JP5765391B2 - 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法 - Google Patents
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Description
フルオープンタイプの缶蓋は、缶蓋の外周縁に沿って開口用溝が形成され、缶蓋外周縁近くのパネル部に取り付けられたタブを指先等で引き上げることによって、開口片を缶蓋から切り離すようになっている。
このような背景から、近年、食品缶詰の缶蓋の材料に、樹脂皮膜が損傷を受けても錆の生じないアルミニウムが使用されているが、アルミニウムの使用は、コスト高となる上、リサイクルの点からも問題がある。
特定の樹脂構成からなるポリエステル樹脂を鋼板との密着層とし、さらに密着層の上層にポリエステルフィルムを積層した樹脂被覆鋼板からなる缶蓋に、底断面形状および最薄部の厚さを規定した開口用溝を形成することで、開口用溝加工部の最薄部においてもフィルム損傷が生ずることなく、更にはレトルト処理による樹脂の色調変化(以後、レトルト白化現象と称す)の抑制など多くの機能を有する、子供や老人でも容易に開缶することができる、開缶性に優れた樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋を得ることができる。
[1]ポリエステルを主成分とする樹脂層を両面に有する樹脂被覆鋼板からなる缶蓋の両面に開口用溝が形成され、該開口用溝を破断することにより開缶する樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋であり、前記樹脂層は、複層構造であり、鋼板との密着層となる樹脂層がブロックフリーイソシアネート化合物を含有し、前記密着層の上層に形成するポリエステル樹脂層の残存配向度は2%〜30%であり、前記開口用溝の底断面形状は半径0.1mm〜0.5mmの曲面であり、かつ、最薄部の厚さが0.035mmから0.075mmであることを特徴とする樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
[2]前記[1]において、前記ブロックフリーイソシアネート化合物中に含まれるNCO基のモル数は、前記密着層を形成するポリエステル樹脂層に含まれるOH基のモル数の0.5倍以上15.0倍以下であることを特徴とする樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
[3]前記[1]または[2]において、前記密着層となるポリエステル樹脂層の付着量は、0.1g/m 2 以上3.0g/m 2 以下であることを特徴とする樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記密着層中に着色剤を含むことを特徴とする樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、前記密着層中に腐食抑制剤を5PHR以上含むことを特徴とする樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかにおいて、前記密着層中に導電性ポリマーを0.5PHR以上5.0PHR以下含むことを特徴とする樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかにおいて、前記密着層の上層を形成するポリエステル樹脂層はポリエステルフィルムから形成され、該ポリエステルフィルムは以下のいずれかを満足し、かつ、面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであり、式(1)に示される相対標準偏差が0.5以下であり、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2で、モース硬度が7未満である粒子を0.005〜10質量%含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
ア)ポリエステルの構成単位の93質量%以上がエチレンテレフタレート単位
イ)ポリエステルの構成単位の93質量%以上がエチレンナフタレート単位
ウ)ポリエステルの構成単位の93質量%以上がエチレンテレフタレート単位およびエチレンナフタレート単位
のいずれかである。
このように、本発明では、両面に樹脂層が形成された鋼板からなる缶蓋に開口用溝を形成する際に、缶蓋の両面に形成されているめっき層および樹脂被膜層の損傷による補修塗装を必要とせず、しかも、子供や老人でも容易に開缶することができる、開缶性の優れたイージーオープン缶蓋が得られ、工業上有用な効果がもたらされる。
まず、缶蓋に用いる本発明の鋼板について説明する。
本発明の鋼板としては、缶用材料として広く使用されている軟鋼板等を用いることができる。特に、下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物からなる二層皮膜を形成させた表面処理鋼板(以下、TFSと称す)等が最適である。
樹脂層は、複層構造のポリエステル樹脂層からなる。そして、ポリエステル樹脂層のうちの、鋼板の上層に形成する密着層は、ポリエステルを主成分とする樹脂層からなり、ブロックフリーイソシアネート化合物を含有する。
