1.転写シートの製造方法
本発明の製造方法によって得られる転写シートは、転写用基材上に、少なくとも、第1の保護層と第2の保護層がこの順に積層された積層体であり、本発明の転写シートの製造方法は、以下の工程をこの順に備えていることを特徴とする。
工程1:転写用基材上に、無機粒子と硬化性樹脂を含む樹脂組成物を塗布して第1の塗膜を形成する
工程2:第1の塗膜の上に、硬化性樹脂を含む樹脂組成物を塗布して第2の塗膜を形成する
工程3:第1の塗膜と第2の塗膜とを硬化させる
本発明の製造方法においては、工程1において、転写用基材1上に、硬化して第1の保護層となる第1の塗膜を形成した後、工程2において、第1の塗膜を硬化させる前に、硬化して第2の保護層となる第2の塗膜を第1の塗膜の上に形成する。次に、工程3において、第1の塗膜と第2の塗膜を硬化させる。これにより、第1の塗膜が硬化した第1の保護層と、第2の保護層が硬化した第2の保護層が形成される。なお、本明細書においては、第1の保護層、第2の保護層、さらに必要に応じてこれらの層の間に設けられる他の層を併せて「保護層」ということがある。例えば、保護層が、第1の保護層と第2の保護層の2層によって形成されている場合、保護層は、第1の保護層と第2の保護層の界面が消失した1つの層として形成されていてもよいし、界面を認識できる2つの層として形成されていてもよい。保護層が他の層を有する場合についても、同様である。
後述の通り、本発明の製造方法によって得られる転写シートは、装飾層などを有していなくてもよく、例えば透明であってもよい。本発明の製造方法によって得られる転写シートは、転写用基材が最終製品から剥離して用いられる転写用のシートである。具体的には、当該転写シートを、種々の被転写層、例えば成形樹脂層に積層し、転写用基材を保護層から剥離することにより、樹脂成形品が得られる。このような樹脂成形品においては、成形樹脂層の上に前記保護層が形成されているため、優れた耐傷性を有する。
本発明の製造方法においては、例えば図1に示されるように、転写用基材1の第1の保護層3a側の表面には、転写用基材1と第1の保護層3aとの剥離性を高めることなどを目的として、必要に応じて、離型層2を形成してもよい。また、第2の保護層3bと、これに隣接する層との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、第2の保護層3bの上(支持体10とは反対側)にプライマー層4を形成してもよい。転写シートに装飾性を付与することなどを目的として、必要に応じて、装飾層5を形成してもよい。また、第2の保護層3bや装飾層5などと、被転写層(例えば後述する樹脂成形品における成形樹脂層8)などとの密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、接着層6を形成してもよい。また、プライマー層4と接着層6との密着性を向上させることを目的として、透明樹脂層(図示しない)を形成してもよい。このように、本発明の製造方法においては、第2の保護層3bの上に、プライマー層4、装飾層5、接着層6、及び透明樹脂層からなる群から選択された少なくとも1層を積層する工程をさらに備えていてもよい。
本発明の製造方法によって得られる転写シートの積層構造として、転写用基材/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された積層構造;転写用基材/離型層/第1の保護層/第2の保護層がこの順に積層された積層構造;転写用基材/離型層/第1の保護層/第2の保護層/装飾層がこの順に積層された積層構造;転写用基材/離型層/第1の保護層/第2の保護層/装飾層/接着層がこの順に積層された積層構造;転写用基材/離型層/第1の保護層/第2の保護層/プライマー層/装飾層/接着層がこの順に積層された積層構造;転写用基材/離型層/第1の保護層/第2の保護層/プライマー層/透明樹脂層/接着層がこの順に積層された積層構造などが挙げられる。図1に、本発明の製造方法によって得られる転写シートの積層構造の一態様として、転写用基材/離型層/第1の保護層/第2の保護層/プライマー層/装飾層/接着層がこの順に積層された転写シートの一形態の断面構造の模式図を示す。
転写シートを形成する各層の組成と形成方法
[支持体10]
支持体10は、転写用基材1、必要に応じて離型層2を有する。本発明の製造方法においては、工程1において、支持体10となる転写用基材1上に、無機粒子と硬化性樹脂を含む樹脂組成物を塗布して第1の塗膜を形成する工程を行う。本発明の製造方法によって得られる転写シートには、支持体10が含まれる。
なお、後述の通り、工程1〜3によって、支持体10(転写用基材1)の上に第1の保護層3a、第2の保護層3bを形成した後、さらに、必要に応じて、プライマー層4、絵柄層5、接着層6、透明樹脂層などを、転写層9として形成することができる。また、本発明の製造方法によって得られた転写シートを被転写層上に積層した後に、支持体10が剥離除去されて転写が行われる。より具体的には、例えば被転写層として成形樹脂層8を用いることにより、成形樹脂層8上に転写層9が積層された樹脂成形品が得られる。以下、本発明によって製造される転写シートを構成する各層の組成と、その形成方法について、詳述する。
(転写用基材1)
本発明の製造方法においては、まず、工程1において、転写用基材1を準備する。転写用基材1は、転写シートにおいて支持部材としての役割を果たす支持体10として用いられる。本発明で用いられる転写用基材1は、真空成形適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂シートが使用される。該熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂);塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
