JP2010011883A - ガイドワイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】例えばカテーテルのルーメン等のような管腔内では良好な摺動性を発揮しつつ、ガイドワイヤを把持して操作した際のグリップ力(把持力)の低下を確実に防止することができるガイドワイヤを提供すること。
【解決手段】ガイドワイヤ1Aは、可撓性を有する長尺なワイヤ本体10を備えるものである。このガイドワイヤ1Aのワイヤ本体10は、その外表面に形成された複数の凸部34と、隣接する凸部34間に形成された凹部35とを有し、凸部34は、凹部35を構成する材料よりも小さい摩擦係数を有する材料で構成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガイドワイヤ、例えば、血管や胆管等のような体腔内にカテーテルを導入する際に用いられるガイドワイヤに関する。
ガイドワイヤは、例えば、心臓領域や下肢等のようなペリフェラル領域の血管の狭窄を開通させるために、カテーテルを誘導するのに使用される。このような施術に用いられるガイドワイヤは、ガイドワイヤの先端をカテーテルの先端より突出させた状態で、カテーテルとともに目的部位である血管狭窄部付近まで挿入される。そして、この状態で、ガイドワイヤに沿ってカテーテルを移動させ、カテーテルの先端部を血管狭窄部付近まで誘導する。
上記施術を必要とする血管は、その硬化した狭窄部や、部分的に急峻に屈曲した屈曲部等があるため、ガイドワイヤが通過しにくくなることがある。このため、カテーテルを血管に挿入する際に用いるガイドワイヤには、曲げに対する適度の柔軟性と復元性とはもちろんのこと、基端部における操作を先端側に伝達するための押し込み性およびトルク伝達性(これらを総称して「操作性」という)、さらには耐キンク性(耐折れ曲がり性)等が要求される。
従来、ガイドワイヤの操作性(押し込み性)を向上させるために、ガイドワイヤの表面にカテーテル内面との摺動性が良好になる材料を被覆していた(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のガイドワイヤは、手元で把持した際のグリップ力(把持力)を向上させるために、手元部分を先端側部分と異なるフッ素樹脂にて被覆している。しかし、手元部分をフッ素樹脂にしても、フッ素樹脂表面は手指に対する比較的摩擦係数が低いので、グリップ力が高まらず、すなわち、滑り易く、挿入する部位やカテーテルによっては、押したり回したりする力が伝わりにくくなり、操作性が高くないという問題があった。
また、ガイドワイヤには、親水性樹脂で被覆され、その被覆層の先端側の部分を除いた部分に、螺旋状のすべり防止部材を設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。しかし、この特許文献2に記載のガイドワイヤは、すべり防止部材が設けられた部分を把持して操作する場合はグリップ力が発揮されるが、当該部分がカテーテルのルーメン内に挿入されると、すべり防止部材の作用により途端に摺動性が低下してしまう。また、仮にすべり防止部材をガイドワイヤの基端部のみに設けた場合、挿入の最中ではガイドワイヤの中間部、すなわち、すべり防止部材が設けられていない部分を把持することとなるので、親水性樹脂(前記被覆層)の作用によりグリップ力が低下して、挿入に余計な時間を費やすことになる。
また、ガイドワイヤには、ワイヤを螺旋状に巻いてPTFE等で構成されたジャケット表面(被覆層)に凹凸を形成させた後に、その凸部分に親水性や疎水性のコーティングを施したものがある(例えば、特許文献3参照)。しかし、この特許文献3に記載のガイドワイヤは、摺動性は向上するものの、ジャケットの構成材料にPTFE等の摩擦係数の低い材料を使用しているのでグリップ力の向上は望めない。さらに、凹凸を形成する工程が煩雑で、かつ、均一な凹凸を形成することが困難である。
特開平5−168717号公報 特開平7−328126号公報 国際公開第2005/044358号パンフレット
本発明の目的は、例えばカテーテルのルーメン等のような管腔内では良好な摺動性を発揮しつつ、ガイドワイヤを把持して操作した際のグリップ力(把持力)の低下を確実に防止することができるガイドワイヤを提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
(1) 可撓性を有する長尺なワイヤ本体を備えるガイドワイヤであって、
前記ワイヤ本体は、その外表面に形成された複数の凸部と、該隣接する凸部間に形成された凹部とを有し、
前記凸部は、前記凹部を構成する材料よりも小さい摩擦係数を有する材料で構成されていることを特徴とするガイドワイヤ。
(2) 前記凸部の頂部は、フッ素系樹脂材料で構成されている上記(1)に記載のガイドワイヤ。
(3) 前記凸部の頂部は、丸みを帯びている上記(1)または(2)に記載のガイドワイヤ。
(4) 前記凹部の底部は、縦断面視で前記ワイヤ本体の長手方向に沿って直線状をなす部分を有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のガイドワイヤ。
(5) 可撓性を有する長尺なワイヤ本体を備えるガイドワイヤであって、
前記ワイヤ本体は、その外表面に形成された複数の凸部と、該隣接する凸部間に形成された凹部とを有し、
当該ガイドワイヤが使用されるとき、前記凸部の頂部に主に接触する場合の摺動抵抗は、前記凹部の底部にも接触する場合の摺動抵抗よりも小さく、これにより、前記頂部は、前記底部よりも滑り易いことを特徴とするガイドワイヤ。
また、本発明のガイドワイヤにおいて、前記外表面における前記凸部の占有率は、前記凹部の占有率よりも少ないのが好ましい。
本発明のガイドワイヤにおいて、前記凹部の底部は、粗面化されているのが好ましい。
本発明のガイドワイヤにおいて、前記凸部は、少なくとも1本の線状体で構成されているのが好ましい。
本発明のガイドワイヤにおいて、前記線状体は、螺旋状またはリング状をなすものであるのが好ましい。
本発明のガイドワイヤにおいて、前記凸部は、螺旋状をなす2本の前記線状体で構成されており、これらの線状体の螺旋の巻回方向は、互いに反対方向となっているのが好ましい。
本発明のガイドワイヤにおいて、前記線状体は、前記ワイヤ本体の長手方向に沿って直線状をなすものであるのが好ましい。
本発明のガイドワイヤにおいて、前記凸部は、複数本の前記線状体で構成されており、これらの線状体が前記外表面の周方向に沿って所定間隔で配置されているのが好ましい。
本発明のガイドワイヤにおいて、前記凸部は、散点状に配置されているのが好ましい。
本発明のガイドワイヤにおいて、前記凸部は、その配設密度が互いに異なる高密度部と、高密度部よりも基端側に位置する低密度部とを有するのが好ましい。
