JP2010001198A - 球状αアルミナの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】粉末状αアルミナ前駆体から、比表面積の低い球状αアルミナを製造しうる方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、粉末状αアルミナ前駆体に平均粒子径0.2μm以下のαアルミナ種晶を含む水性スラリーを添加しながら造粒し、得られたαアルミナ前駆体造粒物を焼成することを特徴とする。本発明の製造方法により得た球状αアルミナを坩堝に充填し、加熱溶融したのち、溶融物を引き上げながら結晶化させてサファイア単結晶を製造できる。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の製造方法は、粉末状αアルミナ前駆体に平均粒子径0.2μm以下のαアルミナ種晶を含む水性スラリーを添加しながら造粒し、得られたαアルミナ前駆体造粒物を焼成することを特徴とする。本発明の製造方法により得た球状αアルミナを坩堝に充填し、加熱溶融したのち、溶融物を引き上げながら結晶化させてサファイア単結晶を製造できる。
【選択図】なし
Description
本発明は、球状αアルミナの製造方法に関し、詳しくはサファイア単結晶の製造に好適に用いられる球状αアルミナの製造方法に関する。
αアルミナは主結晶相がα相であるアルミナであって、通常は粉末状のαアルミナ前駆体を焼成する方法により製造されており、サファイア単結晶を製造するための原材料として広く用いられている。例えば特許文献1〔特開平5−97569号公報〕には、粉末状のαアルミナを金属モリブデン製またはイリジウム製の坩堝に充填し、加熱溶融させたのち、溶融物を引き上げる方法により、サファイア単結晶を製造する例が開示されている。
サファイア単結晶製造用のαアルミナとしては、坩堝に高い密度で充填できるよう、嵩密度が高いものが求められている。また、加熱溶融時の坩堝の酸化や、サファイア単結晶のボイドの原因となる水分の吸着がないよう、比表面積の小さいことも求められている。
高い嵩密度を示すαアルミナとしては、球状のものが挙げられる。粉末状αアルミナ前駆体を原料として、球状のαアルミナを製造する方法としては、例えば粉末状αアルミナ前駆体に純水を加えて造粒し、得られたαアルミナ前駆体造粒物を焼成する方法が挙げられる。
しかし、かかる方法により得られた球状αアルミナは、比表面積が高く、未だ多くの水分を吸着しうるものである。
そこで本発明者は、粉末状αアルミナ前駆体から、比表面積の低い球状αアルミナを製造しうる方法を開発するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
そこで本発明者は、粉末状αアルミナ前駆体から、比表面積の低い球状αアルミナを製造しうる方法を開発するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、粉末状αアルミナ前駆体に、平均粒子径0.2μm以下のαアルミナ種晶を含むスラリーを添加しながら造粒し、得られたαアルミナ前駆体造粒物を焼成することを特徴とする球状αアルミナの製造方法を提供するものである。
本発明の製造方法により得られる球状αアルミナは、高い嵩密度および低い比表面積を示すことから、サファイア単結晶を製造するための原料として好適に用いられる。
本発明の製造方法に用いられるαアルミナ前駆体は、焼成によりαアルミナに遷移しうる化合物であって、例えば水酸化アルミニウム、遷移アルミナなどが挙げられる。
水酸化アルミニウムは、ベーマイト型水酸化アルミニウムが好ましく用いられる。
加水分解性アルミニウム化合物を加水分解して得られる水酸化アルミニウムも使用できる。加水分解性アルミニウム化合物とは、水により加水分解して水酸化アルミニウムに誘導されうる化合物であって、例えばアルミニウムアルコキシド、アルミニウム塩化物などが挙げられ、好ましくはアルミニウムアルコキシドである。
