JP2004075924A - 化粧フィルム及び積層化粧シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹脂成分として、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂10〜90重量%、及び、(B)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60〜90モル%とネオペンチルグリコール又はネオペンチルグリコールとジエチレングリコール10〜40モル%である共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂10〜90重量%を含有する化粧フィルム、並びに、該化粧フィルムと二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム若しくは二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルム又は透明な該化粧フィルムを熱若しくはドライラミネーションにより積層してなる積層化粧シート。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧フィルム及び積層化粧シートに関する。さらに詳しくは、本発明は、耐熱性、耐沸騰水性に優れ、高温に加熱してもシボ形状に変化を生ぜず、ホットメルト樹脂との押出ラミネーションや、鋼板との熱ラミネーションを安定して容易に行うことができる化粧フィルム及び積層化粧シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
家庭電気製品、家具調度品、家屋内装材などには、金属板が多量に用いられている。以前は、ロールコーターなどを用いて金属板に塗装し、加熱乾燥したのちにコイルとして巻き取られたプレコート金属板が一般的であった。しかし、塗料の使用に伴う有機溶剤による環境汚染を避けるために、化粧フィルムを金属板に積層したラミネート金属板が普及してきた。
ラミネート金属板用の積層化粧シートとして、塩化ビニル樹脂フィルムに二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層したシートが用いられている。塩化ビニル樹脂フィルムは安価で成形加工性が良好であり、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは機械的特性、平滑性、透明性、耐溶剤性、印刷性などが良好であるので、塩化ビニル樹脂フィルムと二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの積層品は、積層化粧シートとして優れた性質を有している。しかし、製品が最終的に廃棄物となったとき、塩化ビニル樹脂からの有害物の発生が懸念されることから、塩化ビニル樹脂フィルムを使用しない積層化粧シートの開発が試みられている。
例えば、特開2000−233480号公報には、真空プレス成形、圧空プレス成形、メンブレンプレス成形などの熱加工による成形性が良好であり、ワイピング印刷や表面塗装時の溶剤などに起因する微小クラックによる白化が防止でき、従来の塩化ビニル樹脂製化粧フィルムと同様に扱うことができるポリエステル樹脂製化粧フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリブチレンテレフタレート樹脂0〜60重量%とジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分が1,4−シクロヘキサンジメタノール25〜35モル%とエチレングリコール65〜75モル%である非晶質ポリエステル樹脂40〜100重量%からなる基材フィルムと、ポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリブチレンテレフタレート樹脂5〜60重量%とジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分が1,4−シクロヘキサンジメタノール25〜35モル%とエチレングリコール65〜75モル%である非晶質ポリエステル樹脂40〜95重量%からなる透明な保護フィルムとを積層してなる化粧フィルムが提案されている。この化粧フィルムは、成形加工性が良好であり、エンボス加工も可能であるが、耐熱性が不足し、高温に加熱するとシボ形状が変化するいわゆるシボ流れ現象が起こりやすく、用途的な制限を受けている。
このために、ホットメルト樹脂との押出ラミネーションや、金属板との熱ラミネーションが可能な、優れた耐熱性を有する化粧フィルム及び積層化粧シートが求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性、耐沸騰水性に優れ、高温に加熱してもシボ形状に変化を生ぜず、ホットメルト樹脂との押出ラミネーションや、鋼板との熱ラミネーションを安定して容易に行うことができる化粧フィルム及び積層化粧シートを提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、樹脂成分として、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂10〜90重量%、及び、(B)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60〜90モル%とネオペンチルグリコール又はネオペンチルグリコールとジエチレングリコール10〜40モル%である共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂10〜90重量%を含有する化粧フィルムが、優れた耐熱性を有し、高温でラミネーションを行っても、シボ流れなどを生じないことを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)樹脂成分として、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂10〜90重量%、及び、(B)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60〜90モル%とネオペンチルグリコール又はネオペンチルグリコールとジエチレングリコール10〜40モル%である共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂10〜90重量%を含有することを特徴とする化粧フィルム、
(2)(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂が、(a)ポリテトラメチレングリコールを共重合成分として10〜30重量%含むポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂であって、その含有量が30〜90重量%である第1項記載の化粧フィルム、
