JP5249803B2 - 樹脂被覆金属板用積層シ−ト、積層シート被覆金属板、ユニットバス部材、建築内装部材、鋼製家具部材、および樹脂被覆金属板用積層シートの製造方法 - Google Patents

樹脂被覆金属板用積層シ−ト、積層シート被覆金属板、ユニットバス部材、建築内装部材、鋼製家具部材、および樹脂被覆金属板用積層シートの製造方法 Download PDF

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本発明は、ユニットバス壁材、同天井材、建築内装材等の用途に用いることのできる樹脂被覆金属板用の意匠性積層シート、およびこの意匠性積層シートで被覆した意匠性積層シート被覆金属板に関する。さらに詳しくは、エンボス転写性が良好であると同時に、エンボス耐熱性が良好であることから、金属板へのラミネート時などの後工程での加熱によるエンボス戻りが少なく、また使用中に比較的高い温度に晒された場合や熱水と接した場合もエンボス戻りを生ずる虞が少ない、良好な意匠感を有するエンボスによる表面凹凸意匠を有する、加工性、表面の耐傷入り性に優れた樹脂被覆金属板を得ることのできる、表面にエンボス意匠を有する積層シート、およびこのエンボス意匠積層シートで被覆した表面にエンボス意匠を有する積層シート被覆金属板に関する。また、これらの製造方法に関する。
従来、建築内装材用途に用いられる意匠性樹脂被覆金属板としては、いわゆる鏡面意匠と呼ばれるタイプのものと、エンボス意匠と呼ばれるタイプのものとが用いられてきた。 エンボス意匠と呼ばれるタイプのものとしては、顔料の添加により着色された軟質ポリビニルクロライド(以下、「軟質PVC」と省略する場合がある。)のカレンダー製膜法により得られた単層シート、或いは、該着色軟質PVCシートの表面に印刷を施し、更に、同様にカレンダー製膜法により得られた実質的に透明な軟質PVCシートを積層したものなどの表面に、エンボス加工を施したものが用いられて来た。
軟質PVCシート被覆金属板は、長期の使用実績を有し、建材用途の中でも過酷な使用環境で用いられるユニットバス用途等にも安心して使用できる性能を有するものであったが、近年、塩化ビニル系樹脂に添加される一部の安定剤に起因する重金属化合物の問題や、燃焼時に塩化水素ガスその他の塩素含有ガスを発生する問題に加えて、内装建材用途においては特に、一部の可塑剤や安定剤に起因する揮発性有機化合物(VOC)問題や内分泌撹乱物質を有する懸念等から軟質PVCの使用は制限を受けるようになってきた。
そこで、性能面や意匠面で軟質PVCを使用したシートに代替し得る材料として、ポリエステル系樹脂シートなどを用いることが検討されてきており、特許文献1では、カレンダー製膜法によりシートを得ることが可能な実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂から成る組成物が提示されている。また、特許文献2では、透明な非晶性ポリエステル系樹脂から成るシートと、着色不透明な非晶性ポリエステル系樹脂から成るシートの間に印刷柄を介在させた化粧シートが提示されている。
しかし、これらのようなガラス転移温度が80℃程度で、且つ結晶性を有しないポリエステル系樹脂から成るシートの表面にエンボス意匠を付与して樹脂被覆金属板の用途に供した場合は、金属板へのラミネート時など後工程での加熱を受けた際に著しいエンボス戻りを生じてしまう問題があった。また、同様に樹脂組成物のガラス転移温度が80℃程度であることと結晶性を有しないことから、ユニットバス用途に使用される樹脂被覆金属板の評価試験項目として含まれることの多い沸騰水浸漬試験に供した場合、エンボス戻りを生ずるのみならず、樹脂層自体が弾性を保持し得ず流動変形を生じ、著しい外観不良をもたらす問題点もあった。
ポリエステル系樹脂から成るシートで、金属板へラミネートする際に受ける加熱などに対するエンボス耐熱性を確保する為には、以下の方法等が考えられる。
(1) 熱硬化性の塗膜層等をシート表面のエンボスが付与された面に設けることで、その架
橋構造により物理的に固定してしまう。
(2) シートの厚みを厚くすることで、ラミネート時に加熱された金属板からの熱伝達によ
るシート表面の温度上昇を低く抑える。
(3) エンボスが付与される層の樹脂組成として、ガラス転移温度が高いポリエステル系
樹脂を用いることで、金属板へのラミネートの際にエンボスが付与されているシート表面近傍の温度が上昇しても、樹脂組成のガラス転移温度がそれを越えないようにする。
(4) エンボスが付与される層の樹脂組成として、結晶性を有するポリエステル系樹脂を
用い、エンボス付与と同時に、もしくはエンボス付与後に結晶化させることで、結晶融点に至る温度までシートの弾性率が保持されることを利用する。
しかし、(1)の方法では、溶剤系のコート剤を塗工、乾燥、硬化させる一連の設備が必要であり、製造効率の点で好ましくない。また、折角付与したエンボス意匠の上にある程度の厚みの塗膜層を設けることは、意匠性の低下をもたらす恐れがあり、更に表面に、傷入り性が問題とならない程度に硬質の塗膜層を設けたシートをラミネートした樹脂被覆金属板においては、折り曲げ加工などの二次加工性に問題を生じる虞がある。また、エンボスを付与した樹脂層自体が、前述のガラス転移温度が80℃程度で結晶性を有しないポリエステル系樹脂より成る場合などのように沸騰水浸漬に耐えないような組成である場合は、表面塗膜層を施した場合も、この性質が大幅に改善されるものではない。
(2)の方法では、原料価格の廉い軟質PVC樹脂等では実施可能であるが、ポリエステル系樹脂等においては好ましい方法とは言えない。
(3)の方法は、ポリエステル系樹脂の共重合成分として、ジカルボン酸成分もしくは、ジオール成分に剛直な分子構造を有するものを導入することでガラス転移温度を高めることが可能であり、100℃を越えるガラス転移温度を有するポリエステル系樹脂であれば、結晶性を有しない場合においても、良好なエンボス耐熱性を得られると同時に沸騰水浸漬試験で樹脂層の流動変形を生じないものとすることができる。しかし、このようなポリエステル系樹脂は、汎用用途の市販品としては存在せず、原料価格が高価なものとなってしまう。従って、(4)の方法が性能面やコスト面から最も好ましいと考えられる。
特許文献3は、建材用シートに関するものでは無いが、ポリエステル系樹脂の中でも、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を主たる繰り返し単位とする結晶性ポリエステルは、エンボス加工による所望の凹凸形状付与が精度高く行える点、該エンボス加工で形成された凹凸の後工程での加熱の際に、形状保持性(エンボス戻りの少なさ)が優れる点が言及されている。そして、エンボス戻りが少ない理由として、PBT系樹脂の融点が高いこと、および、結晶化速度が速いことが指摘されている。これより、このようなポリエステル系樹脂を用いれば、後工程での加熱においてエンボス戻りを生じ難いため、良好なエンボス意匠を備えた樹脂被覆金属板を得られることが予測でき、また、沸騰水浸漬試験に供した場合もエンボス戻りを生じにくい樹脂被覆金属板とできることが予測される。
なお、特許文献3の実施例に於けるPBT系樹脂へのエンボス付与の方法としては、熔融押出しした融点205℃の共重合PBT系樹脂を二軸配向ポリエステルフィルムのコロナ処理面に積層すると共に、冷却されたエンボスロールで押圧すると言う、押出し製膜設備のキャスティングロール(引き取りロール)をエンボスロールとする方法の一種によっている。このような、押出し製膜設備のキャスティングロールとして、通常の鏡面ロールに替えてエンボスが彫刻されたロールを用い、押出しシートにエンボスを付与する方法は、押出しキャストエンボス法等と呼ばれており、それ自体は公知の方法であり、基本的に口金から流下した熔融軟化状態の低粘度の熱可塑性樹脂にエンボスを付与するものなので、熱可塑性樹脂の種類や結晶性の有無にほとんど依存せず良好なエンボスの転写を得られるものである。無論、付与したエンボスの耐熱性に関しては、上記特許文献3の如く、樹脂の結晶化速度、結晶融点等の物性に依存して大きく変わってくるものである。
一方、PBT系樹脂より成るシートを被覆した金属板に関しては、特許文献4が開示されている。
特許文献5では、TMAで求められる軟化終了温度と軟化開始温度の差が30℃以下である熱可塑性樹脂から成るシートが押出しキャストエンボス法でのエンボスの転写性に優れるとされ、一例としてPBT系樹脂から成るシートが好ましいとされている。
特許文献6では、基材シート上に積層される二層から成る透明シートの表層側がPBT系樹脂から成る化粧シートが開示されており、高いエンボス耐熱性を有しているとされている。段落[0022]に「エンボス加工適性の面からは、PBT樹脂から成る層の厚さ比率が低い程有利であり」との記載があり、押出しキャストエンボス法により熔融したPBT樹脂層にエンボスを付与するのではなく、オフラインの所謂アフターエンボス法によりエンボスを付与するものと解釈できる。
すなわち、オフラインでの加熱で、PBT系樹脂の結晶融解温度未満であり、且つ、下層として存在する非晶性ポリエステル系樹脂が熔融軟化するには充分な温度まで加熱し、表面からエンボスロールで押圧することにより、非晶性ポリエステル系樹脂層が変形するものであり、表層であるPBT系樹脂層はあくまでも該非晶性ポリエステル樹脂層の変形に追随して変形するものである為、上記の如く熔融軟化しない層であるPBT系樹脂層の厚みが厚過ぎることがエンボス加工適性に対して不利益となると考えることができる。
押出しキャストエンボス法によりエンボスを付与する場合は、前述のようにPBT樹脂層も溶融状態にある為、エンボス転写性がPBT樹脂層の厚みに依存することはない。
なお、特許文献6の実施例においては、押出し製膜設備とは別ラインであるエンボス加工装置によりシート表面温度を160℃としてエンボス付与を実施しているが、該温度はホモPBT樹脂の融点約225℃に比べて相当に低く、PBT層自体は熔融していないことになる。
特許文献7においては、基材シート上に積層されるポリエステル系樹脂から成る透明多層保護フィルム層の表層側(上層)がPBT系樹脂60〜85質量%と、非晶性のPET系樹脂40〜15質量%から成り、基材シートと積層される側の層(下層)が非晶性のPET系樹脂を主成分として成る樹脂組成物から構成され、且つ、表層側の層厚みが、基材シートと積層される側の層厚みより相対的に薄いことを特徴とする化粧シートが開示されており、耐溶剤性や耐スクラッチ性に優れるなどの、表層が結晶性ポリエステル系樹脂より成るシートの特徴に加えて、エンボス転写性(原文ではシボ転写性と記載)にも優れている特徴を有している。
特許文献7においても、段落[0010]に「透明多層保護フィルム層の上層と下層の厚さの比が上層:下層=0.5:9.5〜5:5であると、得られる積層化粧シートのシボ転写性が良好である。本発明において、上層の厚さは薄いほどシボ転写性が良好となる。」との記載があり、やはり特許文献6と同様に、押出しキャストエンボス法により熔融した樹脂層にエンボスを付与するのではなく、オフラインの所謂アフターエンボス法により表層にPBT系樹脂を60〜85質量%含む層を有しながら、その融点以下の温度でエンボスを付与することができるのが特許文献7の技術上の特徴であると解釈できる。
特許文献8では、エンボス付与層として結晶化していない状態の結晶性ポリエステル系樹脂より成る層を用い、該層の下面側に非晶性のポリエステル樹脂より成る層を有する積層シートの構成において、積層シートを加熱し、エンボスを付与すると同時にエンボス付与層を結晶化させることによりエンボス耐熱性を確保する方法が開示されている。実施例においては、(ホモ)ポリエチレンテレフタレート樹脂より成る層を非晶の状態で製膜し、該層にエンボスを付与すると同時に結晶化を実施している。
特開2001−200146号公報 特開2002−103544号公報 特開1995−159903号公報 特開1989−180336号公報 国際公開第WO00/026282パンフレット 特開2007−210273号公報 特開2006−297917号広報 特開2001−322219号公報
しかしながら、特許文献3においては、該押出しキャストエンボス法でPBT系樹脂組成物にエンボスを付与すると同時に結晶化させることによりエンボスを固定しようとした場合、エンボスロールである所のキャスティングロールの表面温度を、PBT系樹脂のガラス転移温度に比較して高く設定しておくことで、結晶化させた状態のPBT系樹脂組成物より成るシートをキャスティングロールから剥離させることができるものであり、PBT系樹脂が、ホモPBT樹脂である場合は、キャスティングロールの温度を例えば60℃程度とすることにより、結晶化によりエンボス耐熱性が備わったと同時に、キャスティングロールからの剥離性も良好なシートを得ることができる(ホモPBT樹脂で完全に非晶状態にある場合のガラス転移温度は22℃程度とされる・「飽和ポリエステル樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊・1989年、また、特許文献3の実施例では、ガラス転移温度が−9℃のPBT系樹脂に対して、キャスティングロールの温度を約35℃に設定している)。
しかしながら、樹脂組成物の結晶化が充分に進行していない内に、キャスティングロールの剥離箇所まで達した場合は非晶状態でガラス転移温度の低い樹脂組成物を該ガラス転移温度より高い表面温度を有するロールから剥がすこととなるため、キャスティングロールへの粘着が発生し、安定した引取りが困難となる。
従って、該粘着トラブルを回避するには製膜速度をあまり高くすることができず、生産性が低下する。そこで、キャスティングロールの表面温度を更に高く設定することで、より短時間にロール剥離性が問題とならない程度の結晶性を得ることが考えられるが、PBT系樹脂より成る単層の押出しではなく、共押出しで背面に非晶性のポリエステル系樹脂より成る層や、結晶化速度が遅いポリエチレンテレフタレート系樹脂より成る層がある場合などは、シート幅方向両端部での合流界面の乱れなどから、端部の背面側樹脂がキャスティングロール側へ露出している場合があり、そのような場合、押出し樹脂の端部がキャスティングロールへ粘着する恐れがあり、やはり安定した引き取りには問題を生じ易い。また、キャスティングロールの直径を大きくすることによって、高い製膜速度で安定した引き取りを行うことも考えられるが、エンボスロールは意匠性を付与する為のものである為、各種のエンボス柄意匠のロールを多数用意しておく必要があることから、ロール製作のコストの面や、ロール交換作業のコストの面から現実的とは言えない。
