JP2009078561A - 積層樹脂シート、エンボス付与シート及び被覆基材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定のエンボス付与可能層(A層)、及び特定の基材層(B層)は、組成の異なる2種のポリエステル系樹脂からなるエンボス付与可能な積層樹脂シートを用いる。
【選択図】図1
Description
(1)エンボス付与適性に優れることから、意匠性に富んだ被覆材を得ることができる。
(2)一般的に背反要素である加工性と表面の傷入り性のバランスが比較的良好である。
(3)各種添加剤との相溶性に優れること、及び長年にわたり添加剤による物性向上検討が行われてきたことから、耐候性、特に耐光安定性を向上させることが容易である。
(1)PVCを使用せずに、シートへのエンボス付与工程において、シートを加温するための加熱ロールに接触させても粘着して貼り付くこともなく、エンボス付与が実施できる積層樹脂シートを提供する。
(2)住宅内装建材、家電製品等の基材として好適で、PVCを使用しない被覆シートを使用した被覆基材を提供する。
(1)従来から軟質塩化ビニル系樹脂シートに一般的に用いられてきた種々のエンボス付与方法に対応できるポリエステル系樹脂の積層樹脂シートを提供する。
(2)前記積層樹脂シートを使用したエンボス付与シートを提供する。
(3)それらのシートが積層された被覆基材を提供する。
(1)従来、PVCシートへのエンボス付与に用いられて来たエンボス付与装置で連続的にエンボスを付与可能な耐光性の良好なポリエステル系樹脂の積層樹脂シートを提供する。
(2)前記積層樹脂シートを使用したエンボス付与シートを提供する。
(3)それらのシートが積層された被覆基材を提供する。
(1)軟質塩化ビニル系樹脂を使用せずに、従来から軟質PVCシートへのエンボス付与に用いられてきたエンボス付与装置で連続的にエンボス付与が可能な積層樹脂シートを提供する。
(2)エンボス付与されたエンボス付与シートを提供する。
(3)その製造方法を提供する。
(4)軟質PVCシートを使用せずにエンボス意匠が付与されて各種用途に好適に使用できる被覆基材を提供する。
(5)その製造方法を提供する。
(6)軟質PVCシートを使用せずにエンボス意匠が付与されて各種用途に好適に使用できる建築内装材を提供する。
(1)軟質塩化ビニル系樹脂を使用せずに、従来から軟質PVCシートへのエンボス付与に用いられてきたエンボス付与装置で連続的にエンボス付与が可能な印刷模様を有する積層樹脂シートを提供する。
(2)エンボス付与されたエンボス付与シートを提供する。
(3)その製造方法を提供する。
(4)軟質PVCシートを使用せずにエンボス意匠が付与されて各種用途に好適に使用できる被覆基材を提供する。
(5)その製造方法を提供する。
さらに、前記A層の上にさらに印刷層及び透明な上地層を形成する積層樹脂シートを採用する。
A層:示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測されない、実質非晶性のポリエステル系樹脂又は該ポリエステル系樹脂が重量比率で50%以上含まれる混合物よりなる。
B層:示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測される、実質結晶性のポリエステル系樹脂又は該ポリエステル系樹脂が重量比率で50%以上含まれる混合物よりなり、更にシート製膜後の樹脂層が、示差走査熱量計(DSC)による測定において、明確な結晶化ピークが観測されない状態まで結晶化している。
A層:A層を構成するポリエステル系樹脂が、示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測されない、実質非晶性のポリエステル系樹脂又は該ポリエステル系樹脂が重量比率で50%以上含まれる混合物よりなる。
B層:B層を構成するポリエステル系樹脂が、示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測される、実質結晶性のポリエステル系樹脂又は該ポリエステル系樹脂が重量比率で50%以上含まれる混合物よりなり、更にエンボス付与のために前記シートを加熱した際、金属ロールへの粘着性を示さない。
かつ、前記樹脂成分Bの結晶融解ピーク温度(融点)をTm(B)[℃]、前記樹脂成分Aのガラス転位点をTg(A)[℃]とするとき、Tm(B)>{Tg(A)+30}の関係が成立する。
A層:エンボス付与前のシートにおいて、示差走査熱量計(DSC)による測定での昇温時に、明確な結晶化ピーク温度Tc(A)[℃]と、結晶融解ピーク温度Tm(A)[℃]とが観測され、結晶化熱量をΔHc(A)[J/g]、結晶融解熱量をΔHm(A)[J/g]とするとき、10≦ΔHm(A)≦35、(ΔHm(A)−ΔHc(A))/ΔHm(A)≦0.5の関係式が成立する。
B層:エンボス付与前のシートにおいて、示差走査熱量計(DSC)による測定での昇温時に、明確な結晶融解ピーク温度Tm(B)[℃]が観測され、結晶化熱量をΔHc(B)[J/g]、結晶融解熱量をΔHm(B)[J/g]とするとき、180≦Tm(B)≦240、0.5≦(ΔHm(B)−ΔHc(B))/ΔHm(B)の関係式が成立する。
35≦ΔHm≦60
35≦ΔHm≦60
A層:厚みが15μm以上、120μm以下の無延伸のポリエステル系樹脂層で、エンボス付与前のシートに於いて、示差走査熱量計(DSC)により昇温時に明確な結晶化ピーク温度Tc(A)(℃)と、結晶融解ピーク温度Tm(A)(℃)が観測され、結晶化熱量をΔHc(A)(J/g)、結晶融解熱量をΔHm(A)(J/g)とするとき、以下の関係式の両方が成立する。
10≦ΔHm(A)≦35 (J/g)
(ΔHm(A)−ΔHc(A)/ΔHm(A)≦0.5
B層: エンボス付与前のシートに於いて、示差走査熱量計(DSC)により昇温時に明確な結晶融解ピークTm(B)(℃)が観測され、結晶化熱量をΔHc(B)(J/g)、結晶融解熱量をΔHm(B)(J/g)とするとき、以下の関係式の両方が成立する。
180≦Tm(B)≦240 (℃)
0.5≦(ΔHm(B)−ΔHc(B))/ΔHm(B)
[第1の発明]
第1の発明にかかる積層樹脂シート11aは、図1(a)に示すように、エンボス付与可能層(以下、「A層」と称する。)12aと、基材層(以下、「B層」称する。)13aとが積層されたシートである。この積層樹脂シートとしては、上記A層及びB層からなる2層構造のものや、上記A層の上に他の層を設けた3層以上の構造を有するものがあげられる。
この積層樹脂シート11aにエンボス14を付与することにより、図1(b)に示すような、エンボス付与シート15aが得られる。
A層12aは、実質的に非晶性あるいは低結晶性である樹脂組成物又は前記実質的に非晶性あるいは低結晶性である樹脂組成物を多く含む材質で構成されている。B層13aは、実質的に結晶性である樹脂組成物もしくは前記実質的に結晶性である樹脂組成物を多く含む材質で構成されている。このうち、A層12aはエンボス付与が可能である。
前記印刷層は、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、他公知の方法で前記A層12aに付与される。印刷層の絵柄は石目調、木目調あるいは幾何学模様、抽象模様等任意であり、部分印刷でも全面ベタ印刷でもよく、部分印刷を施した後、更にベタ印刷が施されていてもよい。また、A層12aに積層する上地層を構成するフィルムの積層面に所謂バックプリントを施しておく方法を用いてもよい。
積層樹脂シート11aは、ドア、壁材、床材等の住宅内装建材、家具、調度品やエレベータ、AV製品等の家電製品に使用される被覆基材の被覆材として使用される。
積層樹脂シート11aの積層方法としては、例えば各層の樹脂組成物を共押出して積層する共押出法、各層をシート状に成形し、その後、これを接着剤等でラミネートするラミネート法、あるいは結晶性樹脂シートに溶融した樹脂を乗せていく押ラミ法等により積層することができる。
