JP3717625B2 - 電気アーク炉スラグの還元方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電気アーク炉でステンレス用溶銑を溶解し、取鍋に出銑・出滓した後、ガス撹拌によりスラグ中の酸化クロムをメタルに還元回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気アーク炉を用いてステンレス用溶銑を溶製するとき、チャージごとに目標の成分・組成に応じた配合計画を立て、この配合計画に従ってスクラップ,合金鉄等の主原料や造滓材等の副原料を炉内に順次装入し、通電溶解している。場合によっては、製鉄工場内で発生するダスト,スケール,スラグ等も装入している。
主原料の溶解に伴ってスラグが形成されるが、精錬作用や操業効率を向上させる上でスラグの組成を調整することが重要である。脱硫能を適正に確保するためには、塩基度の調整が必要である。そこで、通常、必要とするCaOやCaF2 の量を経験的に求め、溶解前や溶解中に必要量のCaOやCaF2 を供給することによって、スラグの塩基度を適切な範囲に調整している。溶解後は、ある程度の精錬期を設け、場合によっては成分チェックをした後、取鍋に出銑している。このような精錬過程をたどるスラグは、速やかに溶解され、溶銑と共に撹拌され、その精錬能を最大限に発揮することが望まれる。
【0003】
最近では、原料コストの低減や向上で発生する廃材等を有効利用するため、ダスト,スケール,スラグ等の外に各種の様々な形態の原料が使用されるようになってきている。
多種,多様の原料を加えて溶解するとき、各種原料の由来に起因する粉化ロス,未滓化,原料品位のバラツキ等があるため、炉内でスラグを一律に溶解,調整することが困難である。そのため、スラグは、出銑時においても溶解せず、不均一のままで未反応であったり、適切な調整ができないために精錬能を完全には発揮できないこととなる。
そこで、実際の操業では、安全度を見込んで過剰量の造滓材を装入しており、結果として最終的に生成するスラグ量が増加する傾向にある。極端な場合、スラグ量が100kg/kg−メタル以上になることもある。過剰なスラグ量は、本来の金属を溶解する以外にスラグに消費される電力が大きくなることを意味し、電力コストの上昇を招く。
【0004】
本発明者等は、このような電気アーク炉スラグについて種々調査・研究した結果、雰囲気の酸素濃度を10%以下に保持するとき、スラグ量を増加させる必要なく、脱硫能等の精錬作用が十分発揮されることを見い出し、特願平8−79445号として出願した。提案した方法では、酸素濃度10%以下の雰囲気に保持された取鍋に電気アーク炉から溶銑を移し、取鍋内で溶銑を撹拌する。雰囲気の酸素濃度が低いため、脱硫反応が促進されるばかりでなく、反応系の酸素ポテンシャルである酸化クロムが効率よく還元される。すなわち、スラグ中の酸化クロム濃度が低下し、Crが溶銑中に還元回収されるため、Crの歩留りが高くなり、高価なCr原料の消費が抑えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特に低レベルの[%S]が要求される鋼種では、スラグ中(Cr)の十分な還元が必要とされる。たとえば、50ppm以下の[S]を達成するためには、スラグ中の酸化クロム濃度を1%以下まで確実に還元する必要があるといわれている。しかし、実際には、前述したように原料の多様化に伴って、取鍋撹拌で還元しようとするスラグ中の酸化クロム濃度(%Cr2 O3 )にバラツキが生じ、(%Cr2 O3 )が特に高い場合には単なる撹拌では十分に低い濃度まで還元できないことがある。スラグ中の(Cr2 O3 )が十分に還元されないと、結果的に溶銑の脱硫も不十分になる。