(3)(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂が、(b)ジカルボン酸成分がテレフタル酸70〜95モル%とイソフタル酸5〜30モル%であり、グリコール成分が1,4−ブタンジオールであるイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂であって、その含有量が30〜90重量%である第1項記載の化粧フィルム、
(4)(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂が、(c)ポリブチレンテレフタレート樹脂であって、その含有量が30〜90重量%である第1項記載の化粧フィルム、
(5)樹脂成分が、(C)アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体又は熱可塑性ポリエステルエラストマー1〜50重量%を含有する第1項ないし第4項のいずれかに記載の化粧フィルム、
(6)顔料を含有し、隠蔽率が0.95以上である第1項ないし第5項のいずれかに記載の化粧フィルム、
(7)ウレタン系トップコート又は紫外線硬化型トップコートを有する第1項ないし第6項のいずれかに記載の化粧フィルム、
(8)上地が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、下地が第1項ないし第6項のいずれかに記載の化粧フィルムであり、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面にバックプリント印刷又は化粧フィルムの積層面に印刷層を有し、上地と下地が熱ラミネーション又はドライラミネーションにより積層されてなることを特徴とする積層化粧シート、
(9)上地の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが10〜100μmであり、下地の化粧フィルムの厚さが25〜200μm、隠蔽率が0.95以上である第8項記載の積層化粧シート、
(10)上地が二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルム、下地が第1項ないし第6項のいずれかに記載の化粧フィルムであり、二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルムの裏面にバックプリント印刷又は化粧フィルムの積層面に印刷層を有し、上地と下地が熱ラミネーション又はドライラミネーションにより積層されてなることを特徴とする積層化粧シート、
(11)上地の二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルムの厚さが10〜100μmであり、下地の化粧フィルムの厚さが25〜200μm、隠蔽率が0.95以上である第10項記載の積層化粧シート、
(12)上地が第1項ないし第5項のいずれかに記載の透明な化粧フィルムであり、下地が第6項記載の化粧フィルムであり、上地の化粧フィルムの裏面にバックプリント印刷又は下地の化粧フィルムの積層面に印刷層を有し、上地と下地が熱ラミネーション又はドライラミネーションにより積層されてなることを特徴とする積層化粧シート、
(13)上地の化粧フィルムの厚さが10〜400μmであり、下地の化粧フィルムの厚さが10〜400μmである第12項記載の積層化粧シート、及び、
(14)エンボス加工されてなる第10項ないし第13項のいずれかに記載の積層化粧シート、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の化粧フィルムは、樹脂成分として、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂10〜90重量%、及び、(B)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60〜90モル%とネオペンチルグリコール又はネオペンチルグリコールとジエチレングリコール10〜40モル%である共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂10〜90重量%を含有する。本発明に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂に特に制限はないが、(a)ポリテトラメチレングリコールを共重合成分として10〜30重量%含むポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂、(b)ジカルボン酸成分がテレフタル酸70〜95モル%とイソフタル酸5〜30モル%であり、グリコール成分が1,4−ブタンジオールであるイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂、又は、(c)ポリブチレンテレフタレート樹脂を好適に用いることができる。
(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂として、(a)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂を用いることにより、化粧フィルムの耐熱性、耐沸騰水性を格段に向上することができる。(b)イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂を用いることにより、耐熱性、耐沸騰水性が向上するとともに、樹脂の溶融温度が低下して製膜加工性を安定させることができ、熱ラミネートも容易に可能となる。(c)ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることにより、耐熱性、耐沸騰水性を向上することができる。
【0006】
本発明に用いる(B)ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60〜90モル%とネオペンチルグリコール又はネオペンチルグリコールとジエチレングリコール10〜40モル%である共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂である。共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、加熱処理を行っても結晶化による物性の変化を生ずることのない、結晶性を有しない樹脂である。ポリエチレンテレフタレート系樹脂が結晶性を有しないことは、加熱しても外観的に白濁ないし白化を生じないことによって確認することができる。樹脂成分の10〜90重量%をこのような非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂で構成することにより、積層化粧シートの物性に変化を生ずることなく、積層化粧シートを金属板に熱ラミネートすることができる。
