JP2020192787A - 積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、金属および樹脂に対して優れた接着力を発現でき、しかも、車両の外装部品に求められる外観として優れた鮮映性を発現することができる、積層フィルムを提供することである。【解決手段】結晶性ポリエステルを主体とした厚み方向の屈折率が1.500未満のB層と、固有粘度が0.60以上であるポリエステルを主体とした厚みが5μm以上であるA層からなる積層フィルムであって、前記A層およびB層のポリエステルの融点が下記(1)式を満足する積層フィルム。(TmB−TmA)≧20℃ ・・・(1)(ただし、TmAはA層のポリエステルの融点を示し、TmBはB層のポリエステルの融点を示す。)【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば自動車等の車両の外板などの金属または樹脂部品を塗装する代わりに塗装代替フィルムで被覆する製造方法に好適に用いることができる、金属および樹脂と良好な密着性、自動車等の外板等に求められる優れた外観意匠を示す積層フィルムに関する。
従来、車両の外装部品等(例えば、フェンダ、バンパ、ボンネット、ホイールキャップ等の樹脂成形品)の意匠性を向上させるために、スプレー塗装を用いることが一般的に行われていた。しかし、近年、このようなスプレー塗装を含む塗装工程においては、塗装と乾燥を繰り返して行うために大きな設備とスペースを要し、生産性が低下するため、塗装工程を合理化すること等を目的として、前記外装部品に加飾フィルム(以下、塗装代替フィルムという)を貼合して、製品の外観を向上させる方法が検討されている。
この種の従来技術による塗装代替フィルムは、例えば図3に示すように、クリア層4、着色層31および接着層5を順次積層して構成されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
ここで、クリア層4は、例えばポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン系樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニルデン)又はこれらの混合物による透明性の高い樹脂材料を用いて形成され、着色層31の保護、艶出し等の機能を有する。また、着色層31は、前記クリア層4とほぼ同様の樹脂材料中にメタリック顔料を配合して形成され、これにより着色層31は、スプレー塗装に近いメタリック色の外観を与えている。さらに、接着層5は、塗装代替フィルムを自動車の外装部品等の表面に化学的結合により接着するものである。
そして、この塗装代替フィルムを前記外装部品等に接着するときには、予め塗装代替フィルムを赤外線ランプ照射等により加温した後、この塗装代替フィルムをインモールド成形、真空成形等により外装部品の表面形状に合わせて成形し、接着層5によって外装部品の表面に貼合する。ここで、塗装代替フィルムを貼合する際に、この塗装代替フィルムは、図3に示す層構造を保ったままの状態で、金型や外装部品の輪郭に合わせて延伸され、外装部品に貼合される。しかし、自動車等の外装部品のような複雑な形状に貼合する際には、曲面部分等で塗装代替フィルム1が部分的に大きく延伸され、そのように延伸による歪を受けた状態を接着剤で固定されるため、以下のような問題が生じる。
すなわち、塗装代替フィルムを外装部品等に貼合する際に、塗装フィルムを延伸しながら接着剤を介して貼合せると、基材と塗装代替フィルムとの接合力に局所的に強い部分と弱い部分が発生する。この問題への対処としては、貼合せしめる基材との化学的接着性に優れた接着剤を選定することが有効であるが、車両の外装部品には樹脂からなる部材(樹脂部材)もあれば、金属からなる部材(金属部材)もあり、どのような部材にも優れた接着力を発現する接着剤の選定は実質的に不可能である。
一方、金属箔や金属板に対して物理的に接着させるフィルムとして、ヒートシール性フィルムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。ここで提案されているヒートシール性フィルムは、フレキシブル印刷回路基板等に用いられる、銅等の金属貼り合わせプラスチックフィルム基板において、プラスチックフィルムと金属箔とを接着剤を用いることなく接着するフィルムである。具体的には、厚み方向の屈折率が「1.500以上」という面方向の配向が少ないポリエステル基材層と、これに接する数平均分子量15000以上のポリマーからなる厚み4〜40μmのヒートシール層を用いることにより、基材層内での層間剥離を抑制し接着力の低下を低減させたというものである。
しかしながら、塗装代替フィルムとして本技術を適用したところ、車両の外装部品では特に厳しく評価される外観について良好な鮮映性が得られないということ、さらには貼り合わせ対象部材である金属または樹脂と塗装代替フィルム間の密着が十分でなないことが発明者らの検討により初めて明らかになった。
特開昭63−123469号公報 特開平9−183136号公報 特開2006−1114号公報
本発明の課題は、金属および樹脂に対して優れた接着力を発現でき、しかも、車両の外装部品に求められる外観として優れた鮮映性を発現することができる、積層フィルムを提供することである。
本発明者は上記課題を達成するために、塗装代替フィルムの貼合せを接着剤に頼らずにできないか研究した結果、特定の積層フィルムの構成を適用することで、金属および樹脂との接着力を確保しつつ、優れた外観を示すことを見出した。
かくして本発明によれば、下記(1)〜(14)が提供される。
(1)結晶性ポリエステルを主体とした厚み方向の屈折率が1.500未満のB層と、固有粘度が0.60以上であるポリエステルを主体とした厚みが5μm以上であるA層からなる積層フィルムであって、前記A層およびB層のポリエステルの融点が下記(1)式を満足する積層フィルム。
(TmB−TmA)≧20℃ ・・・(1)
