JP2009537139A - 置換されたテトラサイクリン化合物を用いて、遺伝子または遺伝子産物の発現を制御する方法 - Google Patents

置換されたテトラサイクリン化合物を用いて、遺伝子または遺伝子産物の発現を制御する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、少なくとも部分的には、テトラサイクリンオペレーター系に作動可能に連結された核酸の発現制御のための置換されたテトラサイクリン化合物の使用に関する。本発明は、細胞内の遺伝子発現を制御するために、原核生物のTetリプレッサー/オペレーター/インデューサーの構成要素を利用する制御系において使用される化合物に関する。本発明の方法に記載されるような特定の置換されたテトラサイクリン化合物を使用すると、例えばテトラサイクリンやドキシサイクリンに比して用量反応の成績が向上する。このため、本発明の特定の方法によれば、細胞内の遺伝子発現を制御するのにTetリプレッサー/オペレーター/インデューサー系をよりよくコントロールすることが可能になる。

Description

(関連出願)
本願は、2006年5月15日に出願された米国仮特許出願第60/800,662号への優先権を主張する。上述の出願の内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
(発明の背景)
遺伝子の発現レベルまたはその合成の時期を変化させる能力は、例えば遺伝子機能の解析から遺伝子治療にいたるまでの多くの応用例に大いなる有用性を発揮する。このアプローチのためには、外部刺激により制御される誘導発現系がきわめて望ましい。こうした系は遺伝子発現の「オン/オフ」状態を提供し、定められたレベルに遺伝子発現を制限することを可能にもする。
原核生物のテトラサイクリン(tet)耐性オペロンの構成要素は真核細胞内で機能し、遺伝子発現を制御するために利用されてきた。原核生物のTetリプレッサー/オペレーター/インデューサー系の構成要素を利用する制御系は、真核細胞の遺伝子発現を制御するために幅広く使用されてきた。こうした系は当該技術分野で既知であり、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、および特許文献14などに記載がある。
米国特許第5,888,981号 米国特許第5,866,755号 米国特許第5,789,156号 米国特許第5,654,168号 米国特許第5,650,298号 米国特許第6,004,941号 米国特許第6,271,348号 米国特許第6,271,341号 米国特許第6,783,756号 米国特許第5,464,758号 米国特許第6,252,136号 米国特許第5,922,927号 米国特許第5,912,411号 米国特許第5,859,310号
近年、多剤耐性が大きな問題になってきており、耐性の発現率は飛躍的に高くなってきている。この問題により、特に高用量の抗生剤を望ましい結果を得るのに使用しなければならない場合、哺乳動物でテトラサイクリンを使用して遺伝子転写を調節することはそれほど望ましいことではなくなっている。置換されたテトラサイクリン化合物のうちどれが遺伝子制御を行うのに最も有用であるかを判定することが重要である。こうした化合物は細菌感染の治療に最も有用な化合物と同じであるとは限らないためである。また、全てのテトラサイクリン系化合物が同じ組織分布特性を有しているわけではない。例えば、必ずしも全てのテトラサイクリン系化合物が血液脳関門を通過できるわけではない。したがって、こうした特性(改良された用量反応特性またはテトラサイクリン応答性の発現系における望ましい組織分布特性など)を改良した新規のテトラサイクリン誘導体または類似体を開発することは、in vitroおよびin vivoの応用に大きな利益をもたらすといえる。
(発明の要旨)
本発明は、少なくとも部分的には、新規の置換されたテトラサイクリン化合物が、テトラサイクリンによって制御される遺伝子転写の調節に用いるのに優れた特性を向上させるという知見に基づく。本発明は、細胞内の遺伝子または遺伝子産物の発現を制御するために原核生物のTetリプレッサー/オペレーター/インデューサー系の構成要素を利用する制御系において使用される化合物、およびこうした化合物を使用した遺伝子または遺伝子産物の発現の制御方法に関する。本発明の系による遺伝子または遺伝子産物の発現制御は、一般に少なくとも二つの構成要素を必要とする。テトラサイクリンに応答する制御配列に作動可能に連結された標的となる核酸配列と、テトラサイクリンの存在または不在のいずれかにおいて前記制御配列と結合して、前記遺伝子または遺伝子産物の転写を活性化するか阻害するタンパク質である。
Tetリプレッサー/オペレーター/インデューサー系は、多岐にわたる生物(真核細胞および原核細胞を含む)由来の培養細胞中で機能を発揮する。また、この系は、例えば動物、植物、単細胞生物、酵母、真菌および寄生虫など、試験対象となった事実上全ての生物において働く。
本発明の置換されたテトラサイクリン化合物は、転写の調節に特に有効であることが明らかにされており、当該技術分野で既知の遺伝子または遺伝子産物の転写制御のための応用例に使用することができる。特に、本発明のある態様は、被験体の細胞内のテトラサイクリン応答性プロモーターエレメント(TRE)による転写制御下にある、標的となる核酸配列の発現制御のための本発明の新規の置換されたテトラサイクリン化合物の使用方法に関する。一実施形態において、本発明の方法では、置換されたテトラサイクリン化合物の存在下で転写を活性化するか阻害する融合タンパク質をコードする第一の核酸分子およびテトラサイクリン応答性プロモーターエレメントの制御下にある第二の標的となる核酸配列を細胞内に導入し、前記細胞が暴露されるテトラサイクリンのレベルを調節する。
一実施形態において、転写促進ドメイン(単純ヘルペスウイルスのVP16のものなど)またはタンパク質間相互作用(非共有相互作用など)で融合タンパク質と相互作用するために転写アクチベーター(内在性の転写アクチベーターなど)を動員するドメイン(二量体化ドメインなど)に融合した大腸菌トランスポゾンTn10のTc耐性オペロン由来のTetリプレッサー(TetR)を含む融合タンパク質を細胞内に導入する。この構築物はtet制御転写アクチベーター(tTA)と呼ばれ、テトラサイクリン応答性プロモーターエレメント(TRE)の転写制御下にある標的の核酸配列の発現を制御する。TREは、ミニマルプロモーター(例えばtTAの非存在下では転写機能を発揮しないミニマルRNAポリメラーゼIIプロモーターまたはRNAポリメラーゼIおよびIIIの修飾プロモーターなど)に融合した少なくとも1つのTetオペレーター(tetO)配列(1つ以上の例えばコンカテマー化または多量体化されたtetO配列など)からなる。ミニマルプロモーター配列の一例は、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)即時初期プロモーター由来のものであった。テトラサイクリンの非存在下で、tTAはTREに結合し、標的の核酸配列の転写を活性化する。テトラサイクリンの存在下では、tTAはTREに結合できず、標的の核酸配列からの発現は不活性のままである。
また別の実施形態においては、tetリプレッサー(TetR)の修飾型および転写促進ドメインまたはタンパク質間相互作用(非共有相互作用など)で融合タンパク質と相互作用するために転写アクチベーター(内在性の転写アクチベーターなど)を動員するドメイン(二量体化ドメインなど)からなる融合タンパク質を細胞内に導入する。この構築物はリバーステトラサイクリン制御転写アクチベーター(rtTA)と呼ばれる。TetRを修飾すると一般に、アミノ酸がTetR内で変化してそのDNA結合特性が変化し、テトラサイクリンの存在下では標的導入遺伝子内でtetO配列のみを認識するようになる。このため、TREが制御する標的核酸配列の転写は、テトラサイクリンが存在する場合のみにrtTAによって促進される。
また別の実施形態において、本発明のテトラサイクリン化合物は、ある細胞内においてネイティブなTetオペレーターの制御下で、ネイティブなTetRの存在下で、遺伝子または遺伝子産物の転写を制御するのに使用することができる。一実施形態において、本発明はこうした細胞に関する。例えば、JE305KはacrBおよびwaaP遺伝子を破壊する細胞株であり、tetRを含有するプラスミドと前記tetAプロモーター/オペレーターの制御下のluxCDABEオペロン(P.luminescens由来)を含む。
一実施形態において、第一および第二の核酸分子は単一の分子内(例えば同じベクター内)に存在することができる。また別の実施形態において、第一および第二の核酸分子は別の分子に存在する。
本発明の方法によれば、少なくとも1つのTREに作動可能に連結された細胞の内在性遺伝子である遺伝子または遺伝子産物を制御することができる。あるいは、TREに結合した遺伝子は、前記細胞内に導入された外在性の遺伝子または遺伝子産物であることができる。
本発明の方法に基づけば、遺伝子の転写はin vitroまたはin vivoで制御することができる。
また別の実施形態において、本発明の方法では、被験体から細胞を入手し、その細胞をex vivoで修飾して1つ以上の前述の核酸分子を含有させ、その修飾した細胞を前記被験体に投与して、前記被験体中で本発明の置換されたテトラサイクリン化合物の濃度を調節する。
ドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 5−シクロブタノエートドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 5−シクロヘキサノエートドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 5−プロピノイル−7−シクロペンチルアセチルアミノドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 7−アセチルアミノドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 9−1’−メチルシクロペンチルドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 9−1’−メチルシクロブチルドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 9−t−ブチル−7−メチルドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 図2Aは、34R変異株に対するドキシサイクリンの作用を示す。図2Bは、MT2変異株に対するドキシサイクリンの作用を示す。図2Cは、34R変異株に対する9−t−ブチルドキシサイクリンの作用を示す。図2Dは、MT2変異株に対する9−t−ブチルドキシサイクリンの作用を示す。 ドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 5−シクロブタノエートドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 5−シクロヘキサノエートドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 5−プロピノイル−7−シクロペンチルアセチルアミノドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 7−アセチルアミノドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 9−1’−メチルシクロペンチルドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 9−1’−メチルシクロブチルドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 9−t−ブチル−7−メチルチオメチルドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 9−t−ブチル−7−メチルドキシサイクリンの用量反応曲線を示すグラフである。 マウスにおけるルシフェラーゼの発現のデジタル画像である。
(発明の詳細な説明)
本発明は、少なくとも部分的には、細胞または生体内の遺伝子または遺伝子産物の発現をきわめてコントロールされた方法で制御するのに使用することができるテトラサイクリン応答性発現系を調節する置換されたテトラサイクリン化合物の使用に関する。前記化合物を使用することのできる例示的な系は当該技術分野で既知である。一実施形態において、本発明の系による発現の制御には、少なくとも2つの構成要素が必要である。制御配列に作動可能に連結された遺伝子と、誘導物質の存在または不在のいずれかにおいて前記制御配列と結合して、前記遺伝子の転写を活性化するか阻害するタンパク質である。本発明は、真核細胞における遺伝子発現を調節するため、原核生物のTetリプレッサー/オペレーター/インデューサー系の構成要素を利用する。
本発明のさまざまな態様は、TREに結合した遺伝子の転写を活性化するか阻害することのできる融合タンパク質の活性を調節する置換されたテトラサイクリン化合物に関する。こうした融合タンパク質は、置換されたテトラサイクリン化合物が存在する場合にのみ、あるいは不在の場合にのみ、テトラサイクリン応答性エレメントに結合する。このため、宿主細胞において、本発明の融合タンパク質は、宿主細胞と接触する置換されたテトラサイクリン化合物の濃度を変化させることによって(例えば、培地の置換されたテトラサイクリン化合物を添加するか、除去するか、変化させる、または置換されたテトラサイクリン化合物を宿主生物に投与するか、投与を中止するか、投与濃度を変化させるなど)、TREに作動可能に連結された遺伝子の転写を促進するか阻害することができる。
本発明は、テトラサイクリン系化合物に応答性の遺伝子制御系において有益な特性(抗菌作用を有さないか、活性が強められているか、その両方)を有する置換されたテトラサイクリン化合物に関する。こうした制御系は当該技術分野で既知である(例えば、米国特許第5,888,981号、5,866,755号、5,789,156号、5,654,168号、5,650,298号、6,004,941号、6,271,348号、6,271,341号、6,783,756号、5,464,758号、6,252,136号、5,922,927号、5,912,411号、5,859,310号などに記載があり、これらの特許の開示内容全体が参考として本明細書で援用されている)。
置換されたテトラサイクリン化合物を用いて遺伝子の転写を促進するか阻害する方法および本明細書に記載の制御系の構成要素を含有するキットも、本発明に含まれる。本発明の種々の態様および例示的な制御系について、下に詳述する。当該技術分野で遺伝子および遺伝子産物の発現を制御するのにテトラサイクリンが用いられてきた他の応用例においても、前記テトラサイクリン化合物が使用できることは当業者から理解され得るものである。
定義
用語「テトラサイクリン」は無置換型および置換されたテトラサイクリン化合物を含む。
用語「置換されたテトラサイクリン化合物」はミノサイクリン、ドキシサイクリンまたはテトラサイクリンを含まない。
用語「置換されたテトラサイクリン化合物」は、ドキシサイクリンに構造的に関連し、Kaが少なくとも約10−1のTetリプレッサーに結合した化合物を含むことを意図する。置換されたテトラサイクリン化合物は一般に式(I)のものである。望ましくは、置換されたテトラサイクリン化合物は約10−1以上の親和性で結合する。一実施形態において、用語「置換されたテトラサイクリン化合物」は、アンヒドロテトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、オキシテトラサイクリンおよび、Hlavka and Boothe, “The Tetracyclines”, in Handbook of Experimental Pharmacology 78, R.K.Blackwood et al. (eds.), Springer−Verlag, Berlin−New York, 1985; L.A.Mitscher, “The Chemistry of the Tetracycline Antibiotics”, Medicinal Research 9, Dekker, New York, 1978; Noyee Developement Corporation, “Tetracycline Manufacturing Processes” Chemical Process Reviews, Park Ridge, N.J., 2 volumes, 1969; R.C.Evans, “The Technology of the Tetracyclines”, Biochemical Reference Series 1, Quadrangle Press, New York, 1968;およびH.F.Dowling, “Tetracycline”, Antibiotic Monographs, no.3, Medical Encyclopedia, New York, 1955に開示される無置換されたテトラサイクリン化合物を含まない。置換されたテトラサイクリン化合物は、テトラサイクリンに比して抗菌活性を低下させたものとして選択することができる。
用語「置換されたテトラサイクリン化合物」は、1つ以上の追加的な置換基を有するテトラサイクリン化合物(例えば式Iの化合物)を含む。
用語「融合タンパク質」は、作動可能に連結された典型的には異なるソース(異なる細胞および/または異なる生体など)の2つの異なるポリペプチド由来のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。こうしたポリペプチドでは、用語「作動可能に連結された」は、各ポリペプチドがその意図する機能を果たすことができるようにその2つのポリペプチドが結合していることを意味することを意図する。典型的にはこの2つのポリペプチドは、ペプチド結合を介して共有結合する。融合タンパク質は一般に、標準的な遺伝子組換えDNA法によって生成される。例えば、第一のポリペプチドをコードするDNA分子を、第二のポリペプチドをコードする別のDNA分子と結合させ、結果得られたハイブリッドDNA分子を宿主細胞で発現させて融合タンパク質を生成する。DNA分子は5’末端から3’末端への方向で互いに結合させて、結合後、コードされたポリペプチドの転写フレームが変化しないようにする(すなわち、DNA分子はインフレームで互いに結合させる)。
用語「異種」は、第二のポリペプチドが第一のポリペプチドとは異なるタンパク質に由来することを意味する。転写アクチベーター融合タンパク質と同じく、転写サイレンサー融合タンパク質も、本明細書に記載の標準的な遺伝子組換えDNA法を用いて調製することができる。
本発明の方法の転写レギュレーターを用いて、宿主細胞または動物に導入した外在性のヌクレオチド配列の転写を制御することができる。「外在性」のヌクレオチド配列は、宿主細胞に導入され、典型的には宿主のゲノムに挿入されるヌクレオチド配列である。外在性のヌクレオチド配列は、宿主ゲノムのどこにも存在しないか(例えば外来のヌクレオチド配列)、宿主のゲノム内に存在するがゲノムの異なる部位に組み込まれている配列の追加的なコピーであることができる。転写対象の外在性ヌクレオチド配列および作動可能に連結されたtetオペレーター配列は、宿主細胞または動物に導入される単一の核酸分子内に含有されることができる。
あるいは、本発明の方法の転写レギュレーターを用いて、tetオペレーター配列が結合している内在性のヌクレオチド配列の転写を制御することができる。「内在性」のヌクレオチド配列は、宿主ゲノム内に存在するヌクレオチド配列である。TREを含む遺伝子組換えベクターとその内在性遺伝子の配列との間で相同組換えを行うことによって、内在性の遺伝子はtetオペレーター配列に機能できる状態で結合させることができる。例えば、少なくとも1個のtetオペレーター配列と、その3’末端に内在遺伝子のコード領域が存在し、5’末端に内在性遺伝子の上流領域の配列が存在するミニマルプロモーター配列を含む相同組換えベクターを、内在遺伝子の実際のプロモーター領域を除外することによって調製することができる。この両側の配列は、ベクターのDNAと内在性遺伝子との間に相同組換えを行うのに十分な長さを有する。望ましくは、相同遺伝子組換えベクターには数千塩基対からなる両側のDNAが含まれるのがよい。宿主細胞内でベクターDNAと内在遺伝子との間に相同遺伝子組換えが起こると、内在性のプロモーターの領域が、ミニマルプロモーターに作動可能に連結された1個以上のtetオペレーター配列を含有するベクターDNAに置き換わる。このため、内在性遺伝子の発現はもはやその内在性プロモーターの制御下になく、tetオペレーター配列およびミニマルプロモーターの制御下におかれることになる。
用語「tetオペレーター配列」は、全ての分類のtetオペレーター(クラスA、B、C、DおよびEなど)を網羅することを意図する。転写対象のヌクレオチド配列は単一のtetオペレーター配列に機能できる状態で結合させることができ、制御の程度を強化するためには、tetオペレーター配列の複数のコピーまたは複数のtetオペレーター配列(2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上のオペレーター配列など)に機能できる状態で結合させることができる。望ましい実施形態においては、転写対象の配列を、7個のtetオペレーター配列に機能できる状態で結合させる。
