JP2009274897A - 酸化ジルコニウム水和物粒子及びそれを用いた分散体と分散膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】水和水量が大きく、高いプロトン伝導性を有する酸化ジルコニウム水和物粒子を提供する。
【解決手段】本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、一般式ZrO2・nH2Oで表され、前記粒子の窒素ガス吸着法により求められる平均細孔径は、1.5nm以上1.75nm以下であり、前記一般式中のnは、2.5を超える数であり、前記nは、前記粒子を水に分散させた後、濾過し、その後、空気中において60℃で6時間乾燥させた後に測定した数値であることを特徴とする。
【選択図】図4
【解決手段】本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、一般式ZrO2・nH2Oで表され、前記粒子の窒素ガス吸着法により求められる平均細孔径は、1.5nm以上1.75nm以下であり、前記一般式中のnは、2.5を超える数であり、前記nは、前記粒子を水に分散させた後、濾過し、その後、空気中において60℃で6時間乾燥させた後に測定した数値であることを特徴とする。
【選択図】図4
Description
本発明は、大きな水和水量を有し、高いプロトン伝導性を発揮する酸化ジルコニウム水和物粒子と、それを用いた分散体及び分散膜に関する。
酸化アルミニウム、ドープ型酸化セリウム、酸化ジルコニウム、各種複合酸化物等の無機材料は、無機プロトン伝導性材料であり、例えば固体酸触媒、電気化学キャパシタや燃料電池等に用いる電解質材料、あるいは電気化学的水素ポンプ、水素センサや酸素センサ等の各種ガスセンサ等の多彩な用途への応用が可能である。上記無機プロトン伝導性材料の中でも酸化ジルコニウムは、製造工程の簡便性や安全性等の面で優れており、利用頻度の高い材料である。
酸化ジルコニウム等の用途としては、例えば、特許文献1には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ等の固体超強酸物質からなるガス感応体を備えたガスセンサが提案されている。また、特許文献2には、水素ガスセンサのイオン導電性電解質として、安定化ジルコニア又は安定化セリアが有効であると記載されている。さらに、特許文献3には、安定化ジルコニア又はセリア系酸化物からなる固体電解質層を備えた固体電解質型燃料電池が提案されている。上記いずれの場合にも、個々の酸化ジルコニウム粒子のプロトン伝導性が高いことに加え、最終形態とするために酸化ジルコニウム等を溶媒や結合剤(バインダ)等と混合分散させ、乾燥膜化、あるいは焼結させて使用している。
このような酸化ジルコニウムは水和物としても存在し、その作製方法としては、アルカリ溶液とジルコニウム塩溶液との中和反応を利用する方法、又はアンモニアによるジルコニウム塩の加水分解反応を利用する方法が一般に用いられている。これらの方法で作製された一般式ZrO2・nH2Oで表される酸化ジルコニウム水和物の水和水量nは、室温乾燥状態で高々2.5程度となる。ここで、酸化ジルコニウム水和物の水和水には、酸化ジルコニウム水和物粒子の表面に吸着する吸着水と、酸化ジルコニウム水和物粒子の結晶内に存在する結晶水との両者が含まれる。
また、酸化ジルコニウム微粒子の製造方法としては、特許文献4には、中和沈殿法により平均粒子径が5〜100nmの範囲にあるジルコニア微粒子が分散したジルコニアゾルの製造方法が提案されている。また、特許文献5にも、中和沈殿法により平均粒子直径又は平均粒子長軸長さが1〜200nmの範囲にある酸化ジルコニウム粒子の製造方法が提案されている。
特開2004−325388号公報
特開2000−19152号公報
特開2002−83611号公報
特開2006−143535号公報
特開2005−170700号公報
一般に酸化ジルコニウム水和物は、その水和水量が多いほどプロトン伝導性が高まることが知られている。大きな水和水量を有する酸化ジルコニウム水和物は、理想的には、(1)比表面積を大きくして吸着水を多くするために、その一次粒子を超微粒子とするか、又はその一次粒子の表面に細孔を持たせること、及び(2)結晶水及び吸着水の両方を多く含むために結晶性が低いことが必要である。これにより、全体として吸着水と結晶水との総和で与えられる水和水量を可能な限り多くすることができる。この様に、プロトン伝導性の高い酸化ジルコニウム水和物を得るには、その一次粒子径を小さくし、その一次粒子の表面に細孔を持たせ、且つ、その一次粒子の結晶性を低くすればよい。
しかし、従来の方法で酸化ジルコニウム水和物の比表面積を大きくするために一次粒子径を小さくしようとすれば、その一次粒子の結晶性を高めて分散性の高い均一な微粒子を得る必要があるが、一次粒子の結晶性を高めると粒子表面の性質も共に変化し、吸着水も結晶水も共に減少するという問題がある。一方、酸化ジルコニウム水和物の結晶性を低くすると、湿潤雰囲気、乾燥雰囲気の差に関わらず、少しの熱で酸化ジルコニウム水和物粒子が凝着して粗大粒子を形成する傾向が強く、そのために、粒子径の異なる大小の粒子が混在し、均一な微粒子を得ることが困難である。その結果、結晶性の低下により吸着水量と結晶水量とはある程度増加するが、粒子径の増大により比表面積が減少して、吸着水量の増加にも限界が生じる。
