JP4047652B2 - ポリエステル樹脂製化粧シート - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、家具、什器、キャビネット、建具、机、食器棚、家電製品などの表面に貼着して表面化粧を施すためのポリエステル樹脂製化粧シート、すなわちポリエステル樹脂を主材料とする化粧シートに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
家具、什器、キャビネット、建具、机、食器棚、家電製品などの表面に貼着する化粧シートの原料としては、熱成形性、耐摩耗性、耐薬品性、着色性などに優れたポリ塩化ビニル(PVC)が従来一般的に使用されてきたが、ポリ塩化ビニル(PVC)は焼却によって有害物質である塩化水素ガスなど発生するなど環境汚染等に関する問題が明らかになり、近年急速にPVC代替製品への移行が進められ、ポリエチレンなどのポリオレフィン製化粧シートや、ポリエステル樹脂製の化粧シートの開発が進められたきた。
【0003】
その中でポリエステル樹脂製シート、特に非晶質のポリエステル樹脂からなる化粧シートに関しては、ポリ塩化ビニル(PVC)などに比べ、一般的に耐溶剤性、耐薬品性、化粧シートとしての表面硬度や耐傷付き性、更には押出成形やブロー成形等における成形性などが充分に満足できるものではなかったため、これらの課題を解決するための研究開発が為され、幾つかの発明が開示されている。
【0004】
例えば特開平11−34269号は、非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂の耐溶剤特性を改善するため、非晶質ポリエチレンテレフタレート系着色フィルムを基材とし、必要に応じて絵柄印刷層を設け、さらに2液硬化型ウレタン樹脂の塗膜からなる表面保護層を設けると共に、該表面保護層にエンボス模様を形成してなる非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂系化粧シートを開示している。
【0005】
また、特開2002−79636号は、非結晶性ポリエチレンテレフタレートの耐溶剤性、耐衝撃性、加工時のロールへの粘着性、ストレスのかかるエッジ部分での保護層の密着などを改良すべく、非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂と、エポキシ化ジエン系ブロック共重合体とからなるフィルムの表面側にウレタン系樹脂の塗膜からなる表面保護層を設けると共に、表面保護層にエンボス模様を形成することを特徴とする非結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂系化粧シートを開示している。
【0006】
ところで、最近の化粧シートには、より複雑な被着体の輪郭に忠実に貼り合わせる需要が高まり、より複雑な形状に追随し得る優れた成形性が求められる。しかし、ポリエステル樹脂、特に非晶質ポリエステル樹脂の場合は成形性が充分でないため、例えば真空プレス成形、圧空プレス成形、メンプレンスプレス成形などを施して複雑な3次元立体形状への張り合わせを行おうとすると、成形部が極端に薄くなり、その部分が周辺部に比べ隠蔽性が低下し、最終製品の意匠性が落ちるなどの不具合があった。
【0007】
この課題に関して、例えば特開2002−113834号などは、結晶性ポリエステル樹脂(例えば非晶状態のポリエチレンテレフタレート樹脂)からなる基材シート上に、透明又は半透明の非結晶性ポリエステル樹脂(例えば非結晶性1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂層)を積層してなる化粧シートを提案している。
【0008】
また、ポリエステル樹脂、特に非晶質ポリエステル樹脂製の化粧シートの場合には、成形加工を行う際に成形温度域の熱により基材シートにプレスの型の転写等が発生するなどの表面外観低下の問題を抱えていた。
【0009】
本発明は、上記の如き課題に鑑み、複雑な熱成形加工を行う際の成形性が良好で、かつ成形可能温度域でプレス型の転写による外観低下のないポリエステル樹脂製化粧シートを提供せんとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するため、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂を90〜50重量%、ポリブチレンテレフタレート樹脂を10〜50重量%の割合で混合してなるポリエステル樹脂と、白色着色性の不活性粒子3〜30重量%とから基体層を形成し、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂と、白色着色性の不活性粒子0〜30重量%とからなる被覆層を前記基体層の片面又は両面に積層してなる構成を備え、溶融状態で押出し、キャストロールで急冷固化することにより結晶性が低い状態にある全光線透過率10%以下のポリエステル樹脂製化粧シートを提案する。
