JP5772452B2 - 容器用樹脂被覆金属板 - Google Patents
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Description
フィルムラミネート金属板を多機能化する方法としては、(1)フィルム内に、付加したい機能を有する改質剤を加え、フィルムそのものを多機能化する方法、(2)フィルムは改質せず、フィルム表面に、付加したい機能を有する改質剤もしくは改質剤を含む樹脂を、コーティングする方法、のいずれかが選択される。
一方、上記(2)のフィルムの表面に、改質剤を含む樹脂をコーティングする方法は、フィルムへの付加機能の変更が容易であるため、食品缶詰の多様なニーズに対応できる。改質剤を含むコーティング液の入ったタンクを、洗浄・交換することで、すばやく対応できるからである。
しかしながら、エポキシ樹脂は、反応性に富み、金属板との密着性に優れるものの、深絞り成形性が劣るという欠点があるため、2ピース缶用素材として使用可能なフィルムを得ることはできない。特許文献1の樹脂被覆金属板を深絞り缶(DRD缶)に成形しようとしても、缶高さ方向の伸び変形にエポキシ樹脂が追随することができず素材の変形を拘束してしまい、絞り工程で素材が破断してしまう。
ポリエステル樹脂を主成分とする複層構造の樹脂被覆層を、金属板の少なくとも片面に有する。そして、(イ)ポリエステル樹脂、(ロ)フェノール樹脂、(ハ)金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物、(ニ)ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂、(ホ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上、(ヘ)酸化亜鉛を含有する樹脂層を金属板との密着層とし、好ましくはその上層にポリエステルフィルムを積層することで、優れた深絞り成形性、加工後密着性などの基本特性に加え、レトルト処理環境下での意匠性など多くの優れた機能を有する容器用樹脂被覆金属板を得ることができる。
[1]金属板の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂を主成分とする複層構造の樹脂被覆層(A)を有し、該樹脂被覆層(A)は、前記金属板面と密着し下記(イ)〜(ヘ)の成分を含有しポリエステル樹脂を主成分とする樹脂層(a1)を有することを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
(イ)ポリエステル樹脂
(ロ)フェノール樹脂
(ハ)金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物
(ニ)ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂
(ホ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上
(ヘ)酸化亜鉛
[2]前記樹脂被覆層(A)が、前記樹脂層(a1)と、該樹脂層(a1)の上層に形成されるポリエステルフィルム(a2)からなることを特徴とする前記[1]に記載の容器用樹脂被覆金属板。
[3]前記樹脂層(a1)を形成する樹脂成分の比率が、下記を満足することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の容器用樹脂被覆金属板。
(イ)ポリエステル樹脂:50〜80mass%
(ロ)フェノール樹脂:10〜45mass%
(ハ)金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物:0.01〜10mass%
(ニ)ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂:0.5〜20mass%
(ホ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上:0.1〜10mass%
(ヘ)酸化亜鉛:0.01〜35mass%
[4]前記(イ)ポリエステル樹脂は、数平均分子量が3000〜100000であり、下記(イ-1)〜(イ-3)のいずれか1種以上であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の容器用樹脂被覆金属板。
(イ-1)ガラス転移温度が0℃以上35℃未満のポリエステル樹脂
(イ-2)ガラス転移温度が35℃以上65℃未満のポリエステル樹脂
(イ-3)ガラス転移温度が65℃以上100℃未満のポリエステル樹脂
[5]前記(イ)ポリエステル樹脂を形成する各ポリエステル樹脂の比率が、下記を満足することを特徴とする前記[4]に記載の容器用樹脂被覆金属板。
ガラス転移温度が0℃以上35℃未満のポリエステル樹脂:30〜70mass%
ガラス転移温度が35℃以上65℃未満のポリエステル樹脂:10〜35mass%
ガラス転移温度が65℃以上100℃未満のポリエステル樹脂:10〜35mass%
[6]前記(イ)ポリエステル樹脂は、ジフェノール酸を必須の成分とするポリエステル樹脂であることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の容器用樹脂被覆金属板。
[7]前記(ハ)金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物は、チタンアルコキシド系化合物及び/またはチタンキレート化合物であることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の容器用樹脂被覆金属板。
[8]前記ポリエステルフィルム(a2)が、ポリエステル樹脂の構成単位の85mass%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位である二軸延伸ポリエステルフィルムであり、該二軸延伸ポリエステルフィルムは、無機粒子及び/または有機粒子を含有することを特徴とする前記[2]〜[7]のいずれか一項に記載の容器用樹脂被覆金属板。
