JP2007022047A - 金属板被覆用積層シート、および積層シート被覆金属板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 A層およびB層の少なくとも二層からなる金属板被覆用積層シートにおいて、A層を、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなる厚み45μm以上の無配向の樹脂層とし、B層を、融点(Tm)が205℃〜220℃であるポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂を主体とする層とし、積層シートの総厚みを65〜300μmの範囲とし、かつ、積層シートとして測定した動的粘弾性引張り法(10Hz)での190℃の貯蔵弾性率を、積層シートのMD方向に関して、1×107Pa以上とする。
【選択図】 図1
Description
(1)エンボス付与適性に優れることから、意匠性に富んだ被覆材を得ることができる。
(2)一般的に背反要素である加工性と表面の傷入り性のバランスが比較的良好である。
(3)各種添加剤との相容性に優れること、および長年にわたり添加剤による物性向上検討が行われて来たことから、耐久性に優れた樹脂皮膜を得ることが容易である。
等の点を挙げることができる。
なお、本発明の積層「シート」は、厚みが65〜300μmの範囲をとることから、「フィルムおよびシート」と記すのがより正しいが、ここでは一般的には「フィルム」と呼称する範囲に関しても便宜上「シート」という単一呼称を用いた。
A層10は、積層シートをエンボス付与機に通した際、加熱軟化されてエンボス版ロールにより押圧されエンボス柄が転写される層である。従って、A層10はエンボス版ロールで押圧される時点で高い結晶性を有していてはならず、実質的に非結晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなる層である。ここで、「実質的に非結晶性」とは、エンボス付与機でエンボス付与が困難なほどの結晶性を有していない意味であり、低結晶性をも含む意味である。
B層20は積層シート100をエンボス付与機に通した際に、従来の軟質PVCと同様の温度まで加熱された積層シート100の幅縮み、皺入り、破断等を防ぐ機能を付与するために設けられる。従って、本発明における積層シート100の190℃での引張り法での貯蔵弾性率は、主としてB層20の組成と厚みによって付与されるものといえる。
図1(c)および図1(d)に層構成を模式的に示したように、本発明の金属板被覆用積層シート100においては、A層10が実質的に透明であり、かつA層10とB層20との間に印刷により印刷柄C30が付与されている構成100bとすることができる。なお、図1(d)は、積層シート100bのA層10側にエンボスによる凹凸意匠を形成した形態を示した図である。
図1(e)および図1(f)に層構成を模式的に示したように、本発明の金属板被覆用積層シート100においては、A層10が実質的に透明であり、A層10とB層20との間に実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなる着色された無配向の樹脂層(D層)40が配置され、A層10とD層40との間に印刷柄C30が付与されている構成100cとすることができる。
B層20とD層40とを共押出し製膜により一体で製膜しておき、さらに印刷柄C30をD層40上に部分印刷する等によって、D層40とA層10とを強固に熱融着することが可能となり、各層間の剥離のおそれを軽減することができる。
積層シート(100a〜100c)全体の好ましい厚みは、65〜300μmの範囲である。積層シート(100a〜100c)の厚みが薄すぎる場合は、下地の視覚的隠蔽確保のために各層に多量の顔料を添加する必要があり、その結果加工性の低下を来すおそれがある。一方、積層シート(100a〜100c)の厚みが厚すぎる場合は、軟質PVC樹脂被覆金属板の折り曲げ加工などの成形加工に従来から用いて来た成形金型の使用が困難になるなど、初期の2次加工性そのものに問題を生じるおそれがある。
本発明の金属板被覆用積層シート100の製造方法としては各種公知の方法、Tダイを備えた押出し機によるキャスト製膜法やインフレーション法等を採用することができ、またA層10の樹脂組成が実質的に非結晶性であるポリエステル系樹脂のみから成る場合は、従来のPVC系樹脂の製膜に用いていたカレンダー製膜設備によりA層10を製膜することもできる。
本発明の積層シート被覆金属板200に用いる金属板90としては、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、スズメッキ鋼板、アルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼鈑、アルミニウム・マグネシウム・亜鉛合金メッキ鋼鈑、ステンレス鋼板等の各種鋼板やアルミニウム板、アルミニウム系合金板、チタン系合金板等が使用でき、これらは通常の化成処理を施した後に使用しても良い。金属板90の厚さは、積層シート被覆金属板200の用途等により異なるが、0.1〜10mmの範囲で選ぶことができる。