この様に従来は、水和水量を増大させるために、結晶性が低く、且つ比表面積の大きな酸化ジルコニウム水和物粒子を得ることは困難であった。
また、酸化ジルコニウム水和物粒子は、その利用時に結合剤等と共に溶媒中に分散させ、これを塗布・乾燥して膜を形成する、あるいは乾燥させた後焼結させるなどする場合が多く、この際には粒子表面に対する結合剤の吸着特性が分散性を大きく左右する要因となる。一般的に粒子の比表面積が大きいほど結合剤の吸着量が増し、粒子と粒子との隙間に結合剤が入り込むことにより、より分散性を高めることができる。このような意味でも、酸化ジルコニウム水和物粒子の結晶性及び一次粒子径が同一であった場合でも、一次粒子の表面に存在するクラックや細孔による表面特性の違いにより、さらに比表面積を増大させることが望まれる。
本発明は、上記問題を解決したもので、水和水量が大きく、高いプロトン伝導性を有する酸化ジルコニウム水和物粒子を提供すると共に、この酸化ジルコニウム水和物粒子を用いた分散体及び分散膜を提供するものである。
本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、一般式ZrO2・nH2Oで表される酸化ジルコニウム水和物粒子であって、前記粒子の窒素ガス吸着法により求められる平均細孔径は、1.5nm以上1.75nm以下であり、前記一般式中のnは、2.5を超える数であり、前記nは、前記粒子を水に分散させた後、濾過し、その後、空気中において60℃で6時間乾燥させた後に測定した数値であることを特徴とする。
また、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散体は、上記本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子を分散媒に分散させたことを特徴とする。
また、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散膜は、上記本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子を分散して含むことを特徴とする。
本発明により、水和水量が大きく、高いプロトン伝導性を有し、良好な分散性能を有する酸化ジルコニウム水和物粒子を提供することができる。
(実施形態1)
先ず、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子を説明する。本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、一般式ZrO2・nH2Oで表され、窒素ガス吸着法により求められる平均細孔径は、1.5nm以上1.75nm以下であり、上記一般式中のnは、2.5を超える数であり、上記nは、上記粒子を水に分散させた後、濾過し、その後、空気中において60℃で6時間乾燥させた後に測定した数値であることを特徴とする。
先ず、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子を説明する。本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、一般式ZrO2・nH2Oで表され、窒素ガス吸着法により求められる平均細孔径は、1.5nm以上1.75nm以下であり、上記一般式中のnは、2.5を超える数であり、上記nは、上記粒子を水に分散させた後、濾過し、その後、空気中において60℃で6時間乾燥させた後に測定した数値であることを特徴とする。
上記平均細孔径が1.5nm以上1.75nm以下である場合に、酸化ジルコニウム水和物粒子の比表面積が増大して350m2/g以上の比表面積が得られると共に、粒子表面に吸着し得る水分量を増大させることができる。上記平均細孔径は、1.5nm以上1.7nm以下がより好ましく、1.5nm以上1.6nm以下が最も好ましい。また、上記平均細孔径を上記範囲内とすることにより、酸化ジルコニウム水和物粒子の分散性能を向上させることが可能である。
本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、その一次粒子が凝集して二次粒子を形成していても、上記平均細孔径が上記範囲内にあればよい。一次粒子が凝集して二次粒子を形成しても、水分子の入る隙間がありさえすればよいからである。
本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量を表す上記一般式中のnは、2.5を超える数であり、好ましくは4以上である。これにより、水和水量が2.5以下の従来の酸化ジルコニム水和物粒子に比べて、高いプロトン伝導性を有する酸化ジルコニウム水和物粒子を提供できる。特に、上記nが4以上では、燃料電池等に用いるプロトン伝導性電解質材料として最適となる。上記nの上限は特に限定されないが、後述する本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法により作製した酸化ジルコニウム水和物粒子では、上記nの上限は10程度となる。
