JP2010080362A - 極端紫外光光源装置および極端紫外光発生方法 - Google Patents

極端紫外光光源装置および極端紫外光発生方法 Download PDF

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Abstract

【課題】放電領域におけるプラズマ原料のガスの密度を適切な状態にすることが可能なEUV光源装置、並びに、EUV発生方法を提供すること。
【解決手段】放電電極上の高温プラズマ原料21に第1のエネルギービーム23を照射して気化させる。気化した原料が対向する電極に到達し放電が開始するまでの間に、第2のエネルギービーム24を再び高温プラズマ原料21に照射する。放電により第2のエネルギービーム24照射によって発生した密度の高い原料ガスが圧縮加熱されるため、ピンチの効率が高まり、高い変換効率のEUV光放射が得られる。第2のエネルギービーム24を野照射のタイミングを適宜設定することにより、原料ガスの密度を適切な状態にすることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、放電により生成したプラズマより極端紫外光を発生させる極端紫外光光源装置および極端紫外光発生方法に関し、特に、放電電極に供給された極端紫外光発生用高温プラズマ原料にエネルギービームを照射して気化して、気化後の高温プラズマ原料から放電により生成したプラズマより極端紫外光を発生させる極端紫外光光源装置および極端紫外光発生方法に関する。
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、その製造用の投影露光装置においては解像力の向上が要請されている。その要請に応えるため、露光用光源の短波長化が進められ、エキシマレーザ装置に続く次世代の半導体露光用光源として、波長13〜14nm、特に波長13.5nmの極端紫外光(以下、EUV(Extreme Ultra Violet)光ともいう)を放出する極端紫外光光源装置(以下、EUV光源装置ともいう)が開発されている。
EUV光源装置において、EUV光を発生させる方法はいくつか知られているが、そのうちの一つにEUV放射種の加熱励起により高温プラズマを発生させ、このプラズマから放射されるEUV光を取り出す方法がある。
このような方法を採用するEUV光源装置は、高温プラズマの生成方式により、LPP(Laser Produced Plasma :レーザ生成プラズマ)方式EUV光源装置とDPP(Discharge Produced Plasma :放電生成プラズマ)方式EUV光源装置とに大きく分けられる。
LPP方式EUV光源装置は、固体、液体、気体等のターゲットをパルスレーザで照射して発生する高温プラズマからのEUV放射光を利用する。一方、DPP方式EUV光源装置は、電流駆動によって生成した高温プラズマからのEUV放射光を利用する。
上記した両方式のEUV光源装置において、波長13.5nmのEUV光を放出する放射種、すなわち、EUV発生用高温プラズマ原料として、現在10価前後のXe(キセノン)イオンが知られているが、より強い放射強度を得るための高温プラズマ原料としてLi(リチウム)イオンとSn(錫)イオンが注目されている。例えば、Snは、高温プラズマを発生させるための入力エネルギーに対する波長13.5nmのEUV光放射強度の比である変換効率がXeより数倍大きい。
以下、DPP方式に基づくEUV放射のメカニズムを簡単に説明する。
DPP方式では、例えば内部に電極が配置された放電容器内をガス状の高温プラズマ原料雰囲気とし、当該雰囲気中の電極間において放電を発生させて初期プラズマを生成する。初期プラズマにおけるイオン密度は、例えば、1016cm−3程度、電子温度は、例えば、1eV以下程度である。
ここで、放電により電極間を流れる直流電流の自己磁場の作用により、上記した初期プラズマは収縮される。これにより初期プラズマの密度は高くなり、プラズマ温度が急激に上昇する。このような作用を、以下ピンチ効果と称する。ピンチ効果による加熱によって、高温となったプラズマのイオン密度は1017〜1020cm−3、電子温度は20〜30eV程度に到達し、この高温プラズマからEUV光が放射される。
近年、DPP方式において、放電が発生する電極表面に供給された固体もしくは液体のSnやLiにレーザ等のエネルギービームを照射して気化させ、その後、放電によって高温プラズマを生成する方法が特許文献1において提案されている。以下、エネルギービームがレーザである場合を説明する。また、上記したこの方式をLAGDPP(Laser Assisted Gas Discharge Produced Plasma)方式と称することにする。
以下、特許文献1に示されたEUV光源装置について説明する。図9は同公報に示されたEUV光源装置の断面図である。
14,16は円盤状の電極であり、所定の圧力に調整された放電空間12内に配置される。電極14および16は予め定義された領域18において、所定間隔だけ互いに離間しており、46を回転軸として回転する。
24は、波長13.5nmのEUV光を放射する高温プラズマ用原料である。高温プラズマ原料24は、加熱された溶融金属(metal melt)であり、コンテナ26に収容される。溶解金属24の温度は、コンテナ26内に設けられた温度調整手段30により調整される。
上記電極14,16は、その一部が溶融金属24を収容するコンテナ26の中に浸されるように配置される。電極14,16の表面上に乗った液体状の溶融金属24は、電極14,16が回転することにより、上記領域18の表面に輸送される。上記領域18の表面に輸送された溶解金属24に対して(すなわち、上記領域18において、所定間隔だけ互いに離間した電極14、16の表面に存在する溶解金属24に対して)、図示を省略したレーザ源よりレーザ20が照射される。レーザ20が照射された溶解金属24は気化する。
