JP4194950B2 - 樹脂被覆金属板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、AV器機やエアコンカバー等の家庭電化製品外装や鋼製家具、エレベータ内装、建築物内装等に用いられる樹脂被覆金属板及びその製造方法に関するものである。詳しくは耐傷入り性、加工性に優れるとともに、意匠性に優れた鏡面反射性を有し、耐熱沸騰水性にも優れ、かつハロゲン含有樹脂を使用しない樹脂被覆金属板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記用途に用いられる樹脂被覆金属板としては、顔料の添加により着色された樹脂層を基材樹脂層とし、その上に印刷層を設け、さらにその上に透明な樹脂フィルムを積層一体化したシートを鋼板にラミネートした構成のものが用いられてきた。
該構成における透明樹脂フィルムとしては、厚み10〜50μmの例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムや、アクリル酸エステル系共重合体フィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、2軸延伸PETという)系樹脂フィルム等を用いるのが一般的である。中でも、各種物性の優れる2軸延伸PET樹脂フィルムが好ましく用いられている。
【0003】
また、着色された樹脂層としては、軟質塩化ビニル系樹脂層を用いるのが一般的であった。これは、軟質塩化ビニル系樹脂が可塑剤を添加することで柔軟性を任意に設定できることによる。また、透明2軸延伸PET系樹脂フィルムを積層した構成においても、良好な加工性が得られることに加えて、長年の安定剤の研究に基づき比較的良好な耐久性を有し、耐薬品性や、耐熱性、耐熱水性にも優れることからバスユニット等の用途にも好ましく用いられることにもよる。更に、軟質塩化ビニル系樹脂に2軸延伸PET系樹脂フィルムを積層した構成においては、きわめて良好な鏡面反射性が得られる。即ち、樹脂被覆金属板に映り込んだ像に歪みが少なく、鮮明度が高いのも特徴の一つとなっている。
【0004】
しかし、近年、塩化ビニル系樹脂の安定剤に起因する重金属化合物の問題、一部の可塑剤や安定剤に起因するVOC(揮発性有機化合物)問題や内分泌攪乱作用の問題、燃焼時に塩化水素ガスその他の塩素含有ガスを発生する問題等から塩化ビニル系樹脂は、その使用に制限を受けるようになって来た。
【0005】
そこで、前記構成の着色された樹脂層である軟質塩化ビニル系樹脂に代えて、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を主体とし、スチレン系や共重合オレフィン系等の軟質成分を配合することで、軟質塩化ビニル系樹脂に近い物性を得たものを用いることが実施された。この構成においても、2軸延伸PET系樹脂フィルムを積層した構成では、着色された樹脂層に軟質塩化ビニル系樹脂を用いた場合と同等の優れた鏡面反射性を得ることが可能であった。
【0006】
しかし、プレコート鋼板として充分な加工性を付与した場合は、軟質塩化ビニル系樹脂を用いた場合よりも表面の耐傷入り性に劣るものとなる。また、耐傷入り性を軟質塩化ビニル系樹脂被覆金属板と同等にした場合は、満足な加工性が得られないという問題があり、広範に使用できるものとはならなかった。
【0007】
一方、ポリオレフィン系樹脂は本質的に接着性に劣る材料であることから、印刷意匠を付与して2軸延伸PET系樹脂と積層する場合において、軟質塩化ビニル系樹脂より多くの工程(例えば、コロナ処理やプライマーコート等の表面処理工程)を必要とするという問題がある。また、その接着界面及び金属板との接着に用いる接着剤との界面の経時安定性に関しても不安が残るものであった。
【0008】
そこで、これらの問題点を解決する材料として、ポリエステル系樹脂を前記構成の着色された樹脂層として用いることが検討されて来ている。該樹脂を被覆した金属板では、耐傷入り性と加工性とを軟質塩化ビニル系樹脂被覆金属板より高いレベルで両立させることが可能であり、ポリオレフィン系樹脂被覆金属板での諸問題も解決できるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、結晶性を有しないカレンダー成形可能な類のポリエステル系樹脂を着色された樹脂層として用いた場合、そのガラス転移温度(Tg)が100℃より低いことに起因して、建築内装用樹脂被覆金属板の評価項目として一般的に含まれる耐沸騰水浸漬試験を満足することができない。これに対し、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の結晶性を有するポリエステル系樹脂を着色された樹脂層として用いた場合はその融点が高いため、従来の塩化ビニル系樹脂フィルムやポリオレフィン系樹脂フィルムをラミネートする場合より金属板表面の温度を高くする必要がある。そのため、既存のラミネートラインを改造する必要がある。
【0010】
また、前記樹脂被覆金属板の裏面には塗装処理が施されることがあるが、この塗装も従来のものでは耐熱性に問題がある。この場合、塗料を耐熱性の高いものに変更するか、あるいは従来ラミネート前の鋼板の加熱と、裏面に塗布した塗料の乾燥とを同時に行っていたものを、ラミネート後に塗料を塗布し、再度乾燥加熱を行うように改造する等を行わなくてはならない。更には、積層一体化されたシート中の印刷層の耐熱性も、従来のラミネート温度では問題なかったものが、ラミネート温度を上げた場合は、熱変色、熱褪色等が顕著に現れる可能性があり、その場合、印刷インクの顔料類、バインダー種の変更により印刷層の耐熱性を向上させることが必要となる。しかし、これら問題点を改善することは、鋼板ラミネート業者の負担増に繋がり、ひいてはコストアップに繋がるため歓迎されない。