本発明において、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂が(a)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂である場合、(B)ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60〜90モル%とネオペンチルグリコール10〜40モル%であるネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂であることが好ましい。
本発明において、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂が(b)イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂である場合、(B)ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60〜90モル%とネオペンチルグリコール10〜40モル%であるネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂であることが好ましい。
本発明において、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂が(c)ポリブチレンテレフタレート樹脂である場合、(B)ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、ジカルボン成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60〜90モル%とネオペンチルグリコール10〜40モル%であるネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0007】
樹脂成分が、(a)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂である場合、(a)樹脂の含有量が30〜90重量%であり、(B)樹脂の含有量が10〜70重量%であることが好ましい。(a)樹脂の含有量が30重量%未満であると、化粧フィルムの耐熱性、耐沸騰水性が不足するおそれがある。(a)樹脂の含有量が90重量%を超えると、化粧フィルムの加工性が低下するとともに、紙管抜けが生ずるおそれがある。
樹脂成分が、(b)イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂である場合、(b)樹脂の含有量が30〜90重量%であり、(B)樹脂の含有量が10〜70重量%であることが好ましい。(b)樹脂の含有量が30重量%未満であると、化粧フィルムの耐沸騰水性が低下し、耐熱性が不足するおそれがある。(b)樹脂の含有量が90重量%を超えると、化粧フィルムの加工性か低下するとともに、紙管抜けが生ずるおそれがある。
樹脂成分が、(c)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂である場合、(c)樹脂の含有量が30〜90重量%であり、(B)樹脂の含有量が10〜70重量%であることが好ましい。(c)樹脂の含有量が30重量%未満であると、化粧フィルムの耐沸騰水性が低下し、耐熱性が不足するおそれがある。(c)樹脂の含有量が90重量%を超えると、化粧フィルムの加工性が著しく低下するおそれがある。
【0008】
本発明の化粧フィルムの樹脂成分には、(C)熱可塑性エラストマーを含有させることができる。樹脂成分に熱可塑性エラストマーを含有させることにより、化粧フィルムの低温特性を向上し、低温時におけるワレの発生を防止することができる。樹脂成分中の(C)熱可塑性エラストマーの含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂、(B)共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂及び(C)熱可塑性エラストマーの合計量を100重量%としたとき、1〜50重量%であることが好ましく、2〜20重量%であることがより好ましい。熱可塑性エラストマーの含有量が1重量%未満であると、低温特性の向上効果が十分に発現しないおそれがある。熱可塑性エラストマーの含有量が50重量%を超えると、化粧フィルムの耐熱性が低下するおそれがある。
含有させる(C)熱可塑性エラストマーとしては、例えば、アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体、熱可塑性ポリエステルエラストマーなどを挙げることができる。これらの中で、熱可塑性ポリエステルエラストマーは、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂との相溶性が良好なので、特に好適に用いることができる。
【0009】
本発明の化粧フィルムを製造する方法に特に制限はなく、例えば、押出機とTダイを用いて製膜することができ、あるいは、カレンダー装置を用いて製膜することもできる。使用する押出機に特に制限はなく、例えば、単軸押出機、同方向回転二軸押出機、異方向回転二軸押出機などを挙げることができる。使用するTダイに特に制限はなく、例えば、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ、コートハンガーダイなどを挙げることができる。使用するカレンダー装置に特に制限はなく、例えば、直立型3本ロール、直立型4本ロール、L型4本ロール、逆L型4本ロール、Z型ロールなどを挙げることができる。
本発明の化粧フィルムには、必要に応じて、エンボス加工を施すことができる。エンボス加工の方法に特に制限はなく、例えば、オンラインで製膜と同時にエンボス加工することができ、あるいは、オフラインでドラム加熱型エンボッサー、マルチシリンダー型エンボッサーなどを用いてエンボス加工することもできる。
【0010】
本発明においては、化粧フィルムに顔料を含有させて隠蔽性を付与することができる。含有させる顔料に特に制限はなく、例えば、白色顔料としての酸化チタンを配合することにより隠蔽性を付与することができ、あるいは、黒色顔料としてのカーボンブラックを配合することにより隠蔽性を付与することもでき、さらには、白色顔料と他の有色顔料を配合することにより所望の色調と濃度の隠蔽性を付与することもできる。本発明において、化粧フィルムに顔料を含有させる方法に特に制限はなく、例えば、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂又は(B)共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂をベース樹脂とするマスターバッチをあらかじめ調製しておき、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び/又は(B)共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂に該マスターバッチを混合し、Tダイなどから押し出して製膜することにより、顔料を含有させることができる。
