JP4681875B2 - 鋼板用化粧フィルム - Google Patents
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しかしながら上記した特許文献1〜3はいずれも化粧シートの熱水中での耐久性に着目したものではなく、この特性につき言及がなされていない。特許文献4は化粧シートの熱水中での耐久性についても着目がなされているが、完全非晶性ポリエステルフィルムは本来耐熱水性に劣るものであるという認識がなされておらず、この性質を補うための対応策も記載されていない。
(1)(A)鋼板との貼合面側にポリエチレンテレフタレートのジオール部分であるエチレングリコールの一部を1,4-シクロヘキサンジメタノールに置き換えた、非晶性の共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする接着層を設け、その接着層の上部に、(B)顔料を配合したポリブチレンテレフタレートを主成分とする層が、更に(B)層の上部に、(C)ポリブチレンテレフタレート50〜90重量%およびポリエチレンテレフタレート系樹脂50〜10重量%からなる顔料を含有しない表面層が設けられており、
(A)の接着層が、厚み2〜50μmで、かつ、全層の厚みの50%未満のものであることを特徴とする、該表面層(C)がシリコーン系硬化性コーキング剤と接合される用途に供される、ユニットバス化粧鋼板用化粧フィルム。
(2)上記の(B)層において、顔料の添加量が10〜40重量%である(1)のユニットバス化粧鋼板用化粧フィルム。
(3)上記の(C)の表面層がエンボス加工されている(1)または(2)のユニットバス化粧鋼板用化粧フィルム。
(4)(1)ないし(3)のいずれかのユニットバス化粧鋼板用化粧フィルムを、その(A)の接着層で高温の鋼板に貼り合わせてなるユニットバス化粧フィルム被覆鋼板。
接着層の非晶性共重合ポリエステル樹脂は、再度加熱処理を行っても再結晶化により物性低下を起こさず、結晶性〔DSC法によって測定された結晶性(JIS K7121)〕成分を全くもたないか、結晶性成分をほとんどもたないものである。
非晶性ポリエステル系樹脂の製造方法は、すでに当業界において広く知られており、例えば米国特許5,340,907号に開示されている。
本発明で用いる非晶性共重合ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートのジオール部分であるエチレングリコールの一部を1,4-シクロヘキサンジメタノールに置き換えた、非晶性の共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂であり、本発明の実施例では、非晶性共重合ポリエステル樹脂として用いるのは、ポリエチレンテレフタレートのジオール部分であるエチレングリコールの一部を1,4-シクロヘキサンジメタノールに置き換えた、非晶性の共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂であるPETGであり、イーストマン・ケミカル社、商品名「イースター」を用いている。
B層はポリブチレンテレフタレートを主成分とし、これに隠蔽性を付与するために顔料が配合された組成物から構成されている。
B層に用いられるポリブチレンテレフタレート以外の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルが挙げられる。ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は1.0〜2.0の範囲であることが好ましい。固有粘度は定法を用い、樹脂をフェノール/テトラクロロエタンの1:1混合溶液に溶解させた後、30℃の恒温浴槽中でウベローデ粘度計により、比粘度を測定し、固有粘度を求めることかできる。固有粘度が1.0未満の場合は金属板に被覆して恒温多湿の雰囲気中に長期間経時した際に十分な耐衝撃性(耐水劣化性)が得られず、一方、固有粘度が20を超える場合は、樹脂を加熱溶融し押出機から押し出してフィルムに製膜する際に高粘度となり過ぎて押出機のトルクが上がるため製膜困難となる。より好ましい固有粘度の範囲は、耐水劣化性および製膜性の観点から1.2〜1.5である。