本発明の積層シート被覆金属板200は、良好な加工性を有し、ドア材、ユニットバス壁材、ユニットバス天井材、パーティション材およびパネル材等の建築内装材、鋼製家具部材、AV機器、エアコンカバー等の家電製品筐体部材として、好適に用いることができる。
<実施例1〜13、比較例1〜9>
実施例1〜13、および比較例1〜9の積層シートは、表1に示す組み合わせのA層およびB層の樹脂材料を使用して、φ65mmの2台の二軸混練押出機を使用して、マルチマニホールド方式の共押出しによって、Tダイより流出した樹脂をキャスティングロールで引き取る一般的方法により二層積層シートを得た。積層シートの総厚みを表1に併せて示した。
実施例14〜実施例23の積層シートにおいては、まず、表2に示すA層を、φ65mmの二軸混練押出機を用いて、単層の透明なシートして押出し製膜した。そして、これとは別にφ65mmの2台の二軸混練押出機を使用して、マルチマニホールド方式の共押出によって、Tダイより流出した樹脂をキャスティングロールで引き取る一般的方法により、表2に示したD層とB層の二層積層シートを得た。なお、実施例14、16と20のD層を有しない構成のものは、一台のφ65mmの二軸混練押出機を使用してB層を単層のシートとして製膜している。
(イースターPETG・6763)
「イースターPETG・6763」は、イーストマン・ケミカル・カンパニー社製の非結晶性ポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の約30mol.%が1.4−シクロヘキサンジメタノール、約70mol.%がエチレングリコールである。融点:無し、ガラス転移温度:78℃。
「PCTG・5445」は、イーストマン・ケミカル・カンパニー社製の実質的に非結晶性のポリエステル樹脂として扱うことが可能なポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分の約65mol.%が1.4−シクロヘキサンジメタノール、約35mol.%がエチレングリコールである。融点:無し、ガラス転移温度:86℃。
「ノバデュラン5020S」は、三菱エンジニアリングプラスチックス社製の(ホモ)ポリブチレンテレフタレート樹脂である。測定された融点は224℃であった。
「ノバレックス7025A」は、三菱エンジニアリングプラスチックス社製の粘度平均分子量27000のビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂である。ガラス転移温度:149.5℃、融点:無し。
「デュラネックス600HP」は、ウィンテックポリマー社製のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂で、測定された融点は214℃であった。
「デュラネックス500JP」は、ウィンテックポリマー社製のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂で、測定された融点は205℃であった。
図2に示すような軟質塩化ビニル系シートへのエンボス付与に一般的に使用されているエンボス付与機300を用いてエンボス柄の転写を行った。また、印刷柄Cを有するシートに関しては、A層とD層、または、B層とをエンボス付与機の加熱ロール部で熱融着積層を行っている。エンボス付与機の工程概要としては、まず加熱ロール310を用いた接触型加熱によりシートの予備加熱を行い、続いて赤外ヒーター330を用いた非接触型加熱により任意の温度までシートを加熱し、エンボスロール350によりエンボス柄を転写してエンボス意匠シートとするものである。
金属板として、厚み0.45mmの亜鉛メッキ鋼板を使用して、市販されているポリ塩化ビニル被覆金属板用のポリエステル系接着剤を、積層シート100を貼り合せる金属面に乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度になるように塗布した。ついで赤外線ヒーターおよび熱風加熱炉により塗布面の溶剤乾燥および加熱を行い、亜鉛メッキ鋼板の表面温度を235℃、230℃、225℃の3水準に保持しつつ、直ちにロールラミネータを用いて積層シート100を被覆・冷却することにより積層シート被覆金属板200を得た。
上記の実施例および比較例で得た、金属板被覆用積層シート100および積層シート被覆金属板200について、以下の各項目を評価した。結果を表6および7にまとめて示した。なお、A層を構成する樹脂のガラス転移温度については、表3に示した。
岩本製作所社製の粘弾性スペクトロメーターにより積層一体化した後のシートのMD方向に関し、測定を行った。測定方法は通常の引張り法・温度分散測定法に準じ、−100℃から昇温速度3℃/分で昇温し、250℃までの測定を実施した後、周波数10hzでの190℃における貯蔵弾性率を読みとった。