次に、第2の発明について説明する。
第2の発明にかかる積層樹脂シート11bは、図1(a)に示すように、上記A層12b及びB層13bが、組成の異なる2種のポリエステル系樹脂からなるシートである。
上記A層12bを構成するポリエステル系樹脂は、示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測されない、実質非晶性のポリエステル系樹脂又は該ポリエステル系樹脂を主成分とする混合物よりなる。ここで、「主成分とする」とは、重量比率で50%以上含まれることを意味する。
前記B層13bを構成するポリエステル系樹脂は、示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測される、実質結晶性のポリエステル系樹脂又は該ポリエステル系樹脂を主成分(即ち、重量比率で50%以上含まれる)とする混合物よりなる。この前記B層13bを構成するポリエステル系樹脂は、更にシート製膜後の樹脂層が、示差走査熱量計(DSC)による測定において、明確な結晶化ピークが観測されない状態まで結晶化している。
前記のように構成された積層樹脂シート11bに、上記の方法でエンボスを付与することにより、図1(b)に示すように、A層12bの表面にエンボス14が形成されたエンボス付与シート15bが得られる。
積層樹脂シート11bは図1(c)に示すように、A層12bの上に被覆層として透明樹脂層16bが形成された構成としてもよい。透明樹脂層16bを形成する透明樹脂としては、軟質塩化ビニル系樹脂被覆鋼板やオレフィン系樹脂被覆鋼板に同様の目的、即ち印刷層の保護、深みのある意匠性の付与、顔料等の添加剤の噴き出し防止、表面の各種物性改良の目的で用いられてきた樹脂と同様のものを使用することができる。例えば、アクリル系樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。透明樹脂の積層方法としては、共押出し法や、押出しラミネーション、熱融着法、ドライラミネート、溶液コート等、一般的に用いられる方法を用いることができる。
前記積層樹脂シート11bあるいはエンボス付与シート15bを金属板に接着剤を介して積層することにより、例えば、この図2(a)に示すような、図1(d)に示す積層樹脂シート11bを、金属板18bに接着剤層19bを介して積層した被覆基材20bが得られる。
次に積層樹脂シート11b及び被覆基材20bの製造方法について説明する。積層樹脂シート11bの製膜方法としては公知の方法、例えば、Tダイを用いる押出キャスト法やインフレーション法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、シートの製膜性や安定生産性等の面から、Tダイを用いる押出キャスト法が好ましい。
次に、第3の発明について説明する。
第3の発明にかかる積層樹脂シート11cは、図1(c)に示すように、A層12c及びB層13cの少なくとも2層のポリエステル系樹脂層を積層したシートのA層12cの表面に、被覆層として紫外線吸収性を有する透明被覆層16cを設けたシートである。
A層12cを構成するポリエステル系樹脂は、示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測されない、実質非晶性のポリエステル系樹脂又は該ポリエステル系樹脂を主成分とする混合物よりなる。ここで、「主成分とする」とは、重量比率で50%以上含まれることを意味する。
B層13cを構成するポリエステル系樹脂は、示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測される、実質結晶性のポリエステル系樹脂又は該ポリエステル系樹脂を主成分(即ち、重量比率で50%以上含まれる)とする混合物よりなる。また、樹脂Bは、エンボス付与のために積層樹脂シート11を加熱した際、金属ロールへの粘着性を示さない。
紫外線吸収性を有する透明被覆層16cを設ける主目的は、ポリエステル系樹脂の光黄変を抑止することである。そして、紫外線吸収性を有するとは、透明被覆層16cが無い場合に比べて積層樹脂シート11cの光黄変が明らかに改善される程度に紫外線を吸収することを言う。また、透明被覆層16cは、その目的上、それ自体ある程度耐候性、特に耐黄変性が良好である必要がある。
印刷層17cは、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷や他の公知の方法で付与することができる。印刷層17cの絵柄は石目調、木目調あるいは幾何学模様、抽象模様等任意であり、部分印刷でも全面ベタ印刷でもよく、部分印刷を施した後、更にベタ印刷が施されていてもよい。
積層樹脂シート11cの製膜方法としては公知の方法、例えば、フィードブロック方式やマルチマニホールド方式による共押出キャスト法やインフレーション法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、シートの製膜性や安定生産性等の面から、Tダイを用いる共押出キャスト法が好ましい。
金属板18cとしては、例えば、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、スズメッキ鋼板、ステンレス鋼板等の各種鋼板やアルミニウム板、アルミニウム系合金板が使用でき、通常の化成処理を施した後に使用してもよい。金属板18cの厚さは、被覆基材20cの用途等により異なるが、0.1mm〜10mmの範囲で選択することができる。
次にエンボス付与シートが被覆された被覆基材20cの製造方法について説明する。
透明被覆層16cが設けられ、エンボス付与装置30によりエンボス柄が付与された積層樹脂シート11cを金属板18cに積層する際に用いる接着剤としては、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤等一般に使用される熱硬化型接着剤を挙げることができる。被覆基材20cを得る方法としては、金属板18cにリバースロールコーター、キスロールコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用し、積層樹脂シート11cを貼り合わせる金属面に乾燥後の接着剤膜厚が2〜10μm程度になるように、前記熱硬化型接着剤を塗布する。
次に、第4の発明について説明する。
第4の発明にかかる積層樹脂シート11dは、図1(a)に示すように、A層12dとB層13dとが積層されたシートである。
A層12d及びB層13dは、それぞれ物性の異なるポリエステル系樹脂で形成されている。
10≦ΔHm(A)≦35
(ΔHm(A)−ΔHc(A))/ΔHm(A)≦0.5
B層を構成するポリエステル系樹脂は、エンボス付与前のシートにおいて、示差走査熱量計(DSC)による測定での昇温時に、明確な結晶融解ピーク温度Tm(B)[℃]が観測され、結晶化熱量をΔHc(B)[J/g]、結晶融解熱量をΔHm(B)[J/g]とするとき、以下の関係式が成立する。
180≦Tm≦240
0.5≦(ΔHm−ΔHc)/ΔHm
積層樹脂シート11dの製造方法としては、公知の方法、例えば、フィードブロック方式やマルチマニホールド方式による共押出しキャスト法やインフレーション法等を採用することができ、特に限定されるものではない。A層を構成するポリエステル系樹脂とB層を構成するポリエステル系樹脂とを用いてそれぞれ単独でシートを製膜し、A層を構成するポリエステル系樹脂のシートは結晶化していない状態で、B層を構成するポリエステル系樹脂のシートは後工程で結晶化処理を施して、しかる後に接着剤等を用いて積層一体化することによっても、エンボス付与装置でのエンボス適性に優れた積層樹脂シート(意匠シート)11dを得ることができる。