上記のブチレンテレフタレートを主成分とする樹脂フィルムの厚さは特に限定するものではないが、20〜300μm、中でも70〜200μmであることか好ましい。
顔料の添加量は10〜40重量%の範囲が好ましい。10重量%未満では色差(ΔE値)の差が1を超えると化粧フィルムを鋼板と積層して得られるラミネート鋼板の外観が、基材である鋼板の色調に影響されるおそれがある。また、40重量%を超えると樹脂成分の割合が少なく、製膜性が悪化する。コストアップにもなる。
ポリブチレンテレフタレート系樹脂からなるフィルムを使用した場合に、エンボス加工によって深く鮮明な凹凸模様が得られ、この樹脂フィルムを金属板に被覆した場合、飛躍的に意匠性に優れた化粧金属板が得られる。一方、化粧鋼板の重ね合わせ部などの防水のために、シリコーン系など硬化性のコーキング剤を使用するが、ポリブチレンテレフタレート系樹脂はコーキング剤との接着性が悪い。本発明においては、PBT系樹脂にPET系樹脂をブレンドすることによって、接着性が向上する。
すなわち、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を配合したポリブチレンテレフタレートの顔料を含有しないクリア層は、ポリブチレンテレフタレート50〜90重量%およびポリエチレンテレフタレート系樹脂50〜10重量%の樹脂組成物を用いた、顔料を配合しないクリア層が好ましい例として挙げられる。ポリエチレンテレフタレートの配合割合が10重量%以上でコーキング剤の接着性が向上するが、50重量%を超えるとポリブチレンテレフタレートの特性が希釈されすぎてしまう。配合するポリエチレンテレフタレート系樹脂は、ホモ−PETであっても、共重合PETであってもよい。実施例では、PBT(70%)とPET(30%)のブレンド物であり、PETはイソフタル酸変成の共重合PETを使用している。
クリア層の厚さは特に限定するものではないが、2〜30μm、中でも4〜15μmであることが好ましい。
化粧フィルムを鋼板にラミネートする方法には、超音波溶接、スピンウェルド等の接着方法を用いることができる。あるいは、火気に対して安全で臭気もなく、価格的にも安価な一般的な接着剤、例えば、酢酸ビニル樹脂系、エチレン−ビニルアセテート樹脂系、尿素樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリエステル樹脂系、シアノアクリレ−ト樹脂系なとの接着剤を介してラミネートしてもよいが、単に樹脂の融点以上に加熱しておいた鋼板上に圧着する方法(加熱圧着法)でラミネー卜してもよい。すなわち、鋼板をポリブチレンテレフタレート樹脂の融点以上の温度に加熱し、化粧フィルムの(A)の接着層面を金属板に当接し、1対のラミネートロールで両者を挟み付け、直ちに水中に浸漬して急冷する。
鋼板との接着力を高度に要求されるものに対しては、化粧フィルムの(A)の接着層の面に接着剤層を設けるか、または金属板に接着剤層を設け、接着剤層を介在させて金属板と化粧フィルムを積層させることも可能である。また、加熱圧着法で化粧フィルムと鋼板とをラミネートさせる場合には、強固な密着力を得ることができるように鋼板との表面を予め処理しておくことが好ましい。表面処理方法としては、電解クロム酸処理、接着プライマー処理などの方法を採用することができる。
PETG:イーストマンケミカルジャパン(株) イースター6763
ジオール成分 ・・ エチレングリコール:67mol%
1,4−シクロヘキサンジメタノール:33mol%
融点: − (完全非晶性のため測定不能)
固有粘度:0.75
PBT:東レ(株) トレコン1200S
融点:225℃
固有粘度:1.23
PET:ユニチカ(株) MA1344
イソフタル酸変性共重合PET
ジカルボン酸成分 ・・ テレフタル酸:92mol%
イソフタル酸: 8mol%
融点:234℃
固有粘度:0.71