本発明のガイドワイヤにおいて、前記ワイヤ本体は、その外径が先端方向に向かって漸減したテーパ部と、該テーパ部の基端に設けられ、外径が一定の外径一定部とを有し、
本発明のガイドワイヤにおいて、前記高密度部は、前記テーパ部と前記外径一定部とにまたがっているのが好ましい。
本発明のガイドワイヤにおいて、前記低密度部は、前記外径一定部に位置しているのが好ましい。
本発明のガイドワイヤにおいて、前記凸部は、前記ワイヤ本体に対して液状材料を付与し、乾燥させることにより形成されたものであるのが好ましい。
本発明によれば、ガイドワイヤが例えばカテーテルのルーメン等のような管腔内に挿入された状態では、当該ガイドワイヤの管腔内に位置して(挿入されて)いる部分は、摩擦係数が低い各凸部が管腔を画成する内壁に主に接触し、摩擦係数が高い凹部が前記内壁に接触するのが防止される。これにより、ガイドワイヤをその軸方向に沿って移動操作したり、軸周りに回転操作した際、各凸部が前記内壁を摺動することとなり、よって、良好な摺動性を発揮する。
また、ガイドワイヤが把持されている部分では、例えば手指が凹部内に入り込み、当該手指の表面は、摩擦係数が低い各凸部に当接するよりも、主に、摩擦係数が高い凹部の底部に接触する。これにより、ガイドワイヤを移動・回転操作した際のグリップ力(把持力)の低下を確実に防止することができ、よって、そのときの操作力(押込力、トルク)がガイドワイヤの先端にまで確実に伝達する。
以下、本発明のガイドワイヤを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明のガイドワイヤの第1実施形態を示す部分縦断面図、図2は、図1中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大縦断面図、図3は、図1中の一点鎖線で囲まれた領域[B]の拡大縦断面図、図4は、図1中の一点鎖線で囲まれた領域[C]の拡大縦断面図、図11は、図1に示すガイドワイヤの凸部および凹部のそれぞれの摩擦係数を示すグラフである。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図4中(図5〜図10においても同様)の右側を「基端」、左側を「先端」と言う。また、図1〜図10中では、理解を容易にするため、ガイドワイヤの長さ方向を短縮し、ガイドワイヤの太さ方向を誇張して模式的に図示しており、長さ方向と太さ方向の比率は実際とは異なる。
図1に示すガイドワイヤ1Aは、カテーテル200(内視鏡も含む)の内腔(ルーメン)201に挿入して用いられるカテーテル用ガイドワイヤであって、先端側に配置された第1ワイヤ2と、第1ワイヤ2の基端側に配置された第2ワイヤ3とを好ましくは溶接により接合(連結)してなる長尺なワイヤ本体10と、ワイヤ本体10の先端部に設置された先端部材4とを有している。ガイドワイヤ1Aの全長は、特に限定されないが、200〜5000mm程度であるのが好ましい。
第1ワイヤ2は、柔軟性または弾性を有する芯線(線材)20で構成されている。第1ワイヤ2の長さは、特に限定されないが、20〜1000mm程度であるのが好ましい。
本実施形態では、第1ワイヤ2は、外径がほぼ一定である大径部21と、大径部21より先端側に位置し、大径部21より外径が小さい小径部23と、大径部21と小径部23との間に位置し、先端方向に向かって外径が漸減するテーパ部22とを有している。これらは、第1ワイヤ2の先端側から、小径部23、テーパ部22および大径部21の順に配置されている。
テーパ部22を介して小径部23と大径部21とが形成されていることにより、第1ワイヤ2の剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)を先端方向に向かって徐々に減少させることができ、その結果、ガイドワイヤ1Aは、先端部に良好な狭窄部の通過性および柔軟性を得て、血管等への追従性、安全性が向上すると共に、折れ曲がり等も防止することができる。
なお、テーパ部22のテーパ角度(外径の減少率)は、ワイヤ長手方向に沿って一定でも、長手方向に沿って変化する部位があってもよい。例えば、テーパ角度(外径の減少率)が比較的大きい箇所と比較的小さい箇所とが複数回交互に繰り返して形成されているようなものでもよい。
第1ワイヤ2の基端側の部分、すなわち大径部21は、その外径が第1ワイヤ2の基端まで一定となっている。
第1ワイヤ2の基端(大径部21の基端)には、第2ワイヤ3の先端が好ましくは溶接により接続(連結)されている。第2ワイヤ3は、柔軟性または弾性を有する芯線(線材)20を有するものである。
第1ワイヤ2(芯線20)と第2ワイヤ3(芯線30)との溶接方法としては、特に限定されず、例えば、摩擦圧接、レーザを用いたスポット溶接、バットシーム溶接等の突き合わせ抵抗溶接などが挙げられるが、比較的簡単で高い接合強度が得られることから、突き合わせ抵抗溶接が特に好ましい。
本実施形態では、第2ワイヤ3は、外径がほぼ一定である大径部(外径一定部)31と、大径部31より先端側に位置し、大径部31より外径が小さい小径部33と、大径部31と小径部33との間に位置し、先端方向に向かって外径が漸減するテーパ部32とを有している。これらは、第2ワイヤ3の先端側から、小径部33、テーパ部32および大径部31の順に配置されている。小径部33の先端部の外径は、第1ワイヤ2の大径部21の外径とほぼ等しい。これにより、第1ワイヤ2の大径部21の基端と第2ワイヤ3の小径部33の先端とを接合した際、それらの接合部(接合面)6の外周に両ワイヤ2、3の外径差による段差が生じず、連続した面を構成することができる。
第2ワイヤ3は、テーパ部32を介して小径部33と大径部31とが形成されていることにより、第2ワイヤ3の剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)を先端方向に向かって徐々に減少させることができ、その結果、ガイドワイヤ1Aは、第1ワイヤ2と同様に、第2ワイヤ3においても良好な柔軟性を得て、血管等への追従性、安全性が向上すると共に、折れ曲がり等も防止することができる。さらに、第2ワイヤ3から第1ワイヤ2への物理的特性、特に弾性が滑らかに変化し、両ワイヤ2、3の接合部(接合面)6の前後において優れた押し込み性やトルク伝達性が発揮され、耐キンク性も向上する。
第2ワイヤ3の大径部31は、第1ワイヤ2の大径部21の外径(第1ワイヤ2の最大外径)より大きい外径を有する。大径部31の外径は、例えば、大径部21の外径の1.02〜5倍程度とすることができる。また、大径部31の基端311は、丸みを帯びている。
テーパ部32のテーパ角度(外径の減少率)は、ワイヤ長手方向に沿って一定でも、長手方向に沿って変化する部位があってもよい。例えば、テーパ角度(外径の減少率)が比較的大きい箇所と比較的小さい箇所とが複数回交互に繰り返して形成されているようなものでもよい。また、このようなテーパ部は、ワイヤ長手方向に沿って複数箇所設けられていてもよい。