【0011】
本発明のシート構成では、基体層にブチレンテレフタレートを所定量配合することにより基体層の熱変形温度を低下させることができ、シートの成形温度可能域を低温側へシフトさせることができる。このため、低温側にシフトした成形可能域では、被覆層は、熱成形できるほどではないが、基体層の成形による変形に追随できる柔軟性と、プレス型への貼り付き及びプレス型の表面転写を起こさない耐熱性とを併せ持つことができ、このように低温側にシフトした成形温度域で成形加工を行うことにより成形後のシート表面の意匠性をより好ましくすることができる。
【0012】
上記構成を備えたポリエステル樹脂製化粧シートは、そのまま家具、什器、キャビネット、建具、机、食器棚、家電製品などの被着体表面に貼着して表面化粧を施すことも可能であるが、例えば上記構成を備えたポリエステル樹脂製化粧シートを基材シートとし、該基材シートに透明な熱可塑性樹脂シートを貼り合わせてポリエステル樹脂積層化粧シートとしたり、或いは更に、基材シートと熱可塑性樹脂シートとの間に絵柄層を形成してポリエステル樹脂積層化粧シートとしたりして、このポリエステル樹脂積層化粧シートを被着体表面に貼着するようにすることも可能である。
この際、被覆層のエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂として、テレフタル酸を主たる成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコール90〜10モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール10〜90モル%からなるグリコール成分とが縮重合してなるポリエステル樹脂を採用すれば、他の熱可塑性樹脂との接着性(特に接着剤とのなじみ)と、絵柄層等の印刷適性(特にインキのなじみ)とをともにより一層好ましいものとすることができる。
【0013】
以上の如き本発明のポリエステル樹脂製化粧シート又はポリエステル樹脂積層化粧シートは、板状材に貼り合わせて化粧板とすることができ、このような貼り合わせ品としての化粧板から箱体、キャビネット、化粧パネルを形成することができる。なお、前記の被貼り合わせ材(板状材)としては、木材、合板、パーティクルボード、紙板材、合成木材、家具などの素材となる集成材、玄関ドアなどの素材となるフラッシュパネルなどを挙げることができる。
【0014】
なお、本発明における「非結晶性」は、結晶部を含んでいても実質的に非結晶であればよい。一般的にポリエステル樹脂は、結晶性をもっているが、溶融状態で押出し、キャストロールで急冷固化することにより結晶性が低い状態すなわち非結晶性を保持することができる。
また、本発明において「テレフタル酸を主たる成分とするジカルボン酸成分」とは、テレフタル酸からなるジカルボン酸成分はもちろん包含するが、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分を含んでいても構わないという意であり、ジカルボン酸成分の80重量%以上がテレフタル酸であれば包含される。
また、本発明における「ポリエステル樹脂」とは、ジカルボン酸成分とジオール成分との等モルで縮重合させることによって得られるものを言う。
この縮重合に係るジカルボン酸成分の代表的なものとして、テレフタル酸を挙げることができるが、該テレフタル酸の一部が他のジカルボン酸で置換されたものでもよい。該他のジカルボン酸の成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ネオペンチル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などを挙げることができる。なお、他のジカルボン酸成分は、前記列挙したジカルボン酸成分のうちから選択された一種の樹脂でも、或いは二種以上の組合わせからなる混合物であってもよい。また、置換される他のジカルボン酸の量は適宜選択可能である。