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、先に提案した方法を更に発展させたものであり、スラグ中の(%Cr2 O3 )に対応してメタル中の[%Si]を調整すると共に、(%Cr2 O3 )を1重量%以下にするために必要な反応時間を取鍋撹拌時間として設定することにより、(Cr2 O3 )の還元反応を十分に且つ効率的,経済的に促進させ、Crの還元回収率が高く、[S]が低い溶鋼を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のスラグ還元方法は、その目的を達成するため、[Cr]=10〜35重量%,[Si]=0.1〜1.2重量%,[C]=2.0〜5.0重量%を含むステンレス溶銑を電気アーク炉で溶解し、塩基度CaO/SiO2 =1.3〜2.2のスラグを生成させ、溶解した溶銑をスラグと共に取鍋に出銑し、撹拌前のスラグ中酸化クロム濃度(%Cr2 O3 )の分析値に応じて溶銑のSi濃度[%Si]を式(1)で定められる範囲に調整し、撹拌後の(%Cr2 O3 )を1%以下にするために必要な反応時間を取鍋撹拌時間として設定し、取鍋内雰囲気の酸素濃度を10%以下に保持して溶銑及びスラグを取鍋撹拌することを特徴とする。
式中、[%Si]は撹拌前の溶銑のSi濃度(重量%),[%Si]a は撹拌後の目標Si濃度(重量%),(%Cr2 O3 )はスラグの酸化クロム濃度(重量%),Ms はスラグ重量(kg),Mm は溶銑重量(kg)をそれぞれ示す。なお、撹拌後の(%Cr2 O3 )は、(Cr2 O3 )の還元反応の速度式から求めることができる。
【0007】
【実施の形態】
電気アーク炉では、炭素電極又は黒鉛電極から被加熱物に直接発生させたアーク、或いは電極間に発生させたアークにより被加熱物を加熱・溶解している。本発明で対象とする電気アーク炉は、鉄,鋼,非鉄金属の溶解に従来から使用されているアーク炉であり、交流式,直流式、或いは単極式,多極式の何れであってもよい。本発明は、このような電気アーク炉で溶製され、溶銑成分として[Cr]=10〜35重量%,[Si]=0.1〜1.2重量%,[C]=2.0〜5.0重量%を含むステンレス溶銑を対象としている。なお、Cr,C,Si等には、特に制約されるものではなく、通常のステンレス用溶銑の組成である[Cr]=10〜35重量%,[Si]=0.1〜1.2重量%,[C]=2.0〜5.0重量%の範囲に調整される。
【0008】
電気アーク炉で生成した酸化物等からなるスラグは、装入副原料に由来する成分の外に、クロム鉱石,ニッケル鉱石等の酸化物原料成分や耐火物,ライニングの溶損により生成した成分等を含んでいる。電気炉溶銑と共に生成するスラグの主な成分には、CaO,SiO2 ,MgO,Al2 O3 ,Cr2 O3 等がある。出銑後のスラグ塩基度(CaO/SiO2 )が1.3〜2.2でスラグ中の酸化クロム濃度(%Cr2 O3 )が1〜15%のスラグに調整するとき、後続する取鍋段階でスラグ中酸化クロムの還元回収や溶銑の脱硫反応が促進される。
また、スラグの脱硫能を考慮し、更に撹拌による反応の結果としてのSi酸化,すなわちスラグのSiO2 濃度の上昇に応じたCaO/SiO2 比の低下を考慮して、1.3〜2.2の範囲にCaO/SiO2 を調整する。(%Cr2 O3 )についてみると、現状の電気炉の気密度では必然的に1%以上となるが、(%Cr2 O3 )が15%を超え。20%程度に上昇するとスラグの粘度上昇が著しく、撹拌によるメタル/スラグ反応の促進が期待できない。そこで、(%Cr2 O3 )は、1〜15%の範囲に調整する。
【0009】
電気アーク炉から取鍋にスラグと共に移された溶銑は、非酸化性雰囲気で取鍋撹拌される。撹拌中の非酸化性雰囲気としては、酸素濃度を常に10体積%以下に維持しておくことが重要である。