第2ワイヤ3の長さは、特に限定されないが、20〜4800mm程度であるのが好ましく、1400〜3000mm程度であるのがより好ましい。
第1ワイヤ2の平均外径は、第2ワイヤ3の平均外径より小さい。これにより、ガイドワイヤ1Aは、その先端側である第1ワイヤ2上では柔軟性に富み、基端側である第2ワイヤ3上では比較的剛性が高いものとなるので、先端部の柔軟性と優れた操作性(押し込み性、トルク伝達性等)とを両立することができる。
第1ワイヤ2の芯線20および第2ワイヤ3の芯線30の構成材料は、可撓性を有するものであれば特に限定されず、それぞれ、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等SUSの全品種)、ピアノ線、コバルト系合金、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む)などの各種金属材料を使用することができるが、そのなかでも特に、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む)が好ましく、より好ましくは超弾性合金である。
超弾性合金は、比較的柔軟であるとともに、復元性があり、曲がり癖が付き難いので、例えば第1ワイヤ2を超弾性合金で構成することにより、ガイドワイヤ1Aは、その先端側の部分に十分な柔軟性と曲げに対する復元性が得られ、複雑に湾曲・屈曲する血管等に対する追従性が向上し、より優れた操作性が得られるとともに、第1ワイヤ2が湾曲・屈曲変形を繰り返しても、第1ワイヤ2に備わる復元性により曲がり癖が付かないので、ガイドワイヤ1Aの使用中に第1ワイヤ2に曲がり癖が付くことによる操作性の低下を防止することができる。
コバルト系合金は、ワイヤとしたときの弾性率が高く、かつ適度な弾性限度を有している。このため、コバルト系合金で構成されたワイヤは、トルク伝達性に優れ、座屈等の問題が極めて生じ難い。コバルト系合金としては、構成元素としてCoを含むものであれば、いかなるものを用いてもよいが、Coを主成分として含むもの(Co基合金:合金を構成する元素中で、Coの含有率が重量比で最も多い合金)が好ましく、Co−Ni−Cr系合金を用いるのがより好ましい。このような組成の合金を用いることにより、前述した効果がさらに顕著なものとなる。また、このような組成の合金は、弾性係数が高く、かつ高弾性限度としても冷間成形可能で、高弾性限度であることにより、座屈の発生を十分に防止しつつ、小径化することができ、所定部位に挿入するのに十分な柔軟性と剛性を備えるものとすることができる。
Co−Ni−Cr系合金としては、例えば、28〜50wt%Co−10〜30wt%Ni−10〜30wt%Cr−残部Feの組成からなる合金や、その一部が他の元素(置換元素)で置換された合金等が好ましい。置換元素の含有は、その種類に応じた固有の効果を発揮する。例えば、置換元素として、Ti、Nb、Ta、Be、Moから選択される少なくとも1種を含むことにより、第2ワイヤ3の強度のさらなる向上等を図ることができる。なお、Co、Ni、Cr以外の元素を含む場合、その(置換元素全体の)含有量は30wt%以下であるのが好ましい。
また、Co、Ni、Crの一部は、他の元素で置換してもよい。例えば、Niの一部をMnで置換してもよい。これにより、例えば、加工性のさらなる改善等を図ることができる。また、Crの一部をMoおよび/またはWで置換してもよい。これにより、弾性限度のさらなる改善等を図ることができる。Co−Ni−Cr系合金の中でも、Moを含む、Co−Ni−Cr−Mo系合金が特に好ましい。
第1ワイヤ2の芯線20と第2ワイヤ3の芯線30とは、異なる材料で構成されていてもよいが、本実施形態では、同一または同種(合金において主とする金属材料が等しい)の金属材料で構成されている。これにより、接合部(溶接部)6の接合強度がより高くなり、接合部6の外径が小さくても、離脱等を生じることなく、優れたトルク伝達性等を発揮する。
この場合、第1ワイヤ2(芯線20)および第2ワイヤ3(芯線30)は、それぞれ、前述した超弾性合金で構成されているのが好ましく、その中でもNi−Ti系合金で構成されているのがより好ましい。これにより、ワイヤ本体10の接合部6より先端側において優れた柔軟性を確保するとともに、ワイヤ本体10の基端側の部分では、十分な剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)を確保することができる。その結果、ガイドワイヤ1Aは、優れた押し込み性やトルク伝達性を得て良好な操作性を確保しつつ、先端側においては良好な柔軟性、復元性を得て血管、胆管、膵管への追従性、安全性が向上する。
第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とを異なる材料で構成する場合、第1ワイヤ2は、前述した超弾性合金で構成されているのが好ましく、特にNi−Ti系合金で構成されているのが好ましく、第2ワイヤ3は、前述したステンレス鋼で構成されているのが好ましい。
また、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とをそれぞれ、金属組成や物理的特性の異なる擬弾性合金同士、あるいはステンレス鋼同士で構成してもよい。
なお、上記では、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3を接合した態様にて説明したが、接合部のない一部材のワイヤであってもよい。その場合のワイヤの構成材料は、前述したのと同様の材料が挙げられ、特にステンレス鋼、コバルト系合金、擬弾性合金が好ましい。
図1に示すように、ワイヤ本体10の先端部外周には、先端部材4が配置されている。この先端部材4は、第1ワイヤ2の先端から大径部21の途中までを覆っている。この先端部材4の設置により、カテーテル200の内壁202や生体表面に対するワイヤ本体10の表面の接触面積が少なくなり、これにより、摺動抵抗を低減することができ、その結果、ガイドワイヤ1Aの操作性がより向上する。
先端部材4は、その外径がワイヤ本体10の長手方向に沿って一定である円柱状をなすものである。先端部材4は、先端41および基端42が丸みを帯びている。特に先端部材4の先端41が丸みを帯びていることにより、ガイドワイヤ1Aを血管等の体腔に挿入する際、その内壁の損傷をより有効に防止し、安全性を高めることができる。