本明細書で使用する場合、用語「tetオペレーター」および「tetオペレーター配列」は、全ての分類のtetオペレーター配列(クラスA、B、C、DおよびEなど)を含む。これら5種類のtetオペレーターのヌクレオチド配列は米国特許第6,271,348号に示されており、Waters, S.H.et al. (1983) Nucleic Acid Research 11(17):6089−6105, Hillen, W. and Schollenmeier, K. (1983) Nucleic Acid Reserach 11(2):525−539, Stuber, D. and Bujard, H. (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:167−171, Unger, B. et al. (1984) Nucleic Acid Research 12(20):7693−7703およびTovar, K. et al. (1988) Mol. Gen. Genet. 215:76−80に追加的な記載がある。特定の実施形態において、変異型TetリプレッサーはTn10がコードするリプレッサー(すなわちクラスB)であり、tetオペレーター配列はクラスBのtetオペレーター配列である。あるいは、変異型のクラスAのTetリプレッサーをクラスAのtetオペレーター配列と共に用いることもでき、他のクラスのTetリプレッサー/オペレーターに関しても同様である。
本明細書で使用する場合、転写の「抑制」は、標的の核酸配列の転写レベルまたは量が、転写サイレンサータンパク質による制御前の転写レベルまたは量と比較して減少することを意味することを意図する。転写の阻害は部分的であっても完全であってもよい。
用語「Tetリプレッサー」は、テトラサイクリンの不在または存在下で、原核細胞のTetオペレーター配列の転写を制御する自然発生のまたは修飾型のタンパク質を含む。用語「野生型Tetリプレッサー」は、テトラサイクリンの非存在下で原核細胞においてTetオペレーター配列の転写を抑制する、自然発生型のタンパク質を叙述することを意図する。用語「変異型Tetリプレッサー」は、野生型Tetリプレッサーと類似のアミノ酸配列を有するが、少なくとも1個のアミノ酸が野生型Tetリプレッサーとは異なるポリペプチドを含むことを意図する。こうした変異型Tetリプレッサーは、TREが制御する標的核酸配列の転写が、テトラサイクリンの存在下でこのリプレッサーによって促進されるように機能を変更することができる。
用語「作動可能に連結された」はヌクレオチド配列に関して使用される場合、所定のヌクレオチド配列(例えば、テトラサイクリン応答性に発現されるポリペプチドをコードする配列など)が、そのヌクレオチド配列の発現を可能にする方法で(例えば、構築物を宿主細胞またはin vitroの転写/翻訳系に挿入される場合は宿主細胞において)、制御配列(例えば、「tetオペレーター連結ヌクレオチド配列」であるヌクレオチド配列の場合はtetオペレーター)に連結していることを意味する。用語「制御配列」は当該技術分野で認識されており、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(ポリアデニル化シグナルなど)を含むことを意図する。こうした制御配列は当業者に既知であり、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載がある。制御配列には、多くの種類の宿主細胞中でヌクレオチド配列を恒常的に発現させるものおよび特定の宿主細胞のみでヌクレオチド配列を発現させるもの(例えば組織特異的な制御配列)が含まれる。特殊な発現ベクターの設計に含まれる他のエレメントは、形質導入する宿主細胞の選択や所望のタンパク質発現レベルなどの因子によって異なる。本発明の発現構築物は、宿主細胞に導入されて、それによって、本明細書に記載のような核酸によってコードされた融合タンパク質またはペプチドを含むタンパク質またはペプチドを生成することができる。
転写ユニット内の「転写対象のヌクレオチド配列」は典型的には、その中で下流部分のみが転写され、(少なくとも部分的には)転写のための転写装置の位置設定をするのに役立つミニマルプロモーター配列を含む。このミニマルプロモーター配列は、リン酸ジエステル結合によって5’末端から3’末端の方向で所定の転写された配列と結合し(すなわち、プロモーターは所定の転写された配列の上流に位置することになる)、近接ヌクレオチド配列を形成する。したがって、本明細書で使用する場合、用語「転写対象のヌクレオチド配列」または「標的ヌクレオチド配列」は、mRNAに転写されるヌクレオチド配列と、作動可能に連結された上流のミニマルプロモーター配列の両方を含むことを意図する。用語「ミニマルプロモーター」は、転写対象の結合配列の転写の開始部位を決定するが、それ自身では転写を有効に開始させることができないか全く開始させることのできない部分的なプロモーター配列を含む。このため、こうしたミニマルプロモーターの活性は、転写アクチベーター(本発明のテトラサイクリン誘導融合タンパク質など)と、作動可能に連結された制御配列(1個以上のtetオペレーター配列など)との結合に左右される。一実施形態において、ミニマルプロモーターはヒトサイトメガロウイルスに由来する(Boshart et al. (1985) Cell 41:521−530に記載の通り)。望ましくは約+75から−53および+75から−31のヌクレオチドの位置を利用するのがよい。その他の好適なミニマルプロモーターは当該技術分野で既知であるか、標準的な手法により同定することができる。例えば、近接的に結合したレポーター遺伝子(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼなど)の転写を活性化する機能的プロモーターは、それがもはや単独ではレポーター遺伝子の発現を活性化できず、追加的な制御配列の存在を必要とするようになるまで徐々に欠失させることができる。
用語「真核細胞中で転写を活性化するポリペプチド」は、本明細書で使用する場合、転写を直接的または間接的に活性化するポリペプチドを含む。
用語「宿主細胞内での融合タンパク質の発現に好適な形態で」は、核酸のmRNAへの転写およびmRNAの融合タンパク質への翻訳を可能にするような方法で、融合タンパク質をコードする核酸に作動可能に連結された制御配列を、遺伝子組換え発現ベクターが1個以上含むことを意味する。
用語「宿主細胞」は真核または原核細胞または細胞系を含む。使用することのできる哺乳動物細胞系の制限を設けない例には、CHO dhfr.sup.細胞株(Urlaub and Chasin (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216−4220)、293細胞株(Graham et al. (1977) J.Gen. Virol. 36:pp59)またはSP2またはNS0などの骨髄腫細胞株(Galfre and Milstein (1981) Meth. Enzymol. 73(B):3−46)が含まれる。
用語「対象」は、ヒトおよび、サル、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスおよびそのトランスジェニックおよび相同組換えの動物種をはじめとするヒトでない哺乳動物を含む。さらに、用語「対象」は、昆虫、両生類、単細胞生物、寄生虫、トランスジェニック植物などの哺乳動物ではない生物を含む。
用語「形質転換」および「トランスフェクション」は、外来の核酸(DNAなど)を宿主細胞に導入する当該技術分野で認識された種々の手法を指し、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAE−デキストランを介するトランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションを含む。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするのに好適な方法については、Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)および他の研究室マニュアルに記載がある。
用語「相同組換え生物」は、本明細書で使用する場合、動物の細胞(例えば動物の胚細胞など)に導入した遺伝子およびDNA分子間の相同組換えによって修飾された遺伝子を含有する、動物、植物または単細胞生物などの生物を叙述する。一実施形態において、ヒトでない動物はマウスであるが、本発明はそれに限定されない。融合タンパク質をコードする核酸をゲノムの特定の部位に導入して、すなわち核酸を内在遺伝子と相同組換えさせて動物をつくることができる。
I.テトラサイクリン化合物
一実施形態において、本発明の方法に使用する置換されたテトラサイクリン化合物は、式(I)
Figure 2009537139
(式中、Rは、ヒドロキシルまたはアルキルカルボニルオキシであり、Rは、水素、メチルまたはアルキルカルボニルアミノであり、Rは、水素またはアルキルである)
の化合物およびその薬学的に許容される塩であり、ただし、式Iの置換されたテトラサイクリン化合物は、ドキシサイクリンではない。
ある実施形態において、本発明の方法および組成物で使用する置換されたテトラサイクリン化合物は、置換型ドキシサイクリン化合物である。
一実施形態において、RおよびRは水素であり、Rはヒドロキシルまたはアルキルカルボニルオキシ(シクロブチルカルボニルオキシまたはシクロヘキシルカルボニルオキシなど)である。
また別の実施形態において、Rはヒドロキシルであり、Rは水素であり、Rはアルキルカルボニルアミノ(メチルカルボニルアミノなど)である。
またさらなる実施形態において、Rはヒドロキシルであり、Rは水素であり、Rはアルキル(シクロペンチルメチルまたはシクロブチルメチルなど)である。
またさらに別の実施形態において、Rは水素であり、Rはアルキルカルボニルオキシ(プロパニルカルボニルオキシなど)であり、Rはアルキルカルボニルアミノ(シクロペンチルアセチルアミノなど)である。
また別の実施形態において、Rはヒドロキシルであり、Rはメチルであり、Rはアルキル(t−ブチルなど)である。
一実施形態において、置換されたテトラサイクリン化合物は、9−t−ブチルドキシサイクリン、9−1’−メチルシクロペンチルドキシサイクリン、5−シクロブタノエートドキシサイクリン、5−シクロヘキサノエートドキシサイクリン、5−プロピオニル−7−シクロペンチルアセチルアミノドキシサイクリン、7−アセチルアミノドキシサイクリン、9−1’−メチルシクロペンチルドキシサイクリン、9−1’−メチルシクロブチルドキシサイクリン、9−t−ブチル−7−メチルドキシサイクリンおよび薬学的に許容されるその塩である。
本発明の置換されたテトラサイクリン化合物は、以下のスキームに記載の方法を用いるか、当該技術分野で認識された手法を用いるか、またはその両方によって合成することができる。本明細書に記載の全ての新規の置換されたテトラサイクリン化合物は、本発明の化合物に含まれる。
Figure 2009537139
スキーム1
スキーム1に示すように、9位置換テトラサイクリン化合物の5位エステル類は、9位置換テトラサイクリン化合物(3A)を強酸(HF、メタンスルホン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸など)に溶解し、しかるべきカルボン酸を添加して相当するエステル類(3B)を得ることによって生成することができる。
用語「アルキル」は、直鎖アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、分枝鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、イソブチルなど)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど)、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基をはじめとする無置換型飽和脂肪族を含む。用語アルキルには、さらに、炭化水素骨格の1個以上の炭素に置き換わった酸素、窒素、硫黄またはリン原子をさらに含むアルキル基が含まれる。特定の実施形態において、直鎖または分枝鎖アルキルは、その骨格に20個未満の炭素原子を有し(直鎖ではC−C20、分枝鎖ではC−C20)、より望ましくは4個未満を有する。シクロアルキルはその環構造に3〜8個の炭素原子を有することができ、より望ましくは環構造に5または6個の炭素原子を有する。用語C−Cは、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基を含む。
炭素の数が特に記載されていない限り、本明細書で使用する「低級アルキル」は、上述の定義の通りであるがその骨格構造に1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
用語「アルキルカルボニルオキシ」は、カルボニルオキシ基に共有結合した無置換型アルキル基を有し、そのカルボニルオキシ基が今度はオキシ基によってテトラサイクリン化合物と結合した化合物を含む。好適なアルキル基には、前節で定義したアルキル基が含まれる。
用語「アルキルカルボニルアミノ」は、カルボニルアミノ基に共有結合した無置換型アルキル基を有し、そのカルボニルアミノ基が今度はアミノ基によってテトラサイクリン化合物と結合した化合物を含む。好適なアルキル基には、前節で定義したアルキル基が含まれる。
用語「アミノ」は、窒素原子が少なくとも1個の炭素に共有結合した化合物を含む。
用語「カルボニル」または「カルボキシ」は、酸素原子への二重結合に連結した炭素を含有する化合物または成分を含む。
用語「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、−OHを有する基を含む。
用語「プロドラッグ成分」は、in vivoで代謝されることのできる成分を含む。一般にプロドラッグ成分は、in vivoでエステラーゼまたは他の機序によってヒドロキシル基または他の有益な基へと代謝される。プロドラッグおよびその使用に関する例は、当該技術分野で既知である(例えば、Berge et al. (1977) “Pharmaceutical Salts”, J. Pharm. Sci. 66:1−19を参照)。プロドラッグは、化合物の最終的な単離および精製中にin situで、または、その遊離酸型またはヒドロキシル中の精製化合物と好適なエステル化剤とを別々に反応させることによって調製することができる。ヒドロキシル基は、カルボン酸による処理を介してエステル類に変換することができる。プロドラッグ成分の例には、置換および無置換型の分枝鎖または非分枝鎖の低級アルキルエステル成分(プロピオン酸エステル類など)、低級アルケニルエステル類、ジ低級アルキルアミノ低級アルキルエステル類(ジメチルアミノエチルエステルなど)、アシルアミノ低級アルキルエステル類(アセチルオキシメチルエステルなど)、アシルオキシ低級アルキルエステル類(ピバロイルオキシメチルエステルなど)、アリールエステル類(フェニルエステル)、アリール低級アルキルエステル類(ベンジルエステルなど)、置換型(メチル、ハロまたはメトキシ置換基など)アリールおよびアリール低級アルキルエステル類、アミド類、低級アルキルアミド類、ジ低級アルキルアミド類およびヒドロキシアミド類が含まれる。望ましいプロドラッグ成分は、プロピオン酸エステル類およびアシルエステル類である。他の機序を介してin vivoで活性型に変換されるプロドラッグも含まれる。
本発明の方法および組成物に使用されるいくつかの置換されたテトラサイクリン化合物の構造は、不斉炭素原子を含む。キラル原子から生じる異性体(例えば、全てのエナンチオマーおよびジアステレオマーなど)は、特に記載がない限り、本発明の適用範囲に含まれる。こうした異性体は、従来の分離法および立体化学的に制御された合成によって、実質的に純粋な形態で得ることができる。さらに、本明細書で検討する構造および他の化合物および成分は、その全ての互変異性体も含む。
II. テトラサイクリン誘導転写レギュレーター
テトラサイクリンが制御する遺伝子発現系において、遺伝子の転写は転写レギュレーターによって調節される。すなわち、アクチベータータンパク質(または逆転写アクチベータータンパク質)によって活性化されるか、転写サイレンサータンパク質によって抑制される。本発明の転写アクチベーターおよびサイレンサーは、融合タンパク質であるか、非共有結合タンパク質である。このため、本発明の特定の方法は、融合タンパク質および融合タンパク質または非共有結合タンパク質をコードする核酸(DNAなど)に関わる。
一実施形態において、遺伝子または遺伝子産物の転写は、テトラサイクリンが制御する転写アクチベータータンパク質(tTA)またはリバーステトラサイクリン制御転写アクチベータータンパク質(rtTA)によって活性化され、いずれも本明細書では単に転写アクチベーターと呼ぶ。テトラサイクリンの非存在下で、tTAはTREに結合し、標的核酸配列の発現を活性化する。逆に、rtTAはテトラサイクリンの存在下でのみTREを認識し、したがって、標的核酸配列の転写はテトラサイクリンが存在する場合のみにrtTAによって促進される。
また、本発明の方法は、転写サイレンサー融合タンパク質にも関わる。本発明の方法のインヒビター融合タンパク質は、本発明の転写レギュレーター融合タンパク質と同様の方法で構築されるが、細胞内の転写を促進するポリペプチドドメインを含有する代わりに、インヒビター融合タンパク質は真核細胞での転写を抑制するポリペプチドドメインを含有する。インヒビター融合タンパク質は、tetO配列に作動可能に連結された遺伝子または遺伝子産物の発現をダウンレギュレートするのに使用される。例えば、tetOに結合した遺伝子を宿主細胞または動物に導入すると、その遺伝子の恒常的な基底発現レベルは、その遺伝子が導入された細胞または組織の種類および遺伝子の組み込み部位によって異なることがある。あるいは、tetO配列が導入された内在遺伝子の恒常的な発現は、近接する追加的な内在性の制御配列の強さによって異なることがある。本明細書に記載のインヒビター融合タンパク質は、こうしたtetO結合遺伝子の発現を制御された方法で阻害するのに使用することのできる組成物を提供する。
例えば、本発明の方法のインヒビター融合タンパク質は、真核細胞で転写を抑制する異種の第二のポリペプチドに、作動可能に連結された置換されたテトラサイクリン化合物が存在するのでなく不在の場合に、tetオペレーター配列に結合する第一のポリペプチドを含むことができる。あるいは、インヒビター融合タンパク質は、真核細胞で転写を抑制する異種の第二のポリペプチドに、作動可能に連結された置換されたテトラサイクリン化合物が不在ではなく存在する場合に、tetオペレーター配列に結合する第一のポリペプチドを含むことができる。
A. 転写を活性化するか阻害する融合タンパク質の第一のポリペプチド
一実施形態において、本発明の特定の方法に関わる転写アクチベーター融合タンパク質は、部分的には、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物が不在の場合にtetオペレーター配列に結合する第一のポリペプチドから構成される。
一実施形態において、例えばtTA融合タンパク質を調製する場合、第一のポリペプチドは(テトラサイクリンの存在下ではなく非存在下でtetオペレーター配列に結合する)野生型Tetリプレッサーである。あらゆるクラス(A、B、C、DまたはEなど)の野生型Tetリプレッサーを、第一のポリペプチドとして使用することができる。それぞれのクラスのTetリプレッサーの成員間では配列の保存率が高いため(80%以上)、各クラスのTetリプレッサーの単一の成員を、そのクラス全体の代表として本明細書では用いる。したがって、あるTetリプレッサークラスの特定の成員に関する本発明の教示内容は、そのクラスの全ての成員に直接適用することが可能である。
本明細書で使用する場合、TetR(A)クラスは、Tn1721トランスポゾンで運搬されるTetリプレッサーが代表する(Allmeier et al.(1992)Gene 111(1):11−20;NCBI(National Library of Medicine, National Center for Biotechnology Information) 受入番号X61367およびコードタンパク質配列のためのデータベース相互参照番号(GI)GI:48198)。
TetR(B)クラスは、Tn10テトラサイクリン耐性決定因子によってコードされるTetリプレッサーが代表する(Postle et al. (1984) Nucleic Acids Research 12(12): 4849−63、受入番号X00694、GI:43052)。
TetR(C)クラスは、プラスミドpSC101のテトラサイクリンリプレッサーが代表する(Brow et al. (1985) Mol. Biol. Evol. 2(1):1−12、受入番号M36272、GI:150496)。
TetR(D)クラスは、Salmonella ordonezで同定されるTetリプレッサーが代表する(Allard et al. (1993) Mol. Gen. Genet. 237(1−2):301−5、受入番号X65876、GI:49075)。
TetR(E)クラスは、Enterobacteriaceaeの成員から単離されたTetリプレッサーが代表する(Tovar et al. (1988) Mol. Gen. Genet. 215(1):76−80、受入番号M34933、GI:155020)。
TetR(G)クラスは、Vibrio anguillarumで同定されるTetリプレッサーが代表する(Zhao et al. (1992) Microbiol Immunol 36(10): 1051−60、受入番号S52438、GI:262929)。
TetR(H)クラスは、Pasteurella multocidaから単離されたプラスミドpMV111がコードするTetリプレッサーが代表する(Hansen et al. (1993) Antimicrob. Agents. Chemother. 37(12):2699−705、受入番号U00792、GI:392872)。
TetR(J)クラスは、Proteus mirabilisからクローニングされたTetリプレッサーが代表する(Magalhaes et al. (1998) Biochim. Biophys. Acta. 1443(1−2):262−66、受入番号AF038993、GI:4104706)。
