JP2010092877A - 燃料電池用集電構造及び固体酸化物形燃料電池スタック - Google Patents
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Abstract
【解決手段】燃料電池用集電構造は、平板型の固体電解質を燃料極及び空気極で挟持して成る燃料電池セルに、集電体及びセパレータを積層したものであり、集電体は表面に複数の開口を有する多孔質導電体であり、燃料電池セル及び/又はセパレータは表面に複数の導電性の突起を有し、その導電性突起が、メッキにて形成され、開口と突起が対向し係着している。また、固体酸化物形燃料電池スタックは、燃料電池用集電構造を採用している。
【選択図】図2
Description
平板型固体電解質燃料電池100は、イットリアなどをドープしたジルコニア焼結体(YSZ)からなる平板型固体電解質層102の両面に、それぞれ(La、Sr)MnO3の空気極104と、NiO−YSZサーメットの燃料極106とを配置した平板型単電池108と、隣接する平板型単電池108同士を電気的に直列に接続し、且つ平板型単電池108に燃料ガスと酸化剤ガスとを分配するセパレータ110を有する。また、メッシュ状の金属115をセパレータ110と燃料極106との間に配置し、セパレータ110と空気極104との間に接続層117を配置し、セパレータ110と燃料極106及び空気極104とを導通させ、また、側面にシール材119を設け閉鎖させている。
そして、平板型固体電解質燃料電池100を交互に積層し、通路114からそれぞれ酸化剤ガスと燃料ガスを導入し、各平板型単電池108の空気極104及び燃料極106の面にこれら酸化剤ガスと燃料ガスを接触させることにより起電力を発生させ、直列に積層した固体電解質燃料電池100から出力するようにしている。
また、平板型単電池108を複数積層した際、締め付けの荷重がセラミック製のセパレータ110を介して平板型単電池108にかかる構造であり、温度変動により締め付け力が変化し荷重が過大になったときセパレータ110や平板型単電池108が破壊してしまうこともあった。更に、変形に対処するため平板型単電池108を電気的に接続させる導通用の金属115を強固にしなければならず、これによっても平板型単電池108に荷重がかかってしまい、熱応力等により平板型単電池108の破損等を引き起こすことが考えられる。このように、導電性セラミック等を用いたリジッドな集電方法では、スタックの熱分布による応力によりセルが破損するという問題点があった。
また、特許文献2の技術は、使用時に導電性フェルトの熱による緻密化が進行しクッション性の低下、変形による接触不良が発生する。車両用として用いると、振動、衝撃が激しくクッション性の低下、変形はより進行しやすい。
更に、特許文献3の技術は、弾性接触、即ち弾性体を挿入して導電性フェルトを押し付ける方法であるが、SOFCの温度環境下で安定に弾性を保持できる弾性体は非常に高価であり、またスタックの大型化、重量増になる。
このように、多孔質導電体と導電性突起の表面(側面又は頭部)を接触させることで、相互間の導電性が良好になる。また、従来品の金属薄板や導電性フェルト等の集電体をセルに強く押し付ける方法(弾性接触)に比べて、燃料電池セルにかかる応力負担が軽減される。更に、燃料電池セルを薄く軽く設計でき、スタックの軽量化、小型化が可能となる。更にまた、燃料電池セルやセパレータ等のスタック構成部品の歪みや、多孔質導電体(例えば上述の導電性フェルト)の緻密化、変形により燃料電池セルと集電体がずれたとしても導電性突起と集電体が3次元的に接触しているため電気的導通が保持される。また、燃料電池セルの電極部に電子伝導性材料より成る導電性突起を埋設できるので電極の電気抵抗が低下しセルの出力が向上する。
更に、導電性突起の根元部分よりも先端部を太くすることもできる。このときは、より多孔質導電体から外れにくい構造となるので有効である。
更にまた、導電性突起の先端を鍵状に湾曲させることもできる。このときは、柱状や針状の場合よりも先端部が多孔質導電体とよく接触し(多孔質導電体の凹部内に引っ掛かる)、接触抵抗を低減できる。例えば、図4に示すようなおろし金構造にすると突起の先端部が鍵状となる。
また、上記導電性突起は屈曲点を少なくとも1つ有する形状であることが好ましい。これより、多孔質導電体の開口内部での接触密度が向上し易く、また多孔質導電体により絡まり易い構造となる。
