JP4714655B2 - 含クロム溶鉄の脱硫方法 - Google Patents

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本発明は、含クロム鋼の製造において、低硫黄濃度の含クロム鋼を製造する方法に関する。
含クロム鋼の製造プロセスを大別すると次の3つに分けられる。1つ目は、高炉溶銑を用いて、転炉でFe−Crを投入しながら粗脱炭を行い、AODまたはVOD等で脱炭精錬を行うプロセス。2つ目は、スクラップやFe−Cr等の合金鉄を主原料として電気炉で溶解し、その後脱炭精錬を行うプロセス。3つ目は、Cr鉱石を溶融還元しながら粗溶鋼(溶銑)を溶製し、その後脱炭精錬を行うプロセスである。
脱硫精錬は、基礎式がCaO+→CaS+と表されることからもわかるように、通常のプロセスにおいては還元精錬であり、溶鉄中の酸素活量が低いほど反応が起こりやすい。従って、普通鋼においてもそうであるが、脱炭後の低炭素溶鋼よりも炭素濃度が高い溶銑段階の方が脱硫効率が高い。更に、含クロム溶鋼の場合、メタル中CrがCの活量を低下させるため、低炭素領域での酸素活量は普通鋼に比べてより高く、Sの活量もCr濃度の増加により低下するため、上記含クロム鋼製造プロセスにおける粗脱炭後や最終脱炭後での脱硫は困難となる。そのため、SiやAl等の還元、脱酸剤を用いて、できるだけ溶鋼中の酸素活量を低下させた上で脱硫を行う必要があるが、それでも脱硫効率は高いとは言えず、脱硫フラックスやスラグの融点を低下させて脱硫能を向上させる蛍石(CaF2)を使用するのが一般的であり、Fの溶出規制から処理後スラグの資源化に課題があった。また、還元、脱酸のための合金コストも高く、経済的な課題もあった。
一方で、上述の1つ目の高炉溶銑を用いるプロセスにおいては、Cr分を未だ添加する前の普通溶銑段階で脱硫する方式も採用されているが、その場合脱硫効率が高いものの、後工程でFe−Cr等の原料を添加する場合に、原料のS濃度制約などが生じ、原料自由度の低いプロセスとなる課題があった。
Cr原料を添加した後の炭素濃度の高い含クロム溶銑段階での脱硫方法としては、次のような方法が提案されている。
特許文献1には、溶融還元工程の後、Crを10〜20%含有する高炭素の溶銑を出湯し、脱硫材を添加して脱硫した後、脱炭炉に装入して脱炭する方法が記載されている。しかしながら、この方法は攪拌力が不十分で反応時間も短い出湯中に脱硫材を添加する方法であり、脱硫効率が安定しない上に、脱硫能を向上させる蛍石を使用しないと脱硫が不十分となる課題があった。
また、特許文献2や3には、電気アーク炉でCrを10〜35%含有する溶銑とスラグを生成させ、取鍋にスラグとともに出湯し、非酸化性雰囲気条件下で不活性ガス攪拌して脱硫精錬を行う方法が記載されている。しかしながら、電気炉スラグにはSiO2が相当量含まれており、スラグ中のSiO2は脱硫能を著しく低下させることが知られている。そのため、電気炉スラグを用いて脱硫するためには、非酸化性雰囲気条件下で不活性ガス攪拌して酸素ポテンシャルを下げたとしても相当量のスラグを必要とする。そのため、攪拌を行った時のスラグの飛散やそれを防止するため処理量が低下する課題がある。また、スラグの脱硫能を上げるためにはCaO/SiO2を増加する必要があるが、その場合スラグの融点が上昇するため、著しく高い温度で電気炉から出湯するか、スラグの融点を低下させる蛍石を使用しないと、スラグが電気炉内に相当量残り、操業障害や取鍋での脱硫能低下の課題もあった。
特許文献4には、溶解炉内の溶銑にCaO源、SiO2源、Al23源を装入して低融点スラグを生成させることで、蛍石の使用量を少なくしてF溶出を規制値以下にするとともに脱硫とCr還元を促進する方法が記載されている。しかしながら、この方法においてもスラグ中のSiO2は脱硫能を著しく低下させるため、SiO2を含有するスラグでの脱硫能は小さい。また、電気炉内の攪拌力は弱いために脱硫効率が低下し、0.005%以下の極低硫鋼を製造できないという課題があった。