前記積層樹脂シート11dに前記の方法でエンボス処理を施すことにより、前記A層にエンボス模様を付与したエンボス付与シートを製造することができる。
前記のシート加熱温度でエンボス柄の転写を行うことで、軟質PVCと同等で、しかも、実用上充分なエンボス耐熱性が得られるのであるが、用途によっては更に高いエンボス耐熱性が要求される場合がある。この場合、シート加熱温度を高く設定することと併せて、エンボスロールの温度も高くすることで、エンボス耐熱性を向上させることが可能である。しかし、本発明の構成においては、B層13dに対しては結晶化させることで充分な加熱金属非粘着性が付与されているものの、A層12dに関してはその必要物性上充分な加熱金属非粘着性は有していない。そこで、A層12dの表面に加熱金属非粘着性のコーティング層22dを付与して高温のエンボスロール、その他補助ロールに対する非粘着性を向上させてもよい。
金属板18dとしては、例えば、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、スズメッキ鋼板、ステンレス鋼板等の各種鋼板やアルミニウム板、アルミニウム系合金板が使用でき、通常の化成処理を施した後に使用してもよい。金属板18dの厚さは、被覆基材20dの用途等により異なるが、0.1mm〜10mmの範囲で選択することができる。
次にエンボス付与シートが被覆された被覆基材20dの製造方法について説明する。
エンボス付与装置30によりエンボス柄が付与された積層樹脂シート11dを金属板18dに積層する際に用いる接着剤としては、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤等一般に使用される熱硬化型接着剤を挙げることができる。先ず、リバースロールコーター、キスロールコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用し、積層樹脂シート11を貼り合わせる金属板18dの表面に、乾燥後の接着剤膜厚が2〜10μm程度になるように、前記熱硬化型接着剤を塗布する。
次に、第5の発明について説明する。
第5の発明にかかる積層樹脂シート11eは、図1(h)に示すように、A層12e、印刷層(以下、「C層」と称する。)17e、及びB層13eを、この順に少なくとも3層より構成されたシートである。
A層12e及びB層13eは、それぞれ物性の異なるポリエステル系樹脂で形成されている。
10≦ΔHm(A)≦35 (J/g)
(ΔHm(A)−ΔHc(A))/ΔHm(A)≦0.5
エンボス付与前のシートに於いて、示差走査熱量計(DSC)により昇温時に明確な結晶融解ピークTm(B)(℃)が観測され、結晶化熱量をΔHc(B)(J/g)、結晶融解熱量をΔHm(B)(J/g)とするとき、以下の関係式が成立する必要が有る。
180≦Tm(B)≦240 (℃)
0.5≦(ΔHm(B)−ΔHc(B))/ΔHm(B)
C層17eとB層13eとの間にD層23eが介在する場合、D層23eは顔料が添加されている以外、基本的にA層12eと同一の特徴を有している事が好ましい。このとき、B層13eは、顔料添加が必ずしも必要で無い以外は、上記D層23eが介在しない場合のB層13eと同一の特徴を有する必要が有る。該構成は、前述のようにA層12eの好ましい厚みに上限がある一方、より深いエンボス柄を転写したい場合に好適に用いる事ができる。即ちエンボス柄ロールによる押圧で変形を受ける層をA層+D層とする事でA層を厚くした場合に生ずる問題を回避しつつ、深いエンボス柄の転写を可能とするものである。
10≦ΔHm(D)≦35 (J/g)
(ΔHm(D)−ΔHc(D))/ΔHm(D)≦0.5
顔料による着色は専らD層23eのみに依っても良いが、D層23eとB層13eの両方を着色するほうが顔料濃度を低減する事ができ、D層23eの加工性等に問題を生じにくい点から好ましい。
C層17eは、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、他公知の方法の印刷で施される。印刷層の絵柄は石目調、木目調或いは幾何学模様、抽象模様等任意である。A層の積層する側の表面に印刷を施してからB層13e或いはD層23eと積層してもよく、B層13e或いはD層23eの表面に印刷を施してからA層12eと積層しても良い。
本発明の積層樹脂シート11eの製膜方法としては、公知の方法、押出しキャスト法やインフレーション法などを採用することができ、特に限定されるものではない。A層12eを構成するポリエステル系樹脂とB層13eを構成するポリエステル系樹脂に同一或いは類似の組成を用いてそれぞれを単層でシート製膜し、A層12eは結晶化していない状態で、B層13eは後工程で結晶化処理を施して、しかる後に接着剤等を用いて積層一体化する事によっても、積層樹脂シート11eを得る事ができる。
前記積層シート11eは、前記エンボス付与装置30により従来の軟質PVCシートと同様にエンボス模様を付与する事ができる。更に、B層13eを構成するポリエステル系樹脂の融点(Tm)が180℃〜240℃の範囲である事から、エンボス付与装置でのシート加熱温度を160℃以上、{B層の結晶融解ピーク温度(Tm(B)−20}℃以下に設定しても、加熱金属ロールへの粘着やシート溶融破断を生ずる事が無く、エンボス付与装置30でエンボス意匠を付与した軟質PVCシートと同等、若しくはそれ以上のエンボス耐熱性が得られるものである。
前述のシート加熱温度でエンボス柄の転写を行う事で、軟質PVCシート同等であり、実用上充分なエンボス耐熱性が得られるのであるが、用途に依っては更に高いエンボス耐熱性が要求される場合がある。この場合、シート加熱温度を高く設定する事と併せて、エンボス柄ロールの温度も高くする事で、エンボス耐熱性を向上させる事が可能であるが、本発明の構成に於いては、B層13eが結晶化させる事で充分な加熱金属非粘着性が付与されているものの、A層12eを構成するポリエステル系樹脂に関してはその必要物性上充分な加熱金属非粘着性は有していない。そこで、A層12eの表面に加熱金属非粘着性のコーティング層22eを付与して高温のエンボス柄ロール、その他補助ロールに対する非粘着性を向上させても良い。
本発明の対象になる金属板18eとしては、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、スズメッキ鋼板、ステンレス鋼板等の各種鋼板やアルミニウム板、アルミニウム系合金板が使用でき、通常の化成処理を施した後に使用しても良い。基材金属板の厚さは、被覆基材の用途等により異なるが、0.1mm〜10mmの範囲で選ぶ事ができる。
次に本発明の被覆基材20eの製造方法について説明する。
エンボス付与装置30によりエンボス柄が付与された積層樹脂シート11eを基材金属板にラミネートする際に用いる接着剤19eとしては、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤等一般に使用される熱硬化型接着剤を挙げる事ができる。被覆基材20eを得る方法としては、金属板にリバースコーター、キスコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用し、積層一体化されたシートを貼り合せる金属面に乾燥後の接着剤膜厚が2〜10μm程度になるように、先出のエポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系等の熱硬化型接着剤を塗布する。
[第1の発明]
シートの総厚みを150μm、基材層の厚みを25μmにして実施例、比較例で作製したシートをエンボス付与装置にてエンボスを付与することを実施した。エンボス付与装置はPVCシートへのエンボス付与に一般的に用いられているもので、基材層(裏面)より加熱ロールにてシートを加温し、エンボス付与可能層もしくは上地層、コート層からエンボスロールにてエンボスを付与する装置である。
1.予めエンボスを付与した樹脂シートを金属板に積層する方法。