本発明において、顔料を含有する化粧フィルムの隠蔽率は0.95以上であることが好ましく、0.97以上であることがより好ましく、0.99以上であることがさらに好ましい。隠蔽率が0.95未満であると、化粧フィルムを金属板などと積層して得られるラミネート金属板などの外観が、基材である金属板などの色調に影響されるおそれがある。化粧フィルムの隠蔽率は、JIS K 54007.2に準じて求めることができる。視感反射率80±1の白地と、視感反射率2以下の黒地に塗り分けたアート紙を隠蔽率試験紙とし、隠蔽率試験紙に化粧フィルムを重ねて視感反射率を測定し、黒地の上の化粧フィルムの視感反射率をB、白地の上の化粧フィルムの視感反射率をWとすると、隠蔽率HPは次式により求めることができる。
HP = B/W
隠蔽率が0.98になると、肉眼では白地の上と黒地の上を識別することができない。化粧フィルムを積層する金属板などには、白地と黒地のような極端な色調の差はないので、隠蔽率0.95以上の化粧フィルムにより均一な色調のラミネート金属板などを安定して製造することができる。
【0011】
本発明の化粧フィルムは、表面にウレタン系トップコート又は紫外線硬化型トップコートを施すことが好ましい。トップコートを施すことにより、化粧フィルムの耐擦傷性を向上し、表面に傷のつきにくい優れた化粧フィルムを得ることができる。ウレタン系トップコートは、例えば、ポリオール成分とポリイソシアネート成分からなる二液型ポリウレタンを塗布して硬化させることにより、形成することができる。紫外線硬化型トップコートは、コート層の紫外線硬化波長とは異なる波長帯の特性吸収波長を有し、材料劣化を引き起こす特定の紫外線を吸収する紫外線吸収剤と光安定剤を含む材料を化粧フィルムに塗布して、紫外線硬化することにより形成することができる。
【0012】
本発明の積層化粧シートの第一の態様は、上地が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、下地が本発明の化粧フィルムであり、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面にバックプリント印刷又は化粧フィルムの積層面に印刷層を有し、上地と下地が熱ラミネーション又はドライラミネーションにより積層されてなる積層化粧シートである。図1は、本発明の積層化粧シートの一態様の模式的断面図である。本態様の積層化粧シートは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム1の表面にコート層2、裏面にバックプリント印刷層3を有し、化粧フィルム4とウレタン系接着剤5により積層されている。印刷層は、化粧フィルムの積層面に形成することもできる。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと積層することにより、表面に傷がつきにくい積層化粧シートを得ることができる。上地の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが10〜100μmであり、下地の化粧フィルムの厚さが25〜200μm、隠蔽率が0.95以上であることが好ましい。上地の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚さが10μm未満であると、化粧フィルムとの積層加工時に破れやすく、加工性が不良となるおそれがある。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが100μmを超えると、ラミネート金属板の曲げや絞りなどの加工の際に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが剥離しやすく、加工性が低下するおそれがある。下地の化粧フィルムの厚さが25μm未満であると、破れやすく、製膜が困難になるおそれがある。化粧フィルムの厚さが200μmを超えると、製膜加工の作業性が不良となるおそれがある。
【0013】
本発明において、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと化粧フィルムを積層する方法に特に制限はなく、例えば、フィルムのいずれかの一方又は両方の表面をコロナ放電処理し、接着剤を用いて接着し、積層することができる。用いる接着剤に特に制限はないが、ポリエステル系接着剤を好適に用いることができる。接着剤層の厚さは、2〜30μmであることが好ましい。
本発明の積層化粧シートには、印刷層を設けることができる。印刷層としては、二軸延伸ポリエステルフィルムの表面、二軸延伸ポリエステルフィルムの裏面、化粧フィルムの表面を選択することができる。これらの中で、二軸延伸ポリエステルフィルムの裏面に印刷を施し、印刷層を内側にして、隠蔽性の化粧フィルムと積層することが好ましい。印刷方式に特に制限はなく、凸版、平版、凹版、孔版のいずれの版式を用いることもできる。これらの中で、凹版印刷の一種であるグラビヤ印刷と、凸版印刷の一種であるフレキソ印刷を好適に用いることができる。
【0014】
本発明の積層化粧シートの第二の態様は、上地が二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルム、下地が本発明の化粧フィルムからなり、二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルムの裏面にバックプリント印刷又は化粧フィルムの積層面に印刷層を有し、上地と下地が熱ラミネーション又はドライラミネーションにより積層されてなる積層化粧シートである。本態様の積層化粧シートに用いる二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルムとしては、例えば、ジカルボン酸成分がテレフタル酸とイソフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコールであって、融点200〜240℃のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂を、Tダイを用いて製膜し、二軸延伸することにより得られるフィルムなどを挙げることができる。上地に二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルムを用いることにより、二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルムに直接エンボス加工を施すことができる。エンボス加工の方法に特に制限はなく、例えば、オンラインで製膜と同時にエンボス加工することができ、あるいは、オフラインで、ドラム加熱型エンボッサー、マルチシリンダー型エンボッサーなどを用いてエンボス加工することもできる。
