにより、これら機能の発現をより良好なものとし、より良好なエンボス加工装置によるエンボス付与適性を有し、より低温での金属板へのラミネートが可能な積層シートが提案されている。
特開2000−233480号公報 WO03045690号公報 特開2006−095892号公報
しかし、特許文献1における組成ではエンボス加工装置でシートが加熱された際の張力が充分なものとはならないため、シートの幅縮み、皺入り、破断等を生ずる虞があり安定してエンボス意匠を有するシートを生産することはむずかしい。
また、特許文献2においては、結晶性ポリエステルを主体とする層の結晶性が比較的高い場合は、エンボス加工装置での作業安定性は良好なものの、エンボス付与後の積層シートを金属板にラミネートする際、金属板を比較的高温に加熱しておかないと十分な接着力が得られない虞があった。しかし、金属板を高温に加熱した場合は、金属板裏面に施された塗装処理が熱変色を生ずる懸念があった。逆に、金属板とのラミネートの際の上記問題点を解決するため、結晶性ポリエステル樹脂を主体とする層の結晶性を比較的低下させた場合は、エンボス加工装置での作業性に問題が出る可能性があり、両者をバランスさせ得る範囲は制約を受けるものであった。
特許文献3は、特許文献2の問題を解決するために提案されたものであるが、エンボス加工装置での加熱ロールへの貼り付きの防止、および、金属板へのラミネート適性を分担する層である最下層が、結晶化した状態でエンボス加工装置に投入されないと、加熱ロールへの貼り付きを生ずる虞があった。これは、該層の樹脂組成の55質量%以上を占める結晶性ポリエステル樹脂であるポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂のガラス転移温度が40℃程度であることから、該層のブレンド組成物のガラス転移温度も、エンボス加工装置の加熱ロールの温度である100℃〜110℃に比べて低いものとなってしまうためである。
最下層が結晶化した状態でエンボス加工装置に投入された場合は、加熱ロールへの貼り付きを防ぐことができるのであるが、該層は金属板へのラミネート適性も有している必要があることから、PBT系樹脂の含有量に制約を受け、その結果、該層の結晶化速度は比較的遅いものとなり、積層シートの押出し製膜速度、製膜設備のキャスティングロールの直径、後加熱ロールの有無等の押出し設備条件によっては、十分な結晶性が得られない虞があった。
そこで、本発明は、エンボスを付与する際にシートの幅縮み、皺入り、破断等が生じず、エンボス加工装置での作業性と金属板への接着性とのバランスがよく、上記の問題を解決することができる積層シート、エンボス意匠シート、エンボス意匠シート被覆金属板および建築内装材等を提供することを課題とする。
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、これにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
第1の本発明は、A層(10)、B層(20)およびC層(30)の少なくとも3層を表層からこの順序で備えて構成される積層シートであって、A層(10)が、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を樹脂成分の主体としてなる厚み45μm以上の無配向の樹脂層であり、B層(20)が、B層(20)における樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、融点(Tm)が210℃以上230℃以下のポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂、および/または、融点(Tm)が210℃以上230℃以下のポリトリメチレンテレフタレート(PTT)系樹脂をその合計量として75質量%以上100質量%以下含有してなる、厚み15μm以上200μm以下の無配向の樹脂層であり、C層(30)が、C層(30)における樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂10質量%以上100質量%未満と芳香族ポリカーボネート系樹脂0質量%を超え90質量%以下のブレンド組成物を主体としてなり、120℃に加熱された金属表面に対し非粘着性を有する、厚み5μm以上の無配向の樹脂層であり、総厚みが65μm以上300μm以下の積層シート(100)である。ここで、符号100は、図中の100A、100Bを含む上位概念として用いている。また、積層シート(100)における「表層」とは、金属板に被覆させた場合に、該金属板とは反対側に位置する層をいう。
第1の本発明において、A層(10)は、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を樹脂成分の主体としてなる層であるので、エンボス柄の転写性が優れている。ここでの「主体」とは、A層(10)の樹脂成分全体を基準(100質量%)として、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上含有することである。また、A層(10)は45μm以上の厚さ有しているので、深いエンボス等の種々の種類のエンボスを付与できるとともに、着色顔料を添加することにより、下層の隠蔽効果が高くなる。B層(20)は、所定のPBT系樹脂および/またはPTT系樹脂を所定量含有している所定の厚みの層であるので、エンボス加工装置で積層シート100が加熱された際に積層シートに十分なシート張力を付与でき、これにより積層シートの幅縮み、皺入り、破断等を防ぐことができる。
C層(30)は、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と芳香族ポリカーボネート系樹脂とのブレンド組成物を主体としてなる層であり、120℃に加熱された金属面に対し非粘着性を有する層であるので、エンボス加工装置の加熱金属ロールに対して非粘着性を示すと同時に、B層(20)を直接金属板にラミネートする場合よりも金属板の温度を低温にしても十分な接着強度を得ることが可能な層である。また、C層(30)は、結晶性により非粘着性を発揮するものではないので、製膜条件の自由度が高い。ここでの「主体」とは、C層(30)を構成する樹脂成分全体を基準(100質量%)として、ブレンド組成物を、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有することをいう。
また、A層(10)、B層(20)、C層(30)はそれぞれ無配向の樹脂層であるので、エンボス加工装置で積層シートを加熱した際や、金属板とラミネートする際において、積層シートが加熱された際に、著しい収縮を生じてエンボスの付与やラミネートが困難となる事態を防ぐことができる。また、積層シート100の層厚みが65μm以上300μm以下であることにより、各層の機能を良好に発現できるとともに、PVCシート被覆金属板の折り曲げ加工等に使用してきた成型金型を積層シートで被覆した金属板に使用することができる。
また、C層(30)における実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸を主体とするものであり、ジオール成分が50モル%以上75モル%以下の1.4−シクロヘキサンジメタノール(1.4−CHDM)、および、残りの25モル%以上50モル%以下のエチレングリコールを主体とするその他のジオール成分よりなる共重合ポリエステルであることが好ましい。ここで、ジカルボン酸成分における「主体」とは、ジカルボン酸成分全体を基準(100モル%)として、テレフタル酸またはジメチルテレフタル酸を、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上含有することをいう。また、ジオール成分における「主体」とは、その他のジオール成分全体を基準(100モル%)として、エチレングリコールを、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含有することをいう。
C層(30)の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂として、上記組成のものを用いた場合、芳香族ポリカーボネート系樹脂との相容性が優れることから、製膜方法に関わらず、単一のガラス転移温度を示すブレンド組成物を得ることができる。そして、製膜条件を安定化させ、製膜条件の自由度が高くなる。また、本発明のC層(30)に必要な貯蔵弾性率を確保することが容易となる。さらに、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂として商業的に入手しやすいものであることから、原料供給の安定性とコストのメリットを得ることができる。
第1の本発明において、C層(30)を、ガラス転移温度が120℃を超え150℃以下にある実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなり、120℃に加熱された金属表面に対し非粘着性を有する、厚み5μm以上の無配向の樹脂層としてもよい。この場合においても、第1の本発明の効果が得られる。
第1の本発明において、C層(30)の動的粘弾性引張り法による、10Hzでの120℃における貯蔵弾性率(E’)は、1×10Pa以上6×10Pa以下であることが好ましい。これは、「120℃に加熱された金属表面に対し非粘着性を有する」という性質を貯蔵弾性率というパラメーターで表現したものである。ここで、「120℃」で規定するのは、従来の軟質PVCシートにエンボス加工装置でエンボス柄を転写する場合にシートが加熱金属ロールによって加熱される温度が100℃〜120℃程度であることによる。
なお、C層(30)がA層(10)やB層(20)との共押出し積層で一体化された状態で製膜されたものである場合は、そのままではC層(30)単独での引張り法による貯蔵弾性率を測定することができない。よって、製膜時に同時にC層(30)の樹脂組成物単層よりなる貯蔵弾性率測定用シートを作製しておいたり、NMR等を用いたC層(30)樹脂組成の分析結果に基づいて、同一組成よりなる単層の測定用樹脂シートを作製したりすることにより、該貯蔵弾性率を測定する。
また、特許文献3においては、最下層の結晶性により加熱金属ロールへの粘着防止を図っているが、本発明ではC層(30)として実質的に非晶性である樹脂組成物を主体として用い、その120℃での貯蔵弾性率を所定の値に規定することで粘着防止を図っている。