遷移アルミナとしては、例えばγアルミナ、δアルミナ、θアルミナなどが挙げられる。
加水分解性アルミニウム化合物を加水分解して得られる水酸化アルミニウムも使用できる。加水分解性アルミニウム化合物とは、水により加水分解して水酸化アルミニウムに誘導されうる化合物であって、例えばアルミニウムアルコキシド、アルミニウム塩化物などが挙げられ、好ましくはアルミニウムアルコキシドである。
遷移アルミナとしては、例えばγアルミナ、δアルミナ、θアルミナなどが挙げられる。
本発明で使用されるαアルミナ前駆体は、粉末状のものであり、その粒子径は通常10μm〜50μmである。
水性スラリーに含まれるαアルミナ種晶は、結晶型がα相であるアルミナの粒子である。αアルミナ種晶の平均粒子径は0.2μm以下であり、工業的に入試が容易である点で、通常は0.01μm以上、好ましくは0.02μm〜0.1μmである。また、αアルミナ種晶の質量基準の累積百分率90%径が0.2μm以下が好ましい。
かかるαアルミナ種晶は、原料αアルミナを粉砕する方法により製造することができる。原料αアルミナとして通常は粉末状のものが用いられる。粉砕は、溶媒を加えたスラリーとして粉砕する湿式粉砕であってもよいし、乾燥状態で粉砕する乾式粉砕であってもよい。好ましくは湿式粉砕である。
湿式粉砕により原料αアルミナを粉砕するには、例えば粉末状の原料αアルミナを溶媒と混合してスラリーとし、ボールミル、媒体撹拌ミルなどの粉砕装置を用いて粉砕すればよい。溶媒として通常は水が用いられるが、有機溶媒を用いても構わない。溶媒には分散剤を添加してもよい。分散剤としては、焼成によりαアルミナに遷移しうるものが好ましく用いられ、例えば塩化アルミニウムが用いられる。また、分散剤としては、焼成により容易に消失しうるものも好ましく用いられ、例えばポリアクリル酸アンモニウムなどのような高分子系分散剤が用いられる。分散剤を添加することにより、効率よく粉砕することができる。
湿式粉砕により原料アルミニウムが粉砕されてαアルミナ種晶が得られるが、湿式粉砕後の粉砕混合物から、αアルミナ種晶を得るには、フィルター処理を施してもよい。フィルター処理により、遠心分離処理により除去しきれずに含まれる比較的大きな粒子径のαアルミナ粒子を除去することができる。フィルター処理に用いられるフィルターとしては、孔径が0.05μm〜1μm、好ましくは0.1μm〜0.7μm、さらに好ましくは0.2μm〜0.7μmのものが用いられ、不純物の混入が少ない点で、αアルミナからなるものが好ましく使用される。
本発明の製造方法では、粉末状αアルミナ前駆体に、かかるαアルミナ種晶を含む水性スラリーを添加しながら造粒する。水性スラリーは、αアルミナ種晶および水を含む流動性の混合物である。αアルミナ種晶の使用量は、酸化アルミニウム〔Al2O3〕換算で、粉末状αアルミナ前駆体およびαアルミナ種晶の合計使用量100質量部に対して通常0.3質量部〜10質量部、好ましくは0.4質量部〜8質量部である。
水性スラリーにおける水の使用量は、粉末状αアルミナ前駆体とαアルミナ種晶の合計使用量100質量部に対して通常100質量部〜200質量部、好ましくは150質量部〜170質量部である。
水性スラリーは、上記で得た遠心分離処理後の上澄み液や、フィルター処理後の濾液をそのまま用いてもよいし、水の含有量によっては、溶媒留去などの方法により濃縮して用いてもよい。
粉末状αアルミナ前駆体の造粒は通常、転動造粒により行われる。具体的には、例えば皿型造粒機を用い、回転する皿上に、粉末状αアルミナ前駆体を加えて転動させながら、水性スラリーを噴霧して加えればよい。
かくして得られるαアルミナ前駆体造粒物の粒子径は定規を当てて測定すると、通常0.5mm〜5mm、好ましくは1mm〜3mmである。