本発明では上記nは、酸化ジルコニウム水和物粒子を水に分散させた後、濾過し、その後、空気中において60℃で6時間乾燥させた後に示差熱熱重量同時分析(TG/DTA)により測定した数値であることとする。これは、酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量、特に吸着水量は乾燥条件により変化するものであり、酸化ジルコニウム水和物粒子の結晶水と吸着水との総和としての水和水量を相互に比較するための基準を明確にするためである。また、示差熱熱重量同時分析において、酸化ジルコニウム水和物における水和水量変化は、吸着水、結晶水を含めて連続的なものであり、全ての水和水が完全に抜けると、不連続な結晶構造変化が起こるために、約400〜500℃の範囲において発熱ピークが観測される。本発明における水和水量は、示差熱熱重量同時分析において、この発熱ピークが観測される点までの水分量変化から求めるものとする。
本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の粉末X線回折スペクトルは、2θが30度付近のブロードなピークと50度付近のブロードなピークとで特徴付けられる。即ち、2θが30度付近と50度付近との2つのブロードなピークで特徴付けられる。これは、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、アモルファス状に近い低結晶性の構造を有することを意味する。これにより、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、結晶水を多量に含有することができる。酸化ジルコニウム水和物粒子の結晶性が低いほど結晶内部に含まれる結晶水量が多くなり、その結晶性が高くなるほど結晶水量が減少するためである。
通常の結晶性の高い正方晶の酸化ジルコニウムの粉末X線回折スペクトルでは、2θが30度付近及び50度付近にそれぞれ2つずつ、合計4つの明確なピークが現れるが、その結晶性が低くなるにつれて、これらのピークの強度が低下し、それぞれ2つのピークが分離不可能であるほどにブロードになり、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子が示すような粉末X線回折スペクトルとなる。
また、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の平均一次粒子径は、0.5nm以上5nm以下であり、好ましくは1nm以上3nm以下である。上記平均一次粒子径が5nmを超えると粒子の表面に細孔が存在する場合でも比表面積の増大には限界があり、結果的に比表面積が減少して吸着水量が減少し、全体の水和水量も減少する。また、酸化ジルコニウムの格子定数が約0.5nm前後であることから、上記平均一次粒子径が0.5nm未満の酸化ジルコニウム水和物粒子を作製することは困難となる。特に、上記平均一次粒子径が1nm以上3nm以下では、微粒子の粒子境界が鮮明になり粒子性が増すための最低限界の粒子径範囲であり、表面吸着水量がより増大するため好ましい。
本発明おいて、平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真から観察される300個の粒子の直径又は長軸長さの算術平均から求めるものとする。
次に、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法について説明する。本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法としては、酸化ジルコニウム水和物粒子の平均細孔径が前述の範囲内となる方法であれば、沈殿法、ゾル−ゲル法、加水分解法等のいずれの方法を用いてもよい。水熱温度・時間、熟成時間の兼ね合いで本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子を得ることができる。例えば、アルカリ水溶液と、これと等量となるように調整したジルコニウム塩の水溶液とを、これらの混合溶液の最終的なpHが10.0以上13.0以下になるように調整しながら混合して酸化ジルコニウム水和物粒子を作製し、これを室温で15時間以上の時間熟成した後、水の存在下で、100℃で7時間の水熱処理を行い、その後この懸濁液をろ過し、60℃で乾燥して、5nm以下の平均一次粒子径を有し、且つ平均細孔径が1.5nm以上1.75nm以下の酸化ジルコニウム水和物の超微粒子を得ることができる。
以下、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法の一例をより詳細に説明する。
<溶液作製工程>
先ず、ジルコニウム塩を水に溶解してジルコニウム塩水溶液を作製する。ジルコニウム塩としては、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム等を使用できるが、水和水量の大きな酸化ジルコニウム水和物粒子を得る上で、塩化酸化ジルコニウムが最も好ましい。
先ず、ジルコニウム塩を水に溶解してジルコニウム塩水溶液を作製する。ジルコニウム塩としては、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム等を使用できるが、水和水量の大きな酸化ジルコニウム水和物粒子を得る上で、塩化酸化ジルコニウムが最も好ましい。
ジルコニウム塩水溶液のジルコニウム塩濃度は特に限定されず、通常0.05〜0.5mol/Lとすればよい。
次に、アルカリ水溶液を作製する。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属塩の水溶液、又はアンモニア水溶液を用いることができるが、微粒子の酸化ジルコニウム水和物を得る上で、アンモニア水溶液が最も好ましい。