1−1押出し製膜時、溶融した樹脂をキャストする際に、エンボスパターンを彫刻したロールで押さえて、柄を転写させる方法。
1−2製膜したシートを再加熱し、柄を彫刻したロールで押さえて柄を連続的に転写させる方法。
2.金属板と樹脂とを積層後にエンボスを付与する方法。
2−1金属板上に溶融樹脂を押し出し、樹脂が冷却される前に柄を彫刻したロールで押さえて、柄を連続的に転写させる方法。
2−2被覆基材を再加熱し、柄を彫刻したロールで押さえて、柄を連続的に転写させる方法。
図3に示すエンボス付与装置30でエンボスを付与した。
[第1の発明]
エンボス部分を肉眼で観察して、しっかり入っているものを「○」、エンボスの形がわかり難く、意匠性の悪いものを「×」と判断した。
問題なくエンボスを付与できたものを○、何らかの問題が発生し、エンボスが付与できなかったものを×で示した。
[エンボス付与適性:耐粘着性]
図3に示すエンボス付与装置30でエンボスを付与した際に、加熱ロールに積層樹脂シートが粘着したものを「×」、粘着しなかったものを「○」で示した。
図3に示すエンボス付与装置30でエンボスを付与した際に、シート加熱中に積層樹脂シートが溶断したものを「×」、粘着しなかったものを「○」で示した。
図3に示すエンボス付与装置30でエンボスを付与したシートを目視で観察し、綺麗にエンボス柄が転写しているものを「○」、これに比べてやや転写が浅い場合を「△」、転写が悪く、浅いエンボス柄になっているもの、あるいはエンボス柄に無関係に単に表面が荒れているものを「×」で示した。
図3に示すエンボス付与装置30でエンボスを付与したシートを金属板17にラミネートする際、加熱された金属板からの熱でエンボスに戻りが生じる(エンボスが浅くなる)程度を目視で観察した。ラミネートする前のシートと比較して、エンボスの形状が殆ど変化していないものを「○」、これに比べてややエンボス戻りが発生しているものを「△」、エンボス戻りが顕著なもの、あるいはエンボス柄が完全に消失し単に表面が荒れているものを「×」で示した。
図3に示すエンボス付与装置30でエンボスを付与したシートをラミネートした金属板を、沸騰水中に3時間浸漬した後、目視で観察した。沸騰水に投入する前と比較して、エンボスの形状が殆ど変化していないものを「○」、これに比べてややエンボス戻りが発生しているものを「△」、エンボス戻りが顕著なもの、あるいはエンボス柄が完全に消失し単に表面が荒れているものを「×」で示した。
図3に示すエンボス付与装置30でエンボスを付与したシートをラミネートした金属板を、105℃の熱風循環式オーブン中に3時間静置した後、目視で観察した。オーブンに投入する前と比較して、エンボスの形状が殆ど変化していないものを「○」、これに比べてややエンボス戻りが発生しているものを「△」、エンボス戻りが顕著なもの、あるいはエンボス柄が完全に消失し単に表面が荒れているものを「×」で示した。
図3に示すエンボス付与装置30でエンボスを付与したシートを、目視で観察し、印刷柄が明瞭に認識出来るものを「○」、これに比べてやや透明層(A層)のヘイズが大きく明瞭さに欠ける場合を「△」、透明層のヘイズが大きく、印刷層の識別が不明瞭な場合を「×」で示した。
(7)印刷柄透視性:
図2に示すエンボス付与装置でエンボスを付与したシートを、沸騰水中に3時間浸漬した後に目視で観察し、浸漬前の状態と比較して印刷層の明瞭さに殆ど変化が見られない場合を「○」、これに比べてやや透明層のヘイズが大きくなり明瞭さに欠ける場合を「△」、印刷層の明瞭さが著しく低下した場合を「×」で示した。
[第2の発明〜第3の発明]
パーキンエルマー製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS−K7121「プラスチックの転位温度測定方法−融解温度の求め方」に準じて、加熱速度を10℃/分で測定して求めた。1次昇温時の結晶融解ピークトップ温度(融点)をTmとした。
パーキンエルマー製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS−K7121「プラスチックの転移温度測定方法−融解温度の求め方」に準じて、加熱速度を10℃/分で測定して求めた。1次昇温時の結晶融解ピークトップ温度をTmとした。また、同時に結晶融解熱量ΔHmを求めた。共押出し製膜で作製した2層シートからミクロトーム切削により、A層を構成するポリエステル系樹脂、B層を構成するポリエステル系樹脂をそれぞれ単離して供試体とした。
[第2の発明〜第3の発明]
パーキンエルマー製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS−K7121「プラスチックの転位温度測定方法−結晶化温度の求め方」に準じて、加熱速度を10℃/分で測定して求めた。1次昇温時の結晶化ピークトップ温度をTcとした。
パーキンエルマー製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS−K7121「プラスチックの転移温度測定方法−結晶化温度の求め方」に準じて、加熱速度を10℃/分で測定して求めた。1次昇温時の結晶化ピーク温度をTcとした。また、同時に1次昇温時の結晶化熱量ΔHcを求めた。供試体の作製方法は結晶融解ピーク温度Tmの測定の場合と同一である。
エンボス付与シートをラミネートした被覆基材を60mm×50mmのサイズに切断したものを試験片とした。なお、試験片の切断部端面の封止処理等は特に行わなかった。これらの試験片をサンシャイン・ウェザーメーター促進試験機((株)スガ試験機製)に投入し、ブラックパネル温度63℃での曝露試験を行った。
なお、エンボス付与適性の評価において、粘着、溶断を示したシートに関しては、エンボスを付与していないシートを金属板にラミネートして試験片とした。また、以下に述べる加工性試験及び表面硬度の評価に関しても同様に試験片を選定した。
エンボス付与シートをラミネートした被覆基材に衝撃密着曲げ試験を行い、曲げ加工部のシートの面状態を目視で判定した。ほとんど変化がないものを(○)、僅かなクラックが発生したもの著しく外観を損ねていない場合を(△)、クラックの発生により著しく外観が悪化したもの及び金属面が露出したものを(×)として表示した。
なお、衝撃密着曲げ試験は次のようにして行った。被覆基材の長さ方向及び幅方向からそれぞれ50mm×150mmの試料を作製し、23℃で1時間以上保った後、折り曲げ試験機を用いて180°(内曲げ半径2mm)に折り曲げ、その試料に直径75mm、質量5kgの円柱形の錘を50cmの高さから落下させた。
Hの鉛筆を用いて、JIS−S−1005 9.8(2)鉛筆引っ掻き試験に従い、80mm×60mmの被覆基材の樹脂シート面に対し45°の角度を保ちつつ、0.5kgの荷重をかけて線引きし、線引き部の樹脂シートの面状態を目視で判定した。全く傷が付かなかったものを「○」、若干線引きの跡が残ったものを「△」、明確に傷が付いたものを「×」として表示した。
次に、第1の発明〜第5の発明のそれぞれについての実施例及び比較例の方法及び結果を示す。
(実施例1)
非晶性ポリエステル系樹脂であるイーストマンケミカル社、商品名、PETG6763を多く含む組成物をエンボス付与可能層A、結晶性ポリエステル系樹脂であるポリブチレンテレフタレートを多く含む組成物を基材層Bとして、Tダイ共押出法により製膜して積層樹脂シートを得た。なお、PETG6763は、ポリエチレンテレフタレートのエチレングリコールの一部(約30〜60モル%)を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した非晶性ポリエステル系樹脂である。
実施例1のシートのエンボス付与可能層に印刷を施し、その上にウレタン系樹脂で表面コートを施して、エンボス付与可能層の上にさらに印刷層及び表面コート層が形成された積層樹脂シートを得た。