また、特許文献4の金属板は缶材の用途であり、特許文献4にはエンボス意匠の付与に関する記載は無い。缶用途での耐久性を向上させる必要から、金属板との熱融着積層に際してはシート全部が熔融状態となることが必要と記載されており、その場合は、押出しキャストエンボス法を含む各種エンボス付与方法により付与したエンボスがシートの表面にあったとしても熔融消失することとなる。
また、特許文献5では、エンボスロールであるキャスティングロール(原文では冷却ロールと記載)の温度を押出し樹脂組成物の軟化開始温度±10℃に設定すると言う、極めて高温のエンボスロールを使用することが技術上の特徴となっており、ホモPBT樹脂のみから成るシートの場合ではキャスティングロールの温度を215℃程度に設定することとなっている。しかし、このような高温のロールで温度管理を厳密に実施するには、相応の設備費用が必要になると思われる。また、特許文献5では、エンボス耐熱性に関する記載はされていない。
また、特許文献6におけるエンボス付与方法の場合も、非晶性のポリエステル系樹脂層に直接エンボスを付与するよりは高いエンボス耐熱性を確保できるものと思われる。しかし、表層であるPBT系樹脂層を熔融させずにエンボスを付与するものであるため、精密な意匠を有するエンボスの転写性が制限されると考えられる。
同様に、特許文献7についても、その実施例においては、押出し製膜設備とは別ラインであるエンボス機の加熱ドラム温度を140℃として、表面温度130℃に調整されたエンボスロールを用いて、エンボス付与を実施しており、該温度もまた、特許文献6の場合と同様に、PBT系樹脂の結晶融解温度未満であり、且つ、下層として存在する非晶性ポリエステル系樹脂が熔融軟化するには充分な温度と考えることができるものであり、特許文献6と同様に精密な意匠を有するエンボスの転写性が制限されると考えられる。また、特許文献7にはエンボス耐熱性に関する記載はない。
特許文献8に関しては、確かにPET系の樹脂であれば、ガラス転移温度が室温に比較して充分に高い(ホモPET樹脂で概略69℃程度・「飽和ポリエステル樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊・1989年))ことと結晶化速度が遅いことで、押出し製膜後急冷することにより結晶化していない状態のシートを容易に得ることができることから、このようなエンボスの付与、および結晶化によるエンボス固定の方法が成立すると言える。また、結晶化していない状態のシートなので、ガラス転移温度温度以上に加熱すれば、シートの弾性率は低下しエンボス転写が可能となり、PET系樹脂の融点まで加熱しなくても良好なエンボス転写が得られる点もメリットとなる。しかし、上記結晶化速度が遅いことは、エンボス付与した後に結晶化によってエンボスを固定しようとする場合には短所となる。
即ち、エンボスロールから離れた後のシートを加熱により結晶化しようとした場合には、結晶化速度が遅いことから、結晶化よりも速くエンボス戻りが発生してしまう虞があり、この為、特許文献8においては、「エンボスを施すと同時に結晶化させる」と表現しているように、エンボスロールに接した状態で、即ちエンボスロールによる押圧と言う外力が存在することで物理的にエンボス戻りが発生しない環境化で、結晶化処理を施す必要がある。 しかし、前述の如く、PET系の樹脂では結晶化速度が遅いことから、エンボス付与ラインの処理速度が制約を受けることとなるものである。また、該方法はガラス転移温度が低く、結晶化速度が速いことから、通常の保管条件においても結晶化が進行する虞があるPBT系樹脂には適用することが難しい。
上記の問題に鑑みて、本発明は、押出しキャストエンボス法によるエンボス転写性が良好で、エンボス耐熱性が高いことから、良好なエンボス意匠を有し、加工性、意匠性、表面の耐傷入り性に優れた樹脂被覆金属板を得ることのできるエンボス意匠性積層シート、およびこの意匠性積層シートで被覆したエンボス意匠性積層シート被覆金属板を提供することを課題とする。さらに、安定した製造条件で、過度の製造工数の増大を伴わずに生産性良く提供することのできる、製造方法に関するものである。
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
第一の本発明は、表面側から順に、以下のA層、B層、およびC層の少なくとも3層を有する積層シートであって、
前記A層が、A層における樹脂成分全体の質量を基準として、融点が210℃以上、230℃以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂を75質量%以上、95質量%以下と、ガラス転移温度が70℃以上であるポリエステル系樹脂を25質量%以下、5質量%以上とから成り、厚み5μm以上、100μm以下の無配向の樹脂層であり、
前記B層が、B層における樹脂成分全体の質量を基準として、融点が210℃以上、230℃以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂を45質量%以上、70質量%以下と、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を55質量%以下、30質量%以上とから成り、着色剤を添加した厚み200μm以下の無配向の樹脂層であり、
前記C層が、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体とするガラス転移温度が60℃以上である樹脂組成物からなる厚み60μm以下の無配向の樹脂層であり、
該A層表面にエンボス転写による柄意匠を備えてなる、樹脂被覆金属板用積層シート。
この積層シート100において、A層10は、押出し製膜時のキャスティングロールにエンボス版として柄意匠の凹凸彫刻が施されたエンボスロールを用いる、所謂押出しキャストエンボス法によりエンボスが転写される層であり、押出し製膜ラインで転写率が高く、耐熱性の高いエンボス意匠を付与することができるものである。A層10のポリブチレンテレフタレート系樹脂(以下PBT系樹脂と記載)以外の樹脂成分として、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上であるポリエステル系樹脂を少量用いるのは、A層10の樹脂組成物のガラス転移温度をPBT系樹脂単一の組成物の場合に比べて幾分高くすることにより、キャスティングロールの冷却負荷を軽減できると同時に、ロール表面の結露などの製膜トラブルが発生しにくい程度の温度に調整されたキャスティングロールを用いて、且つ、比較的速い製膜速度で、非晶状態のA層の樹脂組成物がロールに粘着するのを防止する為である。PBT系樹脂単一組成の場合は、非晶状態でのガラス転移温度は22℃程度となることから、本発明のA層の樹脂組成物は、PBT系樹脂を主成分としながら、これよりガラス転移温度が高いブレンド組成物であることとなる。
即ち、本発明においては、キャスティングロールの表面温度をA層10の樹脂組成物のガラス転移温度以下に設定することでキャスティングロールからの確実な剥離性を確保するものである。従って、該ロールから剥離された時点では、肝心のエンボス耐熱性を確保する為に必要な、PBT系樹脂の結晶化は未完了と言うことになる。しかし、本発明のA層10の範囲のPBT系樹脂を含む樹脂組成物の場合は、非晶の状態で押出しキャストエンボス法によりエンボスを付与し、非晶の状態でキャスティングロールから剥離させ、その後工程で、加熱による結晶化処理を行っても、そのブレンド組成物の結晶化速度が速いことから、エンボス戻りを生じずに結晶化によるエンボスの固定を成し得る。更には、A層10のブレンド組成物のガラス転移温度は室温より若干高い程度のものである為、押出し製膜ラインのキャスティングロール以降の工程に簡易な熱処理工程等を組み込むことで、容易に結晶化によるエンボス耐熱の確保ができる。
B層20は、着色剤を添加することにより着色の意匠と、下地となる金属板等の視覚的隠蔽機能を受け持つ層である。B層20の樹脂組成物として、融点が210℃以上、230℃以下のPBT系樹脂を45質量%以上、70質量%以下と、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂55質量%以下、30質量%以上から成る組成物を用いることで、充分な視覚的隠蔽機能を付与する為に、比較的B層20の厚みを厚くした場合も、沸騰水浸漬後に外観異常を生じない積層シートを得ることができる。
また、B層20の樹脂組成が実質的に非晶性のポリエステル系樹脂を含むものであり、該実質的に非晶性のポリエステル系樹脂をベースとした各種顔料マスターバッチは豊富な種類が市販されていることから、各種色味への着色、色合わせの利便性を得られる。
C層30が付与される一つの目的は、積層シートを金属板にラミネートする際の熱接着性を良好なものとする層としての機能付与である。このような目的で非晶性や低晶性のポリエステル系樹脂から成る層を結晶性ポリエステルから成る層の金属板とラミネートする側に付与する。さらに、本発明においては、二つ目の目的として、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体として用い、C層30の樹脂組成物のガラス転移温度を60℃以上とすることにより、C層30の樹脂組成物をA層10の樹脂組成物より相対的にガラス転移温度の高い樹脂層とすることができることから、製膜ラインのキャスティングロール以降の工程に熱処理ロールを設置してA層10の結晶化を促進する場合に、C層30側を熱処理ロールとの接触面とすることで、より高温の熱処理ロールを用いることができる。したがって、より確実にA層10の樹脂組成物の結晶化によるエンボスの固定を成し得るようにすることがある。
本発明において、A層10とB層20とC層30とは、生産効率の点、および前述の結晶化処理の確実化の点から共押出し製膜法により積層一体化された状態で得られるものである。
A層10に配合されるガラス転移温度が70℃以上であるポリエステル系樹脂は、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、20モル%以上80モル%以下、の1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)と、80モル%以20モル%以上、のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルであることが好ましい。
このような組成範囲のポリエステル系樹脂は、商業的に入手しやすく、原料供給の安定性とコスト面のメリットを得ることができ、また、B層20に用いることのできる実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と同一のものを用いることで、原料購入の共通化を図れるメリットも得られる。
前記B層20の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂は、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、下限値が20モル%以上上限値が80モル%以下、の1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)と、80モル%以下20モル%以上、のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルであることが好ましい。
この組成範囲にある樹脂組成物をベースレジンとした着色剤マスターバッチが各社より豊富な種類市販されており、色意匠の付与の点でメリットがある。
前記C層30のガラス転移温度が60℃以上である樹脂組成物の主体を成す実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂は、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、20モル%以上80モル%以下、の1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)と、80モル%以下、20モル%以上、のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルであることが好ましい。
このような樹脂組成物を単一で用いた場合、そのガラス転移温度が75℃以上となることから、押出し製膜ラインにおいて熱処理ロールを設置してA層10の結晶化を促進する場合に、C層30側を熱処理ロールとの接触面とすることで、A層10単層より成るシート、或いは、A層10とB層20のみから成る積層シートの場合に比べて、より高温の熱処理ロールを用いてもロールへの粘着の虞を生じずに、したがってより確実にA層10の結晶化によるエンボスの固定を成し得るものであり、製膜ラインの速度面や作業効率の面から好ましい。
更に、このような樹脂組成物は、実質的に非晶性、または低晶性である為、積層シート、或いは積層シート被覆金属板を長期間の保管に供した後も、結晶化が進行し折り曲げ加工性などの二次加工性が低下する虞が少ない点からも好ましい。
加えて、原料供給の安定性とコスト面のメリットを得ることができる点や、C層30の樹脂組成物として、B層20に用いることのできる実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と同一のものを用いることで、原料購入の共通化を図れるメリットも得られる。
第一の本発明の積層シートにおいて、C層30に、C層30を構成する樹脂成分全体を基準(100質量%)として、15質量%以上の、融点が210℃以上、230℃以下のPBT系樹脂が配合されており、且つ、C層30の樹脂組成物のガラス転移温度が60℃以上であるものを用いても良い。
これによって、C層30の厚みが比較的厚い場合においても、本発明の積層シート被覆金属板の耐沸騰水浸漬性をより確実なものとすることができ、また、そのガラス転移温度を60℃以上としておくことで、C層30の樹脂組成物のガラス転移温度を、A層10の樹脂組成物のガラス転移温度より相対的に高いものとすることができる。
或いは、C層30の樹脂組成物として、ポリエステル系樹脂が、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、25モル%以上、45モル%以下のスピログリコールと、75モル%以下、55モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルを用いても良い。
該組成範囲のポリエステル系樹脂は、実質的に非晶性であると同時に、100℃〜115℃程度のガラス転移温度を示すことから、より高い温度の熱処理ロールを用いてA層10の結晶化処理を行うことが可能となる。また、C層30の樹脂組成物のガラス転移温度が100℃以上である場合は、C層30の厚みを厚くした場合も、積層シート被覆金属板の沸騰水浸漬試験に際して樹脂層の流動変形に起因する外観不良を生ずる虞が少ない。