TetR(Z)クラスは、グラム陽性細菌Corynebacterium glutamicumから単離されたプラスミドpAG1がコードするTetリプレッサーが代表する(Tauch et al. (2000) Plasmid 44(3):285−91、受入番号AAD25064、GI:4583400)。
望ましくは、野生型TetリプレッサーはクラスBのtetリプレッサー、例えば、Tn10由来Tetリプレッサーである。
また別の実施形態において、本発明の特定の方法に関わる転写アクチベーター融合タンパク質は、部分的には、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物の存在下でtetオペレーター配列に結合する第一のポリペプチドから構成される。したがって、一実施形態において、例えばrtTA融合タンパク質を調製する場合、融合タンパク質の第一のポリペプチドは変異型Tetリプレッサーである。変異型Tetリプレッサーと野生型Tetリプレッサーのアミノ酸の違いは、1個以上のアミノ酸の置換、1個以上のアミノ酸の欠失、または1個以上のアミノ酸の付加であることができる。望ましくは、本発明の変異型Tetリプレッサーは、以下の機能特性を有する。1)このポリペプチドはtetオペレーター配列に結合することができる。すなわち、野生型TetリプレッサーのDNA結合特異性を残している。2)野生型Tetリプレッサーとは逆の方法で置換されたテトラサイクリン化合物によって制御される。すなわち、変異型Tetリプレッサーは、置換されたテトラサイクリン化合物の非存在下ではなく、置換されたテトラサイクリン化合物が存在する場合のみにtetオペレーター配列と結合する。
ある実施形態において、上述の機能特性を有する変異型Tetリプレッサーは、野生型Tetリプレッサーの配列中のアミノ酸残基を置換することによって作製する。例えば、米国特許第5,789,156号に記載がある通り、71、95、101および102位のアミノ酸が置換されたTn10由来Tetリプレッサーは望ましい機能特性を有し、そのため本発明の転写レギュレーター融合タンパク質の第一のポリペプチドとして使用することができる。これら4つのアミノ酸の位置全てで変異が起こらなくても、望ましい機能特性を有するTetリプレッサーは十分達成することができる。したがって、この実施形態において、Tetリプレッサーは望ましくはこれらの位置の少なくとも1個のアミノ酸が変異しているのが望ましい。変異型Tetリプレッサーの望ましい機能特性を保持させる、これらの位置または他のアミノ酸の位置における他のアミノ酸置換、欠失または付加も、本発明の方法の適用範囲内である。Tetリプレッサー−テトラサイクリン複合体の結晶構造は、Hinrichs, W. et al. (1994) Science 264:418−420に記載がある通り、変異型Tetリプレッサーを合理的に設計するのに使用することができる。この構造に基づけば、71位のアミノ酸はテトラサイクリン結合ポケットの外側に位置することになり、これは、この部位における変異が、本発明の変異型Tetリプレッサーの望ましい機能的特性を達成するのに必要ないことを示唆している。これに対し、95、101および102位のアミノ酸は、保存されたテトラサイクリン結合ポケットの内部に位置する。このため、Tetリプレッサーのテトラサイクリン結合ポケットは、本発明の変異型Tetリプレッサーを作製するための突然変異の標的であることができる。
本発明の教示に従って、本発明の方法の融合タンパク質への組み込むための追加的な変異型Tetリプレッサーを作製することができる。クラスA、B、C、DおよびEをはじめとして、多数のさまざまなクラスのTetリプレッサーが叙述されてきた(このうち、Tn10がコードするリプレッサーは、クラスBリプレッサーである)。種々のクラスのTetリプレッサーのアミノ酸配列は、上述の変異を含む領域内で高度の相同性(タンパク質の長さの40〜60%)を共有する。種々のクラスのTetリプレッサーのアミノ酸配列を米国特許第5,789,156号(図4)に示して比較するが、これらは、Tovar, K et al. (1988) Mol.Gen.Genet.215:76−80 にも記載されている。したがって、Tn10由来Tetリプレッサーについて記載したものと同等の突然変異は、本発明の融合タンパク質に含めるために他のクラスのTetリプレッサーでも行わせることができる。例えば、95位のアミノ酸は、5つのクラス全てのリプレッサーにおいてアスパラギン酸であるが、あらゆるクラスのリプレッサーにおいてアスパラギンに変異させることができる。同様に、102位は、5つのクラス全てのリプレッサーにおいてグリシンであるが、あらゆるクラスのリプレッサーにおいてアスパラギン酸に変異させることができる。さらなる好適な同等の変異は当業者には明白であり、本明細書に記載の手順によって作製してその機能を試験することができる。クラスA、C、DおよびEのTetリプレッサーのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれWaters,S.H. et al. (1983)Nucl.Acids Res 11:6089−6105、Unger,B.et al.(1984)Gene 31:103−108、Unger,B.et al.(1984)Nucl.Acids Res.12:7693−7703およびTovar,K.et al.(1988)Mol.Gen.Genet.215:76−80に開示されている。これらの野生型配列は、本明細書に記載の誘導可能な制御系で利用するために、本発明の教示に従って突然変異させることができる。
上述の突然変異に代わり、さらなる好適な変異型Tetリプレッサー(上述の望ましい機能特性を有するものなど)を、米国特許第5,789,156号(実施例1)に記載の通り、野生型Tetリプレッサーの突然変異誘発および選択により作製することができる。野生型クラスBTetリプレッサーのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、Hillen,W. and Schollmeier,K.(1983)Nucl.Acids Res.11:525−539およびPostle,K. et al.(1984)Nucl.Acids Res.12:4849−4863に開示されている。野生型クラスA、C、DおよびEリプレッサーのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、上で引用されている。変異型Tetリプレッサーは、例えば以下のように作製し、選択することができる。野生型Tetリプレッサーをコードする核酸(DNAなど)をランダムな突然変異誘発にかけ、結果得られた変異した核酸を発現ベクターに組み込み、宿主細胞に導入してスクリーニングする。置換されたテトラサイクリン化合物が存在する場合にのみTetオペレーター配列に結合するTetリプレッサーの選択を可能にするようなスクリーニングアッセイを利用することができる。例えば、その中でtetオペレーター配列がLacリプレッサーをコードする遺伝子の発現を制御し、Lacリプレッサーが選択マーカー(薬剤耐性など)をコードする遺伝子の発現を制御する大腸菌株中に、発現ベクター中の変異した核酸のライブラリーを導入することができる。細菌中のTetオペレーター配列へのTetリプレッサーの結合は、Lacリプレッサーの発現を阻害し、それにより、選択マーカー遺伝子の発現が誘導される。マーカー遺伝子を発現する細胞は、その選択された表現型(薬剤耐性など)に基づいて選択する。野生型Tetリプレッサーでは、選択マーカー遺伝子は、テトラサイクリンの非存在下で発現する。変異型Tetリプレッサーをコードする核酸は、置換されたテトラサイクリン化合物が存在する場合のみに細菌中で選択マーカー遺伝子の発現を誘導することのできるその核酸の能力に基づいて、この系を利用して選択することができる。
クラスAtetオペレーターに結合する変異型Tetリプレッサーを作製するためのまた別のアプローチは、本明細書に記載のすでに変異させたTn10由来Tetリプレッサー(クラスBリプレッサー)をさらに変異させて、クラスB型オペレーターにもはや有効に結合せずクラスA型オペレーターに有効に結合するようにすることである。クラスA型またはB型オペレーターの6位のヌクレオチドは、その相補的リプレッサーがオペレーター認識するために決定的に重要なヌクレオチドであるということが見出されている(6位は、クラスBオペレーターではG/C対であり、クラスAオペレーターではA/T対である)(Wissman et al.(1988)J.Mol.Biol.202:397−406を参照)。クラスAまたはクラスBTetリプレッサーの40位のアミノ酸が、オペレーターの6位を認識するのに決定的に重要なアミノ酸残基であるということも見出されている(40位のアミノ酸は、クラスBリプレッサーではスレオニンであり、クラスAリプレッサーではアラニンである)。さらに、クラスBリプレッサーのThr40がAlaに置換されると、その結合特異性が変化して、クラスAオペレーターと結合するようになることが見出されている(同様に、クラスAリプレッサーのAla40がThrに置換されると、その結合特異性が変化して、クラスBオペレーターと結合するようになる)(Altschmied et al.(1988)EMBO J.7:4011−4017を参照)。このように、本明細書に開示する変異型Tn10由来Tetリプレッサーの結合特異性は、標準的な分子生物学的技法(例えば、部位特異的突然変異導入法)によって、アミノ酸残基40をThrからAlaにさらに変更することによって変化させることができる。
標準的な分子生物学的技法(例えば、部位特異的突然変異導入法またはヌクレオチド変異を組み込んだオリゴヌクレオチドプライマーを用いる変異導入PCR法)により、特定の変異を(上述のように71、95、101および/または102位に)有するなどした変異型Tetリプレッサーを、野生型リプレッサーをコードする核酸にヌクレオチドの変更を導入することによって作製することができる。あるいは、変異型Tetリプレッサーをライブラリーからの選択により同定する場合は、その変異した核酸をライブラリーベクターから回収することができる。本発明の転写レギュレーター融合タンパク質を作製するには、変異型Tetリプレッサーをコードする核酸を、転写活性化ドメインをコードする別の核酸にインフレームでライゲートし、その融合構築物を組換え発現ベクターに組み込む。この組換え発現ベクターを宿主細胞または動物に導入することにより、転写レギュレーター融合タンパク質を発現させることができる。
B. 転写アクチベーター融合タンパク質の第二のポリペプチド
転写アクチベーター融合タンパク質の第一のポリペプチドは、機能できる状態で、真核細胞の転写を直接的または間接的に活性化する第二のポリペプチドに結合する。第一および第二のポリペプチドを機能できる状態で結合するには、典型的には、第一および第二のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をインフレームで互いにライゲートして、融合タンパク質をコードするキメラ遺伝子を作製する。ただし、各ポリペプチドの機能を保存できる他の手段によっても(化学的架橋など)、第一および第二のポリペプチドを機能できる状態で結合することはできる。転写アクチベーターの第二のポリペプチドはそれ自体で転写活性化の活性を有する(すなわち、第二のポリペプチドは直接的に転写を活性化する)。第二のポリペプチドは、融合タンパク質と相互作用する転写活性化タンパク質を動員する間接的な機序によっても転写を活性化することができる。
真核細胞で転写を活性化するという機能を果たせるポリペプチドは当該技術分野で既知である。特に、多くのDNA結合タンパク質の転写活性化ドメインが記述されており、そのドメインが異種タンパク質に移されてもその活性化機能は保持されることが明らかになっている。本発明の方法の融合タンパク質に使用するのに望ましいポリペプチドは、単純ヘルペスウイルス粒子タンパク質16(本明細書ではVP16と呼び、そのアミノ酸配列はTriezenberg, S.J. et al.(1988) Genes Dev.2:718−729に開示されている)である。
真核細胞において転写活性化能を有する他のポリペプチドも、本発明の方法の融合タンパク質に使用することができる。種々のタンパク質中に認められた転写活性化ドメインは、その構造上の特徴によって何種類かに分けられる。転写活性化ドメインの種類のなかには、酸性の転写活性化ドメイン、プロリンに富む転写活性化ドメイン、セリン/スレオニンに富む転写活性化ドメインおよびグルタミンに富む転写活性化ドメインが含まれる。酸性の転写活性化ドメインの例としては、すでに叙述したVP16領域およびGAL4のアミノ酸残基753−881が挙げられる。プロリンに富む転写活性化ドメインの例としては、CTF/NF1のアミノ酸残基399−499およびAP2のアミノ酸残基31−76が挙げられる。セリン/スレオニンに富む転写活性化ドメインの例としては、ITF1のアミノ酸残基1−427およびITF2のアミノ酸残基2−451が挙げられる。グルタミンに富む転写活性化ドメインの例としては、Oct1のアミノ酸残基175−269およびSp1のアミノ酸残基132−243が挙げられる。上述の領域およびその他の有用な転写活性化ドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、Seipel, K. et al.(EMBO J.(1992)13:4961−4968)に開示されている。
前述の転写活性化ドメインに加えて、標準的な手法で同定することのできる新規の転写活性化ドメインも、本発明の方法の適用範囲内である。ポリペプチドの転写活性化能は、そのポリペプチドをDNA結合活性を有する別のポリペプチドと結合させ、その融合タンパク質によって促進された標的配列の転写量を測定することによってアッセイすることができる。例えば、当該技術分野で使用される標準的なアッセイでは、転写を活性化すると推定される領域とGAL4DNA結合ドメイン(アミノ酸残基1−93など)の融合タンパク質を利用する。この融合タンパク質を使用して、GAL4結合部位に結合したレポーター遺伝子の発現を促進する(例えば、Seipel, K. et al.(1992) EMBO J. 11:4961−4968および前記文献で引用される参考文献を参照)。
融合タンパク質の第二のポリペプチドは、融合タンパク質と相互作用する転写アクチベーターを動員することによって、間接的に転写を活性化する。例えば、宿主細胞中に存在する内在性アクチベーターなどの転写活性化タンパク質とのタンパク質間相互作用を媒介することのできるポリペプチド領域(二量体化領域など)と、本発明のTetRまたは変異型TetRを融合させることができる。DNA結合ドメインと転写活性化ドメインの機能的結合は必ずしも共有結合であるの必要はないことが明らかにされている(Fields and Song (1989) Nature340:245−247; Chien et al.(1991)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 31:9578−9582; Gyuris et al.(1993) Cell 75:791−803; Zervos, A.S.(1993)Cell 72:223−232などを参照)。したがって、融合タンパク質の第二のポリペプチドは転写を直接的に活性化しなくてもよく、両立可能なタンパク質間相互作用ドメインおよび転写活性化ドメインを有する内在性ポリペプチドと安定な相互作用を形成することができる。好適な相互作用(または二量体化)ドメインの例としては、ロイシンジッパー(Landschulz et al.(1989)Science 243:1681−1688)、ヘリックス・ループ・ヘリックスドメイン(Murre, C. et al.(1989)Cell 58:537−544)および亜鉛フィンガードメイン(Frankel, A.D. et al.(1988)Science 24:70−73)が挙げられる。融合タンパク質中に存在する二量体化ドメインと内在性核因子が相互作用すると、核因子の転写活性化ドメインが融合タンパク質へと動員され、それによってその融合タンパク質が結合したtetオペレーター配列へと動員される。
C.転写サイレンサー融合タンパク質の第二のポリペプチド
一実施形態において、転写サイレンサー融合タンパク質の第一のポリペプチドは、機能できる状態で、真核細胞の転写を直接的または間接的に阻害する第二のポリペプチドに結合する。本明細書に記載し、当該技術分野で既知の通り、融合タンパク質の第一および第二のポリペプチドを機能できる状態で結合するには、典型的には、第一および第二のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をインフレームで互いにライゲートして、融合タンパク質をコードするキメラ遺伝子を作製する。ただし、各ポリペプチドの機能を保存できる他の手段によっても(化学的架橋など)、第一および第二のポリペプチドを機能できる状態で結合することはできる。融合タンパク質は、典型的には融合タンパク質のアミノ末端に第一のポリペプチドを有し、融合タンパク質のカルボキシ末端に第二のポリペプチドを有するとして本明細書に記載されるが、逆方向(すなわち、第二のポリペプチドがアミノ末端に位置し、第一のポリペプチドがカルボキシ末端に位置する)も本発明に含まれることは当業者には理解され得ることである。
真核細胞で転写を阻害することのできるタンパク質およびタンパク質内のポリペプチド領域は、当該技術分野で報告されている(検討のためには、Renkawitz, R(1990) Trends in Genetics 6:192−197; Herschbach, B.M. and Johnson, A.D.(1993) Annu.Rev. Cell. Biol.9:479−509を参照)。こうした転写サイレンサー領域は当該技術分野で「サイレンシング領域」または「リプレッサー領域」と呼ばれてきた。これらのポリペプチド領域の多くが転写を阻害する精確な機序というものは明らかにされていない(また、本発明は機序によって制限されることを意図しない)が、リプレッサー領域が転写を阻害できると考えられるいくつかの手段が挙げられる。1)アクチベータータンパク質または一般的な転写機構のいずれかとの結合を競合的に阻害する。2)DNA結合アクチベーターの活性を予防する。3)一般的な転写機構の機能的な転写開始前複合体の組み立てに対して負に干渉する。このように、リプレッサー領域は、転写機構に対して直接的な阻害作用を有するか、アクチベータータンパク質の活性を阻害することによって転写を間接的に阻害することができる。したがって、本明細書で使用する場合、用語「真核細胞で転写を阻害するポリペプチド」は、転写を阻害するために直接的または間接的に働くポリペプチドを含むことを意図する。本明細書で使用する場合、転写の「阻害」は、転写サイレンサータンパク質によって制御される前の転写のレベルまたは量と比較した場合に、標的核酸配列の転写のレベルまたは量が減少することを意味することを意図する。転写の阻害は部分的であるか完全であることができる。用語「サイレンサー」、「リプレッサー」および「インヒビター」は、転写を阻害することのできる制御タンパク質またはそのドメインを記述するために、本明細書では互換的に使用することができる。
本明細書に記載する転写「リプレッサー」または「サイレンサー」領域は、異種タンパク質に移されてもその転写抑制機能を保持するポリペプチド領域である。異種タンパク質に移されても機能することのできるリプレッサー領域を有することが明らかにされているタンパク質には、v−erbAオンコジーン産物(Baniahmad, A. et al.(1992) EMBO J.11:1015−1023)、甲状腺ホルモン受容体(上記のBaniahmad)、レチノイン酸受容体(上記のBaniahmad)およびショウジョウバエ(Kr)タンパク質(Licht, J.D. et al.(1990) Nature 346:76−79; Sauer, F. and Jackle, H.(1991)Nature 2:563−566; Licht, J.D. et al.(1994) Mol. Cell. Biol.14:4057−4066)が含まれる。真核細胞において転写抑制の活性を有する他のタンパク質の非制限的な例としては、ショウジョウバエホメオドメインタンパク質even−skipped(eve)、S.cerevisiae Ssn6/Tup1タンパク質複合体(上記のHerschbach and Johnsonを参照)、酵母SIR1タンパク質(Chien et al.(1993)Cell75:531−541を参照)、NeP1(Kohne, et al.(1993)J.Mol.Biol232:747−755を参照)、ショウジョウバエdorsalタンパク質(Kirov, et al.(1994)Mol.Cell.Biol.14:713−722; Jiang, et al.(1993)EMBO J.12:3201−3209を参照)、TSF3(Chen, et al.(1993)Mol.Cell.Biol.13:831−840を参照)、SF1(Targa, et al.(1992)Biochem. Biophys. Res.Comm.188:416−423を参照)、ショウジョウバエhunchbackタンパク質(Zhang, et al.(1992)Proc. Natl.Acad.Sci.USA89:7511−7515を参照)、ショウジョウバエknirpsタンパク質(Gerwin, et al.(1994)Mol.Cell.Biol.14:7899−7908を参照)、WT1タンパク質(ウィルムス腫瘍遺伝子産物)(Anant, et al.(1994)Oncogene9:3113−3126; Madden et al.,(1993)Oncogene8:1713−1720を参照)Oct−2.1(Lillycrop, et al.(1994)Mol.Cell.Biol.14:7633−7642を参照)、ショウジョウバエengrailedタンパク質(Badiani, et al.(1994)Genes Dev.8:770−782; Han and Manley,(1993)EMBO J.12:2723−2733を参照)、E4BP4(Cowell and Hurst,(1994) Nucleic Acids Res.2:59−65を参照)およびZF5(Numoto, et al.(1993)Nucleic Acids Res.21:3767−3775を参照)が挙げられる。