本発明においては、転写用基材1として、ポリエステルシートを用いることが、耐熱性、寸法安定性、成形性、及び汎用性の点で好ましい。ポリエステルシートを構成するポリエステル樹脂とは、多価カルボン酸と、多価アルコールとから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを示し、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などを好ましく挙げることができ、ポリエチレンテレフタレート(PET)が、耐熱性や寸法安定性の点で特に好ましい。
また、転写用基材1には、作業性を向上させる目的で、微粒子を含有させてもよい。微粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、カオリンなどの無機粒子、アクリル系樹脂などからなる有機粒子、内部析出粒子などを挙げることができる。微粒子の平均粒子径は0.01〜5.0μmが好ましく、0.05〜3.0μmがより好ましい。また、ポリエステル樹脂中の微粒子の含有量は0.01〜5.0質量%が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。また、必要に応じて各種安定剤、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤、蛍光増白剤などを配合することもできる。
本発明に用いられるポリエステルシートは、例えば以下のように製造される。まず上記のポリエステル系樹脂とその他の原料をエクストルーダーなどの周知の溶融押出装置に供給し、当該ポリエステル系樹脂の融点以上の温度に加熱し溶融する。次いで溶融ポリマーを押出しながら、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるよう急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。このシートを2軸方向に延伸してシート化し、熱固定を施すことで得られる。この場合、延伸方法は逐次2軸延伸でも同時2軸延伸でもよい。また、必要に応じ、熱固定を施す前又は後に再度縦及び/又は横方向に延伸してもよい。本発明においては十分な寸法安定性を得るため延伸倍率を面積倍率として7倍以下が好ましく、5倍以下がより好ましく、3倍以下がさらに好ましい。この範囲内であれば、得られるポリエステルシートを本発明の転写シートに用い、射出成形同時転写法に用いた場合、該転写シートが射出樹脂を射出する際の温度域で再び収縮せず、当該温度域で必要なシート強度を得ることができる。なお、ポリエステルシートは、上記のように製造してもよいし、市販のものを用いてもよい。
また、転写用基材1は、後述する離型層2との密着性を向上させる目的で、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、転写用基材1の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。また、転写用基材1は、転写用基材1とその上に設けられる層との層間密着性の強化などを目的として、易接着層を形成するなどの処理を施してもよい。なお、ポリエステルシートとして市販のものを用いる場合には、該市販品は予め上記したような表面処理が施されたものや、易接着剤層が設けられたものも用いることができる。
転写用基材1の厚みは、通常10〜150μm程度であり、10〜125μm程度が好ましく、10〜80μm程度がより好ましい。また、転写用基材1としては、これら樹脂の単層シート、あるいは同種又は異種樹脂による複層シートを用いることができる。
(離型層2)
本発明においては、転写用基材1と第1の保護層3aの剥離性を高めることなどを目的として、必要に応じて、転写用基材1の第1の保護層3aが積層される側の表面に離型層2を形成してもよい。離型層2は、全面を被覆(全面ベタ状)しているベタ離型層であってもよいし、一部に設けられるものであってもよい。通常は、剥離性を考慮して、ベタ離型層が好ましい。
離型層2は、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル−メラミン系樹脂が含まれる。)、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、あるいはこれらの樹脂を(メタ)アクリル酸やウレタンで変性したものを、単独で又は複数を混合した樹脂組成物を用いて形成することができる。なかでも、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、これらの樹脂を形成するモノマーの共重合体、及びこれらをウレタン変性したものが好ましく、より具体的には、アクリル−メラミン系樹脂単独、アクリル−メラミン系樹脂含有組成物、ポリエステル系樹脂とエチレン及びアクリル酸の共重合体をウレタン変性したものとを混合した樹脂組成物、アクリル系樹脂とスチレン及びアクリルとの共重合体のエマルションとを混合した樹脂組成物などが挙げられる。これらの内、アクリル−メラミン系樹脂単独又はアクリル−メラミン系樹脂を50質量%以上含有組成物で離型層2を構成することが特に好ましい。
離型層2の厚みは、通常、0.01〜5μm程度であり、好ましくは、0.05〜3μm程度である。
(転写層9)
本発明によって製造される転写シートにおいては、支持体10の上に形成された、第1の保護層3a、第2の保護層3b、必要に応じてさらに形成されるプライマー層4、絵柄層5、接着層6などが、転写層9を構成する。本発明においては、転写シートと成形樹脂を一体成形した後に、支持体10と転写層9の界面を引き剥がし、転写シートの転写層9を転写層(例えば、成形樹脂層8など)に転写した樹脂成形品が得られる。
[保護層3]
