JP6273954B2 - 加飾シート - Google Patents
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Description
本発明は、漆黒感などの濃色な意匠を鮮明に表出し得る加飾シートを提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品を提供することも目的とする。
項1. 基材上に、少なくとも、表面保護層、プライマー層、及び装飾層がこの順に積層された加飾シートであって、
前記装飾層が、黒色顔料を含み、
前記プライマー層が、無機粒子及び有機粒子の少なくとも一方の粒子を合計11質量%以上含む、加飾シート。
項2. 前記粒子の平均粒子径が0.01〜2μmの範囲にある、項1に記載の加飾シート。
項3. 前記無機粒子が、シリカ粒子である、項1または2に記載の加飾シート。
項4. 前記表面保護層が、無機粒子及び有機粒子の少なくとも一方の粒子を含む、項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
項5. 前記装飾層の前記プライマー層とは反対側に接着層が積層されてなる、項1〜4のいずれかに記載の加飾シート。
項6. 項1〜5のいずれかに記載の加飾シートを成形樹脂層に転写してなる、加飾樹脂成形品。
本発明の加飾シートは、基材上に、少なくとも、表面保護層、プライマー層、及び装飾層がこの順に積層された加飾シートであって、装飾層が、黒色顔料を含み、プライマー層が、無機粒子及び有機粒子の少なくとも一方を合計11質量%以上含むことにより、漆黒感などの濃色な意匠を鮮明に表出し得る。本発明の加飾シートは、種々の被着体に積層後、基材を剥離することにより、表面保護層、プライマー層、及び装飾層を転写することにより使用できる。被着体は特に限定されないが、被着体として成形樹脂を用いることが好適に挙げられる。すなわち、本発明の加飾シートは、成形樹脂上に表面保護層、プライマー層、及び装飾層を転写し、加飾樹脂成形品を製造する用途において特に有用である。以下、本発明の加飾シートについて、加飾樹脂成形品を製造する用途に用いられる場合の態様を中心に詳述する。
本発明の加飾シートは、基材1上に、少なくとも表面保護層3、プライマー層4、及び装飾層5を有する。基材1の表面保護層3側の表面には、基材1と表面保護層3との剥離性を高めることなどを目的として、必要に応じて、離型層2を設けてもよい。また、装飾層5と成形樹脂層8との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、接着層6を有していてもよい。
[支持体10]
本発明の加飾シートは、支持体10として、基材1、及び必要に応じて離型層2を有する。また、後述の通り、基材1の上に形成された表面保護層3、プライマー層4、装飾層5、必要に応じてさらに形成される接着層6などが、転写層9を構成している。本発明においては、加飾シートと成形樹脂を一体成形した後に、支持体10と転写層9の界面が引き剥がされ、支持体10が剥離除去されて加飾樹脂成形品が得られる。
本発明において、基材1は、加飾シートにおいて支持部材としての役割を果たす支持体10として用いられる。本発明で用いられる基材1は、真空成形適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂シートが使用される。該熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂);塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
離型層2は、基材1と表面保護層3との剥離性を高めることなどを目的として、必要に応じて、基材1の表面保護層3が積層される側の表面に設けられる。離型層2は、全面を被覆(全面ベタ状)しているベタ離型層であってもよいし、一部に設けられるものであってもよい。通常は、剥離性を考慮して、ベタ離型層が好ましい。
本発明の加飾シートにおいては、支持体10の上に形成された、表面保護層3、プライマー層4、装飾層5、必要に応じてさらに形成される接着層6などが転写層9を構成している。本発明においては、加飾シートと成形樹脂を一体成形した後に、支持体10と転写層9の界面が引き剥がされ、加飾シートの転写層9が成形樹脂層8に転写された加飾樹脂成形品が得られる。
表面保護層3は、加飾シートの耐薬品性、耐傷付き性などを高めるために、加飾樹脂成形品の最表面に位置するようにして、加飾シートに設けられる層である。本発明において、表面保護層3を形成する樹脂としては、特に制限されず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、加飾シートの耐傷付き性を高め、優れた表面特性を付与する観点からは、電離放射線硬化性樹脂が好ましいが、表面保護層3を形成する樹脂は、加飾シートの用途に応じて適宜選択することができる。表面保護層3は、例えば電離放射線硬化性樹脂1層により形成されていてもよいし、これらの2層以上により形成されていてもよい。
表面保護層3の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面保護層3の形成において好適に使用される。