第1の本発明において、A層(10)の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸を主体とするものであり、ジオール成分が20モル%以上80モル%以下の1.4−シクロヘキサンジメタノール(1.4−CHDM)、および、20モル%以上80モル%以下のエチレングリコールを主体とするその他ジオール成分よりなる共重合ポリエステルであることが好ましい。ここで、ジカルボン酸成分およびジオール成分の「主体」は、上記したC層(30)の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂におけるそれぞれの主体と同様である。A層(10)の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂として商業的に入手しやすい材料を用いることで原料供給の安定性とコストのメリットを得ることができる。
第1の本発明において、A層(10)における樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、A層(10)に20質量%以上40質量%以下の融点(Tm)が210℃以上230℃以下のポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂、および/または、融点が210℃以上230℃以下のポリトリメチレンテレフタレート(PTT)系樹脂が配合されていることが好ましい。これにより、沸騰水浸漬試験等の高温の水と接触した場合のエンボスの残存性をより良好なものとすることができる。
第1の本発明において、積層シート(100)のA層(10)、B層(20)、およびC層(30)は共押出し製膜法によるダイ内積層で一体化されたシートとして製造されることが好ましい。共押出し製膜法で一体化した状態で積層シートを得ることで、後工程に加熱・冷却設備等を必要とする熱融着積層工程、あるいは、接着剤の塗布・乾燥等を必要とする接着積層工程を設ける必要がない。よって、生産性の点で好ましい。
第2の本発明は、第1の本発明の積層シート(100)を加熱した後、エンボス版ロールとバックロールで構成される一対のロール間で押圧することにより、A層(10)側表面に形成されたエンボス模様を有する、エンボス意匠シートである。第1の本発明の積層シートを用いることにより、エンボスの耐熱性に優れ、金属板等へのラミネート適性を有するエンボス意匠シートとすることができる。
第3の本発明は、上記のエンボス意匠シートのC層(30)側の表面が、接着剤(60)を用いて金属板(70)の上にラミネートされている、エンボス意匠シート被覆金属板(200)である。これにより、エンボス耐熱性が良好で、折り曲げ等の二次加工性に優れ、表面の耐傷入り性に優れた、エンボス意匠シート被覆金属板(200)を得ることができる。
第4の本発明は、上記のエンボス意匠シート被覆金属板(200)を用いた、ユニットバス壁材、ユニットバス天井材等のユニットバス部材である。
第5の本発明は、上記のエンボス意匠シート被覆金属板(200)を用いた、クロゼットドア材、パーティション材等の建築内装材である。
第6の本発明は、上記のエンボス意匠シート被覆金属板(200)を用いた、鋼製家具部材である。
第7の本発明は、上記のエンボス意匠シート被覆金属板(200)を用いた、家電製品筐体部材である。
第1の本発明において、A層(10)は、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を樹脂成分の主体としてなる層であるので、エンボス柄の転写性が優れている。また、A層(10)は45μm以上の厚さ有しているので、深いエンボス等の種々の種類のエンボスを付与できるとともに、着色顔料を添加することにより、下層の隠蔽効果が高くなる。B層(20)は、所定のPBT系樹脂および/またはPTT系樹脂を所定量含有している所定の厚みの層であるので、エンボス加工装置で積層シート100が加熱された際に積層シートに十分なシート張力を付与でき、これにより積層シートの幅縮み、皺入り、破断等を防ぐことができる。C層(30)は、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と芳香族ポリカーボネート系樹脂とのブレンド組成物を主体としてなる層であり、120℃に加熱された金属面に対し非粘着性を有する層であるので、エンボス加工装置の加熱金属ロールに対して非粘着性を示すと同時に、B層(20)を直接金属板にラミネートする場合よりも金属板の温度を低温にしても十分な接着強度を得ることが可能な層である。また、C層(30)は、結晶性により非粘着性を発揮するものではないので、製膜条件の自由度が高い。また、A層(10)、B層(20)、C層(30)はそれぞれ無配向の樹脂層であるので、エンボス加工装置で積層シートを加熱した際や、金属板とラミネートする際において、積層シートが加熱された際に、著しい収縮を生じてエンボスの付与やラミネートが困難となる事態を防ぐことができる。また、積層シート100の層厚みが65μm以上300μm以下であることにより、各層の機能を良好に発現できるとともに、PVCシート被覆金属板の折り曲げ加工等に使用してきた成型金型を積層シートで被覆した金属板に使用することができる。
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
なお、本発明の積層シートは、厚みが65μm以上300μm以下の範囲をとることから、「フィルムおよびシート」と記すのがより正しいが、ここでは一般的には「フィルム」と呼称する範囲に関しても便宜上「シート」という単一呼称を用いた。
また、「無配向」という表現は、積層シートに何らかの性能を付与するために意図して延伸操作等の配向処理を行ったものではないことであり、押出し製膜時にキャスティングロールによる引き取りで発生する配向等まで存在していないという意味ではない。
<積層シート100>
図1(a)および(b)に本発明の積層シート100の層構成の概念図を示した。図1(a)は、基本構成の積層シート100Aであり、A層10、B層20およびC層30を備えて構成されている。図1(b)は、さらに印刷柄40および透明な表面保護層50が形成されている。以下、各層についてそれぞれ説明する。
(A層10)
A層10は、積層シート100をエンボス付与機に通した際、加熱軟化されてエンボス版ロールにより押圧されエンボス柄が転写される層である。従って、A層10は160℃〜190℃に加熱されエンボス版ロールで押圧される時点で高い結晶性を有していてはならないことから、本発明においては、実質的に非結晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなるものとしている。ここで、「実質的に非結晶性」とは、低結晶性をも含む意味である。また、「主体としてなる」とは、A層10の樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上含有することをいう。
A層10は、エンボス加工装置で、そのガラス転移温度(Tg)以上に加熱された後、エンボスロールとバックロールとの間で押圧されることでエンボス付与される。加熱時にA層10の弾性率はエンボス付与が可能な程度に充分に低下している必要がある。ここで、エンボス付与されるシートが、結晶性の低いA層10単層よりなる場合は、Tg以上に加熱されたことにより、加熱金属ロールへの粘着を生じたり、幅縮みや、皺入り、シート破断を生じたりしてしまう。本発明の積層シートにおいては、以下において説明するB層20およびC層30が存在することにより、これらの問題を解決している。
A層10を形成する実質的に非結晶性であるポリエステル系樹脂としては、示差走査熱量計(DSC)により、昇温時に明確な結晶融解ピークを示さないポリエステル樹脂、および、結晶性を有するものの結晶化速度が遅く、押出し法、カレンダー法等の製膜工程、保管中、およびエンボス加工装置でエンボス柄が転写されるまでの加熱工程において結晶性が高い状態とならないポリエステル樹脂を使用することができる。
A層10の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸を主体とするものであり、ジオール成分が20モル%以上80モル%以下の1.4−シクロヘキサンジメタノール(1.4−CHDM)、および、残りの20モル%以上80モル%以下のエチレングリコールを主体とするその他ジオール成分よりなる共重合ポリエステルであることが好ましい。ここで、ジカルボン酸成分における「主体」とは、ジカルボン酸成分全体を基準(100モル%)として、テレフタル酸またはジメチルフタル酸を、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上含むことをいう。また、ジオール成分における「主体」とは、その他ジオール成分の全体量を基準(100モル%)として、エチレングリコールを好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含むことをいう。
ジオール成分における1.4−シクロヘキサンジメタノールの量が少なすぎると、結晶性樹脂としての特徴が顕著になり、エンボス加工装置での加熱時に結晶化が進行してエンボス付与が困難になる虞がある。逆に、1.4−シクロヘキサンジメタノールの量が多すぎる場合も結晶性樹脂としての特徴が顕著になり、さらに非常に高い融点を示すようになる。
実質的に非結晶性であるポリエステル系樹脂で上記の樹脂組成範囲にあるものの一例としては、原料の安定供給性や生産量が多く低コスト化が図られているいわゆるPET−G樹脂を挙げることができる。PET−G樹脂としては、例えば、イーストマン・ケミカル・カンパニー社の「イースターPET−G・6763」が挙げられる。「イースターPET−G・6763」は、ポリエチレンテレフタレート樹脂のジオール成分の約30モル%を1.4−シクロヘキサンジメタノールで置換した構造を有するもので、DSC測定で結晶化挙動が認められない実質的に非結晶性であるポリエステル樹脂である。