まず、本発明で用いる金属板について説明する。
本発明の金属板としては、缶用材料として広く使用されているアルミニウム板や軟鋼板等を用いることができる。特に、下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物からなる二層皮膜を形成させた表面処理鋼板(以下、TFSと称す)等が最適である。
TFSの金属クロム層、クロム水酸化物層の付着量については、特に限定されないが、加工後密着性、耐食性の観点から、何れもCr換算で、金属クロム層は70〜200mg/m2、クロム水酸化物層は10〜30mg/m2の範囲とすることが望ましい。
そして、本発明の容器用樹脂被覆金属板は、金属板の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂を主成分とする複層構造の樹脂被覆層(A)を有する。そして、この樹脂被覆層(A)は、前記金属板面と密着する樹脂層(a1)を有し、さらに、前記樹脂層(a1)は、ポリエステル樹脂を主成分とし下記(イ)〜(ヘ)の成分を含有する。
(イ)ポリエステル樹脂
(ロ)フェノール樹脂
(ハ)金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物
(ニ)ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂
(ホ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上
(ヘ)酸化亜鉛
次に、金属板面と密着する樹脂層(a1)について説明する。
(イ)ポリエステル樹脂
ポリエステル樹脂としては、数平均分子量3000〜100000であることが好ましく、より好ましくは5000〜30000、更に好ましくは10000〜25000の範囲内である。なお、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー分析での、ポリスチレンとの比較による換算値である。数平均分子量が3000より低いと加工性が悪くなり、100000より高いと塗料化時の粘度が高くなり適切な塗装ができなくなる場合がある。
ガラス転移温度が35℃以上65℃未満であれば、フィルムがブロッキングせず、フィルムの美観が損なわれることがない。ガラス転移温度が65℃以上100℃未満であると、ブロッキング性が優れるものの、皮膜が硬くなるためにやや加工性が劣るようになる。
従って、ポリエステル樹脂はガラス転移温度が異なる複数の樹脂を併用し、各々のポリエステル樹脂の良い性能を引き出すことで、バランスのとれた、より優れた樹脂層を得ることが好ましい。
ガラス転移温度が0℃以上35℃未満のポリエステル樹脂:30〜70mass%
ガラス転移温度が35℃以上65℃未満のポリエステル樹脂:10〜35mass%
ガラス転移温度が65℃以上100℃未満のポリエステル樹脂:10〜35mass%
このような比率の範囲とすることで、加工性とブロッキング性のバランスが著しく向上する。
多塩基酸成分としては、たとえば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの1種以上のニ塩基酸及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が用いられ、必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。
多価アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1、4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチルペンタンジオール、1、4-ヘキサンジオール、1、6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの2価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
樹脂層(a1)には、さらに成分(ロ)としてフェノール樹脂を添加する。石炭酸、m−クレゾール、m−エチルフェノール、3、5−キシレノール、m−メトキシフェノールなどの3官能のフェノール化合物、もしくは、p−クレゾール、o−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノール、2、3−キシレノール、2、5−キシレノール、m−メトキシフェノールなどの各種2官能性フェノールと、ホルムアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で合成したものが挙げられる。これらのフェノール化合物は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、フェノール樹脂に含有されるメチロール基の一部ないしは全部を、炭素数が1〜12なるアルコール類によってエーテル化した形のものを使用することができる。
金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート系化合物は、(イ)ポリエステル樹脂、(ロ)フェノール樹脂、(ニ)ビスフェノールAを含有しないエポキシ樹脂と反応を起こす。各々の樹脂の官能基と金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート系化合物の間で架橋反応が進行する。この架橋反応は、金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート系化合物が無い場合と比較して、その皮膜の硬化速度が著しく速いために、結果として極めて少ない熱エネルギーで優れた密着性、加工性、耐レトルト性、耐食性を発現することが可能となる。例えば、既存のラミネート缶はフィルムをラミネートした後に180℃以上で、数秒〜数分間焼付けが施され、その後の後加熱を利用し樹脂皮膜を硬化させ、上記の各種要求性能を確保するものである。しかし、本発明において、金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物を含有した場合の樹脂層は、熱融着ラミネートを行う際の、1秒程度の短時間加熱のみで樹脂層が十分に硬化し、後加熱を施したものと同等以上の性能を得ることができる。したがって、製造プロセスにおける後加熱工程が不要となり、製造効率が格段に向上する。加えて、二酸化炭素の排出低減も可能となり、実用上極めて有用な技術となりうる。更に、皮膜中に金属が組み込まれることで、皮膜の強度が向上し、結果として耐衝撃性や耐食性が大幅に向上する。以上の理由により、前記樹脂層(a1)は、金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物を含有する。