【0011】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、軟質塩化ビニル系樹脂を使用せずに、優れた鏡面反射性を有し、しかも従来のラミネート設備を利用して製造することができる樹脂被覆金属板を提供することにある。また、第2の目的は、優れた鏡面反射性に加えて、加工性及び耐沸騰水性も良好な樹脂被覆金属板を提供することにある。また、第3の目的はその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ポリエステル系樹脂を主成分とする基材樹脂層、印刷層、透明延伸ポリエステル系樹脂層の順に積層一体化してなる積層シートを、前記基材樹脂層側の面を接着面として、接着剤層を介して金属板にラミネートした構成の樹脂被覆金属板において、前記基材樹脂層を構成するポリエステル系樹脂が、以下の要件を満たす。即ち、金属板にラミネートされる前の積層シートの状態において、示差走査熱量計(DSC)による測定における昇温時に、明確な結晶化ピーク温度(Tc)と、結晶融解ピーク温度(Tm)とが観測され、結晶化熱量をΔHc(J/g)、結晶融解熱量をΔHm(J/g)とするとき、(ΔHm−ΔHc)<30が成立する。
ここで、「ポリエステル系樹脂を主成分とする」とは、ポリエステル系樹脂に適宜な量の添加剤が添加されているものをも含むことを意味する。添加剤としては、例えば、広範な樹脂材料に一般的に用いられているものが使用される。
【0013】
この発明では、(ΔHm−ΔHc)の値を30未満とすることにより、基材樹脂層の結晶性は制限され、結晶融解ピーク温度(Tm)を示すが、実際はそれより低い温度から溶融性を帯びることとなる。従って、上記Tm+30℃に満たない金属板の表面温度でラミネートされても、溶融状態になると同時にラミネートロールで加圧されることで、基材樹脂層や金属板の表面の凹凸等に由来する凹凸が解消し、高い鏡面反射性が得られる。また、従来、軟質塩化ビニル系樹脂フィルムのラミネートの際の温度で高鏡面性が得られ、既存設備を有効に利用して製造することができる。更に、印刷インク、接着剤等に関しても塩化ビニル系樹脂に使用するものを流用できて、製品コストを低減できる。
【0014】
また、前記基材樹脂層が、結晶性ポリエステル樹脂成分としてポリブチレンテレフタレート系樹脂を含み、金属板にラミネートされた後の状態において、前記結晶化熱量ΔHcと、前記結晶融解熱量ΔHmとは、15<ΔHm及び5<(ΔHm−ΔHc)の少なくとも一方の関係式を満たす。この発明では、優れた鏡面反射性に加えて、加工性及び耐沸騰水性も良好となる。
【0015】
さらに、前記基材樹脂層が、結晶性ポリエステル樹脂成分としてポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含み、金属板にラミネートされた後の状態において、前記結晶化熱量ΔHcと、前記結晶融解熱量ΔHmとは、15<ΔHm及び5<(ΔHm−ΔHc)の少なくとも一方の関係式を満たす。この発明でも、優れた鏡面反射性に加えて、加工性及び耐沸騰水性も良好となる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記透明延伸ポリエステル系樹脂層が2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムで形成されている。この発明では、透明性や平滑性、表面の耐傷入り性を確保することが容易になる。また、所謂バックプリントを施して印刷層を形成するのが容易となる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、前記基材樹脂層と前記印刷層との間に接着剤層が存在する。この発明では基材樹脂層と印刷層との間の接着性が良好になる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記基材樹脂層は着色ポリエステル系樹脂で構成されている。この発明では、下地の金属板の遮蔽、意匠性の付与、印刷層の発色性改善等を図ることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の樹脂被覆金属板の製造方法であって、ポリエステル系樹脂を主成分とする基材樹脂層、印刷層、透明延伸ポリエステル系樹脂層の順に積層一体化してなる積層シートを、前記基材樹脂層側の面を接着面として、接着剤層を介して金属板にラミネートする際の前記金属板の表面温度Ts(℃)と、前記基材樹脂層を構成するポリエステル系樹脂の結晶融解ピーク温度Tm(℃)との間に(Tm+30)>Tsの関係が成立する状態でラミネートを行う。
【0020】
この発明では、前記樹脂被覆金属板を従来のラミネート設備を利用して容易に製造することができるとともに、印刷層及び金属板裏面塗装の熱変色、熱褪色を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上詳述したように請求項1〜請求項4に記載の発明によれば、軟質塩化ビニル系樹脂を使用せずに、優れた鏡面反射性を有し、しかも従来のラミネート設備を利用して製造することができる。また、請求項1に記載の発明では、優れた鏡面反射性に加えて、加工性及び耐沸騰水性も良好となる。また、請求項5に記載の発明によれば、前記樹脂被覆金属板を従来のラミネート設備を利用して容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施の形態を説明する。