なお、先端部材4は、柔軟性に富む材料(軟質材料、弾性材料)で構成されているのが好ましい。このような柔軟性に富む材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等の熱可塑性エラストマー、ラテックスゴム、シリコーンゴム等の各種ゴム材料、またはこれらのうちに2以上を組み合わせた複合材料が挙げられる。特に、先端部材4が前述した熱可塑性エラストマーや各種ゴム材料で構成されたものである場合には、ガイドワイヤ1Aの先端部の柔軟性がより向上するため、血管等への挿入時に、血管内壁等を傷つけることをより確実に防止することができ、安全性が極めて高い。また、このような樹脂材料は、前述したNi−Ti系合金に代表される超弾性合金との密着性にも優れている。これにより、先端部材4が第1ワイヤ2に対して確実に固着する。
また、先端部材4の長さは、特に限定されないが、5〜700mm程度であるのが好ましく、50〜500mm程度であるのがより好ましい。
また、先端部材4中には、造影性を有する材料(前記X線不透過材料等)によるフィラー(粒子)が分散され、これにより造影部を構成するようにしてもよい。
図1に示すように、先端部材4の外面は、被覆層5によって覆われている。この被覆層5は、親水性材料をコーティングすることにより形成されている。これにより、親水性材料が湿潤して潤滑性を生じ、ガイドワイヤ1Aの摩擦(摺動抵抗)が低減し、摺動性が向上する。従って、ガイドワイヤ1Aの操作性が向上する。
親水性材料としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド(PGMA−DMAA)のブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
このような親水性材料は、多くの場合、湿潤(吸水)により潤滑性を発揮し、ガイドワイヤ1Aとともに用いられるカテーテル200の内壁202との摩擦抵抗(摺動抵抗)を低減する。これにより、ガイドワイヤ1Aの摺動性が向上し、カテーテル200内でのガイドワイヤ1Aの操作性がより良好なものとなる。
さて、図2、図3に示すように、第2ワイヤ3は、芯線30の外周側に、内層7と、外層8と、線状体(第1の線状部)9Aとがこの順で形成された(積層された)ものとなっている。
内層7は、芯線30の外周上に形成されている。この内層7は、樹脂と顔料とを含む材料で構成されている。
内層7中の樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、フッ素系樹脂材料が好ましい。また、内層7には、それぞれ、組成が異なる2種類のフッ素系樹脂材料が含有されており、その2種類の樹脂材料としては、例えば、一方をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、他方をフッ化エチレンプロピレン(FEP)とすることができる。
内層7中の顔料は、無機顔料、有機顔料のいずれでもよいが、内層7形成時における耐熱性の点で好ましくは無機顔料である。無機顔料としては、カーボンブラック、雲母、二酸化チタン、ニッケルチタンイエロー、プルシアンブルー、ミロリーブルー、コバルトブルー、ウルトラマリン、ヴィリジアン等が使用可能である。なお、顔料は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用(特に混合)してもよい。また、顔料の平均粒径は、特に限定されず、例えば、0.3〜5μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。また、内層7中の顔料の含有量は、顔料の種類や特性、樹脂材料の組成や特性にもよるが、例えば、内層7全体に対し、20〜50重量%程度であるのが好ましく、30〜40重量%程度であるのがより好ましい。
さらに、内層7層は、芯線30の外周上に形成されているため、例えば当該芯線30との密着性を向上する目的で、内層7の構成材料中にバインダーとして機能する樹脂材料が含有されている。この樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレンケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエートルイミド、ポリイミドスルホン、ポリアリルスルホン、ポリアリルエーテルスルホン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。
なお、内層7の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.002〜0.015mmであるのが好ましく、0.004〜0.008mmであるのがより好ましい。
外層8は、内層7上に形成されている。この外層8は、例えば、樹脂と顔料とを含む材料で構成されているのが好ましい。
外層8中の樹脂材料としては、特に限定されないが、内層7と同様に、例えば、フッ素系樹脂材料を用いるのが好ましい。このフッ素系樹脂材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)等を用いることができる。
外層8中の顔料は、無機顔料、有機顔料のいずれでもよいが、外層8形成時における耐熱性の点で好ましくは無機顔料である。無機顔料としては、内層7についての説明で挙げたものと同様のものを用いることができる。また、外層8中の顔料の含有量は、顔料の種類や特性、樹脂材料の組成や特性にもよるが、例えば、外層8全体に対し、10〜50重量%程度であるのが好ましく、20〜30重量%程度であるのがより好ましい。
なお、外層8の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.002〜0.015mmであるのが好ましく、0.005〜0.010mmであるのがより好ましい。
線状体9Aは、外層8上に形成されている。この線状体9Aは、螺旋状に巻回したものである(図1参照)。これにより、線状体9Aが第2ワイヤ3の全周にわたって設けられる。また、線状体9Aは、隣接する線同士が離間した疎巻きになっている。本実施形態では、線状体9Aの形成数は、1本または複数本である。線状体9Aの形成数が複数本である場合、各線状体9Aの螺旋の巻回方向は、それぞれ、同じである。
このような線状体9Aにより、第2ワイヤ3(ワイヤ本体10)は、その外表面に線状体9Aで構成された複数の凸部34と、隣接する凸部34(線状体9A)間に形成された凹部35とを有するものとなる。
この線状体9Aは、例えば、樹脂と顔料とを含む材料で構成されているのが好ましい。
線状体9A中の樹脂材料としては、特に限定されないが、内層7と同様に、例えば、フッ素系樹脂材料を用いるのが好ましい。このフッ素系樹脂材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)等を用いることができる。
