JP3980962B2 - 非結晶性積層ポリエステルシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性及び二次加工性に優れたポリエステルシート、詳しくは、自動販売機内の電飾広告表示板すなわちバックライト付き広告表示板などに用いる透光板シートや、成形加工した電飾用成形広告体、例えば飲料缶を模した成形ダミー缶やタバコを模したダミーケースなどに好適に用いることができる積層ポリエステルシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、広告表示板などに用いる透光板シートとしては、軽量でかつ加工性に富むアクリル樹脂シートや、ガラスとポリカーボネートを積層した透明性の高い積層シート等が使われていたほか、例えば酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの不活性粒子を0.1〜20重量%配合して作製する広告塔や夜間点灯タイプの看板等に用いる遮光性ポリエステルシート(特開平9−1684号参照)や、炭酸カルシウムや酸化チタンなどの光拡散剤を0重量%〜1.4重量%含むポリエチレンテレフタレート樹脂シートであって、該シートの少なくとも片面を艶消し加工することによって全光線透過率を30〜90%かつ拡散透過率を20〜70%としてなるポリエチレンテレフタレート樹脂シート(特開平10−7819号など)などのポリエステルシートも使われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
自動販売機などに用いるバックライト付き広告表示板には、光拡散性や光透過性が求められるほか、太陽光やバックライト、飲料の加熱ヒーターなどの熱に耐え得る耐熱性、更には印刷特性や成形性などの二次加工性が要求される。
【0004】
しかし、ポリエステルシートは一般的に耐熱性に劣るため、ポリエステルシートに関して種々の提案はあったものの、実際には耐熱性に優れたポリカーボネートが多用されていた。
【0005】
ところで、自動販売機の前面部の広告において、タバコや飲料缶など、その商品に似せた所謂ダミー体を展示することがある。具体的には例えば、展示用ダミー体の陳列台の裏面側にけい光灯等の光源を設け、その光源より展示用ダミー体を内部発光させ、同時に上方に設けた光源によってダミー体の表面を照明する展示方法があり、内部からの発光によってダミー表面の絵柄や字が浮き上がるため、識別性や宣伝効果が向上させることができる。
従来この種のダミー体は、例えば透明で且つ筒状のシュリンクラップフィルムに販売対象商品を表示する商品表示体の文字・画像とディスプレイ画像とを印刷し、このフィルムを、それの商品表示体を透明容器に被せ、これを熱収縮させて透明容器にラッピングさせてディスプレイ画像を透明容器の前面部から透視できるようにしたものなどがあり、その本体は、耐侯性の優れた光透過性の合成樹脂材料、例えばポリカーボネイト、ポリ塩化ビニール、アクリル、ポリプロピレン等によって成形され、特に耐熱性が要求される場合にはポリカーボネイトが最適であるとされていた(特開平09−270060号、特開平07−219443号参照)。
【0006】
ポリカーボネート製のシートは、耐熱性には優れているものの、耐溶剤性に劣るため印刷インキによるクラックが発生したり、樹脂のガラス転移温度が高いために成形温度域が高くて成形が容易でなかったり、滑りが悪いためにカット板にしたときにブロッキングを起したり、傷が付きやすいのでマスキングフィルムを貼ることが多く、このために印刷作業性が悪かったり、印刷を行う際に印刷インキの抜け等が発生するなど、二次加工に伴う多くの課題を抱えていた。
【0007】
そこで本発明は、耐熱性に優れ、しかも印刷性や成形性などの2次加工性にも優れており、バックライト付きの広告表示板やバックライト付きの成形品として使われるシートなどとして好適に利用することができるポリエステルシートを提供せんとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的達成のため、本発明は、熱変形温度が50℃以上85℃以下のエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂からなる基体層の片面又は両面に、引張弾性率200kg/mm2以上、熱変形温度100℃以上のポリエステル樹脂100重量部、及び平均粒径3〜15μmで屈折率1.4〜1.7である不活性粒子0.05〜1.0重量部を配合してなる被覆層を積層してなる構成を備えた非結晶性積層ポリエステルシートを提案する。
【0009】