ただし、これに限定されるものではなく、特定の条件では結晶性を示すが本発明の用法においては非結晶性樹脂として取り扱うことが可能なイーストマン・ケミカル・カンパニー社の「PCTG・5445」や、同じくイーストマン・ケミカル・カンパニー社の「イースターPCTG・24635」等も用いることができる。また、これら以外に、ネオペンチルグリコール共重合PETで結晶性を示さないものや、結晶性の低いもの、イソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂で結晶性の低いものなど、共重合成分の導入により結晶化を阻害した構造のものも、A層10の主体となる非晶性であるポリエステル系樹脂として用いることができる。
A層10における樹脂成分全体の質量(100質量%)を基準として、A層10には、20質量%以上40質量%以下の融点(Tm)が210℃以上230℃以下のポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂、および/または、融点(Tm)が210℃以上230℃以下のポリトリメチレンテレフタレート(PTT)系樹脂が配合されていることが好ましく、さらにその配合割合が20質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。これにより、沸騰水浸漬試験時等の高温の水と接触した場合のエンボスの残存性をより良好にすることができ、特にそれらに対する要求が厳しい場合等に好適に用いることができる。また、耐溶剤性や印刷適性をも改善することもできる。
PBT系樹脂、PTT系樹脂としては、後述するB層20の主体となるものを用いることができ、中でも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸、ジオール成分として1.4−ブタンジオールの各単一成分を用いた、いわゆるホモPBT樹脂(意図せざる共重合成分が入っていてもよい)、および/または、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸、ジオール成分として1.3−プロパンジオールの各単一成分を用いた、いわゆるホモPTT樹脂(意図せざる共重合成分が入っていてもよい)を用いることが、コストや入手の容易さの点から好ましい。
配合するPBT系樹脂および/またはPTT系樹脂の量が多すぎると、A層10の結晶性が顕著になりエンボスの付与が困難になる。また、配合するPBT系樹脂および/またはPTT系樹脂の量が少なすぎると、実質的に非晶性のポリエステル系樹脂のみからなる場合と沸騰水浸漬試験後のエンボスの残存性に大差がなくなり、あえてブレンドする理由がなくなる。
A層10は、エンボス柄が転写される層であり、45μm以上の厚みを有する層であることから、着色顔料を添加する主要な層とすることが好ましい。使用される顔料は、ポリエステル系樹脂の着色用に一般的に用いられているもので良く、その添加量に関しても上記目的のために一般的に添加される量で良い。一例としては、淡色の場合では、白系の着色顔料であり、可視光線の隠蔽効果の高い酸化チタン顔料をベースとして、色味の調整を有彩色の無機、有機の顔料で施す等の方法を挙げることができる。前述のPET−G樹脂をベースとしたカラーマスターバッチなどの、予備混練を施すことで分散性を向上させた顔料練り込みペレット類が豊富に市販されており、これらを利用することもできる。
着色顔料を添加する目的としては、色味の意匠を付与することの他に、下地の視覚的隠蔽効果を付与することがある。視覚的隠蔽効果は、用途によって重要度が異なってくるが、内装建材用途のエンボス意匠シート被覆金属板等においては、JIS K5600 4−1「塗料一般試験方法・隠蔽率」に準拠して測定した隠蔽率が積層シートの構成で0.95以上であることが好ましい。
隠蔽率がこれより低いと金属板等、下地となる基材の色味が、積層シートの色味に反映されて、金属板表面の処理の違い等により下地の色味が変化した際、積層シートの表面から観察される樹脂シート被覆金属板の色味も変化して見えるため好ましくない。ただし、この理由による色味の変化が特に問題とならない用途においては、隠蔽率は0.95以上にこだわらなくてもよい。
また、A層10には、その性質を損なわない範囲において、あるいは本発明の目的以外の物性をさらに向上させるために、各種添加剤を適宜な量添加しても良い。添加剤としては、燐系・フェノール系他の各種酸化防止剤、熱安定剤、プロセス安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、艶消し剤、衝撃改良剤、加工助剤、金属不活化剤、残留重合触媒不活化剤、造核剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、充填材等の広汎な樹脂材料に一般的に用いられているものや、カルボジイミド系やエポキシ系他の末端カルボン酸封止剤、あるいは加水分解防止剤等のポリエステル樹脂用として市販されているものを挙げることができる。
A層10の厚みは、下限が好ましくは45μm以上、より好ましくは50μm以上である。また、上限は好ましくは250μm以下であり、より好ましくは150μm以下である。厚みが薄すぎると、付与可能なエンボス柄の種類が大幅に制約を受ける。逆に、厚みが厚すぎると、積層シート100の総厚みの上限が決まっていることから、他の層の厚みを薄くする必要が生じ、B層20、またはC層30が受け持つべき機能の発現不全をもたらす虞がある。
(B層20)
B層20は、積層シート100をエンボス加工装置に通し、従来の軟質PVCと同様の温度まで加熱された際に、積層シート100に幅縮み、皺入り、破断等が生じるのを防ぐために設けられる。
B層20は、B層20における樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、融点が210以上230℃以下のPBT系樹脂、および/または、融点が210℃以上230℃以下のPTT系樹脂を、75質量%以上100質量%以下含有している。PBT系樹脂およびPTT系樹脂の融点が210℃以上必要なのは、従来の軟質PVCシートにエンボス付与機でエンボス柄を転写する場合にシートが支持体無しでヒーターによって加熱される温度が160℃〜190℃程度であることから、この温度で十分な張力を得るためである。また融点の上限を230℃としたのは、市販原料として得られるPBT系樹脂、PTT系樹脂の中で最も融点の高いホモPBT、ホモPTTで、融点が225℃前後であることによる。
結晶化による張力保持という観点のみに着目すれば、B層20はホモポリエチレンテレフタレート(ホモPET)樹脂等でも良いことになるが、上記融点範囲にあるPBT系樹脂およびPTT系樹脂は比較的結晶化速度が速いため、75質量%以上のPBT系樹脂および/またはPTT系樹脂を含む組成では、特別な工夫を要さずに結晶化した状態で製膜することが可能であり、B層20を所定の厚みとすることで、本発明の積層シート100としての好ましい貯蔵弾性率を得ることが容易であるため、本発明のB層20は上記のような組成としたのである。この中でも、PTT系樹脂に比べて、ガラス転移温度の低いPBT系樹脂のほうが、結晶化したB層20を容易に得ることができるので、特に好ましく用いることができる。
PBT系樹脂、PTT系樹脂を用いる他の理由としては、結晶化した状態でもPET系樹脂に比べて良好な加工性が得られること、および、PBT系樹脂に関しては、近年、押出し製膜グレードなどの用途展開が活発になり、各種グレードのPBT系樹脂原料を入手しやすくなったことが挙げられる。
B層20は、B層20における樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、上記のPBT系樹脂および/またはPTT系樹脂を75質量%以上100質量%以下の割合で含有している。この割合が小さすぎる場合は、結晶化した状態でシートを得ても、好ましい貯蔵弾性率を得るにはかなりのB層20の厚みを要することとなり、シートの総厚みに制限があることから、他の層の厚みの自由度が制約され好ましくない。また、あえてC層30を付与した目的が希薄となる。また、この割合が100質量%と高い場合には、積層シート100の反りが顕著になり取り扱い性が悪化する場合がある。よって、PBT系樹脂および/またはPTT系樹脂は、80質量%以上95質量%以下の範囲で含有されていることがさらに好ましい。
融点が210℃以上230℃以下の範囲のPBT系樹脂としては、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸、ジオール成分として1.4−ブタンジオールの各単一成分を用いた、いわゆるホモPBT樹脂(意図せざる共重合成分が入っていてもよい。)を用いることが好ましい。このホモPBT樹脂は、融点が約225℃となり、コストや安定供給性の点から有利である。また、ホモPBT樹脂以外にも、酸成分の一部をイソフタル酸等のジカルボン酸で置換したもので融点が210℃を下回らないもの、ポリトリメチレングリコール(PTMG)を共重合したもの等を用いることができる。また、押出し製膜法によりシートを作製する場合は、原料の固有粘度が1.0〜1.4程度のPBT樹脂を使用するのが一般的である。
同様に、融点が210℃以上230℃以下の範囲のPTT系樹脂としては、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸、ジオール成分として1.3−プロパンジオールの各単一成分を用いた、いわゆるホモPTT樹脂(意図せざる共重合成分が入っていてもよい。)を用いることが好ましい。このホモPTT樹脂も、融点が約225℃程度のものである。また、ホモPTT樹脂以外にも、酸成分の一部をイソフタル酸等のジカルボン酸で置換したもので融点が210℃を下回らないもの、ポリトリメチレングリコール(PTMG)を共重合したもの等も用いることができる。
B層20のPBT系樹脂および/またはPTT系樹脂以外の樹脂成分としては、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂としては、前述のA層10の主体として用いる実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と同一のものを用いることができる。これは、B層20におけるPBT系樹脂および/またはPTT系樹脂以外の樹脂成分として、ホモPET等の結晶性の高い樹脂を用いた場合は、経時的にPET系樹脂の結晶化が進行し、PET系樹脂の結晶相の加工性がPBT系樹脂あるいはPTT系樹脂の結晶相の加工性より劣ることから、B層20の加工性が劣り、結果的に積層シート100およびそれにより被服した金属板の加工性が低下する虞があるためである。