他方、上記縮重合に係るジオール成分の代表的なものとしてエチレングリコールを挙げることができるが、エチレングリコールの一部が他のジオール成分で置換されたものでもよい。該他のジオール成分としては、プロピレングリコール、トリメチルグリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シククロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロール、メトキシポリアルキレングリコールなどを挙げることができる。なお、他のジオール成分は、前記列挙したジオール成分のうちから選択された一種の樹脂でも、或いは二種以上の組合わせからなる混合物であってもよい。また、置換される他のジオールの量は適宜選択可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の非結晶性ポリエステル化粧シートは、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂及びブチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂を混合してなるポリエステル樹脂と、不活性粒子とから基体層を形成し、この基体層の片面又は両面に、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂と不活性粒子とからなる被覆層を積層させて形成することができる。
【0016】
基体層に用いる「エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂」としては、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとが縮重合してなるポリエチレンテレフタレート(PET)、或いは、該テレフタル酸の一部が他のジカルボン酸成分に変更されてなる共重合ポリエステル樹脂、或いは該エチレングリコールの一部が他のジオール成分に変更されてなる共重合ポリエステル樹脂を好ましく用いることができ、この際の「他のジカルボン酸成分」及び「他のジオール成分」として上記ポリエステル樹脂の説明部で列挙した「他のジカルボン酸成分」及び「他のジオール成分」を挙げることができる。
【0017】
共重合ポリエステルとしては、ジカルボン酸成分の50%以上(好ましくは60%以上)がテレフタル酸であり、残りのジカルボン酸成分が他のジカルボン酸成分で置換されたジカルボン酸成分と、ジオール成分の50モル%以上(好ましくは60%以上)がエチレングリコールで、残りのジオール成分が他のジオール成分で置換されたジオール成分とが縮重合してなる共重合ポリエステルを特に好ましい例として挙げることができる。
ポリエチレンテレフタレート(PET)と上記の共重合ポリエステルとの混合物を基体層に用いることも、また、複数種類の共重合ポリエステルの混合物を基体層に用いることも可能である。
【0018】
基体層に用いる「ブチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂」としては、例えばテレフタル酸と1,4−ブタンジオールを主たる成分とするグリコール成分とが縮重合してなるポリエステル系樹脂を好ましい一例として挙げることができるが、そのほか、該テレフタル酸の一部が他のジカルボン酸成分に変更されてなる共重合ポリエステル樹脂、或いは該1,4−ブタンジオールの一部が他のジオール成分に変更されてなる共重合ポリエステル樹脂なども好ましい。この際の「他のジカルボン酸成分」及び「他のジオール成分」としては、上記ポリエステル樹脂の説明部で列挙した「他のジカルボン酸成分」及び「他のジオール成分」を挙げることができる。
【0019】
他方、被覆層に用いる「エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂」としては、基体層に使用し得るポリエステル樹脂を使用することができるが、中でも上記の共重合ポリエステル樹脂、その中でも特にエチレンテレフタレートをテレフタル酸を主たる成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコール90〜10モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール10〜90モル%からなるグリコール成分とが縮重合してなるポリエステル樹脂は特に好ましい。かかるポリエステル樹脂は、結晶性が低いか或いはほとんど示さないため、印刷する際にインキのなじみが良くなり、他の熱可塑性樹脂シートを貼り合わせを行う際の接着剤のなじみが良くなるなど、2次加工性の面で優れた効果を発揮する。
【0020】
基体層及び被覆層に使用するエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂及びブチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂の固有粘度はいずれも、0.4以上、特に0.5以上であるのが好ましい。極限粘度が0.4未満のポリエステル樹脂を使用して製品を成形すると得られる製品の機械的強度が不足するようになり、特に低温状態での衝撃強度が低下して実用に不向きとなるおそれがある。