溶解金属24がレーザ20の照射により気化された状態で、電極14,16に、パルス電力が印加されることにより、領域18においてパルス放電が開始し、プラズマ22が形成される。放電時に流れる大電流によりプラズマ22が加熱励起され高温化すると、この高温プラズマからEUV放射が発生する。EUV放射は図面上側に取り出される。
すなわち、上記した特許文献1に記載されているLAGDPP方式では、固体や液体等のターゲット(高温プラズマ原料)に対してレーザを照射し、原料を気化してガス状の高温プラズマ原料雰囲気(初期プラズマ)を生成する。DPP方式同様、初期プラズマにおけるイオン密度は、例えば、1016cm−3程度、電子温度は、例えば、1eV以下程度である。その後、放電電流駆動による加熱によって、高温となったプラズマのイオン密度は1017〜1020cm−3、電子温度は20〜30eV程度に到達し、この高温プラズマからEUVが放射される。すなわち、この特許文献1に記載されているLAGDPP方式における放電電流駆動による加熱は、DPP方式と同様、ピンチ効果が利用されている
なお、48は電源に相当するキャパシターバンクであり、絶縁性のフィードライン50を介してコンテナ26に収容された溶融金属24と電気的に接続されている。溶融金属24は導電性であるので、キャパシターバンク48より、溶融金属24を介して、一部が溶融金属24に浸漬している電極14,16に電気エネルギーが供給される。
本方式によれば、常温では固体であるSnやLiを放電が発生する放電領域の近傍で気化させることが容易になる。すなわち、放電領域に効率よく気化したSnやLiを供給できるので、放電後、効果的に波長13.5nmのEUV放射を取り出すことが可能となる。
また、特許文献1に記載されたEUV光源装置においては、電極を回転させているので、次のような利点がある。
(1) 常に新しいEUV発生種の高温プラズマ原料である固体または液体状の高温プラズマ原料を放電領域に供給することができる。
(2) 電極表面における、レーザが照射される位置、高温プラズマが発生する位置(放電部の位置)が常に変化するので、電極の熱負荷が低減し、消耗を防ぐことができる。
特表2007−505460号公報
しかしながら、特許文献1に示されたような装置の構成では、次のような問題がある。 上記EUV光源装置によれば、上記したように、レーザの照射により、電極表面上の原料が気化し、電極間で放電が開始してプラズマが形成される。しかしながら、効率のよいEUV放射の生成を実現するには、放電領域に供給される気化したプラズマ原料(例えばスズ)のガスの密度がある程度高いものである必要がある。なぜなら、前記したように、EUV光が放射される高温プラズマのイオン密度は、1017〜1020cm−3であり、この高温プラズマがピンチされる前の初期プラズマのイオン密度は1016cm−3程度必要だからである。
すなわち、放電が開始したとしても、例えば、放電領域に供給されたプラズマ原料のガスの密度が1016cm−3よりも低いと、放電により生成したプラズマから波長13.5nmのEUV光が発生しない。
特許文献1のEUV光源装置においては、プラズマ原料のガスは、レーザを電極表面に塗布した液体または固体の原料に照射することにより両電極間(放電空間)に供給される。しかし、レーザ照射により気化した原料は、両電極間の空間を3次元的に広がっていく。 そのため、放電領域に供給されるプラズマ原料のガスの密度を制御することは困難であり、広がった原料ガスが対向する電極に達して放電が始まったときのガス密度は、必ずしもEUV放射に好適なものではない。
本発明は上記のような事情に鑑みなされたものであって、本発明の課題は、放電領域におけるプラズマ原料の(ガスの)密度を適切な状態にすることが可能なEUV光源装置、並びに、EUV発生方法を提供することにある。
本発明においては、以下のようにして前記課題を解決する。
対向して配置された一対の放電電極と、放電電極にパルス電力を供給するパルス電力供給手段と、放電電極に極端紫外光を放射させるための液体または固体の原料を電極に上に供給する原料供給手段と、放電電極上に供給された原料に対しエネルギービームを照射し、この原料を気化させて放電電極間で放電を開始させるエネルギービーム手段とを備えた極端紫外光光源装置において、エネルギービーム手段は、放電電極上に供給された原料に対し第1のエネルギービームを照射し、この原料を気化させて電極間に放電を開始させる第1のエネルギービーム手段と、第1のエネルギービームの照射後、一対の放電電極間で放電が開始するまでの間に、第1のエネルギービームを照射した領域の原料に対して第2のエネルギービームを照射し、さらに原料を気化させる第2のエネルギービーム照射手段とを備える。
(2)上記(1)において、一対の電極を円盤状の電極とし、電極表面における放電発生位置が変化するように回転駆動する。
(3)上記(1)(2)において、第2のエネルギービームの照射は、第1のエネルギービーム照射後、300ナノ秒以内に行う。
(4)上記(1)(2)における極端紫外光発生方法であって、極端紫外光を放射させるための液体または固体の原料が塗布された一対の放電電極にパルス電力を供給する第1の工程と、パルス電力が供給された電極の表面の上記原料に対して、第1のエネルギービームを照射し、この原料を気化させる第2の工程と、第1のエネルギービームの照射後、放電電極間で放電が開始する前に、第1のエネルギービームを照射した領域の原料に対して第2のエネルギービームを照射し、さらに原料を気化させる第3の工程とを備える。
(5)上記(3)において、第3の工程は、第2の工程の後、300ナノ秒以内に行う
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
放電電極間の放電は、第1のエネルギービームの照射により気化した原料により開始されるが、第1のエネルギービームを照射した後、放電電極間で放電が開始するまでの間に、第1のエネルギービームを照射した同じ領域に第2のエネルギービームを照射することにより、放電領域に密度の高いプラズマ原料のガスを供給することができる。