積層シート100に加熱時の張力を付与する層であるB層20の好ましい厚みは、上記組成範囲のB層20を用いて、積層シート100の動的粘弾性引張り法10Hzでの190℃の貯蔵弾性率がシートのMD方向に関して1×10Pa以上となる厚みである。さらに、積層シートの取り扱い性を勘案すると、B層20の厚みは、下限が好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上、上限が好ましくは200μm以下、より好ましくは50μm以下である。B層20の厚みが薄すぎる場合は、積層シート100に充分な加熱時の張力を付与することが困難となる場合がある。また、逆に厚すぎても張力付与の効果は飽和すると同時に、積層シート100の総厚みに制限がある事から、他の層の機能の発現を制限する虞がある。
B層20にも、A層10と併せて、意匠性の付与や下地金属の隠蔽のために着色顔料を添加しても良い。使用される顔料やその添加量に関してはA層10に添加する場合と同様である。また、各種添加剤に関しても、A層10と同様のものを用いることができるが、B層20は結晶化した状態で張力を発現する層であるので、結晶核剤を添加し結晶化速度を速めることが好ましい。
(C層30)
本発明の積層シート100にC層30が付与される目的は、積層シート100にエンボス加工装置でエンボス柄を転写する際に、加熱された金属部分(加熱ロール)に積層シート100が粘着するのを防止するため、および、融点が210℃以上230℃以下のPBT系樹脂および/またはPTT系樹脂を75質量%以上100質量%以下と比較的多く含有する結晶化した層であるB層20を直接金属板にラミネートしようとすると、従来の軟質PVC系樹脂をラミネートする場合に比べて、ラミネート温度を高めに設定する必要があることから、B層20に比べて比較的低温で十分な金属板との接着性を得るためである。
さらに、積層シート100により被覆した金属板を沸騰水浸漬試験に供した場合に問題を生じないこと、積層シート100により被覆した樹脂被覆金属板の加工性に悪影響を与えないこと等もC層30が備えるべき性能である。さらに、C層30は、特別な接着剤層を設けなくても、B層20との熱融着積層、あるいは共押出し製膜法によるダイス内積層一体化が可能であることが好ましい。また、C層30は、その樹脂成分の結晶性によってエンボス加工装置の加熱ロールとの非粘着性を得るものではない。
これらのうち、エンボス加工装置の加熱ロールへの非粘着性や比較的低温での金属板へのラミネート適性に関しては、滑剤や架橋弾性体成分等を多量添加してカレンダー製膜法での製膜を可能としたガラス転移温度が100℃に満たない非晶性のポリエステル樹脂をC層30の主体成分とすることでも達成可能であるが、この場合はシートで被覆した金属板に対して沸騰水浸漬試験を行った場合、このC層30の弾性率が著しく低下することにより顕著な外観変化を生じるため、用途によっては使用できない場合があった。
以上の目的を達成するため、本発明においては、C層30を、C層30における樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂10質量%以上100質量%未満と芳香族ポリカーボネート系樹脂0質量%を超え90質量%以下のブレンド組成物を主体としてなり、120℃に加熱された金属板表面に対し非粘着性を有する層としている。ここで、「主体」とは、C層30を構成する樹脂成分全体を基準(100質量%)として、ブレンド組成物を、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有することをいう。
また、C層30の動的粘弾性引張り法による、10Hzでの120℃における貯蔵弾性率(E’)は、1×10Pa以上6×10Pa以下であることが好ましい。貯蔵弾性率が低すぎる場合は、エンボス加工装置の加熱ロールへの粘着の虞があり、これより高い貯蔵弾性率を有する熱可塑性樹脂は、一般的には入手困難であり、また敢えて使用する必要がない。この条件は、上記の「120℃に加熱された金属表面に対し非粘着性を有する」という性質を貯蔵弾性率というパラメーターで表現したものである。
また、C層(30)を、ガラス転移温度が120℃を超え150℃以下にある実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなる層とした場合も、上記のC層の備えるべき効果を奏することができる。ガラス転移温度が120℃を超える温度である場合、120℃に加熱された加熱ロールと接触しても、熔融軟化による粘着は発生しない。さらに、結晶性を有さないため、ガラス転移温度を越える温度では、比較的急激に軟化挙動を採るため、従来の軟質PVC系のシートを金属板にラミネートする際の金属板の加熱温度である230℃前後の温度で接着面が十分に熔融し、十分な接着強度を得ることができる。このガラス転移温度が高すぎると、金属板へのラミネート温度として高温が必要になり、従来的なラミネート温度では接着強度の不足を生ずる虞がある。ラミネートの際の金属板表面は230℃前後まで加熱されているものの、積層シート表面に付与されたエンボスが、加熱によりエンボス戻りを生じて浅くなることを防止するため、通常、ラミネート直後に水冷による急速な冷却が行われる。このため、ガラス転移温度が150℃を超えるような非晶性ポリエステル樹脂では、該急冷によるラミネートの際に、C層30の熔融が不十分となると考えられる。
このような、ガラス転移温度が120℃を超え150℃以下にある実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂としては、特開2002−069165号公報に記載のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂のジオール成分の一部を環状アセタール骨格を有するスピログリコールで置換した構造を有するものや、特開2006−193575号公報に記載のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂のジオール成分の一部を9,9’−ジヒドロキシメチルフルオレンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物で置換した構造を有するものがある。しかし、これらの高いガラス転移温度を有する実質的に非晶性のポリエステル系樹脂は、未だ市販段階には至っておらず、また、光学用途等の高い品質設計レベルを必要とされる用途を狙ったものであることから、将来的にも樹脂被覆鋼板用途として使い得る価格で、安定して入手可能となるかどうかは不安が残る。
そこで、本発明においては、C層30の樹脂組成として、C層30の樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂10質量%以上100質量%未満と芳香族ポリカーボネート系樹脂0質量%を超え90質量%以下とのブレンド組成物を主体とするものを用いることが好ましい。また、ブレンド組成物の好ましい配合比は、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂20質量%以上100質量%未満と芳香族ポリカーボネート系樹脂0質量%を超え80質量%以下である。これにより、容易に入手可能なガラス転移温度が100℃に満たない実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を用いても、ブレンド組成物として上記120℃における貯蔵弾性率を得ることができる。
上記ブレンド組成物において、芳香族ポリカーボネート系樹脂のブレンド比率が高すぎると、従来的な金属板とのラミネート温度で、水冷却法を用いた場合は十分な密着強度が得られなくなる虞がある。これは、以下に記述する本発明に好ましく用いることのできるビスフェノールA型のポリカーボネート系樹脂自体のガラス転移温度が150℃程度であるものの、本発明に好ましい粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート系樹脂では、ガラス転移温度を越えても比較的高い貯蔵弾性率が保持されるゴム状平坦域が比較的高温に至るまで現出するためである。
該芳香族ポリカーボネート系樹脂とのブレンド組成に用いる、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分がテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸を主体とし、ジオール成分が50モル%以上75モル%以下の1.4−シクロヘキサンジメタノール(1.4−CHDM)、および、25モル%以上50モル%以下のエチレングリコールを主体とするその他のジオール成分よりなる共重合ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
ここで、ジカルボン酸成分およびジオール成分における「主体」とは、上記したA層10の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂におけるそれぞれの「主体」と同様である。
該組成よりなるポリエステル系樹脂は、芳香族ポリカーボネート系樹脂との相容性に優れることから、任意のブレンド比率で、また、剪断速度などの成形条件に依存せずに単一のガラス転移温度を有するブレンド組成物を得ることができる。その結果、ブレンド組成のガラス転移温度を向上させる効果が顕著であり、上記120℃での貯蔵弾性率を得ることが容易である。また、商業ベースで量産されていることから、安定した供給が得られ、価格面のメリットもあることから好ましい。このような組成範囲のポリエステル樹脂としては、イーストマン・ケミカル・カンパニー社の「イースターPCTG・5445」や、同じくイーストマン・ケミカル・カンパニー社の「イースターPCTG・24635」を挙げることができる。
なお、C層30を構成する実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を構成するジオール成分における1,4−シクロヘキサンジメタノールの量が少なすぎる場合は、芳香族ポリカーボネート系樹脂との相容性が劣るようになり、ガラス転移温度が単一とならず、また、ブレンド組成物のガラス転移温度が剪断エネルギー、混練時間等の製膜条件に依存するようになり、C層30に必要な120℃での貯蔵弾性率を得ために、製膜設備、製膜効率に制約を受ける虞がある。また、ジオール成分における1,4−シクロヘキサンジメタノールの量が多すぎる場合は、結晶性の影響が顕著となり、ブレンド組成物においても、エンボス付与のために積層シートを加熱した際などに結晶化が進行し、従来的なラミネート温度では充分な接着強度を得られなくなる虞がある。
