JP6056733B2 - 容器用樹脂被覆金属板 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、食品缶詰や飲料缶、エアゾール缶などの缶胴および蓋等に用いられる容器用樹脂被覆金属板に関するものである。
従来、食品缶詰や飲料缶、エアゾール缶に用いられる金属缶用素材であるティンフリースチール(TFS)、アルミニウム等の金属板には、耐食性、耐久性、耐候性などの向上を目的として、塗装が施されていた。しかし、この塗装を施す工程は、焼き付け処理が複雑であるばかりでなく、多大な処理時間を必要とし、さらには多量の溶剤を排出するという問題を抱えていた。
そこで、これらの問題を解決するため、塗装鋼板に替わり、熱可塑性樹脂フィルムを加熱した金属板にラミネートしてなるフィルムラミネート金属板が開発され、現在、容器用素材として工業的に用いられている。
容器用素材には、加工性、密着性などの基本特性のほか、2ピース缶用途であれば、深絞り成形性、加工・レトルト後密着性や耐食性、意匠性など、多様な機能が求められる。フィルムラミネート金属板を多機能化する方法としては、(1)フィルム内に、付加したい機能を有する改質剤を加え、フィルムそのものを多機能化する方法、(2)フィルムは改質せず、フィルム表面に、付加したい機能を有する改質剤もしくは改質剤を含む樹脂を、コーティングする方法、のいずれかが選択される。
上記(1)のフィルムに直接、改質剤を添加する方法は、一定の機能を有するフィルムを大量に生産する場合には、生産効率が高く、収益性の高い方法である。しかし、容器は形状や内容物の種類が多種多様であり、容器の種類毎に求められる機能が異なるため、この方法は適切でない。なぜならば、フィルムに付与する機能を変更する毎に、樹脂の押し出し装置や、キャスティングドラム、冷却ロールなどの洗浄が必要であり、製造ラインを長時間停止しなければならず、生産効率が著しく低下してしまうためである。
一方、上記(2)のフィルムの表面に、改質剤を含む樹脂をコーティングする方法は、フィルムへの付加機能の変更が容易であるため、多様なニーズに対応できる。改質剤を含むコーティング液の入ったタンクを、洗浄・交換することで、すばやく対応できるからである。
このようなフィルム表面に、改質剤を含む樹脂をコーティングする方法としては、例えば、特許文献1があげられる。特許文献1は、エポキシ樹脂を主成分とし、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、着色剤を含む樹脂層を、金属板とフィルムとの間に形成したものである。
しかしながら、エポキシ樹脂は、反応性に富み、金属板との密着性に優れるものの、深絞り成形性が劣るという欠点があるため、2ピース缶用素材として使用可能なフィルムを得ることはできない。特許文献1の樹脂被覆金属板を深絞り缶(DRD缶)に成形しようとしても、缶高さ方向の伸び変形にエポキシ樹脂が追随することができず素材の変形を拘束してしまい、絞り工程で素材が破断してしまう。
密着性向上を目的として、フィルムに樹脂コーティングを行う方法が、特許文献2〜5に開示されている。特許文献2〜5は、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂の複合系、もしくはエポキシ樹脂を主成分とする構成である。そのため、特許文献1と同様に、深絞り成形性に難があり、2ピース缶用途には適用できるものではない。また、特許文献2〜5に記載されている実施例の中には製缶加工性や深絞り成形性を評価した例が開示されていないことからも、これらが、深絞り加工が要求される2ピース缶用途を考慮していないことは明らかである。
特開2007−185915号公報 特開平4−266984号公報 特開平8−199147号公報 特開平10−183095号公報 特開2002−206079号公報
本発明は、かかる事情に鑑み、容器用素材に要求される多くの特性に対応可能な、容器用樹脂被覆金属板を提供することを目的とするものである。
本発明者らが、課題解決のため鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
ポリエステル樹脂を主成分とする複層構造の樹脂被覆層を、金属板の少なくとも片面に有する。そして、(イ)ポリエステル樹脂、(ロ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上、(ハ)エポキシ樹脂、(ニ)リン酸、を含有する樹脂層を金属板との密着層とし、樹脂被覆層(A)の結晶化熱量と融解熱量との差が、単位質量当りに換算して0J/g超〜15J/g以下であり、その上層にポリエステルフィルムを積層することで、優れた深絞り成形性、加工後密着性などの基本特性に加え、レトルト処理環境下での意匠性など多くの優れた機能を有する容器用樹脂被覆金属板を得ることができる。
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]金属板の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂を主成分とする複層構造の樹脂被覆層(A)を有し、該樹脂被覆層(A)は、前記金属板面と密着し、ポリエステル樹脂を主成分とし下記(イ)〜(ニ)の成分を含有する樹脂層(a1)と、該樹脂層(a1)の上層に形成されるポリエステルフィルム(a2)を有し、前記樹脂被覆層(A)の結晶化熱量と融解熱量との差が、単位質量当りに換算して0J/g超15J/g以下の範囲であることを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
(イ)ポリエステル樹脂
(ロ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上
(ハ)エポキシ樹脂
(ニ)リン酸
[2]前記(イ)ポリエステル樹脂は、数平均分子量が3000〜100000であり、ガラス転移温度が0℃以上100℃以下であることを特徴とする前記[1]に記載の容器用樹脂被覆金属板。
[3]前記(イ)ポリエステル樹脂が、下記を満足することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の容器用樹脂被覆金属板。
ガラス転移温度が0℃以上35℃未満のポリエステル樹脂:30〜80mass%
ガラス転移温度が35℃以上65℃未満のポリエステル樹脂:10〜35mass%
ガラス転移温度が65℃以上100℃未満のポリエステル樹脂:10〜35mass%
[4]前記樹脂層(a1)を形成する成分(イ)〜(ニ)の比率が、下記を満足することを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の容器用樹脂被覆金属板。
(イ)ポリエステル樹脂:50〜90mass%
(ロ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上:0.5〜30mass%
(ハ)エポキシ樹脂:0.5〜20mass%
(ニ)リン酸:0.1〜10mass%
[5]前記ポリエステルフィルム(a2)が、ポリエステル樹脂の構成単位の95mass%以上がエチレンテレフタレート単位であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の容器用樹脂被覆金属板。