更に、密着層中に、染料、顔料などの着色剤を添加することで、下地の鋼板を隠蔽し、樹脂独自の多様な色調を付与できる。例えば、黒色顔料として、カーボンブラックを添加することで、下地の鋼色を隠蔽するとともに、黒色のもつ高級感を食品缶詰に付与することができる。カーボンブラックの添加量は、5PHR以上40PHR以下が望ましい。5PHR未満では黒色度が不十分であるとともに下地鋼の色調が隠蔽できず、高級感のある意匠性を付与できない場合がある。一方、40PHR超としても、黒色度は変化しないため意匠性の改善効果は得られないばかりか、ポリエステル樹脂の構造が脆弱となるため、製蓋加工時に樹脂層が容易に破壊してしまう場合がある。添加量を5PHR以上40PHR以下の範囲とすることで、意匠性と他の要求特性との両立が可能となる。
アゾ系顔料の添加量は、対象樹脂層に対して、10〜40PHRとすることが望ましい。添加量が10PHR以上であれば、発色に優れるので好適である。40PHR以下の方が、透明度が高くなり光輝性に富んだ色調となる。
樹脂被覆鋼板が保管・運搬される際には40℃程度の温度で長時間保持される可能性があるため、ガラス転移点は50℃以上であることが必要である。一方、ガラス転移点の上限は85℃に規定する。ガラス転移点が85℃を超えるポリエステルポリマーは、軟化点が上昇してしまい、本発明で規定する軟化点200℃以下の範囲を維持し難くなるためである。
密着層の上層に形成するポリエステル樹脂層としては、レトルト後の味特性を良好とする点、および製蓋工程での摩耗粉の発生を抑制する点から、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とすることが望ましい。すなわち、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルとは、ポリエステルの構成単位の93重量%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であるポリエステルである。さらに好ましくは95重量%以上である。金属缶に食品を長期充填しても味特性が良好であるので望ましい。
本発明で用いるポリエステル樹脂における粒子とは、組成的には有機、無機を問わず特に制限されるものではない。
耐摩耗性、加工性、味特性等の点から面積換算平均粒子径は0.005〜5.0μmであることが好ましい。さらに好ましくは0.01〜3.0μmである。
また、本発明の効果を妨げない範囲において、他の粒子、例えば各種不定形の外部添加型粒子、及び内部析出型粒子、あるいは各種表面処理剤を添加しても構わない。
(1)ラミネート前の配向ポリエステル樹脂(もしくは配向ポリエステルフィルム)及びラミネート後の樹脂(もしくはフィルム)について、X線回折強度を2θ=20〜30°の範囲で測定する。
(2)2θ=20°、2θ=30°におけるX線回折強度を直線で結びベースラインとする。
(3)2θ=22〜28°近辺にあらわれる最も高いピークの高さをベースラインより測定する。
(4)ラミネート前のフィルムの最も高いピークの高さをP1、ラミネート後のフィルムの最も高いピークをP2とした時、P2/P1×100を残存配向度(%)とする。
本発明の容器用ポリエステル樹脂被覆鋼板は、まず、上記からなる密着層をポリエステルフィルムの表面に形成する。次いで、鋼板とポリエステルの界面に密着層が存在するように、ポリエステルフィルムを鋼板表面にラミネートする。
本発明に規定するポリエステル樹脂を溶解させるための有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン溶剤、酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤などを挙げることができ、これらの1種以上を適宜選定して使用することができる。
また、本発明で規定するブロックフリーイソシアネート化合物や、長鎖アルキル基を側鎖に有する疎水性ポリオール樹脂、着色剤としてカーボンブラック、アゾ系顔料などの添加剤は、有機溶剤中に分散させて使用するのが望ましい。この際、分散剤を併用すると、添加剤の均一性が付与できるため、好適である。
本発明では、例えば、鋼板を加熱装置(例えば、図2中、鋼板加熱装置5)にて一定温度以上に昇温し、その表面にポリエステルフィルムを圧着ロール(以後、ラミネートロールと称す)を用いて接触させ熱融着させる方法を用いることができる。このとき、コーティングした面を圧着ロール(以後ラミネートロールと称す)を用いて鋼板に接触させ熱融着させることが必要である。以下、ラミネート条件の詳細について記す。
図3は、本発明のイージーオープン缶蓋の一実施態様を示す、缶蓋に形成された開口用溝部分の断面図である。この実施態様においては、図3に示すように、両面に樹脂フィルム層3を有する、厚さt0の缶蓋1の表面1a及び裏面1bに、各々半径(R)が0.1〜0.5mmであって、その最薄部2aの厚さ(ts)が0.035〜0.075mmの範囲内の、断面が曲面形状の開口用溝2が形成されている。
まず、密着層の上層に形成するポリエステルフィルムを製造する。ジオール成分とジカルボン酸成分を、表1および表2に示す比率にて重合したポリエステル樹脂を乾燥、溶融、押し出しし、冷却ドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸・熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(1)粒径比、面積換算平均粒子径、数平均粒子径、粒子径の測定及び相対標準偏差σの計算
粒子をポリエステルに配合し、0.2μmの厚みの超薄片にカッティング後、透過型電子顕微鏡で、少なくとも50個の粒子について観察し粒子径の測定を行なった。相対標準偏差σ、数平均粒子径の計算式は下記の通りである。