ガスインジェクションで撹拌するとき、窒素,アルゴン等の不活性ガスが撹拌用ガスとして使用される。経済性の面では窒素が使用されるが、鋼種によっては窒素ピックアップが有害となる場合もある。このような鋼種に対しては、アルゴンを使用することが好ましい。不活性ガスにH2 ,CO等の還元性ガスを添加した混合ガスを撹拌用に使用することもできる。撹拌用ガスの吹込みは、底吹きでも良いが、浸漬ランスを用いた吹込みが実用的である。
【0010】
不活性ガスの吹込み開始時には、予めシールガスとして不活性ガスを取鍋内に供給し、取鍋内雰囲気の酸素濃度を低下させた上で撹拌を開始する。吹込み開始後は、撹拌用ガスそのものの供給量とシールガス供給量との合計によって、酸素濃度10体積%以下の雰囲気を維持できる。このとき、確実な非酸化性雰囲気を得るためには、取鍋専用の蓋を装着することが好ましい。蓋の装着は、シールガス供給量を節減する上でも有効である。
撹拌による酸化クロムの還元反応は、脱硫の面から必要であると共に、ステンレス鋼の主要成分であるCrの有効利用にも必要である。取鍋撹拌時の還元反応には、スラグ及びメタル中の炭素も寄与するが、主としてメタル中のSiが還元剤として使用される。したがって、脱硫を効率よく行わせる上で、メタル中のSiを有効に作用させることが必要になる。この点、本発明では、撹拌時に雰囲気の酸素によってSiが酸化消費されることを抑えるため、雰囲気の酸素濃度を低位に維持している。
【0011】
本発明者等の調査・研究によると、酸素濃度が10体積%以下の非酸化性雰囲気で取鍋撹拌するとき、(Cr2 O3 )の還元にSiが消費される割合(以下、Si還元効率という)は40〜90%であった。したがって、(%Cr2 O3 )に応じ、Si還元効率を考慮した量に溶銑のSi濃度[%Si]を調整する必要がある。溶銑のSi濃度[%Si]は、還元後の目標[%Si]a を確保するために、式(1)で定められる範囲に調整される。
【0012】
式(1)の左辺[%Si]a +0.31(%Cr2 O3 )(Ms /Mm )で示される[%Si]の下限値は、Si還元効率を最大値である90%とした場合に、(Cr2 O3 )を完全に還元するために消費されるSi量と撹拌後の目標[%Si]a を維持するために必要な値である。撹拌前の[%Si]が下限値に満たないと、還元末期に(Cr2 O3 )の還元剤として作用するSiが不足することになり、結果的に撹拌後の[%Si]が低下する。
式(1)の右辺[%Si]a +0.70(%Cr2 O3 )(Ms /Mm )で示される[%Si]の上限値は、Si還元効率を最低値である40%とした場合に、(Cr2 O3 )を完全に還元するために消費されるSi量と撹拌後の目標[%Si]a を維持するために必要な値である。撹拌前の[%Si]が上限値を超えることは、(Cr2 O3 )の還元に対して必要量以上のSiがメタルに含まれることを意味し、撹拌後の[%Si]が目標値[%Si]a よりも過剰になる。この場合、単にSiコストの上昇を引き起こすだけでなく、次工程の酸化精錬でSi燃焼による過熱が生じ、耐火物の異常溶損等のトラブルを発生させる原因となる。
【0013】
撹拌後の目標[%Si]a は、操業条件に応じて、次工程の転炉等を使用した精錬時に消費される熱源として必要な値に定められ、通常は0.2〜0.5重量%が適正範囲とされる。たとえば、目標[%Si]a を0.25重量%に、目標[%Si]a に対する許容範囲を0.13〜0.36重量%に設定するとき、式(1)に従って0.34〜0.46重量%の範囲に撹拌前の[%Si]を調整する。図1は、この撹拌前後の[%Si]の対応関係を示す。このように撹拌前の[%Si]を調整することにより、効率的且つ経済的な還元が可能になる。他方、調整[%Si]が適正範囲にないと、Si還元効率によっては撹拌後の[%Si]が目標[%Si]a の許容範囲から外れる場合が生じる。
【0014】