【0021】
基体層及び被覆層に配合する「白色の不活性粒子」としてはいずれも、酸化チタン、硫酸パリウム、炭酸カルシウム等を用いることができる。この際、複数種類の不活性粒子を組み合わせて使用することもできる。
基体層への不活性粒子の配合量は、3〜30重量%、特に5〜20重量%とするのが好ましい。3重量%未満では目的とする高隠蔽のシートを得ることが難しく、逆に30重量%を超える配合量では機械的強度が低下してくるので好ましくない。
被覆層への不活性粒子の配合量は、0〜30重量%、特に0〜20重量%とするのが好ましい。被覆層は、主に熱成形時の熱変形防止や2次加工性向上の機能の役割を担う層であるため、白色の不活性粒子を加えずに透明な被覆層とすることも可能であるが、30重量%を超える配合量では機械的強度が低下してくるので好ましくない。
なお、基体層及び被覆層のいずれにも、本発明の趣旨を損なわない範囲で、他の着色顔料を組み合わせて配合することができる。例えば、青色、赤色、黄色、茶色などの顔料や、複数の顔料を組み合わせて配合することも可能である。
【0022】
基体層及び被覆層のベースとなる樹脂に不活性粒子や顔料を配合する方法は、現在公知である任意の方法を採用することができ、特に限定するものではない。例えば、重合時に添加したり、重合後の熱可塑性樹脂にブレンダーを使用して混合したり、不活性粒子等の高濃度のマスターバッチを予め作成しておき、希釈して熱可塑性樹脂に混合したりして、配合することができる。
【0023】
本非結晶性ポリエステル化粧シートの厚さは特に規定しないが、例えば、0〜1000μm、好ましくは150〜600μmの範囲で選ぶことができる。
被覆層の厚さも特に規定はしないが、例えば、被覆層の厚さがシート全体の厚さに対して2〜60%、特に5〜30%の範囲とするのが好ましい。
【0024】
本非結晶性ポリエステル化粧シートは、非結晶性の無延伸シート(すなわち、実質的に結晶化していない状態の無延伸シート)として全光線透過率10%以下とするのが好ましい。
ここで、「無延伸シート」とは、シートの強度を高める目的で積極的に延伸しないシートを意味し、例えば、押出成形の際に延伸ロールによって2倍未満に延伸されたものは無延伸シートに含まるものとする。
【0025】
本発明の趣旨を損なわない限り、基体層、被覆層のいずれか或いは両層にブロッキング防止剤、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸入剤、衝撃改良剤や他の有色の不活性粒子や顔料を添加することも可能である。また、シート表面に帯電防止剤、シリコーン、ワックスなどをコーティングしても差し支えない。また、キズ付着防止等の目的で表面保護シートの皮膜形成等を行うこともできる。
【0026】
本非結晶性ポリエステル化粧シートを製造するには、特に基体層に被覆層を積層させるには、(a)予め各層をシート成形した後、熱又は接着剤により貼り合わせて積層させる方法、(b)予め被覆層のみをシート成形しておき、基体層を押出機のTダイから押出した直後に被覆層を熱接着する方法、(c)各層をそれぞれ別の押出機で溶融押出し、ニップロールにて溶融接着する方法、(d)各層をそれぞれ別の押出機で溶融し、各層ダイを用いて溶融積層して積層シートとして押し出す方法など、現在公知の任意の方法によって基体層及び被覆層を積層すればよい。
【0027】
上記の製法において、本シートを非結晶性の無延伸シート(すなわち、実質的に結晶化していない状態の無延伸シート)として全光線透過率10%以下とするするには、基体層を形成する樹脂及び被覆層を形成する樹脂のそれぞれ或いはそれら両方を溶融押出後急冷固化すればよく、具体的には、押出成形で押出機に供給し、溶融状態でTダイより押出し、キャストロールで急冷固化させるようにすればよい。
【0028】
上記の如く積層シート(以下「基材シート」という)とした後は、使用目的に応じて、ロール状、枚葉状など適宜形状に仕上げればよい。例えば、シート化した後カット装置を通して枚葉状にカットすることも、コイル状に巻き取ることもできる。
【0029】
更に、耐候性や絵柄層などの表面保護の意匠を向上させる目的で、上記基材シートに他の熱可塑性樹脂からなるシート(以下「熱可塑性樹脂シート」という)を貼り合わせて「積層化粧シート」とすることができる。
この際、基材シートに貼り合わせる熱可塑性樹脂シートとしては、ポリエステル樹脂やポリオレフィン樹脂、その他ポリカーボネート樹脂などの適宜熱可塑性樹脂を主成分とするシートを挙げることができる。