本発明の方法の転写サイレンサー融合タンパク質の第二のポリペプチドは、ショウジョウバエタンパク質の転写サイレンサー領域であることができる。その天然のタンパク質のアミノ酸403−466など、リプレッサー活性を有するC末端領域を使用することができる(上記のSauer, F and Jackle, H.を参照)。この領域はC64KRと呼ばれる。TetR−C64KR融合タンパク質をコードする発現ベクターの構築法が米国特許5,789,156号に記載されている。あるいは、これもリプレッサー活性を有するKrのアラニンに富むアミノ末端領域を、融合タンパク質の第二のポリペプチドとして使用することができる。例えば、Krのアミノ酸26−110(上記のLicht, J.D.et al.(1990)を参照)を第二のポリペプチドとして使用することができる。あるいは、依然として阻害活性を完全または部分的に保持するKrサイレンサー領域のいずれかを含むこれよりも短いか長いポリペプチド断片も検討することができる(たとえばN末端サイレンサー領域のアミノ酸62−92など;上記のLicht, et al.(1994)を参照)。
本発明の方法の転写サイレンサー融合タンパク質の第二のポリペプチドは、v−erbAオンコジーン産物の転写サイレンサー領域であることができる。v−erbAのサイレンサー領域は、天然のv−erbAオンコジーン産物のアミノ酸残基約362−632にマップされている(上記のBaniahmad, et al.を参照)。したがって、この領域を含む断片をサイレンサー領域の第二のポリペプチドとして使用する。天然のv−erbAタンパク質のアミノ酸残基364−635を使用することができる。あるいは、依然として阻害活性を完全または部分的に保持するv−erbAサイレンサー領域のいずれかを含むこれよりも短いか長いポリペプチド断片も検討することができる。例えば、v−erbAのアミノ酸残基346−639、362−639、346−632、346−616および362−616を使用することができる。また、v−erbAのアミノ酸残基362−468/508−639などの、内部に欠失を有するが阻害活性を完全または部分的に保持するこれらの領域を含むポリペプチド断片も、本発明に含まれる。さらに、v−erbAのアミノ酸残基362−616の2個のコピーなど、サイレンサー領域の2個以上のコピーも融合タンパク質に含めることができる。v−erbAの好適なサイレンサーポリペプチド領域については、Baniahmad, A. et al.(上記)にさらに記載がある。
他のサイレンサー領域も使用することができる。使用することのできるポリペプチド領域の非制限的な例としては、甲状腺ホルモンα受容体(THRα)のアミノ酸残基120−410、レチノイン酸α受容体(RARα)のアミノ酸残基143−403、knirpsのアミノ酸残基186−232、WT1のN末端領域(上記のAnantを参照)、Oct−2.1のN末端領域(上記のLillycropを参照)、E4BP4の65アミノ酸領域(上記のCowell and Hurstを参照)およびZF5のN末端亜鉛フィンガー領域(上記のNumotoを参照)が挙げられる。さらに、阻害活性を完全または部分的に保持するこれらの領域を含むこれよりも短いか長いポリペプチド断片も検討することができる。
前述の転写サイレンサー領域に加えて、標準的な手法によって同定できる新規の転写サイレンサー領域も、本発明の方法の適用範囲内である。ポリペプチドの転写抑制能は以下の方法でアッセイすることができる。1)DNA結合活性を有する別のポリペプチドに結合した試験対象のサイレンサーポリペプチドをコードする発現ベクターを構築する(すなわち、DNA結合領域−サイレンサー領域融合タンパク質を構築する)。2)宿主細胞で通常は恒常的に発現し、DNA結合領域との結合部位も含有するレポーター遺伝子構築物とともに、この発現ベクターを宿主細胞へトランスフェクトする。3)宿主細胞中で融合タンパク質の発現によって阻害されるレポーター遺伝子構築物の発現量を測定する。例えば、当該技術分野で使用される標準的なアッセイ法は、GAL4 DNA結合領域(アミノ酸残基1−147など)と試験対象のサイレンサー領域からなる融合タンパク質を利用する。次にこの融合タンパク質を用いて、正の制御配列(通常は恒常的な転写を促進する)およびGAL4結合部位を含有するレポーター遺伝子構築物の発現を阻害する(上記のBaniahmadなどを参照)。

D. 転写アクチベーターまたはインヒビター融合タンパク質の任意の第三のポリペプチド
TetRまたは変異型TetRおよび転写活性化または抑制ドメインに加えて、本発明の方法の融合タンパク質は、融合タンパク質の細胞核への輸送を促進する、作動可能に連結された第三のポリペプチドを含有することができる。タンパク質内に含まれた場合に、細胞核へのそのタンパク質の輸送を促進するべく機能するアミノ酸配列は当該技術分野で既知であり、核局在シグナル(NLS)と呼ばれる。核局在シグナルは典型的には、一定範囲の塩基性アミノ酸から構成される。異種タンパク質(本発明の融合タンパク質など)に結合した場合、核局在シグナルはそのタンパク質の細胞核への輸送を促進する。核局在シグナルは異種タンパク質と結合して、そのタンパク質の表面に位置するが、そのタンパク質の機能に干渉することはない。望ましくは、NLSはタンパク質の片方の末端(N末端など)に結合するのがよい。本発明の方法の融合タンパク質に含めることのできる非制限的な例のNLSのアミノ酸配列は、米国特許5,789,156号に記載がある。望ましくは、標準的な組換えDNA法により、核局在シグナルをコードする核酸をインフレームで、融合タンパク質をコードする核酸にスプライシングするのがよい(例えば5’末端で)。

III. テトラサイクリン制御系により制御される標的転写ユニット
一実施形態において、本発明の方法は、標的ヌクレオチド配列の転写を制御するための融合タンパク質の調節に関わる。この標的ヌクレオチド配列を、TREに機能できる状態で結合させることができる。したがって、本発明の別の態様は、TREに作動可能に連結された転写対象のヌクレオチド配列を含む標的核酸(DNA分子など)に関する。こうした核酸分子も本明細書ではtet制御転写ユニット(または単に転写ユニット)と呼ぶ。
転写ユニット中で、「転写対象のヌクレオチド配列」は典型的には、それ自体は転写されないが、(少なくとも部分的には)転写機構の転写のための位置を規定するのに役立つミニマルプロモーター配列を含む。ミニマルプロモーター配列は転写される配列にリン酸ジエステル結合によって5’から3’の方向で結合し(すなわちプロモーターは転写される配列の上流に位置することになる)、近接ヌクレオチド配列を形成する。したがって、用語「転写対象のヌクレオチド配列」または「標的ヌクレオチド配列」は、mRNAに転写されるヌクレオチド配列と、作動可能に連結された上流のミニマルプロモーター配列の両方を含むことを意図する。用語「ミニマルプロモーター」は、転写対象の結合配列の転写の開始部位を決定するが、それ自身では転写を有効に開始させることができないか全く開始させることのできない部分的なプロモーター配列を含む。このため、こうしたミニマルプロモーターの活性は、転写アクチベーター(本発明のテトラサイクリン誘導融合タンパク質など)と、作動可能に連結された制御配列(1個以上のtetオペレーター配列など)との結合に左右される。一実施形態において、ミニマルプロモーターはヒトサイトメガロウイルスに由来する(Boshart et al. (1985) Cell 41:521−530に記載の通り)。望ましくは約+75から−53および+75から−31のヌクレオチドの位置を利用するのがよい。その他の好適なミニマルプロモーターは当該技術分野で既知であるか、標準的な手法により同定することができる。例えば、近接的に結合したレポーター遺伝子(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼなど)の転写を活性化する機能的プロモーターは、それがもはや単独ではレポーター遺伝子の発現を活性化できず、追加的な制御配列の存在を必要とするようになるまで徐々に欠失させることができる。
転写ユニット中で、標的ヌクレオチド配列(転写されるヌクレオチド配列およびその上流に位置するミニマルプロモーター配列を含む)は機能できる状態で少なくとも1個のTRE(少なくとも1個のtetオペレーター配列など)に結合する。一実施形態において、TREは、1個以上のtetオペレーター配列の複数のコピー(マルチマー化またはコンカテマー化したコピー)を含むことができる。典型的な構成において、tetオペレーター配列は、ミニマルプロモーター配列の上流(5’など)に、リン酸ジエステル結合を介して機能できる状態で好適な距離を置いて結合し、制御機能を有するタンパク質(転写レギュレーター融合タンパク質など)がtetオペレーター配列に結合した場合に標的ヌクレオチド配列の転写が可能になるようにする。つまり、転写ユニットは、5’から3’の方向で、tetオペレーター配列、ミニマルプロモーター、転写されるヌクレオチド配列の順で構成される。tetオペレーター配列とミニマルプロモーターの間で可能な距離には若干の融通性があるが、典型的にはtetオペレーター配列はミニマルプロモーターの約200〜400塩基対だけ上流に位置することは当業者には理解され得ることである。
本発明に使用することのできる、ミニマルプロモーターに結合したtetオペレーター配列を含有するtet制御プロモーターの例の例示的なヌクレオチド配列は、当該技術分野で既知である。例えば、10個のtetオペレーター配列に結合したサイトメガロウイルスのミニマルプロモーターを使用することができる。あるいは、10個のtetオペレーター配列に結合した単純ヘルペスウイルスのミニマルtkプロモーターを使用することができる。プロモーターの例は、例えばGossen, M. and Bujard, H.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:5547−5551に記載がある。
あるいは、制御エレメントは転写される配列の下流で機能することが当該技術分野で認められていることから、tetオペレーター配列は転写されるヌクレオチド配列の下流(3’など)に機能できる状態で結合させることができると考えられる。このため、この構成では、転写ユニットは、5’から3’の方向で、ミニマルプロモーター、転写されるヌクレオチド配列、tetオペレーター配列の順で構成される。また、どれほど距離をあけた下流にtetオペレーター配列を結合させることができるかには若干の融通性がある可能性があることは理解されなければならない。
tet制御転写ユニットは、標準的な組換えDNA法によって、さらに組換えベクター(プラスミドまたはウイルスベクターなど)に組み込むことができる。転写ユニットまたはそれを含有する組換えベクターは、上述のような標準的なトランスフェクション法によって、宿主細胞に導入することができる。転写ユニットを宿主細胞の集団に導入した後、tetオペレーターが結合したヌクレオチド配列を低レベルで基底発現する宿主細胞クローンを選択する(すなわち、tetオペレーターが結合したヌクレオチド配列を低レベルで基底発現させる部位に転写ユニットが組み入れられた宿主細胞を選択する)必要があることは理解され得ることである。さらに、tet制御転写ユニットを、本明細書に記載の手順によって、胚段階の非ヒト動物のゲノムまたは植物細胞に導入して、一部または全ての細胞にその転写ユニットを有するトランスジェニックまたは相同組換え生物を作製することができる。ここでも、所定の細胞にtetオペレーターが結合したヌクレオチド配列を低レベルで基底発現するトランスジェニックまたは相同組換え生物を選択する必要があることは理解され得ることである。
tet制御転写ユニットの標的ヌクレオチド配列は、所定のタンパク質をコードすることができる。このため、本発明の転写アクチベーターによりそのヌクレオチド配列の転写を誘導し、結果得られたmRNAを翻訳することで、所定のタンパク質が宿主細胞または動物中で生成される。あるいは、転写対象のヌクレオチド配列は、活性RNA分子(アンチセンスRNA分子またはリボザイムなど)をコードすることができる。宿主細胞または動物中の活性RNA分子の発現を利用して、宿主中での機能を制御することができる(例えば、所定のタンパク質をコードするmRNAの翻訳を阻害することによってそのタンパク質の生成を抑制するなど)。
本発明の方法の転写レギュレーターを利用して、宿主細胞または動物中に導入した外在性のヌクレオチド配列の転写を制御することができる。「外在性」のヌクレオチド配列は、宿主細胞中に導入され、典型的には宿主のゲノム中に挿入されるヌクレオチド配列である。外在性のヌクレオチド配列は、宿主のゲノムのどこにも存在しないか(外来のヌクレオチド配列など)、宿主のゲノム中に存在するがゲノムの異なる部位に組み入れられた追加的なコピーの配列であることができる。転写対象の外在性のヌクレオチド配列および作動可能に連結されたtetオペレーター配列は、宿主細胞または動物に導入する単一の核酸分子中に含まれることができる。
あるいは、本発明の方法の転写レギュレーターを利用して、tetオペレーター配列が結合した内在性ヌクレオチド配列の転写を制御することができる。「内在性」のヌクレオチド配列は、宿主ゲノム中に存在するヌクレオチド配列である。内在性の遺伝子は、tetO含有組換えベクターと内在遺伝子の配列との間の相同組換えによって、tetオペレーター配列に機能できる状態で結合させることができる。例えば、少なくとも1個のtetオペレーター配列と、その3’末端に内在遺伝子のコード領域が存在し、5’末端に内在性遺伝子の上流領域の配列が存在するミニマルプロモーター配列を含む相同組換えベクターを、内在遺伝子の実際のプロモーター領域を除外することによって調製することができる。この両側の配列は、ベクターのDNAと内在性遺伝子との間に相同組換えを行うのに十分な長さを有する。望ましくは、相同遺伝子組換えベクターには数千塩基対からなる両側のDNAが含まれるのがよい。宿主細胞内でベクターDNAと内在遺伝子との間に相同遺伝子組換えが起こると、内在性のプロモーターの領域が、ミニマルプロモーターに作動可能に連結された1個以上のtetオペレーター配列を含有するベクターDNAに置き換わる。このため、内在性遺伝子の発現はもはやその内在性プロモーターの制御下になく、tetオペレーター配列およびミニマルプロモーターの制御下におかれることになる。
また別の実施形態において、tetオペレーター配列を、内在性遺伝子のほかの場所、望ましくは5’または3’の制御領域内に相同組換えによって挿入して、その発現を本明細書に記載の置換されたテトラサイクリン化合物が制御する融合タンパク質によって制御することのできる内在性遺伝子を作製することができる。例えば、1個以上のtetO配列を内在性遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー領域に挿入して、プロモーターまたはエンハンサー機能を維持させることができる(すなわち、tetO配列を、プロモーター/エンハンサー機能に必須ではないプロモーター/エンハンサー領域の部位に導入する)。プロモーター/エンハンサー機能を失わせることなく変化させることのできるプロモーターまたはエンハンサー内の領域は多くの遺伝子で当該技術分野で既知であり、必須の制御領域を分析するための標準的な技法によって決定することができる。必須ではない制御領域に挿入されたtetO配列を有する内在性遺伝子は、通常の恒常的および/または組織特異的な方法で発現する能力を保持しているが、置換されたテトラサイクリン化合物が制御する転写サイレンサータンパク質によって制御された方法でダウンレギュレートされることもできる。例えば、このように修飾された内在遺伝子の恒常的な発現は、置換されたテトラサイクリン化合物の存在下でtetO配列と結合するインヒビター融合タンパク質を用いて、置換されたテトラサイクリン化合物の存在によって阻害することができる。
IV. 転写レギュレーター分子の感受性の変化
一実施形態において、本発明の転写レギュレーターは、テトラサイクリン系化合物の非存在下での基底レベルの転写活性の低下、テトラサイクリン系化合物の存在下での誘導転写活性の上昇またはテトラサイクリンおよびテトラサイクリン類似体による特異な誘導といった新規の表現型を有する。
本発明の一態様においては、特異的な変異または改変が転写制御タンパク質に導入される。また別の態様においては、ランダムな変異導入法を、系の選択またはスクリーニングと組み合わせて使用し、大量の変異を転写制御タンパク質に導入する。結果得られたランダムに変異したタンパク質のコレクションを、所望の表現型の選択または所望でない表現型のバックグラウンドから所望の表現型が観察されるスクリーンの対象とする。
本発明の一態様においては、ランダムな変異導入に従い、全分子に突然変異を起こさせることができるか、 カセット変異導入を行うことができる。前者では、いくつかの方法(化学的方法、PCR、ドープしたオリゴヌクレオチド合成)のいずれかによって、ある分子のコード領域全体に突然変異を起こさせ、結果得られたランダムに変異した分子のコレクションを、選択またはスクリーニング手順の対象とする。試験対象の分子が比較的小さく、避けがたく生じるであろう異なる種類の変異表現型を識別するために強力かつ厳密な選択またはスクリーニングを行う場合、ランダムな変異導入法をこの方法で適用することができる。
ランダムな変異導入法は以下をはじめとする多くの手段で達成することができる。
1.PCR変異導入法。エラーを起こしやすいTaqポリメラーゼを開発して、転写制御タンパク質の変異型対立遺伝子を作製し、それを酵母内で直接アッセイして結合能をみる。
2.化学的変異導入法。転写制御タンパク質をコードする発現カセットを変異原に暴露し、変異型配列のタンパク質産物を酵母内で直接アッセイして結合能をみる。
3.転写制御タンパク質遺伝子の部分をコードするオリゴヌクレオチドをドープ合成する。
4.In vivoの変異導入法。転写制御タンパク質のコード領域に、大腸菌の突然変異誘発株XL1−Red(mutD5 mutS mutT)(Stratagene、米国ウィスコンシン州メナサ)を通過させることによってランダムな変異を導入する。転写制御タンパク質の機能ドメインに対して変異型ペプチド配列を置換することによって、機能の達成に必要とされる特異的な配列を決定することができる。
本発明の態様においては、特異的な変異導入に従い、規定の構造的決定因子(すなわちα−ヘリックス、βシート、ターン、表面ループ)または機能的決定因子(DNA結合決定因子、転写制御ドメインなど)に相当するタンパク質の別々の領域を、飽和またはセミランダム変異導入法の対象とする。結果得られた変異カセットを、ほかの点では野生型の対立遺伝子に再導入する。ある分子のある領域で特定の機能が示唆される実験的な証拠が存在する場合や、変異型の興味のあるなしを識別するのに選択および/またはスクリーニングの方法を利用できる場合には、カセット変異導入法が有用である。また、親分子が比較的大きく、その分子に段階的に突然変異を起こさせる(すなわち、同時に残基の1本の線状のカセットを突然変異させて機能をアッセイする)ことによって分子の機能的ドメインをマップしたい場合も、カセット変異導入法が有用である。
配列をコードするtTAまたはrtTAの変異導入は、異なるエフェクター分子と差別的に相互作用する転写レギュレーターの同定を容易にする。例えば、エフェクター結合ポケットを形成する役割を果たす配列の部分に変異導入を制限することができる。こうした特性を調査して、転写レギュレーターとエフェクターの特異的な組み合わせを介して種々の遺伝子を制御することができる(Baron et al.,1999を参照)。エフェクター結合ポケットの修飾は、骨組織に沈着しないテトラサイクリン系化合物の検出におそらく最も欠くことができないと考えられる。遺伝子治療では、ヒトに対する医学で使用されるテトラサイクリン化合物に対して感受性を有さない転写レギュレーターを利用することが有益であろう。
一実施形態において、変異型rtTAタンパク質は、テトラサイクリンまたはその類似体の非存在下で基底レベルの転写活性を変化させる。望ましい実施形態において、rtTAタンパク質では、DNA結合領域内の少なくとも1個のアミノ酸が変化しているのがよい。望ましい実施形態において、この変異はS12G、B19GおよびT26Aからなる群から選択される。また別の実施形態においては、DNA結合領域内の1個の変異によって、テトラサイクリンまたはその類似体の非存在下でtetオペレーターへの基底レベルの親和性が上昇するか低下する。
また別の実施形態において、変異型rtTAタンパク質は、テトラサイクリンまたはその類似体の存在下で、誘導される転写活性を上昇させるか低下させる。望ましい実施形態において、本発明のrtTAタンパク質では、テトラサイクリン結合領域内の少なくとも1個のアミノ酸が変化しているのがよい。望ましい実施形態において、この変異はA56P、R87S、C88の欠失、D95G、G96R、V99E、D148E、H179RおよびE204Kからなる群から選択される。また別の実施形態においては、テトラサイクリン結合領域内の1個の変異によって、ドキシサイクリンまたはその類似体に対する感受性が上昇するか低下する。
本発明の別の態様において、本発明の転写アクチベーター融合タンパク質は、tTAタンパク質の配列変異型である。rTAタンパク質の配列変異型は、そのタンパク質に新規の表現型を付与する少なくとも1個の変異を含有する。
一実施形態において、変異型tTAタンパク質は、テトラサイクリンおよびその類似体による誘導の変化を示す。望ましい実施形態において、本発明のtTAタンパク質では、テトラサイクリン結合領域内の少なくとも1個のアミノ酸が変異しているのがよい。望ましい実施形態において、この変異はA56V、F78S、S85G、S85R、Y110C、L113H、Y132C、I164L、P167S、L170V、I174V、I174TまたはE183Kからなる群から選択される。また別の実施形態において、テトラサイクリン結合領域内の変異は、テトラサイクリンまたはその類似体に対する感受性を上昇させるか低下させる。