表面保護層3は、加飾シートの耐薬品性、耐傷付き性を向上させること、漆黒感などの濃色な意匠を鮮明に表出させることなどを目的として、無機粒子及び有機粒子の少なくとも一方の粒子を含んでいてもよい。表面保護層3が無機粒子及び有機粒子の少なくとも一方の粒子を含む場合、表面保護層3におけるこれらの粒子の合計含有量としては、好ましくは30〜60質量%程度、好ましくは40〜50質量%程度が挙げられる。また、表面保護層3に含まれるこれらの粒子の平均粒子径としては、好ましくは0.01〜0.5μm程度が挙げられる。表面保護層3におけるこれらの粒子の含有量及び粒子径を上記の範囲とすることで、本発明の加飾シートにより得られる漆黒感をより鮮明にすることができる。また、表面保護層3における無機粒子及び有機粒子の種類としては、後述のプライマー層4で例示したものと同様のものを用いることができる。なお、表面保護層3に含まれるこれらの粒子の平均粒子径の測定方法及び算出方法は、後述のプライマー層4に示した方法と同様である。
表面保護層3を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、表面保護層3に備えさせる所望の物性に応じて、上記の無機粒子及び有機粒子の他、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
表面保護層3の硬化後の厚みについては、特に制限されないが、例えば、1〜1000μm、好ましくは1〜50μm、更に好ましくは1〜30μmが挙げられる。このような範囲の厚みを満たすと、耐傷付き性、耐候性等の表面保護層としての十分な物性が得られると共に、表面保護層3を電離放射線硬化性樹脂を用いて形成する場合には電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。更に、表面保護層3の硬化後の厚みが前記範囲を充足することによって、加飾シートの三次元成形性が一層向上するため自動車内装用途等の複雑な三次元形状に対して高い追従性を得ることができる。このように、本発明の加飾シートは表面保護層3の厚みを従来のものより厚くしても、十分に高い三次元成形性が得られることから、特に表面保護層3に高い膜厚を要求される部材、例えば車両外装部品等の加飾シートとしても有用である。
表面保護層3の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、表面保護層3の下に位置するプライマー層4の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
プライマー層4は、表面保護層3とその下(支持体10とは反対側)に位置する層との密着性を高め、かつ、無機粒子及び有機粒子の少なくとも一方の粒子を11質量%以上含むことによって、黒色顔料を含む後述の装飾層5との相互作用により、転写後の加飾樹脂成形品に漆黒感などの濃色な意匠を鮮明に表出させるために設けられる層である。プライマー層4は、無機粒子及び有機粒子の少なくとも一方の粒子と樹脂を含むプライマー層形成用組成物により形成することができる。
プライマー層4中の無機粒子及び有機粒子の少なくとも一方の粒子の合計含有量としては、11質量%以上であれば特に制限されないが、漆黒感などの濃色な意匠を鮮明に表出させる観点からは、好ましくは11〜50質量%程度、より好ましくは25〜35質量%程度が挙げられる。
装飾層5は、上記のプライマー層4と共に、転写後の加飾樹脂成形品に漆黒感などの濃色な意匠を鮮明に表出するために設けられる層である。装飾層5は、黒色顔料を含む。装飾層5に含まれる黒色顔料による黒色の意匠が、上記のプライマー層4と相互作用して、転写後の加飾樹脂成形品に漆黒感などの濃色な意匠を鮮明に表出する。装飾層5は、部分的に設けられた層であってもよいが、加飾シートの全面に形成されている(全面ベタ層である)ことが好ましい。
接着層6は、加飾シートと成形樹脂層8との密着性などを向上させることなどを目的として、装飾層5の裏面(成形樹脂層8側)などに必要に応じて設けられる層である。接着層6を形成する樹脂としては、これらの層間の密着性や接着性を向上させることができるものであれば、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに成形樹脂を一体化させ、表面保護層3、プライマー層4、及び装飾層5を含む転写層9を成形樹脂層8に転写することにより製造することができる。具体的には、本発明の加飾シートを転写型の加飾シートとして用い、当該加飾シートの支持体10とは反対側に成形樹脂層8を積層することにより、少なくとも成形樹脂層8と、装飾層5と、プライマー層4と、表面保護層3と、支持体10とがこの順に積層された、支持体付き加飾樹脂成形品が得られる(例えば図2を参照)。次に、支持体付き加飾樹脂成形品から支持体10を剥離することにより、少なくとも成形樹脂層8と、装飾層5と、プライマー層4と、表面保護層3とが積層された本発明の加飾樹脂成形品が得られる(例えば図3を参照)。図3に示されるように、本発明の加飾樹脂成形品では、必要に応じて、上述の接着層6などがさらに設けられていてもよい。本発明の加飾シートにおいて、表面保護層3、装飾層5、プライマー層4、及び接着層6などが転写層9を形成しており、基材1及び離型層2が支持体10を形成しており、加飾シートの転写層9が成形樹脂層8に転写されて加飾樹脂成形品が得られる。