(ただし、TmAはA層のポリエステルの融点を示し、TmBはB層のポリエステルの融点を示す。)
(2)前記B層のMD方向の屈折率とTD方向の屈折率の差の絶対値が0.00〜0.06である上記1に記載の積層フィルム。
(3)前記B層に用いる結晶性ポリエステルの固有粘度が0.60以上である上記1または2に記載の積層フィルム。
(4)前記A層が結晶性ポリエステルを主体とした層である上記1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
(5)前記A層と前記B層の厚み比(XB/XA:但し、XAは前記A層の厚みの合計、XBは前記B層の厚みの合計)が1.5以上である上記1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
(6)上記1〜5のいずれかに記載の積層フィルムのB層側の表面に官能基を有する易接着層(C層)と、表面保護層および着色層からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能層(D層)がこの順で積層された機能層付積層フィルム。
(7)前記C層の厚みが10nm〜200nmである上記6に記載の機能層付積層フィルム。
(8)前記着色層は着色剤を組成物の重量を基準として0.5重量%以上40重量%未満含有している上記6または7に記載の機能層付積層フィルム。
(9)前記表面保護層は熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の樹脂から主としてなる、上記6〜8のいずれかに記載の機能層付積層フィルム。
(10)上記6〜9のいずれかに記載の機能層付積層フィルムのC層側の表面に、着色層と表面保護層がこの順番で積層された塗装代替フィルム。
(11)上記1〜10に記載の積層フィルム、機能層付積層フィルムおよび塗装代替フィルムのA層側に金属または樹脂を積層したフィルム被覆積層体。
(12)上記11に記載のフィルム被覆積層体を用いてなる部材。
(13)金属部材の製造方法であって、上記1〜10に記載の積層フィルム、機能層付積層フィルムおよび塗装代替フィルムと、金属板とを用い、下記(2)式を満足する温度Tで加熱された金属板を、積層フィルムのA層側に熱圧着させてフィルム被覆金属積層体を得る製造方法。
TmA≦T≦TmB ・・・(2)
(ただし、TmAはA層のポリエステルの融点を示し、TmBはB層のポリエステルの融点を示す。)
(14)上記13に記載のフィルム被覆金属積層体をさらに冷間プレス成形する工程を含む金属部材の製造方法。
本発明の積層フィルムによれば、種々の金属および樹脂に対して優れた接着力を発現でき、しかも、車両の外装部品に求められる優れた外観意匠を発現することができ、金属および樹脂部材の製造における塗装工程の省略という価値を供試することができる。
本発明の塗装代替フィルムの実施形態例 本発明の塗装代替フィルムの実施形態例 従来技術の塗装代替フィルムの実施形態例
本発明はA層およびB層からなる2層積層フィルムを指し、好ましい形態として前記B層側表面に易接着層を介して表面保護層および着色層からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能層を積層した機能層付積層フィルム、前記B層側表面に易接着層を介して着色層と表面保護層がこの順で積層された塗装代替フィルム、前記A層と金属または樹脂を積層したフィルム被覆積層体、フィルム被覆積層体を用いてなる部材、前記A層と金属とを熱圧着によりラミネートする製造方法と、そのようにして得られたフィルム被覆金属板と、フィルム被覆金属板を冷間プレスにより成形した金属部材を指す。
以下、本発明を詳しく説明する。
(積層フィルム)
本発明における積層フィルムは、結晶性ポリエステルを主体とした厚み方向の屈折率が1.500未満のB層と、固有粘度が0.60以上であるポリエステルを主体とした厚みが5μm以上であるA層からなる積層フィルムであって、前記A層およびB層のポリエステルの融点が下記(1)式を満足する積層フィルムである。
(TmB−TmA)≧20℃ ・・・(1)
(ただし、TmAはA層のポリエステルの融点を示し、TmBはB層のポリエステルの融点を示す。)ここで、前記A層は、金属または樹脂との熱圧着によりフィルム被覆積層体を作成する際の接着層として機能するだけでなく、金属または樹脂との物理的接着で発生した応力を緩和させる機能を有する。一方、前記B層は、積層フィルムを作成するための複数の工程を経る上での基材として機能すると共に、前記A層が緩和させた金属または樹脂との物理的接着で発生した応力を前記B層のフィルム面内の配向により均一に面方向に分散させる機能を有する。前記A層およびB層がこのような機能を有することで、種々の金属および樹脂に対して優れた接着力を発現でき、しかも、車両の外装部品に求められる優れた外観意匠を発現することができる。以下、各層について詳しく説明する。
(A層およびB層)
本発明におけるA層およびB層はポリエステルを主体とする。ここで「主体」とは、フィルム全体の重量を基準としてポリエステルが、好ましくは、60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、よりさらに好ましくは90重量%以上であることを示す。
A層およびB層を構成するポリエステルには、ホモポリエステルまたは共重合ポリエステルを用いることができる。ホモポリエステルとしては融点が250℃を超え260℃以下のポリエステルを好ましく挙げることができ、特に好ましくはホモのポリエチレンテレフタレートが挙げられる。なお、ここでホモのポリエチレンテレフタレートとは、不可避的に含有されるジエチレングリコール成分を含有することを除外するものではない。共重合ポリエステルとしては、融点が160〜250℃の共重合ポリエステルを挙げることができ、より好ましくは融点が180〜250℃の共重合ポリエステルである。共重合ポリエステルは、エチレンテレフタレートユニットを主体とするものが好ましい。ここで、「主体」とは、共重合ポリエステルにおいて、エチレンテレフタレートユニットが、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上であることを示す。