Si源には、通常、金属シリコン,フェロシリコン等のSi合金が使用されている。しかし、この種のSi合金は高価である。そこで、スクラップ等の安価な原料からSi源を増加し、或いは電気炉内雰囲気を溶解中に強還元性にすることにより、式(1)で定められる溶銑中[%Si]の上限値を超えない範囲で、取鍋撹拌前の[%Si]調整までにメタル中のSi濃度をできるだけ高くしておくことが望ましい。
[%Si]の濃度調整は、スラグ中酸化クロムの濃度(%Cr2 O3 )を正確に把握することにより可能となる。(%Cr2 O3 )は、たとえば原料配合条件と生成するスラグの成分・組成との関係を経験から解析しておき、その関係から推定できるが、撹拌前のスラグを分析する方が確実性が高い。しかし、分析により(%Cr2 O3 )を求める方法では、分析に必要な時間によっては撹拌開始のタイミングを遅らせ、その間に溶銑が温度低下する欠点がある。そこで、形態別の酸素分析装置,簡易型の蛍光X線分析装置等を用い、可能な限り短時間で測定することが望ましい。このようにして求めた(%Cr2 O3 )に応じて[%Si]を調整する。
【0015】
(%Cr2 O3 )に応じて[%Si]を調整する場合、更に撹拌時間を適正に設定する必要がある。撹拌手段にはガスインジェクションを始めとして種々の方法が知られているが、何れの方法でも撹拌による温度低下が大きな問題となる。撹拌時間は、温度低下を可能な限り抑制するために最短にすることが要求されるが、(Cr2 O3 )を十分還元する時間に設定する必要がある。
そこで、先に求めた(%Cr2 O3 )から反応速度式に従って必要時間を求め、その時間だけ取鍋撹拌を継続する。ここで、スラグ中の(%Cr2 O3 )を1重量%以下に低下させるのに必要な時間を設定する。脱硫に対しては撹拌後の(%Cr2 O3 )が低いほど有利であるが、特に50ppm以下の低[S]を達成するためには、1重量%以下の(%Cr2 O3 )にする必要がある。
【0016】
(Cr2 O3 )の還元反応は、濃度範囲にもよるがスラグ側の拡散律速であり、式(2)で代表されるような一次反応速度式で表されることが種々の研究で明らかにされている。
−d(%Cr2 O3 )/dt=k・(%Cr2 O3 ) ・・・・(2)
ただし、kは定数
したがって、種々の操業条件(温度,スラグ組成等)に対応した定数kを予め求めておき、先に得られた撹拌前の(%Cr2 O3 )の値に応じて、所望の(Cr2 O3 )まで低下するのに必要な反応時間を一次反応速度式(2)に従って数学的に推定できる。
【0017】
スラグ中の酸化クロム濃度(%Cr2 O3 )は、図2に数例示すように、撹拌時の還元反応の進行に応じて変化する。なお、(%Cr2 O3 )に付けた添字iは、撹拌開始時のスラグ中酸化クロム濃度を示す。また、このときの一次反応速度式(2)を積分して求められる時間と対数項ln{(%Cr2 O3 )i /(%Cr2 O3 )}との関係を調査したところ、図3に示すように両者の間にほぼ直線に近い関係が成立していることが判った。この直線の傾きである定数kから、所定の撹拌時間に対応する(%Cr2 O3 )の値を推定できる。
【0018】
撹拌時間を長くとるほど、(%Cr2 O3 )を確実に低下させることができる。しかし、撹拌の長時間化による溶銑の温度低下及び目標値に対する撹拌後[Si]の低下を防止するために、適度の時間内で撹拌を終了することが重要である。この点、(%Cr2 O3 )が1重量%以下であれば、十分に低い[S]レベルまで脱硫が促進される。そこで、(%Cr2 O3 )≦1重量%となるように撹拌時間を設定する。
このように、撹拌前の(%Cr2 O3 )を把握し、溶銑[Si]を調整し、撹拌時間を設定することにより、撹拌後の目標[%Si]を的中させた状態で撹拌後の(%Cr2 O3 )を1重量%≦に下げる確実な還元が可能となる。その結果、低[S]域まで脱硫される。すなわち、スクラップを溶解し溶銑を溶製するだけであった従来の電気炉操業に、出銑後の取鍋撹拌による精錬機能を付加することにより、近年の原料事情に対応したプロセスが構築される。