金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート系化合物としては、例えば、アルミニウム、チタン、錫、ジルコニウムなどのアルコキシド金属化合物、アセト酢酸が金属に配位した金属キレート化合物などが挙げられる。中でも、チタンアルコキシド系化合物及び/またはチタンキレート化合物を用いるのが好ましい。以下、その理由について説明する。
金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物と、ポリエステル樹脂及び/またはフェノール樹脂とが連続的に架橋反応することで、分子鎖の三次元ネットワークが樹脂層内に形成される。これにより、レトルト処理環境下での水蒸気や熱水の浸透による変色を、最も効果的に抑制することが可能となる。
水蒸気による変色とは、レトルト殺菌処理中に、樹脂層そのものが白く濁ったように変色する現象であり、レトルト白化と呼ばれている。缶外面の意匠性を損なわせるため、消費者の購買意欲を減退させうる大きな問題である。発明者らが鋭意検討した結果、缶体を被覆する樹脂層内に水蒸気が浸透することによって、樹脂層の界面及び界面近傍に液胞が形成され、液胞部で光が散乱することが原因であると考えられている。したがって、特性改善のためには、樹脂層の界面及び界面近傍での液胞形成を抑制することが重要である。すなわち、樹脂中に侵入した水蒸気は、樹脂中を拡散し、金属板との界面まで到達する。レトルト処理の開始直後は、缶内に充填された内容物が常温に近い状態にあるため、缶の外部から内部にかけて温度勾配が生ずる。即ち、樹脂中を拡散する水蒸気は、金属板に近づくにつれて冷却されることになり、該界面及び界面近傍で液化し、凝縮水となって液胞を形成する。液胞がレトルト処理後も界面及び界面近傍に残留することで、光の散乱を招き、樹脂表面が白濁してみえることとなる。したがって、レトルト白化を抑制するためには、界面及び界面近傍における液胞の形成を抑止すればよい。
一方、レトルト処理装置には、上記のように加熱媒体として水蒸気を用いるもの以外に、熱水を加熱媒体として用いるレトルト装置がある。熱水を加熱媒体として用いるレトルト装置の場合、水蒸気による変色とは異なったメカニズムで、樹脂層そのものが変色し意匠性が劣化するという問題が発生する。これは、レトルト処理の初期段階において、ポリエステル分子鎖の架橋反応が十分に進行していない場合、樹脂層内に浸透した水が、ポリエステルのカルボニル末端基を触媒としてポリエステル分子鎖の加水分解反応を促すことで、樹脂層内に大きな液胞が形成されることが原因であると考えられている。
本発明者らが上記2種類の変色現象を鋭意検討した結果、金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物として、チタンアルコキシド系化合物及び/またはチタンキレート系化合物を用いた場合、チタンアルコキシド系化合物及び/またはチタンキレート系化合物と、ポリエステル樹脂及び/またはフェノール樹脂の架橋反応によるポリエステル分子鎖のネットワークを、熱融着ラミネート段階で十分に形成させることが可能となり、この結果、最も効果的に双方の変色現象を抑制できることがわかった。ポリエステル分子鎖のネットワークが水蒸気及び熱水が樹脂内へ浸透し界面に到達するのを抑制するとともに、樹脂強度及び弾性率が上昇することで液胞の形成及び成長を抑制することができたと考えられる。また、分子鎖ネットワーク形成に伴うカルボニル末端基量の減少により、急激な加水分解反応も抑制される。よって、金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物は、チタンアルコキシド系化合物及び/またはチタンキレート化合物が好ましい。
ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂は、主に皮膜の密着性を向上させるものである。特にノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、DIC(株)社製のエピクロンN-665、670、673、680、690、695、730、740、770、865、870、ダウケミカル(株)社製のXD-7855、旭化成エポキシ(株)社製のECN-1273、1299などが挙げられる。
ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂は、メラミン樹脂などと比較して硬化速度が速く、強靭な皮膜を形成できる点で優れている。ポリエステル/メラミン系、エポキシ/メラミン系等からなる樹脂組成物と比較して、硬化特性が優れるためにラミネート鋼板の耐レトルト性、耐食性及び加工性等の点で、特に優れた性能を発揮することが可能となる。
樹脂層(a1)には、成分(ヘ)として、酸化亜鉛を添加する。酸化亜鉛は、硫黄系化合物を含有する内容物に対する耐食性や耐硫化黒変性を向上させる機能がある。硫黄系化合物とは、例えば、鮭や蟹、シーチキンなどの魚肉が挙げられる。魚肉の缶詰の場合、レトルト殺菌処理を行うと、魚肉中のシステインやメチオニンなどの含硫アミノ酸が熱分解し、分解生成物である硫化水素が発生する。これにより、内容物のフレーバーが失なわれたり、金属が腐食するなどの問題が発生する。ここで、金属が鉄や錫の場合は、硫化鉄・硫化錫の皮膜を形成して、缶内面を黒色化するいわゆる硫化黒変が発生することとなる。