また、第2のエネルギービームの照射のタイミングを適宜設定することにより、放電領域に供給するプラズマ原料のガスの密度を、EUV放射に好適なものに制御することができる。
これにより効率のよいEUV放射を得ることができる。
1.実施例
図1、図2に、本発明の実施例の極端紫外光(EUV)光源装置の構成(断面図)を示す。図1は本実施例のEUV光源装置の正面図であり、EUV放射は同図左側から取り出される。図2は、本実施例のEUV光源装置の上面図である。
図1、図2に示すEUV光光源装置は、放電容器であるチャンバ1を有する。チャンバ1は、開口を有する隔壁1cを介して、大きく2つの空間に分割される。一方の空間には放電部が配置される。放電部は、EUV放射種を含む高温プラズマ原料を加熱して励起する加熱励起手段である。放電部は、一対の電極11,12等により構成される。
他方の空間には、高温プラズマ原料が加熱励起されて生成した高温プラズマから放出されるEUV光を集光して、チャンバ1に設けられたEUV取出部7より図示を省略した露光装置の照射光学系へ導くEUV集光鏡2、および、放電によるプラズマ生成の結果生じるデブリがEUV光の集光部へ移動するのを抑制するためのデブリトラップが配置される。本実施例においては、図1、図2に示すようにデブリトラップは、ガスカーテン13bならびにホイルトラップ3から構成される。
以下、放電部が配置される空間を放電空間1a、EUV集光鏡が配置される空間を集光空間1bと呼ぶことにする。
放電空間1aには真空排気装置4、集光空間1bには真空排気装置5が連結される。なお、ホイルトラップ3は、例えば、ホイルトラップ保持用隔壁3aによりチャンバ1の集光空間1b内に保持される。すなわち、図1、図2に示す例では、集光空間1bはホイルトラップ保持用隔壁3aにより、さらに2つの空間に分割されている。
なお、図1、図2においては、放電部がEUV集光部より大きいように示されているが、これは理解を容易にするためであり、実際の大小関係は図1、図2の通りではない。実際は、EUV集光部が放電部より大きい。すなわち、集光空間1bが放電空間1aより大きい。
以下、本実施例のEUV光源装置の各部及びその動作について説明する。
(1)放電部
放電部は、金属製の円盤状部材である第1の放電電極11、同じく金属製の円盤状部材である第2の放電電極12とからなる。第1および第2の放電電極11,12は、例えば、タングステン、モリブデン、タンタル等の高融点金属からなり、所定距離だけ離間して互いに向かい合うように配置される。ここで、2つの電極11,12のうち一方が接地側電極であり、他方が高電圧側電極である。
両電極11,12の表面は同一平面上に配置してもよいが、図2に示すように、放電が発生しやすいように、電力印加時に電界が集中する周縁部のエッジ部分が、所定距離だけ離間して互いに向かい合うように配置することが好ましい。すなわち、各電極表面を含む仮想平面が交差するように各電極を配置することが好ましい。なお上記所定距離は、両電極の周縁部のエッジ部分間距離が最も短い部分での距離である。
後述するように、両電極11,12にパルス電力供給手段よりパルス電力が印加されると、上記周縁部のエッジ部分において放電が発生する。一般的には、両電極11,12の周縁部のエッジ部分間距離が最も短い部分で多く放電が発生する。以下、両電極間の放電が発生する空間を放電領域と呼ぶことにする。
上記したように、各電極11,12の周縁部のエッジ部分が所定距離だけ離間して互いに向かい合うように配置した場合、図2に示すように上方から俯瞰すると、第1および第2の放電電極の表面を含む仮想平面が交差する位置を中心として、両電極は放射状に配置されることになる。図2においては、放射状に配置されている両電極の周縁部のエッジ部分間距離が最も長い部分は、上記仮想平面の交差位置を中心としたとき、後述するEUV集光鏡とは反対側に位置するように設置されている。
本実施例のEUV光源装置は、レーザの照射により気化した高温プラズマ原料を放電による電流駆動によって生成した高温プラズマからのEUV放射光を利用するものである。高温プラズマ原料の加熱励起手段は、一対の電極11,12間に発生した放電による大電流である。よって、電極11,12は放電に伴う大きな熱的負荷を受ける。また、高温プラズマは放電電極近傍に発生するので、電極11,12はこのプラズマからも熱的負荷を受ける。このような熱的負荷により電極は徐々に磨耗し金属デブリが発生する。
EUV光源装置は、露光装置の光源装置として使用される場合、高温プラズマから放出されるEUV放射をEUV集光鏡2より集光し、この集光したEUV放射を露光装置側へ放出する。金属デブリは、EUV集光鏡2にダメージを与え、EUV集光鏡2におけるEUV光反射率を劣化させる。
また、電極11,12は徐々に磨耗することにより、電極形状が変化する。これにより、一対の電極11,12間で発生する放電が徐々に不安定になり、その結果、EUV光の発生も不安定となる。
EUV光光源装置を量産型の半導体露光装置の光源として用いる場合、上記したような電極の消耗を抑制し、電極寿命をできるだけ長くすることが必要となる。
このような要求に対応するため、図1、図2に示すEUV光源装置においては、第1の電極11、第2の電極12の形状を円盤状とし、かつ、少なくとも放電時に回転するように構成している。すなわち、第1および第2の電極11,12を回転させることにより、両電極においてパルス放電が発生する位置はパルス毎に変化する。よって、第1および第2の電極11,12が受ける熱的負荷は小さくなり、電極11,12の磨耗スピードが減少し、電極の長寿命化が可能となる。以下、第1の電極11を第1の回転電極、第2の電極12を第2の回転電極ともいう。