本態様の積層化粧シートにおいては、上地の二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルムの厚さが10〜100μmであり、下地の化粧フィルムの厚さが25〜200μm、隠蔽率が0.95以上であることが好ましい。上地の二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルムの厚さが10μm未満であると、化粧フィルムとの積層加工時に破れやすく、加工性が不良となるおそれがある。二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルムの厚さが100μmを超えると、ラミネート金属板の曲げや絞りなどの加工の際に二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルムが剥離しやすく、加工性が低下するおそれがある。下地の化粧フィルムの厚さが25μm未満であると、破れやすく、製膜が困難になるおそれがある。化粧フィルムの厚さが200μmを超えると、製膜加工の作業性が不良となるおそれがある。
【0015】
本発明の積層化粧シートの第三の態様は、上地が透明な本発明の化粧フィルムであり、下地が顔料を含有し、隠蔽率が0.95以上の本発明の化粧フィルムであり、上地の化粧フィルムの裏面にバックプリント印刷又は下地の化粧フィルムの積層面に印刷層を有し、上地と下地が熱ラミネーション又はドライラミネーションにより積層されてなる積層化粧シートである。図2は、本発明の積層化粧シートの他の態様の模式的断面図である。本態様の積層化粧シートにおいては、下地の化粧フィルム6の積層面に印刷層7が設けられ、上地の透明な化粧フィルム8と熱ラミネーションにより積層されている。上地と下地の両方の化粧フィルムを同質の樹脂成分とすることにより、熱ラミネーション性を向上して大きい接着強度を得ることができる。また、必要に応じて、上地と下地の両方を顔料を含有する不透明な化粧フィルムとすることもできる。2枚の化粧フィルムを積層することにより、厚みむらの少ない積層化粧シートを得ることができる。
本発明の積層化粧シートの第三の態様においては、上地を構成する本発明の化粧フィルムに直接エンボス加工を施すことができる。また、本発明の積層化粧シートの第三の態様においては、上地の厚さが10〜400μmであり、下地の厚さが10〜400μmであることが好ましい。上地の厚さが10μm未満であると、製膜加工時の加工性が悪くなるおそれがあり、上地の厚さが400μmを超えても、製膜加工時の加工性が悪くなるおそれがある。また、下地の厚さについても、10μm未満であったり、400μmを超えると、製膜加工時の加工性が悪くなるおそれがある。
【0016】
化粧フィルム又は積層化粧シートを用いて建材を製造するために、現在は主として溶剤系の接着剤が使用されているが、環境保全の観点から脱溶剤を目指してホットメルト樹脂の押出ラミネーションが検討されている。しかし、押出ラミネーションの際のホットメルト樹脂の温度は120〜200℃であるが、従来の化粧フィルム又は積層化粧シートはこの温度に耐えがたく、押出ラミネーションに際して破断を生ずる場合があった。本発明の化粧フィルム及び積層化粧シートは耐熱性に優れるので、安定してホットメルト樹脂を押出ラミネーションすることが可能である。
化粧フィルム又は積層化粧シートを鋼板に熱ラミネーションするに際して、接着強度を高めるために、通常は200〜230℃で熱ラミネーションが行われる。しかし、従来のエンボス加工を施した化粧フィルム又は積層化粧シートは、この温度になるとシボ形状が変化するいわゆるシボ流れという現象が起こり、高温で熱ラミネーションすることができなかった。本発明の化粧フィルム及び積層化粧シートの中で優れた耐熱性を有するものは、200℃においてもシボ形状が変化しないので、鋼板との熱ラミネーションが可能である。
化粧フィルム又は積層化粧シートの耐熱性を高めるために、樹脂成分としてポリブチレンテレフタレート系樹脂を用いると、化粧フィルム又は積層化粧シートを製品として紙管にロール状に巻き取って保管すると、紙管が抜けるという現象が起こる。本発明の化粧フィルムは、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂を含有する樹脂成分を用いることにより、紙管抜けの発生を防止し、安定して製造し、保管することができる。
【0017】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、化粧フィルムと積層化粧シートの評価は、下記の方法により行った。
(1)製膜加工性
化粧フィルムの製膜の安定性を、目視にて判断する。
○:安定して製膜加工が可能である。
×:厚み、ツヤムラなどの異常が生じ、安定した製膜加工が困難である。
(2)隠蔽率
JIS K 5400 7.2に準じて測定する。
(3)シボ耐熱試験
20℃きざみの温度に設定したグリセリン浴に、試験片を30秒間浸積したのちグリセリンを拭き取り、ツヤ又はシボ形状の変化が認められない最高の温度を記録する。
(4)荷重耐熱試験
幅30mm、長さ600mmの試験片の中央部に間隔100mmの標線をつけ、誘電発熱ラミネーターの直径150mmのゴムロール部分に輪状にわたし掛け、試験片の両末端を合わせて2.4kgの重りを吊り下げる。この状態で、120℃に昇温した発熱ロールとゴムロールを、圧力5MPaで5秒間圧着し、試験片の伸びを測定する。
(5)ホットメルト樹脂との押出ラミネーション
ホットメルト樹脂を、120℃で押出ラミネーションする。化粧フィルム又は積層化粧シートの耐熱性が不足すると、フィルム又はシートが破断する。
○:破断しない。
×:破断する。
(6)シボ流れ性
化粧フィルム又は積層化粧シートを、200℃で鋼板と熱ラミネーションし、シボ流れの発生の状態を観察する。
○:シボ形状が保持されている。
×:シボ形状が保持されていない。
(7)耐溶剤性
農林水産省告示第1515号に準じて、ラミネート鋼板の表面にラッカーシンナーを滴下し、時計皿で6時間被覆したのち、室内に24時間放置し、目視により下記の基準に基づいて判定する。
○:表面に変化が認められない。
△:表面のツヤが若干悪くなる。
×:表面に膨れが生じる。
(8)耐沸騰水性
沸騰水中に2時間浸漬したのち、目視により下記の基準に基づいて判定する。
○:表面に変化が認められない。
△:表面に軽微な凸部が認められる。
×:表面に膨れが目立ち、剥離しやすくなる。
(9)紙管抜け
化粧フィルム又は積層化粧シート約150kgを、直径77mmの紙管に巻き上げ、室温で14日間放置したのち、紙管抜けするか否かを判定する。
○:紙管抜けが生じない。
×:紙管抜けが生じる。
【0018】
実施例1
(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂[東洋紡績(株)、SR173CA]50重量部とルチル形酸化チタン50重量部を混練して押し出し、ペレット化して、酸化チタンマスターバッチを調製した。