かかる共重合ポリエステルの共重合成分は、酸成分でもアルコール成分でも良い。酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の如き主たる酸成分以外の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸等を挙げることができ、アルコール成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール等が挙げられ、ジエチレングリコール等ポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。また、1,6−ヘキサンジオールの如き脂肪族ジオール、1,4−ヘキサメチレンジメタノールの如き脂環族ジオール等を挙げることができる。これらは単独または2種以上を使用することができる。これらの中、イソフタル酸、セバシン酸が好ましく、特にイソフタル酸が好ましい。
B層を構成するポリエステルは結晶性ポリエステルである必要がある。結晶性が低すぎるポリエステルを用いると、製膜工程でポリエステルシートをクリップで把持し、延伸する際に、クリップへの粘着が発生しやすくなる。また、後工程である機能層積層時の工程ハンドリングも難しくなる。ここでいう結晶性ポリエステルとは、TA Instruments Q100 DSCを用い、B層から削り取ったポリエステル組成物10mgを20℃/minの速度で290℃まで昇温した後、3分間等温保持し、200℃/minの速度で急冷し、再度10℃/minの速度で290℃まで昇温した際に、ガラス転移点に対応するベースラインシフトと、そのベースラインシフトよりも高温側に結晶融解に伴う0.05J/g以上の吸熱ピークが観測されることを指す。
A層を構成するポリエステルは結晶性ポリエステルであることが好ましい。結晶性が低すぎるポリエステルを用いると、A層同様に製膜工程でのクリップ粘着が懸念され、生産性が低下する。
本発明におけるポリエステルフィルムは、熱融着によるラミネートの際に金属または樹脂との溶融濡れを十分に確保しつつも、非ラミネート面は良好な平滑性を保ち、良好な外観を維持するために、B層の融点TmBはA層の融点TmAよりも高いことが必要であり、その融点差(TmB−TmA)は20℃以上であることが必要である。(TmB−TmA)のより好ましい融点差は25℃以上であり、さらに好ましくは30℃以上であり、最も好ましくは35℃以上である。融点差が下限以上では、ラミネート時の温度が高い場合でもB層側の溶融が始まることがなく、外観が良好となり、ラミネート時の温度が低い場合でも、金属または樹脂との十分な溶融濡れが確保でき、フィルム−金属または樹脂間の優れた密着性が得られ、外観と密着性の両立が達成できるため好ましい。
また、(TmB−TmA)のより好ましい融点差は70℃以下であり、さらに好ましくは60℃以下であり、最も好ましくは50℃以下である。融点差が上限以下では、フィルム製膜時のハンドリング性が良好であるため好ましい。
A層に用いるポリエステルの固有粘度は0.60以上である必要がある。さらに、A層およびB層に用いるポリエステルの固有粘度は0.60以上、0.95未満であることが好ましく、より好ましくは0.65以上、0.85未満である。固有粘度が下限以上では、金属または樹脂との物理的接着で発生した応力を緩和させる機能を有し、種々の金属および樹脂に対して優れた接着力を発現でき、しかも、車両の外装部品に求められる優れた外観意匠を発現することができるため好ましい。また、ポリエステル層の凝集力が強まり、ポリエステルフィルムをラミネートした鋼板を成形加工する際にポリエステル層の凝集破壊によるフィルムの剥がれが発生しづらく、成形加工性の観点からも好ましい。一方、上限以下では、成形貼合せ時に生じる残留応力に起因する経時の密着性低下が起こりづらく好ましい。
ここで、各層のポリエステルの固有粘度(IV)は、塗装代替フィルムから各層のポリエステルを削り出し、それぞれo−クロロフェノールに溶解後、35℃の雰囲気下で固有粘度とした。
次に積層フィルムの厚みは、必要に応じて適宜変更できるが全体の厚みで15〜200μmの範囲が好適であり、なかでも20〜150μm、特に30〜100μmの範囲が好ましい。厚みが下限未満では製膜、機能層積層、ラミネート工程でのハンドリング性が低下する。一方上限を超えるものは成形加工時の荷重が大きくなり好ましくない。
さらにA層の厚みは5μm以上である必要があり、より好ましくは8μm以上である。A層が5μm未満の場合は鋼板とのラミネートの際に溶融濡れが十分に確保されず、フィルム−金属板間の密着性が低下して好ましくない。
さらにA層とB層の厚み比(X/X:但し、XはA層の厚みの合計、XはB層の厚みの合計)は、フィルム−金属板間の密着性向上と優れた外観維持のバランスの観点から、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上である。
なお、A層およびB層には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、必要に応じて他の添加物、例えば着色顔料、蛍光増白剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を添加することができる。ポリエステルフィルムを金属の隠蔽層として用いる場合には、着色顔料の添加が好ましく、無機、有機系のいずれであってもよいが、無機系の方が好ましい。無機系顔料としては、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が好ましく例示され、なかでも二酸化チタンがより好ましい。該着色顔料の含有量は、B層の重量を基準として2重量%を超え50重量%以下が好ましく、より好ましい含有量は5〜40重量%、さらに好ましくは10〜35重量%の範囲である。特に白度を向上させる場合には、蛍光増白剤が有効である。また、製膜工程や成形工程におけるハンドリング性を向上させるため、不活性粒子を添加してもよい。含有させる不活性粒子としてはポリマー中で安定的に存在できるものであれば特に制限されず、それ自体公知のものを採用でき、例えばポリスチレン、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、およびジビニルベンゼンから選ばれた、各単量体の重合体、あるいは共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ベンゾグアナミン、シリコン等の有機質、シリカ、カオリン、タルク、グラファイト等の無機質のいずれかを用いるのが好ましい。これらの不活性粒子の好ましい粒径は0.1〜10μmであり、好ましい含有量は0.002〜0.5重量%の範囲である。