具体的には、円盤上の第1の回転電極11、第2の回転電極12の略中心部には、それぞれ、第1のモータ22aの回転軸22e、第2のモータ22bの回転軸22fが取り付けられている。第1のモータ22a、第2のモータ22bが、それぞれ回転軸22e,22fを回転させることにより、第1の回転電極11、第2の回転電極12は回転する。なお、回転の方向は特に規制されない。ここで、回転軸22e,22fは、例えば、メカニカルシール22c,22dを介してチャンバ1内に導入される。メカニカルシール22c,22dは、チャンバ1内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転軸の回転を許容する。
図1に示すように、第1の回転電極11と第2の回転電極12は、その一部が、第1のコンテナ11bと第2のコンテナ12b内の溶融したスズ11a,12aの中に浸されるように配置される。このスズ11a,12aは、波長13.5nmのEUV光を放射する高温プラズマ用原料であるとともに、第1の回転電極11、第2の回転電極12に電力を供給する給電用の金属としても働く。
第1のコンテナ11bおよび第2のコンテナ12bは、チャンバ1内の減圧雰囲気を維持可能な絶縁性の電力導入部11c,12cを介して、パルス電力供給手段である電力発生器8と接続される。第1、第2のコンテナ11b,12b、および、スズ11a,12aは導電性であり、第1の回転電極11の一部および第2の回転電極12の一部は、上記スズ11a,12aに浸漬しているので、第1のコンテナ11bおよび第2のコンテナ12b間にパルス電力発生器8からパルス電力を印加することにより、第1の回転電極11および第2の回転電極12間にパルス電力が印加される。
なお、図示を省略したが、第1のコンテナ11b、第2のコンテナ12bには、スズを溶融状態に維持する温度調節手段が備えられている。
(2)原料供給手段
第1のコンテナ11b、第2のコンテナ12bは、第1の回転電極11および第2の回転電極12の表面に、高温プラズマ原料であるスズ11a,12aを供給する原料供給手段でもある。
上記したように、第1の回転電極11および第2の回転電極12は、一部(周辺部)が液体状のスズを収容する上記コンテナの中に浸されるように配置されている。コンテナ11b,12b内で、スズ11a,12aは電極の周辺部表面に付着する。電極に付着したスズ11a,12aは、電極が回転することにより、放電領域に輸送される。
放電領域に輸送されたスズ11a,12aにレーザが照射され、スズ11a,12aが気化することにより放電が開始する。
放電により電極表面に付着したスズ11a,12aは消費されるが、回転して再び第1のコンテナ11b、第2のコンテナ12b内のスズ11a,12aに浸されることにより、電極表面にスズ11a,12aが供給される。
なお、本実施例においては、原料供給手段として上記のようなスズを溜めたコンテナを用いているが、電極表面に形成した溝や孔の中に、溶融したスズを滴下する、あるいは流し込むようなものを用いることもできる。
(3)原料を気化させるエネルギービーム照射手段
本実施例のEUV光源装置においては、原料を気化させるエネルギービーム照射手段として、第1のエネルギービーム照射手段と第2のエネルギービーム照射手段の二つを備える。
第1のエネルギービーム照射手段は、第1のレーザ23を照射する第1のレーザ源23aならびに当該第1のレーザ源23aの動作を制御する第1のレーザ制御部23bを備える。
第2のエネルギービーム照射手段は、第2のレーザ24を照射する第2のレーザ源24aならびに当該第2のレーザ源24bの動作を制御する第2のレーザ制御部24bを備える。
第1および第2のレーザ23,24を放出する第1および第2のレーザ源23a,24aとしては、例えば、炭酸ガスレーザ源や、YAGレーザ、YVO4 レーザ、YLFレーザ等の固体レーザ源、ArFレーザ、KrFレーザ、XeClレーザ等のエキシマレーザ源等を採用することができる。
また本実施例では、放電領域の所定の地点に照射するエネルギービームとしてレーザを照射しているが、レーザの代わりにイオンビーム、電子ビームを高温プラズマ原料に照射するようにしてもよい。
図3に、第1および第2のレーザの集光例について示す。同図は、図2の2本のレーザが集光している電極の部分を拡大して示したものである。同図に示すように、レーザを第1の回転電極上の高温プラズマ原料(スズ)対して集光する。集光光学系としては、例えば、凸レンズが使用される。
回転電極上の高温プラズマ原料(スズ)対して、レーザを集光することにより、高温プラズマ原料(スズ)が気化する。気化したスズは、やがて対向配置された第2の回転電極に達し、放電が開始する。
レーザの照射により気化した高温プラズマ原料は、レーザが入射する高温プラズマ原料表面の法線方向を中心にして広がる。よって、レーザは、気化後の高温プラズマ原料が対向する電極の方向に広がるように、高温プラズマ原料表面の放電領域に面する側に対して照射する必要がある。
ここで、レーザの照射により気化後の高温プラズマ原料のうち、放電による高温プラズマ形成に寄与しなかったものの一部、あるいは、プラズマ形成の結果分解生成する原子状ガスのクラスタの一部は、デブリとしてEUV光源装置内の低温部と接触し、堆積する。
そのため、気化後の高温プラズマ原料がEUV集光鏡の方向に広がらないように、レーザを高温プラズマ原料(スズ)21に照射することが好ましい。
第1のレーザ23と第2のレーザ24の高温プラズマ原料(スズ)21への照射は、次のようにして行われる。
まず、第1の電極上塗布された高温プラズマ原料(スズ)21に、第1のレーザ23を照射する。第1のレーザ23の照射により気化した高温プラズマ原料は第1のレーザ23が入射する高温プラズマ原料表面の法線方向を中心にして広がる。
広がった高温プラズマ原料は、やがて対向する第1の電極に達し放電が始まるが、この第1のレーザ23の照射により気化した高温プラズマ原料が、対向する第2の電極に達する前に、第2のレーザ24を第1のレーザ23が照射された領域の温プラズマ原料(スズ)21に対して照射する。
(3)パルス電力発生器
パルス電力供給手段であるパルス電力発生器8は、コンデンサと磁気スイッチとからなる磁気パルス圧縮回路部を介して、負荷である第1のコンテナ11bと第2のコンテナ12b、すなわち、第1の回転電極11と第2の回転電極12との間にパルス幅の短いパルス電力を印加する。