保護層3は、第1の保護層3aと第2の保護層3bを含み、製品の耐傷性、耐候性などを高めることを目的として、最終製品の最表面に位置するようにして、転写シートに設けられる層である。保護層3においては、最も転写用基材1側に位置する第1の保護層3aと、最も転写用基材1とは反対側に位置する第2の保護層3bとの間に、保護層3の一部を形成する他の層を有していてもよい。
本発明においては、転写用基材1上に、無機粒子と硬化性樹脂を含む樹脂組成物を塗布して第1の塗膜を形成する工程1と、第1の塗膜の上に、硬化性樹脂を含む樹脂組成物を塗布して第2の塗膜を形成する工程2と、第1の塗膜と第2の塗膜とを硬化させる工程3とをこの順に備える製造方法によって、転写用基材1の上に保護層3(第1の保護層3a及び第2の保護層3b)を形成する。このように形成された第1の保護層3a及び第2の保護層3bを備える転写シートは、優れた耐傷性を有し、かつ、干渉縞の発生が抑制されている。上述の通り、従来、平均粒子径の大きな無機粒子を保護層に配合すると、成形時に保護層にクラックが生じやすく、転写シートの成形性が低下し、平均粒子径の小さな無機粒子を用いて保護層の耐傷性を向上させようとすると、三波長の光源下に転写シートが置かれた際に、保護層の表面に干渉縞と呼ばれる虹色のムラが生じ、意匠性が損なわれるという問題があった。よって、保護層に無機粒子を配合することによって、耐傷性、成形性、及び干渉縞の問題を同時に解消することは極めて困難であると考えられていた。
ところが、本発明者らが検討を重ねたところ、意外にも、上記の工程1〜工程3を備える製造方法を採用して転写用基材1の上に第1の保護層3a及び第2の保護層3bを形成することにより、保護層3に優れた耐傷性が付与され、さらに、無機粒子を配合することによる干渉縞も効果的に抑制された転写シートが得られることが明らかとなった。
<無機粒子>
無機粒子の平均粒子径としては保護層の膜厚以下であれば特に限定されないが、保護層3に優れた耐傷性及び成形性を付与し、無機粒子を配合することによる干渉縞を効果的に抑制する観点から、好ましくは500nm以下、より好ましくは10〜200nm程度、さらに好ましくは20〜50nm程度が挙げられる。なお、無機粒子の平均粒子径は、溶液中の該粒子を動的光散乱方法で測定し、粒子径分布を累積分布で表したときの50%粒子径(d50:メジアン径)を意味し、Microtrac粒度分析計(日機装株式会社製)を用いて測定された値である。
第1の塗膜を形成する樹脂組成物中における無機粒子の含有量としては、保護層3に優れた耐傷性及び成形性を付与し、無機粒子を配合することによる干渉縞を効果的に抑制する観点から、当該樹脂組成物中に含まれる後述の硬化性樹脂1質量部に対して、好ましくは3〜10質量部程度、より好ましくは5〜10質量部程度、さらに好ましくは8〜9質量部程度が挙げられる。第1の塗膜を形成する樹脂組成物中における無機粒子の含有量が10質量部を超える場合には、転写後の意匠が白化しやすくなる。一方、第2の塗膜を形成する樹脂組成物中には、無機粒子が実質的に含まれないか、または第1の塗膜の樹脂組成物よりも低濃度で無機粒子が含まれることが好ましい。第2の塗膜を形成する樹脂組成物中に無機粒子が含まれる場合、その含有量としては、当該樹脂組成物中に含まれる後述の硬化性樹脂1質量部に対して、好ましくは6質量部以下が挙げられる。
第1の塗膜の塗工量T1と、第2の塗膜の塗工量T2とは、保護層3の耐傷性を高めるとともに、白化が生じて意匠を損なわないようにする観点から、以下の式(1)の関係を充足することが好ましく、式(2)の関係を充足することがより好ましい。
0.5×T2≦T1≦3.0×T2 (1)
0.8×T2≦T1≦2.5×T2 (2)
また、転写シートの耐傷性をさらに高める観点からは、上記の式(1)及び(2)の範囲内でも、T1>T2の関係を充足することがさらに好ましい。
無機粒子としては、保護層3に優れた耐傷性及び成形性を付与し、無機粒子を配合することによる干渉縞を効果的に抑制する観点から、シリカ粒子(コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカなど)、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、酸化亜鉛粒子などの金属酸化物粒子が好ましく挙げられ、シリカ粒子及びアルミナ粒子が好ましく、特にシリカ粒子が好ましい。
無機粒子の形状としては、球、楕円体、多面体、鱗片形などが挙げられ、これらの形状が均一で、整粒であることが好ましい。
本発明においては、シリカ粒子などの無機粒子は、硬化性樹脂と反応する官能基を表面に有するものであってもよいし、このような官能基を表面に有しないものであってもよい。ただし、転写シートの成形性を高める観点からは、無機粒子は、硬化性樹脂と反応する官能基を表面に有しないものであることが好ましい。すなわち、無機粒子が、例えば特許文献1及び2に開示されたような、無機粒子の表面に硬化性樹脂と反応する官能基を有する反応性無機粒子である場合、硬化性樹脂と無機粒子が架橋して保護層3の柔軟性が大きく低下するため、転写シートの成形加工が困難になる場合がある。硬化性樹脂と反応する官能基を表面に有するシリカ粒子としては、例えば、硬化性樹脂と反応する官能基を有するシランカップリング剤で表面修飾されたシリカ粒子などが挙げられる。
<硬化性樹脂>
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。以下、電離放射線硬化性樹脂について詳述する。
(電離放射線硬化性樹脂)