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC−7」を用いて、試料10mgをJIS K−7121「プラスチックの転移温度測定方法−融解温度の求め方」に準じて、加熱速度10℃/分で−40℃から250℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温、同温度で1分間保持した後、再度10℃/分で昇温した際のサーモグラムから融点(Tm)を求めた。なお、測定した試料としては、積層一体化した後のシートのB層から、ミクロトームを用いて樹脂を削りだしたものを使用した。
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC−7」を用いて、試料10mgをJIS K7121「プラスチックの転移温度測定方法」に準じて、加熱速度を10℃/分で−40℃から250℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温、同温度で1分間保持した後、再度10℃/分で昇温した際のサーモグラムからガラス転移温度(Tg)を求めた。なお、測定した試料としては、積層一体化した後のシートのA層から、ミクロトームを用いて樹脂を削りだしたものを使用した。
図2に示すエンボス付与機でエンボスを付与した際に、加熱ロール310に積層シートが粘着して剥離困難になったもの、および剥離は可能であったがシートの伸び・変形が顕著であったものは「×」、軽度の粘着を示したが作業の継続が可能であり、シートの伸び・変形も実用上支障のない範囲であったものを「△」、粘着しなかったものは「○」で示した。
図2に示すエンボス付与機でエンボスを付与した際に、ヒーター330によるシート加熱中にシートが溶断したもの、およびシートの顕著な伸びや皺入り等を発生したものは「×」、軽度なシートの伸び・幅縮み等を生じたが実用上支障のない範囲であったものを「△」、これらの問題を生じなかったものは「○」で示した。この評価で「×」となったものに関しては、以降の評価を実施していない。
図2に示すエンボス付与機でエンボスを付与したシートを、目視で観察し、綺麗にエンボス柄が転写しているものを「○」、これに比べてやや転写が浅い場合を「△」、転写が悪く、浅いエンボス柄になっているもの、あるいは、エンボス柄に無関係に単に表面が荒れているものを「×」で示した。この評価で「×」となったものに関しては、以降の評価を実施していない。
図2に示すエンボス付与機でエンボスを付与したシートをラミネートした金属板を105℃の熱風循環式オーブン中に3時間静置した後目視で観察し、オーブンに投入する前と比較してエンボスの形状がほとんど変化していないものを「○」、これに比べてややエンボス戻りが発生している場合を「△」、エンボス戻りが顕著な場合、あるいは、エンボス柄が完全に消失し単に表面が荒れているものを「×」で示した。なお、本評価は、金属板の加熱温度235℃でラミネートしたものに関して行った。
図2に示すエンボス付与機でエンボスを付与したシートをラミネートした金属板を沸騰水中に3時間浸漬した後目視で観察し、沸騰水に投入する前と比較してエンボスの形状がほとんど変化していないものを「○」、これに比べてややエンボス戻りが発生している場合を「△」、エンボス戻りが顕著な場合、あるいはエンボス柄が完全に消失し単に表面が荒れているものを「×」で示した。なお、本評価は、金属板の加熱温度235℃でラミネートしたものに関して行った。
20mm×100mmの積層シート被覆金属板を試験片として、JIS Z−0237「粘着テープ・粘着シート試験方法−試験片に対する180度引き剥がし粘着力」に準拠した剥離強度測定を測定幅20mmで行い、積層シートと金属板との接着強度を測定した。充分な接着強度があると判断されたもの(40N/20mm以上)を「○」、相対的に接着強度が劣るが実用上は支障ないと判断されるものを「△」、さらに接着強度が低いもの(20N/20mm未満)を「×」とした。金属板の加熱温度235℃、230℃、225℃の3段階の温度条件でラミネートを実施し、それぞれの接着強度の測定を行った。
<実施例1〜13、および比較例1〜9>
比較例1の積層シートは、エンボス付与機での粘着や熔融破断はなかったが、A層の厚みが薄いため、良好なエンボス柄の転写が得られなかった。比較例2、および比較例3の積層シートは、A層の樹脂組成がPBT樹脂を50質量%以上含む場合であり、エンボス柄の転写が困難であった。
実施例14、および実施例20の積層シートは比較的厚みの薄いA層を用い、かつ、D層を有しない構成の場合であるが、エンボス柄の転写が、やや浅いものとなった。これに対し、実施例16は、D層を有しない構成の場合であるが、比較的厚みのあるA層を用いた場合で、エンボス柄の転写性は良好であったが、印刷柄Cの視認性が実施例14に比べて、やや劣る結果となった。
200 積層シート被覆金属板
10 A層