ただし、該共重合組成系において、ジオ−ル成分に占める1,4−シクロヘキサンジメタノールの量が50モル%より少ない場合でも、特定のポリアルキレングリコールセグメントを構成成分として有するポリエステル系樹脂においては、芳香族ポリカーボネート系樹脂とのブレンド組成物において比較的良好な相容性を示すことが知られており(特開2005−225930号公報)、このようなポリエステル系樹脂も本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂とのブレンド組成に好ましく用いることができる。該特徴を有するポリエステル系樹脂としては、三菱レイヨン社製の「ダイヤナイト(登録商標)DN−124」を挙げることができる。
C層30において実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂とブレンドされる、芳香族ポリカーボネート系樹脂は、ホスゲン法、エステル交換法、ピリジン法等の公知の方法によって製造することができる、芳香族ジヒドロキシ化合物を用いて得られた重合体である。以下、一例として、エステル交換法による芳香族ポリカーボネート系樹脂の製造方法を記載する。
エステル交換法は、2価フェノール(分子内にヒドロキシル基を2つ有する芳香族系化合物)と炭酸ジエステルとを塩基性触媒、さらにはこの塩基性触媒を中和する酸性物質を添加して、溶融エステル交換縮重合を行う製造方法である。
2価フェノールの代表例としては、ビスフェノール類が挙げられ、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールAが最も汎用的に用いられており、本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂に用いる原料としても好ましい。また、ビスフェノールAの一部または全部を他の2価フェノールで置換した構造のものを用いてもよい。他の2価フェノールとしては、ハイドロキノン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンや、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等の化合物、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンのようなアルキル化ビスフェノール類、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンのようなハロゲン化ビスフェノール類を挙げることができる。
炭酸ジエステルの代表例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニルカーボネート)、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等を挙げることができ、中でもジフェニルカーボネートが最も汎用的に用いられており、本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂に用いる原料としても好ましい。
本発明に用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂としては、分子量が、溶剤としてメチレンクロライドを用いて20℃で測定された、溶液粘度より換算された粘度平均分子量で、20000以上40000以下の範囲のもの、さらに好ましくは22000以上30000以下の範囲のものを用いることが好ましい。ここで、粘度平均分子量が小さすぎると、特に低温衝撃強度が低下することが知られており、一方、粘度平均分子量が大きすぎると、溶融粘度が非常に高くなり成形加工性が低下し、また、重合に長時間を要することから、生産サイクルやコストの点から好ましくない。なお、本発明において、芳香族ポリカーボネート系樹脂は1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
C層30の厚みは、下限が好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、上限が好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下である。厚みが薄すぎる場合は、B層20と共押出し製膜法によりダイス内積層する場合に押出し安定性に問題が出る場合があり、また、厚みが厚すぎる場合は、C層30に要求される機能は飽和し、積層シートの総厚みに制約があることから、他の層の設計自由度に影響を及ぼしてしまう虞がある。
C層30にも、A層10、B層20と同様の各種添加剤を適宜な量添加しても良く、着色顔料を添加しても良い。また、C層30が付与される目的の一つである加熱金属との非粘着性をより強固にするため、適宜な量の滑剤を添加しても良い。滑剤としては、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂への添加用として一般的に用いられるものを用いることができ、一例としては、モンタン酸系の滑剤である「LICOWAX(登録商標)OP」(クラリアント・ジャパン社製)を挙げることができる。滑剤の添加量は、C層30の全樹脂量を基準(100質量%)として、0.2質量%〜3質量%程度の一般的な量でよい。
(印刷柄、透明な保護層)
本発明の積層シート100には、エンボスの意匠に併せて、印刷による意匠を付与しても良い。図1(a)に示したA層10、B層20、およびC層30からなる積層シート10Aの表面に印刷柄40を付与して、印刷意匠を得る場合は、図1(b)に示すように、さらにその表面に透明な保護層50を付与することが好ましい。印刷柄が最表面に露出している構成とした場合は、実使用中に耐擦傷性の問題など印刷柄の耐久性に問題を生ずる虞がある。また、印刷柄40の上に透明な保護層50を形成した方が、深みのある意匠感を得られる。さらに、印刷柄40のバインダー種類によっては、エンボス版ロールとの粘着等の問題を生ずる虞がある点からも、透明な保護層50を付与することが好ましい。該透明な保護層50は、加熱された状態でエンボス版ロールにより押圧されエンボス意匠が転写される層であるので、要求される樹脂物性としてはA層10と同一である。
従って、透明な保護層50を構成する樹脂成分としても、A層10を構成する樹脂成分と同一のものを用いることができ、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体とする層とすることができる。また、沸騰水浸漬試験等の高温の水と接触した後のエンボスの戻りを少なくする観点から、やはりA層10と同様に、透明な保護層50の樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、20質量%以上40質量%以下の融点(Tm)が210℃以上230℃以下のポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂、および/または、融点(Tm)が210℃以上230℃以下のポリトリメチレンテレフタレート(PTT)系樹脂が配合されていることが好ましい。
また、同様に透明な保護層50の耐沸騰水浸漬性を向上させる目的で、芳香族ポリカーボネート系樹脂よりなるか、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂75質量%以下と芳香族ポリカーボネート系樹脂25質量%以上のブレンド組成物を主体としてなる透明な保護層50を用いても良い。透明な保護層50には基本的に顔料成分を添加しないことから、成形温度条件が高温となる芳香族ポリカーボネート系樹脂、および、そのブレンド組成物を用いても、A層10の場合と異なり、顔料の耐熱性不足等に起因する変色等の問題が生じない。該透明な保護層50に用いることができる芳香族ポリカーボネート樹脂は、C層30に用いるものと同様で良く、ブレンド組成物を形成する実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂としても、C層30に好ましく用いることができるものを同様に用いることができる。
透明な保護層50の好ましい厚みは5μm以上であるが、単層で製膜し、印刷を施した後の積層シート100に被覆することから、単層での製膜性や取り扱い性を考慮した場合、厚みは、下限が好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、上限が好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下である。厚みが厚すぎる場合は、表面保護層としての効果は飽和すると同時に、積層シートの総厚みに制約がある為、他の層の機能発現に支障を来たす虞がある。
印刷柄40は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等の公知の方法で施され、石目調、木目調、幾何学模様、抽象模様等、任意の柄が施される。また、印刷は部分的に施しても、全面に施してもよいし、全面に付与されたベタ印刷柄とその上側に形成された部分的な印刷側を組み合わせてもよい。印刷柄40は、図1(b)に示したようにA層10の表面に形成する以外にも、A層10を着色層としない場合には、A層10とB層20との間に形成してもよい。
積層シート100全体での好ましい厚みは、65μm以上300μm以下の範囲である。積層シート100の厚みが薄すぎる場合は、下地の視覚的隠蔽確保のために各層に多量の顔料を添加する必要があり、その結果加工性の低下を来たす虞がある。一方、積層シートの厚みが厚すぎる場合は、厚み100μm〜300μm程度が標準的であった軟質PVCシートを被覆した樹脂被覆金属板の折り曲げ加工等の成形加工に従来から用いて来た成形金型の使用が困難になるなど、2次加工性に問題を生じる虞がある。
<積層シートの製造方法>