例示的な変異は、例えばUS20030208783として公表されている特許明細書に教示されている。変異型tTAまたはrtTAタンパク質の所望の機能特性を保持するこれらまたは他のアミノ酸の位置における他のアミノ酸の置換、欠失または付加も、本発明の適用範囲内である。
V. 核酸分子の発現
A. 発現ベクター
本発明の核酸分子は、上述のような転写レギュレーター融合タンパク質および/またはTREに作動可能に連結された標的核酸配列をコードすることができ、当該技術分野で既知の方法を用いて、宿主細胞での融合タンパク質の発現に好適な形態で、1個以上の組換え発現ベクターに組み込むことができる。
哺乳動物細胞で使用する場合、組換え発現ベクターの制御機能は、ウイルス遺伝子材料によって供給されることが多い。例えば、広く用いられているプロモーターは、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびシミアンウイルス40に由来する。融合タンパク質の発現を司るためにウイルス性制御エレメントを使用することによって、種々の宿主細胞で融合タンパク質を高レベルで恒常的に発現させることが可能になる。望ましい組換え発現ベクターにおいて、融合タンパク質をコードする配列には、上流(5’など)にヒトサイトメガロウイルスIEプロモーターが存在し、下流(3’など)にSV40ポリ(A)シグナルが存在する。ヒトサイトメガロウイルスIEプロモーターに関しては、Boshart et al.(1985)Cell 41:521−530に記載がある。使用することのできる他の遍在的に発現するプロモーターとしては、HSV−Tkプロモーター(McKnight et al.(1984)Cell37:253−262に開示)およびβアクチンプロモーター(Ng et al.(1985)Mol.Cell.Biol.5:2720−2732が記載するようなヒトβアクチンプロモーターなど)が挙げられる。
あるいは、組換え発現ベクターの制御配列は、特定の種類の細胞で優先的に融合タンパク質の発現を司ることができる。すなわち、組織特異的な制御エレメントを使用することができる。使用することのできる組織特異的プロモーターの非制限的な例としては、アルブミンプロモーター(肝特異的;Pinkert et al.(1987)Genes Dev.1:268−277)、T細胞受容体(Winoto and Baltimore(1989)EMBO J.8:729−733)および免疫グロブリン(Baneiji et al.(1983)Cell 33:729−740; Queen and Baltimore(1983)Cell33:741−748)のプロモーターをはじめとするリンパ特異的プロモーター(Calame and Eaton(1988)Adv.Immunol.43:235−275)、神経特異的プロモーター(神経フィラメントプロモーター、Byrne and Ruddle(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA8:5473−5477など)膵特異的プロモーター(Edlund et al.(1985)Science230:912−916)および乳腺特異的プロモーター(乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州特許第264,166号など)が挙げられる。マウスhoxプロモーター(Kessel and Gruss(1990)Science249:374−379)およびαフェトプロテインプロモーター(Campes and Tilghman(1989)GenesDev.3:537−546)など、発生過程で制御を行うプロモーターも含まれる。
あるいは、転写レギュレーター融合タンパク質をコードする自己制御性構築物を作製することができる。これを達成するためには、融合タンパク質をコードする核酸を機能できる状態で、ミニマルプロモーター配列および少なくとも1個のtetオペレーター配列に結合する。こうした核酸を細胞内(組換え発現ベクターなど)に導入すると、「漏出」によって転写レギュレーター遺伝子が少量だけ基底発現する可能性が高い。置換されたテトラサイクリン化合物の存在下で、この少量の転写レギュレーター融合タンパク質は、転写レギュレーターをコードするヌクレオチド配列の上流に位置するtetオペレーター配列に結合し、転写レギュレーターをコードするヌクレオチド配列の転写をさらに促進して、それにより細胞内で転写レギュレーター融合タンパク質をさらに産生させる。こうした自己制御性プロモーターを、Gossen, M. and Bujard, H.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:5547−5551に記載されている野生型Tetリプレッサー融合タンパク質(tTA)などのテトラサイクリンの非存在下でtetオペレーターに結合する他のテトラサイクリン制御転写レギュレーターとともにでも用いることができることは、当業者には理解され得ることである。この転写アクチベーターとともに使用する場合、この転写アクチベーターをコードするヌクレオチド配列の自己制御性の転写は、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物の非存在下で促進される。
本発明の組換え発現ベクターは、米国特許第5,789,156号に記載のようなプラスミドであることができる。あるいは、本発明の組換え発現ベクターは、ウイルスの核酸に導入された核酸を発現させるウイルスまたはその一部であることができる。例えば、複製欠損性レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルスを使用することができる。組換えレトロウイルスを作製し、こうしたウイルスを細胞にin vitroまたはin vivoで感染させるためのプロトコルは、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F.M.et al.(eds) Greene Publishing Associates,(1989),Sections9.10−9.14および他の標準的な研究室マニュアルに記載がある。好適なレトロウイルスの例には、当業者には熟知されているpLJ、pZIP、pWEおよびpEMが含まれる。好適なパッケージングウイルス系の例には、ψCrip、ψCre、ψ2およびψAmが含まれる。アデノウイルスのゲノムを操作して、そのウイルスが転写レギュレーター融合タンパク質をコードし発現するが、正常な溶菌ウイルスの生活環では複製能力の点で不活化されるようにすることができる。例えば、Berkner et al.(1988)BioTechniques6:616; Rosenfeld et al.(1991)Science 252:431−434;およびRosenfeld et al.(1992)Cell68:143−155を参照されたい。アデノウイルス株Adタイプ5 dl324または他の株のアデノウイルス(Ad2、Ad3、Ad7など)に由来する好適なアデノウイルスベクターは当業者には既知である。あるいは、Tratschin et al.(1985)Mol.Cell.Biol.5:3251−3260に記載されているようなアデノ関連ウイルスベクターを用いて、転写レギュレーター融合タンパク質を発現させることができる。
B.宿主細胞
テトラサイクリン化合物を用いて、細胞または生体内の転写を制御することができる。一実施形態において、この細胞は真核細胞である。また別の実施形態において、この細胞は哺乳動物細胞である。本発明の方法は幅広い応用が可能であり、非哺乳動物の真核細胞および非真核細胞も含む。いくつかの例には、細菌、昆虫(Sp.Frugiperdaなど)、酵母(Fleer,R.(1992)Current Opinion in Biotechnology3(5):486−496に概括されているようなS.cerevisiae,S.pombe、P.pastoris,K.lactis,H.polymorphaなど)、真菌および植物細胞が含まれる。酵母S.cerivisaeで発現させるベクターの例には、pYepSec1(Baldari et al.(1987)Embo J.6:229−234)、pMFa(Kujan and Herskowitz,(1982)Cell30:933−943)、pJRY88(Schultz et al.(1987)Gene54:113−123)およびpYES2(米国カリフォルニア州サンディエゴ、Invitrogen Corporation)が含まれる。融合タンパク質は、バキュロウイルス発現ベクターを用いて、昆虫細胞で発現させることができる(例えば、O’Reilly et al.(1992)Baculovirus Expression Vectors:A Laboratory Manual, Stockton Pressに記載のように)。培養昆虫細胞(SF9細胞など)でタンパク質を発現させるのに利用できるバキュロウイルスベクターとしては、pAcシリーズ(Smith et al.(1983)Mol.CellBiol.3:2156−2165)およびpVLシリーズ(Lucklow,V.A., and Summers,M.D.(1989)Virology170:31−39)が挙げられる。
一実施形態において、本発明の方法の融合タンパク質は、その融合タンパク質をコードする核酸を、その中で核酸が宿主細胞中でのその融合タンパク質の発現に好適な形態をとる宿主細胞に導入することによって細胞内で発現する。例えば、融合タンパク質をコードする本発明の方法の組換え発現ベクターを、宿主細胞に導入する。あるいは、制御配列(プロモーター配列など)に機能できる状態で結合するが、追加的なベクター配列を有さない融合タンパク質をコードする核酸を、宿主細胞に導入することができる。
細胞系に加え、本発明の方法は、遺伝子治療のために修飾した細胞またはトランスジェニックまたは相同組換え動物を作製するために修飾した胚細胞などの正常な細胞に応用することができる。遺伝子治療に特に有用な細胞の種類の例としては、造血幹細胞、筋芽細胞、肝細胞、リンパ球、神経細胞および皮膚上皮細胞および気道上皮細胞が挙げられる。また、トランスジェニックまたは相同組換え動物には、胚性幹細胞および受精卵母細胞を修飾して、転写レギュレーター融合タンパク質をコードする核酸を含ませることができる。さらに、植物細胞を修飾してトランスジェニック植物を作製することができる。
C.宿主細胞への核酸分子の導入
融合タンパク質をコードする核酸分子を、従来の形質転換またはトランスフェクション法によって、原核または真核細胞に導入することができる。用語「形質転換」および「トランスフェクション」は、外来の核酸(DNAなど)を宿主細胞に導入する当該技術分野で認識された種々の手法を指し、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAE−デキストランを介するトランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションを含む。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするのに好適な方法については、Sambrook, et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)および他の研究室マニュアルに記載がある。
本発明の方法の核酸によって形質転換した宿主細胞の数は、少なくとも部分的には使用した組換え発現ベクターの種類および使用したトランスフェクション法の種類によって異なる。核酸分子は一時的に宿主細胞に導入することができるか、より典型的には、長期間遺伝子発現を制御するために、核酸は宿主細胞のゲノムに安定に組み込まれるか、安定なエピソームとして宿主細胞に留まる。哺乳動物細胞に導入されたプラスミドベクターが、宿主細胞のDNAに組み込まれることはまれであることが典型的である。これらの構成要素を同定するために、選択マーカー(薬剤耐性など)を含有する遺伝子を一般には所定の核酸とともに宿主細胞に導入する。望ましい選択マーカーは、G418およびヒグロマイシンといった特定の薬物に耐性を付与するマーカーを含む。選択マーカーは、所定の核酸とは別個のプラスミドに導入することもできれば、同じプラスミドに導入されもする。本発明の核酸(組換え発現ベクターなど)および選択マーカーの遺伝子でトランスフェクトされた宿主細胞は、選択マーカーを用いて細胞を選択することによって同定することができる。例えば、選択マーカーがネオマイシン耐性を付与する遺伝子をコードする場合、核酸を取り込んだ宿主細胞はG418で選択することができる。選択マーカー遺伝子を組み込んだ細胞は、他の細胞が死滅しても生存する。
本発明の融合タンパク質をコードする核酸でトランスフェクトした宿主細胞は、さらに、その融合タンパク質の標的となる1個以上の核酸でトランスフェクトすることができる。この標的核酸は、少なくとも1個のtetオペレーター配列に作動可能に連結された、転写対象となるヌクレオチド配列を含む。
核酸分子は、従来のトランスフェクション法(リン酸カルシウム共沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクション、エレクトロポレーションなど)によって、in vitroで培養中に増殖する真核細胞へ導入することができる。また、核酸分子は、例えば核酸を細胞にin vivoで導入するのに好適な送達機序、例えばレトロウイルスベクター(例えば、Ferry, N et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:8377−8381およびKay,M.A.et al.(1992)Human Gene Therapy3:641−647を参照)、アデノウイルスベクター(例えば、Rosenfeld,M.A.(1992)Cell68:143−155およびHerz,J.and Gerard,R.D.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci USA90:2812−2816を参照)、受容体媒介DNA取り込み(例えば、Wu,G.and Wu,C.H.(1988)J.Biol.Chem.263:14621;Wilson et al.(1992)J.Biol.Chem.26:963−967および米国特許第5,166,320号を参照)、DNAの直接注入(例えば、Acsadi et al.(1991)Nature332:815−818およびWolff et al.(1990)Science247:1465−1468)またはパーティクルガン(例えば、Cheng,L.et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:4455−4459およびZelenin, A.V.et al.(1993)FEBS Letters315:29−32を参照)を適用することによって、in vivoで細胞に輸送することができる。このため、遺伝子治療では、細胞はin vitroで修飾して被験体に投与することができるか、あるいは細胞はin vivoで直接修飾することができる。
D.トランスジェニック生物
本発明の1個以上の融合タンパク質をコードする核酸分子を、非ヒト動物の受精卵母細胞に輸送して、1種類以上の細胞で本発明の融合タンパク質を発現するトランスジェニック動物を作製することができる。トランスジェニック動物は、トランスジーンを含有する細胞を有し、そのトランスジーンが出生前、例えば胚の段階でその動物または動物の祖先に導入された動物である。トランスジーンは、ある細胞のゲノムからトランスジェニック動物が発達し、それが成熟した動物のゲノムに留まることによって、そのトランスジェニック動物の1種類以上の細胞または組織においてコードされた遺伝子産物の発現を司るある細胞のゲノムに組み込まれたDNAである。一実施形態において、この非ヒト動物はマウスであるが、本発明はそれに限定はされない。他の実施形態において、トランスジェニック動物はヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシまたはその他の家畜である。こうしたトランスジェニック動物は、タンパク質の大規模生産に有用である(いわゆる「遺伝子農業」)。
トランスジェニック動物は、例えば、(典型的には恒常的または組織特異的なエンハンサーなどのしかるべき制御エレメントに結合した)融合タンパク質をコードする核酸を、例えばマイクロインジェクションによって受精卵母細胞の雄前核に導入し、偽妊娠した里親動物母体でその卵母細胞が発達できるようにすることにより、作製することができる。また、イントロン配列およびポリアデニル化シグナルをトランスジーンに含めて、そのトランスジーンの発現の効率性を上昇させることもできる。トランスジェニック動物、特にマウスなどの動物を作製する方法は当該技術分野で慣習的になっており、例えば、米国特許第4,736,866号および4,870,009号およびHogan,B.et al.(1986)A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y., Cold Spring Harbor Laboratoryに記載がある。トランスジェニックファウンダー動物を用いて、トランスジーンを有する動物をさらに繁殖することができる。本発明の融合タンパク質をコードするトランスジーンを有するトランスジェニック動物をさらに繁殖して、例えばtetオペレーター配列に作動可能に連結された遺伝子を含有するトランスジェニック動物など、他のトランスジーンを有する他のトランスジェニック動物を繁殖することができる。
トランスジェニック動物に加えて、本明細書に記載の制御系は、トランスジェニック植物などの他のトランスジェニック生物に応用することができる。トランスジェニック植物は、当該技術分野で既知の従来の技法によって作製することができる。したがって、本発明は、本発明の転写レギュレーター融合タンパク質を発現する細胞を含有する、動物および植物を含む非ヒトのトランスジェニック生物を包括する(すなわち、転写レギュレーターをコードする核酸を、トランスジェニック生物の細胞の1個以上の染色体に組み込む)。
E.相同組換え生物
また、本発明の方法は、本発明の融合タンパク質を発現し、置換されたテトラサイクリン化合物を投与することのできる、相同組換え非ヒト生物に関わる。用語「相同組換え生物」は、動物の細胞(例えば動物の胚細胞など)に導入した遺伝子およびDNA分子間の相同組換えによって修飾された遺伝子を含有する、動物、植物などの生物を含む。一実施形態において、ヒトでない動物はマウスであるが、本発明はそれに限定されない。融合タンパク質をコードする核酸をゲノムの特定の部位に導入して、すなわち核酸を内在遺伝子と相同組換えさせて動物をつくることができる。
こうした相同組換え動物を作製するため、融合タンパク質をコードし、その融合タンパク質の5’および3’末端に真核生物の遺伝子の追加的な核酸が存在して、そこで相同組換えが起こるようなDNAを含有するベクターを調製する。この融合タンパク質をコードする両側に位置する追加的な核酸は、真核生物の遺伝子と相同組換えが起こり得るだけの十分な長さを有する。典型的には、数千塩基対からなる両側(5’および3’末端の両方)のDNAがベクター中に含まれるのがよい(例えば、相同組換えベクターについては、Thomas,K.R.and Capecchi,M.R.(1987)Cell 51:503を参照)。このベクターを胚性幹細胞系に導入し(例えばエレクトロポレーションによって)、導入されたDNAが内在性のDNAと相同組換えを起こした細胞を選択する(例えば、Li,E.et al.(1992)Cell6:915を参照)。その後、選択した細胞を動物(マウスなど)の胚盤胞に注入して、集合キメラを形成する(例えば、Bradley,A. in Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach, E.J.Roertson, ed.(IRL, Oxford, 1987)pp.113−152を参照)。その後、キメラ胚を好適な偽妊娠里親動物母体に移植し、その胚を出産させる。その生殖細胞に相同組換えDNAを有する子孫動物を用いて、全ての細胞が相同組換えDNAを含有する動物を繁殖することができる。これらの「生殖細胞系列への伝達」が起こった動物をさらに、少なくとも1個のtetオペレーター配列に作動可能に連結された遺伝子を有する動物と交配させることができる。
上述のような相同組換え方法に加えて、酵素を介する部位特異的な組み込み系が当該技術分野で既知であり、本発明の方法の制御系の構成要素に応用して、第二の標的DNA分子内のあらかじめ規定した位置にDNA分子を組み込むことができる。こうした酵素を介する組み込み系の例としては、Creリコンビナーゼ−lox標的系(例えば、Baubonis,W.and Sauer,B.(1993)Nucl.Acids Res.21:2025−2029;およびFukushige,S. and Sauer,B.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:7905−7909に記述のものを参照)およびFLPリコンビナーゼ−FRT標的系(例えば、Dang,D.T.and Perrimon,N.(1992)Dev.Genet.13:367−375;およびFiering,S.et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA9:8469−8473に記述のものを参照)が挙げられる。
VI.標的ヌクレオチド配列の発現の制御