ダイアモンド・砥石などで平滑な平面に仕上げた順位にある標準鉱石を用意する。各々の面を合わせ、その間に、粒子を挟んで擦り動かし、下位の基準鉱石にキズがつき、上位の基準鉱石にキズがつかない場合、その粒子の硬さは両基準鉱石の中間にあるものとした。
(3)開缶性(ポップ値)
引張試験機を用い、缶蓋に取り付けたタブを一定の速度で引き起こし、蓋開口部が開き始める最初の段階における極大ピーク値によって評価した。
(評点について)
◎:18(N)未満
○:18(N)以上22(N)未満
△:22(N)以上27(N)未満
×:27(N)以上
(4)開缶性(ティア値)
引き裂き開缶値は、タブを蓋面と90度の角度まで引き起こした後、蓋面に対して垂直方向に引き上げた時に観測される初期の極大ピーク値を評価した。
(評点について)
◎:40(N)未満
○:40(N)以上60(N)未満
△:60(N)以上70(N)未満
×:70(N)以上
(5)樹脂皮膜の損傷度の評価(通電試験)
3%塩化カリウム溶液を電解液とし、供試体(缶蓋)を陽極、白金電極を陰極として、印加電圧6.2Vで4秒間通電後の電流値を計測し、評価した。
◎:0.001(mA)未満
○:0.001(mA)以上0.01(mA)未満
△:0.01(mA)以上0.1(mA)未満
×:0.1(mA)以上
(6)耐衝撃性
各供試体(缶蓋)につき10個を、水道水を充填した缶胴部に巻き締めて密閉した。缶を蓋を下向きにして、高さ1.0mから塩ビタイル床面に落下させ、衝撃力が付加されたときの衝撃破壊の有無によって評価した。
(評点について)
○:開口用溝加工部の破損なし
×:開口用溝加工部に破損あり
(7)耐レトルト白化性
缶内に常温の水道水を満たした後、本発明の供試体および比較用の供試体である蓋を巻き締めて密閉した。その後、蓋を下向きにしてレトルト殺菌炉の中に配置し、125℃で90分間、レトルト処理を行った。処理後、缶底部外面の外観変化を目視で観察した。
(評点について)
◎:外観変化なし
○:外観にかすかな曇り発生
△:外観が白濁(白化発生)
×:外観が顕著に白濁(顕著な白化発生)
以上により得られた結果を表4に示す。
2 開口用溝
3 樹脂層
4 鋼板(クロムめっき鋼板)
5 鋼板加熱装置
6 ラミネートロール
7a、7b フィルム
8 鋼板冷却装置
9 加工工具
10 蓋板
Claims (7)
- ポリエステルを主成分とする樹脂層を両面に有する樹脂被覆鋼板からなる缶蓋の両面に開口用溝が形成され、該開口用溝を破断することにより開缶する樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋であり、
前記樹脂層は、複層構造であり、鋼板との密着層となる樹脂層が、ポリエステル樹脂を主成分とし、ブロックフリーイソシアネート化合物を含有し、
前記ブロックフリーイソシアネート化合物中に含まれるNCO基のモル数は、前記密着層を形成するポリエステル樹脂層に含まれるOH基のモル数の0.5倍以上15.0倍以下であり、
前記密着層の上に形成するポリエステル樹脂層の残存配向度は2%〜30%であり、
前記開口用溝の底断面形状は半径0.1mm〜0.5mmの曲面であり、かつ、最薄部の厚さが0.035mmから0.075mmであることを特徴とする樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。 - 前記密着層となるポリエステル樹脂層の付着量は、0.1g/m 2 以上3.0g/m 2 以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
- 前記密着層中に着色剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
- 前記密着層中に腐食抑制剤を5PHR以上含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
- 前記密着層中に導電性ポリマーを0.5PHR以上5.0PHR以下含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
- 前記密着層の上に形成するポリエステル樹脂層はポリエステルフィルムから形成され、該ポリエステルフィルムは以下のいずれかを満足し、かつ、面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであり、式(1)に示される相対標準偏差が0.5以下であり、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2で、モース硬度が7未満である粒子を0.005〜10質量%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
ア)ポリエステルの構成単位の93質量%以上がエチレンテレフタレート単位
イ)ポリエステルの構成単位の93質量%以上がエチレンナフタレート単位
ウ)ポリエステルの構成単位の93質量%以上がエチレンテレフタレート単位およびエチレンナフタレート単位
のいずれかである。
- 両面に樹脂層が被覆された鋼板からなる缶蓋パネルに対し、先端半径0.1mm〜0.5mmの曲面型である上下1対の金型を使用し、最薄部の厚さが0.035mmから0.075mmの範囲内となるように押圧成形を施すことによって、請求項1〜6のいずれかの缶蓋を製造することを特徴とする樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋の製造方法。
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