帝人・デュポンフィルム社、商品名、「テフレックス」シートに印刷を施し、ドライラミネート接着剤で、その印刷面と実施例1の製法で作製した(エンボス付与可能層:非晶性ポリエステル、基材層:結晶性ポリエステル)シートのエンボス付与可能層とを貼り合わせた積層樹脂シートを得た。
アクリルシートをエンボス付与可能層、2軸延伸PETシートを基材層とし、アクリルシートとPETシートをドライラミネート接着剤で貼り合わせた積層樹脂シートを得た。
実施例1のエンボス付与可能層(非晶性ポリエステル)の材質のみで積層樹脂シートを作製した。
実施例1のシートのエンボス付与可能層の材質を基材層の材質とし、基材層の材質をエンボス付与可能層の材質に変更した(エンボス付与可能層:結晶性ポリエステル、基材層:非晶性ポリエステル)積層樹脂シートを得た。
2軸延伸PETに印刷を施し、ドライラミネート接着剤で、その印刷面と実施例1の製法で作製した(エンボス付与可能層:非晶性ポリエステル、基材層:結晶性ポリエステル)シートのエンボス付与可能層とを貼り合わせた積層樹脂シートを得た。
実施例4のエンボス付与可能層の材質を基材層の材質とし、基材層の材質をエンボス付与可能層の材質に変更した(エンボス付与可能層:2軸延伸PET、基材層:アクリル)積層樹脂シートを得た。
実施例3の構成において、エンボス付与可能層を結晶性ポリエステル(基材層と同じ組成)で作製し、ドライラミネート接着剤で貼り合わせたシートを得た。
以上の各実施例及び比較例の結果を表1及び表2に示す。
各実施例及び比較例に用いたシートの樹脂組成を表3に示す。なお、試験で使用した原料は以下のとおりである。
製膜にはTダイを備えた二軸混練押出機を用いて、総厚み150μmになるように調整した。続いて前記4種類のエンボス付与方法にて、エンボス付与を行い、それぞれの評価を行った。但し、1−1及び1−2の方法の場合は、シートにて評価を行い、2−1及び2−2の方法の場合は、被覆基材にてそれぞれ評価を行った。なお、金属板(鋼板)との積層にはポリエステル系の熱硬化性接着剤を使用した。結果を表4に示す。
(実施例8〜19、比較例12〜22)
[積層樹脂シートの作製]
A層を構成するポリエステル系樹脂として表5に示す樹脂組成を用い、B層を構成するポリエステル系樹脂として表6に示す樹脂組成を用い、表10に示す組合せで積層樹脂シートを作製した。総厚み170μmでエンボス付与可能層12の厚みが140μm、基材層13の厚みが30μmとした。
・実質結晶性のポリエステル系樹脂(1):NOVADUR5008三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ポリブチレンテレフタレート系樹脂(ガラス転位点;46[℃]、結晶融解ピーク温度;221[℃])
・実質結晶性のポリエステル系樹脂(2):NOVADUR5020S三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ポリブチレンテレフタレート系樹脂(ガラス転位点;45[℃]、結晶融解ピーク温度;223[℃])
・実質非晶性のポリエステル系樹脂:EASTER6763イーストマンケミカル(株)製(ガラス転移点;81[℃]、結晶融解ピーク温度;観測されず)
表8に示すコーティング塗膜、若しくは表9に示すフィルムを積層樹脂シートのエンボス付与可能層側に設けた。積層樹脂シートとの組合せ及び透明被覆層の厚みは表10に示した。コーティング塗膜はロールコーターによる塗布後、加熱乾燥を行うものである。実施例11のみ積層シートにエンボス付与装置30でエンボス模様を付与した後に透明被覆層を設けた。
・アクリルポリオール:一般的にアクリルワニスに使用されるものの中では比較的ガラス転位温度(Tg)の低いグレード。
・ユーダブルUVG−100:HALS
・紫外線吸収剤共重合型架橋性アクリル樹脂。日本触媒(株)製
・ルミフロンLF−200:フロロエチレン・ビニルエーテル共重合体 旭硝子(株)製
・シリコーングラフトアクリル:X22−8004 水酸基含有のもの 信越シリコーン(株)製
・アクリルフィルム半硬質:市販のフィルムグレードアクリル樹脂の原料パウダーを単軸押出機を用い製膜。引張り破断伸び110%程度(23℃、引張り速度200mm/min)。
・アクリルフィルム軟質:市販のフィルムグレードアクリルと柔軟性アクリル樹脂の原料パウダーを混合し、単軸押出機を用い製膜。引張り破断伸び200%程度(23℃、引張り速度200mm/min)。
・チヌビン400:トリアジン系紫外線吸収剤、分子量=647 チバスヘシャリティ ケミカルス(株)製
・PUVA−50M:高分子量(MMA共重合型)紫外線吸収剤、分子量=約10000 大塚化学(株)製
・LA−31:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、分子量=659 旭電化(株)製
軟質塩化ビニル系シートでも一般的に使用されている連続法による図3に示すエンボス付与装置30にて、エンボス模様の付与を行った。連続法によるエンボス付与の概略としては、まず金属加熱ロールを用いた接触型加熱によりシートの予備加熱を行い、続いて赤外ヒーターを用いた非接触型加熱により任意の温度までシートを加熱し、エンボスロールによりエンボス模様を転写させるものである。
次にポリ塩化ビニル被覆金属板用として一般的に用いられているポリエステル系接着剤を、金属面に乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度になるように塗布して熱硬化型接着剤を形成する。次いで熱風加熱炉及び赤外線ヒーターにより塗布面の乾燥及び加熱を行い、亜鉛メッキ鋼板(厚み0.45mm)の表面温度を235℃に設定し、直ちにロールラミネーターを用いて積層樹脂シート(ポリエステル系樹脂シート)を被覆、冷却することにより樹脂被覆鋼板を作製した。
前記各項目を評価した。結果を表11にまとめて示した。
(実施例20〜33、比較例23〜34)
[積層樹脂シートの作製]
A層を形成する樹脂として表12に示す樹脂組成を用い、B層を形成する樹脂として表13に示す樹脂組成を用い、表15及び表17に示す組合せで積層樹脂シートを作製した。総厚み150μmでA層の厚みが120μm、B層の厚みが30μmとした。また、A層を形成する樹脂は酸化チタン系のベージュ色顔料を17重量部(樹脂分全量を100重量部として)含んでいる。なお、表14は表12及び表13の各樹脂組成におけるA層を形成する樹脂及びB層を形成する樹脂のDSC測定値を示す。
・ノバデュラン5008:ホモPBT 樹脂 三菱エンジニアリングプラスチック(株)製(ガラス転移点;46[℃]、結晶融解ピーク温度;221[℃])
・ノバデュラン5020S:ホモPBT樹脂 三菱エンジニアリングプラスチック(株)製(ガラス転移点;45[℃]、結晶融解ピーク温度;223[℃])
・デュラネックス500JP:イソフタル酸共重合PBT樹脂 ウィンテックポリマー(株)製(ガラス転移点;32[℃]、結晶融解ピーク温度;204[℃])
・co−PET BK−2180:イソフタル酸共重合PET樹脂 三菱化学(株)製(ガラス転移点;76[℃]、結晶融解ピーク温度;246[℃])
・コルテラCP509200:ホモPTT樹脂 シェル(株)製(ガラス転移点;49[℃]、結晶融解ピーク温度;225[℃])
・イースター6763:ポリエチレンテレフタレートのエチレングリコール部分の約31%を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した非晶性ポリエステル系樹脂 イーストマンケミカル(株)製(ガラス転移点;81[℃]、結晶融解ピーク温度;観測されず)
・PCTG5445:ポリエチレンテレフタレートのエチレングリコール部分の約70%を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した非晶性ポリエステル系樹脂 イーストマンケミカル(株)製(ガラス転移点;88[℃]、結晶融解ピーク温度;観測されず)