1)A層(接着層)は、厚み6μmのPETG(完全非晶性PET)用いた。これは、PETG:PETのジオール部分の一部をCHDM(1,4-シクロヘキサンジメタノール)に置き換えた、共重合PETで、完全非晶性である。PETG層は沸騰水中での耐久性が悪いので、厚みを6μmにした。
2)B層(白色顔料としての酸化チタンを22.5重量%配合したPBT)として厚みを113μmにした。
3)C層(表面層)として、PBT系樹脂70重量%とPET系樹脂30重量%のブレンド樹脂を用いた。厚みは6μmとした。
上記の三種類の樹脂を、三台の押出機とTダイを備えた押出成型機に供給して、エンボス加工を施したキャスティングロール上にC層(表面層)側が位置するように熔融樹脂を押し出しし、C層(表面層)側にエンボス加工が施された三層共押出の化粧フィルムを得た。
こうして得られた化粧フィルムを公知の熱融着法を用いて、220℃に加熱した鋼板にA層(接着層)が接するように積層して化粧フィルム被覆鋼板を得た。
1)発泡の有無:所定の温度に加熱した鋼板に化粧フィルムを積層した後の発泡の有無を、目視によって確認する。
貼合温度が240℃の場合、外部の気温・湿度の条件(例えば、秋〜春にかけて)によっては発泡しない。夏場など、温度・湿度が高い場合に発泡する。250℃では、夏場以外でも発泡する場合がある。
2)密着性の評価
金属基板に樹脂フィルムをラミネートした化粧板から60×60mmの試験片を採取し、カッターナイフを使用して、樹脂フィルム上から幅5mmの井桁の切り込みを金属基板面に達するまで入れた。
この試片について、エリクセン試験機を用いて、半径10mmの球形のポンチを鋼板側から6mm押し付け、フィルム貼合鋼板を変形させた際のフィルムの剥離状態を評価することで、樹脂フィルムと金属基板との密着性の評価をした。
実用上問題ないと思われる範囲を○。実用上問題あるものを×とする。
3)耐沸騰水性
本発明の化粧板をユニットバスの内装材として用いられる高温多湿の状態で長時間経時させた場合を想定し、沸騰水中に3時間浸漬した場合の樹脂フィルムの耐水劣化性をフィルム表面が「あばた状」になるか否かで評価した。あばた状になるものを×、そうでないものを○とする。この点がPETGの最大の問題点であることがわかる。
4)シーリング剤の密着性
シーラント4855(コーキング剤、信越化学工業(株)製)をフィルム面にとぐろ状に塗布し、24時間放置した後に剥離しない場合:○、剥離する場合:×
化粧鋼板同士の重ね合わせ部分などに、防水のためシリコーン系など硬化性のコーキング剤を塗布する。PBT系樹脂にPET系樹脂をブレンドすることによって、接着性が向上することがわかる。
Claims (4)
- (A)鋼板との貼合面側にポリエチレンテレフタレートのジオール部分であるエチレングリコールの一部を1,4-シクロヘキサンジメタノールに置き換えた、非晶性の共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする接着層を設け、その接着層の上部に、(B)顔料を配合したポリブチレンテレフタレートを主成分とする層が、更に(B)層の上部に、(C)ポリブチレンテレフタレート50〜90重量%およびポリエチレンテレフタレート系樹脂50〜10重量%からなる顔料を含有しない表面層が設けられており、
(A)の接着層が、厚み2〜50μmで、かつ、全層の厚みの50%未満のものであることを特徴とする、該表面層(C)がシリコーン系硬化性コーキング剤と接合される用途に供される、ユニットバス化粧鋼板用化粧フィルム。 - 上記の(B)層において、顔料の添加量が10〜40重量%である請求項1のユニットバス化粧鋼板用化粧フィルム。
- 上記の(C)の表面層がエンボス加工されている請求項1または2のユニットバス化粧鋼板用化粧フィルム。
- 請求項1ないし3のいずれかのユニットバス化粧鋼板用化粧フィルムを、その(A)の接着層で高温の鋼板に貼り合わせてなるユニットバス用化粧フィルム被覆鋼板。
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