図1(a)に示すように、樹脂被覆金属板11は、金属板12の片面に接着剤層13を介してポリエステル系樹脂を主成分とする基材樹脂層14が積層され、基材樹脂層14の上に印刷層15が積層され、その上に透明延伸ポリエステル系樹脂層16が積層されている。即ち、樹脂被覆金属板11は、ポリエステル系樹脂を主成分とする基材樹脂層14、印刷層15、透明延伸ポリエステル系樹脂層16の順に積層一体化してなる積層シートとしての積層一体化シートSを、基材樹脂層14側の面を接着面として、接着剤層13を介して金属板12にラミネートした構成となっている。また、図1(b)に示す樹脂被覆金属板11では、図1(a)の構成に加えて、基材樹脂層14と印刷層15との間に接着剤層17が設けられている。
【0023】
基材樹脂層14を構成するポリエステル系樹脂としては、アルコール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸やイソフタル酸等を含む共重合体の中から任意に選定された樹脂の単体又はブレンド物を用いることができる。但し、金属板12にラミネートされる前の積層シートの状態において、示差走査熱量計(DSC)による測定における昇温時に、明確な結晶化ピーク温度(Tc)と、結晶融解ピーク温度(Tm)とが観測され、結晶化熱量をΔHc(J/g)、結晶融解熱量をΔHm(J/g)とするとき、次式が成立する。
ΔHm−ΔHc<30…(1)
【0024】
(ΔHm−ΔHc)の値が30を超える場合は、そのポリエステル系樹脂の結晶性が高いということである。従って、ラミネートの際の金属板12の表面温度を基材樹脂層14の融点Tm(℃)より、一般的に30℃程度以上高くしないと、基材樹脂層14の溶融が充分になされないため、基材樹脂層14の表面に由来する凹凸が消えず、また、金属板12の表面に由来する凹凸も残存するため、高い鏡面性は得られない。基材樹脂層14の結晶融解ピーク温度は融点に相当する。金属板12の表面温度として基材樹脂層14の融点Tmより30℃以上高い温度が必要なのは、次の現象を防止するためである。ラミネートされた瞬間に加熱された金属板12から積層一体化シートに熱移動が生じ、瞬時に樹脂被覆金属板11全体の平均温度が下がること、基材樹脂層14の結晶融解に熱量が費やされること、金属板12に対し相対的に温度の低いラミネートロールにより押圧された際にラミネートロールに熱を奪われること等。
【0025】
しかし、この場合、一般的にラミネートの際の金属板12の表面温度は、従来の軟質塩化ビニル系樹脂を基材樹脂層14として用いた場合に比べて相当高くする必要があり、「発明が解決しようとする課題」で述べた各種問題点が顕在化する。
【0026】
ところが、(ΔHm−ΔHc)の値を30未満とすることにより、基材樹脂層14の結晶性は制限され、結晶融解ピーク温度(Tm)を示すが、実際はそれより低い温度から溶融性を帯びることとなる。従って、上記Tm+30℃に満たない金属板12の表面温度でラミネートされても、溶融状態になると同時にラミネートロールで加圧されることで、上記各種原因に由来する凹凸が解消し高い鏡面反射性が得られる。
【0027】
更に、基材樹脂層14が、結晶性ポリエステル樹脂成分としてポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂又はポリトリメチレンテレフタレート(PTT)系樹脂を含み、かつ次の要件を満たすとき、耐沸騰水性に優れた樹脂被覆金属板11を得ることができる。金属板12にラミネートされた後の状態において、DSCによる測定における昇温時に、結晶融解ピーク温度(Tm)が観測され、結晶化熱量ΔHcと、結晶融解熱量ΔHmとは、次式(2),(3)の少なくとも一方の関係式を満たす。
15<ΔHm…(2)
5<(ΔHm−ΔHc)…(3)
【0028】
これらの値が規定された数値以下の場合は、基材樹脂層14の結晶性が低く、完全非結晶のポリエステル系樹脂を基材樹脂層14に用いた場合と同様に、耐沸騰水試験に耐えられないものとなり、内装建材としての用途に制約を受けることになる。
【0029】
式(2),(3)の少なくとも一方の関係式が成立すれば、耐沸騰水性に優れた樹脂被覆金属板11を得ることができるのは次の理由による。式(2)で規定される基材樹脂層14のΔHmが15より大きい場合は、結晶性樹脂成分として用いているPBT系樹脂又はPTT系樹脂の結晶化速度が比較的速いことと、基材樹脂層14のブレンド組成中に占める結晶性樹脂成分の比率が高いこととを示す。従って、ラミネート後にほとんど非結晶性の状態であっても、沸騰水に浸漬状態時点で直ちに結晶化が起こり、結果として耐沸騰水試験に耐え得る結晶性が得られるためである。
【0030】
これに対して、式(2)が満たされない場合は、基材樹脂層14のブレンド組成中に占める結晶性樹脂成分の比率が低いことを示す。従って、ブレンド系の結晶化速度は遅くなり、ラミネート後の時点で一定以上の結晶化が進んでいないと、耐沸騰水試験に耐え得ない。
【0031】