【0019】
【実施例】
電気アーク炉を使用して各種スクラップ及び酸化物原料を溶解し、目標成分がCr:18重量%,C:3.5重量%,Si:0.4重量%のステンレス溶銑を溶製した。このとき、溶解中及び原料溶落ち後にCaOを脱硫剤として炉内に断続供給し、塩基度を調整した。
メタル成分調整後、出銑・出滓し、メタル及びスラグのサンプルを採取した。蛍光X線分析でサンプルを迅速分析したところ、スラグ塩基度=1.9,(%Cr2 O3 )=5.9重量%,メタル中[%Si]=0.35重量%であった。また、この操業でのスラグ量Ms 及び溶銑量Mm を装入原料配合から計算したところ、Ms =4800kg,Mm =39500kgであった。撹拌後の目標[Si]a を0.30重量%に設定し、前掲の式(1)からSi調整値[%Si]を計算すると、[%Si]=0.522〜0.802重量%であった。
【0020】
本操業は、整備後使用回数の少ない雰囲気シール用の蓋を用いた取鍋撹拌であり、前チャージにおける撹拌中の取鍋内雰囲気酸素濃度の実績値から高いSi還元効率が推定された。そこで、算出範囲[%Si]=0.522〜0.802重量%の下限を狙って、調整[%Si]を0.55重量%に設定した。Si調整としては、先の迅速分析から出銑後[%Si]が0.30重量%であったので、不足分0.25重量%(=0.55−0.30)に相当する量のSiをフェロシリコン(Si純分98.75kg)で添加した。
予め求めておいた本操業条件に近い場合の反応速度定数k,すなわち図2中の(Cr2 O3 )i =6.0重量%の場合の直線の傾きを用い、撹拌前(Cr2 O3 )=5.9重量%が(Cr2 O3 )=1.0重量%まで低下するために必要な反応時間を計算すると22.5分であった。そこで、浸漬ランスを用いてガス撹拌を23分継続した。このときの取鍋内雰囲気酸素濃度は、1〜3体積%であった。
【0021】
撹拌終了後、溶銑及びスラグのサンプルを採取し、分析した。表1の分析結果にみられるように、撹拌後のメタル中の[S]は17ppm,[Si]は0.31重量%,スラグ中の(Cr2 O3 )は0.97重量%であり、還元及び脱硫が目標通り効率よく行われていることが判る。分析・確認後、次工程の転炉工場に取鍋を移送した。
【0022】
実施例2:
実施例1と同様に、電気アーク炉を用いて各種スクラップ及び酸化物原料を溶解し、目標成分がCr:17重量%,C:3.3重量%,Si:0.3重量%のステンレス溶銑を溶製した。メタル成分調整後、出銑・出滓し、メタル及びスラグのサンプルを採取し、蛍光X線分析で分析したところ、スラグ塩基度=2.0,(%Cr2 O3 )=4.6重量%,メタル中[%Si]=0.35重量%であった。また、この操業でのスラグ量Ms 及び溶銑量Mm を装入原料配合から計算したところ、Ms =4600kg,Mm =40100kgであった。撹拌後の目標[Si]a を0.30重量%に設定し、前掲の式(1)からSi調整値[%Si]を計算すると、[%Si]=0.464〜0.67重量%であった。
【0023】
本操業では、前回の取鍋内雰囲気酸素濃度の実績値から低いSi還元効率が推定された。そこで、算出範囲[%Si]=0.464〜0.67重量%の上限を狙って、調整[%Si]を0.60重量%に設定した。Si調整としては、先の迅速分析から出銑後[%Si]が0.35重量%であったので、不足分0.25重量%(=0.60−0.35)に相当する量のSiをフェロシリコン(Si純分100.25kg)で添加した。
予め求めておいた本操業条件に近い場合の反応速度定数k,すなわち図2中の(Cr2 O3 )i =4.5重量%の場合の直線の傾きを用い、撹拌前(Cr2 O3 )=4.6重量%が(Cr2 O3 )=1.0重量%まで低下するために必要な反応時間を計算すると13.6分であった。そこで、浸漬ランスを用いてガス撹拌を14分継続した。このときの取鍋内雰囲気酸素濃度は、6〜9体積%であった。