図1、図2にパルス電力発生器の構成例を示す。
図1、図2のパルス電力発生器は、可飽和リアクトルからなる2個の磁気スイッチSR2、SR3を用いた2段の磁気パルス圧縮回路を有する。コンデンサC1、第1の磁気スイッチSR2、コンデンサC2、第2の磁気スイッチSR3により2段の磁気パルス圧縮回路を構成している。
磁気スイッチSR1は、IGBT等の半導体スイッチング素子である固体スイッチSWでのスイッチングロスの低減用のものであり磁気アシストとも呼ばれる。なお、固体スイッチSWは、前述したスイッチング手段であり、以下ではスイッチング手段ともいう。
図1、図2に従って回路の構成と動作を以下に説明する。まず、充電器CHの充電電圧が所定の値Vinに調整され、主コンデンサC0が充電器CHにより充電される。このとき、IGBT等の固体スイッチSWはoffになっている。
主コンデンサC0の充電が完了し、固体スイッチSWがonとなったとき、固体スイッチSW両端にかかる電圧は主に磁気スイッチSR1の両端にかかる。
磁気スイッチSR1の両端にかかる主コンデンサC0の充電電圧V0の時間積分値が磁気スイッチSR1の特性で決まる限界値に達すると、磁気スイッチSR1が飽和して磁気スイッチが入り、主コンデンサC0、磁気スイッチSR1、昇圧トランスTr1の1次側、固体スイッチSWのループに電流が流れる。同時に、昇圧トランスTr1の2次側、コンデンサC1のループに電流が流れ、主コンデンサC0に蓄えられた電荷が移行してコンデンサC1に充電される。
この後、コンデンサC1における電圧V1の時間積分値が磁気スイッチSR2の特性で決まる限界値に達すると、磁気スイッチSR2が飽和して磁気スイッチが入り、コンデンサC1、磁気スイッチSR2、コンデンサC2のループに電流が流れ、コンデンサC1に蓄えられた電荷が移行してコンデンサC2に充電される。
さらにこの後、コンデンサC2における電圧V2の時間積分値が磁気スイッチSR3の特性で決まる限界値に達すると、磁気スイッチSR3が飽和して磁気スイッチが入り、第1のコンテナと第2のコンテナ、すなわち、第1の回転電極と第2の回転電極との間に高電圧パルスが印加される。
ここで、磁気スイッチSR2、SR3及びコンデンサC1、C2で構成される各段の容量移行型回路のインダクタンスを後段に行くにつれて小さくなるように設定することにより、各段を流れる電流パルスのパルス幅が順次狭くなるようなパルス圧縮動作が行われ、第1の回転電極と第2の回転電極間において短パルスの強い放電を実現することが可能となり、プラズマへの入力パワーも大きくなる。
(5)EUV光集光部
放電部により放出されるEUV光は、EUV光集光部に設けられた斜入射型のEUV集光鏡2により集光され、チャンバ1に設けられたEUV光取出部7より図示を省略した露光装置の照射光学系へ導かれる。
この斜入射型のEUV集光鏡2は、一般に、複数枚の薄い凹面ミラーを入れ子状に高精度に配置した構造である。各凹面ミラーの反射面の形状は、例えば、回転楕円面形状、回転放物面形状、ウォルター型形状であり、各凹面ミラーは回転体形状である。ここで、ウォルター型形状とは、光入射面が、光入射側から順に回転双曲面と回転楕円面、もしくは、回転双曲面と回転放物面からなる凹面形状である。
上記した各凹面ミラーの基体材料は、例えば、ニッケル(Ni)等である。波長が非常に短いEUV光を反射させるので、凹面ミラーの反射面は、非常に良好な平滑面として構成される。この平滑面に施される反射材は、例えば、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)、およびロジウム(Rh)などの金属膜である。各凹面ミラーの反射面には、このような金属膜が緻密にコーティングされる。
このように構成することにより、EUV集光鏡は、0°〜25°の斜入射角度のEUV光を良好に反射し、かつ、集光することが可能となる。
(6)デブリトラップ
上記した放電部とEUV光集光部との間には、EUV集光鏡2のダメージを防ぐために、放電後生成する高温プラズマと接する第1、第2の回転電極11,12の周縁部が当該高温プラズマによってスパッタされて生成する金属粉等のデブリや、高温プラズマ原料中のEUV放射種であるSnやLi等に起因するデブリ等を捕捉してEUV光のみを通過させるためのデブリトラップが設置される。
前記したように、図1、7に示す本実施例のEUV光源装置においては、デブリトラップはガスカーテン13bおよびホイルトラップ3から構成されている。
ガスカーテン13bは、ガス供給ユニット13からノズル13aを介してチャンバ1内に供給されるガスにより構成される。
図1に、ガスカーテン機構が示されている。ノズル13aは、直方体形状であり、ガスが放出される開口は細長い四角形状となっている。ガス供給ユニット13からノズル13aにガスが供給されると、ノズル13aの開口からシート状のガスが放出され、ガスカーテン13bが形成される。ガスカーテン13bは、上記デブリの進行方向を変化させ、デブリがEUV集光鏡2に到達するのを抑制する。ここでガスカーテン13bに使用されるガスは、EUV光に対して透過率の高いガスが望ましく、例えば、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の希ガスや水素(H2 )などが用いられる。
さらに、ガスカーテン13bとEUV集光鏡2との間には、ホイルトラップ3が設けられる。ホイルトラップ3は、高温プラズマから放射されるEUV光を遮らないように、高温プラズマ発生領域の径方向に設置される複数のプレートと、そのプレートを支持するリング状の支持体とから構成されている。
ガスカーテン13bとEUV集光鏡2との間にこのようなホイルトラップ3を設けると、高密度高温プラズマとホイルトラップ3との間の圧力が増加する。圧力が増加すると、その場に存在するガスカーテンのガス密度が増加し、ガス原子とデブリとの衝突が増加する。デブリは衝突を繰り返すことにより、運動エネルギーを減少する。よって、EUV集光鏡2にデブリが衝突する際のエネルギーが減少して、EUV集光鏡2のダメージを減少させることが可能となる。