本発明によれば、容器用素材に要求される多くの特性に対応が可能な樹脂被覆金属板が得られる。そして、容器に要求される多くの機能を容易に付加できる新たな容器用樹脂被覆金属板として、産業上有益な発明である。
金属板のラミネート装置の要部を示す図である。(実施例1) フィルムラミネート金属板の断面構造を示す図である。(実施例1) 缶胴部に付与したクロスカット傷の位置を示す図である。(実施例1) 人工傷からの最大腐食幅を測定する方法を示す図である。(実施例1)
以下、本発明の容器用樹脂被覆金属板について詳細に説明する。
まず、本発明で用いる金属板について説明する。
本発明の金属板としては、缶用材料として広く使用されているアルミニウム板や軟鋼板等を用いることができる。特に、下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物からなる二層皮膜を形成させた表面処理鋼板(以下、TFSと称す)が最適である。
TFSの金属クロム層、クロム水酸化物層の付着量については、特に限定されないが、加工後密着性、耐食性の観点から、何れもCr換算で、金属クロム層は70〜200mg/m、クロム水酸化物層は10〜30mg/mの範囲とすることが望ましい。
そして、本発明の容器用樹脂被覆金属板は、金属板の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂を主成分とする複層構造の樹脂被覆層(A)を有する。そして、この樹脂被覆層(A)は、前記金属板面と密着する樹脂層(a1)を有し、さらに、前記樹脂層(a1)は、ポリエステル樹脂を主成分とし下記(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の成分を含有する。
(イ)ポリエステル樹脂
(ロ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上
(ハ)エポキシ樹脂
(ニ)リン酸
次に、金属板面と密着する樹脂層(a1)について説明する。
(イ)ポリエステル樹脂
ポリエステル樹脂としては、数平均分子量3000〜100000であることが好ましく、より好ましくは5000〜30000、更に好ましくは10000〜25000の範囲内である。なお、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー分析での、ポリスチレンとの比較による換算値である。数平均分子量が3000より低いと加工性が悪くなり、100000より高いと塗料化時の粘度が高くなり適切な塗装ができなくなる場合がある。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、0℃以上100℃未満の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度が0℃以上100℃未満の範囲とすることで、樹脂の柔軟性・加工性や耐ブロッキング性が、適度にバランスされ、食品缶詰用途に好適となる。ただし、1種のポリエステル樹脂では、数多い要求性能を満たすことが困難な場合がある。単独で使用した場合、例えば、ポリエステル樹脂のガラス転移温度が0℃以上35℃未満である場合、樹脂層に柔軟性が付与されるため加工性が優れる。しかし、フィルムに樹脂層をコーティングした後、巻かれた状態のままガラス転移温度を超える温度で長時間保持されると、フィルムがブロッキングしてしまうおそれがある。また、ガラス転移温度が低く、耐熱性が不足するため、耐レトルト性がやや劣るようになる。
ガラス転移温度が35℃以上65℃未満であれば、フィルムがブロッキングせず、フィルムの美観が損なわれることがない。ガラス転移温度が65℃以上100℃未満であると、ブロッキング性が優れるものの、皮膜が硬くなるためにやや加工性が劣るようになる。従って、ポリエステル樹脂はガラス転移温度が異なる複数の樹脂を併用し、各々のポリエステル樹脂の良い性能を引き出すことで、バランスのとれた、より優れた樹脂層を得ることがさらに好ましい。
また、ガラス転移温度が異なる複数の樹脂を併用する場合、各ポリエステル樹脂の比率は以下が好ましい。
ガラス転移温度が0℃以上35℃未満のポリエステル樹脂:30〜80mass%
ガラス転移温度が35℃以上65℃未満のポリエステル樹脂:10〜35mass%
ガラス転移温度が65℃以上100℃未満のポリエステル樹脂:10〜35mass%
このような比率の範囲とすることで、加工性とブロッキング性のバランスが著しく向上する。
また、ポリエステル樹脂は、ジフェノール酸に由来する繰り返し単位を含有することが好ましい。ポリエステル樹脂を製造するための原料成分であるモノマー組成物にジフェノール酸を含有した場合、ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂との反応性が高まり硬化速度があがり、結果として耐レトルト白化性が向上する。また、ジフェノール酸を必須モノマーとした、ガラス転移温度が0℃以上35℃未満のポリエステルを高い比率で使用しても硬化性が向上する。このように、ガラス転移温度が低くともコーティングフィルムのブロッキング性が優れる等の特徴を有しているため、ポリエステル樹脂は、ジフェノール酸に由来する繰り返し単位を含有することが好ましい。
ポリエステル樹脂(イ)は、直鎖型であることが好ましい。直鎖型の場合、分岐構造を有するポリエステル樹脂と比較して、皮膜の架橋密度が下がるために、特に加工性が優れる特徴を有している。
ポリエステル樹脂(イ)としては、多塩基酸成分と多価アルコール成分とをエステル化反応させたものを用いることができる。
多塩基酸成分としては、たとえば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの1種以上のニ塩基酸およびこれらの酸の低級アルキルエステル化物が用いられ、必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。
多価アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1、4−ヘキサンジオール、1、6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの2価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
ポリエステル樹脂(イ)の市販品としては、例えば、東洋紡績(株)製のバイロン300、500、560、600、630、650、670、バイロンGK130、140、150、190、330、590、680、780、810、890、ユニチカ(株)製エリーテルUE−3220、3500、3210、3215、3216、3620、3240、3250、3300、東亞合成(株)製アロンメルトPES−310、318、334などが挙げられる。
(ロ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上
ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂は、メラミン樹脂などと比較して硬化速度が速く、強靭な皮膜を形成できる点で優れている。ポリエステル/メラミン系、エポキシ/メラミン系等からなる樹脂組成物と比較して、硬化特性が優れるためにラミネート鋼板の耐レトルト性、耐食性および加工性等の点で、特に優れた性能を発揮することが可能となる。