電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、第1の保護層3aまたは第2の保護層3bの形成において好適に使用される。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能性(メタ)アクリレートとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールやカプロラクトン系ポリオールとポリイソシアネート化合物の反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらの中でも、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の転写シートを三次元成形用に用いる場合、上記した電離放射線硬化性樹脂の中でも、優れた成形性を得る観点からは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。また、成形性と耐傷性を両立する観点からは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートを組み合わせて使用することがより好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂として多官能性(メタ)アクリレートモノマーを用いる場合、優れた成形性を得る観点からは、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂と組み合わせて使用することが好ましく、成形性と耐傷性を両立する観点からは、硬化性樹脂組成物中の多官能性(メタ)アクリレートモノマーと熱可塑性樹脂との質量比を25:75〜75:25とすることがより好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂としてウレタン(メタ)アクリレートを用いる場合、三次元成形性と耐傷付き性を両立する観点からは、カプロラクトン系ポリオールとポリイソシアネート化合物の反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸によってエステル化することによって得られるカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
<他の添加成分>
第1の保護層3aまたは第2の保護層3bを形成する硬化性樹脂組成物には、これらの層に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、マット剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができ、例えばマット剤としてはシリカ粒子や水酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
<第1の保護層3a及び第2の保護層3bの形成>
第1の保護層3a及び第2の保護層3bの形成の形成は、上記の工程1〜工程3によって行われる。なお、各樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
本発明においては、調製された塗布液を、前記厚みとなるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
熱硬化性樹脂を用いる場合には、このようにして形成された未硬化樹脂層を加熱により硬化することにより、保護層3を形成することができる。また、電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて保護層3を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度が挙げられる。
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、保護層3の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと保護層3の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、電子線の照射によって硬化させる層の下に位置する層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による各層の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、保護層3の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈、紫外線発光ダイオード(LED−UV)等が挙げられる。
保護層3には、各種の添加剤を添加することにより、ハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能等の機能を付与する処理を行ってもよい。
第1の保護層3aの硬化性樹脂と、第2の保護層3bの硬化性樹脂とは、異なる樹脂であってもよいし、同一の樹脂であってもよい。また、保護層3が3層以上によって形成されている場合、第1の保護層3aと第2の保護層3bとの間に位置する他の層についても、硬化性樹脂は、第1の保護層3aまたは第2の保護層3bの硬化性樹脂と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
本発明において、保護層3に優れた耐傷性及び成形性を付与し、無機粒子を配合することによる干渉縞を効果的に抑制する観点から、第1の保護層3aに用いる硬化性樹脂は、電離放射線硬化性樹脂であることが好ましい。一方、同様の観点から、第2の保護層3bに用いる硬化性樹脂は、電離放射線硬化性樹脂であることが好ましい。
保護層3を形成する硬化性樹脂の粘度としては、特に制限されないが、第2の保護層3bを形成する硬化性樹脂の粘度としては、好ましくは、ザーンカップ#3による粘度測定において、好ましくは15〜35秒程度、より好ましくは20〜25秒程度が挙げられる。
<第1の保護層3a及び第2の保護層3bの厚み>