本発明におけるB層の厚み方向の屈折率は1.500未満であり、1.498以下であることが好ましく、1.496以下であることがさらに好ましい。B層の厚み方向の屈折率が上限以下であることで、前記A層が緩和させた金属または樹脂との物理的接着で発生した応力を前記B層のフィルム面内の配向により均一に面方向に分散させる機能が発現し、車両の外装部品に求められる優れた外観意匠を発現することができる。
また、前記B層のMD方向の屈折率とTD方向の屈折率の差は0.00〜0.06であることが好ましく、0.00〜0.05であることがより好ましい。該範囲では、前述の均一に面方向に分散させる機能がより発揮され優れた鮮映性が得られるため好ましい。
一方、本発明におけるA層の配向状態は特に限定されず、本発明の目的を達成されうる範囲で一軸方向、または二軸方向に配向していてもよいし、無配向状態でもよい。フィルムの均一製膜性、生産性、およびフィルム被覆金属積層体を成形する際の均一成形性の観点からは二軸方向に配向していることが好ましい。
本発明におけるA層およびB層の製造方法は特に限定されず、従来公知の製膜方法を適用できる。一例として、二軸配向した積層フィルムを製造する場合は、先ず未延伸積層シートを作成し、次いで二方向に延伸すればよい。
例えば、A層用にポリエステルに不活性粒子を添加したポリエステル組成物を調整し、十分に乾燥させた後、融点〜(融点+50)℃の温度で押出機内で溶融する。なお、ここで融点は用いたポリエステルの融点である。同時にB層用に結晶性ポリエステルに不活性粒子を添加したポリエステル組成物を調整し、十分に乾燥させた後、他の押出機に供給し、融点〜(融点+50)℃の温度で溶融する。続いて、両方の溶融樹脂をダイ内部で積層する方法、例えばマルチマニホールドダイを用いた同時積層押出法により、積層された未延伸積層シートが製造される。かかる同時積層押出法によると、一つの層を形成する樹脂の溶融物と別の層を形成する樹脂の溶融物はダイ内部で積層され、積層形態を維持した状態でダイよりシート状に成形される。
次いで該未延伸積層シートを逐次または同時二軸延伸し、熱固定する方法で製造することができる。逐次二軸延伸により製膜する場合、未延伸積層シートをロール加熱、赤外線加熱等で加熱して先ず縦方向に延伸し、次いでステンターにて横延伸する。この時、延伸温度は、好ましくはポリエステル(好ましくはB層のポリエステル)のガラス転移点(Tg)より20〜50℃高い温度が好ましく、縦延伸倍率は、好ましくは2.0〜5.0倍、より好ましくは2.2〜4.0倍、さらに好ましくは2.5〜3.6倍とし、横延伸倍率は、好ましくは2.5〜5.0倍、より好ましくは2.6〜4.0倍、さらに好ましくは2.8〜3.8倍の範囲である。熱固定の温度は、好ましくは150〜240℃、より好ましくは150〜230℃の範囲でポリエステルの融点に応じて、フィルム品質を調整するべく選択する。
(易接着層(C層))
本発明の積層フィルムのB層表面には易接着層C(C層)が積層されている形態が好ましい。該C層は積層フィルムと後述する機能層との密着性を良好にする機能を有する。また、該C層は、官能基を有することが優れる鮮映性を得る観点で好ましい。その原因は明らかではないが、官能基を有することで層間密着性が向上し、前記A層の応力緩和層としての効果と前記B層の緩和された応力の伝達を均一に面方向に分散させる効果が易接着層を介して機能層にも伝わりやすくなるためと推測される。
前記官能基としては、エポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の官能基が好ましい官能基として挙げられる。これらの中でも、B層との優れた密着性および鮮映性が得られる観点で、エポキシ基もしくはオキサゾリン基を含有することが好ましい。また、本発明における易接着層Cは、その厚さが10〜200nmの範囲であることが好ましく、好ましい厚さの下限は、密着性の観点から15nm、さらに20nm、特に40nmである。他方好ましい厚さの上限は、塗工の厚み斑低減および密着性の観点から、180nm、さらに150nm、特に120nmである。
本発明における易接着層Cは、前述の通り、少なくともエポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の官能基を含有していることが好ましく、易接着層を形成する樹脂自体は、積層フィルムや機能層との密着性に優れるものであれば、それ自体公知のものを採用でき、接着力の調整のため、各樹脂に共重合を施したり、互いに異なる樹脂をブレンドして接着力を向上させたりすることは好適に利用でき、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。本発明における冷間プレスによる成形は、好ましくは成形温度が150℃程度に至ることから、この温度よりもガラス転移温度が低い状態に設計されていることが好ましく、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましく用いることができる。