本発明はまた、基体層の片面又は両面に被覆層を積層してなる構成の非結晶性積層ポリエステルシートであって、熱変形温度が50℃以上85℃以下のエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂からなる基体層形成樹脂と、引張弾性率200kg/mm2以上、熱変形温度100℃以上のポリエステル樹脂100重量部及び平均粒径3〜15μm、屈折率1.4〜1.7の不活性粒子0.05〜1.0重量部を配合してなる被覆層形成樹脂とを、それぞれ溶融状態で押出し、キャストロールで急冷固化させて得られる非結晶性積層ポリエステルシートを提案する。基体層形成樹脂とは基体層を形成するための樹脂の意であり、被覆層形成樹脂とは被覆層を形成するための樹脂の意である。
【0010】
エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂に不活性粒子を配合して作製した単層のポリエステルシートは、一般的に耐熱性に劣るほか、成形金型へ密着するため成形性が悪かったが、これに対して本発明の非結晶性積層ポリエステルシートは、所定範囲の引張弾性率及び熱変形温度を備えたポリエステル樹脂に所定の平均粒径と屈折率とを備えた不活性粒子を所定量配合してなる被覆層を積層することにより、耐熱性に優れ、金型密着等に関する熱成形性にも優れ、しかもヘーズも良好で、さらには印刷特性にも優れたものとすることができる。
特に、熱変形温度が50℃以上85℃以下のエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂を主材として基体層を形成し、引張弾性率200kg/mm2以上、熱変形温度100℃以上のポリエステル樹脂を主材として被覆層を形成して積層構成シートとしたことにより、シートの2次加工性を高める機能を基体層に付与し、被覆層には耐熱性、特に100℃程度の高温域での形態保持能を高める機能を付与することができた。よって、例えば熱成形加工などを行う際、被覆層は成形温度域では熱変形温度に近い温度になるが、柔軟になり過ぎないために加熱板や成形型への密着が少ないばかりか、基体層のドローダウンを防止する効果も発揮し、特に熱成形性の面で優れた効果をシート全体に与えることができる。
【0011】
このように本発明の非結晶性積層ポリエステルシートは、耐熱性、印刷性、熱成形性などの二次加工性に優れているから、自動販売機内の電飾広告表示板、すなわちバックライト付き広告表示板などに用いる透光板用シートや、バックライト付きの成形品(例えば飲料缶を模した成形ダミー缶やタバコを模したダミーケースなど)に用いる成形用透明シートなどとして好適に用いることができる。
【0012】
なお、本発明における「非結晶性」は、結晶部を含んでいても実質的に非結晶であればよい。一般的にポリエステル樹脂は、結晶性をもっているが、溶融状態で押出し、キャストロールで急冷固化することにより結晶性が低い状態すなわち非結晶性を保持することができる。
【0013】
また、本発明において「ポリエステル樹脂」とは、ジカルボン酸成分とジオール成分とを縮重合させて得られる樹脂を意味する。
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸を挙げることができるが、テレフタル酸の一部が他のジカルボン酸の構造で置換されたものでもよい。この場合の他のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ネオペンチル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、p−オキシ安息香酸などを挙げることができる。なお、他のジカルボン酸成分は、前記列挙したジカルボン酸成分のうちから選択された一種の樹脂でも、或いは二種以上の組合わせからなる混合物であってもよい。また、置換される他のジカルボン酸の量は適宜選択することができる。
他方、ジオール成分としては、例えばエチレングリコールが挙げることができるが、エチレングリコールの一部が他のジオール成分で置換されたものでもよい。
この場合の他のジオール成分としては、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロール、メトキシポリアルキレングリコールなどを挙げることができる。なお、他のジオール成分は、前記列挙したジオール成分のうちから選択された一種の樹脂でも、或いは二種以上の組合わせからなる混合物であってもよい。また、置換される他のジオールの量は適宜選択することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の非結晶性積層ポリエステルシート(以下「本積層PSシート」という。)は、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂から基体層を形成し、その片面又は両面に、ポリエステル樹脂及び不活性粒子を配合してなる被覆層を積層させて構成することができる。