前記式(1),(2)又は式(1),(3)を満たす基材樹脂層14の樹脂組成を得るには、酸成分、アルコール成分それぞれに単一成分を用いた、所謂ホモ・ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂又はホモ・ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂を結晶性樹脂成分として用いる。そして、これに非結晶性、あるいは低結晶性の共重合ポリエステル系樹脂をブレンドすることが、希望する物性を調整し易い点から好ましい。
【0032】
非結晶性の樹脂としては、原料の安定供給性や生産量が多いことから低コスト化が図られているイーストマンケミカル社の「イースター・6763」やそれに類する樹脂を用いることが好ましい。但し、これに限定されるものでは無く、特殊な冷却条件では融点を示すものの、一般的には非結晶性樹脂として取り扱うことが可能なイーストマンケミカル社の「PGTG・5445」等を用いてもよい。
【0033】
結晶性の樹脂として、ホモPBTやホモPTTのように結晶化速度の速い樹脂を用いた場合も、結晶性の低い樹脂、あるいは非結晶性の樹脂をブレンドし、ブレンド系全体の結晶化速度を下げることにより、式(1)を満たす積層一体化シートSを得ることが可能である。また、これら結晶性樹脂を用いた場合は、良好な加工性を有する樹脂被覆金属板を得易い点でも好ましい。
【0034】
基材樹脂層14には、下地の金属板12の遮蔽、意匠性の付与、印刷層15の発色性改善等の目的で顔料が添加される。使用される顔料は従来から樹脂着色用に一般的に用いられているものでよく、その添加量に関しても上記目的のために一般的に添加される量でよい。
【0035】
基材樹脂層14及び透明延伸ポリエステル系樹脂層16には、本発明の目的を損なわない程度に、添加剤を適宜な量添加してもよい。添加剤としては、例えば、燐系・フェノール系等の各種酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、金属不活化剤、残留重合触媒不活化剤、造核剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、難燃剤、充填材等の広範な樹脂材料に一般的に用いられているものが挙げられる。また、末端カルボン酸封止剤、カルボジイミド系等の加水分解防止剤、エステル交換禁止剤等の特定樹脂用に開発された添加剤等を挙げることができる。
【0036】
基材樹脂層14と印刷層15との間、あるいは印刷層15と透明延伸ポリエステル系樹脂層16との間には接着剤層17が存在してもよい。該接着剤層17を構成する接着剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂やポリエーテル系樹脂等を主剤とし、イソシアネート系架橋剤等で硬化し、一般的にドライラミネート用接着剤と呼ばれるものが使用できる。この接着剤の中でも紫外線による黄変の問題が少ない観点から、脂肪族系のものを使用する方が好ましい。
【0037】
また、特に基材樹脂層14に耐光安定性が悪い顔料を添加した場合等、基材樹脂層14への紫外線透過量を制御する必要が有る場合には、接着剤層17にもその性質を損なわない程度に、紫外線吸収剤のような添加剤を適宜配合してもい。
印刷層15は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、他公知の方法の印刷で施される。印刷層15の絵柄は石目調、木目調あるいは幾何学模様、抽象模様等任意であり、部分印刷でも全面ベタ印刷でもよく、部分印刷を施した後、更にベタ印刷が施されていてもよい。一般的には平滑性の良好な透明延伸ポリエステル系樹脂層16の積層面側に所謂バックプリントを施しておく方法が用いられるが、基材樹脂層14への表面印刷としてもよい。
【0038】
本発明に使用する透明延伸ポリエステル系樹脂層16としては、軟質塩化ビニル系樹脂被覆金属板やオレフィン系樹脂被覆金属板に同様の目的、即ち印刷層の保護、深みのある意匠性の付与、表面の各種物性改良の目的で用いられてきたものと同様のものを使用することができる。
【0039】
中でも透明性や平滑性、表面の耐傷入り性等の点から2軸延伸されたポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムが好適に用いられる。この実施の形態では透明延伸ポリエステル系樹脂層16は透明2軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(透明2軸延伸PET樹脂フィルム)で構成されている。フィルムは厚みが15μm〜75μm程度であり、延伸処理後の熱固定温度が220℃〜240℃程度の従来より上記目的に一般的に用いられてきたものを使用することができる。
【0040】
本発明の対象になる金属板としては、熱延鋼板、冷延銅板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、スズメッキ鋼板、ステンレス鋼板等の各種銅板やアルミニウム板が使用でき、通常の化成処理を施した後に使用してもよい。金属板12の厚さは、樹脂被覆金属板11の用途により異なるが、0.1mm〜10mmの範囲で選ぶことができる。
【0041】
次に積層一体化シートS及び樹脂被覆金属板11の製造方法について説明する。本発明の積層一体化シートSの製膜方法としては公知の方法、例えば、Tダイを用いる押出キャスト法やインフレーション法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、シートの製膜性や安定生産性等の面から、Tダイを用いる押出キャスト法が好ましい。