易接着層Cは積層フィルムのフィルム製膜中にコーティングを行うインラインコーティングによって付与されても良いし、積層フィルムを製膜後一旦ロール状に巻きとり、その後、再度繰り出しを行ってオフラインコーティングを行っても良い。
こうして得られた易接着層Cは、後述の機能層を積層する際に、官能基間の結合形成、層間界面エネルギーの低減、層間の界面混合の効果によって、積層フィルムと機能層間の密着性向上に寄与する。
(機能層)
本発明の積層フィルムのB層表面には易接着層C(C層)を介して表面保護層および着色層からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能層を有している形態が好ましい。また、本発明の積層フィルムのB層表面に、易接着層C(C層)、着色層、表面保護層がこの順番に積層されている形態がより好ましい。各層がこの順番に積層されることで、積層フィルムと機能層との密着が良好となり、さらに、優れた外観意匠を発現することができるため好ましい。
着色層は、バインダー樹脂および顔料、染料からなる群より選ばれる少なくとも1種類の着色剤を含有することが好ましく、該着色剤は着色層に用いる組成物の重量を基準として0.5重量%以上、40重量%未満含有していることが意匠性の観点から好ましい。さらに好ましい範囲としては2重量%以上、30重量%未満であり、特に好ましい範囲としては5重量%以上、25重量%未満である。バインダー樹脂を使用しない場合、成形時の伸度によって容易に着色層にクラックが生じてしまう結果、美観が損なわれる。また顔料もしくは染料を用いることで、美麗に優れた外観が形成できる。使用される顔料もしくは染料には、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、アルミニウム、真鍮、二酸化チタン、真珠光沢顔料からなる群より選ばれる1種であることが好ましい。調色のために、その他顔料や、添加剤を使用することは、本発明を損なわない限り、好ましい態様である。
着色層の形成方法は特に制限されないが、コーティングによって積層する方法が簡便で好ましい。着色層とB層との密着性は、B層および易接着層Cの種類や、着色層に使用するバインダー樹脂によって、適宜調整できる。
着色層は車両の外装に使用される上で、美麗な意匠を発現させるために、複層化することも良く、例えば、図2のように、顔料から成る着色層の上に、バインダー樹脂に光輝材顔料を含有した着色層を光輝材層33として設けることで2層着色層とすることも好ましく、また視認側からの反射特性を考慮して、着色層の最も積層フィルム1に近い側にアルミニウム顔料からなる着色反射層、有色顔料層、クリア塗膜の光輝材顔料層33という3層着色層とすることも好ましい。必要とする意匠性を付与する上で、着色層を単層として、もしくは複層として使用することは、本発明の目的をなんら否定するものではない。同様に、表面保護層を必要に応じて、複層化することも特に本発明を損なうものではない。
表面保護層に用いる樹脂は、塗装代替フィルム製造から金属部材成形までの製造プロセスへの適合性から熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の樹脂から主としてなることが好ましい。特に、耐候性、耐傷つき性、透明性の観点から、アクリル系樹脂が使用されることが好ましい。
本発明における表面保護層の厚みは、乾燥後の膜厚で5〜80μmになるようにすることが好ましい。表面保護層の厚みが上記下限以上であることで、樹脂材料が少なく経済性には優れているが、内側の着色層や積層フィルム、また、部材となった後の傷や薬品に対する保護性能を高度に維持することができない。一方で、上記厚みが上限以下であることで、ハードコート塗膜としての光沢の発現や保護性能という点で優れているものの、樹脂を必要以上使用することで経済性に優れない。好ましい表面保護層の厚みは、下限が10μm、より好ましくは15μmで、他方上限は60μmであり、より好ましくは50μmである。
さらに、本発明における表面保護層は、単層で構成しても良いし、複層で構成しても良い。例えば、2度同じ樹脂を複層でコーティングする際に、乾燥条件を異なるようにすることで硬化度合を調整することができ、表面保護層のさらに外側に防汚層といった機能層を設ける際の密着性向上が図れる。また、上述の範囲内で複層化することで光沢のある表面を発現させることもできる。
本発明における表面保護層は、積層フィルムに塗工によって積層させることが好ましく挙げられ、その手法は、公知のコーティング手法で良いが、半硬化状態でロール状に巻きとることが好ましい。ハードコート塗料を乾燥させる際に、1次反応が熱により進行し、ハードコートが半硬化状態で塗膜となることで巻き取ることが可能となる。半硬化状態の表面保護層は、その後2次反応、すなわち前述の乾燥温度より高い温度で反応が進行するように設計することで、金属板へのラミネートや、部材を成形する際の熱によって半硬化から硬化に効果の度合いを進行させることができる。
(その他の積層)
本発明における塗装代替フィルムは、機能層の表面に必要に応じて更なる積層を施してもよい。屋外使用時の汚れを防ぐ防汚層、製造工程のハンドリング性を向上させるための保護フィルムのラミネート等が例示される。特に表面保護層を半硬化状態で積層する際には、後工程のハンドリング性向上のため保護フィルムをラミネートすることが好ましい。保護フィルムは任意のタイミングで剥がしてよいが、金属板との熱圧着ラミネート、およびフィルム被覆金属積層体の冷間プレス成形を経たのちに剥がすのが防傷性の観点から好ましい。保護フィルムの種類としてはポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、共重合ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂およびこれらの混合物からなるフィルムが例示されるが、成形性の観点からはポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、共重合ポリエステル樹脂が好ましい。フィルムの厚みは特に限定されないが、保護機能を十分発揮するためには15〜150μmの厚みのものが好ましい。