酸化亜鉛(ヘ)には硫化水素を捕捉する機能があり、樹脂層(a1)に添加することで、硫化水素を層内に吸着させることができる。これにより、魚肉のような含硫アミノ酸を多量に含む内容物に対しても、フレーバーを損なうことなく長期間保持することが可能となる。また、硫化水素を金属表面に到達させないため、硫化黒変についても完全に抑制することができる。
樹脂層(a1)を形成する樹脂成分の比率は、下記を満足することが好ましい。
(イ)ポリエステル樹脂:50〜80mass%
(ロ)フェノール樹脂:10〜45mass%
(ハ)金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物:0.01〜10mass%
(ニ)ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂:0.5〜20mass%
(ホ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上:0.1〜10mass%
(ヘ)酸化亜鉛:0.01〜35mass%
(イ)ポリエステル樹脂の比率が50mass%より低いと加工性が悪化し、80mass%を超えると硬化性が不足し耐レトルト性が低下する場合がある。より好ましくは55〜75mass%の範囲である。
(ロ)フェノール樹脂の比率が、10mass%より低いと硬化性が不足し耐レトルト性が劣り、45mass%を超えると加工性が悪化する場合がある。より好ましくは20〜40mass%である。
(ハ)金属アルコキシド系化合物及び/または金属系キレート化合物の比率が、0.01mass%よりも低いと期待した速硬化性等の効果が得られず、また10mass%を超えると、樹脂皮膜が硬くなり加工性が劣るようになるのに加え、コーティング液作製時にゲル化を引き起こす場合がある。より好ましくは0.1〜7mass%である。
(ニ)ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂の比率が、0.5mass%よりも低いと密着性が低下し、結果として耐食性が劣化するようになり、20mass%を超えると耐レトルト白化性が低下してしまう場合がある。より好ましくは2〜7mass%である。
(ホ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上の比率が、0.1mass%より低いと硬化性が不足し耐レトルト性が劣り、10mass%を超えると加工性が悪化する場合がある。より好ましくは1〜4mass%である。
(ヘ)酸化亜鉛の比率が、0.01mass%より低いと硫化黒変に対する抑制効果が不十分であり、35mass%を超えると加工性が劣化してしまう場合がある。より好ましくは5〜30mass%である。
樹脂層(a1)の付着量は、0.1g/m2以上5.0/m2以下の範囲に規定するのが好ましい。0.1g/m2未満では、金属板表面を均一に被覆することができず、膜厚が不均一になる場合がある。一方、5.0g/m2超とすると、樹脂の凝集力が不十分となり、樹脂層の強度が低下してしまう恐れがある。その結果、製缶加工時に、樹脂層が凝集破壊してフィルムが剥離し、そこを起点に缶胴部が断裂してしまうこととなる。
以上より、付着量は、好ましくは0.1g/m2以上5.0g/m2以下、さらに好ましくは0.1g/m2以上3.0g/m2以下、より一層好ましくは0.5g/m2以上2.5g/m2である。
更に、樹脂層(a1)に染料、顔料などの着色剤を添加することで、下地の金属板を隠蔽し、樹脂独自の多様な色調を付与できる。例えば、黒色顔料として、カーボンブラックを添加することで、下地の金属色を隠蔽するとともに、黒色のもつ高級感を食品缶詰に付与することができる。
カーボンブラックの粒子径としては、5〜50nmの範囲のものを使用できるが、ポリエステル樹脂中での分散性や発色性を考慮すると、5〜30nmの範囲が好適である。
黒色顔料以外にも、白色顔料を添加することで下地の金属光沢を隠蔽するとともに、印刷面を鮮映化することができ、良好な外観を得ることができる。添加する顔料としては、容器成形後に優れた意匠性を発揮できることが必要であり、かかる観点からは、二酸化チタンなどの無機系顔料を使用できる。着色力が強く、展延性にも富むため、容器成形後も良好な意匠性を確保できるので好適である。
容器表面に光輝色を望む場合には、黄色の有機系顔料の使用が好適である。透明性に優れながら着色力が強く、展延性に富むため、容器成形後も光輝色のある外観が得られる。本発明で使用できる有機系顔料を例示すれば、カラーインデックス(C.I.登録の名称)が、ピグメントイエロー12、13、14、16、17、55、81、83、139、180、181、183、191、214のうちの少なくとも1種類を挙げることができる。特に、色調(光輝色)の鮮映性、耐熱水変色性などの観点から、C.I.ピグメントイエロー180、214がより好ましく用いられる。
このほか、レッド顔料としてC.I.ピグメントレッド101、177、179、187、220、254、ブルー顔料としてC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、バイオレット顔料としてC.I.ピグメントバイオレット19、オレンジ顔料としてC.I.ピグメントオレンジ64、グリーン顔料としてC.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
以上の着色剤の配合比率は、樹脂層(a1)を構成する樹脂層の全固形分中で、0.1〜70mass%を含有することが好ましい。
樹脂層(a1)には、前記の成分(イ)〜(ヘ)及び着色剤に加えて、架橋を促進させる硬化触媒を添加することができる。例えば、リン酸等の無機酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸及びこれらをアミン等でブロックしたものを使用することができる。硬化触媒の配合比率は、樹脂層(a1)を構成する樹脂層の全固形分中で、0.01〜5mass%が好ましい。