上述した導電性突起は、代表的には、金属ファイバーや金属フィラーなどの一部を燃料電池セルやセパレータに埋設して形成したり、導電性突起材を電極材料と同時焼成して形成したり、メッキ処理により形成できる。また、構成材料としては、例えばニッケル(Ni)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、タングステン(W)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)及びバナジウム(V)などの金属又はこれらを含む耐熱性合金、白金(Pt)やパラジウム(Pd)などの貴金属又はこれらを含む合金、上記耐熱性合金にこれら貴金属を被覆したものなど、高温酸化雰囲気において表面に酸化皮膜を形成しにくい材料、高温酸化雰囲気において導電性酸化皮膜を形成する材料などが挙げられる。
また、上記多孔質導電体としては、材質の異なる複数の金属細線を混紡したものを使用できる(図5の(2))。このときは、複数種の金属又は合金から成る金属細線を適宜組合せて混紡することにより、固溶したり収縮して多孔性が低下する(へたる)ことを防止できる。例えば、かかる金属細線の太さを100μm以下とし、これを複雑に入り組ませ、複数の材料を均一に混紡して、気孔率20〜98%である多孔質導電体を形成できる。
更に、上記多孔質導電体としては、材質の異なる複数の金属細線を接合したものを使用できる(図5の(3))。このときは、複数種の金属又は合金から成る金属細線を適宜組合せ、互いを接合することにより、金属細線がバラけにくくなり、また、多孔質導電体が解けてやせるのを防止できる。
更にまた、上記多孔質導電体としては、連続空孔を有する発泡金属を使用できる。このときは、燃料電池セル同士を相互に傷つけることなく電気的に接触できる。例えば、図6に示すように、気孔率20〜98%のものを使用できる。
代表的な被覆方法としては、無電解メッキによりPtなどの貴金属又はその化合物を被覆する方法、スパッタなどの真空成膜により貴金属やペロブスカイト型ランタン系酸化物層を設ける方法、電解メッキにより導電性金属を成膜する方法(例えばSUS金属上にNi成膜など)が挙げられる。
本発明の固体酸化物型燃料電池スタックは、上述の燃料電池用集電構造を有する。この集電構造は、燃料電池セルを連結してスタック化する際に、各燃料電池セル間に採用される。なお、燃料電池セルは燃料極層及び空気極層で固体電解質層を挟持して成る。
このように、多孔質導電体と導電性突起を組み合わせた集電構造を採用することで、燃料電池セルの強度が小さくてもスタック化可能となる。また、固体電解質層を薄く設計でき、更には出力を向上しつつ、従来の燃料電池スタックよりも軽量化できる。更に、各燃料電池セルの両面(各電極層の表面)に、上述の集電構造を形成することで燃料電池セルを強く押さえつけることなく(弾性接触させずに)集電できる。言い換えれば、燃料電池セルに負担をかけずに良好な導通が得られるので、燃料電池セルに歪みが生じたときの接触不良を防止できる。また、導電性突起が多孔質導電体の凹部内に入り込むことで、多孔質集電体が面方向にズレない(中で踊ってしまわない)ようになり、また双方が接触していることで良好な電導性が保持される。この際、針状のように先細りの構造である突起を、針の断面直径より小さい平均開口径の多孔質集電体とを組合せ、突起の先端部のみ(全体ではなく)が多孔質集電体の開口部に入り込んで接触する形態でも良い。この形態の一例を図8に示す。
なお、上記「スタック」とは、ガス導入機構を有する発電要素をいい、例えば図9に示すような構成が挙げられる。また、上記「多孔質導電体」について、開口の大きさや凹部の形状は、ガス透過性及びガス拡散性を発揮できれば特に制限はなく、例えば、電気伝導性に優れる金属フェルトや発泡金属などで形成できる。
図10に、本例の燃料電池用集電構造を構成する燃料電池セル(a、b)及びこれに配設する集電体(c)を示す。なお、このセルは電解質層を支持基板とする電解質支持型である。
この燃料電池セル1は、電解質層3の両面を空気極層2と燃料極層4で挟持して成る。
電解質層3は、12cm角程度の大きさで厚さ100μmの8mol%イットリアを添加した安定化ジルコニア(以下「8YSZ」という)から成る。また、電解質層3は、電極が形成され他の燃料電池セルとスタック化した際に当該セルを支えるとともにガスシール部やガス流路が形成されている支持部3aを含む。
空気極層2と燃料極層4は10cm角程度であり、厚さ100μm程度の厚さに焼き付けられている。燃料極層4はNiO−YSZを主成分とし、空気極層2はLSMを主成分として成る。また、両電極層の表面には導電性突起5として、耐熱性、耐酸化雰囲気及び耐還元雰囲気に優れるPtファイバーが5%程度、電極層の形成とともに焼き付けられている。このファイバー5は太さ50μm程度、長さ2〜4mm前後の針状である。なお、望ましくは、複数の屈曲、カール、らせん状の形状を有し、更には先端と末端(根元)とで大きさや重量が異なる形状であり、電極層表面から突起状に張り出した構造をとり易いものがよい。
一方、かかる燃料電池セル1には、集電体として耐熱金属からなる数十μm太さの金属繊維を編みこんだ金属フェルト6が重ねられ、3次元的な接触が図られている。