また、C層30の樹脂組成物は、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、25モル%以上45モル%以下、のスピログリコールと、75モル%以下20モル%以上、のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステル系樹脂50質量%以上と、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、20モル%以上80モル%以下、の1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)と、80モル%以下20モル%以上、のエチレングリコールをジオール成分を主体とする共重合ポリエステル50質量%以下のブレンド組成物としても良い。
上記の組成範囲では、2種類の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂同士は、相容系のブレンド組成物を形成し、C層30の樹脂組成物のガラス転移温度を両樹脂のガラス転移温度間に任意に設定することが可能であり、押出し製膜ラインの速度や結晶化処理用ロールの直径などに併せて、適宜C層30のガラス転移温度を調整することができる。これに対し、組成範囲が上記範囲を外れる場合、両樹脂の相容性はやや悪くなるようであり、この場合、ガラス転移温度を上昇させる効果が不十分であり、敢えて比較的原料価格の高いスピログリコールを共重合成分として含むポリエステル系樹脂を添加する理由がなくなる。
第二の本発明は、第一の本発明の金属板被覆用積層シートおよび金属板を備え、金属板被覆用積層シートのC層30側の表面が金属板に積層されて成る、積層シート被覆金属板である。
第二の本発明の積層シート被覆金属板は、積層シートを金属板へラミネートする際に加熱を受けても、エンボス戻りを生じない高いエンボス耐熱性を有しているため、良好なエンボスの転写性による優れたエンボス意匠感を有する。また、沸騰水浸漬試験に供した場合もエンボス戻りによる外観不良を生ずることがない。更に、樹脂被覆金属板に要求される折り曲げ加工等の二次加工に対しても良好な特性を有し、且つ、表面硬度が高いことから耐傷入り性にも優れており、生産性に優れていることからコストの点でもメリットのあるものである。
第二の本発明の積層シート被覆金属板は、ユニットバス部材、建築内装材、鋼製家具部材として、好適に用いることができる。ユニットバス部材としては、例えば、ユニットバス壁材、ユニットバス天井材が挙げられ、また、建築内装材としては、例えば、クロゼットドア材、パーティション材、一般壁材等が挙げられる。本発明の積層シート被覆金属板は、
これらの材料として好適に使用できる。
第三の本発明は、第一の金属板被覆用積層シートの製造方法であって、A層10とB層20とC層30とを共押出し製膜法により積層すると同時に、キャスティングロールとして柄意匠の凹凸彫刻が施されたエンボスロールを用いることにより、A層10側表面に柄意匠のエンボスを付与する工程、および、加熱処理によりA層10の結晶化を促進することで、A層10表面のエンボスに耐熱性を付与する工程を備えてなる表面にエンボス意匠を有する金属板被覆用積層シートの製造方法である。
第三の本発明の製造法は、簡略な工程でエンボス意匠感の良好な金属板被覆用積層シートを得られることから、生産効率の向上、コスト削減が図られる。
第三の本発明においては、エンボスロールであるキャスティングロールの表面温度をA層10の樹脂組成物のガラス転移温度より低い温度に調整しておき、押出し製膜設備のキャスティングロールの後工程に、C層30の樹脂組成物のガラス転移温度より低く、且つ、A層10の樹脂組成物のガラス転移温度より高い表面温度に調整された熱処理ロールを設け、A層10とB層20、およびC層30とから成る共押出シートのC層30側の表面を該熱処理ロール表面に当接することにより、A層10の結晶化を促進することを特徴とする、金属被覆用積層シートの製造方法としても良い。
これによって、キャスティングロールからの円滑な引き剥がしが可能となり生産安定性に寄与することができると同時に、A層10表面に付与されたエンボスに確実な耐熱性を付与することができる。
本発明の樹脂被覆金属板用積層シートは、押出しキャストエンボス法で安定性良く、良好なエンボスの転写性とエンボスの耐熱性を付与することができるものである。従って、本発明の樹脂被覆金属板用積層シートは、金属板にラミネートした後も良好なエンボス意匠を有する積層シート被覆金属板を効率的に得ることができるものであり、また、これを用いた良好なエンボス意匠、沸騰水浸漬試験でも問題を生じない積層シート被覆金属板を得ることができる。
以下、本発明を具体化した実施の形態を説明する。
本発明の積層「シート」は、厚みが80〜300μmの範囲をとることから、「フィルムおよびシート」と記すのがより正しいが、ここでは一般的には「フィルム」と呼称する範囲に関しても便宜上「シート」という単一呼称を用いた。
また、「無配向」という表現は、積層シートに何らかの性能を付与するために意図して延伸操作等の配向処理を行ったものではないこと(キャスティングの後工程でテンターや縦延伸装置等を用いることにより意図して延伸操作等の配向処理を行ったものではないこと)であり、押出し製膜時にキャスティングロールによる引き取りで発生する配向等まで存在していないという意味ではない。また、「実質的に透明である」という表現は、該実質的に透明である樹脂層を通して、その下側に付与された印刷柄や、下側に存在する着色意匠を有する層の視認が可能で、且つ、著しい意匠感の低下を与えない層であるという意味である。具体的には、付与するエンボス形状にもよるが、A層およびB層が積層され、表面にエンボスが付与された状態で、JIS K 7105に準拠して測定した全光線透過率が45%以上、好ましくは55%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。且つ、ヘイズが85%以下、好ましくは55%以下、さらに好ましくは30%以下である。
[金属板被覆用積層シート]
本発明の金属板被用積層シートは、表面側から順に、A層10、B層20、C層30、の少なくとも3層を備える。以下に、各層について説明する。
<A層10>
A層10は、押出し機により溶融軟化状態としたA層10の組成物をTダイから流下させ、キャスティングロール(引き取りロール)と接触させて冷却固化させ、その後、巻取り工程等に導く一般的な押出し製膜法により製膜される層である。本発明においては、キャスティングロールとして、各種柄意匠の凹凸彫刻が施されたエンボスロールを用いることで、A層10の、B層20と積層される側の表面とは反対側の表面に各種のエンボス意匠が付与される。
(PBT系樹脂)
該柄意匠のエンボスは、後工程での加熱の際にエンボス戻りを生じることがあってはならず、その為に本発明においては、A層10の樹脂組成として、A層10における樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、融点が210℃以上、230℃以下であるPBT系樹脂を70質量%以上、95質量%以下含有して成る。
A層10はPBT系樹脂の結晶化によって、その表面に付与されたエンボスの意匠感を確保・維持する層であると言える。
A層10に用いるPBT系樹脂の融点が低過ぎる場合は、結晶化速度が遅くなること、結晶性自体が低下することにより、後工程で加熱された金属板とラミネートを実施した際に、更には、ユニットバス用途に供する為に沸騰水浸漬試験を実施した際にエンボス耐熱の不足により、A層10の表面に付与しておいたエンボスに戻りが発生し意匠感が低下する恐れがある。また、そのような融点の低いPBT系樹脂は原料価格が高価なものとなるため好ましくない。
上記の融点範囲にあるPBT系樹脂の中でも、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、または、ジメチルテレフタル酸、ジオール成分として、1.4−ブタンジオールの各単一成分を用いた、所謂ホモPBT樹脂(酸成分、ジオール成分の各全量を100モル%として、意図せざる共重合成分が数モル%程度含まれていても良い)を用いることが、コストや安定供給性の点から特に好ましい。該ホモPBT樹脂の示差走査熱量計(DSC)により測定される融点は約225℃程度であり、市販原料として得られるPBT系樹脂の中で最も高い融点を有するものである。このため、測定値の振れ等を含める意味で、本発明のPBT系樹脂の融点の上限を230℃としている。
該ホモPBT樹脂としては、三菱エンジニアリングプラスチック社製の「ノバデュラン5020H」や、東レ社製の「トレコン1200S」、ウィンテックポリマー社製の「ジュラネックス600FP」など各種の市販原料を用いることができる。
ただし、これらに限定されるものでは無く、イソフタル酸共重合PBT樹脂で、融点が210℃以上のものや、ポリテトラメチレングリコール共重合PBTで、融点が210℃以上であるもの等も用いることができる。
A層10における、PBT系樹脂の比率が低すぎる場合は、A層10を構成するブレンド樹脂組成物の結晶化速度が遅くなり、また、結晶性が低下する為、融点の低いPBT系樹脂を用いた場合と同様に後工程での加熱を受けた際にエンボス戻りの問題を生じる恐れがある。なお、A層10を本発明の所定の樹脂組成物で形成した場合は、キャスティングロールの表面温度をA層10の樹脂組成物のガラス転移温度より低く設定することにより、キャスティングロールからの剥離性を確保し、その結果として、A層10の樹脂組成物がキャスティングロールを離れる時点においては、結晶化が殆ど進行していない場合でも、そのブレンド樹脂組成物の結晶化速度が速いことから、製膜ラインの後工程等で結晶化処理を行っても、エンボス戻りを生じずに、結晶化によるエンボス耐熱の確保が可能であることが判明した。また、A層10の樹脂組成物のガラス転移温度は室温より若干高い程度のものである為、押出し製膜ラインのキャスティングロール以降の工程に熱処理ロールなどの簡易な熱処理工程を組み込むことで、大幅に加熱することなく容易に結晶化によるエンボス耐熱の確保が可能である。
一方、A層10の樹脂成分として、上記融点範囲を有するPBT系樹脂を100質量%とした場合は、エンボスの耐熱性自体は良好なものとすることができるが、PBT系樹脂のガラス転移温度が非晶状態ではホモPBT樹脂で22℃程度と比較的低いことから、キャスティングロールの冷却に相当の配慮を行わないと、該ロールへの粘着の懸念がある。更に、キャスティングロールの表面は、溶融押出しされた樹脂から熱を受け取る状態となっている為、製膜ラインの速度を上げると受け取る熱量が増大し、粘着の虞は更に高くなる。 また、非晶状態のPBT系樹脂単一組成よりなる押出し物がロールに粘着しない程度にロール表面温度を例えば15℃程度にまで下げた場合は、周囲の環境にもよるがキャスティングロール表面での結露水の発生等の恐れがあり、また供給水の冷却に要するコストも上昇する。
そこで、本発明においては、ガラス転移温度が70℃以上であるポリエステル系樹脂をA層10に5質量%以上、25質量%以下ブレンドすることにより、ブレンド組成物のガラス転移温度を若干上昇させ、これらの問題が生じ難くしたものである。
また、生産効率の点から、A層10と後述するB層20、およびC層30とは、共押出し製膜法により積層一体化された状態で製膜されたものであるが、A層10のPBT系樹脂の配合量が本発明の範囲より多く、従ってA層10の結晶性が高すぎると、共押出し積層シートに結晶化処理を施した際の反りが著しいものとなり、後工程での取り扱いに支障を来たす恐れがある。
エンボス耐熱性確保の点からは、A層10におけるPBT系樹脂の配合量は、A層の樹脂成分の全量を基準として、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが特に好ましい。一方、キャスティングロールからの剥離の安定性確保や過度な反りの防止の点からは、PBT系樹脂は92質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが特に好ましい。
また、PBT系樹脂は、無配向で結晶化した状態でも、同様に結晶化した状態のポリエチレンテレフタレート(以下PETと記載)系樹脂よりも遥かに良好な加工性を得られる。これは、無配向のPET系樹脂のように巨大な球晶を形成することが無いことや、結晶弾性率がPET系樹脂のそれに比べて低く、結晶領域が柔軟であることによると考えられる。これより、PBT系樹脂を75質量%以上、95質量%以下含む本発明のA層10の樹脂組成は、積層シートで被覆した金属板の態様で、折り曲げ加工等の二次加工に供された場合に、樹脂層の曲げ部分の白化、微細クラックの発生、割れなどの問題を生じ難い。
(PBT系樹脂以外の樹脂成分)
A層10のPBT系樹脂以外の樹脂成分である、ガラス転移温度が70℃以上のポリエステル系樹脂成分としては、後述のC層30の主体として用いることかできる実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂の中からガラス転移温度が70℃以上であるものを好ましく用いることができる。A層10のPBT系樹脂以外の樹脂成分は、その添加量が限定的である為、後述するB層20やC層30の場合と異なり、結晶性を有するポリエステル系樹脂でも問題なく使用できる場合があるが、ホモPET等の結晶性の高い樹脂を用いた場合は、経時的にPET系樹脂の結晶化が進行し、その結晶相の加工性がPBT系樹脂の結晶相の加工性より劣ることから、A層10の加工性が劣化し、結果的に積層シートを被覆した金属板の加工性が経時的に低下する虞があることによる。無論、上記のような加工性低下が問題とならないような軽度な二次加工のみが施される用途では、ガラス転移温度が70℃以上である結晶性を有するポリエステル系樹脂を用いても良い。
A層10の押出し製膜時のキャスティングロールからの剥離安定性を、該ロールを過度に冷却することなしで確保すると言う点からは、A層10のPBT系樹脂以外の樹脂成分としては、上記好ましいポリエステル系樹脂より更に高いガラス転移温度を有するものを用いることが考えられるが、現実の製膜においては、上記ガラス転移温度が70℃〜90℃程度のポリエステル系樹脂のブレンドで、キャスティングロールに過度な冷却を施すことなく問題の無い剥離安定性が得られている。また、更にガラス転移温度の高いポリエステル系樹脂を用いた場合も、その配合量が限定されることから、A層10の樹脂組成物のガラス転移温度を向上させる効果としては大差がなく、原料価格が高い樹脂を用いた割には上記好ましいポリエステル系樹脂を用いた場合と比べて顕著な効果が得られる訳ではない。