ポリアミン樹脂として特に代表的なものを例示すると、脂肪族アミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、トリエチレンペンタミン、脂環式ポリアミンとしてはイソホロンジアミンなどが挙げられる。また、作業性改善や低刺激化、機械物性の向上のために脂肪族ポリアミンにエポキシ樹脂やアクリロニトリルを付加させたり、ホルムアルデヒドとフェノールを反応させて変性したものなども挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン酸、ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。市販品としては、DIC(株)製EPICRON EXB−353、エアープロダクツジャパン(株)製アンカミン2596、アンカミン2605などが挙げられる。
ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂は、例えば、油脂脂肪酸とポリアミンの脱水縮合反応により合成される化合物である。市販品としては、三洋化成ポリマイドL−15−3、ポリマイドL−45−3、エアープロダクツジャパン(株)製アンカマイド2137、サンマイド330、サンマイドX−2000などが挙げられる。
(ハ)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、主に皮膜の密着性を向上させるものである。エポキシ樹脂の種類は特に限定するものではないが、近年、ビスフェノールA型エポキシ樹脂では、内分泌攪乱作用が懸念されているため、このような懸念のない樹脂であることが好ましく、ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂とすることが好ましい。ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などがあげられ、特にノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型などがあげられる。ノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、DIC(株)社製のエピクロンN−665、670、673、680、690、695、730、740、770、865、870、ダウケミカル(株)社製のXD−7855、旭化成エポキシ(株)社製のECN−1273、1299などが挙げられる。ビフェニル型エポキシ樹脂としては、三菱化学(株)製のYL6121H、YX7399が挙げられる。
(ニ)リン酸
リン酸は、(イ)ポリエステル樹脂、(ロ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上、(ハ)エポキシ樹脂との反応に関与する。各々の樹脂の架橋反応を活性化するとともに、エポキシ樹脂と架橋反応して、皮膜中に取り込まれる。結果として極めて少ない熱エネルギーで優れた密着性、加工性、耐レトルト性、耐食性を発現することが可能となる。例えば、既存のラミネート缶はフィルムをラミネートした後に180℃以上で、数秒〜数分間焼付けが施され、その後の後加熱を利用し樹脂皮膜を硬化させ、上記の各種要求性能を確保するものである。しかし、本発明において、リン酸を含有した場合の樹脂層は、熱融着ラミネートを行う際の、1秒程度の短時間加熱のみで樹脂層が十分に硬化する。更に、皮膜中にリン酸が組み込まれることで、皮膜の強度が向上し、結果として耐衝撃性や耐食性が大幅に向上する。特に、皮膜が何らかの原因で損傷した場合、腐食環境下における皮膜損傷部からの鉄溶出を、効果的に抑制することが可能となる。損傷部から溶出した鉄イオンがリン酸と結合し、損傷部に沈殿して保護皮膜を形成することで、いわゆる皮膜の自己補修機能が期待できる。以上の理由により、前記樹脂層(a1)は、リン酸を含有する。
(イ)ポリエステル樹脂、(ロ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上、(ハ)エポキシ樹脂、(ニ)リン酸が連続的に架橋反応することで、分子鎖の三次元ネットワークが樹脂層内に形成される。これにより、レトルト処理環境下での水蒸気や熱水の浸透による変色を、最も効果的に抑制することが可能となる。
水蒸気による変色とは、レトルト殺菌処理中に、樹脂層そのものが白く濁ったように変色する現象であり、レトルト白化と呼ばれている。缶外面の意匠性を損なわせるため、消費者の購買意欲を減退させうる大きな問題である。発明者らが鋭意検討した結果、缶体を被覆する樹脂層内に水蒸気が浸透することによって、樹脂層の界面及び界面近傍に液胞が形成され、液胞部で光が散乱することが原因であると考えられる。したがって、特性改善のためには、樹脂層の界面及び界面近傍での液胞形成を抑制することが重要である。すなわち、樹脂中に侵入した水蒸気は、樹脂中を拡散し、金属板との界面まで到達する。レトルト処理の開始直後は、缶内に充填された内容物が常温に近い状態にあるため、缶の外部から内部にかけて温度勾配が生ずる。即ち、樹脂中を拡散する水蒸気は、金属板に近づくにつれて冷却されることになり、該界面及び界面近傍で液化し、凝縮水となって液胞を形成する。液胞がレトルト処理後も界面及び界面近傍に残留することで、光の散乱を招き、樹脂表面が白濁してみえることとなる。したがって、レトルト白化を抑制するためには、界面及び界面近傍における液胞の形成を抑止すればよい。
一方、レトルト処理装置には、上記のように加熱媒体として水蒸気を用いるもの以外に、熱水を加熱媒体として用いるレトルト装置がある。熱水を加熱媒体として用いるレトルト装置の場合、水蒸気による変色とは異なったメカニズムで、樹脂層そのものが変色し意匠性が劣化するという問題が発生する。これは、レトルト処理の初期段階において、ポリエステル分子鎖の架橋反応が十分に進行していない場合、樹脂層内に浸透した水が、ポリエステルのカルボニル末端基を触媒としてポリエステル分子鎖の加水分解反応を促すことで、樹脂層内に大きな液胞が形成されることが原因であると考えられる。
本発明者らが上記2種類の変色現象を鋭意検討した結果、上記(イ)〜(ニ)の成分を含有する樹脂層(a1)のポリエステル分子鎖のネットワークが水蒸気及び熱水が樹脂内へ浸透し界面に到達するのを抑制するとともに、樹脂強度及び弾性率が上昇することで液胞の形成及び成長を抑制することができたと考えられる。また、分子鎖ネットワーク形成に伴うカルボニル末端基量の減少により、急激な加水分解反応も抑制される。
樹脂層(a1)の組成(mass%)
樹脂層(a1)を形成する成分の比率は、下記を満足することが好ましい。
(イ)ポリエステル樹脂:50〜90mass%
(ロ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上:0.5〜30mass%
(ハ)エポキシ樹脂:0.5〜20mass%
(ニ)リン酸:0.1〜10mass%
(イ)ポリエステル樹脂の比率が50mass%より低いと加工性が悪化し、90mass%を超えると硬化性が不足し耐レトルト性が低下する場合がある。より好ましくは55〜85mass%の範囲である。
(ロ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上の比率が、0.5mass%より低いと硬化性が不足し耐レトルト性が劣り、30mass%を超えると加工性が悪化する場合がある。より好ましくは3〜20mass%である。