<沈殿工程>
次に、上記アルカリ水溶液に、上記ジルコニウム塩水溶液を滴下して攪拌し、pHを7.0以上13.0以下、好ましくは9.5以上12.0以下に調整して、酸化ジルコニウム水和物粒子を沈殿させる。pHが上記範囲を外れると、酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量が減少するため好ましくない。また、操作手順としてジルコニウム塩水溶液にアルカリ水溶液を滴下すると、ジルコニウム塩水溶液が酸性であるため、pHを7.0以上13.0以下に調整することが困難となるため好ましくない。
次に、上記アルカリ水溶液に、上記ジルコニウム塩水溶液を滴下して攪拌し、pHを7.0以上13.0以下、好ましくは9.5以上12.0以下に調整して、酸化ジルコニウム水和物粒子を沈殿させる。pHが上記範囲を外れると、酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量が減少するため好ましくない。また、操作手順としてジルコニウム塩水溶液にアルカリ水溶液を滴下すると、ジルコニウム塩水溶液が酸性であるため、pHを7.0以上13.0以下に調整することが困難となるため好ましくない。
<熟成工程>
次に、上記酸化ジルコニウム水和物粒子が沈殿した水溶液を、pHが7.0以上13.0以下、好ましくは9.5以上12.0以下で、20℃以上90℃以下、好ましくは20℃以上30℃以下の温度で、5時間以上40時間以下の時間熟成する。熟成工程は、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法において必須の工程ではないが、熟成工程を行うことにより、酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量をより大きくすることができる。
次に、上記酸化ジルコニウム水和物粒子が沈殿した水溶液を、pHが7.0以上13.0以下、好ましくは9.5以上12.0以下で、20℃以上90℃以下、好ましくは20℃以上30℃以下の温度で、5時間以上40時間以下の時間熟成する。熟成工程は、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法において必須の工程ではないが、熟成工程を行うことにより、酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量をより大きくすることができる。
上記酸化ジルコニウム水和物粒子が沈殿した水溶液のpHが7.0を下回ると酸化ジルコニム水和物粒子が十分に沈殿せず、そのpHが13.0を超えると次の水熱処理工程において結晶成長が過多となり、比較的結晶性の高い酸化ジルコニウム水和物粒子となり、吸着水も結晶水も共に減少して、水和水量が減少する。また、熟成温度が20℃を下回ると熟成の効果が十分に得られず、90℃超えると酸化ジルコニウム水和物粒子の粒子径が増加して比表面積が減少し、吸着水が減少して、水和水量が減少する。さらに、熟成時間が5時間を下回ると酸化ジルコニウム水和物粒子の粒子径の均一性が不十分となり、40時間を超えると溶液中での結晶成長が進み、水和水量の大きい酸化ジルコニウム水和物粒子が得られにくくなるため、好ましくない。
<水熱処理工程>
次に、上記酸化ジルコニウム水和物粒子を水の存在下で50℃以上110℃未満、好ましくは60℃以上105℃以下の温度で、3時間以上6時間以下、好ましくは3時間以上4時間以下の時間水熱処理する。水熱処理は、オートクレーブ等の密閉容器内で上記温度で加熱することにより行う。
次に、上記酸化ジルコニウム水和物粒子を水の存在下で50℃以上110℃未満、好ましくは60℃以上105℃以下の温度で、3時間以上6時間以下、好ましくは3時間以上4時間以下の時間水熱処理する。水熱処理は、オートクレーブ等の密閉容器内で上記温度で加熱することにより行う。
水熱処理温度が50℃未満では、酸化ジルコニウム水和物が粒子の形状を作らないことが多く、その結果、凝着による粗大化が起こり、平均一次粒子径が5nm以下の酸化ジルコニウム水和物粒子が得られにくい。また、水熱処理温度が110℃を超えると結晶性の高い酸化ジルコニウム粒子となり、その結果、結晶水が極めて少ない酸化ジルコニウム粒子となり好ましくない。水熱処理時間が3時間未満では、酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量が十分に大きくならず、一方、6時間を超えると水和水量が飽和量に達し、その後水熱処理を続けても水和水量は増加しない。
<乾燥工程>
次に、水熱処理した酸化ジルコニウム水和物粒子を水洗してpHが6〜9程度の酸化ジルコニウム水和物粒子分散液とした後、濾過し、その後、空気中で20℃以上90℃以下の温度で、3時間以上12時間以下の時間乾燥する。上記水洗により不純物をできる限り取り除くことが好ましいが、水洗を省略することもできる。乾燥工程は、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法において必須の工程ではないが、乾燥工程を行うことにより、粉末状の酸化ジルコニウム水和物粒子が得られる。