第1の保護層3aの厚みとしては、好ましくは0.5〜10μm程度、より好ましくは0.5〜5μm程度、さらに好ましくは1〜3μm程度が挙げられる。第2の保護層3bの厚みとしては、好ましくは0.5〜10μm程度、より好ましくは0.5〜5μm程度、さらに好ましくは1〜3μm程度が挙げられる。また、第1の保護層3a及び第2の保護層3bを含む保護層3の硬化後の厚みについては、特に制限されないが、例えば、1〜1000μm程度、好ましくは1〜50μm程度、更に好ましくは1〜30μm程度が挙げられる。これらの範囲の厚みを満たすと、耐傷性、耐候性等の保護層としての十分な物性が得られると共に、硬化性樹脂を均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。さらに、これらの範囲の厚みを満たすと、転写シートの成形性が一層向上するため自動車内装用途等の複雑な形状に対して高い追従性を得ることができる。
[プライマー層4]
プライマー層4は、第2の保護層3bとその下(支持体10とは反対側)に位置する層との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて形成される層である。プライマー層4は、上記の工程3において、第2の保護層3bを硬化させてから形成することが好ましい。プライマー層4は、樹脂により形成することができる。
プライマー層4を形成する樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、好ましくは、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であればよく、具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イソシアネートとしては、具体的には、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート;4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが挙げられる。
上記ウレタン樹脂の中でも、架橋後の密着性の向上等の観点から、好ましくは、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートとから組み合わせ;さらに好ましくは、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせが挙げられる。
上記アクリル樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂として、より具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらのアクリル樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が挙げられる。また、硬化剤としては、前述する各種イソシアネートが用いられる。アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂におけるアクリルとウレタン比の比率については、特に制限されないが、例えば、アクリル/ウレタン比(質量比)として、9/1〜1/9、好ましくは8/2〜2/8が挙げられる。
プライマー層4の厚みについては、特に制限されないが、例えば0.1〜10μm程度、好ましくは1〜10μm程度が挙げられる。プライマー層4がこのような厚みを充足することにより、転写シートの耐候性をより高めると共に、保護層3の割れ、破断、白化等を有効に抑制することができる。
プライマー層4は、プライマー層4を形成する樹脂を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法とは、薄いシート(フィルム転写用基材)にプライマー層や接着層の塗膜を形成し、その後に転写シート中の対象となる層表面に被覆する方法である。
[装飾層5]
装飾層5は、製品に装飾性を付与するために、必要に応じて形成することができる。装飾層5は、通常、絵柄層及び/又は隠蔽層により構成される。ここで、絵柄層は、模様や文字等とパターン状の絵柄を表現するために設けられる層であり、隠蔽層は、通常全面ベタ層であり被転写層等の着色等を隠蔽するために設けられる層である。隠蔽層は、絵柄層の絵柄を引き立てるために絵柄層の内側に設けてもよく、また隠蔽層単独で装飾層5を形成してもよい。
絵柄層の絵柄については、特に制限されないが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字等からなる絵柄が挙げられる。
装飾層5は、着色剤、バインダー樹脂、及び溶剤又は分散媒を含む印刷インキを用いて形成される。
装飾層5の形成に用いられる印刷インキの着色剤としては、特に制限されないが、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、錫、チタン、リン化鉄、銅、金、銀、真鍮等の金属、合金、又は金属化合物の鱗片状箔粉からなるメタリック顔料;マイカ状酸化鉄、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、二酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、着色二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料;アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸バリウム、硫化亜鉛、硫化カルシウム等の蛍光顔料;二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色無機顔料;亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノンイエロー、ハンザイエローA、キナクリドンレッド、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む)等が挙げられる。これらの着色剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、装飾層5の形成に用いられる印刷インキのバインダー樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、装飾層5の形成に用いられる印刷インキの溶剤又は分散媒としては、特に制限されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等が挙げられる。これらの溶剤又は分散媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、装飾層5の形成に使用される印刷インキには、必要に応じて、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、滑剤等が含まれていてもよい。