軟質PVCシートでも一般的に使用されている図3に示すエンボス付与装置30にて、連続法によるエンボス模様の付与を行った。連続法によるエンボス付与の概略としては、まず金属加熱ロールを用いた接触型加熱によりシートの予備加熱を行い、続いて赤外ヒーターを用いた非接触型加熱により任意の温度までシートを加熱し、エンボスロールによりエンボス模様を転写させるものである。加熱ドラムは100℃に設定し、実施例20〜29及び比較例23〜30に関しては、ヒーターにより、エンボスロールと接する前のシートが165℃に加熱される。また、エンボスロールの温度は80℃である。
次にポリ塩化ビニル被覆金属板用として一般的に用いられているポリエステル系熱硬化型接着剤を、金属面に乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度になるように塗布して熱硬化型接着剤層を形成する。次いで熱風加熱炉及び赤外線ヒーターにより塗布面の乾燥及び加熱を行い、亜鉛メッキ鋼板(厚み0.45mm)の表面温度を235℃に設定し、直ちにロールラミネーターを用いて積層樹脂シート(ポリエステル系樹脂シート)を被覆、水冷にて冷却することによりエンボス意匠性樹脂被覆鋼板を作製した。
前記各項目を評価した。結果を表16及び表18にまとめて示した。表16中、エンボス付与装置の加熱ドラムに粘着を生じたものに関しては、以降の評価を行っておらず、表18中、ラミネート時のエンボス戻りが顕著なものに関しては高温耐熱性の評価を実施していない。
(実施例34〜44、及び比較例35〜41の積層用シートの作成)
A層として表19に示す樹脂組成を用い、B層として表20に示す樹脂組成を用い、それぞれ単層のシートを作成した。A層は厚み70μmで、顔料は添加されていない。B層は厚み60μmで、酸化チタン系の顔料が20重量部(樹脂分重量を100として)添加されている。シートの製膜方法は二軸混練押出機を使用したTダイ製膜法で、Tダイより流出した樹脂をキャスティングロールで引き取る一般的方法に依っている。キャスティングロールは鏡面のものを使用し、温水循環により65℃に保たれている。各実施例及び比較例に使用したA層とB層の組み合わせは表21に示す。尚、実施例44のB層に関しては、キャスティングロールでの引き取り後に、赤外ヒーターを有する加熱炉内に導入し、非接触加熱で160℃×40秒間の後加熱処理を行った。
・ノバデュラン 5020S:ホモPBT樹脂 三菱エンジニアリングプラスチック社製(ガラス転移点;45[℃] 結晶融解ピーク温度;223[℃])
・デュラネックス 500JP:イソフタル酸共重合PBT樹脂 ウィンテックポリマー社製(ガラス転移点;32[℃] 結晶融解ピーク温度;204[℃])
・co−PET BK−2180:イソフタル酸共重合PET樹脂 三菱化学社製(ガラス転移点;76[℃] 結晶融解ピーク温度;246[℃])
・コルテラ CP509200:ホモPTT樹脂 シェル社製(ガラス転移点;49[℃] 結晶融解ピーク温度;225[℃])
・イースター6763:ポリエチレンテレフタレートのエチレングリコール部分の約31%を1、4−シクロヘキサンジメタノールで置換した非晶性ポリエステル系樹脂 イーストマンケミカル社製(ガラス転移点;81[℃] 結晶融解ピーク温度;観測されず[℃])
・PCTG5445:ポリエチレンテレフタレートのエチレングリコール部分の約70%を1、4−シクロヘキサンジメタノールで置換した非晶性ポリエステル系樹脂 イーストマンケミカル(株)製(ガラス転移点;88[℃] 結晶融解ピーク温度;観測されず[℃])
図3に示す軟質塩化ビニル系シートでも一般的に使用されている、連続法によるエンボス付与装置30にて熱融着によるシートの積層一体化と、エンボス模様の付与を行った。連続法によるエンボス付与装置の概略としては、まず金属加熱ロールを用いた接触型加熱によりシートの予備加熱を行い、続いて赤外ヒーターを用いた非接触型加熱により任意の温度までシートを加熱し、エンボスロールによりエンボス模様を転写させるものである。加熱ドラムは100℃に設定し、実施例34〜44、及び比較例35〜41に関しては、ヒーターにより、エンボス柄ロールと接する前のシートが165℃に加熱される。またエンボス柄ロールの温度は80℃であり、表面平均粗さRa=10μmの梨地ロールである。
A層として表23に示す樹脂組成と厚みの単層シートを用いた。また、B層として表23に示す樹脂組成と厚みをを用い、更に一部の実施例に関してはD層を構成中に含んでいる。D層の組成は、酸化チタン系顔料を20重量部(樹脂分重量を100重量部として)含む以外はA層の組成A−4と同一である。D層の有無と厚みに関しては表23中に示した。
A層として表25に示す樹脂組成を用い、B層として表25に示す樹脂組成を用い、A層は厚み80μmで、B層は厚み80μmで、それぞれ単層のシートを得た。印刷インキの付与、シートの積層一体化とエンボス模様の付与に関しては基本的に前述したと同一の方法であるが、加熱ドラムは100℃に設定し、ヒーター加熱によるシート到達温度を変更したものである。この場合もエンボス柄ロールの温度は80℃である。各実施例及び比較例に使用したA層とB層の組み合わせ、及びヒーター加熱によるシート到達温度は表7中に示した。
次にポリ塩化ビニル被覆金属板用として一般的に用いられているポリエステル系熱硬化型接着剤を、金属面に乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度になる様に塗布し(接着剤層)、次いで熱風加熱炉および赤外線ヒーターにより塗布面の乾燥および加熱を行い、亜鉛めっき鋼板(金属板:厚み0.45mm)の表面温度を235℃に設定し、直ちにロールラミネーターを用いてポリエステル系樹脂シートを被覆、水冷にて冷却することによりエンボス意匠性樹脂被覆鋼板を作製した。
上記した各項目を評価した。結果を表22、表24及び表26に示した。表22中、エンボス付与装置の加熱ドラムに粘着を生じたものに関しては、以降の評価を行っておらず、表24中、エンボス付与装置でシートが溶融破断したものに関しては以降の評価を行っていない。また、表26中ラミネート時のエンボス戻りが顕著なものに関しては高温耐熱性の評価を実施していない。
[第1の発明]
(1) 実質的に非晶性あるいは低結晶性の樹脂組成物で構成されたA層と、実質的に結晶性の樹脂組成物で構成されたB層との2層構造のシートで、エンボス付与可能層Aからエンボス付与が可能とした。従って、PVCシートへのエンボス付与に一般的に用いられるエンボス付与装置等により、エンボス付与可能層Aからエンボス付与ができる。A層がエンボス加工可能な温度に加熱された際にも、実質的に結晶性であるB層はシートとして剛性を持ち、加熱ロールに粘着しない。
(3) A層のガラス転移温度Tg(A)[℃]と、B層の融点Tm(B)[℃]との関係を、Tg(A)+30≦Tm(B)とした。従って、エンボス加工温度をTとしたとき、Tg(A)≦T≦Tm(B)の関係にエンボス加工温度を設定するのが容易になる。
(5) 積層樹脂シートの全層の総厚みが50μm〜300μmである。従って、積層樹脂シートの金属板等の基材への貼り合わせ時あるいは、その後の穴開け加工や曲げ加工でシートが割れたりせず、また、エンボス付与も行い易くなる。
(7) A層及びB層は、ともにポリエステル系樹脂で構成した場合、両層A,Bを共押出し法で製膜する場合、押出し操作のし易さや、得られたシートの安定性が良好となるとともに、必要な物性を有する原材料を入手し易い。
(9) 前記各積層樹脂シートにエンボス付与したシートを金属板、木質板、合板等の基材の少なくとも片面に被覆することにより、PVCを使用せずに、ドア、壁材、床材等の住宅内装建材、家具、調度品やエレベータ、AV製品等の家電製品の基材として好適に使用できる。