次いで、得られたαアルミナ前駆体造粒物を焼成する。焼成には、例えば管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼成炉を用いることができる。
焼成温度および焼成時間は、αアルミナ前駆体がαアルミナに遷移するに十分な温度および時間であればよく、使用する粉末状αアルミナ前駆体の種類、αアルミナ種晶の使用量、焼成炉の形式、焼成雰囲気などにより異なるが、通常は1200℃〜1400℃、好ましくは1250℃〜1350℃、通常は15分〜24時間、好ましくは1時間〜10時間である。
焼成は、大気中であってもよいし、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下であってもよい。雰囲気中の水蒸気分圧は、乾燥雰囲気下であってもよい。
焼成温度まで昇温する際の昇温速度は、60℃/時間〜1200℃/時間である。
焼成温度まで昇温する際の昇温速度は、60℃/時間〜1200℃/時間である。
焼成することにより得られた球状αアルミナを、例えば坩堝に充填し、加熱溶融したのち、溶融物を引き上げながら結晶化させることにより、サファイア単結晶を製造することができる。
坩堝としては、通常のサファイア単結晶の製造に用いられると同様のモリブデン製、イリジウム製のものが使用できる。本発明の製造方法により得られる球状αアルミナは、坩堝に高い嵩密度で充填することができ、生産性よく、サファイアを製造することができる。また、この球状αアルミナは、比表面積が低いので、吸着水分による坩堝の酸化やボイドの発生を招くことなく、加熱溶融してサファイアを製造することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例における評価方法は、以下のとおりである。
(1)平均粒子径
αアルミナ種晶の平均粒子径は、レーザー開設式粒度分布測定装置〔日機装社製「Microtrac」〕により質量基準で求めた累積百分率50%相当粒子径〔D50〕として求めた。
(2)嵩密度
得られた球状αアルミナの嵩密度は、JIS R9301−2−3に従い、求めた。
(3)比表面積
BET比表面積測定装置〔島津製作所社製「2300−PC−1A」〕を用いて窒素吸着法によりBET比表面積として求めた。
(1)平均粒子径
αアルミナ種晶の平均粒子径は、レーザー開設式粒度分布測定装置〔日機装社製「Microtrac」〕により質量基準で求めた累積百分率50%相当粒子径〔D50〕として求めた。
(2)嵩密度
得られた球状αアルミナの嵩密度は、JIS R9301−2−3に従い、求めた。
(3)比表面積
BET比表面積測定装置〔島津製作所社製「2300−PC−1A」〕を用いて窒素吸着法によりBET比表面積として求めた。
実施例1
〔αアルミナ種晶の製造〕
市販のαアルミナ未粉砕粉末〔住友化学社製「AKP50」、純度99.99質量%以上、平均粒子径0.3μm、BET比表面積10m2/g〕20質量部を塩化アルミニウム水溶液〔濃度0.01モル/L〕80質量部と混合し、アルミナビーズ〔ビーズ径0.65mm〕を充填した媒体撹拌ミル〔アシザワファインテック社製「LMZ2」〕にて連続的に粉砕処理して、スラリー状の粉砕混合物を得た。
〔αアルミナ種晶の製造〕
市販のαアルミナ未粉砕粉末〔住友化学社製「AKP50」、純度99.99質量%以上、平均粒子径0.3μm、BET比表面積10m2/g〕20質量部を塩化アルミニウム水溶液〔濃度0.01モル/L〕80質量部と混合し、アルミナビーズ〔ビーズ径0.65mm〕を充填した媒体撹拌ミル〔アシザワファインテック社製「LMZ2」〕にて連続的に粉砕処理して、スラリー状の粉砕混合物を得た。
得られた粉砕混合物を孔径0.2μmのセラミックフィルターを用いてろ過分離し、この種スラリーは、平均粒子径0.06μm、質量基準の累積百分率90%径は0.19μmのαアルミナ種晶を含むものであり、その濃度は上澄み液100質量部あたり0.52質量部〔0.52質量%〕であった。