(ハ)エポキシ樹脂の比率が、0.5mass%よりも低いと密着性が低下し、結果として耐食性が劣化するようになり、20mass%を超えると耐レトルト白化性が低下してしまう場合がある。より好ましくは5〜15mass%である。
(ニ)リン酸の比率が、0.1mass%よりも低いと期待した速硬化性等の効果が得られず、また10mass%を超えると、樹脂皮膜が硬くなり加工性が劣るようになる。より好ましくは0.5〜7mass%である。
樹脂層(a1)の付着量
樹脂層(a1)の付着量は、0.1g/m以上5.0/m以下の範囲に規定するのが好ましい。0.1g/m未満では、金属板の表面状態によっては、金属板表面を均一に被覆することができず、膜厚が不均一になる場合がある。一方、5.0g/m超とすると、樹脂の凝集力が不十分となり、樹脂層の強度が低下してしまう恐れがある。その結果、製缶加工時に、樹脂層が凝集破壊してフィルムが剥離し、そこを起点に缶胴部が断裂してしまうこととなる。
以上より、付着量は、好ましくは0.1g/m以上5.0g/m以下、さらに好ましくは0.1g/m以上3.0g/m以下、より一層好ましくは0.5g/m以上2.0g/mである。
着色剤
更に、樹脂層(a1)に染料、顔料などの着色剤を添加することで、下地の金属板を隠蔽し、樹脂独自の多様な色調を付与できる。例えば、白色顔料を添加することで下地の金属光沢を隠蔽するとともに、印刷面を鮮映化することができ、良好な外観を得ることができる。添加する顔料としては、容器成形後に優れた意匠性を発揮できることが必要であり、かかる観点からは、二酸化チタンなどの無機系顔料を使用できる。着色力が強く、展延性にも富むため、容器成形後も良好な意匠性を確保できるので好適である。また、黒色顔料として、カーボンブラックを添加することで、下地の金属色を隠蔽するとともに、黒色のもつ高級感を食品缶詰に付与することができる。カーボンブラックの粒子径としては、5〜50nmの範囲のものを使用できるが、ポリエステル樹脂中での分散性や発色性を考慮すると、5〜30nmの範囲が好適である。
容器表面に光輝色を望む場合には、黄色の有機系顔料の使用が好適である。透明性に優れながら着色力が強く、展延性に富むため、容器成形後も光輝色のある外観が得られる。本発明で使用できる有機系顔料を例示すれば、カラーインデックス(C.I.登録の名称)が、ピグメントイエロー12、13、14、16、17、55、81、83、139、180、181、183、191、214のうちの少なくとも1種類を挙げることができる。特に、色調(光輝色)の鮮映性、耐熱水変色性などの観点から、C.I.ピグメントイエロー180、214がより好ましく用いられる。
このほか、レッド顔料としてC.I.ピグメントレッド101、177、179、187、220、254、ブルー顔料としてC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、バイオレット顔料としてC.I.ピグメントバイオレット19、オレンジ顔料としてC.I.ピグメントオレンジ64、グリーン顔料としてC.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
以上の着色剤の配合比率は、樹脂層(a1)を構成する樹脂層の全固形分中で、0.1〜50PHRを含有することが好ましい。
また、樹脂層(a1)には、従来公知の滑剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、シリカ等のアンチブロッキング剤等を添加することが可能である。また、硬化補助剤として、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、イソシアネート樹脂等の他の硬化剤を併用しても良く、これらはフィルムの乾燥条件、ラミネート条件により適切なものを併用することが可能である。
次いで、樹脂層(a1)の上層に形成される樹脂層(ポリエステルフィルム)(a2)について説明する。
樹脂被覆層(A)は、最上層として、樹脂層(a1)の上層にポリエステルフィルム(a2)を有する。
ポリエステルフィルム(a2)組成
本発明で使用するポリエステルフィルム(a2)は、レトルト後の味特性を良好とする点、製缶工程での摩耗粉の発生を抑制する点で、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とすることが望ましい。エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルとは、ポリエステルの95mass%以上がエチレンテレフタレートを構成成分とするポリエステルである。さらに好ましくは98mass%以上であると金属缶に飲料を長期充填しても味特性が良好であるので望ましい。
更に、ポリエステルフィルム(a2)が二軸延伸ポリエステルフィルムであると、耐熱性、味特性の観点から好ましい。二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよいが、延伸条件、熱処理条件を特定化し、フィルムの厚さ方向の屈折率が1.50以上であることが、ラミネート性、成形性を良好とする点で好ましい。さらに、厚さ方向屈折率が1.51以上、特に1.52以上であると、ラミネート時に多少のばらつきがあっても成形性、耐衝撃性を両立させる上で面配向係数を特定の範囲に制御することが可能となるので好ましい。
一方、味特性を損ねない範囲で他のジカルボン酸成分、グリコール成分を共重合してもよく、ジカルボン酸成分としては、例えば、ジフェニルカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。
グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。なお、芳香族グリコールのビスフェノールAは、内分泌撹乱作用が懸念されているため、グリコール成分として使用しないことが望ましい。また、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
粒子
本発明で用いるポリエステルフィルムは、無機粒子および/または有機粒子を含有することができる。本発明で用いるポリエステルフィルムにおける粒子とは、組成的には有機、無機を問わず特に制限されるものではないが、フィルムに成形したときの突起形状、耐摩耗性、加工性、味特性の観点から体積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであることが好ましく、特に0.01〜3.0μmであることが好ましい。また、耐摩耗性等の点から、下記式に示される相対標準偏差が0.5以下であることが好ましく、さらには0.3以下であることが好ましい。
粒子の長径/短径比としては、1.0〜1.2であることが好ましい。モース硬度としては、突起硬さ、耐摩耗性などの点から7未満であることが好ましい。
また、これらの効果を十分に発現させるには、上記からなる粒子を0.005〜10mass%含有することが好ましい。