また、A層に好ましく用いることのできる前述の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂は、PBT系樹脂と相容性のブレンド組成物を形成する為、効率的にA層10の樹脂組成物のガラス転移温度を高めることができる。ただし、一般的に用いられているポリエステル系樹脂は、殆どの場合においてPBT系樹脂との相容性を有しているため、その点については本発明の範囲を限定する用件としては用いなかった。
ただし、ポリエステル系樹脂に分類されることのある芳香族ポリカーボネート系樹脂等は、ガラス転移温度は高いが、PBT系樹脂との相容性に劣る為好ましくない。
(添加剤等)
A層10には、その結晶化速度を速める為に、結晶核剤を添加しても良く、ソルビトール系や燐酸エステル系などの有機核剤や、微細シリカ粒子などの無機核剤等各種の市販核剤を適宜な量添加しても良い。また、核剤として市販されているものでは無いが、ポリエステル系樹脂の結晶化速度を速める効果を有する添加剤(例えばモンタン酸ワックス類やタルクなど)を同様に適宜な量添加しても良い。
一般的な添加量としては、A層の樹脂成分の全量を基準(100質量部)として、0.1質量部〜2質量部程度の範囲である。
また、A層10には、その性質を損なわない範囲において、あるいは本発明の目的以外の物性をさらに向上させるために、各種添加剤を適宜な量添加しても良い。添加剤としては、燐系・フェノール系他の各種酸化防止剤、熱安定剤、プロセス安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、艶消し剤、衝撃改良剤、加工助剤、金属不活化剤、残留重合触媒不活化剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、充填材等の広汎な樹脂材料に一般的に用いられているものや、カルボジイミド系、エポキシ系や、オキサゾリン系他の末端カルボン酸封止剤、あるいは加水分解防止剤等のポリエステル樹脂用として市販されているものを挙げることができる。これらに関しても使用される目的に応じて、通常使用される量を添加すれば良い。
A層10への着色顔料や染料類など着色剤の添加は任意である。しかし、A層10、および後述するC層30は着色剤無添加、或いは極く少量の着色剤しか添加しない層としておくことが好ましい。これは、押出し製膜時のダイリップに着色剤成分起因の吹出し物が付着することに起因したシートへのスジ入り不良の発生等の虞を低減できる為である。
A層10の好ましい厚みは、下限が好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、上限が好ましくは100μm以下、より好ましくは、60μm以下である。A層10の厚みが過度に薄いとB層20、およびC層30との共押出し製膜法で作成する場合に、A層10がシートの幅方向端部まで展開しない虞がある。逆に厚みが厚過ぎる場合は、キャスティングロールによるエンボス意匠の付与には問題が無いものの、後工程での熱処理時に積層シートの反りが顕著となる虞や、流れ方向の皺入りを発生する虞がある。
[B層20]
B層20は、着色剤を添加することにより着色の意匠付与と、下地となる金属板等の視覚的隠蔽機能を受け持つ層であり、且つ、共押出し積層されるA層10、およびC層30と強固な界面密着力を得ることができる層であることが求められる。
また、下地の視覚的隠蔽性確保の点から、ある程度の厚みがある層とする必要があり、積層シート被覆金属板を沸騰水浸漬試験に供した場合、B層20の耐熱不足(弾性率低下)により積層シートが流動変形し外観不良を生ずることがない層である必要がある。
B層20を構成する樹脂成分は、B層20の樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、融点が210℃以上、230℃以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂、45質量%以上、70質量%以下と、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂55質量%以下、30質量%以下から成る。
PBT系樹脂としては、前述したA層10に用いることができるPBT系樹脂と同様のものを用いることができる。また、中でも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸、ジオール成分として1,4−ブタンジオールの各単一成分を用いた、いわゆるホモPBT樹脂(意図せざる共重合成分が入っていても良い)を用いることが、コストや入手の容易さの点から好ましい。該B層20に配合されるPBT系樹脂と、A層10に配合されるPBT系樹脂は、組成、融点などが異なるものであっても構わないが、原料購入の面や製膜設備における原料関係の設備の簡易化の点からは、いずれの層にも、ホモPBT樹脂を用いることが特に好ましい。B層20に配合されるPBT系樹脂の量は、50質量%以上、65質量%以下であることが更に好ましい。
A層10表面に付与されたエンボスの耐熱性を確保する為には、A層10の樹脂組成として75質量%以上のPBT系樹脂を含む樹脂組成物からなり、且つ、エンボス戻りを生じない程度にA層10が結晶化している必要があるが、これは、エンボスの凹凸が比較的浅いものであるため、極く僅かなエンボス戻りを生じた場合も、意匠感の著しい低下として認められることによる。これに対し、B層20においては、沸騰水浸漬時にB層20自体の弾性率が低下することにより、樹脂層の流動変形を生じないことが求められるものであり、この場合には、B層20に45質量%以上、70質量%以下のPBT系樹脂を含むことで目的は達せられる。また、金属板へのラミネート前の積層シートの状態において、或いは、沸騰水浸漬試験に供する前の積層シート被覆金属板の状態において、B層20の樹脂組成物は、必ずしも結晶化している必要が無い点も、A層10に求められる物性とは異なる点である。上記範囲のPBT系樹脂を含むB層20は、非晶の状態、或いは結晶性の低い状態であった場合も、沸騰水浸漬に供した際に直ちに結晶化が進行し、その融点である210℃に至るまで高い弾性率が保持されることとなる為、沸騰水浸漬によりB層20が流動変形を生じることがない。
B層20の樹脂組成として、A層10と同様にPBT系樹脂を70質量%を超える量含むものとした場合は、押出製膜ラインでの積層シートの加熱によるA層10の結晶化処理の際に、A層10とB層20とが同時に結晶化することとなり、積層シートへの流れ方向の皺入りが顕著に発生する虞がある。逆にB層20がPBT系樹脂を45質量%未満しか含まない場合は、積層シートを被覆した金属板を沸騰水浸漬試験に供した場合に、耐熱性不足(弾性率低下)により外観不良を生ずる虞がある。
また、B層20は、着色意匠の付与を担う層である為、各種の着色剤を添加する必要があるが、顔料などの着色剤を予備混練したペレットである所謂顔料マスターバッチに関しては、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂をベースレジンとしたものが、PBT系樹脂をベースレジンとしたものに比べて遥かに多く市販されており、各種色味への着色、色合わせの利便性等から、前者を選ぶことが好ましい。B層20の樹脂組成が、55質量%以下、30質量%以上の実質的に非晶性のポリエステル系樹脂を含み得ることは、着色意匠の付与の点からもメリットとなる。B層20のPBT系樹脂の配合量が70質量%を超えると、これら非晶性樹脂をベースレジンとした顔料マスターバッチを配合できる量が少なくなり、着色意匠の自由度に制限を受ける虞がある。
また、B層20に用いられる実質的に非晶性のポリエステル系樹脂は、後述するC層30の樹脂成分の主体として用いるものと同様のものを用いることができるが、中でも、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸を酸成分の主体とし、20モル%以上、80モル%以下の1,4−シクロヘキサンジメタノールと、80モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
該組成範囲にある共重合ポリエステル系樹脂の中でも、ジオール成分の約30モル%が1,4−CHDMである所謂PETG樹脂をベースレジンとした顔料マスターバッチ類が、豊富な種類市販されており、それを用いることで、各種色味への着色や、色合わせの利便性を得ることができる。
(着色剤)
B層20は着色剤を添加することが必須の層である。使用される着色剤としては、上記のようにPETG樹脂をベースレジンとして、予備混練を施すことで分散性を向上させた顔料マスターバッチを用いることが好ましい。また、着色剤の添加量は、上記目的のために一般的に添加される量で良く、B層20の全質量に対して、下限値は0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、上限値は、60質量%以下好ましくは50質量%以下である。一例としては、白系の着色では隠蔽効果の高い酸化チタン顔料をベースとして、色味の調整を無機系および/または有機系の各種有彩色顔料で行うことができる。黒系の着色では、カーボンブラック等の黒色顔料をベースとして、上記酸化チタンなどの白色顔料により明度を適宜調整すると同時に、色味の調整を無機系および/または有機系の各種有彩色顔料で行うことができる。
着色剤を添加する目的としては、色味の意匠を付与することの他に、下地の視覚的隠蔽効果を付与することがある。視覚的隠蔽効果は、用途によって重要度が異なってくるが、内装建材用途のエンボス意匠シート被覆金属板等においては、JIS K5400 7.2「塗料一般試験方法・隠蔽率」に準拠して測定した隠蔽率が積層シートの構成で0.97以上であることが好ましい。
隠蔽率がこれより低いと金属板等、下地となる基材の色味が、積層シートの色味に反映されて、金属板表面の処理の違い等により下地の色味が変化した際、積層シートの表面から観察される樹脂シート被覆金属板の色味も変化して見えるため好ましくない。ただし、この理由による色味の変化が特に問題とならない用途においては、隠蔽率は0.97以上にこだわらなくてもよい。
B層20にも、A層10に用いることができるものと同様の各種添加剤を適宜の量添加しても良い。
B層20の厚みは、60μm以上であることが好ましく、より好ましくは65μm以上であり、特に好ましくは70μm以上である。上限が好ましくは200μm以下であり、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは120μm以下である。 厚みがこれより薄いと、充分な着色意匠や下地の隠蔽機能を付与する為には多量の着色剤を添加する必要が生じ、押出し製膜性が悪化したり、加工性の低下を来たし、積層シート被覆金属板を折り曲げ加工等の二次加工に供した場合に、樹脂層に割れや、クラック、白化等の不具合を生じやすくなる。
また、B層20に配合できるPETG樹脂の量には制限があり、従ってPETG樹脂をベースレジンとした顔料マスターバッチの配合量も制約を受けることとなり、その条件下で充分な着色意匠や下地の隠蔽機能を付与するためにも、B層20の厚みとして60μm以上であることが好ましい。
逆に、厚みをこれより厚くしても、必要な機能は飽和すると同時に、後述するように、積層シート全体としての厚みに制約があることから、相対的に他の層を薄くする必要を生じ、これらの層の機能発現不全をもたらす恐れがある。
[C層30]
C層30に求められる機能の一つは、積層シートを金属板にラミネートする際の熱接着性を良好なものとする層であり、この目的の為にC層30の樹脂組成として実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主成分として用いるのであるが、更に本発明においては、製膜ラインのキャスティングロール以降の工程に熱処理ロールを設置してA層10の結晶化を促進する場合に、C層30側を熱処理ロールとの接触面とすることで、より高温の熱処理ロールを用いることができる層であることが必要である。従ってC層は、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体として構成されるが、その樹脂組成物のガラス転移温度が60℃以下であってはならない。
また、共押出し積層されるB層20と強固な界面密着力を得ることができる樹脂組成物より成る層であることが求められる。
上記理由から、C層30に用いる樹脂成分としては、ガラス転移温度が60℃以上である実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主成分とすることが好ましく、ガラス転移温度が70℃以上である実質的に非晶性のポリエステル系樹脂を主成分とすることが更に好ましい。主体とするとは少なくともB層20の樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、55質量%以上、好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上含まれることを言う。C層30を形成する実質的に非結晶性(低結晶性のものも含む)のポリエステル系樹脂としては、示差走査熱量計(DSC)により、昇温時に明確な結晶化ピーク、および/または、結晶融解ピークを示さないポリエステル系樹脂のみでなく、結晶性を有するものの結晶化速度が遅く(示差走査熱量計(DSC)を用いて「パーキンエルマー法」により120℃に保持して測定した1/2結晶化時間が200秒以上であるもの)、押出し製膜法によるシート作成時のキャスティングロールと対向するシリコーンゴムロールとの接触や、A層の結晶化を促進する為の熱処理ロールとの接触で、或いは、シート保管時の倉庫の温度上昇などで加熱を受けた際に結晶性が高い状態とならないポリエステル樹脂、および、結晶性を有するものの示差走査熱量計(DSC)により、昇温時観測される結晶融解熱量(△Hm)が10J/g以下と低い値であるものを使用することができる。
C層30の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂としては、テレフタル酸またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、20モル%以上、80モル%以下の1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)と、80モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルであることが、原料入手の容易さから好ましい。