基材シートと熱可塑性樹脂シートとの貼り合せ方法としては特に制限はなく、従来公知の任意の方法を適宜選択することができる。例えば、ドライラミネート接着剤、感熱接着剤、感圧接着剤等の適宜接着剤を介して接着する方法、接着剤を介さずに熱圧着又は超音波接着等の手段によって直接接着する方法、基材シートをシート状に押出成形する際に同時に貼り合わせる方法、熱可塑性樹脂を表面上に積層して接着させる方法など、従来公知の各種方法の中から樹脂の特性に合致した方法を適宜選択して使用するのが好ましい。2種類以上の熱可塑性樹脂を順次貼り合わせても構わない。
【0030】
上記構成の積層化粧シートにおいて、基材シートと熱可塑性樹脂シートとの間に印刷層を設けることも可能である。その際、印刷層の形成方法には特に制限はなく、例えばオフセット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等従来公知の各種の印刷方法を使用することができる。また、例えば、全面ベタ状の場合は、ロールコート法やナイフコート法、ダイコート法等の各種コーティング方法を採用することができる。
また、製品の意匠性や2次加工性等を高める目的で、上記基材シート或いは上記積層化粧シートにエンボス加工を施したり、艶消し加工などを行うことも可能である。この場合、一旦鏡面のシートを得てからエンボスロールや艶消しロールで加工を施すことも、また、押出成形の際にキャストロールをエンボスロールや艶消しロールに変更して加工を施すことも可能である。
【0031】
なお、上記構成の基材シート及び積層化粧シートは、真空プレス成形、圧空プレス成形、メンブレスプレス成形などを施して被着体の輪郭に忠実に貼り合わせる場合、できるだけ低温で成形することが望ましい。好ましくは、被覆層のポリエステル組成物のガラス転移温度より10℃以上高温とならないように、言いかえれば被覆層のポリエステル組成物のガラス転移温度+10℃より低温で実施することが望ましく、具体的には60〜80℃程度が好適である。
【0032】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1〜19及び比較例1〜3)
表1又は表2に示すように、基体層とする原料と、被覆層とする原料の2種類を用意し、2台の押出機にてそれぞれの原料を溶融混合し、2種3層又は2種2層のTダイを用いて押出した後、40℃の鏡面のキャストロールで急冷して非結晶性のポリエステルシートを得た。
【0034】
なお、実施例16〜18は、実施例1のシートに接着剤を塗工し、100μmの透明な熱可塑性樹脂シート(例えばポリプロピレン、ポリエステル及びアクリル樹脂などからなる)をドライラミネートした積層化粧シートである。
また、実施例19は、実施例1のシートにグラビア印刷法により絵柄層を印刷し、その絵柄層表面に接着剤を塗工し、100μmの透明な熱可塑性樹脂シート(例えばポリプロピレン、ポリエステル及びアクリル樹脂などからなる)をドライラミネートした積層化粧シートである。
そして、上記の如く得られたポリエステルシート及び積層化粧シートそれぞれについて真空プレス成形試験を行い、以下に示す評価方法及び評価基準で評価した。
【0035】
実施例及び比較例においては下記に示すポリエステル樹脂及び白色の不活性粒子等を使用した。
【0036】
「ポリエステル樹脂」
A:テレフタル酸とエチレングリコールを縮重合させたポリエチレンテレフタレート(極限粘度0.75、ガラス転移温度70℃)
B:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸と、ジオール成分としてエチレングリコール70%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール30モル%の混合物を縮重合させて得られた共重合ポリエステル(極限粘度0.8、ガラス転移温度81℃)
C:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸と、ジオール成分としてエチレングリコール30モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール70モル%の混合物を縮重合させて得られた共重合ポリエステル(極限粘度0.8、ガラス転移温度89℃)
D:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸と、ジオール成分としてエチレングリコール70モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール20モル%とジエリレングリコール10モル%の混合物を縮重合させて得られた共重合ポリエステル(極限粘度0.8、ガラス転移温度74℃)
E:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸と、ジオール成分として1,4−ブタンジオールを縮重合させたポリブチレンテレフタレート(極限粘度0.8)
