JP2007022047A - 金属板被覆用積層シート、および積層シート被覆金属板 - Google Patents

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Abstract

【課題】 エンボス付与機で積層シートを加熱した際に、シートの幅縮み、皺入り、シート破断等の問題が生じるおそれが少なく、エンボス付与機において加熱ロール等に粘着せずエンボスを付与することができると共に、金属板と良好にラミネートすることができる、金属板被覆用積層シート、および、このシートにより被覆した積層シート被覆金属板を提供する。
【解決手段】 A層およびB層の少なくとも二層からなる金属板被覆用積層シートにおいて、A層を、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなる厚み45μm以上の無配向の樹脂層とし、B層を、融点(Tm)が205℃〜220℃であるポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂を主体とする層とし、積層シートの総厚みを65〜300μmの範囲とし、かつ、積層シートとして測定した動的粘弾性引張り法(10Hz)での190℃の貯蔵弾性率を、積層シートのMD方向に関して、1×10Pa以上とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、AV機器や、エアコンカバー等の家電製品筐体部材、合板製家具、鋼製家具用部材、建築内装材等のエンボス意匠を有する被覆材用途に好適に用いることができる、エンボス付与適性と金属板ラミネート適性に優れた金属板被覆用積層シート、および、積層シート被覆金属板に関する。
従来、上記用途に用いられる被覆材としては、エンボス意匠を付与した軟質塩化ビニル系樹脂シート(以下、軟質「PVCシ−ト」と省略する場合がある。)により合成樹脂成形品、合板、木質繊維板、金属板等を被覆したものが用いられてきた。
この軟質PVCシ−トの特徴としては、
(1)エンボス付与適性に優れることから、意匠性に富んだ被覆材を得ることができる。
(2)一般的に背反要素である加工性と表面の傷入り性のバランスが比較的良好である。
(3)各種添加剤との相容性に優れること、および長年にわたり添加剤による物性向上検討が行われて来たことから、耐久性に優れた樹脂皮膜を得ることが容易である。
等の点を挙げることができる。
この軟質PVCの長尺シ−トに連続的にエンボスを付与する方法としては、製膜後のシートを再加熱により軟化させ、エンボス柄を彫刻したロール(エンボス版ロール)で抑えて柄を連続的に転写させる方法が一般的に用いられている。シートを加熱する方法として、加熱した金属ロールに接触させて加熱するような接触型や、赤外ヒーターや、熱風ヒーターなどによってロール等に接触させることなく加熱する非接触型等がある。実際の製造ラインでは、どちらか一方だけが用いられる場合もあるが、一般的には双方が併用されることが多い。また、これら一連の工程を有する設備をエンボス付与機等と称する。
このエンボス付与機においては、エンボス版ロールの交換脱着を容易に行える設計が盛り込まれているのが一般的であり、エンボス版ロールの直径は押出し製膜設備のキャスティングロール等と比較して小さく、多種のエンボス版ロールを用意しておくことでエンボス柄の変更を容易かつ経済的に行うことができることから、小ロット対応に適したエンボス付与方法といえる。
また、エンボス意匠と同時に印刷意匠を有する軟質PVCシートについては、着色された軟質PVCシートの表面に印刷を施した後、透明な軟質PVCシートを積層一体化し、この積層シートをエンボス付与機へ連続的に通すことで得られていた。この場合、エンボス付与機でのシート予熱を利用して、2層のシートを熱融着で積層一体化すること等が行われており、積層のための特別な工程を必要としないことから生産性が良く、コスト面でも優れたものであった。
このように、優れた特徴を有する軟質PVCシ−トであるが、近年VOC問題や内分泌撹乱作用の問題、燃焼時に塩化水素ガスその他の塩素含有ガスを発生する問題等から、塩化ビニル系樹脂の使用は、制限を受けるようになってきた。
そこで、軟質PVCシートに替えて、加工性と表面傷付き性に優れたポリエステル系樹脂より成るシートをエンボス意匠を有する樹脂被覆金属板の用途に用いることが検討された。このようなシートとして、特許文献1には非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする基材フィルム層と、透明な非晶質ポリエステル樹脂を主成分とする保護フィルム層を積層した化粧シートが提案されている。
また、特許文献2では、実質的に非晶性あるいは低結晶性である樹脂組成物または前記実質的に非晶性あるいは低結晶性である樹脂組成物を多く含むエンボス付与可能層(A層)と、実質的に結晶性である樹脂組成物もしくは前記実質的に結晶性である樹脂組成物を多く含み、エンボス付与機での加熱時に積層シートに張力を付与すると同時にエンボス付与機での加熱金属への非粘着性を付与する層(B層)とで構成される2層構造のシートとすることで、現行のPVC用のエンボス加工装置を用いてもシート溶断、加熱ロールへの貼り付きや巻き付きの不具合が生じずに、現行のPVC用のエンボス加工装置を用いることができることが提案されている。
特開2000−233480号公報 WO03045690号公報
しかし、特許文献1における組成では、エンボス付与機でシートが加熱された際の張力が充分なものとはならないため、シートの幅縮み、皺入り、破断等を生ずるおそれがあり安定してエンボス意匠を有するシートを生産することはむずかしい。
また、特許文献2においては、結晶性ポリエステルを主体とする層の結晶性が比較的高い場合は、エンボス付与機での作業安定性は良好なものの、エンボス付与後の積層シートを金属板にラミネートする際、金属板を比較的高温に加熱しておかないと充分な接着力が得られないおそれがあった。また、金属板を高温に加熱した場合は、金属板裏面に施された塗装処理が熱変色を生ずる懸念があった。逆に、金属板とのラミネートの際の上記問題点を解決するため、結晶性ポリエステル樹脂を主体とする層の結晶性を比較的低下させた場合は、エンボス付与機での作業性に問題が出る可能性があり、両者をバランスさせ得る範囲は制約を受けるものであった。
そこで、本発明は、エンボス付与機で積層シートを加熱した際に、シートの幅縮み、皺入り、シート破断等の問題が生じるおそれが少なく、エンボス付与機において加熱ロール等に粘着せずエンボスを付与することができると共に、金属板と良好にラミネートすることができる、金属板被覆用積層シート、および、このシートにより被覆した積層シート被覆金属板を提供することを課題とする
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
第一の本発明は、A層(10)およびB層(20)の少なくとも二層からなる積層シートであって、A層(10)が、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなる厚み45μm以上の無配向の樹脂層であり、B層(20)が、融点(Tm)が205℃〜220℃であるポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂を主体とする層であり、積層シートの総厚みが65〜300μmの範囲であり、かつ、積層シートとして測定した動的粘弾性引張り法(10Hz)での190℃の貯蔵弾性率が、積層シートのMD方向に関して、1×10Pa以上である、金属板被覆用積層シート(100a)である。
ここで、「MD方向」とは、シートの長手方向(Machine Direction)をいう。貯蔵弾性率をこのように規定するのは、エンボス付与機で加熱されたシートの耐破断性を示すためである。また、「190℃」で規定するのは、従来の軟質PVCシートにエンボス付与機でエンボス柄を転写する場合にシートが支持体無しでヒーターによって加熱される温度が160〜190℃程度であることによる。この温度に加熱された後、エンボス版ロールでエンボス柄を転写することにより、エンボス耐熱性が良好なエンボス意匠シートを得ることができる。