標的ヌクレオチド配列の発現は、上述のような転写レギュレータータンパク質によって制御される。このため、融合タンパク質および標的核酸分子はいずれも宿主細胞または生体中に存在する。多数の異なる方法で、同じ宿主細胞または生体中に転写レギュレーター融合タンパク質および標的転写ユニットを存在させることができる。例えば、発現系の1個の核酸(転写レギュレーター融合タンパク質をコードするなど)を宿主細胞に導入した後に、他の核酸分子を同じ宿主細胞に導入することができる。2個の異なる選択マーカーを用いて選択することができる。第一の核酸の取り込みはG418によって選択でき、第二の核酸の取り込みはヒグロマイシンによって選択できる。あるいは、細胞の単一の集合に、その系の両方の構成要素に対応する核酸をトランスフェクトすることができる。
したがって、本発明の方法は、以下を含む核酸組成物を提供する。
−転写を調節する融合タンパク質をコードする第一の核酸。この融合タンパク質は、真核細胞で転写を活性化する第二のポリペプチドに、作動可能に連結された置換されたテトラサイクリン化合物の存在または非存在下でtetオペレーター配列に結合する第一のポリペプチドを含む。
−少なくとも1個のtetオペレーター配列に作動可能に連結された、転写対象のヌクレオチド配列を含む第二の核酸。
この2個の核酸は、2個の異なる分子上に(例えば2種類のベクターに)存在することができる。この場合、宿主細胞にこの2個の核酸分子を同時にトランスフェクトするか、2個の核酸分子を最初にトランスフェクトした後に残る核酸分子を連続的にトランスフェクトする。別の実施形態においては、この2個の核酸を同一の分子(単一のベクターなど)中で(同一線上に並んで)結合させる。この場合、宿主細胞にはその単一の核酸分子をトランスフェクトする。
宿主細胞は、in vitroで培養した細胞またはin vivoに存在する細胞(遺伝子治療で標的になる細胞など)であることができる。この宿主細胞はさらに受精卵母細胞、胚性幹細胞または、非人トランスジェニックまたは相同組換え動物を作製するのに使用される他のあらゆる胚細胞であることができる。発現系の両方の核酸分子構成要素を含むトランスジェニックまたは相同組換え動物は、胚段階で同一の細胞に両方の核酸を導入することによって作製することができ、より望ましくは、そのゲノムにその系の1個の核酸構成要素を有する動物を、そのゲノムにその系のもう1個の核酸構成要素を有する動物と交配させる。その後、両方の核酸構成要素を受け継いだ子孫を、標準的な技法によって同定することができる。
A.2個のヌクレオチド配列の協調的な発現制御
単一の転写されたヌクレオチド配列の発現を制御する系を提供することに加えて、本発明の方法はさらに、同一のtetオペレーター配列に作動可能に連結された2個のヌクレオチド配列の発現を協調的に制御することを可能にする。したがって、本発明の方法は、二個の遺伝子の協調的な制御のための新規のtet制御転写ユニットにも関する。この転写ユニットでは、同一のtetオペレーター配列が、共通のtetオペレーター配列から逆方向で転写された2個の作動可能に連結されたヌクレオチド配列の発現を制御する。したがって、1個のヌクレオチド配列がtetオペレーター配列の片側(例えば、DNAのトップ鎖の5’末端)に機能できる状態で結合し、もう1個のヌクレオチド配列がtetオペレーター配列の反対側(例えばDNAのトップ鎖の3’末端)に機能できる状態で結合する。また、転写対象の各ヌクレオチド配列が、転写対象のヌクレオチド配列とtetオペレーター配列の間に位置する作動可能に連結されたミニマルプロモーター配列を含むことは理解される必要がある。
こうした転写ユニットの代表的な例が、米国特許第5,789,176号の図6に図示されている。このベクターでは、同一のtetオペレーター配列に作動可能に連結された2個のヌクレオチド配列が、tetオペレーター配列に対して逆方向で転写される(すなわち、複数の配列が、本発明の転写アクチベーター融合タンパク質による活性化によって、分岐的に転写される)。「tetオペレーター配列に対して逆方向で転写される」という文章は、第一のヌクレオチド配列がDNAの1本の鎖(ボトム鎖など)から5’から3’へと転写され、第二のヌクレオチド配列がDNAのもう一方の鎖(トップ鎖など)から5’から3’へと転写されて、tetオペレーター配列からのニ方向の転写が実現される。
したがって、本発明の方法は、2個のヌクレオチド配列の協調制御されたニ方向の転写のための組換えベクターに関することができる。このベクターは、5’から3’の方向で、少なくとも1個のtetオペレーター配列に機能できる状態で結合し、転写対象の第二のヌクレオチド配列に作動可能に連結された第一のヌクレオチド配列を含んだ、リン酸ジエステル結合によって結合したヌクレオチド配列を含み、そこでは第一および第二のヌクレオチド配列の転写が少なくとも1個のtetオペレーター配列から逆方向で行われる(すなわち、第一および第二のヌクレオチド配列は分岐的に転写される)。
ベクターは転写対象となる第一および第二のヌクレオチド配列を含まないことができるが、その代わりに所定のヌクレオチド配列のベクターへの導入を可能にするクローニング部位を含むことができる。したがって、ベクターは、5’から3’の方向で、少なくとも1個のtetオペレーター配列に機能できる状態で結合し、転写対象の第二のヌクレオチド配列の導入のための第二のクローニング部位に作動可能に連結された、転写対象の第一のヌクレオチド配列の導入のための第一のクローニング部位を含み、ヌクレオチド配列を含むことができ、そこではそのベクターに導入された第一および第二のヌクレオチド配列の転写が少なくとも1個のtetオペレーター配列から逆方向で行われる。この種の「クローニングベクター」は、ミニマルプロモーター配列も含み、第一のクローニング部位に導入された第一のヌクレオチド配列が機能できる状態で第一のミニマルプロモーターに結合し、第二のクローニング部位に導入された第二のヌクレオチド配列が機能できる状態で第二のミニマルプロモーターに結合するような形態をとることができることは、当業者には理解されるはずである。あるいは、「クローニングベクター」は、ミニマルプロモーター配列を含まず、その代わりに結合したミニマルプロモーター配列を含むヌクレオチド配列がそのベクターのクローニング部位に導入されている形態をとることができる。
用語「クローニング部位」は少なくとも1個の制限エンドヌクレアーゼ部位を含む。典型的には、複数の異なる制限エンドヌクレアーゼ部位(ポリリンカーなど)が核酸内に含まれる。
2個のヌクレオチド配列のニ方向の転写を協調的に制御するためのベクターは、検出可能なマーカー(ルシフェラーゼまたはβガラクトシダーゼなど)をコードするような転写対象の第一のヌクレオチドおよび所定の第二のヌクレオチド配列を導入するためのクローニング部位も含むことができる。
転写対象の2個のヌクレオチド配列の転写を協調的に制御するためのベクターに使用するニ方向プロモーター領域の好適な例は、米国特許第5,789,156号に記載がある。
B. 複数のヌクレオチド配列の独立した発現制御
本発明の方法はさらに、転写対象となる2個以上のヌクレオチド配列の独立または対立した制御を可能にする。したがって、2個以上の遺伝子の独立した制御のためのtet制御転写ユニットを使用することができる。転写対象となる2個のヌクレオチド配列の発現を独立して制御するためには、1個のヌクレオチド配列をあるクラスのtetオペレーター配列に機能できる状態で結合させることができ、もう1個のヌクレオチド配列を別のクラスのtetオペレーター配列に機能できる状態で結合させる。
したがって、2個のヌクレオチド配列の転写をそれぞれ独立して制御するためのベクターを使用することができる。こうしたベクターは、少なくとも1個の第一のクラスのtetオペレーター配列に作動可能に連結された、転写対象となる第一のヌクレオチド配列および少なくとも1個の第二のクラスのtetオペレーター配列に作動可能に連結された、転写対象となる第二のヌクレオチド配列を含むことができる。この2個の独立した制御を行う転写ユニットは、単一のベクターに含めることができるか、2個の異なるベクターに含めることができる。転写対象となるヌクレオチド配列を含有する組換えベクターを、前述のように宿主細胞または動物に導入することができる。
ベクターは転写対象となる第一および第二のヌクレオチド配列を含まないことができるが、その代わりに所定のヌクレオチド配列のベクターへの導入を可能にするクローニング部位を含むことができる。したがって、ベクターは、
−少なくとも1個の第一のクラスのtetオペレーター配列に機能できる状態で結合し、転写対象の第一のヌクレオチド配列の導入のための第一のクローニング部位および
−少なくとも1個の第二のクラスのtetオペレーター配列に機能できる状態で結合し、転写対象の第二のヌクレオチド配列の導入のための第二のクローニング部位を含むことができる。
このクローニングベクターは、第一および第二のクローニング部位にそれぞれ作動可能に連結された第一および第二のミニマルプロモーターをすでに含んだ形態をとることができる。あるいは、作動可能に連結されたミニマルプロモーターを含む、転写対象のヌクレオチド配列をクローニングベクターに導入することができる。
2個のヌクレオチド配列をそれぞれ独立して制御するためのベクターは、検出可能なマーカーまたは自殺遺伝子をコードするような、少なくとも1個の第一のクラスのtetオペレーター配列に作動可能に連結された転写対象の第一のヌクレオチドおよび、少なくとも1個の第二のクラスのtetオペレーター配列に機能できる状態で結合させるために所定の第二のヌクレオチド配列を導入するためのクローニング部位も含むことができる。
2個のヌクレオチド配列をそれぞれ独立して制御するために、tetオペレーター配列の種々の組み合わせを使用することができることは、当業者によって理解され得ることである。例えば、第一のtetオペレーター配列はクラスAであり第二はクラスBであることができるか、第一のtetオペレーター配列はクラスBであり第二はクラスCであることができる。望ましくは、使用する2個のtetオペレーターの一つはクラスBのオペレーターである。
第一および第二のヌクレオチド配列の独立した転写は、異なるクラスのtetオペレーター配列に独立して結合する2種類の転写レギュレーター融合タンパク質をコードする1個以上の核酸をさらに宿主細胞に導入することによって、宿主細胞中で制御される。第一の融合タンパク質は、真核細胞で転写を活性化するポリペプチドに作動可能に連結された、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン類似体の存在下でtetオペレーター配列と結合するポリペプチドを含む(例えば、VP16活性化領域に結合した変異型Tn10由来Tetリプレッサーなどの本発明の転写アクチベーター融合タンパク質など)。第二の融合タンパク質は、真核細胞で転写を活性化するポリペプチドに作動可能に連結された、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン類似体の非存在下でtetオペレーター配列と結合するポリペプチドを含む(例えば、Gossen,M.and Bujard,H.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA8:5547−5551に記載のtTAなどの、VP16活性化領域に結合した野生型Tn10由来Tetリプレッサー)。第一の融合タンパク質は、転写ユニット中に使用される第一のクラスのtetオペレーター配列に結合することができ、第二の融合タンパク質は、転写ユニット中に使用される第二のクラスのtetオペレーター配列に結合することができる。あるいは、別の実施形態においては、第一の融合タンパク質は第二のクラスのtetオペレーターに結合し、第二の融合タンパク質は第一のクラスのtetオペレーターに結合する。
例えば、転写対象の第一のヌクレオチド配列をクラスAのtetオペレーターに結合させて、第一の融合タンパク質をクラスAのオペレーターに結合させることができ、転写対象の第二のヌクレオチド配列をクラスBのtetオペレーターに結合させて、第二の融合タンパク質をクラスBのオペレーターに結合させることができる。このため、この実施形態では、第一のヌクレオチド配列の転写はテトラサイクリン(またはその類似体)の存在下で活性化し、第二のヌクレオチド配列の転写はテトラサイクリン(またはその類似体)の非存在下で活性化する。あるいは、別の実施形態においては、第一の融合タンパク質はクラスBのオペレーターに結合し、第二の融合タンパク質はクラスAのオペレーターに結合する。この場合、第二のヌクレオチド配列の転写はテトラサイクリン(またはその類似体)の存在下で活性化し、第一のヌクレオチド配列の転写はテトラサイクリン(またはその類似体)の非存在下で活性化する。この系で使用するしかるべき転写アクチベータータンパク質は、本明細書で言及するGossen and Bujard(1992)などのように当該技術分野で既知のように設計することができる。同一の細胞中に存在する2種類のTetリプレッサー融合タンパク質間でヘテロ二量体形成を起こさないためには、転写レギュレーター融合タンパク質の片方または両方の二量体化領域を変異させる必要がある。変異の標的は、二量体化に関わることが知られているTetRのC末端領域とすることができる。二量体化領域は、TetRの結晶構造に基づき詳細に記述されてきた(Hinrichs,W.et al.(1994)Science264:418−420を参照)。
この系は、置換されたテトラサイクリン化合物による2個の遺伝子の発現の独立または対立した制御を可能にする。誘導物質として異なる置換されたテトラサイクリン化合物を使用すると、さらに種々の配列の高レベル、低レベルまたは中間レベルの発現が可能になる。上述のような、2個の遺伝子の発現を独立して制御するための本発明の方法の転写ユニットを、2個の遺伝子産物を同一の細胞中で発現させなければならないが、1個の遺伝子産物を発現させてもう1個の遺伝子産物は「オフ」にするか、その反対が望ましいような状況において使用することができる。例えば、この系は、同一の宿主細胞中で治療遺伝子または自殺遺伝子(すなわち、リシンまたは単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼなど、細胞を破壊するのに使用することのできる産物をコードする遺伝子)のいずれかを発現させるのに特に有用である。遺伝子治療の多くの状況において、宿主細胞中で治療目的のために遺伝子を発現させることができるが、一旦治療が完了すればその宿主細胞を破壊できることが望まれる。これは、治療遺伝子とあるクラスのtetオペレーターを結合させ、自殺遺伝子を別のクラスのtetオペレーターと結合させることによって、上述のような系を用いて実現することができる。このため、宿主細胞中の治療遺伝子の発現は置換されたテトラサイクリン化合物によって促進される(自殺遺伝子が発現していない場合)。次に、治療が完了したら、置換されたテトラサイクリンを除去し、それによって細胞中で治療遺伝子の発現がオフになり、自殺遺伝子の発現がオンになる。
C.複数のヌクレオチド配列の協調および独立した発現制御の統合
さらに、上述の2つの系で記述された系を統合して、2対の配列を協調させて制御しながらも、1対がもう1対とは独立して制御されるようにすることによって、4個のヌクレオチド配列の発現を制御することも可能である。したがって、以下を含む2個の標的転写ユニットを設計することができる。
−5’から3’の方向で、転写対象の第一のヌクレオチド配列、第一のクラスのtetオペレーター配列、転写対象の第二のヌクレオチド配列を含む第一の核酸。
−5’から3’の方向で、転写対象の第三のヌクレオチド配列、第二のクラスのtetオペレーター配列、転写対象の第四のヌクレオチド配列を含む第二の核酸。
第一の核酸中で、第一および第二のヌクレオチド配列は、第一のクラスのtetオペレーター配列から分岐して転写される。同様に、第二の核酸中で、第三および第四のヌクレオチド配列は、第二のクラスのtetオペレーター配列から分岐して転写される。このため、第一および第二のヌクレオチド配列の発現は協調して制御され、第三および第四のヌクレオチド配列の発現は協調して制御される。しかし、上述のように、片方は置換されたテトラサイクリン化合物の存在下で転写を促進し、もう片方は置換されたテトラサイクリン化合物の非存在下で転写を促進するという2種類の転写アクチベーター融合タンパク質を使用することにより、第一および第二の配列の発現は、第三および第四の配列に対して独立して(反対に)制御される。一方の転写アクチベーターは第一のクラスのtetオペレーターに結合するように設計し、他方は第二のクラスのtetオペレーターに結合するように設計する。他の実施形態においては、これらの転写ユニットは転写対象の第一、第二、第三および/または第四のヌクレオチド配列を最初から含むのではなく、転写対象の第一、第二、第三および/または第四のヌクレオチド配列を導入することを可能にするクローニング部位を含む。
VII.本発明のキット
本発明の別の態様は、本発明の誘導制御系の構成要素を含むキットに関する。こうしたキットを用いて、所定の遺伝子(転写対象の所定のヌクレオチド配列など)の発現を制御し、それを標的転写ユニットにクローン化することができる。このキットは、転写アクチベーター融合タンパク質または転写サイレンサー融合タンパク質またはその両方をコードする核酸を含むことができる。あるいは、安定に組み込まれた転写アクチベーターおよび/またはインヒビター融合タンパク質をコードする核酸を有して、その転写アクチベーターおよび/またはインヒビター融合タンパク質がその真核細胞内で発現するようにした真核細胞をキット内で提供することができる。
一実施形態において、キットは狭い区画に少なくとも2個の容器手段を有するキャリア手段を含む。第一の容器手段は、本発明の転写レギュレーター融合タンパク質をコードする第一の核酸(DNAなど)を含み(真核細胞で転写を活性化する第二のポリペプチドに作動可能に連結された、テトラサイクリンの存在下でtetオペレーター配列と結合する第一のポリペプチドをコードする組換え発現ベクターなど)、第二の容器手段は、所定のヌクレオチド配列をクローン化することのできる転写レギュレーターのための第二の標的核酸(DNAなど)を含む。第二の核酸は、典型的には転写対象のヌクレオチド配列を導入するためのクローニング部位(場合により作動可能に連結されたミニマルプロモーター配列)および少なくとも1個の作動可能に連結されたtetオペレーター配列を含む。用語「クローニング部位」は、少なくとも1個の制限エンドヌクレアーゼ部位を含むことを意図する。典型的には、複数の異なる制限エンドヌクレアーゼ部位(ポリリンカーなど)がこの核酸内に含まれる。
キットの構成要素を用いて所定のヌクレオチド配列の発現を制御するには、そのヌクレオチド配列を、従来の組換えDNA法によって、キットの標的ベクターのクローニング部位にクローン化し、その後第一および第二の核酸を宿主細胞または動物に導入する。宿主細胞または動物中に発現した転写レギュレーター融合タンパク質は、その後置換されたテトラサイクリン化合物の存在下で所定のヌクレオチド配列の転写を制御する。
あるいは、また別の実施形態において、キットは本発明の転写レギュレーター融合タンパク質をコードする核酸を安定にトランスフェクトした真核細胞を含み、その転写レギュレーターが細胞内で発現する。このため、上述の第一の容器手段は、核酸を単独で含むのではなく、(例えば、リン酸カルシウム共沈殿またはエレクトロポレーションなどの従来の方法による安定なトランスフェクションによって)転写レギュレーターをコードする第一の核酸が安定に導入された真核細胞系を含むことができる。この実施形態においては、所定のヌクレオチド配列をキットの標的ベクターのクローニング部位にクローン化し、その後その標的ベクターを、転写レギュレーター融合タンパク質を発現する真核細胞へ導入する。
あるいは、またはそれに加えて、2個のヌクレオチド配列の発現を協調して制御するための本発明の組換えベクターも、本発明のキットに組み込むことができる。このベクターは、所定の2個のヌクレオチド配列のベクターへの導入を可能にするような形態でキットに含められる。このため、また別の実施形態においては、本発明のキットは、1)本発明の転写レギュレーター融合タンパク質をコードする第一の核酸(またはその核酸が安定に導入された真核細胞)および2)5’から3’の方向で、所定の第二のヌクレオチド配列を導入するための第二のクローニング部位に作動可能に連結された少なくとも1個のtetオペレーター配列に作動可能に連結された所定の第一のヌクレオチド配列を導入するための第一のクローニング部位を含むヌクレオチド配列を含む第二の核酸を含み、そこでは第一および第二のヌクレオチド配列の転写は少なくとも1個のtetオペレーター配列から逆方向で行われる。場合により、ベクターは作動可能に連結されたミニマルプロモーター配列を含むことができる。また別の実施形態において、ベクターは、転写対象の1個のヌクレオチド配列(ルシフェラーゼ、βガラクトシダーゼまたはCATなどの検出マーカーをコードするものなど)および転写対象の所定の第二のヌクレオチド配列を導入するためのクローニング部位をすでに含むような形態をとることができる。
転写対象の2個のヌクレオチド配列の発現を独立して制御するための、本発明の転写ユニットおよび転写レギュレーターも、本発明のキットに組み込むことができる。標的転写ユニットは、転写対象の所定のヌクレオチド配列の転写ユニットへの導入を可能にするような形態をとることができる。このため、また別の実施形態においては、本発明のキットは、1)置換されたテトラサイクリン化合物の存在下で第一のクラスのtetオペレーターに結合する転写レギュレーターをコードする第一の核酸、2)少なくとも1個の第一のクラスのtetオペレーターに作動可能に連結された転写対象の第一のヌクレオチド配列を導入するための第一のクローニング部位を含む第二の核酸、3)置換されたテトラサイクリン化合物の非存在下で第二のクラスのtetオペレーターに結合する転写レギュレーターをコードする第三の核酸および4)少なくとも1個の第二のクラスのtetオペレーターに作動可能に連結された転写対象の第二のヌクレオチド配列を導入するための第二のクローニング部位を含む第四の核酸を含む(場合により、ミニマルプロモーター配列を第二および第四の核酸に含める)。また別の実施形態において、転写対象の1個のヌクレオチド配列(自殺遺伝子をコードするものなど)を第二または第四の核酸のいずれかにすでに含めておく。また別の実施形態においては、転写レギュレーターをコードする核酸(上述の第一および第三の核酸など)を、キットに提供される真核細胞に安定に導入することができる。