(a)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂[三菱エンジニアリングプラスチックス(株)、ノバデュール5505S]50重量部、(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂[東洋紡績(株)、SR173CA]30重量部及び上記の酸化チタンマスターバッチ40重量部を混合し、Tダイから押し出し、熱間ロールによってシボ加工を行い、厚さ120μmの化粧フィルムを製膜した。安定した製膜加工が可能であった。得られた化粧フィルムの隠蔽率は、0.999であった。
この化粧フィルムのシボ耐熱試験結果は160℃であり、荷重耐熱試験における伸びは2mmであった。ホットメルト樹脂との押出ラミネーションに際して、破断は生じなかった。鋼板との熱ラミネーションにおいて、シボ形状は保持されていた。耐溶剤試験においても、耐沸騰水性試験においても、化粧フィルムの表面に変化は認められなかった。紙管抜けは、生じなかった。
実施例2〜4
実施例1と同様にして、第1表に示す配合組成により所定の厚さの化粧フィルムを製造し、評価を行った。ただし、樹脂成分のうち量の多い方の樹脂を用いてルチル型酸化チタン50重量%を含有するマスターバッチを調製した。
実施例5
ポリブチレンテレフタレート樹脂[東レ(株)、トレコン1200S]50重量部とルチル形酸化チタン50重量部を混練して押し出し、ペレット化して、酸化チタンマスターバッチを調製した。
(c)ポリブチレンテレフタレート系樹脂[東レ(株)、トレコン1200S]40重量部、(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂[東洋紡績(株)、SR173CA]35重量部、(C)熱可塑性ポリエステルエラストマー[東レ・デュポン(株)、ハイトレル2551]5重量部及び上記の酸化チタンマスターバッチ40重量部を混合し、Tダイから押し出し、熱間ロールによってシボ加工を行い、厚さ150μmの化粧フィルムを製膜した。安定した製膜加工が可能であった。得られた化粧フィルムの隠蔽率は、0.999であった。
この化粧フィルムに、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型塗料[(株)ニッコー化学研究所、T−UV1]を塗布し、硬化させることにより、トップコートを形成した。このトップコートつき化粧フィルムは、シボ耐熱試験結果は160℃であり、荷重耐熱試験における伸びは2mmであった。ホットメルト樹脂との押出ラミネーションに際して、破断は生じなかった。鋼板との熱ラミネーションにおいて、シボ形状は保持されていた。耐溶剤試験においても、耐沸騰水性試験においても、化粧フィルムの表面に変化は認められなかった。紙管抜けは、生じなかった。
【0019】
実施例6
(c)ポリブチレンテレフタレート系樹脂[東レ(株)、トレコン1200S]45重量部、(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂[東洋紡績(株)、SR173CA]35重量部及び実施例5で調製した酸化チタンマスターバッチ40重量部を混合し、Tダイから押し出し、熱間ロールによってシボ加工を行い、厚さ80μmの化粧フィルムを製膜した。安定した製膜加工が可能であった。得られた化粧フィルムの隠蔽率は、0.997であった。
この化粧フィルムに、厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績(株)、E5131]をドライラミネーションにより積層して、積層化粧シートを得た。耐溶剤試験においても、耐沸騰水性試験においても、化粧フィルムの表面に変化は認められなかった。紙管抜けは、生じなかった。
実施例7
(a)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂[三菱エンジニアリングプラスチックス(株)、ノバデュール5505S]50重量部とルチル形酸化チタン50重量部を混練して押し出し、ペレット化して、酸化チタンマスターバッチを調製した。
(a)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂[三菱エンジニアリングプラスチックス(株)、ノバデュール5505S]50重量部、(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂[東洋紡績(株)、SR173CA]30重量部及び上記の酸化チタンマスターバッチ40重量部を混合し、Tダイから押し出し、熱間ロールによってシボ加工を行い、厚さ80μmの化粧フィルムを製膜した。安定した製膜加工が可能であった。得られた化粧フィルムの隠蔽率は、0.999であった。
この化粧フィルムに、厚さ25μmの二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルム[帝人デュポンフィルム(株)、テイジンテフレックスフィルムFT]をドライラミネーションにより積層し、エンボス加工を行って積層化粧シートを得た。得られた積層化粧シートは、シボ耐熱試験結果は160℃であった。鋼板との熱ラミネーションにおいて、シボ形状は保持されていた。耐溶剤試験においても、耐沸騰水性試験においても、積層化粧シートの表面に変化は認められなかった。紙管抜けは、生じなかった。
実施例8
実施例7と同様にして、第1表に示す配合組成により厚さ100μmの化粧フィルムを製膜し、厚さ25μmの二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルムを積層して、積層化粧シートを製造し、評価を行った。
実施例9
(c)ポリブチレンテレフタレート樹脂[東レ(株)、トレコン1200S]30重量部及び(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂[東洋紡績(株)、SR173CA]70重量部を混合し、Tダイから押し出し、熱間ロールによりシボ加工を行い、厚さ60μmのクリヤーフィルムを製膜した。安定した製膜加工が可能であった。
(c)ポリブチレンテレフタレート樹脂[東レ(株)、トレコン1200S]40重量部、(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂[東洋紡績(株)、SR173CA]40重量部及び実施例5で調製した酸化チタンマスターバッチ40重量部を混合し、Tダイから押し出して、厚さ120μmの化粧フィルムを製膜した。
上記のクリヤーフィルムと化粧フィルムを、熱ラミネーションにより積層し、積層化粧シートを得た。得られた積層化粧シートは、シボ耐熱試験結果は120℃であった。ホットメルト樹脂との押出ラミネーションに際して、破断は生じなかった。鋼板との熱ラミネーションにおいて、シボ形状は保持されていた。耐溶剤試験においても、耐沸騰水性試験においても、積層化粧シートの表面に変化は認められなかった。紙管抜けは、生じなかった。
実施例10