次に、水熱処理した酸化ジルコニウム水和物粒子を水洗してpHが6〜9程度の酸化ジルコニウム水和物粒子分散液とした後、濾過し、その後、空気中で20℃以上90℃以下の温度で、3時間以上12時間以下の時間乾燥する。上記水洗により不純物をできる限り取り除くことが好ましいが、水洗を省略することもできる。乾燥工程は、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子の製造方法において必須の工程ではないが、乾燥工程を行うことにより、粉末状の酸化ジルコニウム水和物粒子が得られる。
上記乾燥温度と乾燥時間は一例であって、上記範囲以外であってもよいが、乾燥温度が90℃を超えると、酸化ジルコニウムの結晶構造そのものが変化し、僅かながら結晶水が失われてしまう恐れがあるため、乾燥温度は90℃以下が好ましい。また、乾燥雰囲気も特に限定されないが最も簡便な空気中での乾燥が好ましい。
このようにして得られた酸化ジルコニウム水和物粒子は、その平均細孔径が1.5nm以上1.75nm以下の範囲にあり、且つ、一般式ZrO2・nH2Oで表される酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量nが2.5以上であるものが得られる。得られた酸化ジルコニウム水和物粒子の粉末X線回折スペクトルを測定すると、そのスペクトルは非常にブロードであり、アモルファス状に近い低結晶性の構造が確認できる。
但し、上記水和水量nは、前述のとおり、酸化ジルコニウム水和物粒子を水に分散させた後、濾過し、その後、空気中において60℃で6時間乾燥させた後に測定した数値であり、結晶水量と吸着水量の両者の総和の水分量である。
ここで、吸着水とは粒子表面に吸着している水であるために、乾燥の条件等により大きく変化することが一般的である。従って、吸着水を評価する際には、吸着し得る水分量という意味合いの評価となる。通常の結晶性粒子においては、結晶性が全く同等である場合には、比表面積が大きいほど吸着水量が大きくなることが一般的であるが、僅かでも結晶性が異なれば、表面特性もまた異なってくるために、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子のように、連続的に構造変態する種類の物質については、比表面積のみで吸着可能水分量を正確に評価することはできない。また、吸着水を完全に取り除き、結晶水のみで評価することも可能ではあるが、酸化ジルコニウムのプロトン伝導性には、結晶水及び吸着水の両方が関与することから、どちらか一方ではなく、全体としての水分量を把握する必要がある。そのために、上記水和水量nの測定基準を定めたものである。
(実施形態2)
次に、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散体について説明する。本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散体は、実施形態1で説明した本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子を分散媒に分散させたことを特徴とする。実施形態1の酸化ジルコニウム水和物粒子を分散媒に分散させることにより、水和水量が大きく、高いプロトン伝導性を有し、良好な分散性能を有する酸化ジルコニウム水和物粒子分散体を提供することができる。
次に、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散体について説明する。本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散体は、実施形態1で説明した本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子を分散媒に分散させたことを特徴とする。実施形態1の酸化ジルコニウム水和物粒子を分散媒に分散させることにより、水和水量が大きく、高いプロトン伝導性を有し、良好な分散性能を有する酸化ジルコニウム水和物粒子分散体を提供することができる。
上記分散媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、各種アルコール等を用いることができる。
また、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散体は、その用途に応じて、結合剤をさらに含むことができる。結合剤を含ませることにより、酸化ジルコニウム水和物の粒子間に結合剤を介在させることができ、分散体の分散性能をより高めることができる。
上記結合剤としては、高分子バインダを用途に応じて適宜選択して使用できるが、特別に分散性を阻害しないものであれば水系、非水系を問わず使用することが可能である。例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリブチラール等及びこれらの樹脂を共重合させた樹脂を使用することができる。また、必要に応じて官能基を有した結合剤や、ポリチオフェン誘導体(PEDOT)、N,N−ジ(ナフタレン−1−ニル)−N,N−ジフェニル−ベンジデン誘導体(NPB)、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)等の導電性高分子材料を使用することも可能である。また、塗料安定性を高めるために、公知の分散剤、界面活性剤、レべリング剤等を添加してもよい。
(実施形態3)