また、線状体9A中の顔料は、無機顔料、有機顔料のいずれでもよいが、線状体9A形成時における耐熱性の点で好ましくは無機顔料である。無機顔料としては、内層7についての説明で挙げたものと同様のものを用いることができる。また、線状体9A中の顔料の含有量は、顔料の種類や特性、樹脂材料の組成や特性にもよるが、例えば、線状体9A全体に対し、1〜8重量%程度であるのが好ましく、3〜5重量%程度であるのがより好ましい。
さて、ガイドワイヤ1Aでは、線状体9A(凸部34)における摩擦係数は、凹部35の底部351(外層8が露出している部分)における摩擦係数よりも小さくなっている。このような摩擦係数の大小関係を生じさせるには、例えば、以下の構成が挙げられる。
[1]線状体9AをPTFEで構成し、外層8をFEPで構成した場合
PTFEは、その摩擦係数がFEPの摩擦係数よりも小さい材料である。このため、線状体9AをPTFEで構成し、外層8をFEPで構成することにより、凸部34の摩擦係数が凹部35の底部351の摩擦係数よりも確実に小さくなる。
[2]線状体9AをPTFEで構成し、外層8をPTFEと顔料(またはバインダ樹脂)とを含む材料で構成した場合
PTFEに顔料やPTFEよりも摩擦係数が小さい材料であるバインダ樹脂を混練すると、その材料の摩擦係数は、PTFE単体で構成した材料の摩擦係数よりも大きくなる。このため、線状体9AをPTFEで構成し、外層8をPTFEと顔料および/またはバインダ樹脂とを含む材料で構成することによっても、凸部34の摩擦係数が凹部35の底部351の摩擦係数よりも確実に小さくなる。
[3]線状体9Aおよび外層8をそれぞれ同様の樹脂材料で構成し、各樹脂材料に含有させる顔料の含有率(含有量)を異ならせる場合
線状体9A中の顔料の含有率を外層8中の顔料の含有率よりも少なくすることにより、凸部34の摩擦係数が凹部35の底部351の摩擦係数よりも確実に小さくなる。
このような構成により、凸部34における摩擦係数が凹部35の底部351における摩擦係数よりも確実に小さくなり、よって、凸部34の頂部341は、凹部35の底部351よりも滑り易くなる。
このような構成のガイドワイヤ1Aは、例えば、ガイドワイヤ1Aをカテーテル200の内腔201内に挿入した状態(以下この状態を「挿入状態」と言う)で使用される(図2参照)。この挿入状態で、ガイドワイヤ1Aのカテーテル200の基端側から突出した(露出した)部分を把持し、当該ガイドワイヤ1Aをその軸方向に沿って移動したり、軸回りに回転したりする。これにより、ガイドワイヤ1Aを操作することができる。
図2に示すように、ガイドワイヤ1Aのカテーテル200の内腔201内に挿入されている部分では、摩擦係数が低い各凸部34(線状体9A)の頂部341やその近傍がカテーテル200の内壁202に主に当接し(接触し)、摩擦係数が高い各凹部35の底部351がカテーテル200の内壁202に当接するのが防止されている。これにより、ガイドワイヤ1Aを操作した際、各凸部34の頂部341がカテーテル200の内壁202を摺動し、よって、良好な摺動性を発揮する。
また、図3に示すように、手元部(把持部)では、指先500(手指)が凹部35内に入り込み、当該指先500の皮膚(表面)501は、摩擦係数が低い各凸部34に当接するよりも、主に、摩擦係数が高い凹部35の底部351に当接する(接触する)。これにより、ガイドワイヤ1Aを操作した際に、指先500がガイドワイヤ1Aに対して滑る、すなわち、グリップ力(把持力)の低下を確実に防止することができ、よって、手元部での押込力およびトルクがガイドワイヤ1Aの先端にまで確実に伝達する。
このように、ガイドワイヤ1Aでは、その外表面に摩擦係数が異なる部分が形成されているため、使用状態で当接する相手側によって摺動抵抗が異なる、すなわち、凸部34の頂部341に主に接触する場合の摺動抵抗は、凹部35の底部351に接触する場合の摺動抵抗よりも小さい部分が生じる。
凸部34および凹部35のそれぞれの摩擦係数の一例を図11に示す。各摩擦係数の試験方法(測定方法)は、次のとおりである。
この試験では、試験装置(測定装置)として、Nanotribometer(ナノテック社製)を用いた。試験装置における、ガイドワイヤ1Aの凸部34、凹部35に当接する測定端子は、ルビーで構成された外径1.5mmの端子である。この測定端子を凸部34(または凹部35)に50mNの押圧力で押圧した状態で、当該測定端子を0.50mm/secの摺動速度で0.1mm移動させた。このような移動を50回繰り返し(50回往復動し)、そのときの摩擦係数の平均値を求め、その求められた平均値を凸部34(または凹部35)における摩擦係数とした。図11では、凸部34の摩擦係数は、0.024であり、凹部35の摩擦係数は、0.048である。
図2〜図4に示すように、各凸部34は、その縦断面形状がかまぼこ状をなすものであり、その頂部341が凸状に湾曲している、すなわち、丸みを帯びている。これにより、挿入状態で、各凸部34の頂部341とカテーテル200の内壁202との接触面積が小さくなり、摩擦抵抗(摺動抵抗)が低減されて摺動性が向上し、ガイドワイヤ1Aの操作性が良好なものとなる。
また、各凹部35の底部351は、縦断面視でワイヤ本体10の長手方向に沿って直線状をなす、すなわち、起伏がない部位となっている。これにより、ガイドワイヤ1Aを把持して操作した際に、凹部35の底部351と指先500の皮膚501とが確実に接触し、よって、ガイドワイヤ1Aを操作した際のグリップ力の低下をより確実に防止することができる。
また、各凹部35の底部351は、例えば、粗面加工により粗面化されて、すなわち、微小な凹凸が多数形成されているのが好ましい。これにより、各凹部35の底部351における摩擦係数がさらに増加し、よって、ガイドワイヤ1Aを把持して操作した際、凹部35の底部351と指先500の皮膚501との摺動抵抗が増加する。これにより、指先500がガイドワイヤ1Aに対して滑るのがより確実に防止され、よって、手元部での押込力およびトルクがガイドワイヤ1Aの先端にまで確実に伝達する。
図1に示すように、凸部34には、その配設密度、すなわち、隣接する線状体9A同士の間隔(ピッチ)が互いに異なる高密度部342と低密度部343とが形成されている。
高密度部342は、低密度部343よりも配設密度が高い部位である。この高密度部342は、第2ワイヤ3の小径部33の途中から、テーパ部32を経て、大径部31の途中まで形成されている。
低密度部343は、高密度部342よりも基端側に位置している。この低密度部343は、大径部31の途中からその基端部まで形成されている。
このような高密度部342と低密度部343とが形成されていることにより、挿入状態でガイドワイヤ1Aのカテーテル200内に主に挿入される部分では、高密度部342における各凸部34の頂部341が比較的多く(積極的に)カテーテル200の内壁202に当接し、当該内壁202を摺動することができる。これにより、より良好な摺動性を発揮する。また、ガイドワイヤ1Aの把持される部分では、低密度部343の形成領域における凹部35の底部351が、当該低密度部343の各凸部34の頂部341よりも、指先500に優先的に当接することができる。これにより、ガイドワイヤ1Aを操作した際のグリップ力の低下をより確実に防止することができる。