具体的には、無機粒子としては、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー等が挙げられる。中でも、粒子表面の官能基とポリエステルとが反応してカルボン酸金属塩を生成するものが好ましく、具体的には、粒子1gに対し、10−5mol以上の官能基を有するものが、ポリエステルとの親和性、耐摩耗性などの点で好ましく、さらには2×10−5mol以上の官能基を有することが好ましい。
また、有機粒子としては、さまざまな有機高分子粒子を用いることができるが、その種類としては、少なくとも一部がポリエステルに対し不溶の粒子であればいかなる組成の粒子でも構わない。また、このような粒子の素材としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルメタクリレート、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂などの種々のものを使用することができる。中でも、耐熱性が高く、かつ粒度分布の均一な粒子が得られやすいビニル系架橋高分子粒子が特に好ましい。
このような無機粒子および有機高分子粒子は、単独で用いても構わないが、2種以上を併用して用いることが好ましく、粒度分布、粒子強度など物性の異なる粒子を組み合わせることにより、さらに機能性の高いポリエステル樹脂を得ることができる。
また、本発明の効果を妨げない範囲において、他の粒子、例えば各種不定形の外部添加型粒子、および内部析出型粒子、あるいは各種表面処理剤を用いても構わない。
ポリエステルフィルム(a2)の厚み
本発明で用いるポリエステルフィルムの厚さは、5〜100μmが好ましい。ポリエステルフィルムの厚さが5μm未満では、被覆性が不十分であり耐衝撃性と成形性が確保できない。一方、100μmを超えると、上記特性が飽和して何ら改善効果が得られないばかりか、金属表面への熱融着時に必要となる熱エネルギーが増大するため、経済性を損なってしまう。このような観点から、より好ましいポリエステルフィルムの厚さは8〜50μm、さらに好ましくは10〜25μmである。
樹脂被覆層(A)の結晶化熱量と融解熱量との差が、単位重量当りに換算して0J/g超15J/g以下
樹脂被覆層(A)は、結晶化熱量と融解熱量との差が、単位重量当りに換算して0J/g超15J/g以下、好ましくは1J/g以上10J/g以下、より好ましくは2J/g以上7J/g以下の範囲内にある樹脂材料によって形成されている。結晶化熱量と融解熱量とは、示差走査熱量測定装置(Differential Scanning Calorimetry:DSC)を用いて測定することができる。結晶化熱量と融解熱量との差は、樹脂被覆層(A)の結晶化度の指標となるものである。結晶化熱量と融解熱量との差が0J/gである場合は、樹脂被覆層(A)は非晶質となり、結晶化度は0となる。一般的に、樹脂層の結晶化度が低下すると、樹脂層の加工性(柔軟性)は上昇するものの、樹脂層の耐衝撃性は低下することが知られている。樹脂被覆層(A)の結晶化度が0となると、樹脂層の耐衝撃性が過度に低下してしまい、何らかの理由で樹脂層に衝撃加工が加えられた場合に、樹脂層が断裂してしまう懸念がある。結晶化度が0を超え、わずかでも結晶層が存在していれば、衝撃加工による樹脂層内の連鎖的な断裂進行を抑制することができ、容器としての最低限の性能を確保できる。このため、樹脂被覆層(A)の結晶化熱量と融解熱量との差は、単位重量当たりに換算して0J/g超15J/g以下とする必要がある。これにより、極めて優れた加工性を実現するとともに、容器として市場に流通可能なレベルでの耐衝撃性を確保することが可能となる。一方、樹脂被覆層(A)の結晶化熱量と融解熱量との差が、単位重量当たりに換算して、15J/gを超えてしまう場合には、樹脂被覆層(A)の結晶化度が過度に高くなり、加工性が低下してしまう。このため、深絞り缶やDI缶などの高加工用途に適用する場合には、15J/g以下に制御する必要があり、好ましくは、1J/g以上10J/g以下、より好ましくは2J/g以上7J/g以下の範囲内である。
樹脂被覆層(A)の結晶化熱量と融解熱量との差は、樹脂層を被覆する際の、製造条件(ラミネート時鋼板加熱温度、ニップ圧、被覆後の水冷却までの時間、被覆後の冷却温度、ライン速度)を制御することによって決定できる。具体的には、被覆時の金属板の加熱温度を高くすることによって、樹脂被覆層(A)の結晶化熱量と融解熱量との差を低下させることができる。なお、金属板の加熱温度は、樹脂被覆層(A)の融点や、被覆前の結晶化度によって異なるが、樹脂被覆層(A)の融点より10〜40℃程度高く設定する必要がある。また、ニップ圧を低下させることで、ニップ圧による樹脂被覆層(A)の冷却効果を弱め、樹脂被覆層(A)の結晶化熱量と融解熱量との差を低下させることができる。また、被覆後の水冷却までの時間を短くすることによって被覆後の冷却過程における樹脂被覆層(A)の結晶化を抑制することができ、樹脂被覆層(A)の結晶化熱量と融解熱量との差を小さくすることができる。なお、被覆後の水冷却までの時間は、ライン速度にもよるが、0.5秒〜10秒の範囲である。また、被覆後の冷却温度を下げることにより、樹脂層(A)の結晶化温度域を速やかに通過させて結晶化を抑制することができ、樹脂被覆層(A)の結晶化熱量と融解熱量との差を小さくすることができる。また、ライン速度を上げることによって、加熱ロール温度が同一条件でも樹脂被覆層(A)の結晶化熱量と融解熱量との差を小さくすることができる。これは、加熱されてから被覆されるまでの放冷等の影響が少なくなるためである。
次いで、本発明の容器用樹脂被覆金属板の製造方法について説明する。
ポリエステルを主成分とする樹脂層(a1)の形成方法
一例として、樹脂層(a1)を、ポリエステルフィルム(a2)の表面に形成する方法について述べる。
主成分となるポリエステル樹脂を有機溶媒中に溶解させるとともに、本発明が規定する樹脂層(a1)の添加成分および任意添加成分を有機溶剤中に溶解または分散させてコーティング液を調製する。このコーティング液を、ポリエステルフィルム(a2)製膜時もしくは製膜後に、フィルム表面に塗布し乾燥することで、樹脂層(a1)を形成する。
ポリエステル樹脂を溶解させるための有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン溶剤、酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤などを挙げることができ、これらの1種以上を適宜選定して使用することができる。
前記コーティング液には、従来公知の潤滑剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、シリカ等のアンチブロッキング剤等を添加することが可能である。また、硬化補助剤として、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、イソシアネート樹脂等の他の硬化剤を併用しても良く、これらはフィルムの乾燥条件、ラミネート条件により適切なものを併用することが可能である。
また、本発明で規定する架橋剤、硬化触媒、着色剤としてカーボンブラック、アゾ系顔料などの添加剤も、有機溶剤中に分散させて使用することができる。この際、分散剤を併用すると、添加剤の均一性が付与できるため好適である。
