JP2010067499A - 正極合材の製造方法、及びそれを用いて得られる正極合材 - Google Patents

正極合材の製造方法、及びそれを用いて得られる正極合材 Download PDF

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Abstract

【課題】無機固体電解質を用いたリチウム二次電池において、実用に耐えうる高出力電池が作製可能な正極合材の製造方法を提供する。
【解決手段】正極活物質及び無機固体電解質をメカニカルミリング処理し、前記メカニカルミリング処理により前記正極活物質及び前記無機固体電解質に1kgあたり50kJ〜700kJのエネルギーを与える事を特徴とする。この処理により、合剤粒子の分散性が向上するとともに、良好なイオン伝導パスが得られ、電池の出力特性が向上する。
【選択図】図2

Description

本発明は、正極合材の製造方法、及びそれを用いて得られる正極合材に関する。
現行のリチウム電池は、電解質として非水系有機電解質を使用しており、正極活物質と電解質との接触が良好で、Liイオンの伝導パスが確保され、性能も高い。
一方、電解質として無機固体電解質を用いた電池の場合、活物質と電解質の接触が点接触となるため、上記リチウム電池の液系電解質と比較して、リチウムイオン伝導パスが少なくなってしまう問題があった。少ないLiイオン伝導パスでは、電池の内部抵抗が高まり、高出力化ための放電容量も少なくなるうえ、放電電位も低くなる。従って、実用に耐えうる無機固体電解質を用いた電池を作製するには、出力特性の改善が必要であった。
特許文献1は、粒径の異なる2種類の活物質を正極及び負極を用い、体積密度を向上させることにより電位安定性及び熱安定性を向上させた液系電池を開示している。
特許文献2は、正極活物質及び電解質の粒径を規定することにより、正極利用率等の性能を向上させた全固体電池を開示している
しかし、これら電池のいずれも実用に耐えるだけの性能はなかった。
特開2006−228733号公報 特開平8−195219号公報
本発明は、実用に耐えうる出力を有する電池が作製可能な正極合材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、以下の正極合材の製造方法等が提供される。
1.正極活物質及び無機固体電解質をメカニカルミリング処理し、
前記メカニカルミリング処理により前記正極活物質及び前記無機固体電解質に1kgあたり50kJ〜700kJのエネルギーを与える正極合材の製造方法。
2.前記正極活物質が平均粒径が互いに異なる2つの正極活物質粉体の混合物である1に記載の正極合材の製造方法。
3.前記2つの互いに異なる平均粒径を有する正極活物質粉体の粒径比が0.08〜1である2に記載の正極合材の製造方法。
4.前記正極活物質が、Li含有遷移金属複合酸化物である1〜3のいずれかに記載の正極合材の製造方法。
5.前記正極活物質が、Tiスピネル又は炭素で表面修飾されてなる1〜4のいずれかに記載の正極合材の製造方法。
6.1〜5のいずれかに記載の正極合材の製造方法により製造した正極合材。
7.6に記載の正極合材からなる正極。
8.7に記載の正極、無機固体電解質からなる電解質層及び負極を備えるリチウム電池。
9.8に記載のリチウム電池を用いた装置。
本発明によれば、実用に耐えうる出力を有する電池が作製可能な正極合材の製造方法を提供することができる。
本発明の正極合材の製造方法では、正極活物質及び無機固体電解質をメカニカルミリング処理し、メカニカルミリング処理により正極活物質及び無機固体電解質に1kgあたり50kJ〜700kJのエネルギーを与えることにより正極合材を製造する。
メカニカルミリング処理することにより、正極活物質及び無機固体電解質の良好な分散性が得られるうえ、正極活物質と無機固体電解質のコンタクト面積が増大して、リチウムイオン伝導パスを増加させることができる。
従って、本発明の正極合材の製造方法により得られる正極合材を用いた電池は、高い出力が得られる。
本発明のメカニカルミリング処理とは、正極活物質粒子及び無機固体電解質粒子に衝撃、せん断、ずり応力、摩擦等の機械的エネルギーを与え、正極活物質及び無機固体電解質を混合することをいう。
メカニカルミリング処理により正極活物質及び無機固体電解質に与えるエネルギーは、1kgあたり50kJ〜700kJである。