【0042】
積層一体化シートSの厚みは通常50〜500μmである。シートの厚みが50μm未満では樹脂被覆金属板用として使用した場合、金属板12に対する保護層としての性能が劣る。更に、下地金属板遮蔽能力が低いため、印刷柄が下地金属板の色の影響を受け、好ましくない。一方、厚みが500μmを超えると、樹脂被覆金属板11としての打ち抜き加工等の二次加工適性が劣り易い。
【0043】
また、本発明の基材樹脂層14の結晶性を制御する方法としては、押出しキャスト時のキャスティング温度を制御する方法もある。
【0044】
基材樹脂層14と、所謂バックプリントにより印刷層15を施した透明延伸ポリエステル系樹脂層16との積層は、予め製造したそれぞれのシートのうち、バックプリントを施した透明延伸ポリエステル系樹脂層16のバックプリントを施した面に接着剤層17を設けて積層する方法等によることができる。接着剤層17としては、先に述べた接着剤を溶剤に希釈し、塗布装置で塗布した後、連続的に乾燥炉へ導入して溶剤を揮散させ、その後にもう一方のシート(フィルム)と重ね合わせて一対のロール間を通過させることにより、加熱、加圧して積層一体化する。この方法は塩化ビニル系樹脂やポリオレフィン系樹脂を用いた高鏡面性樹脂被覆金属板の製法として一般的に行われてきたものである。
【0045】
上記の方法により積層一体化した積層一体化シートSを金属板12にラミネートすることで、本発明の樹脂被覆金属板11を得る。ラミネートに用いる接着剤層13用の接着剤としては、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤等を挙げることができる。
【0046】
金属板12にリバースロールコーター、キスロールコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用し、積層一体化シートSを貼り合わせる金属面に乾燥後の接着剤膜厚が2〜10μm程度になるように、前記接着剤を塗布する。次いで、赤外線ヒーター及び熱風加熱炉の少なくとも一方を用いて、塗布面の乾燥及び加熱を行い、金属板12の表面温度を所定の温度に保持しつつ、直ちにロールラミネータを用いて積層一体化シートSを被覆、冷却することにより樹脂被覆金属板11を得る。
【0047】
基材樹脂層14の結晶融解ピーク温度をTm(℃)とした場合、ラミネート時の金属板12の表面温度Ts(℃)は、(Tm+30)(℃)以下においても、高鏡面性外観を得ることができる。但し、金属板12の表面温度Ts(℃)は、(Tm−10)(℃)程度以上でなければ高鏡面性外観を得ることはできない。
【0048】
これは如何に基材樹脂層14が結晶融解ピーク温度Tm以下で溶融性を帯びる特徴を有するとはいえ、融点との温度差が顕著に低い場合は充分な平滑化硬化が得られないことによる。従って、基材樹脂層14の結晶性樹脂成分としてホモ・PBTを用いた場合は、該樹脂の結晶融解ピーク温度Tmが225℃付近であることから、ラミネート時の金属板の表面温度は、215℃以上、255℃以下にすることになる。
【0049】
ラミネートロールによりラミネートされた樹脂被覆金属板11は、連続的に冷却工程へと導入される。冷却工程は長い距離を確保し、自然空冷、あるいは強制空冷としてもよいが、生産速度を考慮した場合一般的には水冷法が用いられる。この場合、結晶化速度の遅いPET系樹脂を用いたブレンド組成で基材樹脂層14を形成するよりも、結晶化速度のより速いPBT系の樹脂やPTT系の樹脂を用いたブレンド組成で基材樹脂層14を形成した方が、より急速な冷却条件で前記式(2),(3)を満たすことができるため好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
[積層フィルムの作製]
表1に示す樹脂組成(配合割合(重量%))二軸混練押出機を用いて、厚さ80μmの着色ポリエステル系樹脂シート(基材樹脂層14)を製膜した。顔料の添加量はチタン白及びチタン黄を計24重量部(樹脂成分の合計量を100として)で、全ての実施例及び比較例において同一である。次いで、透明延伸ポリエステル系樹脂層16としての厚さ25μmの透明2軸延伸PET樹脂フィルム(三菱化学ポリエステル社製)の片面にグラビアコート法によって抽象模様の部分印刷を施して印刷層15を形成した。そして、その印刷面に熱硬化性ポリエステル系接着剤を塗布して接着剤層17を形成し、基材樹脂層14と重ね合わせて、一対のロール間を通過させることにより一体化し、積層一体化シートSとした。透明2軸延伸PET樹脂フィルムの種類、印刷インク及び熱硬化性ポリエステル系接着剤の種類、付与条件等は全ての実施例及び比較例において同一である。
【0052】
積層一体化シートSからミクロトームにより基材樹脂層14を削り出し、DSC測定を行い、ラミネートされる前の(ΔHm−ΔHc)を求めた。この測定結果を表2に示した。同じく表2に記載の融点に関してもこの時点で測定した値である。
【0053】
表1に記載した樹脂組成として具体的には、以下のものを用いた。
・ PBT:ノバデュラン5020S(三菱エンジニアリングプラスチック社製)
・ PTT:コルテラCP509200(シェル社製)
・ co−PET:BK−2180(三菱化学ポリエステル社製)酸成分の7%がイソフタル酸である共重合PET