装飾層5は、例えば第2の保護層3bやプライマー層4上など隣接する層の上に、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の印刷法によって形成することができる。また、装飾層5は、蒸着によっても形成することができる。装飾層5を絵柄層及び隠蔽層の組み合わせとする場合には、一方の層を積層させて乾燥させた後に、もう一方の層を積層させて乾燥させればよい。
装飾層5の厚さについては、特に制限されないが、例えば、1〜40μm程度、好ましくは3〜30μm程度が挙げられる。
また、装飾層5は、金属蒸着によっても形成することができる。装飾層5を金属蒸着によって形成する場合、金属としてはスズ、インジウム、クロム、アルミニウムなどを使用することができ、装飾層5の厚みとしては、100nm以下とすることができる。
[接着層6]
接着層6は、転写シートと被転写層(成形樹脂層8など)との密着性などを向上させることなどを目的として、装飾層5、第2の保護層3bなどの裏面(成形樹脂層8側)に必要に応じて形成することができる。接着層6を形成する樹脂としては、これらの層間の密着性や接着性を向上させることができるものであれば、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層6は必ずしも必要な層ではないが、本発明の転写シートを、例えば後述する真空圧着法など、予め用意された樹脂成形体上へ貼着による加飾方法に適用することを想定した場合は、設けられていることが好ましい。真空圧着法に用いる場合、上記した各種の樹脂のうち、加圧又は加熱により接着性を発現する樹脂として慣用のものを使用して接着層6を形成することが好ましい。
接着層6は、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の印刷法によって形成することができる。
接着層6の厚みは、特に制限されないが、例えば、0.1〜30μm程度、好ましくは0.5〜20μm程度、さらに好ましくは1〜8μm程度が挙げられる。
[透明樹脂層]
本発明の転写シートにおいては、プライマー層4と接着層6との密着性を向上させることなどを目的として、必要に応じて、透明樹脂層を設けてもよい。透明樹脂層は、装飾層5を形成しない態様において、プライマー層4と接着層6との密着性を向上させることができるので、転写シートを透明性が要求される樹脂成形品の製造に供する場合において設けることが特に有用である。透明樹脂層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。透明樹脂層を形成する樹脂成分としては、装飾層5で例示したバインダー樹脂などが挙げられる。
透明樹脂層には、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
透明樹脂層は、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の印刷法によって形成することができる。
透明樹脂層の厚みとしては、特に限定されないが、一般的には0.1〜10μm程度、好ましくは1〜10μm程度が挙げられる。
2.樹脂成形品及びその製造方法
本発明の製造方法によって得られる転写シートは、各種の被転写層上に転写層9を転写し、保護層3により耐傷性に優れた製品を製造する用途に用いることができる。被転写層の材質や形状は特に限定されないが、本発明の転写シートは、被転写層として成形樹脂層8を使用し、樹脂成形品を製造する用途において特に有用である。
本発明の樹脂成形品の製造方法は、上記の製造方法によって得られた転写シートに成形樹脂を積層することにより成形されてなるものであり、例えば転写シートを成形樹脂層8に転写することにより製造することができる。具体的には、例えば、転写シートを射出成形同時転写用のシートとして用い、当該転写シートの支持体10とは反対側に成形樹脂層8を積層することにより、少なくとも成形樹脂層8と、第2の保護層3bと、第1の保護層3aと、支持体10とがこの順に積層された、支持体付き樹脂成形品が得られる(例えば図2を参照)。次に、支持体付き樹脂成形品から支持体10を剥離することにより、少なくとも成形樹脂層8と、第2の保護層3bと、第1の保護層3aとが積層された樹脂成形品が得られる(例えば図3を参照)。図3に示されるように、樹脂成形品には、必要に応じて、上述の装飾層5、プライマー層4、接着層6などの少なくとも1層を形成してもよい。射出成形同時転写法においては、転写シートにおいて、第1の保護層3a、第2の保護層3b、装飾層5、プライマー層4、及び接着層6などが転写層9を形成しており、転写用基材1及び離型層2が支持体10を形成しており、転写シートの転写層9が成形樹脂層8に転写されて樹脂成形品が得られる。
転写シートによる本発明の樹脂成形品の製造方法としては、例えば以下の工程(1)〜(5)を含む方法が挙げられる。
(1)まず、上記転写シートの第2の保護層側(支持体と反対側)を金型内に向けて、熱盤によって第2の保護層側から転写シートを加熱する工程、
(2)該転写シートを金型内形状に沿うように予備成形(真空成形)して金型内面に密着させて型締する工程、
(3)樹脂を金型内に射出する工程、