コーティング液をポリエステルフィルムに塗布する方法としては、ロールコーター方式、ダイコーター方式、グラビア方式、グラビアオフセット方式、スプレー塗布方式など、既知の塗装手段が適用できるが、グラビアロールコート法が最も好適である。コーティング液塗布後の乾燥条件としては、80℃〜170℃で1〜30秒間、特に100℃〜130℃で5〜30秒間が好ましい。乾燥後の樹脂層(a1)の付着量は、0.1〜5.0g/mの範囲内が好ましい。0.1〜5.0g/mの範囲内であれば、連続均一塗布性に優れ、意匠性の問題もなく、耐レトルト性、密着性が確保でき、フィルム巻取り時のブロッキング性も解消される。0.1g/m未満の場合、皮膜の連続性に難点が生じやすく、物性と意匠性の発現が困難となる場合がある。また、レトルト殺菌処理において水蒸気に対するバリア性が劣り、樹脂層(a1)/ポリエステルフィルム(a2)の界面に水分が滞留し易く、レトルト白化を引き起こす可能性がある。一方、5.0g/mを超えると、コーティング後の溶剤離脱性が低下し、作業性が著しく低下する上に残留溶剤の問題が生じやすくなることによりフィルム巻取り時のブロッキング性が著しく低下する場合がある。好適な範囲としては、0.5〜2.5g/mの範囲である。
樹脂層(a1)をコーティング後のポリエステルフィルム(a2)を金属板表面にラミネートする方法
樹脂層(a1)をコーティングしたポリエステルフィルム(a2)を、樹脂層(a1)が金属板面と密着するように金属板表面にラミネートする。例えば、金属板をフィルムの融点を超える温度で加熱し、その表面に樹脂層(a1)をコーティングしたポリエステルフィルム(a2)を圧着ロール(以下、ラミネートロールと称す)を用いて接触させ熱融着させる方法を用いることができる。なお、このとき、上述したように、樹脂層(a1)をコーティングしたポリエステルフィルム面をラミネートロールを用いて金属板に接触させ熱融着させることが必要である。
ラミネート条件については、本発明に規定する樹脂層が得られるように適宜設定される。例えば、ラミネート開始時の温度を少なくともフィルム融点の10℃以上とし、ラミネート時にフィルムの受ける温度履歴として、フィルムの融点以上の温度で接している時間を5〜25msecの範囲とすることが好適である。このようなラミネート条件を達成するためには、高速でのラミネートに加えて、融着中の冷却も必要である。ラミネート時の加圧は特に規定するものではないが、面圧として9.8〜294N/cm(1〜30kgf/cm)が好ましい。この値が低すぎると、樹脂界面の到達する温度が融点以上であっても時間が短時間であるため溶融が不十分であり、十分な密着性を得難い。また、加圧が大きいとラミネート金属板の性能上は不都合がないものの、ラミネートロールにかかる力が大きく設備的な強度が必要となり装置の大型化を招くため不経済である。
以下、本発明の実施例について説明する。
金属板の製造
金属板として、クロムめっき鋼板を用いた。冷間圧延、焼鈍、調質圧延を施した厚さ0.18mm、幅977mmの鋼板に対して、脱脂、酸洗後、クロムめっき処理を行い、クロムめっき鋼板を製造した。クロムめっき処理は、CrO、F、SO 2−を含むクロムめっき浴でクロムめっき、中間リンス後、CrO、Fを含む化成処理液で電解した。その際、電解条件(電流密度・電気量等)を調整して金属クロム付着量とクロム水酸化物付着量を、Cr換算でそれぞれ120mg/m、15mg/mに調整した。
缶内面側の樹脂被覆用フィルムの製造
表2に示す酸成分とグリコール成分を表2に示す比率にて重合したポリエステル樹脂組成物を常法に従い、乾燥、溶融、押し出して、冷却ドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸・熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルム(a2)を得た。
次いで、表1に示す各ポリエステル樹脂、ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、リン酸を、表1に示す比にてトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒中に溶解してコーティング液を作製した。
ここで、ジフェノール酸に由来する繰り返し単位を含有したポリエステル樹脂(イ−1)の合成例を示す。酸成分として、テレフタル酸50質量部、イソフタル酸112質量部、ジフェノール酸、4.9質量部、多価アルコール成分として2−エチル−2−ブチル−1、3−ブタンジオール50質量部、1、4−ブタンジオール99質量部、1、4−シクロヘキサンジメタノール48質量部、チタンテトラブトキシド0.07質量部を2Lフラスコに仕込み、4時間かけて220℃まで徐々に昇温し、水を留出させエステル化を行った。所定量の水を留出させた後、30分かけて10mmHgまで減圧重合を行うとともに温度を250℃まで昇温し、更にこのまま1mmHg以下で50分間後期重合を行った。ついで減圧重合を止めて、窒素気流下で220℃まで冷却し、無水トリメリット酸1.9質量部を添加し、220℃で30分攪拌しカルボキシ基変性(後付加)を行った後、樹脂を取り出し数平均分子量22000、酸価5(mgKOH/g)、ガラス転移温度30℃のポリエステル樹脂(イ−1)を得た。この後、60℃以下まで冷却し、メチルエチルケトン/トルエン=50/50の混合溶液で希釈し、不揮発分40%のポリエステル樹脂(イ−1)溶液を得た。
ポリエステル樹脂(イ−2)については、例えば市販のポリエステル樹脂であるバイロンGK−250(数平均分子量:10000、ガラス転移温度:60℃、東洋紡績製)を用いることができる。メチルエチルケトン/トルエン=50/50の混合溶剤中に、バイロンGK−250を混合させ、不揮発分40%のポリエステル樹脂(イ−2)溶液を得た。
ポリエステル樹脂(イ−3)については、例えば市販のポリエステル樹脂であるバイロンGK−640(数平均分子量:18000、ガラス転移温度:79℃、東洋紡績製)を用いることができる。メチルエチルケトン/トルエン=50/50の混合溶剤中に、バイロンGK−250を混合させ、不揮発分40%のポリエステル樹脂(イ−3)溶液を得た。
また、ポリアミン樹脂としては、市販品のEPICRON EXB−353(DIC(株)製)を用いた。ポリアミドアミン樹脂としては、市販品のSUNMIDE328A(エアープロダクツジャパン製、有効成分100%)を用いた。ポリアミド樹脂としては、市販品のポリマイドL−15−3(三洋化成製)を用いた。
エポキシ樹脂としては、市販のエピクロンN−660(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、50%メチルエチルケトン溶液、DIC(株)製)と、市販のYL6121H(ビフェニル型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)を用いた。
リン酸としては、市販のリン酸(和光純薬工業(株)製)を用いた。
このコーティング液を上記にて得られた二軸配向ポリエステルフィルム(a2)の片側の面に、グラビアロールコーターにより所定の乾燥膜厚となるように塗布・乾燥し、乾燥後の樹脂層(a1)の膜厚を調整した。乾燥温度は、80〜120℃の範囲とした。
缶外面側の樹脂被覆用フィルムの製造
表4に示す酸成分とグリコール成分を表4に示す比率にて重合したポリエステル樹脂組成物とし、この樹脂組成物を常法に従い、乾燥、溶融、押し出して、冷却ドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸・熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルム(a2)を得た。
