JP5347343B2 - 容器用ポリエステル樹脂被覆金属板 - Google Patents
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Description
フィルムラミネート金属板を多機能化する方法としては、(1)フィルム内に、付加したい機能を有する改質剤を加え、フィルムそのものを多機能化する方法、(2)フィルムは改質せず、フィルム表面に、付加したい機能を有する改質剤もしくは改質剤を含む樹脂を、コーティングする方法、のいずれかが選択される。
一方、上記(2)のフィルムの表面に、改質剤を含む樹脂をコーティングする方法は、付加機能の変更が容易であるため、食品缶詰の多様なニーズに対応できる。改質剤を含むコーティング液の入ったタンクを、洗浄・交換することで、すばやく機能変更に対応できるからである。
しかしながら、エポキシ樹脂は、反応性に富み、金属板との密着性に優れるものの、深絞り成形性が劣るという欠点があるため、2ピース缶用素材として使用可能なフィルムを得ることはできない。特許文献1の樹脂被覆金属板を深絞り缶(DRD缶)に成形しようとしても、缶高さ方向の伸び変形にエポキシ樹脂が追随することができず素材の変形を拘束してしまい、絞り工程で素材が破断してしまう。
特定の樹脂構成からなるポリエステル樹脂層を金属板との密着層とし、さらに、密着層の上層にポリエステルフィルムを積層することで、優れた加工性・密着性などの基本特性に加え、深絞り成形性や加工・レトルト後密着性、レトルト処理による樹脂の色調変化(以後、レトルト白化現象と称す)の抑制など、多くの機能を有する容器用ポリエステル樹脂被覆金属板を得ることができる。
[1]ポリエステルを主成分とする樹脂層を金属板の両面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、該金属板を容器成形した後に容器外面側になる樹脂層は、複層構造のポリエステル樹脂層からなり、該ポリエステル樹脂層のうちの、金属板の上層に形成される密着層は、ブロックフリーイソシアネート化合物を含有し、該ブロックフリーイソシアネート化合物中に含まれるNCO基のモル数が、前記密着層を形成するポリエステル樹脂層に含まれるOH基のモル数の0.5倍以上15.0倍以下であることを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[2]前記[1]において、前記複層構造のポリエステル樹脂層のうちの、前記密着層の上層を形成するポリエステル樹脂層の残存配向度は、2%〜30%であることを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[3]前記[1]または[2]において、前記密着層の膜厚が、0.1μm以上3.0μm以下であることを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記密着層中に着色剤を含むことを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、前記密着層の上層を形成するポリエステル樹脂層はポリエステルフィルムから形成され、該ポリエステルフィルムは、ポリエステルの構成単位の93質量%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であり、かつ、面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであり、式(1)に示される相対標準偏差が0.5以下であり、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2で、モース硬度が7未満である粒子を0.005〜10質量%含有することを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
そして、食品缶詰に要求される多くの機能を容易に付加できる新たな容器用ポリエステル樹脂被覆金属板として、産業上有益な発明である。
まず、本発明で用いる金属板について説明する。
本発明の金属板としては、缶用材料として広く使用されているアルミニウム板や軟鋼板等を用いることができる。特に、下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物からなる二層皮膜を形成させた表面処理鋼板(以下、TFSと称す)等が最適である。
TFSの金属クロム層、クロム水酸化物層の付着量については、特に限定されないが、加工後密着性、耐食性の観点から、何れもCr換算で、金属クロム層は70〜200mg/m2、クロム水酸化物層は10〜30mg/m2の範囲とすることが望ましい。
まず、金属板を容器成形した後に容器外面側になる樹脂層について説明する。
容器外面側になる樹脂層は、複層構造のポリエステル樹脂層からなる。
そして、ポリエステル樹脂層のうちの、金属板の上層に形成する密着層は、ポリエステルを主成分とする樹脂層からなり、ブロックフリーイソシアネート化合物を含有し、ブロックフリーイソシアネート化合物中に含まれるNCO基のモル数が、前記密着層中のポリエステル樹脂層に含まれるOH基のモル数の0.5倍以上15.0倍以下である。
発明者らが白化現象を鋭意検討した結果、上記イソシアネート架橋反応によるポリエステル分子鎖のネットワークを形成することで、液胞の形成を抑制できることを見出した。ポリエステル分子鎖のネットワークが、水蒸気が界面へ到達するのを抑制するとともに、界面及び界面近傍の樹脂強度及び弾性率が上昇することで、液胞の形成及び成長を抑制することが可能となる。