【0037】
「白色の不活性粒子」
a:酸化チタン (平均粒径0.25μm)
「顔料」
b:硫酸バリウム (平均粒径3.5μm)
【0038】
評価1.真空プレス成形試験
サイズ500mm×500mmの3次元立体加工した合板を用意し、シート表面温度が75℃になるように加熱し、真空プレス成形を行い成形性及び表面外観の評価を行った。
さらに、75℃で成形できなかったシート(成形性「×」)については、成形温度を徐々に上げ成形可能となった温度で再度評価を行った。
成形性(特に合板曲面部の成形性)及び外観(成形後のシート表面)を下記基準にて評価した。
下記基準において、記号「○」及び「△」は実用可能レベルにあり、「×」は実用に適さないと評価することができる。
【0039】
=成形性の基準=
「○」・・・曲面部の成形性が良好で、合板表面が見えない。
「△」・・・曲面部のシートの伸びが均一でなく、合板表面の一部が透けて見える。
「×」・・・曲面部のシートの伸びが悪く、合板表面が部分的に透けてみえる。
【0040】
=表面外観の基準=
「○」・・・シートの表面性が成形前と全く同じか、ほとんど変わらない。
「△」・・・シートの表面に成形型の転写による表面光沢の悪化が部分的に認められる。
「×」・・・シートの表面に成形型の転写による表面光沢の悪化が認められる。
【0041】
2.透明性外観
実用耐熱試験として、シートの基体層樹脂成分の軟化温度を測定した。
測定方法 JIS K−7196 TMAによる針入れ軟化試験
軟化温度が50℃以上のものは実用可能レベルであると評価できる。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂90〜50重量%、ブチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂10〜50重量%の割合で混合してなるポリエステル樹脂と、白色着色性の不活性粒子3〜30重量%とから基体層を形成し、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂と、白色着色性の不活性粒子0〜30重量%とからなる被覆層を前記基体層の片面又は両面に積層してなる構成を備えた全光線透過率10%以下の非結晶性ポリエステル樹脂製化粧シートを化粧板用の基材シートを用いることにより、本シートは、焼却の際に有毒ガスを発生する恐れがなく、複雑な成形加工性や、他の熱可塑性樹脂との接着性が良好で、絵柄層唐の印刷適性も良いため、化粧板としたとき、意匠性の優れた化粧板を提供することができる。
Claims (5)
- エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂を90〜50重量%、ポリブチレンテレフタレート樹脂を10〜50重量%の割合で混合してなるポリエステル樹脂と、白色着色性の不活性粒子3〜30重量%とから基体層を形成し、
エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂と、白色着色性の不活性粒子0〜30重量%とからなる被覆層を前記基体層の片面又は両面に積層してなる構成を備え、溶融状態で押出し、キャストロールで急冷固化することにより結晶性が低い状態にある全光線透過率10%以下のポリエステル樹脂製化粧シート。 - 被覆層のエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂は、テレフタル酸を主たる成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコール90〜10モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール10〜90モル%からなるグリコール成分とが縮重合してなるポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂製化粧シート。
- 請求項1又は2記載のシートを基材シートとし、該基材シートに透明な熱可塑性樹脂シートを貼り合わせてなる構成を備えたポリエステル樹脂積層化粧シート。
- 請求項3における基材シートと熱可塑性樹脂シートとの間に絵柄層を形成してなる構成を備えたポリエステル樹脂積層化粧シート。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載のポリエステル樹脂製化粧シート又はポリエステル樹脂積層化粧シートを板状材に貼り合わせてなる化粧板。
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