また、樹脂層(a1)には、従来公知の潤滑剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、シリカ等のアンチブロッキング剤等を添加することが可能である。また、硬化補助剤として、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、イソシアネート樹脂等の他の硬化剤を併用しても良く、これらはフィルムの乾燥条件、ラミネート条件により適切なものを併用することが可能である。
樹脂被覆層(A)は、最上層として、樹脂層(a1)の上層にポリエステル樹脂を主成分とする樹脂層(a2)を形成することが好ましく、より好ましくは樹脂層(a2)としてはポリエステルフィルム(a2)である。
ポリエステルフィルム(a2)組成
本発明で使用するポリエステルフィルムは、レトルト後の味特性を良好とする点、製缶工程での摩耗粉の発生を抑制する点で、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とすることが望ましい。エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルとは、ポリエステルの85mass%以上がエチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを構成成分とするポリエステルである。さらに好ましくは90mass%以上であると金属缶に飲料を長期充填しても味特性が良好であるので望ましい。
一方、味特性を損ねない範囲で他のジカルボン酸成分、グリコール成分を共重合してもよく、ジカルボン酸成分としては、例えば、ジフェニルカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。
グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
本発明で用いるポリエステルフィルムは、無機粒子及び/または有機粒子を含有することができる。本発明で用いるポリエステルフィルムにおける粒子とは、組成的には有機、無機を問わず特に制限されるものではないが、フィルムに成形したときの突起形状、耐摩耗性、加工性、味特性の観点から体積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであることが好ましく、特に0.01〜3.0μmであることが好ましい。また、耐摩耗性等の点から、下記式に示される相対標準偏差が0.5以下であることが好ましく、さらには0.3以下であることが好ましい。
また、これらの効果を十分に発現させるには、上記からなる粒子を0.005〜10mass%含有することが好ましい。
また、有機粒子としては、さまざまな有機高分子粒子を用いることができるが、その種類としては、少なくとも一部がポリエステルに対し不溶の粒子であればいかなる組成の粒子でも構わない。また、このような粒子の素材としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルメタクリレート、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂などの種々のものを使用することができる。中でも、耐熱性が高く、かつ粒度分布の均一な粒子が得られやすいビニル系架橋高分子粒子が特に好ましい。
このような無機粒子及び有機高分子粒子は、単独で用いても構わないが、2種以上を併用して用いることが好ましく、粒度分布、粒子強度など物性の異なる粒子を組み合わせることにより、さらに機能性の高いポリエステル樹脂を得ることができる。
本発明で用いるポリエステルフィルムの厚さは、5〜100μmが好ましい。ポリエステルフィルムの厚さが5μm未満では、被覆性が不十分であり耐衝撃性と成形性が確保できない。一方、100μmを超えると、上記特性が飽和して何ら改善効果が得られないばかりか、金属表面への熱融着時に必要となる熱エネルギーが増大するため、経済性を損なってしまう。このような観点から、より好ましいポリエステルフィルムの厚さは8〜50μm、さらに好ましくは10〜25μmである。
ポリエステルを主成分とする樹脂層(a1)の形成方法
一例として、ポリエステル樹脂層(a1)を、ポリエステルフィルム(a2)の表面に形成する方法について述べる。
主成分となるポリエステル樹脂を有機溶媒中に溶解させるとともに、本発明が規定する樹脂層(a1)の添加成分及び任意添加成分を有機溶剤中に溶解または分散させてコーティング液を調製する。このコーティング液を、ポリエステルフィルム(a2)製膜時もしくは製膜後に、フィルム表面に塗布し乾燥することで、樹脂層(a1)を形成する。
ポリエステル樹脂を溶解させるための有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン溶剤、酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤などを挙げることができ、これらの1種以上を適宜選定して使用することができる。
前記コーティング液には、従来公知の潤滑剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、シリカ等のアンチブロッキング剤等を添加することが可能である。また、硬化補助剤として、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、イソシアネート樹脂等の他の硬化剤を併用しても良く、これらはフィルムの乾燥条件、ラミネート条件により適切なものを併用することが可能である。
また、本発明で規定する架橋剤、硬化触媒、着色剤としてカーボンブラック、アゾ系顔料などの添加剤も、有機溶剤中に分散させて使用することができる。この際、分散剤を併用すると、添加剤の均一性が付与できるため好適である。