【0015】
基体層に用いる「エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂」としては、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとを縮重合させたポリエチレンテレフタレートを挙げることができるが、当該テレフタル酸の一部を他のジカルボン酸成分に変更し、及び/又は前記エチレングリコールの一部を他のジオール成分に変更したエチレンテレフタレート系共重合ポリエステル樹脂をも好ましく用いることができる。なお、この際の「他のジカルボン酸成分」及び「他のジオール成分」としては、上記の本発明における「ポリエステル樹脂」の説明部分で挙げた「他のジカルボン酸成分」及び「他のジオール成分」を用いることができる。
その中でも、エチレングリコール95〜20モル%(特に好ましくは80〜50%モル)及び1,4−シクロヘキサンジメタノール5〜80モル%(特に好ましくは20〜50%モル)からなるエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルは特に好ましい一例として挙げることができる。このような共重合ポリエステル樹脂から基体層を構成すれば、ポリエチレンフタレート(PET)から基体層を構成した場合に比べ、結晶性が低いか或いはほとんどなく、しかも成形温度域での弾性率が比較的高いため、成形加工をする際にドローダウン及び結晶化による白化を防止することができるほか、高温域での結晶化の進行を抑えることもできる。
なお、ポリエチレンテレフタレート(PET)と上記エチレンテレフタレート系共重合ポリエステルとの混合物から基体層を形成することも可能であるし、また、複数種類のエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルの混合物から基体層を形成することも可能である。
【0016】
基体層に用いる「エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂」は、熱変形温度が50〜85℃、中でも65〜85℃のポリエステル樹脂であるのが好ましい。ここでの熱変形温度は、JIS K−7196のTMAによる針入れモードに基づく軟化温度試験により求めることができる。
熱変形温度が50℃未満であると、使用温度域でのシートの柔軟性が大きくなり、変形などが生じやすく実用上使用できなくなる。他方、熱変形温度が85℃を超えると、折り曲げ加工性が低下したり、熱成形加工を行う際により高温で実施せざるを得なくなり2次加工性が低下したりするため好ましくない。
【0017】
他方、被覆層に用いる「ポリエステル樹脂」としては、引張弾性率が200kg/mm2以上、特に200〜300kg/mm2、熱変形温度が100℃以上、特に100〜120℃のポリエステル樹脂を用いるのが好ましい。
引張弾性率を200kg/mm2以上に制限する理由は、基体層の熱変形温度以上で被覆層の熱変形温度未満の温度域では、被覆層の熱変形温度に達していないので被覆層の熱変形は生じないが、引張弾性率が200kg/mm2未満であると被覆層の樹脂そのものが柔軟であるため、シートの形態保持が実用上難しくなるためである。
また、熱変形温度を100℃以上に制限する理由は、100℃程度の高温域での形態保持に耐え得る耐熱性を保持するためである。
このような物性を備えたポリエステル樹脂であれば、複数種類のポリエステル樹脂の混合物であってもよく、例えば引張弾性率が200kg/mm2未満、又は熱変形温度が100℃未満のポリエステル樹脂が一部に含まれていても混合物全体として上記の物性を備えていれば好ましく用いることができる。
【0018】
被覆層に用いる「ポリエステル樹脂」は、上記の物性を備えたポリエステル樹脂であればその種類を特に制限するものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分とを等モルで縮重合させて得られるポリエステル樹脂であって、ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含み、かつ、ジオール成分としてエチレングリコールを含むエチレンナフタレート系ポリエステル樹脂を用いるのが、熱変形温度の高さ及びコストの面から特に好ましい。