また別の実施形態において、本発明のキットは、本発明の転写サイレンサー融合タンパク質(例えば、この融合タンパク質は真核細胞でテトラサイクリンが存在する場合のみ、またはテトラサイクリンが不在である場合のみに転写を阻害する)をコードする第一の核酸を含有する第一の容器手段および、少なくとも1個のtetオペレーター配列に作動可能に連結された転写対象のヌクレオチド配列を導入するためのクローニング部位を含む第二の核酸を含む第二の容器手段を含む。さらにこのキットは、テトラサイクリンが存在する場合のみ、またはテトラサイクリンが不在である場合のみにtetO配列に結合する転写アクチベーター融合タンパク質をコードする第三の核酸を含むことができる。あるいは、第一および/または第三の核酸(転写インヒビターまたは転写アクチベーター融合タンパク質をコードするものなど)は、キット内に提供される真核宿主細胞に安定に組み込むことができる。
また別の実施形態において、本発明のキットは少なくとも1個の置換されたテトラサイクリン化合物を含むことができる。例えば、キットは本明細書に記載の置換されたテトラサイクリン化合物を含む容器手段を含むことができる。
VIII.置換されたテトラサイクリン化合物による遺伝子発現の制御
A. 転写アクチベーター融合タンパク質による遺伝子発現の促進
本発明の転写アクチベーター融合タンパク質およびtetオペレーター配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列をコードする核酸(すなわち、転写対象の所定の遺伝子)を有する宿主細胞においては、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物の非存在下では、tetオペレーター配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列の高レベルの転写は起こらない。ヌクレオチド配列の基底転写のレベルは、宿主細胞および配列の組み込み部位によって左右されるが、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物の非存在下では一般には低いか検出されないレベルである。宿主細胞内での転写を誘導するために、宿主細胞を本発明の置換されたテトラサイクリン化合物と接触させる。置換されたテトラサイクリン化合物は、その細胞を含む被験体に投与することができる。
in vitroで細胞内の遺伝子発現を誘導するには、置換されたテトラサイクリン化合物を含有する培地でその細胞を培養することによって、細胞を置換されたテトラサイクリン化合物と接触させる。置換されたテトラサイクリン化合物の存在下でin vitroで細胞を培養する場合、誘導物質の望ましい濃度は約10〜約1000ng/mLである。置換されたテトラサイクリン化合物は、細胞がすでに培養されている培地に直接添加するか、高レベルの遺伝子誘導を行うのにより望ましくは、置換されたテトラサイクリン化合物を含まない培地から細胞を回収し、所望の置換されたテトラサイクリン化合物を含有する新鮮培地で培養するのがよい。
in vivoで遺伝子発現を誘導するには、被験体に本発明の置換されたテトラサイクリン化合物を投与することによって、被験体内の細胞と本発明の置換されたテトラサイクリン化合物を接触させる。例示的な実施形態において、誘導物質をヒトまたは動物に投与する場合、用量は望ましくは血清濃度が約0.0005〜1.0μg/mLになるように調節する。置換されたテトラサイクリン化合物は、遺伝子誘導に十分なin vivo濃度が得られるのに有効なあらゆる手段によって、被験体に投与することができる。好適な投与方法の例には、経口投与(誘導物質を飲用水に溶解するなど)、徐放性ペレットおよび拡散ポンプの植込みが含まれる。本発明の置換されたテトラサイクリン化合物をトランスジェニック植物に投与するには、誘導物質を植物に投与する水に溶解することができる。
こうした発現系が実現される精度をさらに高める置換されたテトラサイクリン化合物は、本発明の方法に関わる。この系において誘導物質として種々のテトラサイクリン類似体を使用する能力は、tetオペレーターに結合するヌクレオチド配列の発現レベルの調節を可能にする。米国特許第5,789,156号が明らかにするように、アンヒドロテトラサイクリンおよびドキシサイクリンは強力な誘導物質になり得ることが明らかにされている。標的配列の転写は典型的には1000〜2000倍促進され、誘導因子は20000倍を達成する。テトラサイクリン、クロロテトラサイクリンおよびオキシテトラサイクリンは、誘導物質として弱いことが明らかになっている。すなわち、この場合、標的配列の転写は約10倍程度しか促進されない。このため、適切な置換されたテトラサイクリン化合物は、遺伝子発現の所望の誘導レベルに基づいた誘導物質として選択する。また、誘導物質として使用する置換されたテトラサイクリン化合物を変更することによって、宿主細胞または動物での遺伝子発現のレベルを時間の経過とともに変化させることも可能である。例えば、最初に強力な遺伝子発現を行わせ、その後持続的に低レベルの遺伝子発現を行わせるのが望まれるような状況があり得る。したがって、高レベルの転写を促進する置換されたテトラサイクリン化合物を最初に誘導物質として使用し、その後、その誘導物質を低レベルの転写を促進する類似体に切り替える。さらに、複数のヌクレオチド配列の発現を制御する場合(例えば、1個の配列をあるクラスのtetオペレーター配列で制御し、もう1個を別のクラスのtetオペレーター配列で制御するなど)、本明細書に記載の通り、各配列の発現レベルは、転写を制御するのにどの転写アクチベーター融合タンパク質を使用するか、また誘導物質としてどの置換されたテトラサイクリン化合物を使用するかによって独立して左右されることが考え得る。異なる転写アクチベーター融合タンパク質は、置換されたテトラサイクリン化合物に異なるレベルの応答性示す可能性が高い。転写アクチベーター融合タンパク質と誘導物質(テトラサイクリンまたはテトラサイクリン類似体)の特定の組み合わせによる遺伝子発現の誘導レベルは、上述の技法によって決定することができる(実施例2などを参照)。また、遺伝子発現のレベルは、誘導物質の濃度を変化させることによって調節することができる。このように、本発明の方法の発現系は、遺伝子発現をオンまたはオフにするためだけではなく、使用する置換されたテトラサイクリン化合物の種類および濃度に基づいて中間レベルにおける遺伝子発現のレベルを「微細に調節する」ための機序を提供する。
B.転写サイレンサー融合タンパク質による遺伝子発現の阻害
また、本発明の方法は、転写サイレンサー融合タンパク質を用いた遺伝子発現の阻害にも関する。これらの方法を用いて、所定のtetO結合遺伝子の基底、恒常的または組織特異的な転写をダウンレギュレートすることができる。例えば、tetO配列に作動可能に連結された所定の遺伝子および追加的な正の制御エレメント(恒常的または組織特異的なエンハンサー配列など)は、宿主細胞中のその正の制御エレメントの強度によって主として決定されるレベルで、宿主細胞中に転写される。さらに、tetO配列に作動可能に連結された所定の遺伝子およびミニマルプロモーター配列のみが、宿主細胞または組織および/またはその配列の組み込み部位に応じた転写の種々の基底レベルを示すことができる。こうした標的配列を含み、本発明のインヒビター融合タンパク質を発現する宿主細胞では、標的配列の転写は、その宿主細胞と接触する置換されたテトラサイクリン化合物の濃度を変化させることによって、制御された方法でダウンレギュレートすることができる。例えば、インヒビター融合タンパク質が置換されたテトラサイクリン化合物の非存在下でtetOに結合する場合、宿主細胞と接触する置換されたテトラサイクリン化合物の濃度を低下させて、標的核酸配列の発現を抑制する。望ましくは、宿主細胞は置換されたテトラサイクリン化合物の非存在下で培養して、標的核酸配列の発現を抑制したままにする。同様に、置換されたテトラサイクリン化合物を宿主生物に投与せず、標的核酸配列の発現を抑制したままにする。あるいは、インヒビター融合タンパク質が置換されたテトラサイクリン化合物の存在下でtetOに結合する場合、宿主細胞に接触した置換されたテトラサイクリン化合物の濃度を上昇させて、標的核酸配列の発現を抑制する。例えば、置換されたテトラサイクリン化合物を宿主細胞の培地に添加するか、置換されたテトラサイクリン化合物を宿主生物に投与して、標的核酸配列の発現を抑制する。
インヒビター融合タンパク質は、tetO配列がミニマルプロモーター配列(上述のような置換されたテトラサイクリン化合物が制御する転写ユニットなど)の5’に位置する所定のtetO結合遺伝子を抑制することができる。さらに、インヒビター融合タンパク質を用いて、tetO結合配列がプロモーター配列の3’であって転写開始部位の5’に位置する所定の遺伝子の発現を抑制することができる。さらに、インヒビター融合タンパク質を用いて、tetO結合配列が転写開始部位の3’に位置する所定の遺伝子の発現を抑制することができる。
C.遺伝子発現の正および負の制御の統合
転写アクチベーターまたはインヒビター融合タンパク質のいずれかを単独で用いて遺伝子発現を制御するのに加えて、この2種類の融合タンパク質を組み合わせて用いて、宿主細胞中の1個以上の標的核酸配列の発現の正および負の制御を可能にすることができる。このため、(i)置換されたテトラサイクリン化合物の存在下ではなく非存在下で、または(ii)置換されたテトラサイクリン化合物の非存在下ではなく存在下でtetOに結合する転写サイレンサータンパク質を、(i)置換されたテトラサイクリン化合物の存在下ではなく非存在下で、または(ii)置換されたテトラサイクリン化合物の非存在下ではなく存在下でtetOに結合する転写アクチベータータンパク質と組み合わせて用いることができる。無置換されたテトラサイクリン(野生型TetR−アクチベーター融合タンパク質など)の存在下ではなく非存在下でtetOに結合する転写アクチベータータンパク質のさらなる詳細は、米国特許出願第08/076,726号、米国特許出願第08/076,327号および米国特許出願第08/260,452号に記載がある。置換されたテトラサイクリン化合物の非存在下ではなく存在下でtetOに結合する転写アクチベーター融合タンパク質(変異型TetR−アクチベーター融合タンパク質など)は当該技術分野で既知である。
本明細書に記載のように、1個以上のTetR融合タンパク質が宿主細胞または生物で発現する場合、追加の段階を踏んで異なるTetR融合タンパク質間のヘテロ二量体化を阻害することができる。例えば、あるクラスのTetRからなる転写アクチベーターを、第一のクラスのTetRとヘテロ二量体化しない第二の異なるクラスのTetRからなる転写サイレンサーと組み合わせて用いることができる。あるいは、二量体化に関わるTetRのアミノ酸残基を変異させて、ヘテロ二量体化を阻害することができる。ただし、転写アクチベーターおよび転写インヒビター融合タンパク質の間で若干のヘテロ二量体化が宿主細胞で起こっても、十分量のホモ二量体が生成されれば、本明細書に記載のような十分な正および負の制御が行われることができる。
アクチベーターおよびインヒビターの種々の組み合わせを用いて、本明細書に記載の教示内容を用いて、正および負の両方の方法で所定の単一のtetO結合遺伝子を制御するか、協調的にまたは独立的に所定の複数のtetO結合遺伝子を制御することができることは、当業者には理解され得ることである。使用する精確な制御構成要素は、制御対象の遺伝子および所望の制御の種類によって異なる。いかにして転写アクチベーターおよびインヒビター融合タンパク質を組み合わせて使用するかについてのいくつかの非制限的な例を下にさらに記載する。ただし、ほかにも多くの組み合わせが可能であることは、本明細書の教示内容をみれば当業者には明らかであり、本発明に包含されることを意図するものである。
IX.本発明の応用例
本発明は、遺伝子発現をオンおよびオフにするか、多面発現性または細胞毒性を引き起こすことなく、迅速、効率的かつ制御された方法で遺伝子発現のレベルを制御するのが望ましいような、当該技術分野で認識される種々の状況に幅広く応用することができる。このため、本発明の方法の系は、真核細胞、植物および動物における細胞発達および分化の研究に幅広く応用することができる。例えば、癌遺伝子の発現を制御された方法で制御して、その機能を研究することができる。また、その系を利用して、CREまたはFLPなどの部位特異的リコンビナーゼの発現を制御し、それによって発達の特定の段階において、制御された条件下でトランスジェニック生物の遺伝子型を不可逆的に改変することができる。例えば、特定のトランスジェニック植物の選択を可能にするような、トランスジェニック植物のゲノムに挿入した薬物耐性マーカーを、置換されたテトラサイクリン化合物が制御する部位特異的リコンビナーゼを介して不可逆的に除去することができた。本発明の方法の制御系のこのほかの応用例には以下が含まれる。
A.遺伝子治療
本発明の方法は、遺伝性または後天性疾患のいずれかに対する治療で、遺伝子治療のアプローチに用いることができる。遺伝子治療の一般的なアプローチは、核酸を細胞に導入して、その導入された遺伝子材料によってコードされる1個以上の遺伝子産物がその細胞で産生されて機能的活性を回復するか強めるようにするものである。遺伝子治療のアプローチに関する再検討については、Anderson,W.F.(1992)Science256:808−813;Miller,A.D.(1992)Nature357:455−460;Friedmann,T.(1989)Science244:1275−1281;およびCournoyer,D.,et al.(1990)Curr.Opin.Biotech.1:196−208を参照されたい。ただし、現在の遺伝子治療のベクターは典型的には、内在性の転写因子に応答する恒常的な制御エレメントを用いる。これらのベクター系は、対象における遺伝子発現レベルを調節することはできない。これとは異なり、本発明の方法の誘導制御系はこの能力を提供することができる。
本発明の置換されたテトラサイクリン化合物が制御する制御系は、遺伝子治療への応用に特に好適な数多くの有益な特性を有する。例えば、この系は遺伝子発現の「オン/オフ」スイッチを提供して、対象内での遺伝子産物の量を制御することができる。単に規定のレベルで恒常的に遺伝子産物を発現するのではなく、特定のレベルまたは制御された時期に、またはその両方で遺伝子産物を提供することができることが望ましい状況がいくつかある。例えば、所定の遺伝子を固定された間隔で(毎日、隔日、毎週など)「オン」にスイッチして、最も有効な時期に、最も有効なレベルの所定の遺伝子産物を提供することができる。対象内で産生された遺伝子産物のレベルは標準的な方法でモニターすることができる(ELISAまたはRIAなどの免疫学的アッセイを用いた直接的なモニタリングまたは血糖値などの所定の遺伝子産物の機能に基づいた臨床検査パラメーターによる間接的なモニタリングなど)。対象内で不連続の間隔をおいて遺伝子の発現を「オン」にしつつも、他の時期にはその遺伝子を「オフ」のままにしておくことができる能力により、間欠的な間隔で所定の遺伝子産物を持続的に投与する必要がなくなる。このアプローチにより、疼痛を伴うか副作用を引き起こすか、またはその両方が起こる可能性があり、持続的な通院が必要となる可能性が高い遺伝子産物の反復投与の必要を避けることができる。本発明の系はこうした欠点を避けることができる。さらに、対象内で不連続の間隔をおいて遺伝子の発現を「オン」にする能力により、活動の「再燃」が関与する疾患(多くの自己免疫性疾患など)に対し、疼痛および症状が明らかな急性期で治療が必要な時期のみに集中した治療を行うことができる。こうした疾患の寛解期にはこの発現系は「オフ」の状態に保っておくことができる。
不連続の間隔をおいて遺伝子発現を調節するこの能力から特に利益を得られる遺伝子治療の応用には、以下の非制限的な例が含まれる。
リウマチ性関節炎:炎症性サイトカイン(TNF、IL−1およびIL−12など)の産生を抑制する遺伝子産物をコードする遺伝子を対象内で発現させることができる。こうした阻害物質の例には、サイトカインの可溶性受容体が含まれる。また、またはあるいは、サイトカインIL−10および/またはIL−4(防御的なTh2型反応を促進)を発現させることができる。さらに、グルココルチコイド擬似受容体(GCMR)を発現させることができる。
下垂体機能低下症:ヒト成長ホルモン遺伝子を、遺伝子発現が必要な小児期のみに正常な身長が得られるまで発現させて、その時点で遺伝子発現をダウンレギュレートすることができる。
創傷治癒/組織再生:治癒過程に必要な因子(成長因子、血管新生因子など)を必要な時期のみに発現させ、その後ダウンレギュレートすることができる。
癌治療:癌治療に有用な遺伝子産物の発現は、腫瘍増殖の遅滞が達成される時点までの治療期に限定することができ、その時点でその遺伝子産物の発現をダウンレギュレートすることができる。考え得る全身投与による癌治療には、免疫促進分子(IL−2、IL−12など)を発現する腫瘍浸潤リンパ球、血管新生阻害因子(PF4、IL−12など)、Herregulin、Leukoregulin(PCT出願番号WO85/04662を参照)およびG−CSF、GM−CSFおよびM−CSFなどの骨髄の支持療法のための成長因子の使用が含まれる。後者に関しては、骨髄の支持療法のために因子を発現する本発明の制御系の使用により、化学療法から骨髄の支持療法への定期的な間隔での治療の切り替えを簡素化することができる(同様に、AIDS治療にアプローチを応用することもできる。抗ウイルス治療から骨髄の支持療法への切り替えの簡素化など)。さらに、癌治療の局所的なターゲティングを制御することも可能である。例えば、本発明のレギュレーターによる自殺遺伝子の発現では、レギュレーターそれ自体を、例えば腫瘍特異的プロモーターまたは放射線誘導性プロモーターによって制御する。
本発明の方法による制御系を用いて制御された方法で自殺遺伝子(アポトーシス遺伝子、TK遺伝子など)を発現させる能力が、その系の一般的な安全性および有用性に加わる。例えば、所望の治療の終わりに、生体不活性インプラント内の細胞、意図する元々の位置を超えて播種された細胞などの遺伝子治療ベクターを有する細胞を除去するため、自殺遺伝子の発現のトリガーを引くことができる。さらに、移植片が腫瘍性になるか副作用をもたらしている場合、その細胞を自殺遺伝子の誘導によって迅速に除去することができる。1個以上の置換されたテトラサイクリン化合物が制御する1個の細胞内の「オン/オフ」スイッチの使用により、所定の治療遺伝子の制御とは完全に独立した自殺遺伝子の制御が可能になる(詳細は本明細書に記載)。
B.In vitroでのタンパク質の生成
所定のタンパク質の大規模な産生は、1)細胞内での転写レギュレーターの発現に好適な形態をとった本発明の転写レギュレーター融合タンパク質をコードする核酸および2)tetオペレーター配列に作動可能に連結された所定のタンパク質をコードする遺伝子を含有するべく修飾されたin vitroの培養細胞を用いて達成することができる。例えば、哺乳動物、酵母または真菌細胞を修飾して、本明細書に記載のようなこれらの核酸構成要素を含むようにすることができる。この修飾細胞をその後、置換されたテトラサイクリン化合物の存在下で標準的な発酵法によって培養して、遺伝子の発現を誘導し、所定のタンパク質を産生することができる。したがって、本発明の方法を用いて、所定のタンパク質の単離のための生成プロセスを操作することができる。そのプロセスでは、本発明の方法の転写レギュレーター融合タンパク質をコードする核酸と少なくとも1個のtetオペレーター配列に作動可能に連結された所定のタンパク質をコードする核酸の両方を導入した宿主細胞(酵母または真菌など)を、置換されたテトラサイクリン化合物の存在下で培地にて製造規模で増殖させ、所定のタンパク質をコードするヌクレオチド配列(tetオペレーター配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列など)の転写を促進し、その所定のタンパク質を回収した宿主細胞または培地から単離する。標準的なタンパク質精製法を用いて、所定のタンパク質を培地または回収した細胞から単離することができる。
C. In vivoでのタンパク質の生成
また、本発明の方法は、トランスジェニック家畜などの動物で所定のタンパク質の大規模な精製を促進することができる。トランスジェニック技術の進歩により、ウシ、ヤギ、ブタおよびヒツジなどのトランスジェニック家畜を生成することが可能になった(Wall,R.J.et al.(1992)J.Cell.Biochem.49:113−120およびClark,A.J.et al.(1987)Trends in Biotechnology 5:20−24)。したがって、ゲノム中に本発明の方法の誘導制御系の構成要素を有するトランスジェニック家畜を構築することができ、そこでは所定のタンパク質をコードする遺伝子は機能できる状態で少なくとも1個のtetオペレーター配列に結合する。遺伝子発現およびそれ故にタンパク質の生成は、トランスジェニック動物に置換されたテトラサイクリン化合物を投与することによって誘導される。転写レギュレーターの発現を特定の細胞に制限するしかるべき組織特異的制御エレメントに、転写レギュレーター融合タンパク質をコードする核酸を結合させることによって、特定の組織にタンパク質を生成させることができる。例えば、乳清プロモーター(米国特許第4,873,316号および欧州特許申請第264,166号)などの乳腺特異的制御エレメントを転写レギュレータートランスジーンに結合させて、転写レギュレーターの発現を乳腺組織に限定することができる。このため、置換されたテトラサイクリン化合物の存在下で、所定のタンパク質はトランスジェニックアニマルの乳腺組織で産生されることになる。このタンパク質をトランスジェニック動物の乳に分泌させるべく設計し、必要であればその後そのタンパク質を乳から単離することができる。
D.In vivoで制御される遺伝子発現の造影