この積層シート(100a)において、A層(10)はエンボス転写性が良好な層であり、B層(20)はエンボス付与機で積層シートが加熱された際に十分なシート張力を付与すると共に、エンボス付与機の加熱金属ロールに対して非粘着性を示す層である。また、B層(20)は、同時に、金属板(90)にラミネートする場合に金属板温度を比較的低温にしても十分な接着強度を得ることが可能な層である。
上記の金属板被覆用積層シート(100)において、A層(10)は、A層における樹脂成分全体の質量を100質量%として、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を60〜80質量%と、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂40〜20質量%を含有する、厚み45μm以上の無配向の樹脂層であることが好ましい。A層(10)をこのような構成とすることによって、その結晶性により沸騰水浸漬などの高温の水と接触した場合のエンボス柄の残存性(エンボス耐熱性)をより良好なものとすることができる。
上記の金属板被覆用積層シート(100)において、A層(10)のポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂は、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、または、ジメチルテレフタル酸、ジオール成分として、1.4−ブタンジオールの各単一成分を縮重合して得られたホモポリブチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。A層(10)のポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂として、商業的に入手しやすい材料を用いることで原料供給の安定性とコストのメリットを得ることができる。
上記の金属板被覆用積層シート(100)において、A層(10)は、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と、芳香族ポリカーボネート系樹脂との混合物を主体とし、厚み45μm以上の無配向の樹脂層であることが好ましい。A層(10)をこのような構成とすることによって、その結晶性により沸騰水浸漬などの高温の水と接触した場合のエンボス柄の残存性(エンボス耐熱性)をより良好なものとすることができる。
上記の金属板被覆用積層シート(100)において、A層(10)の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と、芳香族ポリカーボネート系樹脂との混合物についての、加熱速度10℃/分での示差走査熱量測定により観測されるガラス転移温度(Tg)は、単一であり、100〜150℃の範囲であることが好ましい。A層(10)の樹脂成分のガラス転移温度が100℃以上とすることにより、沸騰水浸漬などの高温の水と接触した場合のエンボス柄の残存性(エンボス耐熱性)をより良好なものとすることができる。
上記の金属板被覆用積層シート(100)において、A層(10)の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂は、テレフタル酸またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、ジオール成分の20〜80mol.%を1.4−シクロヘキサンジメタノール、80〜20mol.%をエチレングリコールとする共重合ポリエステルであることが好ましい。A層(10)の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂として商業的に入手しやすい材料を用いることで原料供給の安定性とコストのメリットを得ることができる。
上記の金属板被覆用積層シート(100)において、A層(10)が実質的に透明であり、A層(10)とB層(20)との間に印刷柄C(30)が付与されていてもよい。これにより、エンボス意匠に加えて印刷意匠を有する積層シート(100b)を得ることができる。
上記の金属板被覆用積層シート(100)において、A層(10)が実質的に透明であり、A層(10)とB層(20)との間に実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなる着色された無配向の樹脂層(D層)(40)が配置され、A層(10)とD層(40)との間に印刷柄C(30)が付与されている構成(100c)とすることができる。これにより、D層(40)はA層(10)と同様にエンボス版ロールによる押圧で変形される層であることから、A層(10)の厚みを薄くして印刷層の透視性を良好なものとしながら、D層(40)によって、より深いエンボスの転写が可能となる。
上記の金属板被覆用積層シート(100c)において、D層(40)の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂は、テレフタル酸またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、ジオール成分の20〜80mol.%を1.4−シクロヘキサンジメタノール、80〜20mol.%をエチレングリコールとする共重合ポリエステルであることが好ましい。これにより、商業的に入手しやすい材料を用いることで原料供給の安定性とコストのメリットを得ることができる。
上記の金属板被覆用積層シート(100)において、160℃〜190℃の範囲に加熱された積層シートにおける、前記A層(10)側表面に、エンボスロールにてエンボスによる凹凸意匠を形成することができる。この温度に加熱した金属板被覆用積層シート(100)にエンボスを付与することで、実用上十分なエンボス耐熱性を得ることができる。
第二の本発明は、上記の金属板被覆用積層シート(100)、およびこの金属板被覆用積層シートにおけるB層(20)側の表面が接着剤を用いてラミネートされた金属板(90)を有する、積層シート被覆金属板(200)である。これにより、エンボス耐熱性の良好なエンボス意匠シート被覆金属板(200)を得ることができる。
第三の本発明は、上記の積層シート被覆金属板(200)を用いた、ドア材、ユニットバス壁材、ユニットバス天井材、パーティション材およびパネル材からなる群から選ばれる建築内装材である。第四の本発明は、上記の積層シート被覆金属板(200)を用いた、鋼製家具部材である。第五の本発明は、上記の積層シート被覆金属板(200)を用いた、家電製品筐体部材である。
本発明の金属板被覆用積層シートは、エンボス付与機で積層シートを加熱した際に、シートの幅縮み、皺入り、シート破断等の問題が生じるおそれが少ない。エンボス付与性および金属板とのラミネート性のバランスに優れるため、エンボス付与機において加熱ロール等に粘着せずエンボスを付与することができると共に、金属板と良好にラミネートすることができる。また、A層およびB層からなる積層構成とすることにより、A層単層の場合に比べ、より高温でのエンボス転写が可能であり、従って本発明の金属板被覆用積層シートは、エンボス耐熱性に優れている。
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
なお、本発明の積層「シート」は、厚みが65〜300μmの範囲をとることから、「フィルムおよびシート」と記すのがより正しいが、ここでは一般的には「フィルム」と呼称する範囲に関しても便宜上「シート」という単一呼称を用いた。
また、無配向という表現は、積層シートに何らかの性能を付与するために意図して延伸操作等の配向処理を行ったものではないことであり、押出し製膜時にキャスティングロールによる引き取りで発生する配向等まで存在していないという意味ではない。
図1に本発明の金属板被覆用積層シート100の層構成を模式的に示した。図1(a)は、A層10およびB層20の少なくとも二層からなる、本発明の基本構成である積層シート100aである。また、図1(b)は、積層シート100aのA層10側にエンボスによる凹凸意匠を付与した形態を示したものである。
<A層10>