(フィルム被膜樹脂積層体)
本発明におけるフィルム被覆樹脂積層体は、通常、前記積層フィルムを金型にセットして樹脂を射出するインサート成形によって製造される。
(フィルム被覆金属積層体)
本発明におけるフィルム被覆金属積層体は、金属板と前記積層フィルムのA層側とを熱圧着により積層したものであり、特段ラミネートのための接着剤は使用しない。金属板は通常ロール状に巻きとられており、塗装代替フィルムもロール状で製品とすることができるため、それらを用いればロールtоロールでのラミネートが可能である。
フィルム被覆金属積層体の好ましい製造方法としては、例えば、金属板を加熱して、供給した塗装代替フィルムのA層側をニップロールによって圧着することで、金属板にフィルムを貼り合わせすればよい。その際、熱圧着される時の金属板の温度Tを、積層フィルムA層の融点TmA以上、積層フィルムB層の融点TmB以内とすることで、金属板とA層間の溶融濡れを確保しつつ、B層の溶融を抑えることができるため、優れた金属板との接着力および外観意匠を得ることができる。熱圧着された塗装代替フィルムは金属板からの熱により一部が溶融状態となるが、これが冷却される過程で固化し、再結晶化することでその後の成形加工性が低下する。これを防ぐために、熱圧着後のフィルム被覆金属積層体は急冷されることが好ましい。急冷の方法は特に限定されないが、冷水槽に浸ける方法や冷水を吹き付ける方法など公知の方法が利用できる。熱圧着から急冷までの時間は極力短い方が良く、好ましくは5秒以内、さらに好ましくは3秒以内、特に好ましくは1秒以内である。
熱圧着に用いられる金属鈑は、金属部材の使用目的に沿って公知のものの中から適宜選定することができ、鋼板、亜鉛めっき鋼板、ティンフリースチール(クロムめっき鋼板)、ブリキ、アルミ板、ステンレス板等が例示されるが、これらに限定されない。一般に、成形性が良く、厚みが0.3〜1.0mm程度の金属板が使用されるため、そうしたグレードを使用することが好ましい。例えば車両の外装に用いられる金属板であれば、防錆状の処理として亜鉛合金めっきを施された厚み0.4〜0.8mmの鋼板や、厚み0.6〜1.2mmのアルミ板等が好ましい態様である。
(金属部材)
上記の熱圧着によって金属板と塗装代替フィルムが一体化されたフィルム被覆金属積層体は、その使用目的に応じた形状へプレス成形される。プレス成形の方法としては、冷間プレスが好ましい。上述のフィルム被覆金属積層体で冷間プレス成形を行う際、金属板の端部を高圧でホールドする張り出し成形であっても、低圧でホールドし、金属板が成形によって吸い込まれていく成形(しぼり成形)であっても、上述のようにあらかじめ金属板表面へ熱圧着しておくことで、金属部材表面への塗装代替フィルムの被覆が可能となる。
上述の内容を下記に示す実施例、比較例を用いて、より詳細に説明する。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定する。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を意味する。
(厚み方向の屈折率)
アタゴ製 アッベ屈折率計(D線589nm、測定範囲1.3〜1.7)で測定した。サンプルは幅2cm長さ3cmに切って、測定は2回行い、平均値を結果とした。
(融点)
積層フィルム各層の融点測定はTA Instruments Q100 DSCを用い、昇温速度20℃/分で融解ピークを求める方法により行う。なおサンプルはフィルム各層から削り取ったポリエステル組成物を10mg用いる。
ここで、融点ピークは、ガラス転移点に対応するベースラインシフトよりも高温側に結晶融解に伴う0.05J/g以上の吸熱ピークとした。
(固有粘度)
塗装代替フィルムから各層のポリエステルを削り出し、それぞれo−クロロフェノールに溶解後、35℃の雰囲気下で固有粘度とした。
(塗装代替フィルム各層の厚み)
サンプルを長手方向2mm、幅方向2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(Reichert−Jung製 Supercut)で幅方向に垂直に切断、50μm厚の薄膜切片にする。走査型電子顕微鏡(日立4300SE/N)を用いて、加速電圧20kVにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定し、5点の平均厚みを求めた。
(易接着層内粒子の平均粒径)
上記で得られた超薄切片を表面からSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、50個の粒子の直径を測定して、数平均化した粒径を平均粒径として求めた。
(易接層におけるエポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、イソシアネート基の有無)
上記で得られた超薄切片に対して、H−NMRを用いて上記官能基の存在を確認した。
(フィルム−金属板間密着性)
塗装代替フィルムのA層側と金属板を熱圧着する際に、耐熱紙を挟み込み剥離端を作成する。得られた剥離端付きフィルム被覆金属積層体を、幅20mm、長さ150mmの大きさに裁断し、テンシロンを用いて片方のチャックは金属板を、もう片方のチャックはフィルム剥離端を把持し、180°方向に3回引張試験した際の最大荷重の平均値とした。チャック間距離は50mm、引張速度は50mm/minとする。
(フィルム−着色層間密着性)
塗装代替フィルムの機能層側から、B層まで届くようにして碁盤目状に傷を入れて、その表面にニチバン31Bテープを貼り合せ、フィルム面に対して垂直方向に急速にテープを剥離する操作により100マスの剥離試験を行う。得られた結果を顕微鏡観察し、剥離点の数に応じて、下記で◎、○、△、×の評価を行う。
○:剥がれや塗膜割れが1/100以下しか見られず、良好である
△:碁盤目で2/100〜10/100の剥離点もしくは塗膜割れが観察される
×:碁盤目で11/100以上の剥離点もしくは塗膜割れが観察される
