JP2010013674A - 電気炉を用いた精錬方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の電気炉1を用いた精錬方法は、電気炉1でCrを含む冷鉄源を溶解し、溶解した冷鉄源に対して酸素ガスを吹き込むと共にフラックスを添加して脱りんを行う際に、CaOフラックスに加えてCaOフラックスの滓化性を向上させるプリメルトフラックスを用いると共に、酸素ガスを特定の条件下で吹き込むものである。そして、このような特徴的な精錬方法を行うことで、精錬終了後にFeO、Cr2O3、T.Fe、Al2O3、CaO/Al2O3、CaO/SiO2が所定の範囲に調整されたスラグを得ると共に、効率良く脱りんを行うものである。
【選択図】図1
Description
また、特許文献2には、CaO、Al2O3、MgOを主成分とし、蛍石を用いていないフラックスが開示されている。特許文献2のフラックスは、低窒素、低酸素及び低イオウの高清浄鋼を精錬する際に用いられるものである。
さらに、特許文献3には、電気炉の精錬方法ではないが、トピードカーにおいて脱りん処理と脱硫処理とを含む溶銑予備処理を行うに当たって、脱酸された際に生成する浮遊スラグを用いたフッ素レスのフラックスを用いて流動性を備えたスラグを得ることが記載されている。
また、特許文献1の精錬方法では、スラグが多量に発生するので、精錬後にスラグを排滓することが困難となり、生産性を悪化させるという問題を有している。
一方、特許文献2のCaO、Al2O3、MgOを主成分とするフッ素レスのフラックスも滓化性が十分ではなく、CaOが未滓化状態で残って十分に脱りんがされない可能性がある。また、このフラックスは、高清浄鋼の精錬に用いられるものであり、低りん鋼を電気炉で精錬する際にそのまま用いることができるものではない。
本発明は、上記の問題点を解消するために為されたものであって、その目的はフッ素を含まないフラックスを用いて精錬するものでありながら、低りん鋼を効率良く精錬することのできる電気炉を用いた精錬方法を提供するものである。
すなわち、本発明の電気炉を用いた精錬方法は、
電気炉でCrを含む冷鉄源を溶解し、溶解した冷鉄源に対して酸素ガスを吹き込むと共にフラックスを添加して脱りんを行うに際して、
前記電気炉の使用電力が300kWh/tに達するまでにCaOフラックスの添加を開始し、かつ前記CaOフラックスを該CaOフラックスの精錬終了までのCaOの総使用量が20〜52kg/tとなるように添加し、
前記CaOフラックスの投入に続いて、CaO:27〜35質量%、Al2O3:48〜60質量%、SiO2:≦5質量%、MgO:6〜10質量%、TiO2:≦0.05質量%、P2O5:≦0.05質量%、S:≦0.2質量%を含むプリメルトフラックスを添加し、
前記使用電力が300〜380kWh/tまでに、吹込速度0.1〜1.4Nm3/t・分、吹込時間12〜30分、かつ酸素使用量5.0〜13.0Nm3/tとなるように前記酸素ガスの吹き込みを開始し、
精錬終了後に、FeO:8〜30質量%、Cr2O3:0.7〜9質量%、T.Fe:10〜35質量%、Al2O3:1〜10質量%、CaO/Al2O3:3.5〜27.0、CaO/SiO2:2.1〜5.5を含むスラグを得ることを特徴とする。
なお、前記冷鉄源は、Cr:≦2.0質量%かつP:≦0.045質量%を含んでいるのが好ましい。
図1に示されるように、電気炉1は、耐火レンガなどの耐火材及び/又は水冷パネルが内貼りされた蓋体6と本体7とから構成され、これらは上下に分割可能となっており、電気炉1の側面には排滓口2が形成されている。電気炉1は、開蓋状態で装入された冷鉄源及びフラックスを内部で溶解して溶湯として収容可能となっている。
電気炉1には上方から内部に向かって挿し込まれる複数(本実施形態では3本)の電極3が設けられている。この電極3は、黒鉛電極であって三相交流が供給されており、電極3と内部に装入された冷鉄源との間にアークを発生して冷鉄源が溶解して溶湯を形成可能となっている。
次に、本発明の精錬方法を説明する。
次に、蓋体6を閉めて装入された冷鉄源に対して電極3からアークを発生させて冷鉄源を溶解する。実操業に用いられる容量が100t程度までの電気炉1であれば、使用電力が300kWh/tまでには装入された冷鉄源の溶解が始まり、冷鉄源の一部は溶湯に変化する。