A層の材質は実質的に非晶性で、基材層Bの材質は実質的に結晶性で、かつ、エンボス付与可能層Aのガラス転移温度をTg(A)、B層の融点をTm(B)とし、エンボス加工温度をTとしたとき、Tg(A)≦T≦Tm(B)の関係にエンボス加工温度を設定可能で、A層からエンボス付与が可能であればよい。例えば、B層の材質にポリブチレンテレフタレート(PBT)に代えてポリエチレンテレフタレート(PET)を使用してもよい。
(1)第1の発明において、前記エンボス付与可能層を構成する非晶性樹脂組成物としてポリエチレンテレフタレートのエチレングリコールの一部(約30〜60モル%)を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した非晶性ポリエステル系樹脂が使用され、前記基材層を構成する結晶性樹脂組成物としてポリブチレンテレフタレートが使用されている。
(1)実質非晶性のポリエステル系樹脂又は該ポリエステル系樹脂を主成分とする混合物よりなるA層と、実質結晶性のポリエステル系樹脂又は該ポリエステル系樹脂を主成分とする混合物よりなるB層とから積層樹脂シートを構成した。そして、B層はシート製膜後の示差走査熱量計(DSC)による測定において、明確な結晶化ピークが観測されない状態まで結晶化している。従って、A層がエンボス加工可能な温度に加熱された際にも、実質結晶性のB層はシートとして剛性を持ち、加熱ロールに粘着しない。その結果、従来、ポリエステル系樹脂シートでは対応できなかったシートの再加熱でのエンボス付与が可能になり、従来、軟質塩化ビニル系樹脂で用いられてきた種々のエンボス付与方法に対応でき、種々の方法でポリエステル系樹脂シートに対して連続的にエンボスを付与できる。
(4)A層の上に、印刷を施して印刷層を形成し、その上に透明樹脂層を積層した場合は、種々の模様をA層に形成でき、意匠性を高めることができる。
(6)A層を形成する実質非晶性のポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートのシクロヘキサンジメタノール共重合体の場合、A層を形成する樹脂を入手し易い。
(8)積層樹脂シートを、B層を接着面として、熱硬化性接着剤を介して金属板の上に積層することにより、従来のエンボス付与方法でエンボス付与が容易にできる被覆基材を得ることができる。この被覆基材は、そのまま、あるいはエンボスを付与した状態で、AV器機やエアコンカバー等の家庭電化製品外装や鋼製家具、エレベータ内装、建築物内装等に好適に使用できる。
(10)積層樹脂シートの総厚みが50〜500μmであるため、被覆基材用として使用した場合、金属板に対する保護層としての性能及び被覆基材としての打ち抜き加工等の二次加工性が劣るのを抑制できる。また、印刷を施した場合、印刷柄が下地金属板の色の影響を受け難い。
透明樹脂層を有するエンボス付与シートの製造方法は、2層構造の積層樹脂シートの状態、あるいはエンボス付与可能層上に印刷層が形成された状態でエンボス付与可能層にエンボスを付与し、その後、透明樹脂層を形成する方法に限らない。例えば、透明樹脂層が形成された積層樹脂シートに対して、透明樹脂層の上からエンボスを付与するようにしてもよい。
(1) 第2の発明において、前記積層樹脂シートは、その総厚みが50〜500μmである。
(1)A層及びB層の少なくとも2層のポリエステル系樹脂層を積層したシートのA層の表面に、紫外線吸収性を有する透明被覆層が設けられている。従って、紫外線吸収性を有する厚み2μm〜20μmの範囲の透明被覆層の存在により、耐光性が良好になり、特にポリエステル系樹脂の光黄変性を改善でき、深みのある意匠性の付与、表面の物性改良、ポリエステル系樹脂に添加された顔料等の添加剤の噴き出し防止が容易となる。
(4)前記紫外線吸収成分を添加型の紫外線吸収剤とした場合は、紫外線吸収剤をコーティング液に添加して塗布する一般的な方法を採用でき、透明被覆層に紫外線吸収性を付与するのが容易になる。
(6)A層と透明被覆層との間に印刷層が設けられている場合は、種々の模様を容易に設けることができ、意匠性を高めることができる。
(8)積層樹脂シートの透明被覆層の上からA層に対するエンボス加工が施されたエンボス付与シートでは、積層樹脂シートに対するエンボス付与後に透明被覆層を設ける場合に比較して、エンボス付与シートが完成するまでの工程数を少なくできる。
(10)A層及びB層の厚みの合計は、100〜240μmであり、そのうちB層の厚みが10〜50μmであるため、従来PVCシートへのエンボス付与に用いられてきたエンボス版ロールの大部分で積層樹脂シートへのエンボス模様の付与が可能になる。
エンボス付与加工がなされていない状態の積層樹脂シートを金属板に積層した被覆基材に、エンボス加工を施してエンボス付与シートが被覆された被覆基材としてもよい。
(1)第3の発明において、前記エンボス付与可能層及び基材層の厚みの合計は、100〜240μmであり、そのうち基材層の厚みが10〜50μmである。
(1)積層樹脂シートが、A層及びB層の少なくとも2層のポリエステル系樹脂層を積層したシートから成り、A層及びB層がエンボス付与前のシートにおいて、以下の要件を有している。即ち、A層は、10≦ΔHm(A)≦35[J/g]、かつ(ΔHm(A)−ΔHc(A))/ΔHm(A)≦0.5。B層は、180≦Tm(B)≦240[℃]、かつ0.5≦(ΔHm(B)−ΔHc(B))/ΔHm(B)。従って、積層樹脂シートに従来から軟質PVCシートへのエンボス付与に用いられてきたエンボス付与機で連続的にエンボス付与を施す際に、加熱金属ロールへの粘着や、溶融によるシート破断を防止して円滑にエンボス模様を付与することができる。
(3)積層樹脂シートを160℃以上、かつB層の結晶融解ピーク温度Tm−20℃以下に加熱した後、エンボスロールと圧着ロールとの間を通過させてA層にエンボス模様を付与すれば、付与されたエンボス模様は耐熱性の良好なものとなる。従って、内部に発熱性の部材等を有する家電製品の外装等に用いた場合も、シートが加熱されることによるエンボス戻りの発生を抑制することができる。
(5)B層がPTT系樹脂を含み、35≦ΔHm≦60[J/g]の要件を満たせば、通常の押出し製膜の時点で、結晶化速度の速いPBT系樹脂が、基材層が備えるべき条件を満たすことができる。この場合も、シート製膜後の別工程での熱処理等の特別な工程が不要となり、生産性の向上やコストの低減が図れる。
(7)積層樹脂シートのA層側表面に、加熱された金属との非粘着性を有するコーティング層を付与すれば、エンボス付与機でシートが加熱された際、各種補助ロール等との粘着トラブルの危険を回避することができる。また、耐熱性の良好なエンボス意匠を付与するために、加熱されたエンボスロールを用いる場合も、該ロールとの非粘着性が良好なもの、即ち該ロールに対して粘着し難いものとなる。
(9)積層樹脂シートのA層にエンボス模様を付したエンボス付与シートのB層を接着面として、熱硬化性接着剤によって金属板の上に積層すれば、各種用途に好適に使用できるエンボス意匠の付与された被覆基材を軟質PVCシートを使用せずに得ることができる。
(11)前記被覆基材を、ドア材、ユニットバス壁材、ユニットバス内装材等の建築内装材に用いれば、軟質PVCシートを使用せず、かつ意匠性に優れた建築内装材を得ることができる。
積層樹脂シートのA層の上に印刷層を設けてもよい。
(1)第4の発明において、前記コーティング層は、その厚みが1〜10μmである。
(2)また、前記積層樹脂シートは、その総厚みが50〜500μmである。
(1)積層樹脂シートが、A層、C層及びB層の順に少なくとも3層から構成され、A層及びB層がエンボス付与前のシートにおいて、以下の要件を有している。即ち、A層は、10≦ΔHm(A)≦35、かつ(ΔHm(A)−ΔHc(A))/ΔHm(A)≦0.5。B層は、180≦Tm(B)≦240[℃]、かつ0.5≦(ΔHm(B)−ΔHc(B))/ΔHm(B)。従って、積層樹脂シートに従来から軟質PVCシートへのエンボス付与に用いられてきたエンボス付与機で連続的にエンボス付与を施す際に、加熱金属ロールへの粘着や、溶融によるシート破断を防止して円滑にエンボス模様を付与することができると共に、別途、C層で印刷を付与することができる。