なお、クロムをほとんど含有しない普通溶銑の脱硫においては、機械攪拌方式による脱硫方法は一般的な方法の一つである。普通溶銑の脱硫の場合には、特許文献5に記載されているように、脱硫剤の処理温度での液相率を5〜30%として、適度な固相部分と液相部分の存在により、最も脱硫剤が巻き込まれやすい粒度に造粒させ、かつ地鉄もそこに取り込むことで見かけ比重を増加させて、より巻き込まれやすくするのが効率の良い脱硫方法とされている。
特開平2−232312号公報 特開平9−241716号公報 特開平10−176214号公報 特開2001−342510号公報 特開2003−213313号公報
機械攪拌方式による脱硫方法を、含クロム溶銑の脱硫にそのまま適用した場合、結果的に脱硫処理後のスラグ中クロム濃度が高くなるという現象が見られた。これでは、クロム分のロスとなるとともに、クロム溶出規制から処理後スラグの資源化にも課題を生じる。また、脱硫フラックスやスラグの融点を低下させて脱硫能を向上させる蛍石(CaF2)を使用するのが一般的であったが、Fの溶出規制から処理後スラグの資源化に課題があった。
本発明は、高濃度のクロムを含有する鋼を製造する場合でも、効率良く脱硫を行うと同時に、脱硫フラックスに蛍石を用いず、また処理後のスラグ中クロム濃度を低減することによってスラグの資源化を可能にし、低硫黄濃度の含クロム鋼を安定して製造する方法を提供することを課題とする。
かかる課題を解決するため、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)クロムを10質量%以上50質量%以下含有し、炭素を3質量%以上9質量%以下含有する含クロム溶鉄を脱硫精錬するに際し、脱硫精錬前温度Tを1400℃以上1600℃以下とするとともに、脱硫精錬後のスラグ中SiO2濃度が10質量%未満となるように精錬炉からのスラグ混入量を抑制して取鍋に出湯した後、脱硫フラックスを使用して取鍋内で機械式攪拌により脱硫し、該脱硫フラックスは、CaO濃度(質量%)(以下「CA」ともいう。)とAl23濃度(質量%)(以下「AL」ともいう。)、MgO濃度(質量%)の関係が下記(1)〜(2)式を満たすとともに、脱硫フラックス中のF濃度が1質量%以下であることを特徴とする、含クロム溶鉄の脱硫方法。
−0.000375T+0.91≦AL/(CA+AL)≦−0.000375T+1.06 (1)
CA+AL+MgO≧90 (2)
(2)MgOを5質量%以上20質量%以下含有する脱硫フラックスを使用することを特徴とする、請求項1記載の含クロム溶鉄の脱硫方法。
なお、脱硫フラックス中の金属Alは、Al23に換算して上記ALに含まれる。
本発明により、高濃度のクロムを含有する鋼を製造する場合でも、処理後のスラグが資源化しやすい脱硫フラックスを用いて効率良い脱硫ができ、低硫黄濃度の含クロム鋼を安定して製造することが可能となった。
本発明者らは、クロムを10質量%以上50質量%以下含有する溶鉄の種々の脱硫実験と熱力学計算を行い、溶鉄の脱硫が十分進行するために必要な炭素濃度と温度範囲を特定した。その結果、炭素濃度を少なくとも3質量%以上確保して溶鉄の酸素活量を十分低下させる必要があること、温度が高いほど進行する還元反応である脱硫反応では少なくとも1400℃以上の精錬前温度が必要であることを知見した。一方、精錬前温度が1600℃超の場合は、機械式攪拌のためのインペラーや鍋の耐火物溶損が激しく、脱硫操業に適さないことも知見した。更に、炭素濃度が9質量%超では、いずれのクロム濃度においても鉄の融点が1600℃超となり、脱硫操業が不可能となることも判明した。なお、炭素濃度と精錬前温度の組み合わせでは、クロム濃度によっては融点に到達せず、鉄が完全液相とならない場合がある。その条件は避けるように、炭素濃度と温度の設定を行う。また、耐火物溶損やエネルギー最小化の観点から、鉄が完全に溶融状態にある限り、できるだけ低い温度での脱硫精錬が望ましい。
かくして、十分な脱硫が可能となる溶鉄中の酸素活量、脱硫反応温度となるよう炭素濃度と温度を調整した溶鉄を、精錬鍋に排出した後、脱硫フラックスを添加し、機械的に攪拌しながら脱硫精錬を行う。