最後に、溶湯に対して酸素ガスを吹き込んでスラグの滓化を促進させて脱りんが行われる。すなわち、冷鉄源に対して酸素ガスを吹き込むことで、スラグと溶湯との界面に鉄が酸化した酸化鉄(FeO)が形成され、このFeOと溶湯中のPとが以下の式(1)で示すように反応する。
2[P]+5FeO → P2O5+5Fe (1)
その結果、溶湯中のりんPがP2O5などとなり、スラグに取り込まれて溶湯中から除去される。この酸素ガスの吹き込みを所定の時間に亘って行うことで溶湯中からりんが取り除かれて普通鋼や合金鋼として精錬される。
電気炉1に装入されるフラックスは、CaOフラックスと、CaOフラックスに続いて添加されるプリメルトフラックスとからなる。CaOフラックスは、溶湯に配合しやすいように粒度調整されたCaOで形成されており、溶湯に対して添加されることでスラグの滓化を進行させるものである。CaOフラックスは、溶湯に過剰に添加するとCaOが未滓化で溶湯中に残り易くなるため滓化性がかえって低下する。そこで、本発明では、添加されたCaOフラックス中のCaOを溶湯へ溶解し易くし、CaOの溶湯への溶解性を高めることでスラグの滓化性を向上させるプリメルトフラックスをCaOフラックスに続いて添加する。
本発明の精錬方法は、上述のようなプリメルトフラックスをCaOフラックスに続けて用いると共に、このようなプリメルトフラックスを使用するのに合わせて以下の4つの精錬条件を満足するように精錬(脱りん)を行うものである。
第2の精錬条件は、酸素ガスの吹込速度に関するものである。つまり、酸素ガスを吹込速度が0.1〜1.4Nm3/t・分の範囲になるように吹き込む。酸素ガスを吹込速度0.1Nm3/t・分未満で吹き込むと、溶湯中に酸素ガスが十分に供給されなくなり、スラグと溶湯との界面にFeOが十分に形成されなくなって脱りん性が低下する。また、酸素ガスを1.4Nm3/t・分を超える吹込速度で吹き込むと、酸素ガスの吹込により溶湯の湯面が乱れてスプラッシュ(飛散)が生じ、歩留り性を低下させる。
第4の精錬条件は、酸素使用量(酸素ガスの吹込総量)に関するものである。つまり、酸素使用量が5.0〜13.0Nm3/tとなるように酸素ガスを吹き込む。酸素使用量が5.0Nm3/t未満では、溶湯に供給される酸素量が少なくなりすぎてスラグと溶湯との界面にFeOが十分に形成されなくなり、脱りん性が低下する。また、酸素使用量が13.0Nm3/tを超えると、吹込まれた酸素ガスによる酸化で失われる鉄の量が大きくなり、歩留り性が低下する。
なお、スラグには上述のFeO、Cr2O3、Al2O3、CaO、SiO2以外の酸化物なども含まれている。しかし、ここでは、脱りん性や滓化性に影響の大きなFeO、Cr2O3、Al2O3、CaO、SiO2についてのみ組成の濃度を示す。
精錬終了後のスラグにAl2O3が1質量%未満しか含まれない場合やCaO/Al2O3が27.0を超える場合は、溶湯中にAl2O3が少量しかないため、スラグの滓化が促進され難くなっていることを示している。それゆえ、このようにAl2O3が1質量%未満しか含まれないスラグやCaO/Al2O3が27.0を超えるスラグが得られるような精錬を行うと、スラグの滓化性が低下して脱りん性が低くなる。一方、精錬終了後のスラグにAl2O3が10質量%を超えて含まれる場合やCaO/Al2O3が3.5未満となる場合は、溶湯中にAl2O3が過剰に存在してスラグの流動性が大きくなりすぎて脱りん性が低くなる。
上述のような精錬方法を行うことにより、フッ素を含まないフラックスを用いて精錬するものでありながら、低りん鋼を効率良く精錬することができる。
実施例及び比較例は、表1に示すように、容量が20tの三相交流アーク式の電気炉1を用いて表2に示すような2種類の鋼種について精錬を行ったものである。電気炉1には、先端側に直径30mmの酸素ガスの噴出口が1箇所形成された酸素ランス4が、装入角度が変更自在になるように設けられている。
フラックスの添加順序は、CaOフラックス→プリメルトフラックスの順番で添加するもの(添加順序A)と、プリメルトフラックス→CaOフラックスの順番で添加するもの(添加順序B)とのいずれかで行った。精錬が終了した溶鋼は当業者常法通りに2次精錬と鍛造とを行って、鋼片(サンプル片)を得た。