次いで、表3に示す各ポリエステル樹脂、ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、リン酸および着色剤を、表3に示す比にてトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒中に溶解して溶解してコーティング液を作製した。
ここで、ジフェノール酸に由来する繰り返し単位を含有したポリエステル樹脂(イ−1)の合成例を示す。酸成分として、テレフタル酸50質量部、イソフタル酸112質量部、ジフェノール酸、4.9質量部、多価アルコール成分として2−エチル−2−ブチル−1、3−ブタンジオール50質量部、1、4−ブタンジオール99質量部、1、4−シクロヘキサンジメタノール48質量部、チタンテトラブトキシド0.07質量部を2Lフラスコに仕込み、4時間かけて220℃まで徐々に昇温し、水を留出させエステル化を行った。所定量の水を留出させた後、30分かけて10mmHgまで減圧重合を行うとともに温度を250℃まで昇温し、更にこのまま1mmHg以下で50分間後期重合を行った。ついで減圧重合を止めて、窒素気流下で220℃まで冷却し、無水トリメリット酸1.9質量部を添加し、220℃で30分攪拌しカルボキシ基変性(後付加)を行った後、樹脂を取り出し数平均分子量22000、酸価5(mgKOH/g)、ガラス転移温度30℃のポリエステル樹脂(イ−1)を得た。この後、60℃以下まで冷却し、メチルエチルケトン/トルエン=50/50の混合溶液で希釈し、不揮発分40%のポリエステル樹脂(イ−1)溶液を得た。
ポリエステル樹脂(イ−2)については、例えば市販のポリエステル樹脂であるバイロンGK−250(数平均分子量:10000、ガラス転移温度:60℃、東洋紡績製)を用いることができる。メチルエチルケトン/トルエン=50/50の混合溶剤中に、バイロンGK−360を混合させ、不揮発分40%のポリエステル樹脂(イ−2)溶液を得た。
ポリエステル樹脂(イ−3)については、例えば市販のポリエステル樹脂であるバイロンGK−640(数平均分子量:18000、ガラス転移温度:79℃、東洋紡績製)を用いることができる。メチルエチルケトン/トルエン=50/50の混合溶剤中に、バイロンGK−250を混合させ、不揮発分40%のポリエステル樹脂(イ−3)溶液を得た。
また、ポリアミン樹脂としては、市販品のEPICRON EXB−353(DIC(株)製)を用いた。ポリアミドアミン樹脂としては、市販品のSUNMIDE328A(エアープロダクツジャパン製、有効成分100%)を用いた。ポリアミド樹脂としては、市販品のポリマイドL−15−3(三洋化成製)を用いた。
エポキシ樹脂としては、市販のエピクロンN−660(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、50%メチルエチルケトン溶液、DIC(株)製)と、市販のYL6121H(ビフェニル型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)を用いた。
リン酸としては、市販のリン酸(和光純薬工業(株)製)を用いた。
このコーティング液を上記にて得られた二軸配向ポリエステルフィルム(a2)の片側の面に、グラビアロールコーターにより所定の乾燥膜厚となるように塗布・乾燥し、乾燥後の樹脂層(a1)の膜厚を調整した。乾燥温度は、80〜120℃の範囲とした。
容器用樹脂被覆金属板の製造
図1に示す金属帯のラミネート装置を用い、前記で得たクロムめっき鋼板1を金属帯加熱装置2で加熱し、ラミネートロール3により、クロムめっき鋼板1の一方の面に、缶内面側の樹脂被覆層(A)をラミネート(熱融着)するとともに、他方の面に缶外面側の樹脂被覆層(A)をラミネート(熱融着)した。その後、金属帯冷却装置5にて水冷を行い、ポリエステル樹脂被覆金属板を製造した。上記ラミネートロール3は内部水冷式とし、ラミネート中に冷却水を強制循環し、フィルム接着中の冷却を行った。樹脂フィルムを金属板にラミネートする際に、金属板に接する界面のフィルム温度がフィルムの融点以上になる時間を5〜25msecの範囲内にした。
以上より製造された容器用樹脂被覆金属板(本発明例)の片面側の皮膜断面構造を図2に示す。
容器用樹脂被覆金属板の評価
以上より製造された容器用樹脂被覆金属板の特性について、下記の(1)〜(9)の方法によりそれぞれ測定、評価した。
(1)結晶化熱量および融解熱量
希釈した塩酸により樹脂被膜金属板から缶内面側の樹脂被覆層(A)を剥離し、樹脂被覆層(A)を十分に蒸留水で洗浄して乾燥させた。そして、示差走査熱量測定装置(TA instrument製、DSC−Q100)を用いて、10℃/分の昇温速度で−50℃から290℃まで樹脂被覆層(A)を昇温したときの発熱ピークおよび吸熱ピークを測定した。100〜200℃の間で観測された発熱ピークの面積から結晶化熱量を算出し、200℃〜280℃の間で観測された吸熱ピークの面積から融解熱量を算出した。なお、缶外面側の樹脂被覆層(A)については、着色剤の含有量を除いた重量を樹脂被覆層(A)の樹脂量として、樹脂単位重量当たりの結晶化熱量および融解熱量を算出した。
(2)成形性
樹脂被覆金属板にワックスを塗布後、直径200mmの円板を打ち抜き、絞り比1.70で浅絞り缶を得た。次いで、この絞り缶に対し、絞り比1.50および絞り比1.80で再絞り加工を行った。この後、常法に従いドーミング成形を行った後、トリミングし、次いでネックイン−フランジ加工を施し深絞り缶を成形した。このようにして得た深絞り缶のネックイン部に着目し、フィルムの損傷程度を目視観察した。評価対象は、缶の内外面である。
(評点について)
◎:成形後フィルムに損傷も白化も認められない状態
○:成形後フィルムに損傷が認められないが、部分的に白化が認められる状態
×:缶が破胴し、成形不可能
(3)耐レトルト白化性
上記(2)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶の、底部(缶外面側)を対象とした。缶内に常温の水道水を満たした後、蓋を巻き締めて密閉した。その後、缶底部を下向きにして、蒸気式レトルト殺菌炉の中に配置し、125℃で90分間、レトルト処理を行った。処理後、缶底部外面の外観変化を目視で観察した。
(評点について)
◎:外観変化なし
○:外観にかすかな曇り発生
×:外観が白濁(白化発生)
(4)耐熱水変色性
上記(2)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶の、底部(缶外面側)を対象とした。缶内に常温の水道水を満たした後、蓋を巻き締めて密閉した。その後、缶底部を下向きにして、熱水式レトルト殺菌炉の中に配置し、125℃で90分間、レトルト処理を行った。処理後、缶底部外面の外観変化を目視で観察した。
(評点について)
◎:外観変化なし
○:外観がわずかに変化(変色発生)
×:外観が変化(顕著な変色が発生)
(5)成形後密着性1
上記(2)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/min.でピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。評価対象は、缶外面の缶胴部である。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:5.0(N)/15(mm)以上、10.0(N)/15(mm)未満