なお、チャンバ1の集光空間1b側に、ガス供給ユニット14を接続して、EUV光の発光に関係のないバッファーガスを導入してもよい。ガス供給ユニット14から供給されたバッファーガスはEUV集光鏡2側から、ホイルトラップ3を通過して、ホイルトラップ保持用隔壁3aと隔壁1cとの間の空間を通って真空排気装置4から排気される。このようなガスの流れが生じることにより、ホイルトラップ3では捕捉しきれなかったデブリがEUV集光鏡2側に流れ込むのを防ぎ、デブリによるEUV集光鏡2のダメージを少なくすることができる。
ここで、バッファーガスに加えて、塩素(Cl2 )等のハロゲンガスや水素ラジカルをガス供給ユニット14から集光空間に供給してもよい。これらのガスは、デブリトラップで除去されずにEUV集光鏡2に堆積したデブリと反応して当該デブリを除去するクリーニングガスとして機能する。よって、デブリ堆積によるEUV集光鏡の反射率低下といった機能低下を抑制することが可能となる。
(7)隔壁
放電空間1aの圧力は、原料用レーザ照射により気化した高温プラズマ原料を加熱励起するための放電が良好に発生するように設定され、ある程度以下の真空雰囲気に保持する必要がある。
一方、集光空間1bは、デブリトラップでデブリの運動エネルギーを小さくする必要があるので、デブリトラップ部分で所定の圧力を維持する必要がある。
図1、図2では、ガスカーテンから所定のガスを流し、ホイルトラップ3で所定の圧力を維持して、デブリの運動エネルギーを小さくする。そのために、集光空間は、結果として数100Pa程度の圧力の減圧雰囲気に維持する必要がある。
ここで、本発明のEUV光源装置においては、チャンバ1内を放電空間と集光空間とに区画する隔壁1cが設けられている。この隔壁1cには、両空間を空間的に連結する開口が設けられる。開口は圧力抵抗として機能するので、放電空間を真空排気装置4、集光空間を真空排気装置5でそれぞれ排気する際、ガスカーテン13bからのガス流量、開口の大きさ、各真空排気装置の排気能力等を適宜考慮することにより放電空間1aを数Pa、集光空間1bを適切な圧力に維持することが可能となる。
(9)極端紫外光(EUV)光源装置の動作
本実施例のEUV光源装置は、露光用光源として用いられる場合、例えば、以下のように動作する。図4は本実施例の動作を示すフローチャート、図5はEUV生成方式を説明するためのタイミングチャートであり、以下図4、図5により、本実施例の動作を説明する。
EUV光源装置の制御部26は、図5に示した時間データΔtd、Δtiを記憶している。
ここで、Δtdは、パルス電力供給手段(パルス電力発生器8)のスイッチング手段であるスイッチSW(例えばIGBT)にトリガ信号が入力した時点(時刻Td)から、スイッチSWがon状態となってコンデンサC2の電圧が閾値Vpに到達するまでの時間である。Δtiは、第1のレーザを電極上の高温プラズマ原料に照射後、気化した原料が対向する電極に達し放電電流が流れ始める(放電が開始する)までの時間である。
なお、閾値Vpは、放電が発生したときに流れる放電電流の値が閾値Ip以上となる場合の電圧値である。また、閾値Ipは、所望の強度のEUV光を放射する高温プラズマを作るために必要な放電電流値の下限である。
一般に、放電電極11,12に印加される電圧Vが大きいと、放電電極間の電圧波形の立ち上がりは速くなる。よって、上記したΔtdは、放電電極11,12に印加される電圧Vに依存することになる。EUV光源装置の制御部26は、予め実験等で求めた電圧Vと時間Δtdとの関係をテーブルとして記憶している。
まず、EUV光源装置の制御部からのスタンバイ指令が、真空排気装置5,真空排気装置4、ガス供給ユニット13,ガス供給ユニット14、第1のモータ22a、第2のモータ22bに送信される(図4のS101)。
スタンバイ指令を受信した、真空排気装置5,真空排気装置4、並びに、ガス供給ユニット13,ガス供給ユニット14は動作を開始する。すなわち、真空排気装置4が動作し、放電空間が真空雰囲気となる。一方、真空排気装置5が動作するとともに、ガス供給ユニット13が動作してガスカーテン13bが形成され、ガス供給ユニット14が動作して集光空間1b内にバッファーガス、クリーニングガスが供給される。その結果、集光空間1bが所定の圧力に到達する。また、第1のモータ22a、第2のモータ22bが動作して、第1の回転電極11、第2の回転電極12が回転する。以下、上記した動作状態を総称してスタンバイ状態と呼ぶ(図4のS102)。
EUV光源装置の制御部26は、露光装置の制御部27にスタンバイ完了信号を送信する(図4のS103)。
スタンバイ完了信号を受信した露光装置の制御部27より、EUV光源装置の制御部26は、発光指令を受信する。なお、EUV放射の強度を露光装置側がコントロールする場合、本発光指令には、EUV放射の強度データも含まれる。(図4のS104)。
EUV光源装置の制御部26は、充電制御信号をパルス電力発生器8の充電器CHに送信する。充電制御信号は、例えば、放電開始タイミングデータ信号等からなる。上記したように、露光装置の制御部27からの発光指令にEUV放射の強度データが含まれる場合、主コンデンサC0への充電電圧データ信号も上記充電制御信号に含まれる。
例えば、予め、EUV放射強度と主コンデンサC0への充電電圧との関係が実験等により求められ、両者の相関を格納したテーブルが作成される。EUV光源装置の制御部26は、このテーブルを記憶しており、露光装置の制御部27から受信した発光指令に含まれるEUV放射の強度データに基づき、テーブルより主コンデンサC0の充電電圧データを呼び出す。そして呼び出した充電電圧データに基づき、EUV光源装置の制御部26は、主コンデンサC0への充電電圧データ信号を含む充電制御信号をパルス電力発生器の充電器CHに送信する(図4のS105)。