続いて、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散膜について説明する。本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散膜は、実施形態1で説明した本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子を分散して含むことを特徴とする。実施形態1の酸化ジルコニウム水和物粒子を用いることにより、水和水量が大きく、高いプロトン伝導性を有し、良好な分散性能を有する酸化ジルコニウム水和物粒子分散膜を提供することができる。本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散膜は、実施形態2で説明した本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散体を基材上に塗布して乾燥することで得ることが可能である。
続いて、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散膜について説明する。本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散膜は、実施形態1で説明した本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子を分散して含むことを特徴とする。実施形態1の酸化ジルコニウム水和物粒子を用いることにより、水和水量が大きく、高いプロトン伝導性を有し、良好な分散性能を有する酸化ジルコニウム水和物粒子分散膜を提供することができる。本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散膜は、実施形態2で説明した本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子分散体を基材上に塗布して乾燥することで得ることが可能である。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
先ず、以下のようにして、酸化ジルコニウム水和物粒子を作製した。
(実施例1)
28%アンモニア水溶液15gを300mLの水に溶解して本実施例で使用するアンモニア水溶液を調製した。また、これとは別に、塩化酸化ジルコニウム8gを100mLの水に溶解してジルコニウム塩水溶液を調製した。
28%アンモニア水溶液15gを300mLの水に溶解して本実施例で使用するアンモニア水溶液を調製した。また、これとは別に、塩化酸化ジルコニウム8gを100mLの水に溶解してジルコニウム塩水溶液を調製した。
次に、上記アンモニア水溶液300mLに上記ジルコニウム塩水溶液100mLを滴下しつつ攪拌し、酸化ジルコニウム水和物粒子を含む沈殿物を生成させた。この沈殿物を含む懸濁液のpHは、10.2であった。この懸濁液を室温でそれぞれ異なった時間熟成させた。その熟成時間は、17時間、19時間、21時間、23時間の各時間とした。
続いて、この沈殿物を含む懸濁液をオートクレーブに仕込み、1時間かけて100℃まで昇温し、100℃で7時間水熱処理を施し、10時間かけて室温まで冷却した後、室温でさらに36時間熟成させた。
最後に、水熱処理後の沈殿物から未反応物や不純物を除去するために、超音波洗浄器を使って水洗した後、濾過を行い、前述の水和水量の測定基準に沿って60℃で6時間、空気中で乾燥を行った。その後、乳鉢で軽く解砕し、酸化ジルコニウム水和物粒子を得た。
<X線回折スペクトルの測定>
得られた一連の酸化ジルコニウム水和物粒子について、粉末X線回折スペクトルを測定した。粉末X線回折スペクトルは、リガク社製のX線回折装置(装置型番:RINT2500)を用いて、室温で回折角2θ=20〜70度の範囲で測定した。その結果、いずれの酸化ジルコニウム水和物粒子についても、2θが30度付近と50度付近の2つのブロードなピークが観測された。
得られた一連の酸化ジルコニウム水和物粒子について、粉末X線回折スペクトルを測定した。粉末X線回折スペクトルは、リガク社製のX線回折装置(装置型番:RINT2500)を用いて、室温で回折角2θ=20〜70度の範囲で測定した。その結果、いずれの酸化ジルコニウム水和物粒子についても、2θが30度付近と50度付近の2つのブロードなピークが観測された。
また、図1に、本実施例の熟成時間が23時間の酸化ジルコニウム水和物粒子の粉末X線回折スペクトルを示す。
<平均一次粒子径の測定>
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、得られた一連の酸化ジルコニウム水和物粒子の形状観察を行ったところ、いずれも粒子径が約2〜4nmの粒子であるこが分かった。また、倍率60万倍で撮影した各酸化ジルコニウム水和物粒子のTEM写真を用いて、それぞれ300個の酸化ジルコニウム水和物粒子の直径又は長軸長さの算術平均を求め、各酸化ジルコニウム水和物粒子の平均一次粒子径を求めた。その結果を表1に示す。
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、得られた一連の酸化ジルコニウム水和物粒子の形状観察を行ったところ、いずれも粒子径が約2〜4nmの粒子であるこが分かった。また、倍率60万倍で撮影した各酸化ジルコニウム水和物粒子のTEM写真を用いて、それぞれ300個の酸化ジルコニウム水和物粒子の直径又は長軸長さの算術平均を求め、各酸化ジルコニウム水和物粒子の平均一次粒子径を求めた。その結果を表1に示す。
また、図2に、本実施例の熟成時間が23時間の酸化ジルコニウム水和物粒子を倍率60万倍で撮影したTEM写真を示す。