本発明の積層シート100の製造方法としては各種公知の方法、Tダイを備えた押出し機によるキャスト製膜法やインフレーション法等を採用することができ、またA層10の樹脂組成が実質的に非結晶性であるポリエステル系樹脂のみからなる場合は、従来のPVC系樹脂の製膜に用いていたカレンダー製膜設備によりA層10を製膜することもできる。
各層を単独で製膜した後に、後工程で積層一体化して積層シート100としても良いが、図1(a)および図1(b)に示したA層10、B層20およびC層30の間に印刷柄40を含まない構成では、「A層10+B層20+C層30」の3層を3台の押出機とフィードブロック若しくはマルチマニホールドダイを用いた共押出し製膜法で一体に製膜するのがもっとも効率的であり好ましい。
図1(b)に示したように、印刷柄40および透明な保護層50をさらに形成するには、透明な保護層50に印刷柄40を形成し、あるいは積層シートのA層10の表面に印刷柄40を形成し、この印刷柄40を熱融着性を有するバインダーを用いた印刷インクで形成した場合には、熱融着積層で透明な保護層50と積層シートのA層10とを積層一体化する。また、熱融着性を有さないバインダーを用いた印刷インクで印刷柄40を形成した場合には、ドライラミネートなどの各種接着剤の付与により積層一体化することができる。無論、熱融着性を有するバインダーを用いた印刷インクで印刷柄40を形成した場合も、更に各種接着剤を介在させて積層一体化を行っても良い。生産効率を考えた場合は、接着剤層の付与の必要がない、熱融着積層での積層一体化が好ましい。
<エンボス意匠シート>
図2に、従来より軟質PVCシートにエンボス模様を付与するために一般的に用いられて来たエンボス加工装置300の一例を示す。図示した一実施形態のエンボス加工装置300は、加熱ロール310、テイクオフロール320、赤外線ヒーター330、ニップロール340、エンボスロール350および冷却ロール360により構成される。
本発明の積層シート100A、100Bは、エンボス加工装置300により従来の軟質PVCシートと同様にエンボス模様を付与することができる。積層シート100Aにエンボスを付与した構成をエンボス意匠シート100C(図1(c))、積層シート100Bにエンボスを付与した構成をエンボス意匠シート100D(図1(d))として示した。
本発明のエンボス意匠シート100C、100Dにおいては、C層30が本発明の特徴を備えていることにより、100℃〜120℃程度に加熱された加熱ロール310に対して非粘着性を有しており、またヒーター330によるシート加熱温度である160℃〜190℃でも、B層20が本発明の特徴を有していることから積層シート100A、100Bの幅縮み、皺入り、破断等を生ずることなく、またA層10は良好なエンボス付与適性を有していることで良好な外観のエンボス付与されたエンボス意匠シート100C、100Dを得ることができる。
また、エンボス付与により形成されたA層10表面の凹部には、いわゆるワイピング印刷による着色意匠や、光沢度違いの意匠を付与しても良い。ワイピング印刷によりエンボス凹部に形成される着色インキ層は、2液硬化型のウレタン系樹脂等を使用した着色インキで形成するのが好ましいが、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等からなる1液インキを使用して形成してもよい。着色インキに使用する顔料としては、通常の印刷インク用に用いられる顔料を用いることができる。該ワイピングエンボス自体は、軟質PVCシートを用いたエンボス意匠シートの時代から実施されてきたものであり、ドクターブレード法、ロールコート法など各種公知の方法によって付与することができる。
<エンボス意匠シート被覆金属板>
上記本発明のエンボス意匠シート100C,100DのC層30側を接着剤を用いて金属板70にラミネートすることにより、エンボス意匠シート被覆金属板200C,200Dが得られる。それぞれの層構成を図1(e)(f)に示した。
本発明のエンボス意匠シート被覆金属板200C、200Dに用いる金属板70としては、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、スズメッキ鋼板、ステンレス鋼板等の各種鋼板やアルミニウム板、アルミニウム系合金板等が使用でき、これらは通常の化成処理を施した後に使用しても良い。基材金属板の厚さは、樹脂被覆金属板の用途等により異なるが、0.1mm〜10mmの範囲で選ぶことができる。
エンボス意匠シート100C,100Dを金属板70にラミネートする方法は特に制限はないが、接着剤によるラミネートが一般的である。接着剤としては、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤等の一般的に使用される熱硬化型接着剤を挙げることができる。この中でも、シートがポリエステル系樹脂からなることから、ポリエステル系の接着剤を用いるのが好ましい。
エンボス意匠シート被覆金属板200C、200Dを得る方法としては、金属板70にリバースコーター、キスコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用して、エンボス意匠シート100C,100Dを貼り合せる金属面に、乾燥後の接着剤膜厚が1μm〜10μm程度になるように上記の熱硬化型接着剤を塗布する。ついで、赤外線ヒーターおよび/または熱風加熱炉により塗布面の乾燥および加熱を行い、金属板70の表面温度を、220℃〜250℃程度の温度に保持しつつ、直ちにロールラミネータを用いてエンボス意匠シートのC層30側が接着面となるように被覆、冷却することによりエンボス意匠シート被覆金属板200C、200Dを得ることができる。
また、本発明のエンボス意匠シート被覆金属板200C、200Dは、良好な加工性を有し、ユニットバス壁材、ユニットバス天井材等のユニットバス部材、クロゼットドア材、パーティション材等の建築内装材、鋼製家具部材、AV機器、エアコンカバー等の家電製品筐体部材として、好適に用いることができる。
本発明をより具体的かつ詳細に説明するために、次に実施例を示すが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
<積層シートの作製>
(実施例1〜11、比較例1〜10)
実施例1〜11、および比較例1〜10の積層シートは、φ65mmの3台の二軸混練押出機を使用して、フィードブロック合流方式の共押出し法を用いた3層共押出しによって、Tダイより流出した樹脂をキャスティングロールで引き取る一般的方法によりA層、B層およびC層よりなる三層積層シートを得た。A層およびB層の組成・厚みに関しては、実施例1〜11および比較例1〜10において同一とし、C層のみ表1に示すように組成・厚みを変更した。
A層は、イースターPETG・6763を75質量%、ノバデュラン(登録商標)5020Sを25質量%の樹脂組成からなり、酸化チタン顔料24質量部(A層の樹脂成分の全量を100質量部とした値)の添加により白色に着色されている、厚みが100μmの層である。また、B層は、イースターPETG・6763を10質量%、ノバデュラン(登録商標)5020Sを90質量%の樹脂組成からなり、顔料成分を有しない厚み25μmの層である。尚、比較例10のみC層を有しない2層構成の積層シートとなっている。
Figure 2008279686
表1中、貯蔵弾性率の「*」は「×」を意味し、「10^N」は、「10のN乗」を意味する。よって、例えば、「1.0*10^7」は、「1.0×10」を意味する。
(実施例12〜24、比較例11〜18)
実施例12〜24、および比較例11〜18の積層シートについては、A層およびC層の組成・厚みに関しては同一とし、B層のみ表2に示すように組成・厚みを変更した。A層は、イースターPETG・6763を75質量%、ノバデュラン(登録商標)5020Sを25質量%有し、酸化チタン顔料24質量部(A層の樹脂成分の全量を100質量部とした値)の添加により白色に着色されている、厚みが100μmの層である。また、C層は、ノバレックス(登録商標)7027Aを50質量%、PCTG・5445を50質量%の樹脂組成からなり、顔料成分を有しない厚み10μmの層である。積層シートの作製方法に関しては、上記の実施例1〜11と同様に、共押出し製膜法で三層積層シートを得た。
Figure 2008279686
(実施例25〜34、比較例19〜21)
実施例25〜34、および比較例19〜21の積層シートについては、B層およびC層の組成・厚みに関しては同一とし、A層のみ表3に示すように組成・厚み・顔料添加量を変更した。B層は、イースターPETG・6763を5質量%、ノバデュラン(登録商標)5020Sを95質量%の樹脂組成からなり、顔料成分を有しない厚みが20μmの層である。C層は、ノバレックス(登録商標)7027Aを50質量%、PCTG・5445を50質量%の樹脂組成からなり、顔料成分を有しない厚み10μmの層である。積層シートの作製方法に関しては、上記の実施例1〜11と同様に、共押出し製膜法で三層積層シートを得た。
Figure 2008279686
上記の実施例、および比較例で使用した原料は以下の通りである。
(イースターPETG・6763)
イーストマン・ケミカル・カンパニー社製の非晶性ポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の約30モル%が1.4−シクロヘキサンジメタノール、約70モル%がエチレングリコールである。測定されたガラス転移温度は78℃で、融点は観察されなかった。
(PCTG・5445)
イーストマン・ケミカル・カンパニー社製の実質的に非結晶性ポリエステル樹脂として扱うことが可能なポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の約65モル%が1.4−シクロヘキサンジメタノール、約35モル%がエチレングリコールである。測定されたガラス転移温度は86℃で、融点は観察されなかった。
(ダイヤナイト(登録商標)DN−124)
三菱レイヨン社製の実質的に非晶性のポリエステルエラストマーである。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の約26モル%が1,4−シクロヘキサンジメタノール、約68モル%がエチレングリコール、約6モル%が数平均分子量約1000のポリテトラメチレングリコールである。測定されたガラス転移温度は19℃で、融点は観察されなかった。