与えるエネルギーが50kJ未満の場合、うまく混合されず、電池性能が低下するおそれがある。一方、与えるエネルギーが700kJ超の場合、正極活物質が破壊され電池性能が低下する原因となるおそれがある。
メカニカルミリング処理に用いる装置としては、その中に数個の10mm前後の径のアルミナボールが入ったアルミナ製ポットが挙げられる。
上記アルミナ製ポットは、ポット自体が自転し且つ公転することで、内部に投入された正極活物質及び無機固体電解質を高度に均一混合及び均一分散させることができる。また、ポット内部のアルミナボール同士が衝突し、衝突の際の衝撃により正極活物質及び無機固体電解質を密着させることができる。
本発明の正極合材の製造方法に用いる正極活物質としては、LMO、NMC、LCO、LNCO、LNCAO、オリビン型化合物(Fe、Co、Ni、Mn)が挙げられ、好ましくはLi含有遷移金属複合酸化物である。
尚、LMOとはマンガン酸リチウム(LiMn)、NMCとはニッケルマンガンコバルト酸リチウム(LiNi1/3Mn1/3Co1/3)、LCOとはコバルト酸リチウム(LiCoO)、LNCOとはニッケルコバルト酸リチウム(LiNi0.8Co0.2)、LNCAOとはニッケルコバルト酸リチウム(LiNi0.8Co0.15Al0.05)である。
上記Li含有遷移金属複合酸化物としては、例えばLiCoO、LiNiCoO、LiNiCoAlO、LiMn、LiNi1/3Mn1/3Co1/3、LiNiO、LiMn1.6Ni0.4、LiCoPO、LiNiPO、LiFePO、LiMnPO等が挙げられる。
上記正極活物質の平均粒径は、好ましくは0.01〜30μmである。
正極活物質の平均粒径が0.01μm未満の場合、内部抵抗増加のため電池性能低下を引き起こすおそれがある。一方、正極活物質の平均粒径が30μm超の場合、出力低下を引き起こすとなるおそれがある。
正極活物質は、好ましくは平均粒径が互いに異なる2つの正極活物質粉体の混合物である。平均粒径が互いに異なる2つの正極活物質粉体の混合物を正極活物質として用いることにより、正極活物質の充填密度を向上させることができる。
尚、上記2つの正極活物質粉体の種類は、同一でも異なってもよく、好ましくは同一である。
上記平均粒径が互いに異なる2つの正極活物質粉体の混合物において、相対的に大きい平均粒径を有する正極活物質粉体と相対的に小さい平均粒径を有する正極活物質粉体は、好ましくは粒径比が0.08〜1である。
また、上記平均粒径が互いに異なる2つの正極活物質粉体の混合物において、相対的に大きい平均粒径を有する正極活物質粉体と相対的に小さい平均粒径を有する正極活物質粉体の混合比は、好ましくは2:8〜8:2(重量比)である。
本発明では、例えば平均粒径が5μmである正極活物質と平均粒径が10μmである正極活物質を混合比7:3(重量比)で混合した混合物を用いるとよい。
正極活物質は、好ましくはTiスピネル又は炭素で表面修飾されている。
上記表面修飾は、例えばN.Ohta,K.Takada,L.Zhang,R.Ma,M.Osada,T.Sasaki,Adv.Mater.18, 2226(2005).に記載の方法で行うことができる。
本発明の正極合材の製造方法に用いる無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性の無機固体電解質である。
例えば、LiN、LISICON類、Thio−LISICON類、La0.55Li0.35TiO等のペロブスカイト構造を有する結晶;NASICON型構造を有するLiTi12;及びこれらの結晶化物等を用いることができる。
上記無機固体電解質に加え、LiO−B−P系、LiO−B−ZnO系、LiO−Al−SiO−P−TiO系の酸化物系非晶質固体電解質;LiS−P系、LiI−LiS−P系、LiPO−LiS−SiS系等の硫化物系非晶質固体電解質;及びこれらを結晶化させた結晶性固体電解質も用いることができる。
LiPO−LiS−SiS等のような金属酸化物と硫化物が混合された非晶質電解質、それらを結晶化させた電解質等も用いることができる。
本発明の正極合材の製造方法に用いる無機固体電解質は、好ましくはリチウムイオン伝導性に優れ、粒子同士の界面を得やすい硫化物系固体電解質である。
上記硫化物系固体電解質としては、硫黄、リン及びリチウムのみからなる硫化物系固体電解質を用いることができ、この硫化物系固体電解質はさらにAl、B、Si、Ge等を含んでもよい。