充電器CHは上記したように主コンデンサC0の充電を行う。(図4のS106)。
EUV光源装置の制御部26は、予め記憶している時間データΔtd、Δtiに基づき、パルス電力供給手段のスイッチSW(IGBT)に主トリガ信号を出力するタイミング、第1のレーザ源23aの動作を制御する第1のレーザ制御部23bへの第1トリガ信号の送出タイミング、第2のレーザ源24aの動作を制御する第2のレーザ制御部24bへの第2トリガ信号の送出タイミングを計算する(図4のS107)。
なお、パルス電力供給手段(パルス電力発生器8)のスイッチング手段に主トリガ信号が入力してスイッチSW(IGBT)がonとなる時点Tdを基準として、第1のレーザ23が照射される時間T1、第2のレーザ24が照射される時間T2を、制御部26予め設定しておいてもよい。
制御部26は、時刻TdにおいてスイッチSW(IGBT)に主トリガ信号を出力し、スイッチSWがonとなる(図4のS108、図5のS201)。
スイッチSWがonとなると、第1の回転電極11、第2の回転電極12間の電圧が立ち上がり、時間Δtd後に、コンデンサC2の電圧が閾値Vpに到達する(図5のS202)。
上記したように、閾値Vpは、放電が発生したときに流れる放電電流の値が閾値Ip以上となる場合の電圧値であり、閾値Ipは、所望の強度のEUV光を放射する高温プラズマを作るために必要な放電電流値の下限である。
コンデンサC2の電圧が閾値Vpに到達した時点以降の時点T1(T1≧Td+Δtd)において、第1トリガ信号が第1のレーザ制御部23bへ送出され、第1のレーザ23が第1の電極の表面上の高温プラズマ原料に照射される(図4のS109、図5のS203)。
第1のレーザ23が放電電極上の高温プラズマ原料に照射されて、高温プラズマ原料は気化する。気化した高温プラズマ原料は、第1のレーザ23が入射した高温プラズマ原料表面の法線方向を中心にして3次元方向に広がる。広がった高温プラズマ原料は、Δti後に、対向する第2の電極に達し、この時点T3(T1+Δti)で一対の電極間で放電が開始し放電電流が流れる(図5のS204)。
一方、第1のレーザ23の照射後であって、第1のレーザ23の照射により気化した原料が対向する電極に到達し放電が開始するまでの間に、第2トリガ信号が第2のレーザ制御部24bへ送出される。これにより、T1からT3までの期間中の時点T2で、第2のレーザ24が第1の電極上の高温プラズマ原料に照射される(図4のS1110、図5のS205)。なお、第2のレーザ24は、第1のレーザが照射した領域に重ねて照射できるよう照射位置が調整されている。
第2のレーザ照射により電極上の原料は再び気化し広がり始めるが、この第2のレーザ照射により気化した原料が対向する電極に達する前に(気化した原料が十分に広がらないうちに)、第1のレーザ照射により気化した原料が対向する電極に達することにより両極間で放電が開始する。
放電は、第1の回転電極11、第2の回転電極12の周縁部のエッジ部分間で発生し、プラズマが形成される。プラズマを流れるパルス状の大電流によりプラズマが加熱励起され高温化すると、この高温プラズマから波長13.5nmのEUV放射が発生する(図4のステップS111、図5のS206)。
放電の磁気圧により、第2のレーザ照射により気化した原料は十分に広がりきらないうちに圧縮され、直径の小さな密度の高いプラズマが形成される。これにより変換効率の高いEUV光が放射される。
以上のように初回のEUV放射が終わると、次いで、図4のステップS104に戻り、露光装置からの発光指令を待機する。
図6は、第1のレーザ照射後に第2のレーザ照射を行った場合のパルス電力発生器のコンデンサC2の電圧の変化とEUV光の放射の一例を示す図である。同図において、横軸は時間(ナノ秒:ns)であり、縦軸は任意単位である。なお、電極間にはマイナスの高電圧が印加されるため、電圧は縦軸の下方ほど高く上方ほど低い。
同図においては、電極上のスズに対し第1のレーザ23を照射した100ns後に、第1のレーザ23を照射した同じ部分に第2のレーザ24を照射している。第1のレーザ23を照射したおよそ300ns後に電極間に電流が流れて放電が始まり、コンデンサC2の電圧が下がる。EUV光の放射は第1のレーザ23を照射した約600ns後に生じる。
図7は、第1のレーザ照射と第2のレーザの間隔と、放射されるEUV光の変換効率の変化を示す図である。同図において、横軸は時間(ns)であり、縦軸は変換効率である。なお、同図においては、第1のレーザ照射と第2のレーザ照射を同時に行ったときの変換効率を1として示している。なお、変換効率とは、プラズマから放射されたEUV光のエネルギーを電極間の放電に使われたエネルギーで割った値である。
なお、第1のレーザと第2のレーザの照射エネルギーはいずれも約100mJである。
上記したように、放電は第1のレーザ照射から約300ns後に開始する。図7に示すように、高温プラズマ原料に対する第2のレーザ照射を、第1のレーザ照射から300nsまで、即ち放電が始まるまでの間に行うと、第1のレーザ照射と第2のレーザ照射を同時に行う場合に比べて、EUV光放射の変換効率が上昇する。
第2のレーザ照射が放電開始とほぼ同じである場合の変換効率は、第1のレーザ照射と第2のレーザ照射を同時に行う場合とほぼ等しい。
しかし、第2のレーザ照射を放電開始後(300ns以降)に行うと、反対に変換効率が下がる。
したがって、第2のレーザ照射を、第1のレーザ照射後、電極間での放電が開始するまでの間に行うことにより、1回のレーザ照射に比べて変換効率のよいEUV放射を得ることができる。
第2のレーザ照射の最適なタイミングは、電極の間隔や電極に加えられるパルス電力の大きさにより変化するので、予め実験により最適なタイミングを見つけて設定する。
また、第1のレーザ23の照射強度(エネルギー)および第2のレーザ24の照射強度(エネルギー)も、どの程度のエネルギーにするか、両方同じ大きさのエネルギーにするか、異なるエネルギーにするかなども含めて適宜設定する。