A層10は、積層シートをエンボス付与機に通した際、加熱軟化されてエンボス版ロールにより押圧されエンボス柄が転写される層である。従って、A層10はエンボス版ロールで押圧される時点で高い結晶性を有していてはならず、実質的に非結晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなる層である。ここで、「実質的に非結晶性」とは、エンボス付与機でエンボス付与が困難なほどの結晶性を有していない意味であり、低結晶性をも含む意味である。
ここで、「主体としてなる」とは、A層10全体の質量を基準(100質量%)として、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を、55質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有することをいい、以下において説明する添加剤や、他の汎用樹脂が少量添加されていても構わないことをいう。
A層10は、エンボス付与機で、そのガラス転移温度(Tg)以上に加熱された後、エンボス付与される。加熱時にA層10の弾性率はエンボス付与が可能な程度に充分に低下している必要がある。一方で、エンボス付与すべきシートが、結晶性の低いA層10単層よりなる場合は、加熱金属ロールへの粘着を生じたり、幅縮みや、皺入り、シート破断を生じたりしてしまうのであるが、本発明の金属板被覆用積層シート100においては、以下において説明するB層20が弾性率を維持しており、これらの問題を生ずることがない。
A層10を形成する実質的に非結晶性(低結晶性のものも含む。)のポリエステル系樹脂としては、示差走査熱量計(DSC)により、昇温時に明確な結晶融解ピークを示さないポリエステル樹脂、および、結晶性を有するものの結晶化速度が遅く、押出し法、カレンダー法等の製膜工程、およびエンボス付与機でエンボス柄が転写されるまでの加熱工程において結晶性が高い状態とならないポリエステル樹脂を使用することができる。
A層10の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂は、テレフタル酸またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、ジオール成分の約20〜80mol.%が1.4−シクロヘキサンジメタノールで、残りの約80〜20mol.%をエチレングリコールとする共重合ポリエステルであることが好ましい。
ここでの「主体とし」とは、ジカルボン酸成分全体を基準(100mol.%)として、テレフタル酸またはジメチルフタル酸を70mol.%以上、好ましくは90mol.%以上、より好ましくは98mol.%以上含むことをいう。
1.4−シクロヘキサンジメタノールの量が少なすぎると、結晶性樹脂としての特徴が顕著になり、エンボス付与機での加熱時に結晶化が進行してエンボス付与が困難になるおそれがあり好ましくない。逆に、1.4−シクロヘキサンジメタノールの量が多すぎる場合も、結晶性が顕著になり、さらに非常に高い融点を示すようになることから好ましくない。
実質的に非結晶性であるポリエステル系樹脂の一例としては、非晶性である共重合ポリエステル樹脂を挙げることができ、具体的には、原料の安定供給性や生産量が多いことから低コスト化が図られているいわゆるPET−Gを挙げることができる。PET−Gとしては、例えば、イーストマンケミカル社の「イースターPET−G・6763」を用いることが好ましい。「イースターPET−G・6763」は、ポリエチレンテレフタレート樹脂のジオール成分の約30mol.%を1.4−シクロヘキサンジメタノールで置換した構造を有するもので、DSC測定で結晶化挙動が認められない実質的に非結晶性のポリエステル樹脂である。
ただし、これに限定されるものではなく、特定の条件では結晶性を示すが通常の条件では非晶性樹脂として取り扱うことが可能なイーストマンケミカル社の「PCTG・5445」等を用いることもできる。また、これ以外に、ネオペンチルグリコール共重合PETで結晶性を示さないものや、結晶性の低いもの、イソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート系樹脂や、イソフタル酸を共重合したポリブチレンテレフタレート樹脂で結晶性の低いものなど、共重合成分により結晶化を阻害した組成のものもA層10の主体となる非晶性であるポリエステル系樹脂として用いることができる。
A層10における樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、A層10には、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(以下、「PBT系樹脂」と省略する場合がある。)が、20〜40質量%配合されていることが好ましく、20〜35質量%配合されていることがさらに好ましい。これにより、エンボス付与機でのA層10へのエンボス転写が困難とならない程度の結晶性を有し、沸騰水浸漬試験時等の高温の水と接触した場合のエンボスの残存性をより良好にすることができ、特にこれらに対する要求が厳しい場合等に好適に用いることができる。また、耐溶剤性や印刷適性をも改善することもできる。
上記の配合に用いるPBT系樹脂としては、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、または、ジメチルテレフタル酸、ジオール成分として1.4−ブタンジオールの各単一成分を用いた、いわゆるホモポリブチレンテレフタレート樹脂(意図せざる共重合成分が入っていてもよい。)を用いることがコストや入手の容易さの点から好ましい。
配合するPBT系樹脂の量が多すぎると、A層10の結晶性が顕著になり上記の理由でエンボスの付与が困難になる。また、配合するPBT系樹脂の量が少なすぎると、実質的に非晶性のポリエステル系樹脂のみから成る場合と沸騰水浸漬性に大差はなくなり、あえてPBT系樹脂をブレンドする理由がなくなる。
また、A層10は、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と芳香族ポリカーボネート系樹脂との混合物を主体とするものとすることも、沸騰水浸漬性をより良好なものとする点から好ましい。芳香族ポリカーボネートをブレンドすることにより、A層10の樹脂組成のガラス転移温度が上昇し、これによって加熱時や沸騰水浸漬後のエンボスの残存性が良好になる。
A層10の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と、芳香族ポリカーボネート系樹脂との混合物についての、ガラス転移温度は単一であることが好ましく、また、100〜150℃の範囲であることが好ましく、110〜130℃の範囲であることがさらに好ましい。なお、ここでのガラス転移温度は、JIS K−7121に準じて、加熱温度10℃/分で示差走査熱量計を用いて測定したものである。
ガラス転移温度が100℃未満では、沸騰水浸漬後のエンボスの残存性が、芳香族ポリカーボネート系樹脂をブレンドしない場合と比べて大きな改善が見られず、一方、市販原料として容易に比較的低コストで入手可能な芳香族ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度は通常150℃程度である。
このように芳香族ポリカーボネート系樹脂をブレンドする場合は、実質的に非晶性のポリエステル系樹脂としては、テレフタル酸またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、ジオール成分の約50〜80mol.%が1.4−シクロヘキサンジメタノールで、残りの約50〜20mol.%がエチレングリコールより成る共重合ポリエステルを用いることが好ましい。上記組成範囲のポリエステル系樹脂を用いることで、良好な相容性が得られ、熔融混練条件によらず単一のガラス転移温度を有する樹脂混合物を得ることができる。
このような組成領域の実質的に非晶性のポリエステル樹脂としては、1.4−シクロヘキサンジメタノールのジオール成分に占める比率が約65mol.%であるイーストマン・ケミカル・カンパニー社の「PCTG・5445」を挙げることができる。