・ PETG:イースター6763(イーストマンケミカル社製)ポリエチレンテレフタレートのエチレングリコールの一部(約30〜60モル%)を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した非晶性(非結晶性)ポリエステル系樹脂
・ PCTG:PCTG5445(イーストマンケミカル社製)
【0054】
[樹脂被覆金属板の作製]
次にポリ塩化ビニル系樹脂被覆金属板用として一般的に用いられているポリエステル系接着剤を、金属面に乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度になるように塗布して接着剤層13を形成する。次いで熱風加熱炉及び赤外線ヒーターにより塗布面の乾燥及び加熱を行い、亜鉛メッキ鋼板(厚み0.45mm)の表面温度Ts(℃)を表1中に記載の各温度に設定し、直ちにロールラミネータを用いて積層一体化シートSを被覆、水噴射冷却もしくは自然空冷冷却することにより樹脂被覆金属板11を作製した。接着剤の種類、塗布条件は全ての実施例及び比較例において同一である。また、ラミネート時の金属板表面温度及び冷却方法は表1中に記載した。
【0055】
また、樹脂被覆金属板11を希塩酸に浸漬し、金属板12と積層一体化シートSとを分離させた後、ミクロトームにより基材樹脂層14を削り出し、DSC測定を行いラミネートされた後のΔHm及び(ΔHm−ΔHc)を求めた。結果を表2にまとめて示した。
【0056】
各樹脂被覆金属板11について、以下の各項目を評価した。結果を表3に示した。なお、実施例及び比較例に示した樹脂被覆金属板の物性の測定規格、試験法は以下の通りである。
【0057】
[結晶融解ピーク温度Tm及び結晶融解熱量ΔHm]
パーキンエルマー製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS−K7121「プラスチックの転位温度測定方法−融解温度の求め方」に準じて、加熱速度を10℃/分で測定して求めた。1次昇温時の結晶融解ピークトップ温度をTmとした。また、そのピーク面積より、結晶融解熱量ΔHmを求めた。
【0058】
[結晶化ピーク温度Tc及び結晶化熱量ΔHc]
パーキンエルマー製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS−K7121「プラスチックの転位温度測定方法−結晶化温度の求め方」に準じて、加熱速度を10℃/分で測定して求めた。1次昇温時の結晶化ピークトップ温度をTcとした。また、そのピーク面積より、結晶化熱量ΔHcを求めた。
【0059】
[鮮明度光沢度値(Gd値)]
財団法人日本色彩研究所が開発した<PGD>携帯用鮮明度光沢度計PGDIVを用い、同法人が規定する測定法により、実施例及び比較例の各樹脂被覆金属板の鏡面反射性を測定し、高鏡面性の判定基準とした。測定は、同一サンプル中5箇所で測定を行い、その平均値を鮮明度光沢度値(Gd値)とした。Gd値が0.9以上の場合を(○)、0.8以上で0.9未満の場合を(△)、0.8未満の場合を(×)として表示した。
【0060】
[耐沸騰水性試験]
60mm×60mmの樹脂被覆金属板に、JIS−K7121で規定されるエリクセン試験装置を用いて、樹脂被覆側が凸になるように6mmの張り出しを設けた後、沸騰水中に3時間浸漬し、その樹脂シートの面状態を目視で判定した。そして、全く変化のなかったものを(○)、表面に若干荒れができたものを(△)、樹脂層に著しい膨れ等の変形が生じたものを(×)として表示した。
【0061】
[加工性]
樹脂被覆金属板に衝撃密着曲げ試験を行い、曲げ加工部の化粧シート(積層一体化シートS)の面状態を目視で判定し、ほとんど変化がないものを(○)、クラックが若干発生したものを(△)、割れが発生したものを(×)として表示した。なお、衝撃密着曲げ試験は次のようにして行った。樹脂被覆金属板の長さ方向及び幅方向からそれぞれ50mm×150mmの試料を作製し、23℃で1時間以上保った後、折り曲げ試験機を用いて180°(内曲げ半径2mm)に折り曲げ、その試料に直径75mm、質量5kgの円柱形の錘を50cmの高さから落下させた。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
表3から明らかなように、本発明の範囲にある実施例1〜実施例9の樹脂被覆金属板11は、高鏡面性、耐沸騰水性及び加工性の3項目とも良好な評価結果が得られた。
【0066】
一方、基材樹脂層14の樹脂成分として非結晶性のポリエステルのみを用いた比較例1と、基材樹脂層14の樹脂成分として非結晶性のポリエステルの割合が多い比較例2及び比較例3とは、高鏡面性及び加工性に関しては良好な評価結果が得られたが、耐沸騰水性が悪かった。
【0067】
また、比較例4は、実施例1とラミネート後の冷却条件を除いて他の条件は同じにしたものであるが、ラミネート後のΔHm及び(ΔHm−ΔHc)の両者とも本発明の要件を満たさず、高鏡面性及び加工性に関しては良好な評価結果が得られたが、耐沸騰水性が悪かった。
【0068】
実施例10は実施例2〜実施例4と同一組成の基材樹脂層14を用い、従来の軟質塩化ビニル系樹脂シートのラミネート温度より高温でラミネートしたため、鏡面性、耐沸騰水性及び加工性は良好であったが、印刷インク(特に赤色系)の熱褪色が著しく、また、金属板12の裏面塗装も熱変色を生じた。
【0069】