ここで、ジカルボン酸成分における「主体」とは、ジカルボン酸成分全体量を基準(100モル%)として、テレフタル酸またはジメチルフタル酸を70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは98モル%以上含むことをいう。また、ジオール成分に於ける「主体」とは、ジオール成分の全体量を基準(100モル%)として、1,4−CHDMおよびエチレングリコールの合計量として好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上含むことを言う。
ジオール成分における、1,4−CHDMの量がこれより少ないと、結晶性樹脂としての特徴が顕著になり、製膜時には非晶性であるC層30を得ることができても、その後工程で何らかの加熱を受けた場合に結晶化が進行し金属板とのラミネート強度が得られなくなる虞があり好ましくない。逆に、1,4−CHDMの量が多すぎる場合も、やはり結晶性が顕著になり、さらに非常に高い融点を示すようになることから好ましくない。
該組成範囲にある共重合ポリエステル樹脂の中でも、1,4−CHDMがジオール成分の約30モル%付近の組成では、DSC(示差走査熱量計)測定においても結晶化挙動が認められない、完全に非晶性を示すことが知られており、該完全に非晶性のポリエステル系樹脂としては、PETG樹脂を挙げることができる。PETG樹脂としては、例えば、イーストマンケミカル社製の「イースターPETG・6763」等を挙げることができ、多くの用途に用いられていることから原料の安定供給体制が確立されており、また、低コスト化が図られている点から本発明のC層30の主体となる樹脂成分として特に好ましく用いることができる。該PETG樹脂のガラス転移温度は78℃程度である。
ただし、これに限定されるものではなく、特定の条件では結晶性を示すが通常の押出し製膜条件やエンボス付与条件では非晶性樹脂として取り扱うことが可能なイーストマンケミカル社の「PCTG・5445」(ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分の約60モル%が、1,4−CHDMで、約40モル%がエチレングリコールである共重合ポリエステル樹脂)等を用いることもできる。該「PCTG・5445」のガラス転移温度は、86℃程度である。
また、特開2002−069165号公報に組成が開示されているスピログリコールを共重合した実質的に非晶性のポリエステル系樹脂も、本発明のC層30の樹脂成分の主体として好適に用いることができる。他の共重合組成にも影響を受けるが、スピログリコールの共重合比率がジオール成分の約25モル%を超える範囲では、ガラス転移温度が100℃を超える非晶性ポリエステル系樹脂を得ることができ、そのような樹脂組成物を主体としてC層30を構成した場合にはC層30の厚みに関わらず、積層シート被覆金属板を沸騰水浸漬試験に供した際に、C層30の耐熱性不足に由来する外観不良の発生を効果的に抑制することができる。よって、特に、ユニットバス用途等に本発明の積層シートを被覆した金属板が供される場合等に、このような配合が好適に採用される。
更に、押出製膜ラインにおいて、A層10の結晶化を促進する為に、C層30の表面を加熱ロールと接触させる場合も、PETG樹脂を主成分としたC層30を用いた場合よりも、更に加熱ロールの表面温度を高く設定することが可能となり、より効率的にA層の結晶化処理を実施することが可能となる。
このようなガラス転移温度が100℃以上であるスピログリコール共重合の非晶性PET系樹脂としては、三菱瓦斯化学社製の「アルテスター30」(ガラス転移温度約104℃、ジオール成分の約30モル%がスピログリコールである非晶性の共重合PET系樹脂)、や同じく三菱瓦斯化学社製の「アルテスター45」(ガラス転移温度約113℃、ジオール成分の約43モル%がスピログリコールである非晶性の共重合PET系樹脂)などを用いることができる。
また、沸騰水浸漬時のC層30由来の外観不良の抑制は、C層30の厚みを制限することで実施する為、C層30の樹脂組成物が100℃を超えるガラス転移温度を有する必要は無いが、A層10の結晶化処理のための加熱ロール温度を高めて、処理効率を高めたい場合などは、上記のスピログリコール共重合PET系樹脂50質量%以上と、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸を酸成分の主体とし、20モル%以上、80モル%以下の1,4−シクロヘキサンジメタノールと、80モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステル(1,4−CHDM共重合PET系樹脂)50質量%以下とのブレンド組成物から成るC層30を用いても良い。
該組成範囲では、これら2種の共重合ポリエステル系樹脂は良好な相容性を示し、スピログリコール共重合PET系樹脂の配合量に応じてC層30のガラス転移温度を高めることができる。これよりスピログリコール共重合PET系樹脂の配合量が少ない場合は、1,4−CHDM共重合PET系樹脂との相容性がやや悪くなるようであり、ガラス転移温度を向上させる効果が乏しくなることから、あえてブレンド組成物とする理由が乏しくなる。
また、三菱瓦斯化学社製の「アルテスター20」(ガラス転移温度約98℃、ジオール成分の約20モル%がスピログリコールである共重合PET系樹脂)も同様の目的で用いることができる。
C層30の主成分となる実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂としては、上記組成のポリエステル系樹脂以外でも、ネオペンチルグリコール共重合PETで結晶性を示さないもの(一例として、東洋紡社製の「コスモスター・SI−173」(ガラス転移温度75℃))や、結晶性の低いもの、などの共重合成分の導入により結晶化を阻害した構造の共重合PET系樹脂や共重合PBT系樹脂も用いることができる。ただし、テレフタル酸以外の酸成分として、アジピン酸やセバシン酸などを共重合したPET系樹脂やPBT系樹脂では、その共重合比率が高いほど、従って結晶性が低くなるほど、ガラス転移温度も低くなる為、本発明のC層30の樹脂組成物の主体としては用い難くなる。
C層30における樹脂成分全体の質量(100質量%)を基準として、C層30には、15質量%以上の融点(Tm)が210℃以上230℃以下のPBT系樹脂が配合されていても良い。C層30におけるPBT系樹脂の配合割合は、下限がより好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。PBT系樹脂を配合することにより、積層シート被覆金属板を沸騰水浸漬試験に供した際に、C層30の耐熱性不足(弾性率低下)に由来する外観不良の発生を効果的に抑制することができる。よって、特に、ユニットバス用途等に本発明の積層シートを被覆した金属板が供される場合等に、このような配合が好適に採用される。
ただし、PBT系樹脂の配合量の上限は、C層30に用いる樹脂組成物のガラス転移温度が60℃以上となる量である必要がある。これは前述の如く、A層10の結晶化の促進を容易にする為の層としての機能をC層30に持たせる必要があるためであるが、PBT系樹脂の配合量が増える程、C層30の樹脂組成物のガラス転移温度は低下することとなる。しかし、ブレンド樹脂組成物のガラス転移温度は、PBT系樹脂の配合量のみで決まるものではなく、使用する実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂、PBT系樹脂の夫々のガラス転移温度にも依存するものである為、ここでは、PBT系樹脂の配合量の上限としては規定せず、ブレンド組成物のガラス転移温度として60℃以上である、と規定したものである。
PBT系樹脂としては、前述したA層10に用いることができるPBT系樹脂と同様のものを用いることができる。また、中でも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸、ジオール成分として1.4−ブタンジオールの各単一成分を用いた、いわゆるホモPBT樹脂(意図せざる共重合成分が入っていても良い)を用いることが、コストや入手の容易さの点から好ましい。該C層30に配合されるPBT系樹脂と、A層10に配合するPBT系樹脂は、組成、融点などが異なるものであっても構わないが、原料購入の面や製膜設備における原料関係設備の簡易化の点からは、いずれの層にも、ホモPBT樹脂を用いることが特に好ましい。
C層30に配合するPBT系樹脂の量が多すぎると、C層30の結晶性が顕著になり、金属板にラミネートする際に、充分な密着強度が得られなくなる虞がある。また、PBT系樹脂の配合量が増えるほど、C層30の樹脂組成物のガラス転移温度は低下することとなり、前述の押出し製膜ラインでの結晶化処理の際、C層30が存在することのメリットが希薄となる。逆に、配合するPBT系樹脂の量が少なすぎると、実質的に非晶性のポリエステル系樹脂のみからC層30を構成した場合と沸騰水浸漬試験後の形状保持効果に大差がなくなり、あえてブレンドする理由がなくなる。
(C層への添加剤)
C層30にも、A層10に用いることのできる各種添加剤を適宜な量添加しても良い。
また、C層30に関しては、その表面側に着色意匠と視覚的隠蔽効果の付与を受け持つB層20が存在することから顔料等の着色剤は添加の必要がない。
C層30の好ましい厚みは、下限が好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上であり、上限が好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下である。C層30の厚みが過度に薄い場合は、A層10およびB層20と共押出し製膜法で作成するとは言え、安定した製膜性を確保できない虞がある。逆に、C層30の厚みがこれより厚い場合は、積層シートとしての総厚みに加工性の面からの制約があることから、他の層を薄くする必要が生じ、他の層が受け持つべき機能の発現不全をもたらす恐れがある。
[A層、B層、C層から成る共押出シート]
共押出し法で製膜されるA層10、B層20、およびC層30が積層されたシートの厚みとしては、下限が好ましくは48μm以上、より好ましくは60μm以上であり、上限が好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
厚みがこれより薄い場合は、シートとしての取り扱い性に問題を生じる恐れがあり、また、厚みをこれより厚くしても、必要な機能は飽和すると同時に、積層シートとしての合計厚みに制限があることから他の層の機能発現不全をもたらす恐れがある。
また、A層10とB層20、C層30が積層されたシートの厚みは、エンボス意匠の良好な転写という点からは、エンボスロールの版深さ(最大深さ・Ry値)の1.2倍以上、6倍程度以下であることが好ましく、1.3倍以上で、2倍以下であることがより好ましい。これより厚みが薄いと、版の種類にもよるが「裏シボ」と呼ばれる、エンボスロールを押圧したシート表面とは反対側の表面(本願の場合はB層20の表面)へのエンボス柄の反映による凹凸が発生する虞があり、該「裏シボ」による凹凸が顕著なシートは、加熱された金属板へラミネートする際に裏シボが潰れることにより、A層10表面に付与されたエンボスの意匠感が悪化したり、裏シボ部分に気泡を抱き込んだままラミネートされることで、ブリスター状の膨れを生じることで外観不良を生ずる虞がある。エンボスロールの版深さに対するシート厚みの比が3倍を超えても、それ以上の転写の改善は得られない場合が多い。
本発明のA層10、B層20および、C層30が共押出し製膜法で積層されたシートを作成するには、ベント装置等ポリエステル系樹脂の押出し成形に必要な設備を備えた二台の熔融混練押出機と、ギアーポンプ、フィードブロック、それに所要の接続導管類、単層Tダイを用いて、フィードブロック方式による共押出し製膜を実施しても良いし、フィードブロック法に代えて、マルチマニフォールド型のTダイを用いて共押出し製膜しても良い。
本発明においては、上記の製膜の際にキャスティングロールとして、通常の表面が鏡面仕上げされた金属ロールを用いる代わりに、各種柄意匠のエンボス凹凸が表面に彫刻されたエンボスロールが用いられる。Tダイから熔融流下した2層の樹脂のA層10側が該キャスティングロールとの接触面となるようにして引き取りが行われると同時に、A層10表面に柄意匠のエンボスを転写し、シート状押出し製膜品の製造ラインに通常設置されている巻取り装置などの後工程へ導かれる。
[A層10の結晶化処理]
本発明のA層10の樹脂組成物は、そのガラス転移温度より低い温度に調整されたキャスティングロールにより熔融状態から冷却固化されたものである為、該ロールを離れた時点では高い結晶性は有していない。しかし、融点が210℃以上であるPBT系樹脂を主成分として構成された層である為、結晶化速度が速く、結晶化温度も低い層であり、押出し製膜ラインのキャスティングロール以降の工程に簡易な結晶化処理工程を組み込むことで、オンラインで容易にエンボス戻りを生じずに結晶化によるエンボス耐熱の確保ができる。該結晶化処理の方法としては、加熱ロール(熱処理ロール)への密着による方法が結晶化収縮に起因する皺の発生等の虞が少ない点から特に好ましい。本発明においては、C層30を構成する樹脂組成物が、A層10の樹脂組成物より相対的にガラス転移温度が高く、且つ、C層30側の表面は比較的平滑な面であるため、C層30側を熱処理ロールへの密着面とすることで、より効率的な結晶化処理を行うことができる。ただし、C層30は、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体として成り、ガラス転移温度が60℃以上である層と規定される為、熱処理ロールの表面温度としては60℃弱程度が上限となる場合もある。しかし、本発明のA層10の樹脂組成物は、この程度の温度でも充分に結晶化が促進され、エンボス戻りを生じずに、エンボスの耐熱性を確保することができる。
A層10の結晶化処理は、特に上記方法によらずとも、押出し製膜ラインのキャスティングロール以降の工程に、熱風吹き出し装置等を付与することにより実施しても良いが、結晶化による幅収縮に起因した皺の発生に注意する必要がある。また、シートをロール状に巻き取った紙管を40℃程度に温調された恒温室や恒温容器に数時間から数日間放置することによっても可能であるが、このような状態で結晶化が進行すると、紙管抜けが発生したり、シートに収縮皺が発生したりするなど、以降のシートの取り扱い性が悪化する虞がある。従って、上記の如く、製膜ラインにおいて結晶化処理を施しておくことが好ましい。