(鮮映性)
フィルム被覆金属積層体を、高さ2.5mの位置にある蛍光灯の真下から50cmずらした位置に、機能層側が上にくるように置く。次いで蛍光灯の像が反射して見える位置から、金属板上に映し出された蛍光灯の像を目視観察し、下記の基準で判定する。
〇:蛍光灯の像にゆがみがほぼ無い
△:蛍光灯の像が一部ゆがむ
×:蛍光灯の像が全体的にゆがむ
(塗液)
易接着層Cをコーティングするための塗液としては次に示す成分を用いた。組成の種類および割合は表1および表2に記載した。塗料の配合比は、バインダー樹脂水系塗料、架橋剤水系塗料、フィラー水分散塗料を主として、界面活性剤を加えて固形分中の合計が100%となる比率で、塗液の固形分濃度が3%となるように撹拌分散させ、水溶系塗液を得た。各水溶系塗液は、ボンプにより供給し、塗料が循環するように構築した経路に塗液フィルターを通過させて異物を除去した後に、塗液パンに溜め、リバース式のロールコーティングによってフィルムに塗工することで、塗膜を形成させた。
(易接着層Cのバインダー樹脂)
易接着層Cに使用するバインダー樹脂は、アクリル樹脂としては、メチルメタクリレート40モル%/エチルアクリレート45モル%/アクリロニトリル10モル%/N−メチロールアクリルアミド5モル%の共重合成分で構成されるアクリル樹脂を用いた。ポリエステル樹脂としては、以下の共重合成分で構成されるポリエステル樹脂1、ポリエステル樹脂2をブレンドして用いた。具体的には、カルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分として、エチレングリコール60モル%を含むポリエステル樹脂1と、カルボン酸成分として、ナフタレンジカルボン酸65モル%とイソフタル酸35モル%、グリコール成分としてエチレングリコールを60モル%含むポリエステル樹脂2を、バインダー樹脂比率で1:1になるようにブレンドしたバインダー樹脂を用いた。シロキサン系樹脂としては、B層との接着を確保するため、ケイ素はグリシジル基を有する官能基で変性処理を行ったグリシドキシプロピルトリメトキシシランからなるシランカップリング剤を用いた。ウレタン系樹脂としては、楠本化成株式会社製の商品名:NeoRezR986の水溶性ウレタン樹脂を用いた。
(易接着層Cの架橋剤)
易接着層Cに使用する架橋剤は、エポキシ系の架橋剤としては、2官能性のナガセ化成工業株式会社製の商品名「デナコールEX−313」と、4官能性の三菱ガス化学株式会社製の商品名「TETRAD−X」を混合して用いた。フィルムに塗工した塗膜の造膜性および成形後の密着性をもとに、塗膜硬化速度を速くする場合は2官能性の架橋剤比率を多くし、硬化速度を遅くする場合は4官能性の架橋剤比率を少なくすることが好ましい。オキサゾリン系の架橋剤としては、株式会社日本触媒製の商品名「エポクロスWS−700」を用いた。シラノールおよびイソシアネートの架橋に関しては、上述のバインダー樹脂に含有される反応点を利用した架橋形態を有する。
(易接着層Cのフィラー)
易接着層Cに使用するフィラーは日産化学工業株式会社製の商品名「スノーテックスXS」、同商品名「ST−OL」、株式会社日本触媒製の商品名「エポスターMX200W」、日本触媒株式会社製の商品名「Me−6u」を用いた。
[実施例1〜10、比較例1〜3]
表1および表2に示すA層用ポリエステル組成物およびB層用ポリエステル組成物をそれぞれ独立に140度と160度で乾燥し、A層、B層共に280℃で溶融後、2層フィードブロックによりA/Bの2層構成に積層し、隣接したダイより共押出し、急冷固化して未延伸積層フィルムを得た。次いで、この未延伸フィルムを100℃で3.0倍に縦延伸した後、リバース式ロールコーターを用いて表1および表2に示す易接着層Cを、B層の表面に積層した後に、140℃で3.5倍に横延伸し、続いて200℃で熱固定し、得られた二軸延伸ポリエステル積層フィルムをロール状に巻きとった。なお、A層用およびB層用のポリエステル組成物には不活性粒子として平均粒子径2.0μmのシリカ粒子を組成物中に0.1重量%添加した。
次いで、積層フィルムを巻出し、まず着色層をコンマコーターで塗工した。着色層にはバインダー成分にアクリルウレタン系樹脂、顔料にチタン粒子を20重量%含有し、不揮発成分が35重量%の溶剤塗料を用いた。厚み20μmになるように塗工を行い、90℃の乾燥炉で乾燥後巻き取りした。
着色層を塗工した原反を再度繰り出し、続いて、表面保護層を形成するため、後述のハードコート用塗料(HC−1)をコンマコーターにより不揮発成分で30重量%のHC−1を、15μm(硬化後の厚み)で塗工したのち、90℃の乾燥炉に設定して十分に乾燥を行い、巻き取り前に、ポリエチレン樹脂から成る厚み50μmのフィルムを保護フィルムとして用い、ラミネートをして、ロール状に巻きとり、塗装代替フィルムを得た。
[比較例4]
表2に示すA層用ポリエステル組成物およびB層用ポリエステル組成物を用いて実施例1と同様にして未延伸積層フィルムを得た後、100℃で2.9倍に縦延伸、140℃で3.0倍に横延伸した以外は実施例1と同様にして積層フィルム、塗装代替フィルムを得た。
<ハードコート用塗料(HC−1)>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルイソブチルケトン(MIBK)を150部仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら昇温した。フラスコ内の温度が74℃になったらこの温度を合成温度として維持し、メタクリル酸メチル3部、メタクリル酸n−ブチル82.54部、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル12.85部、メタクリル酸0.61部、ファンクリルFA−711MM(日立化成社製、メタクリル酸−ペンタメチルピペリジニル)を1部、アゾビスイソブチロニトリル0.1部を混合したモノマー溶液を2時間掛けて滴下した。モノマー滴下終了1時間後から1時間毎に、アゾビスイソブチロニトリルを0.02部ずつ加えて反応を続け、溶液中の未反応モノマーが1%以下になるまで反応を続けた。未反応モノマーが1%以下になったら冷却して反応を終了し、固形分約40%のアクリル系共重合体溶液を得た。このアクリル系共重合体溶液に、ポリイソシアネート化合物としてデュラネート「P301−75E」(旭化成ケミカルズ社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート体、以下、硬化剤1という)59.9質量部(固形質量)を加え、さらに固形分が30%となるようにメチルイソブチルケトン(MIBK)を加えて撹拌し、ハードコート用塗料(HC−1)を得た。