図1に示すように、ガイドワイヤ1Aでは、第2ワイヤ3の外表面における凸部34の占有率は、凹部35の占有率よりも少なくなっている。これにより、ガイドワイヤ1Aを先端側(先端41)から順に挿入していくときに、第2ワイヤ3の外表面のいかなる部分を把持しても、一定以上のグリップ力を有すると言う利点がある。
このような凸部34、すなわち、線状体9Aは、例えば、以下に記載するように形成することができる。
まず、内層7および外層8が形成された芯線30に対して、外層8の線状体9Aを形成すべき領域を除く部分に、マスキングテープを螺旋状に巻回して貼り付ける。
次に、外層8のマスキングテープが巻回されていない、露出した部分に、前記顔料が添加された液状の前記樹脂材料(以下これを「液状材料」と言う)を塗布する(付与する)。この塗布方法としては、例えば、スプレーを用いる方法や浸漬による方法等が挙げられる。
次に、塗布された液状材料を乾燥させる。その後、マスキングテープを剥がす(取り外す)。
このような工程により、線状体9Aを形成することができる。
なお、線状体9Aは、図1に示す構成ではその形成方向に沿って幅が一定であるが、これに限定されず、例えば、その形成方向に沿って幅が変化していてもよい。線状体9Aは、その幅が、好ましくは0.1〜1.2mm、より好ましくは0.3〜0.9mmである。また、凹部35の軸方向(ワイヤ長手方向)の長さは、好ましくは0.3〜1.8mm、より好ましくは0.5〜1.5mmである。また、線状体9Aの高さは、例えば、5〜15μmであるのが好ましく、7〜13μmであるのがより好ましい。
図1、図4に示すように、第2ワイヤ3の先端部、特にテーパ部32の外周に位置する部分には、被覆層11が設けられている。被覆層11は、凸部34の高密度部342の先端側の部分(先端部)を覆っている。これにより、高密度部342における線状体9Aと外層8とが被覆層11で覆われることとなる。よって、ガイドワイヤ1Aを挿入状態で操作した際に、カテーテル200の内壁202との摩擦を低下させることができ、よって、その挿入が容易となる。さらに、カテーテル200の内壁202と摩擦により、線状体9Aや外層8が剥離するのを確実に防止することができる。このように、被覆層11は、線状体9Aや外層8を保護する保護層として機能するものである。
被覆層11の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、内層7についての説明で挙げたようなフッ素系樹脂材料を用いることができる。
なお、被覆層11が形成されている部分では、凸部34の頂部341と凹部35の底部351との摩擦係数は、同じとなっている。
<第2実施形態>
図5は、本発明のガイドワイヤの第2実施形態を示す部分縦断面図である。
以下、この図を参照して本発明のガイドワイヤの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、凸部の構成/形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図5に示すガイドワイヤ1Bには、線状体9Aの他に、線状体9Aと螺旋の巻回方向が反対方向の線状体(第2の線状部)9Bが設けられている。線状体9Bは、線状体9Aと同様の材料で構成されている。
このような構成により、第2ワイヤ3は、その外表面に線状体9Aと線状体9Bで構成された複数の凸部34と、隣接する凸部34間に形成された凹部35とを有するものとなる。これにより、前記第1実施形態と同様に、挿入状態で、ガイドワイヤ1Bのカテーテル200の内腔201内に挿入されている部分は、摩擦係数が低い各凸部34の頂部341がカテーテル200の内壁202に主に当接し、摩擦係数が高い各凹部35の底部351がカテーテル200の内壁202に当接するのが防止されている。よって、ガイドワイヤ1Bを操作した際、各凸部34の頂部341がカテーテル200の内壁202を摺動し、よって、良好な摺動性を発揮する。また、手元部では、指先500が凹部35内に入り込み、当該指先500の皮膚501は、摩擦係数が高い凹部35の底部351に当接する。よって、ガイドワイヤ1Bを操作した際のグリップ力の低下を確実に防止することができる。
また、ガイドワイヤ1B(第2ワイヤ3)は、線状体9Aと線状体9Bとが交差する交差部91が形成されたものとなる。この交差部91の周囲(周辺)では、ガイドワイヤ1Bを把持した指先500(皮膚501)が挟み込まれ(噛み込み)、よって、ガイドワイヤ1Bを操作した際のグリップ力の低下をより確実に防止することができる。
なお、線状体9Aと線状体9Bとの摩擦係数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。線状体9Aと線状体9Bとの摩擦係数を異ならせる方法としては、例えば、各線状体9A、9Bを構成する樹脂材料の種類を変える方法や、顔料の含有量を変える方法等が挙げられる。
また、線状体9Bの形成数は、本実施形態では線状体9Aの形成数と同じであるが、これに限定されず、線状体9Aの形成数と異なっていてもよい。
<第3実施形態>
図6は、本発明のガイドワイヤの第3実施形態を示す部分縦断面図である。
以下、この図を参照して本発明のガイドワイヤの第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、凸部の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図6に示すガイドワイヤ1Cには、第2ワイヤ3にその周方向に沿ってリング状をなすリング状部(線状体)9Cが複数形成されている。各リング状部9Cは、線状体9Aと同様の材料で構成されている。
これらのリング状部9Cは、ワイヤ長手方向に沿って間隔をおいて配置されている。これにより、第2ワイヤ3は、その外表面にリング状部9Cで構成された複数の凸部34と、隣接する凸部34間に形成された凹部35とを有するものとなる。これにより、前記第1実施形態と同様に、挿入状態でガイドワイヤ1Cを操作した際、各凸部34の頂部341がカテーテル200の内壁202を摺動し、よって、良好な摺動性を発揮する。また、手元部では、指先500の皮膚501が凹部35の底部351に当接し、よって、ガイドワイヤ1Cを操作した際のグリップ力の低下を確実に防止することができる。
<第4実施形態>
図7は、本発明のガイドワイヤの第4実施形態を示す部分縦断面図である。