コーティング液をポリエステルフィルムに塗布する方法としては、ロールコーター方式、ダイコーター方式、グラビア方式、グラビアオフセット方式、スプレー塗布方式など、既知の塗装手段が適用できるが、グラビアロールコート法が最も好適である。コーティング液塗布後の乾燥条件としては、80℃〜170℃で1〜30秒間、特に100℃〜130℃で5〜30秒間が好ましい。乾燥後の樹脂層(a1)の付着量は、0.1〜5.0g/m2の範囲内が好ましい。0.1〜5.0g/m2の範囲内であれば、連続均一塗布性に優れ、意匠性の問題もなく、耐レトルト性、密着性が確保でき、フィルム巻取り時のブロッキング性も解消される。0.1g/m2未満の場合、皮膜の連続性に難点が生じやすく、物性と意匠性の発現が困難となる場合がある。また、レトルト殺菌処理において水蒸気に対するバリア性が劣り、樹脂層(a1)/ポリエステルフィルム(a2)の界面に水分が滞留し易く、レトルト白化を引き起こす可能性がある。一方、5.0g/m2を超えると、コーティング後の溶剤離脱性が低下し、作業性が著しく低下する上に残留溶剤の問題が生じやすくなることによりフィルム巻取り時のブロッキング性が著しく低下する場合がある。好適な範囲としては、0.5〜2.5g/m2の範囲である。
樹脂層(a1)をコーティングしたポリエステルフィルム(a2)を、樹脂層(a1)が金属板面と密着するように金属板表面にラミネートする。例えば、金属板をフィルムの融点を超える温度で加熱し、その表面に樹脂層(a1)をコーティングしたポリエステルフィルム(a2)を圧着ロール(以下、ラミネートロールと称す)を用いて接触させ熱融着させる方法を用いることができる。なお、このとき、上述したように、樹脂層(a1)をコーティングしたポリエステルフィルム面をラミネートロールを用いて金属板に接触させ熱融着させることが必要である。
ラミネート条件については、本発明に規定する樹脂層が得られるように適宜設定される。例えば、ラミネート開始時の温度を少なくともフィルムの融点以上とし、ラミネート時にフィルムの受ける温度履歴として、フィルムの融点以上の温度で接している時間を1〜35msecの範囲とすることが好適である。このようなラミネート条件を達成するためには、高速でのラミネートに加えて、融着中の冷却も必要である。ラミネート時の加圧は特に規定するものではないが、面圧として9.8〜294N/cm2(1〜30kgf/cm2)が好ましい。この値が低すぎると、樹脂界面の到達する温度が融点以上であっても時間が短時間であるため溶融が不十分であり、十分な密着性を得難い。また、加圧が大きいとラミネート金属板の性能上は不都合がないものの、ラミネートロールにかかる力が大きく設備的な強度が必要となり装置の大型化を招くため不経済である。
金属板の製造
金属板として、クロムめっき鋼板を用いた。冷間圧延、焼鈍、調質圧延を施した厚さ0.18mm、幅977mmの鋼板に対して、脱脂、酸洗後、クロムめっき処理を行い、クロムめっき鋼板を製造した。クロムめっき処理は、CrO3、F−、SO4 2−を含むクロムめっき浴でクロムめっき、中間リンス後、CrO3、F−を含む化成処理液で電解した。その際、電解条件(電流密度・電気量等)を調整して金属クロム付着量とクロム水酸化物付着量を、Cr換算でそれぞれ120mg/m2、15mg/m2に調整した。
表2に示す酸成分とグリコール成分を表2に示す比率にて重合したポリエステル樹脂に、表2に示す粒子を配合して樹脂組成物とし、この樹脂組成物を常法に従い、乾燥、溶融、押し出して、冷却ドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸・熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルム(a2)を得た。
次いで、表1に示す各ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物、ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂、ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂、酸化亜鉛を、表1に示す比にてトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒中に溶解してコーティング液を作製した。
金属キレート化合物としては、市販のTC−200(チタンオクチレングリコールキレート、マツモトファインケミカル(株))などを用い、金属アルコキシド化合物としては、市販のZA−65(ジルコニウムブトキシド、マツモトファインケミカル(株))を用いた。
エポキシ樹脂としては、市販のエピクロンN−660(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、50%メチルエチルケトン溶液、DIC(株)製)を用いた。
このコーティング液を上記にて得られた二軸配向ポリエステルフィルム(a2)の片側の面に、グラビアロールコーターにより所定の乾燥膜厚となるように塗布・乾燥し、乾燥後の樹脂層(a1)の膜厚を調整した。乾燥温度は、80〜120℃の範囲とした。
表4に示す酸成分とグリコール成分を表4に示す比率にて重合したポリエステル樹脂に、表4に示す粒子を配合して樹脂組成物とし、この樹脂組成物を常法に従い、乾燥、溶融、押し出して、冷却ドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸・熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルム(a2)を得た。
次いで、表3に示す各ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物、ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂、ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂、酸化亜鉛及び着色剤を、表3に示す比にてトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒中に溶解して溶解してコーティング液を作製した。