1.4−シクロヘキサンジメタノールのジオール成分に占める比率が50mol.%未満のポリエステル系樹脂では、芳香族ポリカーボネート系樹脂との相容性がやや劣り、熔融混練条件によっては、ガラス転移温度が単一とならないおそれがある。この場合、A層10のヘイズ(曇り度)が増大したり、沸騰水浸漬後のエンボスの残存性を良好にするためには多量の芳香族ポリカーボネート樹脂を配合する必要が生じ、その結果として積層シート表面のシルクスクリーン印刷適性などが低下することが懸念される。ただし、これらの問題が特に重要でない場合には、該ブレンド組成を用いても支障ない。
また、1.4−シクロヘキサンジメタノールのジオール成分に占める比率が、50mol.%未満の場合でも、特定のポリアルキレングリコールセグメントを構成成分として有するポリエステル系樹脂においては、芳香族ポリカーボネート系樹脂とのブレンド組成物において、単独のガラス転移温度を示すことが知られており(特願2004−034388号公報)、このポリエステル系樹脂も芳香族ポリカーボネート系樹脂との混合物としてA層を形成する樹脂材料として好ましく用いることができる。このような特徴を有するポリエステル系樹脂としては、三菱レイヨン社製の「ダイヤナイトDN−124」を挙げることができる。
あるいは、A層10に、適宜、相容化剤類を添加したり、熔融混練条件を調整したりして、準単一のガラス転移温度が現出するように改質して用いても良い。
ここで、「ガラス転移温度(Tg)が、単一」であるというのは、ブレンド組成物をJIS K−7121に準じて、加熱温度10℃/分で示差走査熱量計を用いてガラス転移温度の測定を行った際に、ガラス転移温度を示すピークが一つだけ現れるという意味である。
A層10を構成する樹脂混合物に用いることができる芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、特に制限はないが、ビスフェノールAとホスゲンとを原料とする、あるいはホスゲンを用いないものの同一の分子構造を有する最も汎用的なビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂を支障なく用いることができ、その場合、コストのメリットを得ることができる。
本発明に用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量としては、20000〜40000の範囲のもの、さらに好ましくは22000〜30000の範囲のものを用いることが好ましい。ここで、粘度平均分子量が20000未満では力学的強度、特に低温衝撃強度が低下することが知られており、一方40000を超えると熔融粘度が非常に高くなり成形加工性が低下し、また、重合に長時間を要することから生産サイクルやコストの点から好ましくない。
A層10の下に印刷柄C30が存在しない場合は、A層10に意匠性の付与や下地金属の隠蔽のために着色顔料を添加しても良い。使用される顔料は、上記目的のために樹脂着色用として一般的に用いられているもので良く、その添加量に関しても上記目的のために一般的に添加される量で良い。一例としては、白系の着色顔料である隠蔽効果の高い酸化チタン顔料をベースとして、色味の調整を有彩色の無機、有機の顔料で行った着色を挙げることができる。
また、A層10には、その性質を損なわない範囲において、あるいは本発明の目的以外の物性をさらに向上させるために、各種添加剤を適宜な量添加しても良い。添加剤としては、燐系・フェノール系他の各種酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、衝撃改良剤、加工助剤、金属不活化剤、残留重合触媒不活化剤、造核剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、充填材などの広汎な樹脂材料に一般的に用いられているものや、カルボジイミド系やエポキシ系他の末端カルボン酸封止剤、あるいは加水分解防止剤等のポリエステル樹脂用として市販されているものを挙げることができる。
A層10の好ましい厚みは、45〜250μmの範囲であり、50〜150μmの範囲がさらに好ましい。厚みが薄すぎると、付与可能なエンボス柄の種類が大幅に制約を受ける。逆に、厚みが厚すぎると、積層シート100の二次加工性の観点から、積層シート100の総厚みの上限が決まっていることから、B層20の厚みを薄くする必要が生じ、積層シートを加熱した際の耐破断性を得難くなるため好ましくない。またA層10として150μm程度の厚みがあれば、従来、軟質PVCシートへのエンボス付与に用いていたエンボス版ロールのほとんどを使用することが可能となる。
<B層20>
B層20は積層シート100をエンボス付与機に通した際に、従来の軟質PVCと同様の温度まで加熱された積層シート100の幅縮み、皺入り、破断等を防ぐ機能を付与するために設けられる。従って、本発明における積層シート100の190℃での引張り法での貯蔵弾性率は、主としてB層20の組成と厚みによって付与されるものといえる。
B層20は、融点が205〜220℃の、さらに好ましくは融点が210〜216℃の範囲のPBT系樹脂を主体としてなる層である。融点が205℃以上必要なのは、従来の軟質PVCシートにエンボス付与機でエンボス柄を転写する場合にシートが支持体無しでヒーターによって加熱される温度が160℃〜190℃程度であるのに対し、B層が融点205℃未満のPBT系樹脂を主体としてなる場合は、この加熱温度で十分な張力を得ることが困難となりやすいためである。また融点の上限が220℃であるのは、融点がこれより高いPBTをB層20の主成分として用いた場合は、従来の軟質PVCよりなるシートを金属板90にラミネートする場合と同様の温度では金属板90との強固な密着力を得難くなるためである。
また、B層20の主成分がPBT系樹脂である理由は、上記の融点範囲にある実質的に結晶性のポリエステル系樹脂を得ようとした場合、PBT系樹脂では、結晶化速度が比較的速く、従って、製膜工程とエンボス付与工程の間に特別な養生工程等を必要とせずに、製膜工程で結晶化したB層20、即ちエンボス付与工程での加熱金属への非粘着性や耐熔融破断性を有するB層20を得やすいためである。
PBT系樹脂を用いる他の理由としては、結晶化した状態でもPET系樹脂に比べて良好な加工性を得られること、および、近年、押出し製膜グレードなどの用途展開が活発になり、各種熔融粘度や融点を有するPBT樹脂原料を入手しやすくなったことが挙げられる。
B層20は、B層20における樹脂成分全体の質量を基準(100質量%)として、上記のPBT系樹脂を70質量%以上含有していることが好ましく、80質量%以上含有していることがさらに好ましい。PBT系樹脂の量がこれより少ない場合は、結晶化した状態でシートを得ても、好ましい熔融張力を得ることが困難となりやすい。
また、B層20には、A層10において説明した上記の添加剤や他の汎用樹脂を少量含んでいてもよい。
融点が205〜220℃の範囲のPBT系樹脂としては、酸成分の一部をイソフタル酸等のジカルボン酸で置換したもので融点が205℃を下回らないものを用いることができる。このようなイソフタル酸共重合のPBT系樹脂で融点が上記範囲にあるものとして、ウィンテックポリマー社製の「デュラネックス600HP」などを好ましく用いることができる。
B層20のPBT系樹脂以外の樹脂成分としては、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂としては、前述のA層10の主体として用いる実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と同一のものを用いることができる。これは、B層20におけるPBT系樹脂以外の樹脂成分として、ホモPET等の結晶性の高い樹脂を用いた場合は、経時的にPET系樹脂の結晶化が進行し、PET系樹脂の結晶相の加工性がPBT系樹脂の結晶相の加工性より劣ることから、B層20の加工性が劣り、結果的に積層シート100およびそれにより被服した金属板200の加工性が低下するおそれがあるためである。
B層20の好ましい厚みは、上記組成範囲のB層20を用いて、積層シート100の動的粘弾性引張り法(10Hz)での190℃の貯蔵弾性率が、積層シート100のMD方向に関して1×10Pa以上となる厚みということになるが、積層シート100の取り扱い性の容易さの点からは20〜200μmの範囲であることが好ましい。