撹拌終了後、溶銑及びスラグのサンプルを採取し、分析した。表1の分析結果にみられるように、撹拌後のメタル中の[S]は20ppm,[Si]は0.31重量%,スラグ中の(Cr2 O3 )は0.97重量%であり、還元及び脱硫が目標通り効率よく行われていることが判る。分析・確認後、次工程の転炉工場に取鍋を移送した。
【0024】
比較例1:
実施例1と同様に、電気アーク炉を用いて各種スクラップ及び酸化物原料を溶解し、目標成分がCr:17重量%,C:3.3重量%,Si:0.4重量%のステンレス溶銑を溶製した。メタル成分調整後、出銑・出滓し、メタル及びスラグのサンプルを採取し、蛍光X線分析で分析したところ、スラグ塩基度=1.9,(%Cr2 O3 )=5.6重量%,メタル中[%Si]=0.33重量%であった。また、この操業でのスラグ量Ms 及び溶銑量Mm を装入原料配合から計算したところ、Ms =4400kg,Mm =39600kgであった。撹拌後の目標[Si]a を0.30重量%に設定し、前掲の式(1)からSi調整値[%Si]を計算すると、[%Si]=0.493〜0.736重量%であった。
【0025】
本操業では、意識的に算出範囲[%Si]=0.463〜0.736重量%の下限を狙って、調整[%Si]を0.45重量%に設定した。Si調整としては、先の迅速分析から出銑後[%Si]が0.33重量%であったので、不足分0.12重量%(=0.45−0.33)に相当する量のSiをフェロシリコン(Si純分47.5kg)で添加した。
予め求めておいた本操業条件に近い場合の反応速度定数k,すなわち図2中の(Cr2 O3 )i =6.0重量%の場合の直線の傾きを用い、撹拌前(Cr2 O3 )=5.6重量%が(Cr2 O3 )=1.0重量%まで低下するために必要な反応時間を計算すると21.8分であった。そこで、浸漬ランスによるガス撹拌を21分継続した。
撹拌終了後、溶銑及びスラグのサンプルを採取したところ、撹拌後のメタル中の[S]は19ppm,スラグ中の(Cr2 O3 )は0.95重量%であり、還元及び脱硫が効率よく行われていることが判る。しかし、[Si]が0.18重量%と目標値より低く、次工程の転炉で熱不足が生じた。
【0026】
比較例2:
実施例1と同様に、電気アーク炉を用いて各種スクラップ及び酸化物原料を溶解し、目標成分がCr:17重量%,C:3.3重量%,Si:0.4重量%のステンレス溶銑を溶製した。メタル成分調整後、出銑・出滓し、メタル及びスラグのサンプルを採取し、蛍光X線分析で分析したところ、スラグ塩基度=1.9,(%Cr2 O3 )=5.7重量%,メタル中[%Si]=0.34重量%であった。また、この操業でのスラグ量Ms 及び溶銑量Mm を装入原料配合から計算したところ、Ms =4300kg,Mm =39200kgであった。撹拌後の目標[Si]a を0.30重量%に設定し、前掲の式(1)からSi調整値[%Si]を計算すると、[%Si]=0.494〜0.738重量%であった。
【0027】
本操業では、意識的に算出範囲[%Si]=0.494〜0.738重量%の上限を狙って、調整[%Si]を0.80重量%に設定した。Si調整としては、先の迅速分析から出銑後[%Si]が0.34重量%であったので、不足分0.46重量%(=0.80−0.34)に相当する量のSiをフェロシリコン(Si純分180kg)で添加した。
予め求めておいた本操業条件に近い場合の反応速度定数k,すなわち図2中の(Cr2 O3 )i =6.0重量%の場合の直線の傾きを用い、撹拌前(Cr2 O3 )=5.7重量%が(Cr2 O3 )=1.0重量%まで低下するために必要な反応時間を計算すると22分であった。そこで、浸漬ランスによるガス撹拌を23分継続した。