また、熱変形温度の観点からすると、繰り返し単位の少なくとも50モル%以上、好ましくは60〜100モル%がエチレンナフタレート単位で構成されるポリエステル樹脂を被覆層を構成するポリエステル樹脂として選択するのが好ましく、エチレンナフタレート系ポリエステル樹脂のみから構成されていても、他のポリエステル樹脂が含まれていても構わない。
【0019】
基体層及び被覆層に使用するポリエステル樹脂の固有粘度は、0.4以上、特に0.5以上であるのが好ましい。極限粘度が0.4未満のポリエステル樹脂を使用して製品を成形すると、得られる製品の機械的強度が不足するようになり、特に低温状態での衝撃強度が低下して実用できなくなるおそれがある。
【0020】
被覆層に配合する「不活性粒子」としては、例えばカーボンブラック、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、雲母チタン、ガラスビーズ、フレカ、シリカ、マイカ、リトボン、バライト、カオリン、クレー、ゼオライト、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸鉛、酸化アンチモンなどを挙げることができるが、中でも、シリカ、アルミノシリケート、タルクなどの無機系粒子や、スチレン系樹脂の架橋粒子などを好ましく使用することができる。
【0021】
不活性粒子の平均粒径は3〜15μm、中でも5〜12μmが好ましい。3μm未満の平均粒径では、シートにしたとき表面の凹凸が小さく、印刷等などの2次加工時の給紙性が不充分であり好ましくない。逆に15μmを超える平均粒径では、凹凸が大きくなり、シートの外観や透明性が悪くなり好ましくない。
なお、「不活性粒子の平均粒径」は、コールカウンター(例えば日本化学機械社製)を使用して計測し、累積重量分率が50%なる時の平均粒径として求めることができる。
【0022】
不活性粒子の屈折率は1.4〜1.7、中でも1.45〜1.65であるのが好ましい。ポリエステル樹脂の屈折率は通常1.57前後であり、ポリエステル樹脂の屈折率との差が大きな不活性粒子を使用するとシートの外観や透明性が悪くなり好ましくない。
なお、「不活性粒子の屈折率」は、屈折率既知の液体中に不活性粒子を浸した際、不活性粒子と液体との混合物の屈折率はそれぞれの成分自体の屈折率と不活性粒子の割合に依存するので、この不活性粒子を浸した液体の屈折率をアツベ屈折率計で測定し、不活性粒子と液体の割合から屈折率を算出することができる。
【0023】
不活性粒子の配合量は、被覆層に使用するポリエステル樹脂100重量部に対して、0.05〜1.0重量部、特に0.1〜0.7重量部配合するのが好ましい。0.05重量部未満ではシート滑りの改良効果が認められない。その一方、1.0重量部を超える添加量ではシートの外観や透明性が悪くなる可能性があり好ましくない。
なお、複数種類の不活性粒子を組み合わせて使用しても、平均粒径及び屈折率が上記範囲にあれば好ましく用いることができる。
【0024】
ポリエステル樹脂に不活性粒子を配合する方法としては、現在公知である任意の方法を採用することができ、特に限定するものではない。例えば、重合時に添加したり、重合後の熱可塑性樹脂にブレンダーを使用して混合したり、不活性粒子等の高濃度のマスターバッチを予め作成しておき、希釈して熱可塑性樹脂に混合したりして、配合することができる。
【0025】
本積層PSシートは、実質的に結晶化していない状態の無延伸シート(非結晶性の無延伸シート)とするのが好ましい。無延伸シートとは、シートの強度を高める目的で積極的に延伸しないシートを意味し、例えば、押出成形の際に延伸ロールによって2倍未満に延伸されたものは無延伸シートに含めるものとする。
また、本発明の趣旨を損なわない限り、基体層、被覆層のいずれか或いは両層に有機系の滑剤、ワックス、帯電防止剤、紫外線吸収剤、衝撃改良剤等を配合することも、また、シート表面に帯電防止剤、シリコーン、ワックスなどをコーティングすることも可能である。
【0026】
本積層PSシートの厚さは、特に規定はしないが、例えば50〜2000μm、好ましくは150〜1000μmの範囲で選択することができる。また、表面被覆層の厚さも特に規定はしないが、被覆層の厚さは、シート全体の厚さに対して5〜50%、特に10〜30%の範囲に設定するのが好ましい。5%以下では、シートの使用環境によって変形等が生じる可能性があり、50%を超えると透明性が悪くなり好ましくない。
【0027】