(4)該射出樹脂が冷却した後に金型から樹脂成形品(支持体付き樹脂成形品)を取り出す工程、及び
(5)樹脂成形品の第1の保護層から支持体を剥離する工程。
上記両工程(1)及び(2)において、転写シートを加熱する温度は、転写用基材のガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(又は融点)未満の範囲であることが好ましい。通常はガラス転移温度近傍の温度で行うことが、より好ましい。なお、上記のガラス転移温度近傍とは、ガラス転移温度±5℃程度の範囲を指し、転写用基材として好適なポリエステルフィルムを使用する場合には、一般に70〜130℃程度である。なお、あまり複雑でない形状の金型を用いる場合は、転写シートを加熱する工程や、転写シートを予備成形する工程を省略し、後記する工程(3)において、射出樹脂の熱と圧力によって転写シートを金型の形状に成形してもよい。
上記両工程(3)において、後述する成形用樹脂を溶融させて、キャビティ内に射出して該転写シートと成形用樹脂とを一体化させる。成形用樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融によって流動状態にして、また、成形用樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の液状組成物を室温又は適宜加熱して流動状態で射出して、冷却して固化させる。これによって、転写シートが、形成された樹脂成形体と一体化して貼り付き、支持体付き樹脂成形品となる。射出樹脂の加熱温度は、成形用樹脂の種類によるが、一般に180〜320℃程度である。
このようにして得られた支持体付き樹脂成形品は、工程(4)において冷却した後に金型から取り出した後、工程(5)において支持体10を第1の保護層3aから剥離することにより樹脂成形品を得る。また、支持体10を第1の保護層3aから剥離する工程は、樹脂成形品を金型から取り出す工程と同時に行われてもよい。すなわち、工程(5)は工程(4)に含まれるものであってもよい。
さらに、樹脂成形品の製造は、真空圧着法により行うこともできる。真空圧着法では、まず、上側に位置する第1真空室及び下側に位置する第2真空室からなる真空圧着機内に、本発明の転写シート及び樹脂成形体を、転写シートが第1真空室側、樹脂成形体が第2真空室側となるように、且つ転写シートの成形樹脂層8を積層する側が樹脂成形体側に向くように真空圧着機内に設置し、2つの真空室を真空状態とする。樹脂成形体は、第2真空室側に備えられた、上下に昇降可能な昇降台上に設置される。次いで、第1の真空室を加圧すると共に、昇降台を用いて成形体を転写シートに押し当て、2つの真空室間の圧力差を利用して、転写シートを延伸しながら樹脂成形体の表面に貼着する。最後に2つの真空室を大気圧に開放し、支持体10を剥離し、必要に応じて転写シートの余分な部分をトリミングすることにより、本発明の樹脂成形品を得ることができる。
真空圧着法においては、上記の成形体を転写シートに押し当てる工程の前に、転写シートを軟化させて成形性を高めるため、転写シートを加熱する工程を備えることが好ましい。当該工程を備える真空圧着法は、特に真空加熱圧着法と呼ばれることがある。当該工程における加熱温度は、転写シートを構成する樹脂の種類や、転写シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、例えば転写用基材1としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常60〜200℃程度とすることができる。
樹脂成形品において、成形樹脂層8は、用途に応じた樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂層8を形成する成形用樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、支持体付き樹脂成形品において、支持体10は、樹脂成形品の保護シートとしての役割を果たすので、支持体付き樹脂成形品の製造後に剥離させずにそのまま保管しておき、用時に支持体10を剥がしてもよい。このような態様で使用することにより、輸送時の擦れ等によって樹脂成形品に傷付きが生じるのを防止することができる。
本発明の製造方法によって得られる樹脂成形品は、優れた耐傷性を有し、かつ、干渉縞が効果的に抑制されているため、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1〜10
[転写シートの製造]
以下の手順により、転写用基材側に位置している第1の保護層に含まれる無機粒子の種類、無機粒子と樹脂との質量比、第1の保護層を形成する樹脂組成物の塗布量、第2の保護層を形成する樹脂組成物(無機粒子を含まない)の塗布量が表1の記載となるようにした転写シートをそれぞれ製造した。なお、無機粒子の平均粒子径は、上記の方法で測定した値である。
まず、転写用基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)を用いた。ポリエチレンテレフタレートフィルムに、メラミン系樹脂を主成分とすると塗工液をコーティングして離型層(厚さ数μm)を形成した。次いで、離型層の上に、第1の保護層に用いる下記の樹脂と、表1に示す含有量の無機粒子とを含む樹脂組成物を表1の塗布量となるようにバーコーターにより塗工した。次に、第1の保護層を硬化させる前に、第1の保護層の塗膜の上に、第2の保護層に用いる下記の樹脂を表1の塗布量となるようにバーコーターにより塗工した。この塗膜上から加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、第1の保護層及び第2の保護層を同時に硬化させ、が積層された保護層を形成した。