(ノバレックス(登録商標)7027A)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製のビスフェノールA型ポリカーボネート系樹脂である。粘度平均分子量27000、測定されたガラス転移温度は150℃で、融点は観察されなかった。
(ノバデュラン(登録商標)5020S)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製の(ホモ)ポリブチレンテレフタレート樹脂である。測定された融点は224℃であった。
(ジュラネックス(登録商標)500JP)
ウィンテックポリマー社製のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂である。測定された融点は205℃であった。
(コルテラ(登録商標)CP509200)
シェル社製の(ホモ)ポリトリメチレンテレフタレート樹脂である。測定された融点は225℃であった。
<積層シートへのエンボス付与>
図2に示すような軟質塩化ビニル系シートへのエンボス付与に一般的に使用されているエンボス加工装置300を用いてエンボス柄の転写を行った。エンボス加工装置の工程概要としては、まず加熱ロール310を用いた接触型加熱によりシートの予備加熱を行い、続いて赤外ヒーター330を用いた非接触型加熱により任意の温度までシートを加熱し、エンボスロール350により、積層シートのA層側にエンボス柄を転写してエンボス意匠シートとするものである。
本実施例および比較例では、加熱ロール310は120℃に設定し、ついでエンボスロール350と接する直前のシート表面温度が180℃になるように赤外ヒーター330で加熱を行った。エンボスロール350は温水循環機により90℃に温調されており、Rmax(最大高さ)=57μm、Ra(中心線平均粗さ)=6.5μmの皮目調の柄が彫刻されているものを用いた。
<エンボス意匠シート被覆金属板の作製>
市販されているポリ塩化ビニル被覆金属板用のポリエステル系接着剤を、積層シートを貼り合せる金属面に乾燥後の接着剤膜厚が1μm〜3μm程度になるように塗布し、ついで赤外線ヒーターおよび熱風加熱炉により塗布面の溶剤乾燥および加熱を行い、厚み0.45mmの亜鉛メッキ鋼板の表面温度を235℃、230℃、225℃の3水準に保持しつつ、直ちにロールラミネータを用いてシートを被覆・冷却することによりエンボス意匠シート被覆金属板を得た。
<積層シートおよびエンボス意匠シート被覆金属板の評価>
上記の実施例および比較例で得た、積層シートおよびエンボス意匠シート被覆金属板について、以下の各項目を評価した。結果を表4〜6に示した(貯蔵弾性率については、表1に示した。)。
(1)貯蔵弾性率の測定
積層シートの製膜時に併せて、各実施例、及び比較例のC層に対応する組成からなる単層の厚み50μmのシートを製膜し、供試体とした。測定は、岩本製作所製粘弾性スペクトロメーターにより積層シートのMD方向に関し測定を行った。測定方法は通常の引っ張り法・温度分散測定法に準じ、−100℃から昇温速度3℃/分で昇温し、250℃までの測定を実施した後、120℃における貯蔵弾性率を読みとった。尚、測定時の昇温に伴うシートの弾性率低下が著しく、120℃に於いては測定不能となったものに関しては、(1.0*10^7以下)と記載した。
(2)エンボス付与適性:耐粘着性
図2に示すエンボス加工装置でエンボスを付与した際に、120℃に温調された加熱ロール310に積層シートが粘着して剥離困難になったもの、および剥離は可能であったがシートの伸び・変形が顕著であったものは「×」、軽度の粘着を示したが作業の継続が可能であり、シートの伸び・変形も実用上支障の無い範囲であったものを「△」、粘着しなかったものは「○」で示した。また、加熱ロールに積層シートが粘着し剥離困難となったものに関しては、以降の評価を実施していない。
(3)エンボス付与適性:耐溶断性
図2に示すエンボス加工装置でエンボスを付与した際に、ヒーター330によりシート温度を180℃まで加熱した際にシートが溶断したもの、及びシートの顕著な伸びや皺入り等を発生したものは「×」、軽度なシートの伸び・幅縮み等を生じたが実用上支障のない範囲であったものを「△」、これらの問題を生じなかったものは「○」で示した。この評価で「×」となったものに関しては、以降の評価を実施していない。
(4)エンボス付与適性:転写性
図2に示すエンボス加工装置でエンボスを付与したシートを、目視で観察し、綺麗にエンボス柄が転写しているものを「○」、これに比べてやや転写が浅い場合を「△」、転写が悪く、浅いエンボス柄になっているもの、あるいは、エンボス柄に無関係に単に表面が荒れているものを「×」で示した。この評価で「×」となったものに関しては、以降の評価を実施していない。
(5)エンボス耐熱性:高温気中耐熱性
図2に示すエンボス加工装置でエンボスを付与したシートをラミネートした金属板を105℃の熱風循環式オーブン中に3時間静置した後目視で観察し、オーブンに投入する前と比較してエンボスの形状がほとんど変化していないものを「○」、これに比べてややエンボス戻りが発生している場合を「△」、エンボス戻りが顕著な場合、あるいは、エンボス柄が完全に消失し単に表面が荒れているものを「×」で示した。該評価は、金属板の加熱温度235℃でラミネートしたものに関してエンボス耐熱性の評価を行った。
(6)エンボス耐熱性:耐沸騰水浸漬性
図2に示すエンボス加工装置でエンボスを付与したシートをラミネートした金属板を沸騰水中に3時間浸漬した後目視で観察し、沸騰水に投入する前と比較してエンボスの形状がほとんど変化していないものを「○」、これに比べてややエンボス戻りが発生している場合を「△」、エンボス戻りが顕著な場合、あるいはエンボス柄が完全に消失し単に表面が荒れているものを「×」で示した。該評価は、金属板の加熱温度235℃でラミネートしたものに関してエンボス耐熱性の評価を行った。
(7)加工性
エンボス意匠シート被覆金属板に衝撃密着曲げ試験を行い、曲げ加工部の積層シートの面状態を目視で判定し、ほとんど変化がないものを「○」、若干クラックが発生したものを「△」、割れが発生したものを「×」として評価した。なお、衝撃密着曲げ試験は次のようにして行った。エンボス意匠シート被覆金属板の長さ方向および幅方向からそれぞれ50mm×150mmの試料を作製し、23℃で1時間以上保った後、折り曲げ試験機を用いて180°(内曲げ半径2mm)に折り曲げ、その試料に直径75mm、質量5Kgの円柱形の錘を50cmの高さから落下させた。該評価は、金属板の加熱温度235℃でラミネートしたものに関して加工性の評価を行った。
(8)金属板接着強度
20mm×100mmのエンボス意匠シート被覆金属板を試験片として、JIS Z−0237「粘着テープ・粘着シート試験方法−試験片に対する180度引き剥がし粘着力」に準拠した剥離強度測定を測定幅20mmで行い、樹脂フィルムと基材金属間の接着強度を測定した。充分な接着強度があると判断されたもの(40N/20mm以上)を「○」、相対的に接着強度が劣るが実用上は支障ないと判断されるものを「△」、さらに接着強度が低いもの(20N/20mm未満)を「×」とした。金属板の加熱温度235℃、230℃、225℃の3段階の温度条件でラミネートを実施し、接着強度の測定を行った。
Figure 2008279686
Figure 2008279686
Figure 2008279686
(実施例1〜11、比較例1〜10)
実施例1〜11、比較例1〜10の積層シートは、エンボス加工装置での非粘着性、および、低温での金属板へのラミネート適性を付与する層であるC層のみを変更したものである。比較例1、比較例2、比較例6〜9は、いずれもC層の120℃に於ける貯蔵弾性率が本発明の好ましい範囲より低い場合であり、エンボス加工装置の加熱ロールに積層シートが粘着し、エンボスを付与することが困難であった。
これに対し、比較例10は、C層を含まない2層構成の積層シートで、且つB層の樹脂組成・厚みが本発明の好ましい範囲にある場合であり、一連のエンボス加工装置での操作に支障は無く、安定して良好なエンボス意匠を有する積層シートを得ることができた。また、金属板にラミネートする際、235℃の加熱温度では良好な接着強度が得られたが、該温度では金属板裏面に施してあった塗料が僅かに熱変色を生じた。そこで、ラミネート温度を230℃、さらには225℃と低下させた所、両温度では裏面塗料の熱変色は生じない結果となったが、積層シートの金属板への接着強度が著しく低下する結果となった。
比較例5は、C層の樹脂組成がビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂のみからなる場合であり、この場合も一連のエンボス加工装置での操作に支障は無く、安定して良好なエンボス意匠を有する積層シートを得ることができた。しかし、金属板へのラミネートに関しては、235℃でも充分な接着強度が得られておらず、C層が存在しない比較例10よりも悪い結果となった。
比較例4は、C層の樹脂組成が、非晶性のポリエステル樹脂と芳香族ポリカーボネート系樹脂のブレンド組成物となっているものの、本発明の好ましい範囲より芳香族ポリカーボネート系樹脂の比率が多い場合であり、金属板への接着強度に関しては比較例5より改善されているが、不十分であった。また、比較例3は、C層の厚みが3μmと本発明の範囲よりも薄い場合であるが、235℃での接着強度は十分であったが、より低温でのラミネートでは接着強度が不足していた。これはC層を有しない構成である比較例10と同様の結果であり、C層の厚みが薄い場合は、充分な接着強度の改善効果が得られないか、あるいは、フィードブロックを用いた共押出し法で厚みの薄い均一な層を形成することが難かしいため、部分的にC層が存在しない部分ができている可能性がある。
これらに対して、本発明の実施例1〜11では、エンボス加工装置での一連の操作に問題は発生せず、良好なエンボス柄の転写を備えた積層シートが得られており、C層が存在しない場合よりも、より低温での金属板へのラミネートが可能となっている。また、樹脂被覆金属板としての折り曲げ加工性も問題の無いものである。
(実施例12〜24、比較例11〜18)
実施例12〜24、比較例11〜18の積層シートは、エンボス加工装置での耐溶断層であるB層のみを変更したものである。C層に関しては、本発明の好ましい組成・厚みを備えているものであるため、いずれの試料に関しても、エンボス加工装置の加熱ロールへの粘着トラブルは発生しなかった。