前述のとおり、機械攪拌方式による脱硫方法を含クロム溶鉄の脱硫にそのまま適用した場合、結果的に脱硫処理後のスラグ中クロム濃度が高くなるという現象が見られた。この現象は、脱硫処理中に溶鉄中のクロムが空気酸化し、生成した酸化クロムがスラグ中に取り込まれることによって起きる現象であることが分かった。本発明では溶鉄中には3質量%以上の炭素を含有しているので、脱硫処理中に溶鉄中炭素によってスラグ中のクロム酸化物を還元することができれば、スラグ中クロム濃度を低減することができるはずである。しかし、従来の機械攪拌方式による脱硫では、スラグ中クロム濃度を低減することができなかった。
フラックスの脱硫能を十分高めるためには、脱硫基礎反応式からわかるようにCaOの活量を高める必要があるが、一方で反応速度増加のためには脱硫フラックスの融点を低下させる必要もある。本発明においては、Fの溶出規制からスラグの資源化に問題のある蛍石等の含F物質は使用せず、生石灰や石灰石等のCaOを含むフラックスと、Al灰等のAl23を含む、もしくは添加後に酸化されてAl23となるフラックスを適当な割合で混合させ、融点が低下する組成としたフラックスを使用する。本発明ではさらに、脱硫フラックス中のAl23含有量を増大して融点を低下させることにより、脱硫処理中にスラグ中の酸化クロムの還元を促進できることを見出した。
本発明者らは、種々の含クロム溶鉄の脱硫実験から、以下のことを知見した。まず、フラックス中のCaO濃度が高すぎると、フラックスのCaO活量は高いものの、融点が上昇し、液相がほとんど無い固相状態のスラグとなり脱硫速度が低い。その上、脱硫精錬中に大気の巻き込みにより酸化したクロムの還元が進行せず、処理後のスラグ中クロム濃度が3質量%以上となり、クロムの歩留ロスになるとともにクロム溶出規制からスラグの資源化が困難となる。フラックス中のAl23濃度を増加させていくと、融点の低下により脱硫処理中のフラックス(スラグ)液相率が増加して脱硫速度が増加するが、液相率の低い領域では依然酸化クロムの還元の進行が遅く、また特許文献5にも記載の通り、高濃度の含クロム鉄をスラグ中に噛み込むため、処理後のスラグ中クロム濃度は高いままとなる。さらにフラックス中のAl23濃度を増加させ、スラグを高液相率の状態にすると、スラグ中のクロム酸化物と溶鉄中の炭素との反応が促進され、処理後のスラグ中クロム濃度は十分低下するようになる。ただし、Al23濃度を増加させすぎると、CaO活量の低下から脱硫効率が低下する。CaO/Al23濃度比率を適正な状態にした場合にのみ、処理後のメタル中[S]<0.005質量%までの十分な脱硫と、処理後のスラグの資源化が容易な3質量%未満のスラグ中クロム濃度の達成が両立できることが判明した。特に、液相率が100%、すなわち完全液相のスラグ状態にした場合には、処理後のスラグ中クロム濃度は1質量%未満となり、普通鋼スラグと同等にスラグを資源化可能であることもわかった。なお、特許文献5によると、普通鋼における脱硫精錬の場合には、フラックス液相率が5〜30%程度の低液相率の時にフラックスが巻き込みやすい大きさと見かけ密度となって脱硫効率が最大となる旨の記載があるが、本発明者らによる含クロム鋼の脱硫実験では、液相率低下によるフラックスの巻き込み効率向上効果よりも、液相率増大による反応速度向上とスラグの微細分散による反応界面積増大の効果の方が優り、液相率約60%〜100%の範囲で脱硫効率が最大となることも明らかとなった。
種々の脱硫実験から、上記の適正なCaO/Al23濃度比率を各精錬前温度で調査した結果、図1のCaO−Al23二元系状態図上に太線で示した範囲で、処理後のメタル中[S]<0.005質量%までの十分な脱硫と、処理後のスラグの資源化が容易な3質量%未満のスラグ中クロム濃度の達成が両立できることが明らかとなった。この範囲を定式化すると、下記のように脱硫精錬前温度T(℃)の関数として表される。
−0.000375T+0.91≦AL/(CA+AL)≦−0.000375T+1.06 (1)