脱りん性については、鍛造後の鋼片に対して発光分光分析装置(島津製作所製、PDA−7000)を用いてP濃度の分析を行い、分析結果がPの規格上限濃度に対して多いか少ないかで脱りん性を評価した。すなわち、分析された鋼片のりん濃度が規格上限濃度である0.015質量%未満のときは脱りん性を○と評価し、鋼片のりん濃度が0.015質量%と等しい場合は脱りん性を△と評価し、鋼片のりん濃度が0.015質量%超える場合は脱りん性を×と評価した。
滓化性については、精錬終了時に電気炉1の内部を目視で観察し、未溶解のCaOが残留しているかどうかで滓化性を評価した。電気炉1の内部に未溶解のCaOが全く存在しない場合を○、一部でも存在する場合を△、多数存在する場合を×と評価した。
次に、表3を用いて、実施例及び比較例に示されるプリメルトフラックスの組成、精錬の条件、精錬後のスラグの組成が上述の評価結果に及ぼす影響を説明する。
比較例9及び比較例17は、精錬後に得られたスラグにAl2O3が1〜10質量%含まれていなかった例であり、スラグのCaO/Al2O3の値が3.5〜27.0になっていなかった例である。比較例9では、精錬後のスラグにAl2O3が0.98質量%と少量しか含まれておらず、またCaO/Al2O3の値も27.2と高くなっている。その結果、比較例9では、Al2O3の濃度が低くなってスラグの流動性が低下し、表3の「評価」に示すように「脱りん性」の評価が△となり、また「滓化性」の評価が×となる。また、比較例17では、精錬後のスラグにAl2O3が10.80質量%と多量に含まれており、またCaO/Al2O3の値も3.4と低くなっている。その結果、比較例17では、スラグの流動性が大きくなり過ぎて脱りん性がかえって低下し、表3の「評価」に示すように「脱りん性」の評価が△となる。
比較例25及び比較例26は、CaOフラックスの精錬終了までのCaOの総使用量が20〜52kg/tとなっていない例である。比較例25では、精錬終了までのCaOの総使用量が19kg/tと少なく、溶湯中の脱りんを十分に行うのに必要なCaO量に達していない。そのため、脱りんが十分に行われず、表3の「評価」に示すように「脱りん性」の評価が×となる。また、比較例26では、精錬終了までのCaOの総使用量が53kg/tと多く、溶湯に対して未溶解のCaOが残りやすい。その結果、表3の「評価」に示すように「滓化性」の評価が△となる。
比較例28は冷鉄源がCr:≦2.0質量%となっていない例である。比較例28では、冷鉄源のCr=2.1質量%と多くなっており、溶鋼中への酸素の供給によって、スラグ中のCr2O3が増え、溶鋼の脱りん性が悪化する。その結果、表3の「評価」に示すように「脱りん性」の評価が△、また「滓化性」の評価が×となる。
2 排滓口
3 電極
4 酸素ランス
5 出鋼口
6 蓋体
7 本体
Claims (2)
- 電気炉でCrを含む冷鉄源を溶解し、溶解した冷鉄源に対して酸素ガスを吹き込むと共にフラックスを添加して脱りんを行うに際して、
前記電気炉の使用電力が300kWh/tに達するまでにCaOフラックスの添加を開始し、かつ前記CaOフラックスを該CaOフラックスの精錬終了までのCaOの総使用量が20〜52kg/tとなるように添加し、
前記CaOフラックスの投入に続いて、CaO:27〜35質量%、Al2O3:48〜60質量%、SiO2:≦5質量%、MgO:6〜10質量%、TiO2:≦0.05質量%、P2O5:≦0.05質量%、S:≦0.2質量%を含むプリメルトフラックスを添加し、
前記使用電力が300〜380kWh/tまでに、吹込速度0.1〜1.4Nm3/t・分、吹込時間12〜30分、かつ酸素使用量5.0〜13.0Nm3/tとなるように前記酸素ガスの吹き込みを開始し、
精錬終了後に、FeO:8〜30質量%、Cr2O3:0.7〜9質量%、T.Fe:10〜35質量%、Al2O3:1〜10質量%、CaO/Al2O3:3.5〜27.0、CaO/SiO2:2.1〜5.5を含むスラグを得る
ことを特徴とする電気炉を用いた精錬方法。 - 前記冷鉄源は、Cr:≦2.0質量%かつP:≦0.045質量%を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の電気炉を用いた精錬方法。
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