<平均細孔径及び全比表面積の測定>
窒素ガス吸着法により、得られた一連の酸化ジルコニウム水和物粒子の平均細孔径及び全比表面積を測定した。測定装置としては日本ベル社製の自動比表面積/細孔分布測定装置(装置型番:BELSORP−mini)を用い、飽和蒸気圧に対する相対圧0.99まで測定を行った。また、飽和蒸気圧は測定開始時圧力を用い、死容積は実測値とし、測定前乾燥条件は、窒素ガスフロー中80℃で2時間とした。その結果を表1に示す。
窒素ガス吸着法により、得られた一連の酸化ジルコニウム水和物粒子の平均細孔径及び全比表面積を測定した。測定装置としては日本ベル社製の自動比表面積/細孔分布測定装置(装置型番:BELSORP−mini)を用い、飽和蒸気圧に対する相対圧0.99まで測定を行った。また、飽和蒸気圧は測定開始時圧力を用い、死容積は実測値とし、測定前乾燥条件は、窒素ガスフロー中80℃で2時間とした。その結果を表1に示す。
また、図3に、本実施例の熟成時間が23時間の酸化ジルコニウム水和物粒子の窒素ガス吸着曲線を示す。
<水和水量の測定>
乾燥終了後1時間経過した一連の酸化ジルコニウム水和物粒子について、リガク社製の示差熱天秤(装置型番:TG−DTA−2000S)を用いて示差熱熱重量同時分析(TG/DTA)を行い、一般式ZrO2・nH2Oで表される酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量nを求めた。その結果を表1に示す。
乾燥終了後1時間経過した一連の酸化ジルコニウム水和物粒子について、リガク社製の示差熱天秤(装置型番:TG−DTA−2000S)を用いて示差熱熱重量同時分析(TG/DTA)を行い、一般式ZrO2・nH2Oで表される酸化ジルコニウム水和物粒子の水和水量nを求めた。その結果を表1に示す。
<分散粒子径の測定>
得られた一連の酸化ジルコニウム水和物粒子の分散体を下記のようにして作製し、各分散体における酸化ジルコニウム水和物粒子の分散粒子径を測定した。ここで、分散体における酸化ジルコニウム水和物粒子の分散粒子径により分散特性を評価したが、分散粒子径の絶対値は、使用する溶媒、結合剤等に依存して変化するため、分散粒子径による分散特性は相対的な評価である。
得られた一連の酸化ジルコニウム水和物粒子の分散体を下記のようにして作製し、各分散体における酸化ジルコニウム水和物粒子の分散粒子径を測定した。ここで、分散体における酸化ジルコニウム水和物粒子の分散粒子径により分散特性を評価したが、分散粒子径の絶対値は、使用する溶媒、結合剤等に依存して変化するため、分散粒子径による分散特性は相対的な評価である。
分散媒としては水を用い、以下の重量比で各酸化ジルコニウム水和物粒子と水とを混合し、ボールミルを用いて分散して各分散体を作製した。
酸化ジルコニウム水和物粒子 20重量部
水 80重量部
水 80重量部
得られた各分散体中の酸化ジルコニウム水和物粒子の分散粒子径(二次凝集体の平均粒子径)を、粒度分布計を用いて測定した。その結果を表1に示す。分散粒子径は小さい方が、分散特性が良いことを示す。
(比較例1)
実施例1において、(1)熟成時間を20時間、22時間の各時間とし、水熱処理時間を5時間とすること、(2)熟成時間を11時間、13時間の各時間とし、水熱処理時間を7時間とすること、(3)熟成時間を20時間とし、水熱処理時間を10時間、12時間の各時間とすること、以外は実施例1と同様にして一連の酸化ジルコニウム水和物粒子を作製した。
実施例1において、(1)熟成時間を20時間、22時間の各時間とし、水熱処理時間を5時間とすること、(2)熟成時間を11時間、13時間の各時間とし、水熱処理時間を7時間とすること、(3)熟成時間を20時間とし、水熱処理時間を10時間、12時間の各時間とすること、以外は実施例1と同様にして一連の酸化ジルコニウム水和物粒子を作製した。
得られた一連の酸化ジルコニウム水和物粒子について、実施例1と同様にして粉末X線回折スペクトルを測定したところ、実施例1と同様に、いずれの酸化ジルコニウム水和物粒子についても、2θが30度付近と50度付近の2つのブロードなピークが観測された。また、各酸化ジルコニウム水和物粒子の平均一次粒子径、全比表面積、平均細孔径、水和水量n、分散粒子径を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
また、上記実施例1及び比較例1の測定値のうち、平均細孔径に対する全比表面積をプロットしたグラフを図4に示す。
(比較例2)
実施例1において、熟成時間を20時間とし、水熱処理時間を7時間とし、水熱処理温度を120℃としたこと以外は実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を作製した。
実施例1において、熟成時間を20時間とし、水熱処理時間を7時間とし、水熱処理温度を120℃としたこと以外は実施例1と同様にして酸化ジルコニウム水和物粒子を作製した。
得られた酸化ジルコニウム水和物粒子について、実施例1と同様にして粉末X線回折スペクトルを測定したところ、正方晶の酸化ジルコニウムに対応する4つの明瞭なピークが観測された。また、この酸化ジルコニウム水和物粒子の平均一次粒子径、全比表面積、水和水量n、分散粒子径を実施例1と同様にして測定した。平均細孔径については、窒素ガス吸着法による測定の結果、細孔構造が観測されなかったため測定できなかった。その結果を表1に示す。