B層20には、意匠性の付与や下地金属の隠蔽のために着色顔料を添加しても良い。印刷柄C30を付与した場合で、後述のD層40を付与しない場合は主としてB層20に着色顔料を添加することになる。使用される顔料やその添加量に関してはA層10に添加する場合と同様である。また、各種添加剤に関しても、A層10に添加する場合と同様である。
また、B層20が付与される目的の一つであるエンボス付与機における加熱金属ロールとの非粘着性をより強固にするため、適宜な量の滑剤を添加しても良い。滑剤としては、ポリエステル樹脂への添加用として一般的に用いられるものを用いることができ、一例としては、モンタン酸系の滑剤である「リコワックスOP」(クラリアント・ジャパン社製)を挙げることができる。あるいは、B層20に用いるPBT系樹脂はホモPBTに比べると結晶化速度が遅いため、エンボス付与機での非粘着性や耐熔融破断性を得るために必要な、押出し製膜ラインでのB層20の結晶化を迅速に達成するため、結晶核剤を添加して結晶化速度の向上を図っても良い。
<印刷柄C30>
図1(c)および図1(d)に層構成を模式的に示したように、本発明の金属板被覆用積層シート100においては、A層10が実質的に透明であり、かつA層10とB層20との間に印刷により印刷柄C30が付与されている構成100bとすることができる。なお、図1(d)は、積層シート100bのA層10側にエンボスによる凹凸意匠を形成した形態を示した図である。
印刷柄C30は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等の公知の方法で施され、石目調、木目調、幾何学模様、抽象模様等、任意の柄が施される。
印刷柄C30は、A層10と積層することになるB層20の表面に印刷を施すことにより形成してもよいし、B層20と積層することになるA層10の表面に印刷を施すことにより形成してもよい。また、以下において説明するD層40を設ける場合は、A層10と積層することになるD層40の表面に形成してもよいし、また、D層40と積層することになるA層10の表面に形成してもよい。一般的には、B層20およびD層40の表面に印刷柄C30を形成することが、高い結晶性を有する層を含むシートに印刷を施すことになるため、印刷ラインでの取り扱いが容易となり、好ましい。
<D層40>
図1(e)および図1(f)に層構成を模式的に示したように、本発明の金属板被覆用積層シート100においては、A層10が実質的に透明であり、A層10とB層20との間に実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなる着色された無配向の樹脂層(D層)40が配置され、A層10とD層40との間に印刷柄C30が付与されている構成100cとすることができる。
D層40は、実質的に非晶性のポリエステル樹脂よりなる層であり、A層10と同様に加熱軟化されてエンボス版ロールにより押圧されエンボス柄が転写される層である。この形態100cにおいては、A層10の厚みを薄くしたとしても、エンボス付与可能なD層40が存在することによって、深いエンボス柄を付与することができる。そして、A層10の厚みを薄くすることができるので、A層10の下に印刷柄C30が付与されている構成において、印刷柄C30の透視性を良好にすることができる。
このようにA層10の厚さを薄くすることは、ポリエステル系樹脂が比較的光黄変を受けやすい樹脂であることから、透明なA層10の厚みをあまり厚くすると経時的な黄変が目立つようになる可能性があるので、これを避ける点でも好ましい。
共にエンボス付与可能な層であるという観点から、D層40の主体としてなる実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂に関しても、A層10と同一のものを使用することができる。
具体的には、エンボス付与層(A層10、または、A層10およびD層40)の厚みが100μm程度以下でも付与可能な比較的浅いエンボス柄を付与する場合は、D層40は特に設けずにA層10の厚みを100μm程度としておいても良いが、比較的深いエンボス意匠を付与したい場合で、150μm程度以上のエンボス付与層の厚みが必要な場合等は、A層10の厚みを100μm以下にして、印刷柄C30の透視性が低下するのを防ぎながら、これに、適宜厚みを設定したD層40を合わせて、エンボス付与層の合計厚みが150μm程度以上になるようにするのが好ましい。
印刷柄C30を形成する場合は、A層10と印刷柄C30を形成したB層20やD層40とを熱融着等により接着する必要がある。この場合において、PBT系樹脂を主体としてなる結晶性の高いB層20と、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなるA層10とを熱融着するよりも、同様の樹脂材料からなるA層10とD層40とを熱融着するほうが、接着性が良好となると考えられる。よって、D層40を設ける場合は、
B層20とD層40とを共押出し製膜により一体で製膜しておき、さらに印刷柄C30をD層40上に部分印刷する等によって、D層40とA層10とを強固に熱融着することが可能となり、各層間の剥離のおそれを軽減することができる。
D層40には、A層10、B層20と同様の各種添加剤を適宜な量添加しても良く、また印刷柄C30をD層40の表面に付与する場合は、印刷の発色を良くするためにD層40に着色顔料を添加することが特に好ましい。
<積層シート100>
積層シート(100a〜100c)全体の好ましい厚みは、65〜300μmの範囲である。積層シート(100a〜100c)の厚みが薄すぎる場合は、下地の視覚的隠蔽確保のために各層に多量の顔料を添加する必要があり、その結果加工性の低下を来すおそれがある。一方、積層シート(100a〜100c)の厚みが厚すぎる場合は、軟質PVC樹脂被覆金属板の折り曲げ加工などの成形加工に従来から用いて来た成形金型の使用が困難になるなど、初期の2次加工性そのものに問題を生じるおそれがある。
本発明の金属板被覆用積層シート100は、動的粘弾性引張り法(10Hz)での190℃の貯蔵弾性率が、積層シートのMD方向に関して1×10Pa以上である必要があるが、これは前述のエンボス付与機での適性を得るためであり、同じく前述の如く、主にB層20の樹脂組成と厚みによって決まるものである。
金属板被覆用積層シート100全体として必要とされる下地金属板の視覚的隠蔽効果に関しては、用途によって重要度が異なってくるが、内装建材用途のエンボス意匠シート被覆金属板等においては、JIS K5400 7.2「塗料一般試験方法・隠蔽率」に準拠して測定した隠蔽率が積層シートの構成で0.95以上であることが好ましい。
隠蔽率がこれより低いと金属板等、下地となる基材の色味が、積層シートの色味に反映されて、これらの色味が変化した際、積層シートの表面から観察される色味も変化して見えるため好ましくない。ただし、この理由による色味の変化が特に問題とならない用途においては、隠蔽率は0.95以上にこだわらなくても良い。
<金属板被覆用積層シート100の製造方法>
本発明の金属板被覆用積層シート100の製造方法としては各種公知の方法、Tダイを備えた押出し機によるキャスト製膜法やインフレーション法等を採用することができ、またA層10の樹脂組成が実質的に非結晶性であるポリエステル系樹脂のみから成る場合は、従来のPVC系樹脂の製膜に用いていたカレンダー製膜設備によりA層10を製膜することもできる。
各層を単独で製膜した後に、後工程で積層一体化して積層シート100としても良いが、図1(a)および図1(b)に示す印刷柄C30を含まない構成では、A層10およびB層20からなる2層を2台の押出機とフィードブロックもしくはマルチマニホールドダイを用いた共押出し製膜法で一体に製膜するのが最も効率的であり好ましい。
また、図1(c)および図1(d)に示す構成100bにおいては、A層10およびB層20をそれぞれ単層で成形し、A層10あるいはB層20に印刷柄C30を形成して、これらを積層一体化することにより製造することができる。