本積層PSシートを製造するには、(a)予め各層をシート成形した後、熱又は接着剤により貼り合わせて積層させる方法、(b)予め被覆層のみをシート成形しておき、基体層を押出機のTダイから押出した直後に被覆層を熱接着する方法、(c)各層をそれぞれ別の押出機で溶融押出し、ニップロールにて溶融接着する方法、(d)各層をそれぞれ別の押出機で溶融し、各層ダイを用いて溶融積層して積層シートとして押し出す方法など、現在公知の任意の方法によって基体層及び被覆層からなる積層シートを形成すればよい。
【0028】
この際、本積層PSシートを、実質的に結晶化していない状態の無延伸シート(非結晶性の無延伸シート)に成形するには、基体層形成樹脂及び被覆層形成樹脂のそれぞれ或いはそれら両方を溶融押出後急冷固化するなどすればよく、具体的には、押出成形で押出機に供給し、溶融状態でTダイより押出し、キャストロールで急冷固化させるようにすればよい。
【0029】
本積層PSシートは、使用目的に応じて、ロール状、枚葉状など適宜形状に仕上げればよい。例えば、シート化した後カット装置を通して枚葉状にカットすることも、コイル状に巻き取ることもできる。
【0030】
本積層PSシートは、必要に応じて、真空成形、圧空成形、プレス成形等により、シートを折り曲げ加工したり、その他各種形状に成形するなどの二次加工を行うことができ、成形加工した電飾用成形広告体、例えば飲料缶を模した成形ダミー缶やタバコを模したダミーケースなどを成形することができる。
【0031】
また、本積層PSシートの被覆層は、印刷性、特に耐熱性が要求される印刷性に優れているため、シート表面に絵柄層(すなわち印刷層)を設けるのに適している。
シート表面に絵柄層(印刷層)を設けるには、シート表面に直接印刷を施してもよいし、別の熱可塑性樹脂シートや合成紙などに印刷を施したものをラミネート等(ドライラミネーション、逐次押出ラミネーション、共押出など)を行って貼り合わせることも可能である。
直接印刷については、UVオフセット印刷、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷など、公知の方法に用いることができる。
このように本積層PSシートは、絵柄層(印刷層)を設けるのに適しており、しかも耐熱性にも優れているから、例えば耐熱性が欲求される自動販売機内の電飾POP用の広告用基材シートや、電飾広告体(飲料缶を模した成形ダミー缶やタバコを模したダミーケースなど)などとして好適に使用することができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例と比較例とを比較しながら、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1〜3、6〜11及び比較例1〜13)
表1及び2に示す配合の原料を用意し、2台の2軸ベント式押出機にてそれぞれの原料を溶融混合し、2種3層のTダイを用いて押出した後、40℃の鏡面のキャストロールで急冷し、非結晶性の積層ポリエステルシートを得、得られたシートをカット装置へ供給し、枚葉状のシートを作製した。
このように作製したシートそれぞれについて、以下に示す評価方法で評価し、その結果を表1及び表2に示した。
【0034】
「ポリエステル樹脂」
A:テレフタル酸とエチレングリコールを縮重合させたポリエチレンテレフタレート (熱変形温度72℃、極限粘度0.75)
B:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸と、ジオール成分としてエチレングリコール 70%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール30モル%の混合物を縮重合させて得られた共重合ポリエステル(熱変形温度81℃、極限粘度0.8)
C:ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分としてエチレングリコールを縮重合させて得られたポリエステル(熱変形温度122℃、極限粘度0.6)
D:ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸92モル%及びテレフタル酸8モル%の混合物とジオール成分としてエチレングリコールを縮重合させて得られた共重合ポリエステル(熱変形温度117℃、極限粘度0.65)
E:ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸30モル%及びテレフタル酸70モル%の混合物とジオール成分としてエチレングリコールを縮重合させて得られた共重合ポリエステル(熱変形温度92℃、極限粘度0.65)
F:ポリエステル系エラストマー成分を共重合させたポリエステル(商品名:東洋紡製コスモソフトJP−910、熱変形温度160℃、極限粘度0.8)
【0035】
「不活性粒子」
ア:アルミノシリケート(屈折率1.50 平均粒径 8μm)