(1)まず、上記加飾シートの装飾層側(支持体と反対側)を金型内に向けて、熱盤によって装飾層側から加飾シートを加熱する工程、
(2)加熱された該加飾シートを金型内形状に沿うように予備成形(真空成形)して金型内面に密着させて型締する工程、
(3)樹脂を金型内に射出する工程、
(4)該射出樹脂が冷却した後に金型から加飾樹脂成形品(支持体付き加飾樹脂成形品)を取り出す工程、及び
(5)加飾樹脂成形品の表面保護層から支持体を剥離する工程。
以下の手順により、表面保護層に含まれるシリカ粒子の平均粒子径と含有量とが表1に記載となるようにした加飾シートをそれぞれ製造した。なお、シリカ粒子の平均粒子径は、上記の方法で測定した値である。
基材として、一方面に易接着剤層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)を用いた。ポリエチレンテレフタレートフィルムの易接着剤層の面に、メラミン系樹脂を主成分とすると塗工液をグラビア印刷にて印刷して離型層(厚さ1μm)を形成した。次いで、離型層の上に、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物を、硬化後の厚さが3μmとなるようにバーコーダーにより塗工し、表面保護層形成用塗布膜を形成した。この塗膜上から加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、表面保護層形成用塗布膜を硬化させて表面保護層を形成した。この表面保護層の上に、シリカ粒子を含むポリウレタン系2液硬化型樹脂(アクリル系ポリマーポリオールと硬化剤としてキシリレンジイソシアネートとをNCO当量とOH当量とが同量になるように含む;アクリル系ポリマーポリオールの未硬化時のガラス転移温度Tgは100℃)を含むプライマー層形成用の樹脂組成物をグラビアにより塗工し、プライマー層(厚み1.5μm)を形成した。更に、プライマー層上に、アクリル系樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂をバインダー樹脂(アクリル樹脂50質量%、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂50質量%)として含む装飾層形成用黒色系インキ組成物を用いて、黒ベタの装飾層(厚さ2μm)をグラビア印刷により形成した。更に、装飾層上に、アクリル系樹脂(軟化温度:125℃)を含む接着層形成用の樹脂組成物を用いて、接着層(厚さ2μm)をグラビア印刷により形成することにより、基材/離型層/表面保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された加飾シートを製造した。
<電離放射線硬化性樹脂組成物>
・多官能(メタ)アクリレートモノマー(ペンタエリスリトールトリアクリレート,分子量:298)40質量部、重量平均分子量Mw150000の熱可塑性樹脂(アクリル樹脂,ガラス転移温度Tg:105℃)60質量部、その他紫外線吸収剤:1.1質量部、光安定剤:0.6質量部、及びレベリング剤0.2質量部を含む電離放射線硬化性樹脂組成物
上記で得られた各加飾シートを金型に入れて、赤外線ヒーターで350℃、7秒間加熱し、真空成形で金型内の形状に沿うように予備成形して型締した(最大延伸倍率100%)。その後、射出樹脂を金型のキャビティ内に射出し、該加飾シートと射出樹脂とを一体化成形し、金型から取り出すと同時に支持体(基材及び離型層)を剥離除去することにより、樹脂成形品を得た。得られた樹脂成形品の表面を目視で観察し、シリカ粒子の含有量が0質量%の樹脂成形品を基準品として下記の基準により漆黒感の評価を行った。また、樹脂成型品の表面について、コニカミノルタ社製分光測色計CM−2500d
を用いてL、a、b(Lab色空間)のそれぞれの測定を行った。結果を以下の表1及び図4のグラフに示す。
◎:基準品に比べ明らかに深い漆黒感が得られており、極めて優れた意匠感を有していた
○:基準品に比べ深い漆黒感が得られており、優れた意匠感を有していた
△:基準品に比べ漆黒感がやや増しており、意匠性が向上していると認識された
×:基準品との漆黒感の違いがあまり感じられなかった
2 離型層
3 表面保護層
4 プライマー層
5 装飾層
6 接着層
8 成形樹脂層
9 転写層
10 支持体
Claims (6)
- 基材上に、少なくとも、表面保護層、プライマー層、及び装飾層がこの順に積層された加飾シートであって、
前記装飾層が、黒色顔料を含み、
前記プライマー層が、無機粒子及び有機粒子の少なくとも一方の粒子を合計11質量%以上含む、加飾シート。 - 前記粒子の平均粒子径が0.01〜3μmの範囲にある、請求項1に記載の加飾シート。
- 前記無機粒子が、シリカ粒子である、請求項1または2に記載の加飾シート。
- 前記表面保護層が、無機粒子及び有機粒子の少なくとも一方の粒子を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
- 前記装飾層の前記プライマー層とは反対側に接着層が積層されてなる、請求項1〜4のいずれかに記載の加飾シート。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の加飾シートを成形樹脂層に転写してなる、加飾樹脂成形品。
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