まず電解質材料として、8YSZのスラリーを用いドクターブレード法によりグリーンシートを作製し、所定の大きさに切り出すとともに、穴あけ加工を行い電解質層の仮成型体を作製した。また、燃料極材料として、NiO−YSZのスラリーにPtファイバーを5%加え、撹拌した後スリップキャスト法により燃料極のグリーンシートを作製し、所定の大きさに切り出して燃料極シートを作製した。
次いで、電解質、燃料極のシートをそれぞれ重ね1400℃程度の熱処理を行い焼結し、半燃料電池セルとした。
更に、空気極材料として、LSMのスラリーに再び5%のPtファイバーを加え、燃料極と同様に空気極シートを作製した。
最後に半燃料電池セルに空気極シートを貼り付け1000℃程度で熱処理を行い燃料電池セルを完成させた。
セパレータ(a)は耐熱金属から成る。厚さ4.5mmで、一方の面上に深さ2mmの空気流路、他方の面上に同様に2mm深さの燃料流路が形成され、外周部の燃料電池セル支持部3aと重なる部分にはガス供給・排気の4つのマニホールド7、8が形成されている。このセパレータと燃料電池セルを集電体を介して交互に積層することにより燃料電池スタックが形成される。
また、図12の(b)、(c)に示すように、空気極層側には空気、燃料極層側には空気が供給、排気される。また、各燃料電池セルは、この集電構造及びセパレータを介して直列に接続される。
また、本例では電解質支持型セルを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、図11(b)に示すように電極支持型においても適用は可能である。この場合、燃料極基板上に電解質膜をスクリーン印刷法にて成膜、焼成した後、電解質支持型とともにスリップキャスト法にて作製したPtファイバー入り空気極シートを重ね合わせ焼成すればよい。更に、本例では電極材料にPtファイバーを混ぜ込んだ電極シートを電解質層に張り合わせて作製しているが、これに限定されるものではなく、例えば、図13の(c)、(d)に示すように、電解質層にPtフィラーを分散後電極材スラリーを塗布する方法や、電極材を成膜後にPtファイバーを分散し、再度スラリーを塗布した後に焼成する方法などでも作製できる。
図9に示す構造の燃料電池スタックを作製し、その出力の経時変化を測定した。
燃料電池セル1には12cm角、厚み50μmの8モル%Y2O3添加ZrO2(8YSZ)電解質板に10cm角でNiO−8YSZの燃料極10μm、及びLa0.8Sr0.2MnO3の空気極10μmを公知の手法により印刷・焼成したものを用いた。また、両電極の表面には導電性突起5として、耐熱性、耐酸化雰囲気及び耐還元雰囲気に優れるPtファイバーが5%程度、電極層の形成と同時に焼き付けられている。
また、燃料極層側の集電体6としてニッケルの20μmの金属細線より成る金属フェルト、空気極層側の集電体として同形状のSUS316の表面をPtメッキでコーティングした金属細線より成る多孔質導電体を用いた。
更に、セパレータ9として表面を加工し長さ1000μm、平均径100μmの突起を両面に形成したおろし金状SUS基板を用い、図9のように積層し20枚セル板を含むスタックとした。なお、図14に、本例の集電構造の拡大図を示す。
燃料極層側に水素、空気極層側に空気を導入し、700℃で発電させた出力の経時変化は、評価開始時には200W、1000時間経過後には193W、2000時間経過後には188Wであった。このように、本例の集電構造を有する燃料電池スタックは、導電性突起と多孔質導電体が3次元的に接触しているため電気的導通に優れる。また、緻密化、変形に対するマージンが向上した燃料電池スタックとなる。更に、集電体の縦方向の電気抵抗もより改善されている。
燃料電池セル上の導電性突起をメッキにて形成した以外は、実施例1と同様の手順を繰り返して、本例の集電構造を得た。図15に集電構造の拡大図、図16にその作製プロセスを示す。
図16の(a)に示すように、まず、8YSZの電解質層のそれぞれの面に燃料極層、空気極層を焼付けした燃料電池セルを作製した。
次いで、燃料電池セルの両面にPt等の電解メッキの起点となる導電性材料を100nm程度成膜した後、両面にフィルムレジストを被覆し、フォトリソグラフィ技術により所定の位置にPt層の露出した開口部を形成した(b)。
更に、電解メッキを施し電極表面上にPtから成る導電性突起を形成した(c)。
更にまた、レジストを薬液処理で除去した(d)。
燃料電池セルの電極層内に導電性突起として耐熱金属から成るフィラーを埋め込んだ以外は、実施例3と同様の手順を繰り返して、本例の集電構造を得た。図17に集電構造の拡大図を示す。なお、上記導電性突起は、電解質層上に電極層を形成する際、電極材料に数百nm〜数十μmの金属ファイバー材料(実施例1で使用したもの)と同様の材料から成るフィラーを混ぜ込み、焼成して得た。