20 B層
30 印刷柄C
40 D層
90 金属板
300 エンボス付与機
310 加熱ロール
320 テイクオフロール
330 赤外線ヒーター
340 ニップロール
350 エンボスロール
360 冷却ロール
Claims (14)
- A層およびB層の少なくとも二層からなる積層シートであって、
A層が、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなる厚み45μm以上の無配向の樹脂層であり、
B層が、融点(Tm)が205℃〜220℃であるポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂を主体とする層であり、
積層シートの総厚みが65〜300μmの範囲であり、かつ、積層シートとして測定した動的粘弾性引張り法(10Hz)での190℃の貯蔵弾性率が、積層シートのMD方向に関して、1×107Pa以上である、金属板被覆用積層シート。 - 前記A層が、A層における樹脂成分全体の質量を100質量%として、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を60〜80質量%と、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂40〜20質量%を含有する、厚み45μm以上の無配向の樹脂層である、請求項1に記載の金属板被覆用積層シート。
- 前記A層のポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂が、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、または、ジメチルテレフタル酸、ジオール成分として、1.4−ブタンジオールの各単一成分を縮重合して得られたホモポリブチレンテレフタレート樹脂である、請求項2に記載の金属板被覆用積層シート。
- 前記A層が、実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と、芳香族ポリカーボネート系樹脂との混合物を主体とし、厚み45μm以上の無配向の樹脂層である、請求項1に記載の金属板被覆用積層シート。
- 前記A層の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂と、芳香族ポリカーボネート系樹脂との混合物についての、加熱速度10℃/分での示差走査熱量測定により観測されるガラス転移温度(Tg)が、単一であり、100〜150℃の範囲である、請求項4に記載の金属板被覆用積層シート。
- 前記A層の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂が、テレフタル酸またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、ジオール成分の20〜80mol.%を1.4−シクロヘキサンジメタノール、80〜20mol.%をエチレングリコールとする共重合ポリエステルである、請求項1〜5のいずれかに記載の金属板被覆用積層シート。
- 前記A層が実質的に透明であり、A層と前記B層との間に印刷柄Cが付与されている請求項1〜6のいずれかに記載の金属板被覆用積層シート。
- 前記A層が実質的に透明であり、A層と前記B層との間に実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂を主体としてなる着色された無配向の樹脂層(D層)が配置され、A層とD層との間に印刷柄Cが付与されている、請求項1〜7のいずれかに記載の金属板被覆用積層シート。
- 前記D層の実質的に非晶性であるポリエステル系樹脂が、テレフタル酸またはジメチルテレフタル酸をジカルボン酸成分の主体とし、ジオール成分の20〜80mol.%を1.4−シクロヘキサンジメタノール、80〜20mol.%をエチレングリコールとする共重合ポリエステルである、請求項8に記載の金属板被覆用積層シート。
- 160〜190℃の範囲に加熱された積層シートにおける、前記A層側表面に、エンボスロールにてエンボスによる凹凸意匠が形成されてなる、請求項1〜9のいずれかに記載の金属板被覆用積層シート。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の金属板被覆用積層シート、およびこの金属板被覆用積層シートにおける前記B層側の表面が接着剤を用いてラミネートされた金属板を有する、積層シート被覆金属板。
- 請求項11に記載の積層シート被覆金属板を用いた、ドア材、ユニットバス壁材、ユニットバス天井材、パーティション材およびパネル材からなる群から選ばれる建築内装材。
- 請求項11に記載の積層シート被覆金属板を用いた、鋼製家具部材。
- 請求項11に記載の積層シート被覆金属板を用いた、家電製品筐体部材。
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