本発明の方法を侵襲的またはより望ましくは非侵襲的な造影法と組み合わせて、細胞、細胞系および/または生物における遺伝子発現の制御をモニターすることができる。例えば、レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ、GFP、CATなど)と所定のヌクレオチド配列の両方を、ニ方向tetオペレーター(Ptetbi−1)の制御下におき、レポーター遺伝子および所定のヌクレオチド配列の発現を置換されたテトラサイクリン化合物制御転写アクチベーター(tTAまたはrtTA)に応答するようにすることができる。こうした遺伝子構築物の使用により、ルシフェラーゼなどのレポーター遺伝子の発現および/または活性がtetオペレーター結合ヌクレオチド配列の間接的な非侵襲的マーカーとして働くように、トランスジェニック動物および細胞系を導くことができる。生物において非侵襲的な造影を実行するためのこうした方法の使用については、Hasan,MT et al.Genesis29(3):116−22に記載がある。
E.ヒト疾患の動物モデル
本発明の方法の転写アクチベーターおよびインヒビタータンパク質を単独でまたは組み合わせて用いて、動物において特定の遺伝子の発現を促進または抑制し、ヒトの疾患の病態生理を模倣し、ヒト疾患の動物モデルを作製することができる。例えば、宿主動物で、疾患に関与すると考えられている所定の遺伝子を、1個以上のtetオペレーター配列の転写制御下におくことができる(本明細書に記載の相同組換えなどによって)。こうした動物を、転写アクチベーター融合タンパク質および/またはインヒビター融合タンパク質の1個以上のトランスジーンを有する第二の動物と交配させて、置換されたテトラサイクリン化合物が制御する融合タンパク質遺伝子とtet制御標的配列の両方を有する子孫動物を作製することができる。置換されたテトラサイクリン化合物を使用して、こうした子孫動物における所定の遺伝子の発現を調節することができる。例えば、転写サイレンサー融合タンパク質を用いて所定の遺伝子の発現を抑制的に調節し、遺伝子発現と疾患との因果関係を調べることができる。本明細書に記載のtet制御系により所定の遺伝子の発現レベルおよび遺伝子発現のダウンおよびアップレギュレートの時期の両方を制御することができるため、こうしたアプローチは相同組換えによる遺伝子「ノックアウト」に対して有益である。
F.遺伝子クローニングおよび他の使用のための安定な細胞系の生成
本発明の方法で使用する転写サイレンサー系は、遺伝子発現を「オフ」にし続け(すなわち、発現させ)、それによってほかの方法では産生することのできない安定な細胞系を産生することができる。例えば、その細胞に対する細胞毒性を有する遺伝子をもつ安定な細胞系は、その毒性遺伝子の発現における「漏出」のために作製することが困難であるか不可能であることがある。こうした毒性遺伝子の遺伝子発現を本発明の転写サイレンサー融合タンパク質を用いて抑制することによって、毒性遺伝子を有する安定な細胞系を作製することができる。その後、こうした安定な細胞系を用いて、こうした毒性遺伝子をクローン化することができる(例えば、置換されたテトラサイクリン化合物を用いて制御された条件下で毒性遺伝子の発現を誘導する)。本発明の転写サイレンサー系を応用することのできる遺伝子の発現クローニングの一般的な方法は当該技術分野で既知である(例えば、Edwards,C.P. and Aruffo,A.(1993)Curr.Opin.Biotech.4:558−563を参照)。さらに、転写サイレンサー系を応用して、胚性幹細胞(ES細胞)などの他の細胞内で遺伝子の基底発現を抑制し、安定な細胞系を作製することもできる。ES細胞に導入した特定の遺伝子が残留的に発現することにより、安定にトランスフェクトしたクローンが単離できなくなることがある。本明細書に記載の転写サイレンサー系を用いてこうした遺伝子の転写抑制を行うことは、この問題を克服するのに有用である。
G.脳における置換されたテトラサイクリン化合物が制御する遺伝子発現の誘導
本発明の方法の特定の置換されたテトラサイクリン化合物は、本発明の方法に記載の誘導制御系を調節する望ましい物質としてのドキシサイクリンなどの使用によって改良される。ドキシサイクリンは、血液脳関門の通過が限定され、そのために、脳内で誘導制御系を調節するためには、対象の末梢血中のドキシサイクリンをきわめて高レベルまで上昇させる必要がある(本明細書に参照として組み込まれているMansuy and Bujard Curr.Op.Neurobiol.10:593−96を参照)。本明細書に記載の特定の置換されたテトラサイクリン化合物を用いた本発明の方法を実行することにより、対象の脳および脊髄において、記載の誘導制御系の機能を向上させることができる。
H.阻害的作用を有するRNAの発現
また別の実施形態においては、本発明は、当該技術分野で既知の方法を用いた標的遺伝子の発現に干渉する核酸分子(二重鎖RNA分子など)の誘導および/または組織特異的発現のための組換えベクターに関する。特定の実施形態において、本発明は、組み込まれたか内在性の遺伝子の特定の細胞における誘導性ノックダウンを司るTet(テトラサイクリン)応答性RNAポリメラーゼII(PolII)プロモーター(TetONまたはTetOFFなど)の使用に関する。また、本発明は、標的遺伝子の発現に干渉するテトラサイクリンが制御する可逆的および/または組織特異的な核酸分子(二重鎖RNA分子)を発現するトランスジェニック動物(マウスなど)の作製方法にも関する。
X.利点
本明細書に記載の方法は、記載の誘導制御系の使用の強化を可能にする。本発明の方法の置換されたテトラサイクリン化合物は、ドキシサイクリンで用いる場合の1/10の低濃度で置換されたテトラサイクリン化合物がトリガーとなる応答を誘導することを可能にする。特定の実施形態において、本発明の方法はドキシサイクリンの1/100の低濃度のエフェクターで遺伝子をin vivoで誘導することも可能にする。
本発明の方法に記載の特定の化合物も、血液脳関門の通過状態を向上させ、低濃度の投与化合物で対象において誘導応答を実現することを可能にする。この利点は、本発明に記載の化合物の循環血中の濃度が低いために投与後に望ましくない副作用が誘導される可能性が低いことから、経済的でもあり治療的でもあることである。本発明に記載の特定の化合物は、例えばドキシサイクリンなどの抗菌作用に比して、元来抗菌性を有さないため、ヒトにおける本発明の方法の実践に追加的な利点を示す。
下記の実施例により本発明をさらに説明するが、これらは制限的に解釈されるべきではない。本明細書で引用される特許および公開された特許明細書など、全ての参考文献の開示内容は、参考として本明細書で援用される。
(実施例1)
置換されたテトラサイクリン化合物によるルシフェラーゼ活性の誘導
HR5−C11細胞における置換されたテトラサイクリン化合物のルシフェラーゼ発現の誘導能を試験した。細胞系HR5−CL11細胞はルシフェラーゼ遺伝子およびrtTA遺伝子を有するが、tTA遺伝子を有さない。HR5−C11細胞を約3×10細胞/35mm皿の密度で播種した(生育密度約80%)。細胞が完全に付着した後、テトラサイクリン誘導体を濃度0、30〜3000ng/mLで細胞に投与した。3日間の培養の後、ルシフェラーゼ活性を測定した。
全てのテトラサイクリン化合物がluc活性を上昇させたことが明らかになった。9−t−ブチルドキシサイクリンがluc発現を最も上昇させ、次いでペンタサイクリン、9−1’メチルシクロペンチルドキシサイクリン、ドキシサイクリンの5−エステル類、7,9−二置換ドキシサイクリン類および9−アミノ置換型ドキシサイクリンの順でluc発現が上昇したことが見出された。用量反応曲線を図1Aから1Hに示す(ドキシサイクリン(図1A);5−シクロブタノエートドキシサイクリン(図1B);5−シクロヘキサノエートドキシサイクリン(図1C);5−プロピオニル−7−シクロペンチルアセチルアミノドキシサイクリン(図1D);7−アセチルアミノドキシサイクリン(図1E);9−1’−メチルシクロペンチルドキシサイクリン(図1F);9−1’−メチルシクロブチルドキシサイクリン(図1G);9−t−ブチル−7−メチルドキシサイクリン(図1H))。
(実施例2)
置換されたテトラサイクリン化合物を用いたrtTAが媒介する遺伝子活性化
2種類のルシフェラーゼ陽性細胞系34RおよびMT2が、新しい転写アクチベーターrtTA2−34RおよびrtTA2−MT2をそれぞれ産生した。これらの変異型は、テトラサイクリン化合物の存在下できわめて低レベルの残留DNA結合を示すことを特徴とする。rtTA2−MT2系では、9−t−ブチルドキシサイクリンがRtTAが媒介する遺伝子活性化を100倍上昇させた。9−t−ブチルドキシサイクリンは濃度30〜100ng/mLでこの系を活性化した。9−t−ブチルドキシサイクリンは、in vitroでドキシサイクリンの1/10の濃度で全てのrtTAを誘導したことが見出された。この系は、濃度10ng/mLの9−t−ブチルドキシサイクリンで完全に誘導された。また、5−フェニルカルバメートドキシサイクリンも、ドキシサイクリンに比してrtTA2s−M2を2倍活性化することが見出された。
図2Aから2Dは、34RおよびMT2rtTA変異型におけるドキシサイクリンと9−t−ブチルドキシサイクリンの比較を示す。図2Aおよび2Bはそれぞれ、34RおよびMT2変異型に対するドキシサイクリンの作用を示す。図2Cおよび2Dはそれぞれ、34RおよびMT2変異型に対する9−t−ブチルドキシサイクリンの作用を示す。ドキシサイクリンはMT2では特異性およびルシフェラーゼ活性が高かったが、9−t−ブチルドキシサイクリンは両方の系において10倍以上活性が高かった。
(実施例3)
X1/5細胞および置換されたテトラサイクリン化合物を用いた用量反応試験
X1/5細胞の用量反応分析を用いて、tTAおよびrtTA転写活性化に対する置換されたテトラサイクリン化合物の能力を試験した。細胞系X1/5細胞は、テトラサイクリン誘導プロモーターによって制御される染色体に組み込まれたtTA遺伝子およびルシフェラーゼ遺伝子のコピーを有する。細胞が完全に付着した後、テトラサイクリン誘導体を濃度0、30〜3000ng/mLで細胞に投与した。3日間の培養の後、ルシフェラーゼ活性を測定した。
ドキシサイクリン濃度が上昇すると、luc遺伝子のスイッチがオフになることが見出された。試験した全てのテトラサイクリン化合物がルシフェラーゼ活性を低下させた。9−t−ブチルドキシサイクリンが最も低濃度で、lucの発現によって測定される有効性を示し、次いでペンタサイクリン、9−1’メチルシクロペンチルドキシサイクリン、ドキシサイクリン、5−ブタノエートドキシサイクリン、5−シクロヘキサノエートドキシサイクリン、5,9−二置換ドキシサイクリン類、7,9−二置換ドキシサイクリン類および9−アミノ置換型ドキシサイクリンの順で有効性を示した。用量反応曲線を図3Aから3Iに示す(ドキシサイクリン(図3A);5−シクロブタノエートドキシサイクリン(図3B);5−シクロヘキサノエートドキシサイクリン(図3C);5−プロピオニル−7−シクロペンチルアセチルアミノドキシサイクリン(図3D);7−アセチルアミノドキシサイクリン(図3E);9−1’−メチルシクロペンチルドキシサイクリン(図3F);9−1’−メチルシクロブチルドキシサイクリン(図3G);9−t−ブチル−7−メチルチオメチルドキシサイクリン(図3H);9−t−ブチル−7−メチルドキシサイクリン(図3I))。
(実施例4)
置換されたテトラサイクリン化合物によるin vivoにおけるrtTA2s−M2遺伝子の活性化
rTA M2CaMK−1/LC1のバイトランスジェニックマウスを用いて9−t−ブチルドキシサイクリンを試験した。マウスは前脳特異的α−CamKIIプロモーターの制御下でrtTA2s−M2遺伝子を発現した。また、LC1マウスはニ方向プロモーターの制御下にルシフェラーゼおよびcre遺伝子を有した。飲用水に5%スクロースまたは0.2および2mg/mLの9−t−ブチルドキシサイクリンを溶解し、マウスに7日間ドキシサイクリン(2mg/mL)を投与した。マウスにアベルチンで麻酔をかけ、ルシフェラーゼ(IP)を注射し、バイオルミネセンスチャンバーに置き、5分後に測定を行った。結果、0.2mg/mLの9−t−ブチルドキシサイクリンが2mg/mLのドキシサイクリンよりも良好な活性化をもたらした。図4はマウスにおけるルシフェラーゼ発現の画像である。
(等価物)
当業者は、通常の実験のみを用いて、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの均等事項を認識するか、確認することができる。こうした均等事項は下記の特許請求の範囲に包含されることを意図するものである。

Claims (41)

  1. (i)テトラサイクリン応答性プロモーターエレメント(TRE)に作動可能に連結された標的のヌクレオチド配列と、(ii)細胞内で転写を制御する第二のポリペプチドに作動可能に連結された置換されたテトラサイクリン化合物の存在下あるいは非存在下で該TREに結合する第一のポリペプチドを含む融合タンパク質とを含む細胞において、tetオペレーター連結ヌクレオチド配列の発現を制御するための方法であって、該細胞内の標的ヌクレオチド配列の発現が制御されるように、該細胞内で置換されたテトラサイクリン化合物の濃度を調節することを包含し、該置換されたテトラサイクリン化合物は、式(I):
    Figure 2009537139
    (式中、
    はヒドロキシルまたはアルキルカルボニルオキシであり、
    は水素、メチルまたはアルキルカルボニルアミノであり、
    は水素またはアルキルである)
    の化合物およびその薬学的に許容される塩であり、ただし、式Iの置換されたテトラサイクリン化合物はドキシサイクリンではない、
    方法。
  2. 前記標的ヌクレオチド配列がタンパク質をコードする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第一のポリペプチドが前記置換されたテトラサイクリン化合物の存在下で前記TREに結合する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記第一のポリペプチドが前記置換されたテトラサイクリン化合物の存在下ではなく非存在下で前記TREに結合する、請求項1または2に記載の方法。
  5. 前記融合タンパク質の前記第一のポリペプチドが変異型Tetリプレッサーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記変異型TetリプレッサーがクラスBリプレッサーである、請求項5に記載の方法。
  7. 前記変異型Tetリプレッサーが、71位、95位、101位および102位のアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸位置でアミノ酸置換が行われているTn10由来のTetリプレッサーである、請求項6に記載の方法。
  8. 前記変異型Tetリプレッサーが、71位、95位、101位および102位からなる群から選択される少なくとも2つのアミノ酸位置でアミノ酸置換が行われているTn10由来のTetリプレッサーである、請求項6に記載の方法。
  9. 前記融合タンパク質の前記第二のポリペプチドが、単純ヘルペスウイルス粒子タンパク質16の転写活性化ドメインを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記融合タンパク質をコードする前記核酸分子が、細胞の染色体中にランダムに組み込まれる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記融合タンパク質をコードする前記核酸分子が、細胞の染色体中の所定の位置に組み込まれる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記融合タンパク質をコードする前記核酸分子がex vivoの細胞に導入され、さらに前記細胞を対象に投与することを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記tetオペレーター連結核酸が、少なくとも1つのtetオペレーター配列に作動可能に連結された細胞の内在性の核酸である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記tetオペレーター連結核酸分子が、細胞内に導入された外在性の核酸分子である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記細胞がさらに第二の標的核酸分子を含有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記テトラサイクリン化合物が抗菌活性を有さない、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. およびRが水素である、請求項1に記載の方法。
  18. がヒドロキシルである、請求項17に記載の方法。
  19. がアルキルカルボニルオキシである、請求項17に記載の方法。
  20. 前記アルキルカルボニルオキシがシクロブチルカルボニルオキシである、請求項19に記載の方法。
  21. 前記アルキルカルボニルオキシがシクロヘキシルカルボニルオキシである、請求項19に記載の方法。
  22. がヒドロキシルである、請求項1に記載の方法。
  23. が水素である、請求項22に記載の方法。
  24. がアルキルカルボニルアミノである、請求項23に記載の方法。
  25. 前記アルキルカルボニルアミノがメチルカルボニルアミノである、請求項24に記載の方法。
  26. が水素である、請求項22に記載の方法。
  27. がアルキルである、請求項26に記載の方法。
  28. 前記アルキルがシクロペンチルメチルである、請求項27に記載の方法。
  29. 前記アルキルがシクロブチルメチルである、請求項27に記載の方法。
  30. が水素である、請求項1に記載の方法。
  31. がアルキルカルボニルオキシである、請求項30に記載の方法。
  32. 前記アルキルカルボニルオキシがプロパニルカルボニルオキシである、請求項31に記載の方法。
  33. がアルキルカルボニルアミノである、請求項31に記載の方法。
  34. 前記アルキルカルボニルアミノがシクロペンチルアセチルアミノである、請求項33に記載の方法。
  35. がヒドロキシルであり、Rがメチルである、請求項1に記載の方法。
  36. がアルキルである、請求項35に記載の方法。
  37. 前記アルキルがt−ブチルである、請求項36に記載の方法。
  38. 前記置換されたテトラサイクリン化合物が、9−t−ブチルドキシサイクリン、9−1’−メチルシクロペンチルドキシサイクリン、5−シクロブタノエートドキシサイクリン、5−シクロヘキサノエートドキシサイクリン、5−プロピオニル−7−シクロペンチルアセチルアミノドキシサイクリン、7−アセチルアミノドキシサイクリン、9−1’−メチルシクロペンチルドキシサイクリン、9−1’−メチルシクロブチルドキシサイクリン、9−t−ブチル−7−メチルドキシサイクリンおよび薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の方法。
  39. (i)テトラサイクリン応答性プロモーターエレメント(TRE)に作動可能に連結された標的のヌクレオチド配列と、(ii)置換されたテトラサイクリン化合物の非存在下ではなく存在下で該TREに結合する変異型Tetリプレッサーとを含む細胞内において、tetオペレーター連結ヌクレオチド配列の発現を制御するための方法であって、該細胞内の標的ヌクレオチド配列の発現が制御されるように、該細胞内で置換されたテトラサイクリン化合物の濃度を調節することを包含し、ここで、該変異型Tetリプレッサーは、該変異型Tetリプレッサーが、式(I):
    Figure 2009537139
    (式中、
    はヒドロキシルまたはアルキルカルボニルオキシであり、
    は水素、メチルまたはアルキルカルボニルアミノであり、
    は水素またはアルキルである)
    の置換されたテトラサイクリン化合物およびその薬学的に許容される塩の存在下で該TREに選択的に結合するように選択され、ただし、式Iの該置換されたテトラサイクリン化合物はドキシサイクリンではない、方法。
  40. (i)テトラサイクリン応答性プロモーターエレメント(TRE)に作動可能に連結された標的のヌクレオチド配列と、(ii)置換されたテトラサイクリン化合物の存在下ではなく非存在下で該TREに結合する変異型Tetリプレッサーとを含む細胞内において、tetオペレーター連結ヌクレオチド配列の発現を制御するための方法であって、該細胞内の標的ヌクレオチド配列の発現が制御されるように、該細胞内で置換されたテトラサイクリン化合物の濃度を調節することを包含し、ここで、該変異型Tetリプレッサーは、該変異型Tetリプレッサーが、式(I):
    Figure 2009537139
    (式中、
    はヒドロキシルまたはアルキルカルボニルオキシであり、
    は水素、メチルまたはアルキルカルボニルアミノであり、
    は水素またはアルキルである)
    の置換されたテトラサイクリン化合物およびその薬学的に許容される塩の非存在下でのみ該TREに選択的に結合するように選択され、ただし、式Iの該置換されたテトラサイクリン化合物はドキシサイクリンではない、方法。
  41. 前記置換されたテトラサイクリン化合物が、9−t−ブチルドキシサイクリン、9−1’−メチルシクロペンチルドキシサイクリン、5−シクロブタノエートドキシサイクリン、5−シクロヘキサノエートドキシサイクリン、5−プロピオニル−7−シクロペンチルアセチルアミノドキシサイクリン、7−アセチルアミノドキシサイクリン、9−1’−メチルシクロペンチルドキシサイクリン、9−1’−メチルシクロブチルドキシサイクリン、9−t−ブチル−7−メチルドキシサイクリンおよび薬学的に許容されるその塩である、請求項39または40に記載の方法。
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