また、図1(e)および図1(f)に示すように、印刷柄C30およびD層40を設ける構成100cにおいては、A層10は単層で製膜しておき、D層40とB層20とを共押出法にて一体に製膜し、D層の表面あるいはA層の表面に印刷柄C30を施した後に、A層10とD層40とを積層一体化するのが好ましい。
印刷柄C30の樹脂バインダーの種類は特に制限されないが、このバインダー種を適宜選択することにより、A層10とB層20、あるいはA層10とD層40との間の積層一体化を、印刷柄C30を介して、熱融着積層とすることができる。あるいは、印刷柄C30の付与時に、同時に熱接着性の塗布層を付与して、A層10とB層20、あるいはA層10とD層40とを熱融着積層することもできる。
なお、図1(e)および図1(f)に示す場合は、上記したように、A層10を単層で製膜し、D層40とB層20とを共押出により製膜し、A層10あるいはD層40の表面に印刷柄C30を部分印刷して、その後、同様の樹脂材料からなるA層10とD層40とを熱融着によって積層することができる。
A層10と他の層との熱融着積層による一体化は、エンボス付与機の加熱ロールへの導入部分で実施するのが工程上好ましいが、これに限定されず、他工程で熱融着積層を行っても良い。また、A層10と他の層との積層一体化は、ドライラミ接着剤等により行うこともできる。
図2に、従来より軟質PVCシートにエンボス模様を付与するために一般的に用いられて来たエンボス付与機300の一例を示す。図示した一実施形態のエンボス付与機300は、加熱ロール310、テイクオフロール320、赤外線ヒーター330、ニップロール340、エンボスロール350および冷却ロール360により構成される。図2に示す形態では、単層で製膜したA層10と、印刷柄C30を施したB層20およびD層40の二層シートを供給し、上記のようにエンボス付与機の加熱ロール310で熱融着積層を行っている。
本発明の積層シート100a〜100cは、エンボス付与機300により従来の軟質PVCシートと同様にエンボス模様を付与することができる。B層20が本発明の特徴を備えていることにより、100〜140℃程度に加熱された加熱ロール310に対して非粘着性を有しており、またヒーター330によるシート加熱温度である160〜190℃でも、B層20が本発明の特徴を有していることから積層シート100a〜100cの幅縮み、皺入り、破断等を生ずることなく、またA層10は良好なエンボス付与適性を有していることで良好な外観のエンボス付与されたエンボス意匠シート100を得ることができる。
<積層シート被覆金属板200>
本発明の積層シート被覆金属板200に用いる金属板90としては、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、スズメッキ鋼板、アルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼鈑、アルミニウム・マグネシウム・亜鉛合金メッキ鋼鈑、ステンレス鋼板等の各種鋼板やアルミニウム板、アルミニウム系合金板、チタン系合金板等が使用でき、これらは通常の化成処理を施した後に使用しても良い。金属板90の厚さは、積層シート被覆金属板200の用途等により異なるが、0.1〜10mmの範囲で選ぶことができる。
本発明の金属板被覆用積層シート100を金属板90にラミネートする方法は特に制限はないが、接着剤によるラミネートが一般的である。接着剤としては、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤等の一般的に使用される熱硬化型接着剤を挙げることができる。この中でも、本発明の積層シート100がポリエステル系樹脂から成ることから、ポリエステル系の接着剤を用いるのが好ましい。
接着剤によりラミネートする方法としては、金属板90にリバースコーター、キスコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用して、金属板被覆用積層シート100を貼り合せる金属面に、乾燥後の接着剤膜厚が2〜10μm程度になるように上記の熱硬化型接着剤を塗布する。ついで、赤外線ヒーターおよび、または熱風加熱炉により塗布面の乾燥および加熱を行い、金属板90の表面温度を、220〜250℃程度の温度に保持しつつ、直ちにロールラミネータを用いて金属板被覆用積層シート100のB層20側が接着面となるように被覆、冷却することにより本発明の積層シート被覆金属板200を得ることができる。
<積層シート被覆金属板200の用途>
本発明の積層シート被覆金属板200は、良好な加工性を有し、ドア材、ユニットバス壁材、ユニットバス天井材、パーティション材およびパネル材等の建築内装材、鋼製家具部材、AV機器、エアコンカバー等の家電製品筐体部材として、好適に用いることができる。
本発明をより具体的かつ詳細に説明するために、次に実施例を示すが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
<金属板被覆用積層シート100の作成>
<実施例1〜13、比較例1〜9>
実施例1〜13、および比較例1〜9の積層シートは、表1に示す組み合わせのA層およびB層の樹脂材料を使用して、φ65mmの2台の二軸混練押出機を使用して、マルチマニホールド方式の共押出しによって、Tダイより流出した樹脂をキャスティングロールで引き取る一般的方法により二層積層シートを得た。積層シートの総厚みを表1に併せて示した。
なお、A層の樹脂組成、顔料添加量、厚み、ガラス転移温度等については表3に示した。また、B層の樹脂組成、顔料添加量、厚みについては表4に示した。また、A層およびB層において添加した顔料としては、酸化チタン系の白色顔料を使用した。
Figure 2007022047
<実施例14〜実施例23>
実施例14〜実施例23の積層シートにおいては、まず、表2に示すA層を、φ65mmの二軸混練押出機を用いて、単層の透明なシートして押出し製膜した。そして、これとは別にφ65mmの2台の二軸混練押出機を使用して、マルチマニホールド方式の共押出によって、Tダイより流出した樹脂をキャスティングロールで引き取る一般的方法により、表2に示したD層とB層の二層積層シートを得た。なお、実施例14、16と20のD層を有しない構成のものは、一台のφ65mmの二軸混練押出機を使用してB層を単層のシートとして製膜している。
そして、D層とB層の二層積層シートにおけるD層側の表面に、あるいは、B層単層からなる場合は、B層の一方の表面に、グラビア印刷により石目調の模様を印刷した。そして、A層と印刷を施した面とを重ね合わせて、図2に示すようにエンボス付与機の加熱ロール部分で熱融着積層して積層一体化した。
なお、A層およびB層の樹脂組成等については、上記したように表3および表4に示した。また、D層の樹脂組成、顔料添加量、厚みについては、表5に示した。D層に添加した顔料としては、上記のA層に添加したものと同様のものを使用した。
Figure 2007022047
Figure 2007022047
Figure 2007022047
Figure 2007022047
上記の実施例、および比較例で使用した原料は以下の通りである。
(イースターPETG・6763)
「イースターPETG・6763」は、イーストマン・ケミカル・カンパニー社製の非結晶性ポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の約30mol.%が1.4−シクロヘキサンジメタノール、約70mol.%がエチレングリコールである。融点:無し、ガラス転移温度:78℃。
(PCTG・5445)
「PCTG・5445」は、イーストマン・ケミカル・カンパニー社製の実質的に非結晶性のポリエステル樹脂として扱うことが可能なポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の約65mol.%が1.4−シクロヘキサンジメタノール、約35mol.%がエチレングリコールである。融点:無し、ガラス転移温度:86℃。
(ノバデュラン5020S)
「ノバデュラン5020S」は、三菱エンジニアリングプラスチックス社製の(ホモ)ポリブチレンテレフタレート樹脂である。測定された融点は224℃であった。
(ノバレックス7025A)