イ:アルミノシリケート(屈折率1.50 平均粒径 2μm)
ウ:アルミノシリケート(屈折率1.50 平均粒径18μm)
エ:シリカ (屈折率1.46 平均粒径 8μm)
オ:酸化マグネシウム (屈折率1.73 平均粒径 8μm)
【0036】
評価1.耐熱性試験
加熱伸縮性試験 JIS K−7133に準拠して、枚葉状のサイズ100mm×100mmのサンプルを採取し、100℃×10分で加熱伸縮率を測定し、シートの伸縮率とシートの変形性(反りや浮き)とを下記基準で評価した。
なお、下記基準において、「○」及び「△」は実用可能なレベルにあり、「×」は実用に適さないと評価できる。
【0037】
(評価基準)
「○」・・・加熱伸縮率が±0.5%以内かつ、平面にシートを置いたときの反りや浮きが2mm以下。
「△」・・・加熱伸縮率が±1%以内かつ、平面にシートを置いたときの反りや浮きが4mm以下。
「×」・・・加熱伸縮率が±1%を超えるか、平面にシートを置いたときの反りや浮きが4mmを超える。
【0038】
評価2.透明性外観
得られたシートの透明性を、JIS K−7105に準拠してヘーズメーターによりヘーズ(拡散光線透過率/全光線透過率)を測定して評価した。ヘーズが15%以下のものは、実用可能レベルであると評価できる。
【0039】
評価3.滑り性
得られたシートの滑り性を、JIS K−7215に準拠してシート表面と裏面の接触面の摩擦係数を測定することにより確認した。静止摩擦係数及び動摩擦係数ともに0.5以下であるものは実用可能レベルであると評価できる。
【0040】
評価4.熱成形性
得られたシートを一般的なブリスター成形温度である120℃に加温し、ブリスター成形加工を行った。成形性及び成形型との密着性を「○」〜「×」で評価した。この際、「○」及び「△」は実用可能なレベルにあり、「×」は実用に適さないと評価できる。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
上記実施例1〜3、6〜11の積層ポリエステルシートを用いることにより、耐熱性が要求され、印刷機などへの自動給紙ができる滑り性や折曲加工や熱成形加工性などの2次加工性に優れたシート、特に自動販売機内のバックライト付き広告表示板などに好適に使用されるシートを提供することができる。
Claims (6)
- 熱変形温度が50℃以上85℃以下のエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂からなる基体層の片面又は両面に、引張弾性率200kg/mm2以上、熱変形温度100℃以上のポリエステル樹脂100重量部、及び平均粒径3〜15μm、屈折率1.4〜1.7の不活性粒子0.05〜1.0重量部を配合してなる被覆層を積層してなる構成を備え、かつ、被覆層の厚さを、シート全体の10〜30%の範囲内とした非結晶性積層ポリエステルシート。
- 基体層の片面又は両面に被覆層を積層してなる構成の非結晶性積層ポリエステルシートであって、熱変形温度が50℃以上85℃以下のエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂からなる基体層形成樹脂と、引張弾性率200kg/mm2以上、熱変形温度100℃以上のポリエステル樹脂100重量部及び平均粒径3〜15μm、屈折率1.4〜1.7の不活性粒子0.05〜1.0重量部を配合してなる被覆層形成樹脂とを、被覆層の厚さがシート全体の10〜30%の範囲内となるようにそれぞれ溶融状態で押出し、キャストロールで急冷固化させて得られる非結晶性積層ポリエステルシート。
- 基体層のエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂は、エチレングリコール95〜20モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール5〜80モル%からなることを特徴とする請求項1又2に記載の非結晶性積層ポリエステルシート。
- 被覆層のポリエステル樹脂は、繰り返し単位の少なくとも50モル%以上がエチレンナタフレート単位によって構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非結晶性積層ポリエステルシート。
- 請求項1〜4のいずれかの非結晶性積層ポリエステルシートの少なくとも片面に絵柄層を形成してなるバックライト付き広告表示板。
- 請求項1〜5のいずれかの非結晶性積層ポリエステルシートをブリスター成形加工して成る成形加工品。
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