以下、この図を参照して本発明のガイドワイヤの第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、凸部の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図7に示すガイドワイヤ1Dには、第2ワイヤ3にその長手方向に沿って直線状をなす線状体9Dが複数(本実施形態では6本)形成されている。各線状体9Dは、それぞれ、第2ワイヤ3の小径部33の基端部から大径部31の基端部にかけて(わたって)形成されている。また、各線状体9Dは、それぞれ、線状体9Aと同様の材料で構成されている。
これらの線状体9Dは、第2ワイヤ3の外周面(外表面)の周方向に沿って等間隔に(所定間隔で)配置されている。これにより、第2ワイヤ3は、その外表面に線状体9Dで構成された複数の凸部34と、隣接する凸部34間に形成された凹部35とを有するものとなる。これにより、前記第1実施形態と同様に、挿入状態でガイドワイヤ1Dを操作した際、各凸部34の頂部341がカテーテル200の内壁202を摺動し、よって、良好な摺動性を発揮する。また、各凸部34がワイヤ長手方向に沿って直線状をなす線状体9Dで構成されていることにより、ガイドワイヤ1Dをワイヤ長手方向に沿って移動する際、その移動方向が各凸部34がより摺動し易い方向となるため、ガイドワイヤ1Dの移動操作がより容易となる。また、手元部では、指先500の皮膚501が凹部35の底部351に当接し、よって、ガイドワイヤ1Dを操作した際のグリップ力の低下を確実に防止することができる。
なお、各線状体9Dの幅は、第2ワイヤ3にその長手方向に沿って一定であるが、これに限定されず、変化していてもよい。
また、各線状体9Dの高さは、第2ワイヤ3にその長手方向に沿って一定であるが、これに限定されず、変化していてもよい。
また、線状体9Dの形成数は、図示の構成では6本であるが、これに限定されず、例えば、2本、3本、4本、5本または7本以上であってもよい。
<第5実施形態>
図8は、本発明のガイドワイヤの第5実施形態を示す部分縦断面図である。
以下、この図を参照して本発明のガイドワイヤの第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、線状体の形成形態が異なること以外は前記第4実施形態と同様である。
図8に示すガイドワイヤ1Eには、第2ワイヤ3に複数(本実施形態では3本)線状体9Dと、第2ワイヤ3の周方向に隣接する線状体9D同士間にそれぞれ配置された、線状体9Dよりも短い複数の線状体9Eとが形成されている。第2ワイヤ3の長手方向に隣接する線状体9E同士は、間隔をおいて配置されている。
このような構成のガイドワイヤ1Eでは、線状体9Dおよび線状体9Eが配置された高密度部342と、線状体9Eが省略され(存在せず)、線状体9Dが配置された低密度部343とがワイヤ長手方向に沿って交互に配置されることとなる。これにより、摺動性の異なる部位を形成させることができる。このような構成としたい場合には、ガイドワイヤ1Eの構成が有効となる。
<第6実施形態>
図9は、本発明のガイドワイヤの第6実施形態を示す部分縦断面図である。
以下、この図を参照して本発明のガイドワイヤの第6実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、凸部の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図9に示すガイドワイヤ1Fには、第2ワイヤ3にドーム状をなす多数のドット9Fが散点状に配置されている。これにより、第2ワイヤ3は、その外表面にドット9Fで構成された複数の凸部34と、隣接する凸部34間に形成された凹部35とを有するものとなる。また、各ドット9Fは、それぞれ、線状体9Aと同様の材料で構成されている。
このような構成のガイドワイヤ1Fでは、前記第1実施形態と同様に、挿入状態でガイドワイヤ1Fを操作した際、各凸部34の頂部341がカテーテル200の内壁202を摺動し、よって、良好な摺動性を発揮する。また、手元部では、指先500の皮膚501が凹部35の底部351に当接し、よって、ガイドワイヤ1Fを操作した際のグリップ力の低下を確実に防止することができる。
なお、各ドット9Fの直径は、それぞれ、同じであるが、これに限定されず、異なっていてもよい。
また、各ドット9Fの高さは、それぞれ、同じであるが、これに限定されず、異なっていてもよい。
<第7実施形態>
図10は、本発明のガイドワイヤの第7実施形態を示す部分縦断面図である。
以下、この図を参照して本発明のガイドワイヤの第7実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、凸部の高密度部の先端側の部分を覆う被覆層が省略されていること以外は前記第1実施形態と同様である。
図10に示すガイドワイヤ1Gは、前記第1実施形態のガイドワイヤ1Aにおける被覆層11が省略されたものとなっている。これにより、高密度部342における線状体9Aと外層8とが露出する。この高密度部342は、第2ワイヤ3のテーパ部32と大径部31とにまたがっている。特にテーパ部32と大径部31との境界部付近は、ガイドワイヤ1Gを挿入状態で操作した際に、カテーテル200の内壁202との摩擦が生じ易い部位である。この部位に高密度部342が位置していることにより、ガイドワイヤ1Gを操作した際の摺動性の低下を確実に防止することができ、また、前記摩擦による線状体9Aや外層8の剥離を確実に防止することができる。
以上、本発明のガイドワイヤを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ガイドワイヤを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明のガイドワイヤは、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、ワイヤ本体の先端部外周には、当該先端部を覆うように、樹脂材料で構成された先端部材が配置されているが、これに限定されず、例えば、金属材料で構成されたコイルが配置されていてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
ワイヤ本体を構成する芯線がNi−Ti合金からなる図1に示すガイドワイヤを作製した。外層は、PTFE、FEP,バインダ樹脂および顔料からなり、線状体は、PTFEおよび顔料からなっている。なお、図1と異なり、線状体におけるピッチは、ワイヤ長手方向に沿って一定とした。
(比較例1)
ガイドワイヤとして、Glidewire Advantage(テルモ社製)を用いた。また、このガイドワイヤの外表面には、前記実施例1のような線状体は設けられていない。
(比較例2)
実施例1と同様のガイドワイヤを用い、そのほぼ全体にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の被覆層を形成したガイドワイヤを作製した。