硫化物系固体電解質は、有機化合物からなる材料、無機化合物からなる材料、又は有機化合物及び無機化合物からなる材料を原材料に用いることで製造することができる。
具体的には、硫化リチウム(LiS)及び五硫化二燐(P);硫化リチウム、単体燐及び単体硫黄;又は硫化リチウム、五硫化二燐、単体燐及び/又は単体硫黄を原材料として用いることができる。
例えば原材料が硫化リチウム及び五硫化二燐;又は硫化リチウム、単体燐及び単体硫黄である場合、その混合モル比は、通常50:50〜80:20であり、好ましくは60:40〜75:25である。特に好ましくは、LiS:P=70:30(モル比)程度である。
硫化物系固体電解質は、好ましくは(1)硫化リチウム及び五硫化二燐(2)硫化リチウム、単体燐及び単体硫黄又は(3)硫化リチウム、五硫化二燐、単体燐及び単体硫黄から製造することができる。
具体的には、上記(1)〜(3)のいずれかの材料の混合物を溶融反応した後、急冷する、又はメカニカルミリング法(以下、MM法という場合がある)により処理することにより、ガラス状固体電解質が得られる。得られたガラス状固体電解質をさらに熱処理することにより結晶性固体電解質である硫化物系固体電解質が得られる。
無機固体電解質の平均粒径は、好ましくは0.1μm〜20μmである。
本発明の正極合材の製造方法から得られる正極合材(以下、本発明の正極合材という場合がある)を用いて、正極を製造することができる。
正極の製造方法としては、本発明の正極合材及び溶媒からなる混合液を塗布して形成する方法のほか、例えば、ブラスト法、エアロゾルデポジション法、コールドスプレー法、スパッタリング法、気相成長法、加圧プレス法又は溶射法等も用いることができる。このような方法により成膜することで、正極の空隙率をより小さくすることができ、電子伝導、電子授受及びイオン伝導を改善することができる。
正極合材及び溶媒からなる混合液を塗布して正極を形成する場合において、混合液は、正極合材が溶媒に溶解しているのではない。正極合材の比重は、通常、溶媒の比重より大きいことから、上記混合液中で通常、沈殿しているが、正極を形成する際には攪拌等により正極合材を均一に分散させた混合液を用いると好ましい。
混合液に用いる溶媒は、好ましくは正極合材との反応性が低い溶媒であるが、正極合材表面をコートする等して正極合材が溶媒と反応しないように処置することにより、正極合材との反応性が高い溶媒も用いることができる。
上記溶媒は、好ましくは有機溶媒であり、より好ましくは炭化水素系有機溶媒であり、例えばヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、デカリン等である。
これら溶媒のうち、塗布後の乾燥工程を考慮すると、低沸点溶媒であるヘキサン、トルエン、キシレンが好ましいが、混合液の維持を考慮すると、蒸発速度の速い低沸点溶媒を用いることは困難であり、トルエン、キシレン等が好ましい。
混合液に用いる溶媒は、好ましくは脱水処理して水分含有量を低くする。溶媒の水分含有量は、通常30ppm以下、好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは1.0ppm以下である。
本発明の正極合材及び溶媒からなる混合液にバインダーをさらに添加してもよい。
上記バインダーは、正極合材との反応性が低ければ特に限定されないが、好ましくは熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂であり、より好ましくはポリシロキサン、ポリアルキレングリコール、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR/CMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)、分岐PEO、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、PEO−PPO共重合体、分岐PEO−PPO共重合体、アルキルボラン含有ポリエーテルである。
尚、バインダーは、シート化容易性、界面抵抗の増加を防ぎ且つ充放電容量の低下を防ぐ観点から特に好ましくはSBR、ポリアルキレングリコールである。
本発明のリチウム電池(全固体二次電池)は、本発明の正極、無機固体電解質からなる電解質層及び負極を備える。具体的には、本発明のリチウム電池は、正極と、負極と、正極及び負極間に挟持された固体電解質層で構成される。