(3)積層樹脂シートを160℃以上、かつB層の結晶融解ピーク温度Tm−20℃以下に加熱した後、エンボスロールと圧着ロールとの間を通過させてA層にエンボス模様を付与すれば、付与されたエンボス模様は耐熱性の良好なものとなる。従って、内部に発熱性の部材等を有する家電製品の外装等に用いた場合も、シートが加熱されることによるエンボス戻りの発生を抑制することができる。
(5)B層がPTT系樹脂を含み、35≦ΔHm≦60[J/g]の要件を満たせば、通常の押出し製膜の時点で、結晶化速度の速いPBT系樹脂が、基材層が備えるべき条件を満たすことができる。この場合も、シート製膜後の別工程での熱処理等の特別な工程が不要となり、生産性の向上やコストの低減が図れる。
(7)コーティング層の厚みを1〜10μmとすれば、厚みが薄すぎるための塗布ムラにより部分的に加熱金属ロールへの粘着が発生する等の問題や、厚みが厚すぎるためにコーティング層の樹脂物性が積層樹脂シートの重要な物性に影響を及ぼす等の問題を容易に回避できる。
(9)前記エンボス付与シートのB層を接着面として、熱硬化性接着剤を塗布焼き付けした金属板にラミネートロールを用いてラミネートした後、直ちに水冷すれば、ラミネート時のエンボス戻りを抑制することができ、深みのある意匠を有するエンボス意匠付与被覆基材を得ることができる。
(10)前記被覆基材を、ドア材、ユニットバス壁材、ユニットバス内装材等の建築内装材に用いれば、軟質PVCシートを使用せず、かつ意匠性に優れた建築内装材を得ることができる。
エンボス付与シートは、エンボス模様が付与された面がエンボス付与シートの表面となるものに限らない。例えば、内部にエンボス柄による凹凸意匠を有しながら、表面は平滑な意匠性を有する意匠シートを得たい場合や、木目柄エンボスなどで凹部を視覚的に強調するために着色インクを凹部にのみ付与する所謂ワイピング処理を施す場合は、積層樹脂シートにエンボスを付与した後、透明被覆層を積層する。
(1)第5の発明において、前記コーティング層は、その厚みが1〜10μmである。また、前記積層樹脂シートは、その総厚みが50〜500μmである。
12a〜12e エンボス付与可能層(A層)
13a〜13e 基材層(B層)
14 エンボス
15a〜15b エンボス付与シート
16b 透明樹脂層
16c 透明被覆層
16’c 透明被覆層
16”c 透明被覆層
17b〜17c 印刷層
17e 印刷層(C層)
18b〜18e 金属板
19b 接着剤層
19c 熱硬化型接着剤
19d 接着剤層
19e 接着剤
20b〜20e 被覆基材
21d〜21e 接着剤層
22d〜22e コーティング層
23e ポリエステル系樹脂層(D層)
31 予備加熱部
31a 加熱ドラム(加熱ロール)
31b 圧着ロール
32 加熱部
32a 赤外線ヒーター
32b ガイドロール
33 エンボス付与部
33a ニップロール
33b エンボスロール
34 冷却ロール
S シート
Claims (15)
- A層及びB層は、組成の異なる2種のポリエステル系樹脂であり、前記A層及びB層のそれぞれが以下の条件を満たすことにより、エンボス付与可能な積層樹脂シート。
A層:示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測されない、実質非晶性のポリエステル系樹脂又は該ポリエステル系樹脂が重量比率で50%以上含まれる混合物よりなる。
B層:示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測される、実質結晶性のポリエステル系樹脂又は該ポリエステル系樹脂が重量比率で50%以上含まれる混合物よりなり、更にシート製膜後の樹脂層が、示差走査熱量計(DSC)による測定において、明確な結晶化ピークが観測されない状態まで結晶化している。 - 前記B層を構成するポリエステル系樹脂の結晶融解ピーク温度(融点)をTm(B)[℃]、前記A層を構成するポリエステル系樹脂のガラス転位点をTg(A)[℃]とするとき、Tm(B)>{Tg(A)+30}の関係が成立する請求項1に記載の積層樹脂シート。
- 前記A層の上に、透明樹脂層が積層されている請求項1又は2に記載の積層樹脂シート。
- 前記A層の上に、印刷が施され、その上に透明樹脂層が積層されている請求項1又は2に記載の積層樹脂シート。
- 前記B層に用いられる実質結晶性のポリエステルが、ポリブチレンテレフタレート又はその共重合体である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層樹脂シート。
- 前記A層を構成するポリエステル系樹脂に用いられる実質非晶性のポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートのシクロヘキサンジメタノール共重合体である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の積層樹脂シート。
- A層及びB層の少なくとも2層のポリエステル系樹脂層を積層したシートの前記A層の表面に、紫外線吸収性を有する厚み2μm〜20μmの範囲の透明被覆層が設けられており、前記A層及び前記B層が以下の条件を満たす積層樹脂シート。
A層:A層を構成するポリエステル系樹脂が、示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測されない、実質非晶性のポリエステル系樹脂又は該ポリエステル系樹脂が重量比率で50%以上含まれる混合物よりなる。
B層:B層を構成するポリエステル系樹脂が、示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測される、実質結晶性のポリエステル系樹脂又は該ポリエステル系樹脂が重量比率で50%以上含まれる混合物よりなり、更にエンボス付与のために前記シートを加熱した際、金属ロールへの粘着性を示さない。
かつ、B層を構成するポリエステル系樹脂の結晶融解ピーク温度(融点)をTm(B)[℃]、前記樹脂成分のガラス転位点をTg(A)[℃]とするとき、Tm(B)>{Tg(A)+30}の関係が成立する。 - 前記透明被覆層が紫外線吸収成分を含有する架橋性樹脂のコーティング層を少なくとも一層含む請求項7に記載の積層樹脂シート。
- 前記紫外線吸収成分が添加型の紫外線吸収剤である請求項8に記載の積層樹脂シート。
- 前記紫外線吸収成分が反応型紫外線吸収剤を前記架橋性樹脂の分子中に共重合したものである請求項8に記載の積層樹脂シート。
- 前記A層と前記透明被覆層との間に印刷層が設けられている請求項7乃至10のいずれか1項に記載の積層樹脂シート。
- 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層樹脂シートにエンボスを付与したエンボス付与シート。
- 請求項7乃至11のいずれか1項に記載の積層樹脂シートの前記A層にエンボス加工が施された後、前記透明被覆層が形成されたエンボス付与シート。
- 請求項7乃至11のいずれか1項に記載の積層樹脂シートの前記透明被覆層の上から前記A層に対するエンボス加工が施されるエンボス付与シート。
- 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層樹脂シート、請求項12に記載のエンボス付与シート、請求項7乃至11のいずれか1項に記載の積層樹脂シート、又は請求項13若しくは14に記載のエンボス付与シートを、前記B層を接着面として、熱硬化性接着剤を介して金属板の上に積層した被覆基材。
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