基材樹脂層14の樹脂成分として結晶性ポリエステルのホモPBTのみを用いた比較例6は、ラミネート前の(ΔHm−ΔHc)の値が本発明の要件より大きく、従来の軟質塩化ビニル系樹脂シートのラミネート温度に近く、かつ該樹脂の融点(Tm)+30℃以下の温度では高鏡面性を得ることができなかった。
【0070】
比較例5は基材樹脂層14の樹脂成分として結晶性樹脂に比較例6と同じものを用い、非結晶性ポリエステルとのブレンド組成としたものであるが、ラミネート前の(ΔHm−ΔHc)の値が本発明の要件より大きく、やはり高鏡面性が得られなかった。
【0071】
比較例7及び比較例8は基材樹脂層14の樹脂成分としてホモPBT又はホモPTTではなく、共重合PETを用いるとともに、ラミネート温度が樹脂の融点以下の場合であり、高鏡面性が得られるが、耐沸騰水性を満たすことができなかった。即ち、結晶化熱量ΔHcと、結晶融解熱量ΔHmとが、15<ΔHm及び5<(ΔHm−ΔHc)の少なくとも一方の関係式を満たしても、基材樹脂層14を構成する結晶性ポリエステル系樹脂成分として、結晶化速度の速いPBT系樹脂又はPTT系樹脂を含まない場合は、耐沸沸騰水性を向上するのが難しい。比較例10は樹脂被覆金属板11をラミネート後の冷却法を水冷から空冷に代えた点を除いて比較例9と同じ条件で作製した場合であり、穏やかな冷却法を採用することにより結晶化が促進され、耐沸騰水性が比較例9よりやや改善されているが、加工性が悪化した。
【0072】
この実施の形態では以下の効果を有する。
(1) 樹脂被覆金属板11は、金属板12の片面に接着剤層13を介してポリエステル系樹脂を主成分とする基材樹脂層14が積層され、その上に印刷層15が積層され、その上に透明延伸ポリエステル系樹脂層16が積層されている。基材樹脂層14を構成するポリエステル系樹脂は、金属板12にラミネートされる前の積層シートの状態において、示差走査熱量計による測定における昇温時に、明確な結晶化ピーク温度(Tc)と、結晶融解ピーク温度(Tm)とが観測される。結晶化熱量をΔHc(J/g)、結晶融解熱量をΔHm(J/g)とするとき、(ΔHm−ΔHc)<30が成立する。
【0073】
従って、基材樹脂層14の結晶性が制限され、結晶融解ピーク温度(Tm)を示すが、実際はそれより低い温度から溶融性を帯びることとなり、Tm+30℃に満たない金属板12の表面温度でラミネートされても、高い鏡面反射性が得られる。また、従来、軟質塩化ビニル系樹脂フィルムのラミネートの際の温度で高鏡面性が得られ、既存設備を有効に利用して製造することができる。更に、印刷インク、接着剤等に関しても塩化ビニル系樹脂に使用するものを流用できて、製品コストを低減できる。
【0074】
(2) 基材樹脂層14が、結晶性ポリエステル樹脂成分としてPBT系樹脂を含み、金属板12にラミネートされた後の状態において、15<ΔHm及び5<(ΔHm−ΔHc)の少なくとも一方の関係式を満たす場合、優れた鏡面反射性に加えて、加工性及び耐沸騰水性も良好となる。従って、浴室のバスユニット等に好適に用いることができる。
【0075】
(3) 基材樹脂層14が、結晶性ポリエステル樹脂成分としてPTT系樹脂を含み、金属板12にラミネートされた後の状態において、15<ΔHm及び5<(ΔHm−ΔHc)の少なくとも一方の関係式を満たす場合、優れた鏡面反射性に加えて、加工性及び耐沸騰水性も良好となる。従って、浴室のバスユニット等に好適に用いることができる。
【0076】
(4) 基材樹脂層14の上に、透明延伸ポリエステル系樹脂層16が積層されているため、深みのある意匠性の付与、表面の物性改良、ポリエステル系樹脂に添加された顔料等の添加剤の噴き出し防止が容易となる。
【0077】
(5) 透明延伸ポリエステル系樹脂層16が2軸延伸PET樹脂フィルムで形成されている。従って、透明性や平滑性、表面の耐傷入り性を確保することが容易になる。また、所謂バックプリントを施して印刷層を形成するのが容易となる。
【0078】
(6) 基材樹脂層14と印刷層15との間に接着剤層17が存在するため、基材樹脂層14と印刷層15との間の接着性が良好になる。
【0079】
(7) 基材樹脂層14は着色ポリエステル系樹脂で構成されているため、下地の金属板12の遮蔽、意匠性の付与、印刷層15の発色性改善等を図ることができる。
【0080】
(8) 積層一体化シートSを、基材樹脂層14側の面を接着面として、接着剤層13を介して金属板12にラミネートする際、金属板12の表面温度Ts(℃)と、基材樹脂層14を構成するポリエステル系樹脂の結晶融解ピーク温度Tm(℃)との間に(Tm+30)>Tsの関係が成立する。従って、樹脂被覆金属板11を従来のラミネート設備を利用して容易に製造することができるとともに、印刷層15及び金属板裏面塗装の熱変色、熱褪色を抑制することができる。
【0081】
(9) 優れた鏡面反射性に加えて、加工性及び耐沸騰水性も良好となる基材樹脂層14を構成するポリエステル系樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂成分としてPBT系樹脂又はPTT系樹脂を含む。従って、優れた鏡面反射性に加えて、加工性及び耐沸騰水性も良好となる樹脂被覆金属板11を得るために必要な要件を満たすポリエステル系樹脂を入手し易い。
【0082】
(10) 積層一体化シートSの厚みが50〜500μmであるため、金属板12に対する保護層としての性能及び樹脂被覆金属板11としての打ち抜き加工等の二次加工性が劣るのを抑制できる。また、印刷層15の印刷柄が下地となる金属板12の色の影響を受け難い。