本発明のリチウム電池の正極は、本発明の正極合材からなり、実用に耐えうる出力を有する。
ここで、実用に耐えうる出力とは、1cmあたり1mA程度以上の電流密度で放電が可能であることをいう。
図1は本発明の全固体二次電池の一実施形態を示す概略断面図である。
全固体二次電池1は、本発明の正極合材からなる正極10及び負極30からなる一対の電極間に固体電解質層20が挟持されており、正極10は本発明の正極である。正極10及び負極30にはそれぞれ集電体40及び42が設けられている。
負極30は、負極活物質を塗布法等により形成することができる。
負極活物質としては、リチウムイオンの挿入脱離が可能な物質、電池分野において負極活物質として公知の物質が使用できる。例えば、炭素材料、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等が挙げられ、特に人造黒鉛が好適である。
また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素、金属スズ等の金属自体や他の元素、化合物と組合せた合金を、負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、カーボンシートを負極として用いることができる。
固体電解質層20は、無機固体電解質からなり、好ましくは本発明の正極合材の製造方法の無機固体電解質を用いる。
固体電解質層20は、例えば上述の硫化物系固体電解質を、ブラスト法やエアロゾルデポジション法にて成膜することで製造できる。また、コールドスプレー法、スパッタリング法、気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)又は溶射法等でも硫化物系固体電解質の成膜が可能である。
さらに、硫化物系固体電解質と溶媒やバインダー(結着材や高分子化合物等)を混合した溶液を塗布、塗工した後、溶媒を除去し成膜化する方法もある。また、固体電解質自体や固体電解質とバインダー(結着材や高分子化合物等)や支持体(固体電解質層の強度を補強させたり、固体電解質自体の短絡を防ぐための材料や化合物等)を混合・組合した電解質を加圧プレスすることで成膜することも可能である。
簡便な装置で行うことができ、室温条件下、固体電解質の状態を変化させない温度範囲で成膜できることから、好ましくはブラスト法又はエアロゾルデポジション法を用いる。
固体電解質層の成膜に用いる溶媒は、固体電解質の性能に悪影響を与えないものであれば特に限定されないが、例えば非水系溶媒が挙げられる。
非水系溶媒としては、例えば、乾燥ヘプタン、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、Nメチルピロリドン、アセトニトリル、及びジメトキシエタン、ジメチルカーボネート等の電解液に用いられる溶媒が挙げられ、好ましくは水分含有量が100ppm以下、より好ましくは50ppm以下の溶媒である。
バインダーとしては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が使用できる。例えば、ポリシロキサン、ポリアルキレングリコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体又は前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体を挙げることができる。
この中で好ましいのはポリシロキサン、ポリアルキレングリコール、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
集電体40,42としては、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、インジウム、リチウム、又は、これらの合金等からなる板状体や箔状体等を用いることができる。また、導電性塗料を塗布したシートやメッキ処理を施した板状体や箔状体等も使用できる。集電体は、電極層(正極又は負極)と兼用することもできる。
本発明のリチウム電池は、上述した電池用部材を貼り合せ、接合することで製造できる。接合する方法としては、各部材を積層し、加圧・圧着する方法や、2つのロール間を通して加圧する方法(roll to roll)等がある。