「ノバレックス7025A」は、三菱エンジニアリングプラスチックス社製の粘度平均分子量27000のビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂である。ガラス転移温度:149.5℃、融点:無し。
(デュラネックス600HP)
「デュラネックス600HP」は、ウィンテックポリマー社製のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂で、測定された融点は214℃であった。
(デュラネックス500JP)
「デュラネックス500JP」は、ウィンテックポリマー社製のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂で、測定された融点は205℃であった。
<積層シート100へのエンボス付与>
図2に示すような軟質塩化ビニル系シートへのエンボス付与に一般的に使用されているエンボス付与機300を用いてエンボス柄の転写を行った。また、印刷柄Cを有するシートに関しては、A層とD層、または、B層とをエンボス付与機の加熱ロール部で熱融着積層を行っている。エンボス付与機の工程概要としては、まず加熱ロール310を用いた接触型加熱によりシートの予備加熱を行い、続いて赤外ヒーター330を用いた非接触型加熱により任意の温度までシートを加熱し、エンボスロール350によりエンボス柄を転写してエンボス意匠シートとするものである。
本実施例および比較例では、加熱ロール310は110℃に設定し、ついでエンボスロール350と接する直前のシート表面温度が180℃になるように赤外ヒーター330で加熱を行った。エンボスロール350は温水循環機により90℃に温調されており、梨地柄でRmax=50μmのものを用いた。
<積層シート被覆金属板200の作製>
金属板として、厚み0.45mmの亜鉛メッキ鋼板を使用して、市販されているポリ塩化ビニル被覆金属板用のポリエステル系接着剤を、積層シート100を貼り合せる金属面に乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度になるように塗布した。ついで赤外線ヒーターおよび熱風加熱炉により塗布面の溶剤乾燥および加熱を行い、亜鉛メッキ鋼板の表面温度を235℃、230℃、225℃の3水準に保持しつつ、直ちにロールラミネータを用いて積層シート100を被覆・冷却することにより積層シート被覆金属板200を得た。
<金属板被覆用積層シート100および積層シート被覆金属板200の評価>
上記の実施例および比較例で得た、金属板被覆用積層シート100および積層シート被覆金属板200について、以下の各項目を評価した。結果を表6および7にまとめて示した。なお、A層を構成する樹脂のガラス転移温度については、表3に示した。
(貯蔵弾性率の測定)
岩本製作所社製の粘弾性スペクトロメーターにより積層一体化した後のシートのMD方向に関し、測定を行った。測定方法は通常の引張り法・温度分散測定法に準じ、−100℃から昇温速度3℃/分で昇温し、250℃までの測定を実施した後、周波数10hzでの190℃における貯蔵弾性率を読みとった。
(B層の融点(Tm))
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC−7」を用いて、試料10mgをJIS K−7121「プラスチックの転移温度測定方法−融解温度の求め方」に準じて、加熱速度10℃/分で−40℃から250℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温、同温度で1分間保持した後、再度10℃/分で昇温した際のサーモグラムから融点(Tm)を求めた。なお、測定した試料としては、積層一体化した後のシートのB層から、ミクロトームを用いて樹脂を削りだしたものを使用した。
(ガラス転移温度(Tg))
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC−7」を用いて、試料10mgをJIS K7121「プラスチックの転移温度測定方法」に準じて、加熱速度を10℃/分で−40℃から250℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温、同温度で1分間保持した後、再度10℃/分で昇温した際のサーモグラムからガラス転移温度(Tg)を求めた。なお、測定した試料としては、積層一体化した後のシートのA層から、ミクロトームを用いて樹脂を削りだしたものを使用した。
(エンボス付与適性:耐粘着性)
図2に示すエンボス付与機でエンボスを付与した際に、加熱ロール310に積層シートが粘着して剥離困難になったもの、および剥離は可能であったがシートの伸び・変形が顕著であったものは「×」、軽度の粘着を示したが作業の継続が可能であり、シートの伸び・変形も実用上支障のない範囲であったものを「△」、粘着しなかったものは「○」で示した。
(エンボス付与適性:耐溶断性)
図2に示すエンボス付与機でエンボスを付与した際に、ヒーター330によるシート加熱中にシートが溶断したもの、およびシートの顕著な伸びや皺入り等を発生したものは「×」、軽度なシートの伸び・幅縮み等を生じたが実用上支障のない範囲であったものを「△」、これらの問題を生じなかったものは「○」で示した。この評価で「×」となったものに関しては、以降の評価を実施していない。
(エンボス付与適性:柄転写性)
図2に示すエンボス付与機でエンボスを付与したシートを、目視で観察し、綺麗にエンボス柄が転写しているものを「○」、これに比べてやや転写が浅い場合を「△」、転写が悪く、浅いエンボス柄になっているもの、あるいは、エンボス柄に無関係に単に表面が荒れているものを「×」で示した。この評価で「×」となったものに関しては、以降の評価を実施していない。
(エンボス耐熱性:高温気中)
図2に示すエンボス付与機でエンボスを付与したシートをラミネートした金属板を105℃の熱風循環式オーブン中に3時間静置した後目視で観察し、オーブンに投入する前と比較してエンボスの形状がほとんど変化していないものを「○」、これに比べてややエンボス戻りが発生している場合を「△」、エンボス戻りが顕著な場合、あるいは、エンボス柄が完全に消失し単に表面が荒れているものを「×」で示した。なお、本評価は、金属板の加熱温度235℃でラミネートしたものに関して行った。
(エンボス耐熱性:沸騰水浸漬)
図2に示すエンボス付与機でエンボスを付与したシートをラミネートした金属板を沸騰水中に3時間浸漬した後目視で観察し、沸騰水に投入する前と比較してエンボスの形状がほとんど変化していないものを「○」、これに比べてややエンボス戻りが発生している場合を「△」、エンボス戻りが顕著な場合、あるいはエンボス柄が完全に消失し単に表面が荒れているものを「×」で示した。なお、本評価は、金属板の加熱温度235℃でラミネートしたものに関して行った。
(金属板接着強度)
20mm×100mmの積層シート被覆金属板を試験片として、JIS Z−0237「粘着テープ・粘着シート試験方法−試験片に対する180度引き剥がし粘着力」に準拠した剥離強度測定を測定幅20mmで行い、積層シートと金属板との接着強度を測定した。充分な接着強度があると判断されたもの(40N/20mm以上)を「○」、相対的に接着強度が劣るが実用上は支障ないと判断されるものを「△」、さらに接着強度が低いもの(20N/20mm未満)を「×」とした。金属板の加熱温度235℃、230℃、225℃の3段階の温度条件でラミネートを実施し、それぞれの接着強度の測定を行った。
Figure 2007022047
Figure 2007022047
<評価結果>
<実施例1〜13、および比較例1〜9>
比較例1の積層シートは、エンボス付与機での粘着や熔融破断はなかったが、A層の厚みが薄いため、良好なエンボス柄の転写が得られなかった。比較例2、および比較例3の積層シートは、A層の樹脂組成がPBT樹脂を50質量%以上含む場合であり、エンボス柄の転写が困難であった。
比較例4、比較例5、比較例8、および比較例9は積層シートの190℃における貯蔵弾性率が、本発明の好ましい範囲より低い場合であり、エンボス付与機での粘着は生じなかったが、積層シートに著しい伸びが発生すると同時に皺入りを生じ、安定したエンボス付与が困難であった。