樹脂被覆金属板が保管・運搬される際には40℃程度の温度で長時間保持される可能性があるため、ガラス転移点は50℃以上であることが必要である。一方、ガラス転移点の上限は85℃に規定する。ガラス転移点が85℃を超えるポリエステルポリマーは、軟化点が上昇してしまい、本発明で規定する軟化点200℃以下の範囲を維持し難くなるためである。
カーボンブラックの粒子径としては、5〜50nmの範囲のものを使用できるが、ポリエステル樹脂中での分散性や発色性を考慮すると、5〜30nmの範囲が好適である。
アゾ系顔料の添加量は、対象樹脂層に対して、10〜40PHRとすることが望ましい。添加量が10PHR以上であれば、発色に優れるので好適である。40PHR以下の方が、透明度が高くなり光輝性に富んだ色調となる。
レトルト白化を抑制する技術として、密着層の上層に形成するポリエステル樹脂層の残存配向度を、2%〜30%の範囲に制御することも有効である。なお、ここでいう残存配向度とは、X線回折法により求められた値であって、以下により定義されるものとする。
(1)ラミネート前の配向ポリエステル樹脂(もしくは配向ポリエステルフィルム)及びラミネート後の該樹脂(もしくは該フィルム)について、X線回折強度を2θ=20〜30°の範囲で測定する。
(2)2θ=20°、2θ=30°におけるX線回折強度を直線で結びベースラインとする。
(3)2θ=22〜28°近辺にあらわれる最も高いピークの高さをベースラインより測定する。
(4)ラミネート前のフィルムの最も高いピークの高さをP1、ラミネート後のフィルムの最も高いピークをP2とした時、P2/P1×100を残存配向度(%)とする。
一方、上記特性を損ねない範囲で他のジカルボン酸成分、グリコール成分を共重合してもよく、ジカルボン酸成分としては、例えば、ジフェニルカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。
一方、グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の指環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
耐摩耗性、加工性等の点から面積換算平均粒子径は0.005〜5.0μmであることが好ましい。さらに好ましくは0.01〜3.0μmである。
また、耐摩耗性等の点から、下記式(1)に示される相対標準偏差が0.5以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.3以下である。
また、有機粒子としては、さまざまな有機高分子粒子を用いることができるが、その種類としては、少なくとも一部がポリエステルに対し不溶の粒子であれば、いかなる組成の粒子でも構わない。また、このような粒子の素材としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルメタクリレート、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂などを使用することができるが、耐熱性が高く、かつ粒度分布の均一な粒子が得られやすいビニル系架橋高分子粒子が特に好ましい。
また、本発明の効果を妨げない範囲において、他の粒子、例えば各種不定形の外部添加型粒子、及び内部析出型粒子、あるいは各種表面処理剤を添加しても構わない。
本発明の容器内面側となる樹脂層はポリエステル樹脂からなり、本発明で使用するポリエステル樹脂層として、ポリエステルフィルムであることが望ましい。ポリエステルフィルムとしては、レトルト後の味特性を良好とする点から、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とすることが望ましい。すなわち、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルとは、ポリエステルの構成単位の95質量%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であるポリエステルである。
一方、味特性を損ねない範囲で他のジカルボン酸成分、グリコール成分を共重合してもよく、ジカルボン酸成分としては、例えば、ジフェニルカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。
一方、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の指環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
本発明の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板は、まず、上記からなる密着層をポリエステルフィルムの表面に形成する。次いで、金属板とポリエステルの界面に密着層が存在するように、ポリエステルフィルムを金属板表面にラミネートする。
本発明に規定するポリエステル樹脂を溶解させるための有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン溶剤、酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤などを挙げることができ、これらの1種以上を適宜選定して使用することができる。