また、接合面にイオン伝導性を有する活物質や、イオン伝導性を阻害しない接着物質を介して接合してもよい。
接合においては、固体電解質の結晶構造が変化しない範囲で加熱融着してもよい。
以下、本発明を実施例を基に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されない。
実施例1
[無機固体電解質の調製]
無機固体電解質である硫化物系固体電解質を以下の方法で調製した。
高純度硫化リチウム0.6508g(0.01417mol)と五硫化二燐1.3492g(0.00607mol)をよく混合し、混合粉末をアルミナ製ポットに投入し完全密閉した。混合粉末を投入したポットを遊星型ボールミル機に取り付け、最初、出発原料を十分に混合する目的で数分間低速回転(85rpm)でミリングを行った。その後徐徐に回転数を上げて370rpmでさらに20時間メカニカルミリングを行った。X線測定により、得られた粉末がガラス化していることを確認し、この粉末を300℃で2時間、熱処理して硫化物系固体電解質を得た。
交流インピーダンス法(測定周波数100Hz〜15MHz)により、得られた硫化物系固体電解質のイオン伝導度を測定したところ、室温で1.0×10−3S/cmのイオン伝導度を示した。
[正極合材の調製]
正極活物質は、N.Ohta, K.Takada, L.Zhang, R.Ma, M.Osada, T.Sasaki, Adv. Mater. 18, 2226 (2005).に記載の方法で表面修飾したLiCoOを用いた。
上記表面修飾LiCoOは、粒径がD−50で5μmである表面修飾LiCoOとD−50で10μm(セルシードC−10,日本化学工業株式会社)である表面修飾LiCoOの2種類を用意し、5μm(セルシードC−5H,日本化学工業株式会社)−表面修飾LiCoOが70wt%、10μm−表面修飾LiCoOが30wt%となるように混合して正極活物質とした。
調製した正極活物質及び調製した硫化物系固体電解質を、硫化物系固体電解質が30wt%となるように混合し、この混合物をメカニカルミリング処理して正極合材を調製した。
上記メカニカルミリング処理は、フリッチェP−7を用いて150rpmで30分間行い、正極活物質及び硫化物系固体電解質の混合物1kg当り261kJのエネルギーを与えた。
[リチウム電池の製造]
調製した硫化物系固体電解質50mgを直径10mmのプラスティック製の円筒に投入し、加圧成型して、さらに調製した正極合材を30mg投入し再び加圧成型した。正極合材とは反対側から、インジウム箔(厚さ0.1mm、9mmφ)を投入して、正極、固体電解質層及び負極の三層構造とし、リチウム電池を作製した。
作製したリチウム電池を、1cmあたり500μAで3.9Vまで充電し、その後10mA/cmの放電電流密度にて放電し、放電容量等を評価した。結果を表1に示す。
また、作製したリチウム電池の電荷移動抵抗値(硫化物系固体電解質/正極活物質)を評価したところ、電荷移動抵抗値は59Ωであり、測定時の電池電位は3.6Vであった。結果を表1に示す。
尚、上記電荷移動抵抗値は、ソーラトロン1260及びソーラトロン1287を組合せたインピダンス測定(周波数1MHz〜0.1Hz、10mV)により評価した。
実施例2
正極合材の調製の際のメカニカルミリング処理を15分間とした他は実施例1と同様にして正極合材を調製し、リチウム電池を作製し評価した。結果を表1に示す。
尚、15分間のメカニカルミリング処理で、正極活物質及び硫化物系固体電解質の混合物1kg当りに与えたエネルギーは131kJであった。
実施例3
正極合材の調製の際のメカニカルミリング処理を60分間とした他は実施例1と同様にして正極合材を調製し、リチウム電池を作製し評価した。結果を表1に示す。
尚、60分間のメカニカルミリング処理で、正極活物質及び硫化物系固体電解質の混合物1kg当りに与えたエネルギーは522kJであった。
実施例4
[負極合材の調製]
グラファイト(粒径:D−50で25μm)及び実施例1で調製した硫化物系固体電解質を、グラファイト:硫化物系固体電解質=6:4(重量比)となるように混合し、負極合材とした。
[リチウム電池の作製]
インジウム箔の代わりに調製した負極合材8.8mgを用い、実施例1の正極合材を14.4mg用いた他は実施例1と同様にしてリチウム電池を作製し評価した。結果を表1に示す。
実施例5