ここで、CA:フラックス中のCaO濃度(質量%)、AL:フラックス中のAl23濃度(質量%)である。なお、液相率が100%となり、かつCaOの活量が最も高くスラグの脱硫能が高い、状態図の液相線上の組成が、脱硫効率と処理後のスラグ資源化の点で最も望ましいフラックス組成である。
脱硫速度の増加とクロム酸化物の還元の両方を得ることのできる液相率が実現するには、溶鉄温度が低いほど、Al23含有量を高くする必要がある。(1)式の左辺については、脱硫速度の増加とクロム酸化物の還元の両方を得ることのできる液相率が実現する境界線を示している。
フラックス中のAl23濃度が高くなりすぎると、フラックスのCaO活量が低下して脱硫効率が低下する。CaO−Al23系2元状態図(図1)のAl23濃度50%以下の液相領域において、CaOの等活量線は、ほぼ液相線と同じ勾配を有している。図1において太線で示す平行四辺形の右辺、即ち(1)式右辺は、CaOの等活量線であって、脱硫能力を十分に保持する境界線を意味している。従って、(1)式の右辺は、脱硫能力を発揮することのできる限界濃度を示している。
しかしながら、脱硫フラックスを上述の適正な範囲の組成に配合した場合でも、溶鉄を精錬鍋に排出する際にスラグが混入し、脱硫精錬後のスラグ中SiO2が増大すると脱硫能が低下する。本発明者が行った実験から、脱硫精錬後SiO2濃度は10質量%以上となると、処理後のメタル中[S]<0.005質量%までの十分な脱硫が進行しないことが判明した。
なお、フラックス中のCaOとAl23の含有割合が(1)式の左辺に近くスラグ中に固相がある程度存在する場合には、攪拌用のインペラーや精錬鍋の耐火物にMgOを使用した場合でも耐火物溶損量は少ないが、フラックス中のAl23の含有比率を高め、フラックスを低融点組成とすることで、スラグを完全液相に近い状態にした場合は、上述のとおり、スラグのMgO飽和溶解度が高いために耐火物の溶損が大きく、耐火物コストの増大を招く。この場合でも、予めフラックスに5質量%以上のMgOを配合することで耐火物の溶損を抑制できることが判明した。但し、20質量%超のMgOを配合すると、スラグの液相率が低下しすぎて、脱硫効率の低下と処理後のスラグ中クロム濃度が増加するため、MgOの配合比率の上限は20質量%とするのが望ましい。
脱硫フラックス中には、CaO、Al23、MgO以外の成分を含有することもできるか、これら3成分以外の成分含有量を10質量%以下とする。即ち、上記(2)式を満たすことが必要である。これにより、上記本発明の効果を十分に発揮することができる。MgOを含有すれば上記のように耐火物溶損を低減することかを発揮することができるが、本発明の脱硫フラックスはMgOを積極的に含有しない場合をも含む。
本発明の脱硫フラックスはまた、蛍石等のF(フッ素)源を実質的に添加しないことを特徴としている。実質的に添加しないこととは、前記フラックスを用いた脱硫精錬後のスラグからフッ素の溶出が顕著には認められないことを指すもので、本願発明者らの知見ではフラックス組成においてFが1質量%以下となる場合を指す。Fが0.5質量%以下であれば更に好ましい。
1トンの溶鉄を溶解できる試験溶解炉2基を用いて、以下に示す実機溶銑鍋での脱硫処理の7分の1相似モデルでの脱硫試験を行った。片方の試験溶解炉で所定成分の含クロム溶鉄を溶解した後、もう1基の溶解炉に溶鉄を移し変え、フラックスを上方から一括添加した後、インペラーを用いた機械式攪拌での脱硫処理を施した。
実機溶銑鍋の脱硫処理における機械攪拌では、溶銑鍋に収容した330トンの溶銑に対し、羽根の直径1415mm、長さ855mmである4枚羽根構成の耐火物でコーティングした攪拌用インペラーを用いて機械攪拌を行う。回転軸の直径は600mmである。このとき用いる攪拌用インペラーにおいては、上部根元半径を300mm、下部根元半径を600mm、角度θを14度とし、膨出部は用いていない。また、攪拌時の溶銑湯面凹部深さに対するインペラー上端深さの比が0.7となるように、インペラーの回転数と浸漬深さが調整されている。