<トルク試験>
実施例1および各比較例のガイドワイヤに対し、下記のトルク試験1〜3を行った。
図12〜図14に示すように、トルク試験1〜3では、下記の試験装置を用いて、試験を行った。この試験装置は、半径R1の円柱状をなす第1の部材600と、半径R2が20mmの円柱状をなす第2の部材700とを有し、これらの部材同士をその鉛直方向の中心間距離Vが50〜70mm、水平方向の中心間距離Hが50〜70mmとなるように配置、固定したものである。
また、第1の部材600には、半径R1が30mm、40mm、50mmのものがあり、これらの部材を1つずつ選択して用いた。
(トルク試験1)
図12に示すように、5Fr.(フレンチ)のカテーテル800(テルモ社製:ラジフォーカス・カテーテルM)を用意し、これを第1の部材600に掛け渡し、その両端部が鉛直下方を向くように設置した。
次に、カテーテル800に1本のガイドワイヤを挿入し、その両端部をそれぞれカテーテル800の両端より突出させた。ガイドワイヤの先端側(第2の部材700側)の突出量Lは、40mmであった。
次に、この状態で、ガイドワイヤの基端部を把持し、軸周りに一方向に回転操作して、その回転操作のし易さを評価した。
その評価結果を表1に示す。なお、表1中の○は「回し易い」、△は「回せる」、□は「回し難い」、×は「回らない」を表す(トルク試験2、3についても同様)。
(トルク試験2)
図13に示すように、カテーテル800を用意し、これを第1の部材600と第2の部材700に掛け渡し、第2の部材700で、それよりも先端側と基端側との部分の中心軸同士のなす角度が45°となるように設置した。
次に、カテーテル800に1本のガイドワイヤを挿入し、その両端部をそれぞれカテーテル800の両端より突出させた。ガイドワイヤの先端側(第2の部材700側)の突出量Lは、40mmであった。
次に、この状態で、ガイドワイヤの基端部を把持し、軸周りに一方向に回転操作して、その回転操作のし易さを評価した。
その評価結果を表1に示す。
(トルク試験3)
図14に示すように、カテーテル800を用意し、これを第1の部材600と第2の部材700に掛け渡し、第2の部材700で、それよりも先端側と基端側との部分の中心軸同士のなす角度が90°となるように設置した。
次に、カテーテル800に1本のガイドワイヤを挿入し、その両端部をそれぞれカテーテル800の両端より突出させた。ガイドワイヤの先端側(第2の部材700側)の突出量Lは、40mmであった。
次に、この状態で、ガイドワイヤの基端部を把持し、軸周りに一方向に回転操作して、その回転操作のし易さを評価した。
その評価結果を表1に示す。
Figure 2010011883
表1から明らかなように、実施例1のガイドワイヤでは、各トルク試験に対しそれぞれ「回転操作がし易い」、すなわち、「操作性に優れている」と言う結果を得た。これは、実施例1のガイドワイヤは、カテーテル800との摺動性が優れ、かつ、当該ガイドワイヤを把持して操作した際のグリップ力の低下が確実に防止されていることを意味する。
一方、比較例1および2のガイドワイヤでは、「操作性に劣る」または「トルク試験の条件によっては操作性に劣る場合がある」と言う結果を得た。
また、図5〜図10に示すガイドワイヤを作製し、各ガイドワイヤに対し同様の試験を行なった。その結果、各ガイドワイヤについても、前記実施例1とほぼ同様の評価結果が得られた。
本発明のガイドワイヤの第1実施形態を示す部分縦断面図である。 図1中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大縦断面図である。 図1中の一点鎖線で囲まれた領域[B]の拡大縦断面図である。 図1中の一点鎖線で囲まれた領域[C]の拡大縦断面図である。 本発明のガイドワイヤの第2実施形態を示す部分縦断面図である。 本発明のガイドワイヤの第3実施形態を示す部分縦断面図である。 本発明のガイドワイヤの第4実施形態を示す部分縦断面図である。 本発明のガイドワイヤの第5実施形態を示す部分縦断面図である。 本発明のガイドワイヤの第6実施形態を示す部分縦断面図である。 本発明のガイドワイヤの第7実施形態を示す部分縦断面図である。 図1に示すガイドワイヤの凸部および凹部のそれぞれの摩擦係数を示すグラフである。 本発明の実施例におけるトルク試験の状態を示す説明図である。 本発明の実施例におけるトルク試験の状態を示す説明図である。 本発明の実施例におけるトルク試験の状態を示す説明図である。
符号の説明
1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G ガイドワイヤ
2 第1ワイヤ
20 芯線(線材)
21 大径部
22 テーパ部
23 小径部
3 第2ワイヤ
30 芯線(線材)
31 大径部(外径一定部)
311 基端
32 テーパ部
33 小径部
34 凸部
341 頂部
342 高密度部
343 低密度部
35 凹部
351 底部
4 先端部材
41 先端
42 基端
5 被覆層
6 接合部(接合面)
7 内層
8 外層
9A 線状体(第1の線状部)
9B 線状体(第2の線状部)
9C リング状部(線状体)
9D、9E 線状体
9F ドット
91 交差部
10 ワイヤ本体
11 被覆層
200 カテーテル
201 内腔(ルーメン)
202 内壁
500 指先
501 皮膚(表面)
600 第1の部材
700 第2の部材
800 カテーテル

Claims (5)

  1. 可撓性を有する長尺なワイヤ本体を備えるガイドワイヤであって、
    前記ワイヤ本体は、その外表面に形成された複数の凸部と、該隣接する凸部間に形成された凹部とを有し、
    前記凸部は、前記凹部を構成する材料よりも小さい摩擦係数を有する材料で構成されていることを特徴とするガイドワイヤ。
  2. 前記凸部の頂部は、フッ素系樹脂材料で構成されている請求項1に記載のガイドワイヤ。
  3. 前記凸部の頂部は、丸みを帯びている請求項1または2に記載のガイドワイヤ。
  4. 前記凹部の底部は、縦断面視で前記ワイヤ本体の長手方向に沿って直線状をなす部分を有する請求項1ないし3のいずれかに記載のガイドワイヤ。
  5. 可撓性を有する長尺なワイヤ本体を備えるガイドワイヤであって、
    前記ワイヤ本体は、その外表面に形成された複数の凸部と、該隣接する凸部間に形成された凹部とを有し、
    当該ガイドワイヤが使用されるとき、前記凸部の頂部に主に接触する場合の摺動抵抗は、前記凹部の底部にも接触する場合の摺動抵抗よりも小さく、これにより、前記頂部は、前記底部よりも滑り易いことを特徴とするガイドワイヤ。
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