[積層シートの作成、エンボス意匠シートの製造方法]
積層シート全体(A層10+B層20+C層30)での好ましい厚みの下限値は、48μm以上好ましくは60μm以上、上限値は、300μm以下好ましくは200μm以下の範囲である。積層シートの総厚みが薄すぎる場合は、下地の視覚的隠蔽確保のために、着色意匠の付与を担う層であるB層20に多量の顔料を添加する必要があり、その結果加工性の低下を来すおそれがある。また、総厚みが薄過ぎる場合には、A層10の表面に付与可能なエンボス意匠も凹凸の浅いものに限定され、充分な意匠感を得ることが難かしくなる。一方、積層シートの厚みが厚すぎる場合は、軟質PVC樹脂被覆金属板の折り曲げ加工などの成形加工に従来から用いて来た成形金型の使用が困難になるなど、2次加工性に問題を生じる虞がある。
本発明の積層シートの製造方法について以下説明する。まず、A層10とB層20とC層30とを共押出し製膜法で一体化された状態で製膜し、且つ、該押出し製膜時にキャスティングロール(引き取りロール)として、柄意匠の凹凸彫刻が施されたエンボスロールを用いることにより、A層10側表面にエンボス意匠を付与する。エンボス意匠の種類については、例えば石目調、木目調、皮目調などの天然材を模した柄、幾何学幾何学模様、抽象柄模様等任意のものを用いることができ、必要に応じて、それらの組み合わせや、部分的に彫刻が施されていない鏡面の部分が存在するエンボスロールを用いても良い。或いは、梨地、砂目などの艶消し意匠を付与する為のものを用いても良い。
そして、製膜ラインのキャスティングロール以降にC層30のガラス転移温度よりやや低い程度の表面温度に温調された結晶化ロールを設けておき、C層30側の表面を接触面としてロールと当接することによりA層10の結晶化を促進させ、A層10の表面に付与されたエンボスの耐熱性を確保しておく。
また、エンボス付与されたA層10表面の凹部分には、いわゆるワイピング印刷による着色意匠を付与したり、光沢のあるワイピングインキを用いることで、凹部のみ光沢のある意匠感を付与したり、逆に光沢の無いワイピングインキを用いて、凹部の陰影を強調するような意匠感を付与しても良い。ワイピング印刷によりエンボス凹部に形成される着色インキ、および/または光沢の調製に用いる透明インキ層は、2液硬化型のウレタン系樹脂等をビヒクルとして使用したインキにより形成することが耐久性の点から好ましいが、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等から成る1液インキを使用して形成しても良い。
ここでの、着色インキに使用する顔料としては、通常の印刷インキ用に用いられる顔料を用いることができる。該樹脂被覆金属板用意匠シートのエンボス凹部へワイピング印刷を付与すること自体は、軟質PVCシートを用いたエンボス意匠シートの時代から実施されてきたものであり、ドクターブレード法、ロールコート法などの各種公知の方法によって、ワイピングインキ層を付与することができる。
[積層シート被覆金属板]
本発明の積層シートのC層30側を接着剤を用いて金属板40にラミネートすることにより、積層シート被覆金属板が得られる。
本発明に用いる金属板40としては、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、スズメッキ鋼板、アルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム・マグネシウム・亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板等の各種鋼板やアルミニウム板、アルミニウム系合金板、アルミニウム合金系クラッド板、チタン系合金板、ハステロイ等ニッケル系合金板、マグネシウム系合金板等が使用でき、これらは通常の化成処理を施した後に使用しても良い。基材金属板の厚さは、積層シート被覆金属板の用途等により異なるが、0.1mm〜10mmの範囲で選ぶことができ、内装建材用途等では通常0.25mm〜1.6mm程度の厚みのものが用いられる。
積層シートを金属板40にラミネートする方法に特に制限はないが、接着剤によるラミネートが一般的である。接着剤としては、従来より軟質PVCシートを金属板にラミネートする為に用いられてきた、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤等の加熱硬化型接着剤を用いることが好ましく、これらの中でも、シートがポリエステル系樹脂から成ることから、ポリエステル系の接着剤を特に好ましく用いることができる。
ラミネート方法についても、従来法によることが、既存設備を利用できる点から好ましい。
即ち、金属板40にリバースコーター、キスコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用して、積層シートを貼り合せる側の金属板40の表面に、乾燥後の接着剤膜厚が1〜10μm程度になるように上記の加熱硬化型接着剤を塗布する。
次いで、赤外線ヒーターおよび/または、熱風加熱炉により塗布面の乾燥および加熱を行い、金属板の表面温度を、215℃〜240℃程度の温度に保持しつつ、直ちにロールラミネーターを用いて積層シートのC層30側が接着面となるように被覆、水噴射などの急冷冷却が実施できる方法により、積層シート中の含有水分が加熱されて発泡を生じない内に冷却することにより、積層シート被覆金属板を得ることができる。
また、本発明の積層シート被覆金属板は、良好な加工性を有し、ユニットバス壁材、ユニットバス天井材等のユニットバス部材、クロゼットドア材やパーティション材およびパネル材等の建築内装材、ドア材、鋼製家具部材、AV機器、エアコンカバー等の家電製品筐体部材として、好適に用いることができる。
本発明をより具体的かつ詳細に説明するために、次に実施例を示すが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
<実施例1〜35、比較例1〜19>
[A層+B層+C層の一体シートの作成]
実施例1〜35、および比較例1〜19に用いるA層、B層、C層の三層共押出シートは、A層、および、B層の樹脂組成物の押出し用として、シリンダー直径φ65mmの2箇所にベント装置を有する2台の同方向二軸混練押出機(JSW社製の「TEX−65」)を夫々使用し、C層の樹脂組成物の押出し用として、シリンダー直径φ37mmの2箇所にベント装置を有する同方向二軸混練押出機(東芝機械社製の「TEM−37」)を使用し、計3台の押出機によりフィードブロック方式の共押出法によって、Tダイより流出した樹脂をキャスティングロール(引き取りロール)で引き取る一般的方法により得た。押出し機のシリンダー設定温度は、フィード側200℃、口金側250℃で、各押出し機について同様である。Tダイの設定温度は250℃を基準とし、厚み分布等製膜の状況に応じて適宜幅方向の温度設定の微調整を行った。各種接続導管やフィードブロック部の設定温度も250℃である。尚A層として、表1中のa−20、a−21、および、a−23、a−24を用いたシートのみ、原料の融点が高いものを用いる為、Tダイや、フィードブロック部の温度設定を265℃を基準とし、A層側押出し機の口金側温度設定や、接続導管類も265℃としている。
なお、キャスティングロールは、20℃の水を循環させることにより温度調整されており、表面に中心線平均粗さ(Ra)が9μm、最大高さ(Ry)が54μmの石目の柄を基調とした抽象柄の凹凸を付与する為のエンボスが彫刻された直径400mmの表面メッキ処理された金属ロールである。Tダイから流下した積層構成の熔融樹脂は、A層を形成する側をキャスティングロール側となるように押し出され、C層を形成する側には、水を循環させることにより40℃程度の表面温度に調整されたシリコーンゴム製のタッチロールが当接されるようにした。キャスティングロールを離れた時点でのシートの流れ速度(製膜速度)は、30m/分であった。
このようにして共押出し製膜されたA層とB層とC層より成るシートに、製膜ラインのキャスティングロール設備の後工程に設置された熱処理ロールを用いて、A層の結晶化処理をオンラインで実施した。熱処理ロールは、60℃の水を循環させることにより温度調整された、直径500mmの表面メッキされた金属鏡面ロールである。熱処理ロールには、積層シートのC層側表面が接触面となるように通され、ロール面長のほぼ65%でシートが接触する状態となっている。
A層の樹脂組成とA層の厚みを表1に、B層の樹脂組成とB層の厚みを表3に、C層の樹脂組成とC層の厚みを表4に示した。また、A層の樹脂組成物のガラス転移温度を表1中に記載したが、PBT樹脂を主成分とする樹脂組成物では手で触れただけで結晶化が進行するなど、非晶の状態での測定試料の採取が非常に困難であり、一方で本発明の実施に際しては結晶化した状態でのガラス転移温度を測定しても無意味であり、多くの場合をホモPBTの非晶状態でのガラス転移温度の文献値(22℃)と、A層にブレンドされるPBT以外のポリエステル系樹脂(ガラス転移温度が70℃以上であるポリエステル系樹脂)のガラス転移温度の測定値からの推定値(内挿値)とせざるを得なかった。該推定値に関しては、表1中に「(22)」のように括弧書きで示している。実際に測定したガラス転移温度に関しては、A層とB層とC層から成る共押出シートが引き取りロールを離れてから、熱処理ロールに到達する以前にハサミでシートの一部を切り取り、A層側からミクロトームを用いて樹脂を削りだしたものを用いて測定している。測定自体は後述する原料樹脂のガラス転移温度の測定と同様に示差走査熱量計により行っている。
C層の樹脂組成物のガラス転移温度の測定値に関しても同様に表3に示した。ただし、表3中の「(78)」のような括弧書きの表記は、原料樹脂ペレットに関する測定値をそのまま用いている。
また、B層は、着色剤を含有する層であるが、該着色剤の添加方法としては、市販のPETG樹脂をベースレジンとした、酸化チタン白顔料のマスターバッチを用いている。該顔料マスターバッチは、酸化チタン顔料50質量%+PETG樹脂50質量%から成るものを用いており、表2中の「PETGベース顔料マスターバッチ」の欄は、B層の樹脂成分の全量が100質量部となるようにした場合の顔料マスターバッチの「添加質量部」を示している。また、同欄の括弧内の表記は、B層の樹脂成分全体の合計を100質量%とした場合に、顔料マスターバッチに含まれるPETG樹脂が占める量(質量%)を示す。
上記のA層、B層、C層に使用した原料は以下の通りである。
(イースターPETG・6763)
イーストマン・ケミカル・カンパニー社製の非結晶性ポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の約30mol.%が1,4−シクロヘキサンジメタノール、約70mol.%がエチレングリコールである。融点は観察されず、ガラス転移温度は78℃である。
(PCTG・5445)
イーストマン・ケミカル・カンパニー社製の実質的に非結晶性ポリエステル樹脂として扱うことが可能なポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の約65mol.%が1,4−シクロヘキサンジメタノール、約35mol.%がエチレングリコールである。融点は観察されず、ガラス転移温度は86℃である。
(FLX−92)
ベルポリエステルプロダクツ社製の実質的に非晶性のポリエステルエラストマーである。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の約26モル%が1,4−シクロヘキサンジメタノール、約68モル%がエチレングリコール、約6モル%が数平均分子量約1000のポリテトラメチレングリコールである。測定されたガラス転移温度は19℃で、融点は観察されなかった。
(アルテスター45)
三菱瓦斯化学社製の非結晶性ポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の44モル%がスピログリコール、約53モル%がエチレングリコール、約3モル%のジエチレンクリコールが含まれている。測定されたガラス転移温度は111℃で、融点は観察されなかった。
(ノバデュラン5020H)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製の(ホモ)ポリブチレンテレフタレート樹脂である。融点は225℃である。結晶化した状態の原料ペレットでは明確なガラス転移温度が確認できなかった。結晶性が高く、非晶領域の体積が少ない為と思われる。
(ジュラネックス500JP)
ウィンテックポリマー社製のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂である。融点は204℃である。
(BK−2180)
三菱化学社製のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂である。融点は247℃であり、ガラス転移温度は76℃である。各原料のガラス転移温度、または融点は以下の方法により測定している。
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
パーキンエルマー(株)製の示差走査熱量計「DSC−7」を用いて、試料10mgをJIS K−7121「プラスチックの転移温度測定方法」に準じて、加熱速度を10℃/分で−40℃から250℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温、同温度で1分間保持した後、再度10℃/分で昇温した際のサーモグラムからガラス転移温度(Tg)を求めた。尚、BK−2180のみ、同様の昇温速度で−40℃から270℃迄昇温し、270℃で1分間保持した後、同様に測定している。各原料のペレットをそのまま試料として用いている。
[融点(Tm)の測定]
パーキンエルマー(株)製の示差走査熱量計「DSC−7」を用いて、試料10mgをJIS K−7121「プラスチックの転移温度測定方法・融解温度の求め方」に準じて、加熱速度を10℃/分で−40℃から250℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温、同温度で1分間保持した後、再度10℃/分で昇温した際のサーモグラムから融点(Tm)を求めた。尚、BK−2180のみ、同様の昇温速度で−40℃から270℃迄昇温し、270℃で1分間保持した後、同様に測定している。各原料のペレットをそのまま試料として用いている。
[エンボス意匠積層シート被覆金属板の作成]