×:5.0(N)/15(mm)未満
(6)成形後密着性2
上記(2)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶の内部に水道水を充填した後、蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施し、缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/min.でピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。評価対象は、缶内面の缶胴部である。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:5.0(N)/15(mm)以上、10.0(N)/15(mm)未満
×:5.0(N)/15(mm)未満
(7)傷部耐食性評価1
上記(2)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。図3に示すように、缶外面の缶胴部2箇所に、下地鋼板に達するクロスカット傷を入れた。続いて、クロスカット傷を付与した缶に対し、JISZ2371に準拠した塩水噴霧テストを300時間行い、更に湿潤環境下(温度40℃、相対湿度95%)で200時間経時させた後、傷部からの片側最大腐食幅を測定した。測定方法を図4に示す。
評価対象は、缶外面の缶胴部である。
(評点について)
◎:片側最大腐食幅0.5mm未満
○:片側最大腐食幅0.5mm以上〜1.0mm未満
×:片側最大腐食幅1.0mm以上
(8)傷部耐食性評価2
上記(2)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。図3に示すように、缶内面の缶胴部2箇所に、下地鋼板に達するクロスカット傷を入れた。続いて、缶の内部に、1.5%NaCl+1.5%クエン酸ナトリウム混合液を充填した後、蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施した後、温度38℃の恒温槽内で、50日間経時させた。その後、缶を切り開き、クロスカット傷部からの片側最大腐食幅を測定した。測定方法は、(7)傷部耐食性評価1と同様である。また、評価対象は、缶内面の缶胴部である。
(評点について)
◎:片側最大腐食幅1.0mm未満
○:片側最大腐食幅1.0mm以上〜3.0mm未満
×:片側最大腐食幅3.0mm以上
(9)耐衝撃性評価
上記(2)の成形性評価で、成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶内に水道水を満たし、缶上部に蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施した後、1.25mの高さから塩ビタイルの床面に落下させた。その後、蓋を取り去り、缶内の水道水中に電極を挿入し、缶体との間に6Vの電圧を印加させ、30秒後の電流値を計測した。評価対象は、缶内面の衝撃加工部(缶底部)である。
(評点について)
◎:10缶の平均測定値が、0.01mA未満
○:10缶の平均測定値が、0.01〜0.1mA未満
×:10缶の平均測定値が、0.1mA以上
以上により得られた結果を表5及び表6に示す。
表5及び表6より、本発明例は、容器用素材に要求される成形性、耐レトルト白化性、耐熱水変色性、成形後密着性、傷部耐食性、耐衝撃性について、良好な性能を有することがわかる。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、いずれかの特性が劣っている。
容器用素材として、食品缶詰、飲料缶、エアゾール缶の缶胴および蓋等を中心に、世界のあらゆる市場で使用可能である。
1 金属板(クロムめっき鋼板)
2 金属帯加熱装置
3 ラミネートロール
4a、4b フィルム
5 金属帯冷却装置

Claims (5)

  1. 金属板の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂を主成分とする複層構造の樹脂被覆層(A)を有し、該樹脂被覆層(A)は、前記金属板面と密着し、ポリエステル樹脂を主成分とし下記(イ)〜(ニ)の成分を含有する樹脂層(a1)と、該樹脂層(a1)の上層に形成されるポリエステルフィルム(a2)を有し、前記樹脂被覆層(A)の結晶化熱量と融解熱量との差が、単位質量当りに換算して0J/g超〜15J/g以下であり、缶内面の衝撃加工部(缶底部)の10缶の平均測定値が0.1mA未満であり、前記樹脂層(a1)を形成する成分(ニ)の比率が、5mass%超〜10mass%を満足することを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
    (イ)ポリエステル樹脂
    (ロ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上
    (ハ)エポキシ樹脂
    (ニ)リン酸
    なお、缶内面の衝撃加工部(缶底部)の10缶の平均測定値とは、缶内に水道水を満たし、缶上部に蓋を巻き締めて密閉した後、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施した後、1.25mの高さから塩ビタイルの床面に落下させた後、蓋を取り去り、缶内の水道水中に電極を挿入し、缶体との間に6Vの電圧を印加させ、30秒後の電流値を計測した結果である。
  2. 前記(イ)ポリエステル樹脂は、数平均分子量が3000〜100000であり、ガラス転移温度が0℃以上100℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の容器用樹脂被覆金属板。
  3. 前記(イ)ポリエステル樹脂が、下記を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の容器用樹脂被覆金属板。
    ガラス転移温度が0℃以上35℃未満のポリエステル樹脂:30〜80mass%
    ガラス転移温度が35℃以上65℃未満のポリエステル樹脂:10〜35mass%
    ガラス転移温度が65℃以上100℃未満のポリエステル樹脂:10〜35mass%
  4. 前記樹脂層(a1)を形成する成分(イ)〜()の比率が、下記を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の容器用樹脂被覆金属板。
    (イ)ポリエステル樹脂:50〜90mass%
    (ロ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上:0.5〜30mass%
    (ハ)エポキシ樹脂:0.5〜20mass
  5. 前記ポリエステルフィルム(a2)が、ポリエステル樹脂の構成単位の95mass%以上がエチレンテレフタレート単位である二軸延伸ポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の容器用樹脂被覆金属板。
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