撹拌終了後、溶銑及びスラグのサンプルを採取したところ、撹拌後のメタル中の[S]は16ppm,スラグ中の(Cr2 O3 )は0.70重量%であり、還元及び脱硫が効率よく行われていることが判る。しかし、[Si]が0.45重量%と目標値よりかなり高く、次工程の転炉で過昇温となったため、冷却材が必要であった。
【0028】
比較例3:
実施例2と同様に、電気アーク炉を用いて各種スクラップ及び酸化物原料を溶解し、目標成分がCr:17重量%,C:3.3重量%,Si:0.3重量%のステンレス溶銑を溶製した。メタル成分調整後、出銑・出滓し、メタル及びスラグのサンプルを採取し、蛍光X線分析で分析したところ、スラグ塩基度=2.0,(%Cr2 O3 )=4.5重量%,メタル中[%Si]=0.36重量%であった。また、この操業でのスラグ量Ms 及び溶銑量Mm を装入原料配合から計算したところ、Ms =4500kg,Mm =39800kgであった。撹拌後の目標[Si]a を0.30重量%に設定し、前掲の式(1)からSi調整値[%Si]を計算すると、[%Si]=0.458〜0.656重量%であった。
【0029】
本操業では、前回の取鍋内雰囲気酸素濃度の実績値からSi還元効率が低いと推定されたので、算出範囲[%Si]=0.458〜0.656重量%の上限を狙って、調整[%Si]を0.60重量%に設定した。Si調整としては、先の迅速分析から出銑後[%Si]が0.36重量%であったので、不足分0.24重量%(=0.60−0.36)に相当する量のSiをフェロシリコン(Si純分95.52kg)で添加した。
予め求めておいた本操業条件に近い場合の反応速度定数k,すなわち図2中の(Cr2 O3 )i =4.5重量%の場合の直線の傾きを用い、撹拌前(Cr2 O3 )=4.5重量%が(Cr2 O3 )=1.0重量%まで低下するために必要な反応時間を計算すると13.4分であった。そこで、浸漬ランスによるガス撹拌を11分継続した。
撹拌終了後、溶銑及びスラグのサンプルを採取したところ、撹拌後のメタル中の[S]は52ppm,[Si]は0.40重量%,スラグ中の(Cr2 O3 )は0.70重量%であり、還元及び脱硫が目標レベルまで進行していなかった。このまま次工程に移すとSi燃焼に起因する異常昇温が予想されたので、再度の取鍋撹拌により溶銑を還元,脱硫した。
【0030】
【0031】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の還元方法においては、メタルの[%Si]の調整及び取鍋撹拌時間を操業条件に応じて設定することにより、スラグ中の酸化クロム濃度(%Cr2 O3 )を確実に1重量%まで還元し[Cr]としてメタルに回収している。そのため、クロムの原料コストが節減され、スラグの酸素ポテンシャルが低く維持されることから、脱硫反応も効率よく進行する。また、スラグが本来有する精錬能が十分に発揮されるため、従来過剰気味に用いていたフラックスを最少必要限度に抑えることができ、結果的にスラグ量が低減され、電気炉での溶解電力原単位も節減される。しかも、メタルの[Si]が適正に調節されているので、取鍋撹拌時の熱源が確保され、溶銑の温度低下が防止される。このように本発明によるとき、電気炉を用いたステンレス鋼の製造に際し原料コストや製造コストが節減され、利用価値のある酸化物原料がステンレス鋼成分として有効に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 撹拌前のメタル中[%Si]と撹拌後のメタル中[%Si]との対応関係を示すグラフ
【図2】 撹拌時の還元によるスラグ中[%Cr2 O3 ]の推移を示すグラフ
【図3】 撹拌時間がスラグ中[%Cr2 O3 ]に及ぼす影響を示すグラフ
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