比較例11および比較例18は、B層の組成は本発明の好ましい範囲にあるが、厚みが薄い場合であり、非接触式ヒーターで加熱された際、積層シートの流れ方向への著しい伸びと皺入りを生じ、安定したエンボス転写が困難となった。
比較例13〜15は、B層の組成が本発明の範囲を外れている場合であり、やはりヒーター加熱された際に顕著な伸びと皺入りを生じ、エンボス転写が困難になっていた。比較例15では、B層の厚みを相当厚くしているが、それでも改善は見られなかった。
比較例16および比較例17は、B層に含まれるPBT樹脂の融点が、本発明の好ましい範囲より低い場合であり、ブレンド比率や厚みに関しては本発明の範囲内であるが、やはりヒーター加熱で問題を生じ、エンボス転写ができていなかった。
比較例12は、B層の組成、厚みとしては本発明の範囲内であるが、B層の厚みを厚くしたことにより、積層シートの層厚みが好ましい範囲を超えた場合で、加工性が著しく低下することとなった。
これらに対して、本発明の本発明の実施例12〜24では、エンボス加工装置での一連の操作に問題は発生せず、良好なエンボス柄の転写を備えた積層シートが得られており、また、C層が無い場合より低温での金属板へのラミネートが可能となっていた。また、樹脂被覆金属板としての折り曲げ加工性も問題の無いものであった。
(実施例25〜34、比較例19〜21)
実施例25〜34、比較例19〜21の積層シートは、エンボス加工装置でエンボス柄が転写される層であるA層のみを変更したものである。B層およびC層に関しては、本発明の好ましい組成・厚みを備えているものであるため、いずれの試料に関しても、エンボス加工装置の加熱ロールへの粘着、およびシート溶断、皺入り、幅縮み等のトラブルは発生していない。
比較例19はA層の樹脂組成が結晶性ポリエステル樹脂であるホモPBTを50質量%含む場合であり、積層シートを190℃まで加熱してもエンボス柄を転写することができなかった。結晶化速度の速いホモPBT樹脂を多量に含むことで、エンボス加工装置での加熱の際に結晶化が進行したことが原因と考えられる。さらにホモPBT樹脂のブレンド比率の高い比較例20も同様の結果であった。
比較例21は、エンボスが転写される層であるA層自体の厚みがエンボス版の深さに対して薄い場合であり、良好なエンボス転写は得られていない。
これらに対して、本発明の実施例25〜34では、エンボス付与機での操作性に問題はなく、良好なエンボス意匠を有する積層シートが得られており、また、これらの積層シートを被覆した金属板のエンボス耐熱性も良好なものが得られた。また、樹脂被覆金属板としての折り曲げ加工性も問題の無いものであった。
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う積層シート、エンボス意匠シート、エンボス意匠シート被覆金属板および建築内装材等もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
(a)は、本発明の積層シートの基本構成を示す概念図である。(b)は、基本構成である積層シート100Aに印刷柄40および透明な保護層50をさらに形成した積層シート100Bの概念図である。(c)は、積層シート100Aにエンボスを付与したエンボス意匠シート100Cの概念図である。(d)は、積層シート100Bにエンボスを付与したエンボス意匠シート100Dの概念図である。(e)は、エンボス意匠シート100Cを金属板に貼り付けて構成したエンボス意匠シート被覆金属板200Cの概念図である。(f)は、エンボス意匠シート100Dを金属板に貼り付けて構成したエンボス意匠シート被覆金属板200Dの概念図である。 従来より軟質PVCのシートにエンボス模様を付与するために一般的に用いられてきたエンボス加工装置の模式図である。
符号の説明
10 A層
20 B層
30 C層
40 印刷柄
50 透明な保護層
60 接着剤層
70 金属板
100A、100B 積層シート
100C、100D エンボス意匠シート
200C、200D エンボス意匠シート被覆金属板
300 エンボス加工装置
310 加熱ロール
320 テイクオフロール
330 赤外線ヒーター
340 ニップロール
350 エンボスロール
360 冷却ロール

Claims (13)

  1. A層、B層およびC層の少なくとも3層を表層からこの順序で備えて構成される積層シートであって、
    前記A層が、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を樹脂成分の主体としてなる厚み45μm以上の無配向の樹脂層であり、
    前記B層が、前記B層における樹脂成分全体の質量を100質量%として、融点が210℃以上230℃以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂、および/または、融点が210℃以上230℃以下のポリトリメチレンテレフタレート系樹脂をその合計量として75質量%以上100質量%以下含有してなる、厚み15μm以上200μm以下の無配向の樹脂層であり、
    前記C層が、前記C層における樹脂成分全体の質量を100質量%として、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂10質量%以上100質量%未満と芳香族ポリカーボネート系樹脂0質量%を超え90質量%以下のブレンド組成物を主体としてなり、120℃に加熱された金属表面に対し非粘着性を有する、厚み5μm以上の無配向の樹脂層であり、
    総厚みが65μm以上300μm以下である積層シート。
  2. 前記C層が、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂20質量%以上100質量%未満と芳香族ポリカーボネート系樹脂0質量%を超え80質量%以下のブレンド組成物を主体としてなり、前記実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂が、ジカルボン酸成分がテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸を主体とするものであり、ジオール成分が50モル%以上75モル%以下の1.4−シクロヘキサンジメタノール、および、残りの25モル%以上50モル%以下のエチレングリコールを主体とするその他のジオール成分よりなる共重合ポリエステルである、請求項1に記載の積層シート。
  3. A層、B層およびC層の少なくとも3層を表層からこの順序で備えて構成される積層シートであって、
    前記A層が、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を樹脂成分の主体としてなる厚み45μm以上の無配向の樹脂層であり、
    前記B層が、前記B層における樹脂成分全体の質量を100質量%として、融点が210℃以上230℃以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂、および/または、融点が210℃以上230℃以下のポリトリメチレンテレフタレート系樹脂をその合計量として75質量%以上100質量%以下含有してなる、厚み15μm以上200μm以下の無配向の樹脂層であり、
    前記C層が、ガラス転移温度が120℃を超え150℃以下にある実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなり、120℃に加熱された金属表面に対し非粘着性を有する、厚み5μm以上の無配向の樹脂層であり、
    総厚みが65μm以上300μm以下である積層シート。
  4. 前記C層の動的粘弾性引張り法による、10Hzでの120℃における貯蔵弾性率(E’)が1×10Pa以上6×10Pa以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層シート。
  5. 前記A層の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂が、ジカルボン酸成分がテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸を主体とするものであり、ジオール成分が20モル%以上80モル%以下の1.4−シクロヘキサンジメタノール、および、残りの20モル%以上80モル%以下がエチレングリコールを主体とするその他のジオール成分よりなる共重合ポリエステルである請求項1〜4のいずれかに記載の積層シート。
  6. 前記A層における樹脂成分全体の質量を100質量%として、前記A層に20質量%以上40質量%以下の融点が210℃以上230℃以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂、および/または、融点が210℃以上230℃以下のポリトリメチレンテレフタレート系樹脂が配合されている、請求項1〜5のいずれかに記載の積層シート。
  7. 前記積層シートのA層、B層、およびC層が共押出し製膜法によるダイ内積層で一体化されたシートとして得られたものである、請求項1〜6のいずれかに記載の積層シート。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の積層シート、および、該積層シートを加熱した後、エンボス版ロールとバックロールとで構成される一対のロール間で押圧することにより前記A層側表面に形成されたエンボス模様を備えて構成される、エンボス意匠シート。
  9. 請求項8に記載のエンボス意匠シート、および、金属板を備え、該エンボス意匠シートの前記C層側が接着剤により金属板にラミネートされている、エンボス意匠シート被覆金属板。
  10. 請求項9に記載のエンボス意匠シート被覆金属板を用いた、ユニットバス部材。
  11. 請求項9に記載のエンボス意匠シート被覆金属板を用いた、建築内装材。
  12. 請求項9に記載のエンボス意匠シート被覆金属板を用いた、鋼製家具部材。
  13. 請求項9に記載のエンボス意匠シート被覆金属板を用いた、家電製品筐体部材。
JP2007126742A 2007-05-11 2007-05-11 積層シ−ト、エンボス意匠シートおよびエンボス意匠シート被覆金属板 Pending JP2008279686A (ja)

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