本例の集電構造は、電極層内に金属フィラーが埋め込まれていることから、メッキにより形成された導電性突起の電極層への接着性が一層強化される。
燃料電池セルにおいて各電極を多層構造とした以外は、実施例1と同様の手順を繰り返して、本例の集電構造を得た。図18に集電構造の作製プロセスを示す。なお、各電極は、一旦電解質層上に電極層を焼き付け、形成した後に耐熱金属から成るフィラーを含む第2の電極層を形成して得た。
本例によれば、電極の焼付けと導電性突起の形成が別工程となるため、導電性突起の構成材料の耐熱性はSOFCの動作温度程度で十分となり、より多くの導電性材料が適用可能になる。また、第2の電極層は、導電性とガス透過性を有していれば触媒作用は特に必要なく、SOFC動作温度程度の耐熱性を有する金属のペーストやZn、Sn等の酸化物を用いた導電性材料のペーストなどからも作製できる。
燃料電池セルには12cm角、厚み50μmの8モル%Y2O3添加ZrO2(8YSZ)電解質板に10cm角でNiO−8YSZの燃料極10μm、及びLa0.8Sr0.2MnO3の空気極10μmを公知の手法により印刷・焼成したものを用いた。燃料極層側の集電体としてニッケルの20μmの金属細線より成る多孔質導電体、空気極層側の集電体として形状の同じSUS316の表面をPtメッキでコーティングした金属細線より成る多孔質導電体を用いた。燃料極層側の集電体と空気極層側の集電体の間にはセパレータ及び集電材としてSUS316板を用い、これらを積層し20枚のセル板を含むスタックとした。
燃料極層側に水素、空気極層側に空気を導入し、700℃で発電させた出力の経時変化は、評価開始時には198W、1000時間経過後には157W、2000時間経過後には123Wであった。
2 空気極層
3 電解質層
4 燃料極層
5 導電性突起(Ptファイバー)
6 集電体(金属フェルト)
7 空気排気マニホールド
8 燃料ガス供給マニホールド
9 セパレータ
10 セパレータ突起部
11 金属ファイバー材料
Claims (11)
- 平板型の固体電解質を燃料極及び空気極で挟持して成る燃料電池セルに、集電体及びセパレータを積層した固体酸化物形燃料電池の集電構造であって、
上記集電体は表面に複数の開口を有する多孔質導電体であり、
上記燃料電池セル及び/又は上記セパレータは表面に複数の導電性の突起を有し、
上記導電性突起が、メッキにて形成され、
当該開口と当該突起が対向し係着していることを特徴とする燃料電池用集電構造。 - 上記導電性突起の短径の平均径が、上記開口の平均径より小さいことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用集電構造。
- 上記導電性突起が針状又は柱状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用集電構造。
- 上記導電性突起の根元部分よりも先端部が太いことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用集電構造。
- 上記導電性突起が、導電性突起材及び電極材料を同時焼成して形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の燃料電池用集電構造。
- 上記多孔質導電体が金属細線から成ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の燃料電池用集電構造。
- 上記金属細線は材質の異なる複数種類の金属細線を混紡して成ることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池用集電構造。
- 上記金属細線は材質の異なる複数種類の金属細線を接合して成ることを特徴とする請求項6又は7に記載の燃料電池用集電構造。
- 上記多孔質導電体が発泡金属であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の燃料電池用集電構造。
- 上記多孔質導電体及び/又は上記導電性突起が、当該導電体又は当該突起を構成する材料を含む合金、当該導電体又は当該突起を構成する材料とは異なる材料、及び導電性セラミックスから成る群より選ばれた少なくとも1種のもの、で被覆されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の燃料電池用集電構造。
- 請求項1〜10のいずれか1つの項に記載の燃料電池用集電構造を有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池スタック。
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