軟質PVCから成るシートを金属板にラミネートする際に一般的に用いられている、市販の加熱硬化型ポリエステル系接着剤を、積層シートを貼り合わせる金属面に乾燥後の接着剤膜厚が1μm〜3μmの範囲になるよう塗布した。次いで赤外線ヒーターおよび熱風加熱炉に、該金属板を導入し塗布面の溶剤乾燥、および加熱を行い、金属板の表面温度が235℃となるように保持しつつ、直ちにロールラミネーターを用いて積層シートのD層側表面を接着積層面として被覆した。その後、直ちに水噴射による冷却を行い、エンボス意匠性積層シート被覆金属板を得た。金属板としては、厚み0.45mmの電気亜鉛メッキ鋼板を用いた。
[積層シートおよびエンボス意匠積層シート被覆金属板の評価]
上記の実施例および比較例で得た、積層シートおよびエンボス意匠シート被覆金属板について、以下の各項目を評価した。結果は、表2、表4、表6中に示した。
(1) キャスティングロール(エンボスロール)への粘着状態
Tダイよりキャスティングロールに流下させ、冷却固定されたA層+B層+C層の積層樹脂がキャスティングロールより剥離され後工程へと導かれる状態を目視で観察した。シートが全くロールへの粘着なく良好な剥離状態を示す場合を「○」、やや粘着気味であるが問題なく生産が可能である場合を「△」、粘着が著しく安定した生産が困難と判断された場合を「×」とした。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。尚、キャスティングロールへの粘着が著しかったものに関しては、以降の評価を実施していない。
(2) 熱処理ロールへの粘着状態
押出製膜ラインのキャスティングロールの後工程に設置した熱処理ロールに、A層+B層+C層の積層シートをC層側表面を接触面として巻き付かせた後、結晶化ロールより剥離され後工程へと導かれる状態を目視で観察した。シートが全くロールへの粘着なく良好な剥離状態を示す場合を「○」、やや粘着気味であるが問題なく生産が可能である場合を「△」、粘着が著しく安定した生産が困難と判断された場合を「×」とした。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。尚、積層シートの熱処理ロールへの粘着が著しかったものに関しては、以降の評価を実施していない。
(3)熱処理ロールでの皺入り
押出製膜ラインのキャスティングロールの後工程に設置した熱処理ロールに、A層+B層+C層の積層シートをC層側表面を接触面として巻き付かせた後、結晶化ロールより剥離され後工程へと導かれる状態を目視で観察した。シートに結晶化収縮による皺の発生が全く認められない場合を「○」、ややシートの流れ方向に走る皺が発生するが、金属板にラミネートした後の外観としては問題なく使用できる程度である場合を「△」、シートの流れ方向に走る皺の発生が著しく、金属板にラミネートした後も外観不良として残存する程度である場合や、安定したシートの引取りが困難で生産の継続ができないと判断された場合を「×」とした。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。尚、「×」と判定されたものに関しては、以降の評価を実施していない。
(4)A層+B層+C層一体シートの取り扱い性:反りの強弱
A層+B層+C層の積層シートを15cm(TD方向)×30cm(MD方向)に切り出して、定盤の上に置き、反りの程度を観察した。反りが強く完全に円筒状になってしまう場合や、定盤面から10cm以上の高さのアーチ状になる場合を取り扱い性が悪いとして「×」、10cm未満であるが5cm以上の反りが出る場合を「△」、それ未満の反りの場合、取り扱い性は良いとして「○」とした。なお、「TD方向」とは、シートの幅方向(Transverse direction)をいい、MD方向に直交する方向をいう。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。尚、積層シートの反りが著しく、後工程での取り扱いに支障を生じたものに関しては、以降の評価を実施していない。
(4)押出しキャストエンボス法によるエンボス転写率
A層+B層+C層の積層シートのA層側表面に付与されたエンボス凹凸を表面粗さ計(小坂研究所製「サーフコーダ」SE−40D)で測定し、最大高さRy1(μm)を求めた。一方、エンボス版ロール(キャスティングロール)の最大高さをRy0(μm)とし、(エンボス転写率:Ry1/Ry0×100(%))を算出した。
転写率が80%以上である場合を「○」、転写率が80%未満であるが、視覚的には良好なエンボス意匠が付与されている場合を「△」、転写率が80%未満であり、視覚的にもあきらかにエンボスの意匠感が劣っている場合を「×」で示した。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。
(5)積層シートの隠蔽性
JIS K5400 7・2「塗料一般試験方法・隠ぺい率」に準拠して、A層+B層+C層の積層シートを隠ぺい率試験紙の上に載置し、白地上の部分と黒地上の部分の各拡散反射率を測定し、黒地上の反射率(%)/白地上の反射率(%)の比を隠ぺい率として求めた。隠ぺい率が0.99以上である場合を「○」、0.99未満で、0.97以上である場合を「△」、0.97に満たない場合を「×」で示した。
評価結果は、表4中に示した。
尚、この評価は、顔料添加による隠ぺい性に直接的に関与するB層20の樹脂組成、厚みを変更した、実施例17〜22、および、比較例9〜14についてのみ実施した。
(6)ラミネート後のエンボス残存率(エンボス耐熱性)
A層+B層+C層の積層シートのA層側表面に付与されたエンボス凹凸を表面粗さ計(小坂研究所製「サーフコーダ」SE−40D)で測定しておき、該積層シートを金属板にラミネートした後に再度粗さ測定を実施し、ラミネートする前の最大高さをRy1(μm)、ラミネート後のそれをRy2(μm)としてエンボスの残存率を求めた(残存率:Ry2/Ry1×100(%))。
残存率が80%以上である場合を「○」、残存率が80%未満であるが、視覚的には顕著な異常として認められない場合を「△」、残存率が80%未満であり、視覚的にもあきらかにエンボスの意匠感が低下している場合を「×」で示した。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。
(7)沸騰水浸漬後のエンボス残存率(エンボス耐熱性)と外観評価
A層+B層+C層の積層シートを金属板にラミネートした積層シート被覆金属板を
100mm×100mmの大きさに切断し、沸騰水中に3時間浸漬した。取り出し乾燥後、A層側表面に付与されたエンボス凹凸を、表面粗さ計(小坂研究所製「サーフコーダ」SE−40D)で測定し、前記評価項目(6)で測定したラミネート後の最大高さRy2(μm)を基にして、沸騰水浸漬後のエンボスの残存率を求めた。(沸騰水浸漬後の最大高さの測定値をRy3(μm)として、残存率:Ry3/Ry2×100(%))。
残存率が80%以上であり、且つ、エンボス戻り以外の沸騰水浸漬に起因する樹脂層の軟化・流動に起因する変形なども認められない場合を「○」、残存率が80%未満であるが、視覚的には顕著な異常として認められない場合、および、残存率が80%以上であるが、沸騰水浸漬に起因する樹脂層の軟化・流動に起因する変形が僅かに認められる場合を「△」、残存率が70%未満であり、視覚的にもあきらかにエンボスの意匠感が低下している場合、および、残存率に関わらず、樹脂層の軟化・流動に起因する変形により著しく意匠性が低下している場合を「×」で示した。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。
(8)樹脂被覆金属板の折り曲げ加工性
A層+B層+C層の積層シートを被覆した金属板に衝撃密着曲げ試験を行い、曲げ加工部の積層シートの面状態を目視で判定し、ほとんど変化がないものを「○」、若干クラックが発生したものを「△」、割れが発生したものを「×」として評価した。なお、衝撃密着曲げ試験は次のようにして行った。積層シート被覆金属板の長さ方向および幅方向からそれぞれ50mm×150mmの試料を作製し、23℃で1時間以上保った後、積層シートが被覆された側が外表面となるようにして、折り曲げ試験機を用いて180°(内曲げ半径2mm)に折り曲げ、その試料に直径75mm、質量5Kgの円柱形の錘を50cmの高さから落下させ、折り曲げ部分を密着させた。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。
(9)積層シートと基材金属の接着力
A層+B層+C層の積層シートを被覆した金属板から幅方向および長さ方向それぞれ20mm×100mmの試料を作成し、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法−試験片に対する180度引き剥がし粘着力」に準拠した剥離強度測定を測定幅20mmで行い、積層シートと金属板間の接着強度を測定した。十分な接着強度があると判断されたもの(40N/20mm以上)を「○」、相対的に接着強度が劣るが実用上は支障ないと判断されるもの(20N/20mm以上、40N/20mm未満)を「△」、さらに接着強度が低いもの(20N/20mm未満)を「×」とした。尚、この評価は、基材金属との接着力に対し直接的な影響を及ぼすC層30の樹脂組成を変更した、実施例23〜35、および、比較例15〜19についてのみ実施した。評価結果は表6中に記載した。
(10)表面硬度(樹脂被覆金属板の鉛筆硬度試験)
A層+B層+C層の積層シートを金属板にラミネートした積層シート被覆金属板について、JIS K5600 5.4(1999)「引っかき硬度(鉛筆法)」に従い実施した。23℃の恒温室内で、80mm×60mmに切り出した樹脂被覆金属板の樹脂シート面に対し45°の角度を保ちつつ9.8Nの荷重を掛けた状態で線引きをできる治具を使用して線引きを行い、該部分の樹脂シートの面状態を目視で判定し、Bの鉛筆で全く傷が付かなかったものを「○」、Bでは傷が入るが、2Bの鉛筆では全く傷が付かなかったものを「△」、2Bの鉛筆でも傷が付いたものを「×」として表示した。評価結果は表2、表4、表6中に記載した。
[実施例1〜16、および、比較例1〜8]
B層の樹脂組成、顔料添加量、および厚みに関しては、表2中のb−5と同一とし、C層の樹脂組成、および厚みに関しては、表3中のc−7と同一として、A層の樹脂組成、および厚みを変化させたものである。A層の樹脂組成と厚みに関しては、表1に示した。また、評価結果を表2に示した。
Figure 0005249803
Figure 0005249803
[実施例17〜22、および、比較例9〜14]
A層の樹脂組成、および厚みに関しては、表1中のa−6と同一とし、C層の樹脂組成、および厚みに関しては、表3中のc−10と同一として、B層の樹脂組成、顔料添加量、および厚みを変化させたものである。B層の樹脂組成と顔料添加量、厚みに関しては、表2に示した。また、評価結果を表4に示した。
Figure 0005249803
Figure 0005249803
[実施例23〜35、および、比較例15〜19]
A層の樹脂組成、および厚みに関しては、表1中のa−7と同一とし、B層の樹脂組成、顔料添加量、および厚みに関しては、表2中のb−6と同一として、C層の樹脂組成、および厚みを変化させたものである。C層の樹脂組成と顔料添加量、厚みに関しては、表5に示した。また、評価結果を表6に示した。
Figure 0005249803
Figure 0005249803
[積層シートおよびエンボス意匠シート被覆金属板の評価]
<実施例1〜16、比較例1〜8 (表2記載)>
比較例4、および比較例5は、A層のPBT系樹脂として、本発明の範囲より融点が低いものを用いた場合であるが、キャストエンボス法によるエンボスの転写自体は、良好であったが、金属板へのラミネートの際の加熱によって著しいエンボス戻りを生じ、ラミネート後の意匠感は低下を来たした。A層に用いるPBT系樹脂の融点が低いことそれ自体よりも、結晶化速度が遅いため熱処理ロールを用いることによっても、押出製膜ラインのキャスティングロールにより転写されたエンボス意匠を結晶化により固定することができなかったと考えられる。
これは、A層の結晶性ポリエステル系樹脂として、イソフタル酸共重合PET樹脂を用いた比較例6、および7についても同様であった。
本発明の融点範囲にあるPBT系樹脂を用いているものの、そのブレンド比率が本発明の範囲より少ない比較例1についても、やはりエンボスの転写自体は良好であったが、エンボス耐熱を確保できない結果となっている。A層のブレンド組成物に占めるPBT系樹脂の比率が少ない場合も、樹脂組成物の結晶化速度が遅くなることに起因して、押出製膜ラインのキャスティングロールにより転写されたエンボス意匠を結晶化により固定することができなかったと考えられる。
比較例2は、A層の樹脂組成としてPBT系樹脂のみを用いた場合であるが、20℃の水を循環させることで温度調整されたキャスティングロールに対して、当初は僅かな粘着を示す程度であったが、十数分経過した時点で該ロールへの粘着が著しいものとなり、製膜作業の継続が困難となった。これは、当初はキャスティングロールの表面温度がA層の樹脂組成物のガラス転移温度よりやや低い温度に保たれていたものが、Tダイから熔融流下する樹脂組成物を引き取る間に次第に温度上昇を来たし、遂にはA層のガラス転移温度を越えた為と考えられる。また、製膜初期に採取したA層+B層+C層の共押出し積層シートは、反りが著しいものであり、取り扱い性に問題を生じた。
比較例3は、A層の設定厚みが薄すぎる場合であり、エンボス耐熱性が不足する結果となった。また、フィードブロック法式の共押出し法ではA層の樹脂組成物がA層+B層+C層の共押出し積層シート端部まで充分に展開しなかったようであり、金属板にラミネートした後のエンボス残存率は、端部において更に著しく低下する結果となっていた。
比較例8は、A層の樹脂組成物として、ホモPBT樹脂を主成分としながら、ガラス転移温度が70℃より低い実質的に非晶性のポリエステル系樹脂を配合した場合であり、ブレンド組成物のガラス転移温度が低いことにより、キャスティングロールに著しい粘着を生じ、製膜が困難であった。
これらに対して、本発明の実施例1〜16はいずれも、製膜時のキャスティングロールや熱処理ロールへの粘着によるトラブルは発生せず、エンボス転写率が良好であり、A層とB層とC層から成る積層シートの取り扱い性に関しても問題がなく、金属板へのラミネート時の加熱によってもエンボス戻りを生ずることがない為、良好なエンボス意匠感が維持されており、また積層シート被覆金属板を沸騰水浸漬に供した場合についても同様に良好なエンボス意匠感が維持されている。更に、折り曲げ試験でも問題を生じない良好な加工性を有し、表面硬度も高く従って耐傷入り性の良好な樹脂被覆金属板が得られている。