(b)イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂[ポリプラスチック(株)、ジュラネックス500LP]65重量部及び(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂[東洋紡績(株)、SR173CA]35重量部を混合し、Tダイから押し出し、熱間ロールによりシボ加工を行い、厚さ80μmのクリヤーフィルムを製膜した。安定した製膜加工が可能であった。
(c)ポリブチレンテレフタレート樹脂[東レ(株)、トレコン1200S]40重量部、(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂[東洋紡績(株)、SR173CA]35重量部、(C)熱可塑性ポリエステルエラストマー[東レ・デュポン(株)、ハイトレル2551]5重量部及び実施例1で調製した酸化チタンマスターバッチ40重量部を混合し、Tダイから押し出し、熱間ロールによってシボ加工を行い、厚さ100μmの化粧フィルムを製膜した。
上記のクリヤーフィルムと化粧フィルムを、熱ラミネーションにより積層し、さらにクリヤーフィルム面に、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型塗料[(株)ニッコー化学研究所、T−UV1]を塗布し、硬化させることにより、トップコートを形成して、積層化粧シートを得た。得られた積層化粧シートは、シボ耐熱試験結果は140℃であった。ホットメルト樹脂との押出ラミネーションに際して、破断は生じなかった。鋼板との熱ラミネーションにおいて、シボ形状は保持されていた。耐溶剤試験においても、耐沸騰水性試験においても、積層化粧シートの表面に変化は認められなかった。紙管抜けは、生じなかった。
【0020】
比較例1
(a)ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂[三菱エンジニアリングプラスチックス(株)、ノバデュール5505S]8重量部、(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂[東洋紡績(株)、SR173CA]72重量部及び実施例1で調製した酸化チタンマスターバッチ40重量部を混合し、Tダイから押し出し、熱間ロールによってシボ加工を行い、厚さ80μmの化粧フィルムを製膜した。安定した製膜加工が可能であった。得られた化粧フィルムの隠蔽率は、0.997であった。
この化粧フィルムのシボ耐熱試験結果は80℃であり、荷重耐熱試験における伸びは25mmであった。ホットメルト樹脂との押出ラミネーションに際して、破断が生じた。鋼板との熱ラミネーションにおいて、シボ形状は保持されなかった。耐溶剤試験において、表面に膨れが生じた。耐沸騰水性試験において、表面に膨れが目立ち、剥離しやすくなった。紙管抜けは、生じなかった。
比較例2〜10
第3表に示す配合組成及び構成により、実施例2〜10と同様にして化粧フィルム又は積層化粧シートを製造し、評価を行った。
【0021】
実施例1〜10の配合組成と構成を第1表に、その評価結果を第2表に示し、比較例1〜10の配合組成と構成を第3表に、その評価結果を第4表に示す。
ただし、表中、各樹脂成分は、下記の略号により表す。
coPBT:ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)、ノバデュール5505S。
rcoPBT:イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリプラスチック(株)、ジュラネックス500LP。
PBT:ポリブチレンテレフタレート樹脂、東レ(株)、トレコン1200S。共重合PET:ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂、東洋紡績(株)、SR173CA。
TPEE:熱可塑性ポリエステルエラストマー、東レ・デュポン(株)、ハイトレル2551。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】
【表5】
【0027】
【表6】
【0028】
【表7】
【0029】
【表8】
【0030】
樹脂成分として、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂40〜60重量%と、(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂35〜60重量%を含有する実施例1〜5の化粧フィルムは、製膜加工性が良好で安定して製膜することができ、耐熱性に優れ、140〜160℃までツヤ又はシボ形状の変化が生ぜず、120℃の荷重耐熱試験における伸びが2〜4mmであり、ホットメルト樹脂との押出ラミネーションで破断することなく、鋼板との熱ラミネーションにおいてシボ形状が保持される。さらに、耐溶剤性、耐沸騰水性も良好であり、紙管抜けも生じない。
樹脂成分として、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂60〜70重量%と、(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂30〜40重量%を含有する化粧フィルムに、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム又は二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルムを積層した実施例6〜8の積層化粧シート、及び、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂40〜60重量%と、(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂40〜55重量%を含有する化粧フィルムに、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂30〜65重量%と、(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂35〜70重量%を含有する透明な化粧フィルムを積層した実施例9〜10の積層化粧シートは、耐熱性に優れ、120〜160℃までツヤ又はシボ形状の変化が生ぜず、ホットメルト樹脂との熱ラミネーションで破断することなく、鋼板との熱ラミネーションにおいてシボ形状が保持される。さらに、耐溶剤性、耐沸騰水性も良好であり、紙管抜けも生じない。
これに対して、樹脂成分として同じ種類の樹脂を用いても、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の含有量が0〜8重量%である比較例1、比較例2、比較例4及び比較例5の化粧フィルムは、耐熱性が不良であり、耐溶剤性、耐沸騰水性も劣る。(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の含有量が95重量%である比較例3の化粧フィルムは、耐熱性には優れているが、製膜加工性が悪く、紙管抜けを生ずる。