〔水性スラリーの調製〕
上記で得た上澄み液を90℃温浴中、ロータリーエバポレーターにより10倍に濃縮して、スラリーを得た。このスラリーは、100質量部あたりαアルミナ種晶5.2質量部を含む。
上記で得た上澄み液を90℃温浴中、ロータリーエバポレーターにより10倍に濃縮して、スラリーを得た。このスラリーは、100質量部あたりαアルミナ種晶5.2質量部を含む。
〔造粒〕
アルミニウムイソプロポキシドを加水分解して得られた粉末状の水酸化アルミニウム60質量部を皿型造粒機の円盤上に供給し、円盤を回転させて粉末状水酸化アルミニウムを転動させながら、上記で得た水性スラリー100質量部を噴霧して加えて、造粒して、球状の造粒物を得た。この造粒物の粒子径は2mm〜4mmであった。
アルミニウムイソプロポキシドを加水分解して得られた粉末状の水酸化アルミニウム60質量部を皿型造粒機の円盤上に供給し、円盤を回転させて粉末状水酸化アルミニウムを転動させながら、上記で得た水性スラリー100質量部を噴霧して加えて、造粒して、球状の造粒物を得た。この造粒物の粒子径は2mm〜4mmであった。
〔焼成〕
上記で得た造粒物アルミナ製坩堝に入れ、箱型電気炉にて大気中、200℃/時間の昇温速度で1300℃に加熱し、同温度で3時間焼成して、球状αアルミナを得た。この球状αアルミナの嵩密度は1.36g/cm3であり、BET比表面積は0.07m2/gであり、粒子径は1mm〜2mmであった。
上記で得た造粒物アルミナ製坩堝に入れ、箱型電気炉にて大気中、200℃/時間の昇温速度で1300℃に加熱し、同温度で3時間焼成して、球状αアルミナを得た。この球状αアルミナの嵩密度は1.36g/cm3であり、BET比表面積は0.07m2/gであり、粒子径は1mm〜2mmであった。
この球状αアルミナをモリブデン製坩堝に入れ、加熱溶融したのち、溶融物を引き上げながら冷却して結晶化させることにより、坩堝を酸化させることなく、ボイドのないサファイア単結晶を生産性よく製造することができる。
比較例1
市販のαアルミナ未粉砕粉末〔AKP50〕5.2質量部を純水94.2質量部と混合して水性スラリーをとした。この水性スラリー中のαアルミナ種晶の平均粒子径は0.29μm、質量基準の累積百分率90%径は0.6μmであった。
市販のαアルミナ未粉砕粉末〔AKP50〕5.2質量部を純水94.2質量部と混合して水性スラリーをとした。この水性スラリー中のαアルミナ種晶の平均粒子径は0.29μm、質量基準の累積百分率90%径は0.6μmであった。
実施例1で得た水性スラリーに代えて、上記で得た水性スラリーを用いた以外は、実施例1と同様に操作して造粒物を得、これを焼成して球状αアルミナを得た。この球状αアルミナの嵩密度は0.76g/cm3であり、BET比表面積は3.53m2/gであり、粒子径は1mm〜2mmであった。
この球状αアルミナをモリブデン製坩堝に入れ、加熱溶融したのち、溶融物を引き上げながら冷却して結晶化させると、嵩密度が低いので、坩堝へ充填できる量が少なくて生産性におとり、また吸着水分による坩堝の酸化や、サファイア単結晶のボイドの発生を招くおそれがある。
Claims (3)
- 粉末状αアルミナ前駆体に平均粒子径0.2μm以下のαアルミナ種晶を含むスラリーを添加しながら造粒し、得られたαアルミナ前駆体造粒物を焼成することを特徴とする球状αアルミナの製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法により得た球状αアルミナを坩堝に充填し、加熱溶融したのち、結晶化させるサファイア単結晶の製造方法。
- 粉末状αアルミナ前駆体に、平均粒子径のαアルミナ種晶を含むスラリーを添加しながら造粒するαアルミナ前駆体造粒物の製造方法。
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