この保護層の上に、ポリウレタン系2液硬化型樹脂(アクリル系ポリマーポリオールと硬化剤としてキシリレンジイソシアネートとをNCO当量とOH当量とが同量になるように含む;アクリル系ポリマーポリオールの未硬化時のガラス転移温度Tgは100℃)を含むプライマー層形成用の樹脂組成物をグラビア印刷により塗工し、プライマー層(厚み1.5μm)を形成した。更に、プライマー層上に、アクリル系樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂をバインダー樹脂(アクリル樹脂50質量%、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂50質量%)として含む装飾層形成用黒色系インキ組成物を用いて、黒ベタ柄の装飾層(厚さ2μm)をグラビア印刷により形成した。更に、装飾層上に、アクリル系樹脂(軟化温度:125℃)を含む接着層形成用の樹脂組成物を用いて、接着層(厚さ2μm)をグラビア印刷により形成することにより、転写用基材/離型層/第1の保護層/第2の保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された転写シートを製造した。
<実施例における第1保護層の樹脂>
アクリルポリマー/3官能アクリレートモノマー=7/3(固形分比)の混合物
<実施例における第2保護層の樹脂>
アクリルポリマー/3官能アクリレートモノマー=7/3(固形分比)の混合物
比較例1〜3
[転写シートの製造]
以下の手順により、保護層(単層)に含まれる無機粒子の種類、無機粒子と樹脂との質量比、保護層を形成する樹脂組成物の塗布量が表2の記載となるようにした転写シートをそれぞれ製造した。なお、無機粒子の平均粒子径は、上記の方法で測定した値である。
転写用基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)を用いた。ポリエチレンテレフタレートフィルムに、メラミン系樹脂を主成分とする塗工液をコーティングして離型層(厚さ数μm)を形成した。次いで、離型層の上に、保護層に用いる下記の樹脂と、表2に示す含有量の無機粒子とを含む樹脂組成物を表2の塗布量となるようにバーコーターにより塗工した。次に、この塗膜上から加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、硬化した保護層を形成した。この保護層の上に、ポリウレタン系2液硬化型樹脂(アクリル系ポリマーポリオールと硬化剤としてキシリレンジイソシアネートとをNCO当量とOH当量とが同量になるように含む;アクリル系ポリマーポリオールの未硬化時のガラス転移温度Tgは100℃)を含むプライマー層形成用の樹脂組成物をグラビア印刷により塗工し、プライマー層(厚み1.5μm)を形成した。更に、プライマー層上に、アクリル系樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂をバインダー樹脂(アクリル樹脂50質量%、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂50質量%)として含む装飾層形成用黒色系インキ組成物を用いて、黒ベタ柄の装飾層(厚さ2μm)をグラビア印刷により形成した。更に、装飾層上に、アクリル系樹脂(軟化温度:125℃)を含む接着層形成用の樹脂組成物を用いて、接着層(厚さ2μm)をグラビア印刷により形成することにより、転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された転写シートを製造した。
<比較例における保護層の樹脂>
アクリルポリマー/3官能アクリレートモノマー=7/3(固形分比)の混合物
[樹脂成形品の製造]
上記で得られた各転写シートを金型に入れて、赤外線ヒーターで350℃、7秒間加熱し、真空成形で金型内の形状に沿うように予備成形して型締した(最大延伸倍率100%)。その後、射出樹脂を金型のキャビティ内に射出し、該転写シートと射出樹脂とを一体化成形し、金型から取り出すと同時に支持体(転写用基材及び離型層)を剥離除去することにより、樹脂成形品を得た。
<耐傷性の評価>
上記で得られた各樹脂成形品の表面に対して、荷重800g/cm2、摩擦回数100回の条件で測定するマーチンデール法で耐傷性試験を行った後、耐傷性試験を行う前後における表面のグロス値(20°)を測定して、グロス値の維持率(%)を算出した。グロス値(20°)は、BykGardner社製micro-TRI-gloss(カタログNo.4520)を用いて測定した。当該グロス値の維持率が85%以上であれば、耐傷性に優れると判断できる。結果を表1、2に示す。
<干渉縞の評価>
上記で得られた各樹脂成形品表面に三波長蛍光灯で可視光を照射し、干渉縞の有無を下記の基準で評価した。結果を表1、2に示す。
○:樹脂成形品表面に干渉縞が全く確認できなかった
△:樹脂成形品表面に軽微な干渉縞が確認されたが、実用上問題はない
×:樹脂成形品表面に明瞭に干渉縞が確認された
<成形性の評価>
樹脂成形品の製造の際の成型品の状態を確認し、以下の判定基準に従って、成形性を評価した。結果を表1、2に示す。
(成形性の判定基準)
○:保護層に割れや白化が全く認められず、良好に型の形状に追従できた。
△:形状部又は最大延伸部の一部に微細な塗膜割れ又は白化が認められたが実用上問題なし。
×:型の形状に追従できずに保護層に著しい塗膜割れや白化が見られた。
表1に示される結果から、実施例1〜10の転写シートでは、工程1〜工程3に従って第1の保護層及び第2の保護層を形成したことにより、種々の粒径の無機粒子を用い、無機粒子と樹脂のいずれが多い場合にも、耐傷性及び成形性に優れるだけでなく、干渉縞も効果的に抑制されていることが分かる。一方、第1の保護層と第2の保護層に分けずに保護層を一度に形成した場合、粒径の小さな無機粒子を用いた比較例1、2では、干渉縞が大きくなった。また、無機粒子を添加しなかった比較例3においては、成形性は良好であり、干渉縞も効果的に抑制されていたが、摩耗によるグロス値の低下が著しかった。