また、樹脂成分として、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂のみを含有し、(B)ネオペンチルグリコール共重合非晶性ポリブチレンテレフタレート系樹脂を含有しない化粧フィルムを用いて作製した比較例6、比較例7及び比較例9の積層化粧シートは、いずれも紙管抜けを生ずる。また、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の含有量が92重量%である化粧シートを用いて作製した比較例8の積層化粧シートは、鋼板との熱ラミネーションにおいて、シボ流れが発生し、耐溶剤性も不良である。(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の含有量が8重量%である化粧フィルムを用いて作製した比較例10の積層化粧シートは、押出ラミネーションにおいて破断を生じ、耐沸騰水性も不良である。
【0031】
【発明の効果】
本発明の化粧フィルム及び積層化粧シートは、耐熱性に優れ、高温に加熱してもツヤやシボ形状に変化を生ぜず、加熱下に荷重をかけても大きい伸びを生じないので、ホットメルト樹脂との押出ラミネーションや、鋼板との熱ラミネーションを安定して容易に行うことができる。巻き取った化粧フィルムと積層化粧シートは、寸法安定性が良好であり、紙管抜けを起こすことがない。さらに、耐溶剤性と耐沸騰水性にも優れるので、家庭電気製品、家具調度品、家屋内装材などに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の積層化粧シートの一態様の模式的断面図である。
【図2】図2は、本発明の積層化粧シートの他の態様の模式的断面図である。
【符号の説明】
1 二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム
2 コート層
3 印刷層
4 化粧フィルム
5 接着剤
6 化粧フィルム
7 印刷層
8 透明な化粧フィルム
Claims (14)
- 樹脂成分として、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂10〜90重量%、及び、(B)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール60〜90モル%とネオペンチルグリコール又はネオペンチルグリコールとジエチレングリコール10〜40モル%である共重合非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂10〜90重量%を含有することを特徴とする化粧フィルム。
- (A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂が、(a)ポリテトラメチレングリコールを共重合成分として10〜30重量%含むポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂であって、その含有量が30〜90重量%である請求項1記載の化粧フィルム。
- (A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂が、(b)ジカルボン酸成分がテレフタル酸70〜95モル%とイソフタル酸5〜30モル%であり、グリコール成分が1,4−ブタンジオールであるイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂であって、その含有量が30〜90重量%である請求項1記載の化粧フィルム。
- (A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂が、(c)ポリブチレンテレフタレート樹脂であって、その含有量が30〜90重量%である請求項1記載の化粧フィルム。
- 樹脂成分が、(C)アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体又は熱可塑性ポリエステルエラストマー1〜50重量%を含有する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化粧フィルム。
- 顔料を含有し、隠蔽率が0.95以上である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の化粧フィルム。
- ウレタン系トップコート又は紫外線硬化型トップコートを有する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の化粧フィルム。
- 上地が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、下地が請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の化粧フィルムであり、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面にバックプリント印刷又は化粧フィルムの積層面に印刷層を有し、上地と下地が熱ラミネーション又はドライラミネーションにより積層されてなることを特徴とする積層化粧シート。
- 上地の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが10〜100μmであり、下地の化粧フィルムの厚さが25〜200μm、隠蔽率が0.95以上である請求項8記載の積層化粧シート。
- 上地が二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルム、下地が請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の化粧フィルムであり、二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルムの裏面にバックプリント印刷又は化粧フィルムの積層面に印刷層を有し、上地と下地が熱ラミネーション又はドライラミネーションにより積層されてなることを特徴とする積層化粧シート。
- 上地の二軸延伸共重合ポリエチレンテレフタレート系フィルムの厚さが10〜100μmであり、下地の化粧フィルムの厚さが25〜200μm、隠蔽率が0.95以上である請求項10記載の積層化粧シート。
- 上地が請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の透明な化粧フィルムであり、下地が請求項6記載の化粧フィルムであり、上地の化粧フィルムの裏面にバックプリント印刷又は下地の化粧フィルムの積層面に印刷層を有し、上地と下地が熱ラミネーション又はドライラミネーションにより積層されてなることを特徴とする積層化粧シート。
- 上地の化粧フィルムの厚さが10〜400μmであり、下地の化粧フィルムの厚さが10〜400μmである請求項12記載の積層化粧シート。
- エンボス加工されてなる請求項10ないし請求項13のいずれかに記載の積層化粧シート。
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