【0083】
(11) 基材樹脂層14を構成するポリエステル系樹脂が、結晶性ポリエステル系樹脂と非結晶性ポリエステル系樹脂とがブレンドされたものであるため、結晶融解ピーク温度Tm、結晶化熱量ΔHc、結晶融解熱量ΔHm等が必要な要件を満たすポリエステル系樹脂を入手し易い。
【0084】
(12) 積層一体化シートSを金属板12にラミネートする際の金属板12の表面温度Ts(℃)が、基材樹脂層14を構成するポリエステル系樹脂の結晶融解ピーク温度Tm(℃)より高く設定されている。従って、耐沸騰水性及び加工性の良好な樹脂被覆金属板11を製造するのが容易になる。
【0085】
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 基材樹脂層14を構成するポリエステル系樹脂が、結晶性ポリエステル系樹脂と非結晶性ポリエステル系樹脂とがブレンドされたものに限らず、それぞれ複数種のジオール成分及びジカルボン酸成分の比率を調整して前記必要な要件を満たすようにしたポリエステル系樹脂を使用してもよい。
○ 基材樹脂層14は顔料で着色された構成に限らず、染料で着色されたものでもよい。
○ 基材樹脂層14は必ずしも着色されたものに限らず、無着色であってもよい。
○ 透明延伸ポリエステル系樹脂層16は、樹脂被覆金属板11において透明延伸ポリエステル系樹脂層16側から印刷層15を目視で確認できればよく、半透明であってもよい。
【0086】
前記実施の形態から把握される発明(技術的思想)について、以下に記載する。
(1) 請求項2に記載の発明において、前記印刷層は前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムにバックプリントを施すことにより形成されている。
(2) 請求項1〜請求項4及び前記技術的思想のいずれか一項に記載の発明において、前記基材樹脂層を構成するポリエステル系樹脂は、結晶性ポリエステル系樹脂と非結晶性ポリエステル系樹脂とがブレンドされたものである。
(3) 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記積層一体化シートは、その厚みが50〜500μmである。
(4) 請求項5に記載の発明において、前記積層一体化シートを前記金属板にラミネートする際の前記金属板の表面温度Ts(℃)が、前記基材樹脂層を構成するポリエステル系樹脂の結晶融解ピーク温度Tm(℃)より高く設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】(a)本発明の樹脂被覆金属板の基本構成を示す模式図、(b)は変更例を示す模式図
【符号の説明】
【0088】
11 樹脂被覆金属板
12 金属板
13、17 接着剤層
14 基材樹脂層
15 印刷層
16 透明延伸ポリエステル系樹脂層
S 積層シートとしての積層一体化シート
Claims (5)
- ポリエステル系樹脂を主成分とする基材樹脂層、印刷層、透明延伸ポリエステル系樹脂層の順に積層一体化してなる積層シートを、前記基材樹脂層側の面を接着面として、接着剤層を介して金属板にラミネートした構成の樹脂被覆金属板において、
前記基材樹脂層を構成するポリエステル系樹脂が、以下の要件を満たすことを特徴とする樹脂被覆金属板。
前記基材樹脂層が、結晶性ポリエステル樹脂成分としてポリブチレンテレフタレート系樹脂、及び/又はポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含み、これに非結晶性、あるいは低結晶性の共重合ポリエステル系樹脂をブレンドした樹脂からなる層であり、
金属板にラミネートされる前の積層シートの状態において、示差走査熱量計(DSC)による測定における昇温時に、明確な結晶化ピーク温度(Tc)と、結晶融解ピーク温度(Tm)とが観測され、結晶化熱量をΔHc(J/g)、結晶融解熱量をΔHm(J/g)とするとき、(ΔHm−ΔHc)<26.8が成立し、
金属板にラミネートされた後の状態において、前記結晶化熱量ΔHcと、前記結晶融解熱量ΔHmとは、15<ΔHm及び5<(ΔHm−ΔHc)の少なくとも一方の関係式を満たす。 - 前記透明延伸ポリエステル系樹脂層が2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムで形成されている請求項1に記載の樹脂被覆金属板。
- 前記基材樹脂層と前記印刷層との間に接着剤層が存在する請求項1又は2に記載の樹脂被覆金属板。
- 前記基材樹脂層は着色ポリエステル系樹脂で構成されている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の樹脂被覆金属板。
- 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の樹脂被覆金属板の製造方法であって、ポリエステル系樹脂を主成分とする基材樹脂層、印刷層、透明延伸ポリエステル系樹脂層の順に積層一体化してなる積層シートを、前記基材樹脂層側の面を接着面として、接着剤層を介して金属板にラミネートする際の前記金属板の表面温度Ts(℃)と、前記基材樹脂層を構成するポリエステル系樹脂の結晶融解ピーク温度Tm(℃)との間に(Tm+30)>Tsの関係が成立する状態でラミネートを行う樹脂被覆金属板の製造方法。
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