次いで、上記で得られた塗装代替フィルムを用いて、めっき鋼板JAC270F45/45に熱圧着を行い、フィルム被覆金属積層体を作成した。具体的には、塗装代替フィルムをアンワインド(巻出し)し、金属板を表1および表2に示す温度で加熱して導き、ラミネートロールを用いて、塗装代替フィルムのA層側と熱圧着してラミネートをおこなった。ラミネートされた金属板は、3秒以内に冷却水槽に導き、冷却し、フィルム被覆金属積層体を得た。ラミネート時のライン速度は20m/minで行った。
フィルム被覆金属積層体の保護フィルムを剥離して、フィルム−金属板間密着性、フィルム−着色層間密着性、鮮映性の評価を行った。結果を表3に示す。
[実施例11]
実施例1と同様にして作成したフィルム被覆金属積層体を、保護フィルムが積層された状態で、冷間プレス成形を行った。絞り比が1.3となるような金型を用いて、金属板周囲部を15tの荷重で把持し、金属板中心部を50tで常温プレスし、絞り成形を行った。得られた金属部材の外観を保護フィルムを剥がした状態で確認し、フィルム剥がれ、破れがなく良好な成形性を示していた。
Figure 2020192787
Figure 2020192787
Figure 2020192787
表1および表2においてPETはホモポリエチレンテレフタレート、IAx−PETは、xモル%イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートである。また、CHDMx−PETは、xモル%シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートである。
前記形態を自動車の部品等に適用するものとして述べた。しかし、本発明はこれに限らず、例えば塗装代替フィルムを自動車以外の車両(二輪車、トラック等)、船舶(モータボート等)、家電製品、オーディオ製品、建設部材、鋼板製品等に用いてもよい。
1 積層フィルム
11 A層
12 B層
2 易接着層C
3 機能層
31 着色層
32 表面保護層
33 光輝材層
4 クリア層
5 接着層

Claims (14)

  1. 結晶性ポリエステルを主体とした厚み方向の屈折率が1.500未満のB層と、固有粘度が0.60以上であるポリエステルを主体とした厚みが5μm以上であるA層からなる積層フィルムであって、前記A層およびB層のポリエステルの融点が下記(1)式を満足する積層フィルム。
    (TmB−TmA)≧20℃ ・・・(1)
    (ただし、TmAはA層のポリエステルの融点を示し、TmBはB層のポリエステルの融点を示す。)
  2. 前記B層のMD方向の屈折率とTD方向の屈折率の差の絶対値が0.00〜0.06である請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記B層に用いる結晶性ポリエステルの固有粘度が0.60以上である請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 前記A層が結晶性ポリエステルを主体とした層である請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 前記A層と前記B層の厚み比(X/X:但し、Xは前記A層の厚みの合計、Xは前記B層の厚みの合計)が1.5以上である請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルムのB層側の表面に官能基を有する易接着層(C層)と、表面保護層および着色層からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能層(D層)がこの順で積層された機能層付積層フィルム。
  7. 前記C層の厚みが10nm〜200nmである請求項6に記載の機能層付積層フィルム。
  8. 前記着色層は着色剤を組成物の重量を基準として0.5重量%以上40重量%未満含有している請求項6または7に記載の機能層付積層フィルム。
  9. 前記表面保護層は熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の樹脂から主としてなる、請求項6〜8のいずれかに記載の機能層付積層フィルム。
  10. 請求項6〜9のいずれかに記載の機能層付積層フィルムのC層側の表面に、着色層と表面保護層がこの順番で積層された塗装代替フィルム。
  11. 請求項1〜10に記載の積層フィルム、機能層付積層フィルムおよび塗装代替フィルムのA層側に金属または樹脂を積層したフィルム被覆積層体。
  12. 請求項11に記載のフィルム被覆積層体を用いてなる部材。
  13. 金属部材の製造方法であって、請求項1〜10に記載の積層フィルム、機能層付積層フィルムおよび塗装代替フィルムと、金属板とを用い、下記(2)式を満足する温度Tで加熱された金属板を、積層フィルムのA層側に熱圧着させてフィルム被覆金属積層体を得る製造方法。
    TmA≦T≦TmB ・・・(2)
    (ただし、TmAはA層のポリエステルの融点を示し、TmBはB層のポリエステルの融点を示す。)
  14. 請求項13に記載のフィルム被覆金属積層体をさらに冷間プレス成形する工程を含む金属部材の製造方法。
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