インジウム箔の代わりに実施例4の負極合材8.8mgを用い、実施例2の正極合材を14.4mg用いた他は実施例2と同様にしてリチウム電池を作製し評価した。結果を表1に示す。
実施例6
インジウム箔の代わりに実施例4の負極合材8.8mgを用い、実施例3の正極合材を14.4mg用いた他は実施例3と同様にしてリチウム電池を作製し評価した。結果を表1に示す。
比較例1
メカニカルミリング処理の代わりに乳鉢を用いた混合とした他は実施例1と同様にして正極合材を調製し、リチウム電池を製造し評価した。結果を表1に示す。
比較例2
インジウム箔の代わりに実施例4の負極合材8.8mgを用い、正極合材として比較例1の正極合材を14.4mg用いた他は実施例1と同様にしてリチウム電池を作製し評価した。結果を表1に示す。
比較例3
[正極合材の調製]
正極合材の調製の際のメカニカルミリング処理を90分間とした他は実施例1と同様にして正極合材を調製した。
[リチウム電池の作製]
インジウム箔の代わりに実施例4の負極合材8.8mgを用い、上述の調製した正極合材を14.4mg用いた他は実施例1と同様にしてリチウム電池を作製し評価した。結果を表1に示す。
比較例4
[正極合材の調製]
正極合材の調製の際のメカニカルミリング処理を5分間とした他は実施例1と同様にして正極合材を調製した。
[リチウム電池の作製]
インジウム箔の代わりに実施例4の負極合材8.8mgを用い、上述の調製した正極合材を14.4mg用いた他は実施例1と同様にしてリチウム電池を作製し評価した。結果を表1に示す。
Figure 2010067499
また、実施例4及び比較例2で作製したリチウム電池について、それぞれサイクリックボルタグラム(CV)測定を行った。結果を図2に示す。
図2から分かるように、メカニカルミリング処理を施すことにより、LCO中のコバルトの酸化還元のピーク(Co3+→Co4+のピークトップ及びCo4+→Co3+のピークトップ)の差(Δ)が小さくなっていることが分かる。
このことから、実施例4のリチウム電池においては均一な電気化学反応が生じており、実施例4の電池は、出力特性に優れることが確認された。
尚、CV測定の測定条件は以下のとおりである。
Sweep:0.1mV/sec
OCV→4.3V→1.5V→OCV
サンプル径:0.785cm
本発明の正極合材の製造方法から得られる正極合材は、リチウム電池の正極に用いることができる。
本発明の正極合材を用いた正極を含むリチウム電池は、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モーターを電力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電池として用いることができる。
本発明のリチウム電池の一実施形態を示す概略断面図である。 実施例4及び比較例2で作製したリチウム電池のサイクリックボルタグラム測定の結果を表す図である。
符号の説明
1 全固体二次電池
10 正極
20 固体電解質層
30 負極
40,42 集電体

Claims (9)

  1. 正極活物質及び無機固体電解質をメカニカルミリング処理し、
    前記メカニカルミリング処理により前記正極活物質及び前記無機固体電解質に1kgあたり50kJ〜700kJのエネルギーを与える正極合材の製造方法。
  2. 前記正極活物質が平均粒径が互いに異なる2つの正極活物質粉体の混合物である請求項1に記載の正極合材の製造方法。
  3. 前記2つの互いに異なる平均粒径を有する正極活物質粉体の粒径比が0.08〜1である請求項2に記載の正極合材の製造方法。
  4. 前記正極活物質が、Li含有遷移金属複合酸化物である請求項1〜3のいずれかに記載の正極合材の製造方法。
  5. 前記正極活物質が、Tiスピネル又は炭素で表面修飾されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の正極合材の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の正極合材の製造方法により製造した正極合材。
  7. 請求項6に記載の正極合材からなる正極。
  8. 請求項7に記載の正極、無機固体電解質からなる電解質層及び負極を備えるリチウム電池。
  9. 請求項8に記載のリチウム電池を用いた装置。
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