また、第1のレーザ23の集光点や第2のレーザ24の集光点も適宜設定する。
図8は、電極間に発生するプラズマの状態を説明する図である。同図は、上下に対向する一対の放電電極の表面を示し、電極間のプラズマの状態が時間経過に伴いどのように変化するかを模式的に示したものである。
図8(a)はレーザ照射を1度しか行わない従来の場合であり、図8(b)はレーザ照射を2度行なう本発明の場合である。
従来の図8(a)においては、電極上の高温プラズマ原料(スズ)に対してレーザ照射を行うと、レーザ照射により発生した原料ガスが広がって対向する電極に達し、電極間を橋絡して電流が流れ始め放電が開始する。
原料ガスは放電電流の増加とともに磁気圧によって圧縮加熱され、ピンチプラズマが形成される。このピンチプラズマからEUV光が放射される。
しかし、原料ガスは、放電が始まるまでに、対向する電極に進展しつつ、かつ横方向にも膨張しているため、放電開始時点では大きく広がっておりガス密度は低い状態になっている。そのため、ピンチの効率が悪く、到達するイオン密度や電子温度が、高い変換効率のEUV光放射が得られる値にならない。
これに対し、本発明の図8(b)においては、電極上の高温プラズマ原料(スズ)に対して第1のレーザを照射し、この第1のレーザ照射によって発生した原料ガスが広がって対向する電極に達し、電極間を橋絡して電流が流れ始め放電が開始するのは、上記従来の図8(a)の場合と同じだが、この第1のレーザ照射によって発生した原料ガスが電極間を橋絡し放電が始まるまでに、第2のレーザを電極上の高温プラズマ原料(スズ)に対して(第1のレーザが照射された領域に)照射する。これにより、再び原料ガスが電極間に発生する。
放電は、第1のレーザ照射によって発生した原料ガスによって引き起こされるが、その放電が開始される時点で、第2のレーザ照射によって発生した原料ガスは、第2のレーザ照射からまだ時間があまり経過していないため、3次元方向にそれほど大きく膨張していない状態、即ちガス密度が高い状態で電極間に存在する。
したがって、原料ガスが放電電流の増加とともに磁気圧によって圧縮加熱される時、ピンチの効率が高まり、到達イオン密度や電子温度が、高い変換効率のEUV光放射が得られる値になる。
本発明の実施例のEUV光源装置の断面構成(正面図)を示す図である。 本発明の実施例のEUV光源装置の断面構成(上面図)を示す図である。 第1および第2のレーザの集光例を示す図である。 図1、図2に示す実施例の動作を示すフローチャートである。 本発明におけるEUV生成を説明するタイミングチャートである。 第1のレーザ照射後に第2のレーザ照射を行った場合のコンデンサ電圧の変化とEUV光の放射の一例を示す図である。 第1のレーザ照射と第2のレーザの間隔と放射されるEUV光の変換効率の変化を示す図である。 電極間に発生するプラズマの状態を説明する図である。 従来のEUV光源装置の構成例を示す図である。
符号の説明
1 チャンバ
1a 放電空間
1b 集光空間
1c 隔壁
2 EUV集光鏡
3 ホイルトラップ
4,5 真空排気装置
7 EUV取出部
8 パルス電力発生器
11,12 放電電極
11a,12a 高温プラズマ原料
11b,12b コンテナ
11c,12c 電力導入部
13,14 ガス供給ユニット
13a ノズル
13b ガスカーテン
15 パルス電力供給手段
22a,22b モータ
22c,22d メカニカルシール
22e,22f 回転軸
23 第1のレーザ
23a 第1のレーザ源
23b 第1のレーザ制御部
24 第2のレーザ
24a 第2のレーザ源
24b 第2のレーザ制御部
26 制御部
27 露光機(制御部)

Claims (5)

  1. 対向して配置された一対の放電電極と、上記放電電極にパルス電力を供給するパルス電力供給手段と、上記放電電極に極端紫外光を放射させるための液体または固体の原料を電極上に供給する原料供給手段と、上記放電電極上に供給された原料に対しエネルギービームを照射し、当該原料を気化させて上記一対の放電電極間で放電を開始させるエネルギービーム照射手段とを備えた極端紫外光光源装置において、
    上記エネルギービーム照射手段は、
    上記放電電極上に供給された原料に対し第1のエネルギービームを照射し当該原料を気化させる第1のエネルギービーム照射手段と、
    上記第1のエネルギービームの照射後、上記一対の放電電極間で放電が開始するまでの間に、上記第1のエネルギービームを照射した領域の原料に対して第2のエネルギービームを照射しさらに原料を気化させる第2のエネルギービーム照射手段とを備えていることを特徴とする極端紫外光光源装置。
  2. 上記放電電極は円盤状の電極であり、電極表面における放電発生位置が変化するように回転駆動されていることを特徴とする請求項1に記載の極端紫外光光源装置。
  3. 上記第2のエネルギービームの照射は、上記第1のエネルギービーム照射後、300ナノ秒以内に行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の極端紫外光光源装置。
  4. 請求項1または請求項2に記載の極端紫外光光源装置における極端紫外光発生方法であって、
    極端紫外光を放射させるための液体または固体の原料が塗布された一対の放電電極にパルス電力を供給する第1の工程と、
    上記パルス電力が供給された電極の表面の上記原料に対して、第1のエネルギービームを照射し当該原料を気化させる第2の工程と、
    上記第1のエネルギービームの照射後、上記一対の放電電極間で放電が開始するまでの間に、上記第1のエネルギービームを照射した領域の原料に対して第2のエネルギービームを照射し、さらに原料を気化させる第3の工程とを備えたことを特徴とする極端紫外光発生方法。
  5. 上記第3の工程は、上記第2の工程の後、300ナノ秒以内に行うことを特徴とする請求項4に記載の極端紫外光発生方法。
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