ただし、実施例1〜3においては、エンボスの転写率自体には問題はなかったが、ラミネート後のエンボス残存率がやや低い結果となっており、これはA層の樹脂組成物として、PBT系樹脂以外の樹脂成分が多くなるとブレンド組成物の結晶化速度が低下することにより、熱処理ロールによる結晶化処理によっても充分に結晶性を付与することができず、エンボス耐熱性が低下したものと考えられる。
実施例8は、A層の樹脂組成物に占める、ガラス転移温度が70℃以上であるポリエステル系樹脂の比率が少ない場合であり、引取りロールに僅かな粘着の傾向を示したが、押出製膜が困難となるほどではなかった。また、A層とB層とC層の共押出し積層シートには反りも発生しているが、後工程の作業が困難となるほどのものではなかった。PBT樹脂の配合割合が高いことにより、エンボスの転写率自体に問題はなく、ラミネート後のエンボス残存率や沸騰水浸漬後のエンボス残存率については良好な結果が得られている。
実施例9においては、A層の厚みが薄いことに起因して、ラミネート後のエンボス残存率がやや低い結果となった。エンボスの転写率自体に問題はなく、また積層シートを被覆した金属板を沸騰水浸漬試験に供した後に、更にエンボスの残存率が低くなることは無かった。
<実施例17〜22、比較例9〜14 (表4記載)>
比較例9は、B層の樹脂組成物にPBT樹脂が配合されておらず、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂のみから成る場合であるが、沸騰水浸漬試験で著しい外観不良を生じた。これは、着色剤の添加により隠ぺい性を付与する為、比較的厚みのある層とする必要があるB層の樹脂組成物として、ガラス転移温度が78℃であるPETG樹脂のみからなる配合を用いたことにより、沸騰水浸漬時にB層の樹脂組成物の弾性率が低下し、樹脂層の流動変形を生じたこと、および、顔料として添加した酸化チタン粒子と、マトリクスであるPETG樹脂との間に不可避的に存在するボイド(空隙)が、沸騰水浸漬時に温度上昇と樹脂組成物の弾性率低下とにより膨張したことで表面外観が悪化したものと推定される。エンボスの残存率自体には大きな低下は無いように見えるが、表面全体にうねりのような波打ちと、水泡状の荒れが認められた。
比較例10、11は、B層の樹脂組成物として、PETG系樹脂とPBT系樹脂のブレンド組成物を用いたものであるが、PBT系樹脂の配合量が本発明の範囲より少ない場合であり、沸騰水浸漬後の外観は、比較例9の場合に比べると改善の傾向が見られるが、依然として表面全体の波打ちと水泡状の荒れが表面外観を著しく悪化させており、実用に供し得るものでは無いと判断された。
比較例12は、B層の樹脂組成物として、本発明の範囲よりPBT系樹脂の配合量が多いものを用いた場合であるが、積層シートを押出し製膜ラインの熱処理ロールと接触させた時点で、著しい収縮皺がシートの流れ方向(MD方向)に発生し、巻取りが困難となった。積層シートの構成として、高い結晶性を有するA層に加えて、B層までもが高い結晶性を備えたことにより著しい結晶化収縮を生じ、皺入りを生じたものと判断される。また、B層の着色顔料として、市販のPETG樹脂をベースレジンとした顔料マスターバッチを用いていることから、PETG樹脂の配合量が限定される比較例12においては、積層シートの隠蔽性についても充分なものとはならなかった。
比較例13は、B層の樹脂組成物のPBT系樹脂量を比較例12よりも更に増やした場合であるが、熱処理ロールでの皺入りは更に著しいものとなり、また積層シートの隠蔽性は完全に不足する結果となった。
比較例14は、B層の樹脂組成に関しては本発明の範囲にあるが、B層の厚みが厚過ぎる場合であり、A層+B層+C層の積層シートの押出し、エンボス転写、結晶化処理や金属板へのラミネートには特に問題は生じず、またエンボス耐熱性も充分であったが、樹脂被覆金属板としての折り曲げ加工性が悪化する結果となっている。
これらに対し、本発明の実施例17〜22については、押出し製膜ラインの熱処理ロールとの接触に際しても皺入りを生ずることはなく、また、PETG樹脂をベースレジンとした顔料マスターバッチも、充分な隠蔽性を付与できる量用いることができ、また積層シートをラミネートした金属板を沸騰水浸漬試験に供しても、B層の樹脂組成に起因する外観の悪化を生ずることがなく、更に、樹脂被覆金属板としての加工性も良好なものとなっている。
ただし、実施例17においては、B層の樹脂組成物に含まれるPBT系樹脂の量が、本発明の下限の量であり、沸騰水浸漬後の表面外観に多少の荒れが認められた。
また、実施例21では、B層の厚みが比較的厚いことに起因し、積層シートの総厚みがやや厚いものとなっており、加工性が多少悪くなっている。これに対して、実施例22は、B層の厚みとしては実施例21よりも充分に薄いのであるが、やはり加工性がやや悪い結果となっている。これは、比較的厚みの薄いB層で充分な隠蔽性を確保する為に、酸化チタン顔料を多量添加したことに起因すると考えられる。
<実施例23〜35、参考例1、比較例15〜18、(表6記載)>
参考例1は、C層の厚み薄く、フィードブロック方式の共押出し法ではC層の樹脂組成物がA層+B層+C層の積層シートの端部まで充分に展開しなかったようであり、積層シートの端部において熱処理ロールと若干粘着を生じてしまい、作業性が低下した。
比較例15は、C層の樹脂組成は本発明の範囲にあるが、厚みが過剰である場合であり、
積層シートをラミネートした金属板を沸騰水浸漬試験に供した際、著しい水泡状の表面荒れを生じてしまった。また、C層の樹脂組成物のガラス転移温度が、押出し製膜ラインの熱処理ロールの表面温度に漸近していることから、該ロールとの接触に際し、軽い粘着を生じたが、作業が困難になる程ではなく、また該ロールへの粘着により意匠感が悪化することも無かった。
比較例16は、C層の樹脂組成物のガラス転移温度が本発明よりも低い場合であり、押出し製膜ラインの熱処理ロールに対し著しい粘着を示す結果となり、作業の継続が困難であった。
C層の樹脂組成物のガラス転移温度が、比較例16よりも更に低い比較例17、および比較例18において該粘着は更に著しいものとなった。
これらに対し、本発明の実施例23〜35については、押出し製膜ラインの熱処理ロールとの接触に際しても粘着により作業が困難となることがなく、また、積層シートをラミネートした金属板を沸騰水浸漬試験に供しても、一部を除いてC層の樹脂組成に起因する外観の悪化を生ずることがない結果となっている。
上記実施例の中で、沸騰水浸漬性後に著しい外観意匠の低下を来たした実施例27は、C層の樹脂組成物として、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂のみを用い、且つ、C層として比較的厚みのあるものを用いた場合である。これに対し、樹脂組成は実施例27と同一として、C層の厚みを下げた実施例26では沸騰水浸漬後の外観悪化は軽減されており、更にC層の厚みを下げた実施例25では同問題は発生していない。
また、C層の厚みは実施例27と同一としながら、C層の樹脂組成にPBT系樹脂を配合した実施例29においても、沸騰水浸漬後の外観悪化は軽減されており、更にPBT系
樹脂の配合量を増やした実施例30では同問題は発生していない。ただし、実施例30では、PBT系樹脂の添加によりC層の樹脂組成物のガラス転移温度が低下したことにより、押出し製膜ラインの熱処理ロールにやや粘着気味となっている。
これに対し、C層の樹脂組成として、ガラス転移温度が100℃以上である実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂のみを用いた実施例34においては、比較的厚みのあるC層を用いていながら、沸騰水浸漬試験による外観悪化は生じていない。
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う積層シート、エンボス意匠シート、エンボス意匠シート被覆金属板および建築内装材等もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
図1は、本発明のA層10とB層20とC層30とを共押出し製膜法により作成したシートの一実施形態を示す略断面図である。A層10の表面には押出し製膜設備のキャスティングロールにより付与されたエンボス意匠を備えている。図1bは、本発明のエンボス意匠シートをラミネートした樹脂被覆金属板である。
10:A層 20:B層 30:C層 40:金属板
50:接着剤層

Claims (12)

  1. 表面側から順に、以下のA層、B層、およびC層の少なくとも3層を有する積層シートであって、
    前記A層が、A層における樹脂成分全体の質量を基準として、融点が210℃以上、230℃以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂を75質量%以上、95質量%以下と、ガラス転移温度が70℃以上であるポリエステル系樹脂を25質量%以下、5質量%以上とから成り、厚み5μm以上、100μm以下の無配向の樹脂層であり、
    前記B層が、B層における樹脂成分全体の質量を基準として、融点が210℃以上、230℃以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂を45質量%以上、70質量%以下と、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を55質量%以下、30質量%以上とから成り、着色剤を添加した厚み200μm以下の無配向の樹脂層であり、
    前記C層が、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体とするガラス転移温度が60℃以上である樹脂組成物からなる厚み60μm以下の無配向の樹脂層であり、
    該A層表面にエンボス転写による柄意匠を備えてなる、樹脂被覆金属板用積層シート。
  2. A層のガラス転移温度が70℃以上であるポリエステル系樹脂が、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、20モル%以上、80モル%以下の1,4−シクロヘキサンジメタノールと、80モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆金属板用積層シート。
  3. B層の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂が、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、20モル%以上、80モル%以下の1,4−シクロヘキサンジメタノールと、80モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂被覆金属板用積層シート。
  4. C層の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂が、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、20モル%以上、80モル%以下の1,4−シクロヘキサンジメタノールと、80モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂被覆金属板用積層シート。
  5. C層における樹脂成分全体の質量を基準として、前記C層に15質量%以上の融点が210℃以上、230℃以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂が配合されている請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂被覆金属板用積層シート。
  6. C層の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂が、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、25モル%以上、45モル%以下のスピログリコールと、75モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルであるか、または、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、25モル%以上、45モル%以下のスピログリコールと、75モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステル系樹脂50質量%以上と、テレフタル酸、またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、20モル%以上、80モル%以下の1,4−シクロヘキサンジメタノールと、80モル%以下、20モル%以上のエチレングリコールをジオール成分の主体とする共重合ポリエステルのブレンド組成物より成ることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂被覆金属板用積層シート。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂被覆金属板用積層シートおよび金属板を備え、該樹脂被覆金属板用積層シートのC層の表面が金属板に積層されている積層シート被覆金属板。
  8. 請求項7に記載の積層シート被覆金属板を用いたユニットバス部材。
  9. 請求項7に記載の積層シート被覆金属板を用いた建築内装材。
  10. 請求項7に記載の積層シート被覆金属板を用いた鋼製家具部材。
  11. 請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂被覆金属板用積層シートの製造方法であって、A層とB層とC層とを共押出し製膜法により積層すると同時に、キャスティングロールとして柄意匠の凹凸彫刻が施されたエンボスロールを用いることにより、A層表面に柄意匠のエンボスを付与する工程、および、加熱処理によりA層の結晶化を促進することで、A層表面のエンボスに耐熱性を付与する工程を備えてなる樹脂被覆金属板用積層シートの製造方法。
  12. 請求項11において、キャスティングロールの表面温度をA層の樹脂組成物のガラス転移温度より低い温度に調整しておき、押出し製膜設備のキャスティングロールの後工程に、C層の樹脂組成物のガラス転移温度より低く、且つ、A層の樹脂組成物のガラス転移温度より高い表面温度に調整された熱処理ロールを設け、A層とB層、およびC層とから成る共押出シートのC層側の表面を該熱処理ロール表面に当接することにより、A層の結晶化を促進する表面にエンボス意匠を有する樹脂被覆金属板用積層シートの製造方法。
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