また、本発明で規定するブロックフリーイソシアネート化合物や、長鎖アルキル基を側鎖に有する疎水性ポリオール樹脂、着色剤としてカーボンブラック、アゾ系顔料などの添加剤は、有機溶剤中に分散させて使用するのが望ましい。この際、分散剤を併用すると、添加剤の均一性が付与できるため、好適である。
コーティング液をポリエステルフィルムに塗布する方法としては、ロールコーター方式、ダイコーター方式、グラビア方式、グラビアオフセット方式、スプレー塗布方式など、既知の塗装手段が適用できるが、グラビアロールコート法が最も好適である。コーティング液塗布後の乾燥条件としては、80℃〜170℃で20〜180秒間、特に80℃〜120℃で60〜120秒間が好ましい。乾燥後のポリエステル樹脂層の付着量は、本発明に規定する0.1μm以上3.0μm以下の範囲が好ましい。
まず、密着層の上層に形成するポリエステルフィルムを製造する。ジオール成分とジカルボン酸成分を、表1および表2に示す比率にて重合したポリエステル樹脂を乾燥、溶融、押し出しし、冷却ドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸・熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
ラミネートロール3は内部水冷式とし、ラミネート中に冷却水を強制循環し、フィルム接着中の冷却を行った。樹脂フィルムを金属板にラミネートする際に、金属板に接する界面のフィルム温度がフィルムの融点以上になる時間を1〜20msecの範囲内にした。
粒子をポリエステルに配合し、0.2μmの厚みの超薄片にカッティング後、透過型電子顕微鏡で、少なくとも50個の粒子について観察し粒子径の測定を行なった。相対標準偏差σ、数平均粒子径の計算式は下記の通りである。
ダイアモンド・砥石などで平滑な平面に仕上げた順位にある標準鉱石を用意する。各々の面を合わせ、その間に、粒子を挟んで擦り動かし、下位の基準鉱石にキズがつき、上位の基準鉱石にキズがつかない場合、その粒子の硬さは両基準鉱石の中間にあるものとした。
上述の製法にて作製したポリエステル樹脂被覆金属板にワックスを塗布後、直径200mmの円板を打ち抜き、絞り比2.00で浅絞り缶を得た。次いで、この絞り缶に対し、絞り比2.20で加工し、更に、絞り比2.50となるよう、再度、絞り加工を行った。この後、常法に従いドーミング成形を行った後、トリミングし、次いでネックイン−フランジ加工を施し深絞り缶を成形した。このようにして得た深絞り缶のネックイン部に着目し、フィルムの損傷程度を目視観察した。
(評点について)
◎:成形後フィルムに損傷が認められない状態
○:成形後フィルムに損傷が認められないが、部分的に白化が認められる状態
△:成形可能であるが、部分的にフィルム損傷が認められる状態
×:缶が破胴し、成形不可能
(4)成形後密着性
上記(3)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶の内部に水道水を充填した後、蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施し、缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/min.でピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:5.0(N)/15(mm)以上10.0(N)/15(mm)未満
×:5.0(N)/15(mm)未満
(5)耐レトルト白化性
上記(3)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶内に常温の水道水を満たした後、蓋を巻き締めて密閉した。その後、缶底部を下向きにしてレトルト殺菌炉の中に配置し、125℃で90分間、レトルト処理を行った。処理後、缶底部外面の外観変化を目視で観察した。
(評点について)
◎:外観変化なし
○:外観にかすかな曇り発生
×:外観が白濁(白化発生)
××:外観が顕著に白濁(顕著な白化発生)
以上により得られた結果を表3および表4に示す。
2 金属帯加熱装置
3 ラミネートロール
4a、4b フィルム
5 金属帯冷却装置
Claims (5)
- ポリエステルを主成分とする樹脂層を金属板の両面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、該金属板を容器成形した後に容器外面側になる樹脂層は、複層構造のポリエステル樹脂層からなり、該ポリエステル樹脂層のうちの、金属板の上層に形成される密着層は、ブロックフリーイソシアネート化合物を含有し、該ブロックフリーイソシアネート化合物中に含まれるNCO基のモル数が、前記密着層を形成するポリエステル樹脂層に含まれるOH基のモル数の5.2倍以上15.0倍以下であることを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
- 前記複層構造のポリエステル樹脂層のうちの、前記密着層の上層を形成するポリエステル樹脂層の残存配向度は、2%〜30%であることを特徴とする請求項1に記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
- 前記密着層の膜厚が、0.1μm以上3.0μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
- 前記密着層中に着色剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
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