比較例6、および比較例7は、積層シートの190℃での貯蔵弾性率は、本発明の範囲にあり、エンボス付与機での一連の工程では問題を生じず、良好なエンボス柄を有する積層シートとすることができた。また、エンボス耐熱性も良好であった。しかし、B層のPBT樹脂の融点が本発明の範囲より高いことから、金属板にラミネートする際、235℃の加熱温度では良好な接着強度が得られたが、該温度では金属板裏面に施してあった塗装が熱変色を生じた。そこで、ラミネート温度を230℃、さらに225℃と低下させ、裏面塗料の変色を防止した所、積層シートの接着強度が著しく低下してしまった。
これらに対して、本発明の実施例1〜13ではエンボス付与機での一連の工程でトラブルを生ずることはなく、良好にエンボス柄が転写された。また、エンボスの耐熱性も良好であり、比較的低温で金属板にラミネートした際も充分な接着強度を得ることができた。
<実施例14〜23>
実施例14、および実施例20の積層シートは比較的厚みの薄いA層を用い、かつ、D層を有しない構成の場合であるが、エンボス柄の転写が、やや浅いものとなった。これに対し、実施例16は、D層を有しない構成の場合であるが、比較的厚みのあるA層を用いた場合で、エンボス柄の転写性は良好であったが、印刷柄Cの視認性が実施例14に比べて、やや劣る結果となった。
実施例15は、実施例14と同一の厚みのA層を用いた場合であるが、D層を有していることにより、エンボスの転写性は良好であり、かつ、印刷柄Cの視認性は良好であった。実施例17は、A層の樹脂組成が実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂のみから成る場合で、エンボスの転写性は良好であったが、エンボスの耐熱性がやや劣る結果となった。
実施例18〜23は、A層が実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と、芳香族ポリカーボネート系樹脂のブレンド組成物を主体としてなる場合であるが、実施例18では、A層のガラス転移温度が100℃より低く、エンボスの耐熱性に関しては、実施例17と大差ない結果となった。また、実施例23は、芳香族ポリカーボネート系樹脂との相容性がPCTGに比べてやや劣るPETGを用いた場合であるが、同量のPCTGを用いている実施例19に比べて、沸騰水浸漬後のエンボスの残存性が劣る結果となった。
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う金属板被覆用積層シートおよび積層シート被覆金属板もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
図1(a)〜図1(f)は、本発明の金属板被覆用積層シートの層構成を模式的に示した図である。図1(g)は、本発明の積層シート被覆金属板の層構成を模式的に示した図である。 従来、軟質PVCのシートにエンボス模様を付与するために一般的に用いられてきたエンボス付与機の模式図である。
符号の説明
100a〜100c 金属板被覆用積層シート
200 積層シート被覆金属板
10 A層
20 B層
30 印刷柄C
40 D層
90 金属板
300 エンボス付与機
310 加熱ロール
320 テイクオフロール
330 赤外線ヒーター
340 ニップロール
350 エンボスロール
360 冷却ロール

Claims (14)

  1. A層およびB層の少なくとも二層からなる積層シートであって、
    A層が、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなる厚み45μm以上の無配向の樹脂層であり、
    B層が、融点(Tm)が205℃〜220℃であるポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂を主体とする層であり、
    積層シートの総厚みが65〜300μmの範囲であり、かつ、積層シートとして測定した動的粘弾性引張り法(10Hz)での190℃の貯蔵弾性率が、積層シートのMD方向に関して、1×10Pa以上である、金属板被覆用積層シート。
  2. 前記A層が、A層における樹脂成分全体の質量を100質量%として、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を60〜80質量%と、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂40〜20質量%を含有する、厚み45μm以上の無配向の樹脂層である、請求項1に記載の金属板被覆用積層シート。
  3. 前記A層のポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂が、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、または、ジメチルテレフタル酸、ジオール成分として、1.4−ブタンジオールの各単一成分を縮重合して得られたホモポリブチレンテレフタレート樹脂である、請求項2に記載の金属板被覆用積層シート。
  4. 前記A層が、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と、芳香族ポリカーボネート系樹脂との混合物を主体とし、厚み45μm以上の無配向の樹脂層である、請求項1に記載の金属板被覆用積層シート。
  5. 前記A層の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と、芳香族ポリカーボネート系樹脂との混合物についての、加熱速度10℃/分での示差走査熱量測定により観測されるガラス転移温度(Tg)が、単一であり、100〜150℃の範囲である、請求項4に記載の金属板被覆用積層シート。
  6. 前記A層の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂が、テレフタル酸またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、ジオール成分の20〜80mol.%を1.4−シクロヘキサンジメタノール、80〜20mol.%をエチレングリコールとする共重合ポリエステルである、請求項1〜5のいずれかに記載の金属板被覆用積層シート。
  7. 前記A層が実質的に透明であり、A層と前記B層との間に印刷柄Cが付与されている請求項1〜6のいずれかに記載の金属板被覆用積層シート。
  8. 前記A層が実質的に透明であり、A層と前記B層との間に実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなる着色された無配向の樹脂層(D層)が配置され、A層とD層との間に印刷柄Cが付与されている、請求項1〜7のいずれかに記載の金属板被覆用積層シート。
  9. 前記D層の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂が、テレフタル酸またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、ジオール成分の20〜80mol.%を1.4−シクロヘキサンジメタノール、80〜20mol.%をエチレングリコールとする共重合ポリエステルである、請求項8に記載の金属板被覆用積層シート。
  10. 160〜190℃の範囲に加熱された積層シートにおける、前記A層側表面に、エンボスロールにてエンボスによる凹凸意匠が形成されてなる、請求項1〜9のいずれかに記載の金属板被覆用積層シート。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の金属板被覆用積層シート、およびこの金属板被覆用積層シートにおける前記B層側の表面が接着剤を用いてラミネートされた金属板を有する、積層シート被覆金属板。
  12. 請求項11に記載の積層シート被覆金属板を用いた、ドア材、ユニットバス壁材、ユニットバス天井材、パーティション材およびパネル材からなる群から選ばれる建築内装材。
  13. 請求項11に記載の積層シート被覆金属板を用いた、鋼製家具部材。
  14. 請求項11に記載の積層シート被覆金属板を用いた、家電製品筐体部材。
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