ここで、ジフェノール酸を必須成分としたポリエステル樹脂(イ−1)の合成例を示す。酸成分として、テレフタル酸50質量部、イソフタル酸112質量部、ジフェノール酸、4.9質量部、多価アルコール成分として2−エチル−2−ブチル−1、3−ブタンジオール50質量部、1、4−ブタンジオール99質量部、1、4−シクロヘキサンジメタノール48質量部、チタンテトラブトキシド0.07質量部を2Lフラスコに仕込み、4時間かけて220℃まで徐々に昇温し、水を留出させエステル化を行った。所定量の水を留出させた後、30分かけて10mmHgまで減圧重合を行うとともに温度を250℃まで昇温し、更にこのまま1mmHg以下で50分間後期重合を行った。ついで減圧重合を止めて、窒素気流下で220℃まで冷却し、無水トリメリット酸1.9質量部を添加し、220℃で30分攪拌しカルボキシ基変性(後付加)を行った後、樹脂を取り出し数平均分子量22000、酸価5(mgKOH/g)、ガラス転移温度30℃のポリエステル樹脂(イ−1)を得た。この後、60℃以下まで冷却し、メチルエチルケトン/トルエン=50/50の混合溶液で希釈し、不揮発分40%のポリエステル樹脂(イ−1)溶液を得た。
金属キレート化合物としては、市販のTC−200(チタンオクチレングリコールキレート、マツモトファインケミカル(株))などを用い、金属アルコキシド化合物としては、市販のZA−65(ジルコニウムブトキシド、マツモトファインケミカル(株))を用いた。
エポキシ樹脂としては、市販のエピクロンN−660(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、50%メチルエチルケトン溶液、DIC(株)製)を用いた。
図1に示す金属帯のラミネート装置を用い、前記で得たクロムめっき鋼板1を金属帯加熱装置2で加熱し、ラミネートロール3により、クロムめっき鋼板1の一方の面に、缶内面側の樹脂被覆層(A)をラミネート(熱融着)するとともに、他方の面に缶外面側の樹脂被覆層(A)をラミネート(熱融着)した。その後、金属帯冷却装置5にて水冷を行い、ポリエステル樹脂被覆金属板を製造した。上記ラミネートロール3は内部水冷式とし、ラミネート中に冷却水を強制循環し、フィルム接着中の冷却を行った。樹脂フィルムを金属板にラミネートする際に、金属板に接する界面のフィルム温度がフィルムの融点以上になる時間を1〜35msecの範囲内にした。
以上より製造された容器用樹脂被覆金属板(本発明例)の片面側の被膜断面構造を図2に示す。
以上より製造された容器用樹脂被覆金属板の特性について、下記の(1)〜(7)の方法によりそれぞれ測定、評価した。
(1)成形性
容器用樹脂被覆金属板にワックスを塗布後、直径200mmの円板を打ち抜き、絞り比2.00で浅絞り缶を得た。次いで、この絞り缶に対し、絞り比2.50で再絞り加工を行った。この後、常法に従いドーミング成形を行った後、トリミングし、次いでネックイン−フランジ加工を施し深絞り缶を成形した。このようにして得た深絞り缶のネックイン部に着目し、フィルムの損傷程度を目視観察した。評価対象は、缶の内外面である。
(評点について)
◎:成形後フィルムに損傷も白化も認められない状態
○:成形後フィルムに損傷が認められないが、部分的に白化が認められる状態
×:缶が破胴し、成形不可能
(2)耐レトルト白化性
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶の、底部(缶外面側)を対象とした。缶内に常温の水道水を満たした後、蓋を巻き締めて密閉した。その後、缶底部を下向きにして、蒸気式レトルト殺菌炉の中に配置し、125℃で90分間、レトルト処理を行った。処理後、缶底部外面の外観変化を目視で観察した。
(評点について)
◎:外観変化なし
○:外観にかすかな曇り発生
×:外観が白濁(白化発生)
(3)耐熱水変色性
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶の、底部(缶外面側)を対象とした。缶内に常温の水道水を満たした後、蓋を巻き締めて密閉した。その後、缶底部を下向きにして、熱水式レトルト殺菌炉の中に配置し、125℃で90分間、レトルト処理を行った。処理後、缶底部外面の外観変化を目視で観察した。
(評点について)
◎:外観変化なし
○:外観がわずかに変化(変色発生)
×:外観が変化(顕著な変色が発生)
(4)成形後密着性1
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/min.でピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。評価対象は、缶外面の缶胴部である。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:5.0(N)/15(mm)以上、10.0(N)/15(mm)未満
×:5.0(N)/15(mm)未満
(5)成形後密着性2
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶の内部に水道水を充填した後、蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施し、缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/min.でピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。評価対象は、缶内面の缶胴部である。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:5.0(N)/15(mm)以上、10.0(N)/15(mm)未満
×:5.0(N)/15(mm)未満
(6)傷部耐食性評価1