実施例における1トンの試験溶解炉を用いた脱硫試験では、上記実機での脱硫処理と全く相似の形状であり、サイズが7分の1である溶解炉内るつぼ、攪拌用インペラーを用いた。攪拌用インペラーのコーティング耐火物にはMgO系のものを使用した。また、攪拌用インペラーの回転数、浸漬深さについては、攪拌時の溶鉄湯面凹部深さに対するインペラー上端深さの比が0.7となるように調整した。
溶鉄を脱硫処理用の溶解炉に移し替えた後、フラックスの原料としては、平均直径100μmのCaO粉とAl23粉および一部の試験ではMgO粉を使用し、予めミキサーにて物理的に混合したものを脱硫フラックスとして使用した。脱硫フラックスの使用量は全て7kgとし、フラックス添加直後にインペラーによる攪拌を開始した。インペラー攪拌による脱硫精錬時間は15分一定とした。脱硫処理前溶鉄の[S]濃度は全て0.02質量%に調整し、精錬後の[S]濃度が0.005質量%未満となったものを良好な脱硫と判断した。また、脱硫精錬後のスラグ中全Cr濃度(T.Cr)が5質量%未満となったものをスラグ資源化性良好と判断した。
表1には、脱硫精錬開始前の含クロム溶鉄の組成および精錬後の溶鉄組成、脱硫精錬開始前および精錬後の溶鉄温度、添加したフラックスの配合組成および脱硫精錬後のスラグ組成、インペラー耐火物の溶損による半径減少量を示した。
表1において、No.1からNo.18が本発明の方法によって安定した高脱硫能を得ると同時に、脱硫処理後のスラグ中Cr濃度が低く、資源化に適したスラグにすることができた実施例である。フラックス中のCaOとAl23の含有割合が(1)式の左辺に近くスラグ中に固相がある程度存在する場合には、インペラーの耐火物溶損量も低い。フラックス中のAl23の含有比率が高くなり、スラグが完全液相に近い状態になった場合には、インペラー耐火物の溶損量が多くなるが、この場合でも、MgO粉を添加することで、耐火物の溶損抑制も可能となっている。溶鉄の精錬前温度、炭素濃度、クロム濃度および適正組成のフラックス添加を行い、溶解用溶解炉からのスラグの混入によるSiO2濃度増加を10質量%以下に抑えることで、精錬後[S]濃度0.005質量%未満までの安定した脱硫と、スラグ資源化が容易なT.Cr5質量%未満へのスラグ組成制御の両立が可能となっていることがわかる。
一方、No.19からNo.35が比較例の結果を示す。フラックス中のCaO比率が高すぎる場合には、スラグの液相率が低下することで脱硫精錬後のCr濃度が増加し、逆にAl23比率が高すぎる場合には、スラグのCaO活量が低下することで脱硫能が悪化することがわかる。また、No.29とNo.35のように、MgO粉を20質量%超添加した場合は、スラグの液相率が低下することで脱硫能も悪化し、脱硫精錬後のスラグ中Cr濃度も増加する。No.28とNo.33のように、溶解用の炉からの移し替えの際にスラグの混入量が多く、スラグ中SiO2濃度が10質量%を超えた場合は、脱硫能が悪化して目標の[S]濃度まで到達しないことがわかる。
Figure 0004714655
脱硫フラックス中のCaOとAl23の適正な比率の範囲を示す図である。

Claims (2)

  1. クロムを10質量%以上50質量%以下含有し、炭素を3質量%以上9質量%以下含有する含クロム溶鉄を脱硫精錬するに際し、脱硫精錬前温度Tを1400℃以上1600℃以下とするとともに、脱硫精錬後のスラグ中SiO2濃度が10質量%未満となるように精錬炉からのスラグ混入量を抑制して取鍋に出湯した後、脱硫フラックスを使用して取鍋内で機械式攪拌により脱硫し、該脱硫フラックスは、CaO濃度(質量%)(以下「CA」ともいう。)とAl23濃度(質量%)(以下「AL」ともいう。)、MgO濃度(質量%)の関係が下記(1)〜(2)式を満たすとともに、脱硫フラックス中のF濃度が1質量%以下であることを特徴とする、含クロム溶鉄の脱硫方法。
    −0.000375T+0.91≦AL/(CA+AL)≦−0.000375T+1.06 (1)
    CA+AL+MgO≧90 (2)
  2. MgOを5質量%以上20質量%以下含有する脱硫フラックスを使用することを特徴とする、請求項1記載の含クロム溶鉄の脱硫方法。
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