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。図3に示すように、缶外面の缶胴部2箇所に、下地鋼板に達するクロスカット傷を入れた。続いて、クロスカット傷を付与した缶に対し、JISZ2371に準拠した塩水噴霧テストを300時間行い、傷部からの片側最大腐食幅を測定した。測定方法を図4に示す。評価対象は、缶外面の缶胴部である。
(評点について)
◎:片側最大腐食幅0.5mm未満
○:片側最大腐食幅0.5mm以上〜1.0mm未満
×:片側最大腐食幅1.0mm以上
(7)傷部耐食性評価2
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。図3に示すように、缶内面の缶胴部2箇所に、下地鋼板に達するクロスカット傷を入れた。続いて、缶の内部に、1.5%NaCl+1.5%クエン酸ナトリウム混合液を充填した後、蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施した後、温度38℃の恒温槽内で、20日間経時させた。その後、缶を切り開き、クロスカット傷部からの片側最大腐食幅を測定した。測定方法は、(6)傷部耐食性評価1と同様である。また、評価対象は、缶内面の缶胴部である。
(評点について)
◎:片側最大腐食幅1.0mm未満
○:片側最大腐食幅1.0mm以上〜3.0mm未満
×:片側最大腐食幅3.0mm以上
(8)耐硫化黒変性
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶の内部に、システイン0.5g/L液を充填した後、蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を、130℃、90分間の条件で実施した後、缶を切り開き、缶内面の耐硫化黒変性を調査した。
(評点について)
◎:変色なし
○:わずかに変色あり
×:明確な変色あり
以上により得られた結果を表5及び表6に示す。
2 金属帯加熱装置
3 ラミネートロール
4a、4b フィルム
5 金属帯冷却装置
Claims (8)
- 金属板の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂を主成分とする複層構造の樹脂被覆層(A)を有し、該樹脂被覆層(A)は、前記金属板面と密着し下記(イ)〜(ヘ)の成分を含有しポリエステル樹脂を主成分とする樹脂層(a1)を有することを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
(イ)ポリエステル樹脂
(ロ)フェノール樹脂
(ハ)金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物
(ニ)ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂
(ホ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上
(ヘ)酸化亜鉛 - 前記樹脂被覆層(A)が、前記樹脂層(a1)と、該樹脂層(a1)の上層に形成されるポリエステルフィルム(a2)からなることを特徴とする請求項1に記載の容器用樹脂被覆金属板。
- 前記樹脂層(a1)を形成する樹脂成分の比率が、下記を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の容器用樹脂被覆金属板。
(イ)ポリエステル樹脂:50〜80mass%
(ロ)フェノール樹脂:10〜45mass%
(ハ)金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物:0.01〜10mass%
(ニ)ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂:0.5〜20mass%
(ホ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上:0.1〜10mass%
(ヘ)酸化亜鉛:0.01〜35mass% - 前記(イ)ポリエステル樹脂は、数平均分子量が3000〜100000であり、下記(イ-1)〜(イ-3)のいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の容器用樹脂被覆金属板。
(イ-1)ガラス転移温度が0℃以上35℃未満のポリエステル樹脂
(イ-2)ガラス転移温度が35℃以上65℃未満のポリエステル樹脂
(イ-3)ガラス転移温度が65℃以上100℃未満のポリエステル樹脂 - 前記(イ)ポリエステル樹脂を形成する各ポリエステル樹脂の比率が、下記を満足することを特徴とする請求項4に記載の容器用樹脂被覆金属板。
ガラス転移温度が0℃以上35℃未満のポリエステル樹脂:30〜70mass%
ガラス転移温度が35℃以上65℃未満のポリエステル樹脂:10〜35mass%
ガラス転移温度が65℃以上100℃未満のポリエステル樹脂:10〜35mass% - 前記(イ)ポリエステル樹脂は、ジフェノール酸を必須の成分とするポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の容器用樹脂被覆金属板。
- 前記(ハ)金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物は、チタンアルコキシド系化合物及び/またはチタンキレート化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の容器用樹脂被覆金属板。
- 前記ポリエステルフィルム(a2)が、ポリエステル樹脂の構成単位の85mass%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位である二軸延伸ポリエステルフィルムであり、該二軸延伸ポリエステルフィルムは、無機粒子及び/または有機粒子を含有することを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の容器用樹脂被覆金属板。
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