次に、以下のようにして、上記酸化ジルコニウム水和物粒子を用いて酸化ジルコニウム水和物粒子分散膜を作製した。
(実施例2)
実施例1において熟成時間が17時間の酸化ジルコニウム水和物粒子と、結合剤であるポリエーテルスルホンにスルホン酸基を導入したSM−PES(Sulfonated Methyl−Poly Ether Sulfone)と、溶媒であるジメチルスルホキシドとを以下の割合で混合し、ボールミルを用いて分散させて分散液を作製した。
実施例1において熟成時間が17時間の酸化ジルコニウム水和物粒子と、結合剤であるポリエーテルスルホンにスルホン酸基を導入したSM−PES(Sulfonated Methyl−Poly Ether Sulfone)と、溶媒であるジメチルスルホキシドとを以下の割合で混合し、ボールミルを用いて分散させて分散液を作製した。
酸化ジルコニウム水和物粒子 100重量部
SM−PES 100重量部
ジメチルスルホキシド 450重量部
SM−PES 100重量部
ジメチルスルホキシド 450重量部
次に、この分散液を、バーコータを用いてガラス板上に塗布し、これを乾燥後に剥離して、厚さ25μmの酸化ジルコニウム粒子分散膜を作製した。
(比較例3)
比較例1において熟成時間が11時間の酸化ジルコニウム水和物粒子を用いたこと以外は、実施例2と同様にして酸化ジルコニウム粒子分散膜を作製した。
比較例1において熟成時間が11時間の酸化ジルコニウム水和物粒子を用いたこと以外は、実施例2と同様にして酸化ジルコニウム粒子分散膜を作製した。
得られた各酸化ジルコニウム粉末分散膜の断面のTEM写真を撮影し、300個の凝集体粒子の直径又は長軸長さの算術平均から平均分散粒子径を求めた。また、日本分光社製の分光光度計(装置型番:V−570)を用いて、各酸化ジルコニウム粉末分散膜の全光線透過率及びヘイズ値の測定を行った。測定は、光の入射面が酸化ジルコニウム粉末分散膜の塗布面側となるようにして行った。これらの光学特性については、同一条件・同一組成で膜を作製して同一条件で測定した場合には、より全光線透過率が高くヘイズ値が低いほど、分散特性が良好であることを示す。これらの結果を表2に示す。
図4及び表1から明らかなように、実施例1で得られた1.5nm〜1.75nmの平均細孔径を有する酸化ジルコニウム水和物粒子は、いずれも350m2/g以上の大きな比表面積を有し、その平均一次粒子径が5nm以下の酸化ジルコニウム水和物の超微粒子であることが分かる。また、比表面積が大きいために吸着水量が増し、水和水量nも著しく増加しており、分散粒子径も比較的小さく、分散性能が良好であることが分かる。さらに、表2からは、結合剤を加えて分散体を作製し、これを用いて塗布膜を作製した場合にも、実施例2においては比較例3に比べて平均分散粒子径が小さく、全光線透過率は高く、ヘイズ値が低いといった、良好な分散特性を示すことが分かる。このため、本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、これらを均一分散させて利用する、高いプロトン伝導性を必要とする各種材料として非常に有効に用いることができる。
一方、比較例1では、平均一次粒子径や結晶性においては、実施例1と比べてほぼ遜色ない酸化ジルコニウム水和物粒子が得られるものの、平均細孔径が本発明の範囲である1.5nm〜1.75nmから外れ、それと共に比表面積が350m2/g以下となるために水和水量nも実施例1に比べて減少している。この理由は明らかではないが、水分子が入り込むのに最低限必要な酸化ジルコニウム粒子の細孔径が存在し、且つ、入った水分子が解離しにくい程度に狭い細孔径の範囲が存在するためと考えられる。また、比較例1の酸化ジルコニウム水和物粒子については、分散液における分散粒子径も実施例1と比べると大きく、分散膜の各種特性も一様に低下していることが分かる。これら一連の比較例1で得られた酸化ジルコニウム水和物粒子は、用途によっては、比較的低いプロトン伝導性を有すれば利用可能な場合や、分散特性もさほど必要とされない場合には使用できるが、本発明の目的となる、均一分散させて利用する、高いプロトン伝導性を必要とする材料としては適さない。
また、比較例2では、平均一次粒子径が5nmを超え、結晶性が高く、細孔を有しない酸化ジルコニウム水和物粒子が得られた。また、比較例2の酸化ジルコニウム水和物粒子の分散特性は実施例1と比べて遜色ないが、全比表面積及び水和水量nが著しく低下しており、高いプロトン伝導性を必要とする各種材料としては適さないことが分かる。
以上のように本発明の酸化ジルコニウム水和物粒子は、大きな比表面積を有し、水和水量が大きく、その結果高いプロトン伝導性を有し、分散性能に優れるため、固体酸触媒、電気化学キャパシタや燃料電池等に用いる電解質材料、あるいは電気化学的水素ポンプ、水素センサや酸素センサ等の各種ガスセンサ等の多彩な用途への応用が可能である。
Claims (8)
- 一般式ZrO2・nH2Oで表される酸化ジルコニウム水和物粒子であって、
前記粒子の窒素ガス吸着法により求められる平均細孔径は、1.5nm以上1.75nm以下であり、
前記一般式中のnは、2.5を超える数であり、
前記nは、前記粒子を水に分散させた後、濾過し、その後、空気中において60℃で6時間乾燥させた後に測定した数値であることを特徴とする酸化ジルコニウム水和物粒子。 - 前記酸化ジルコニウム水和物粒子の粉末X線回折スペクトルは、2θが30度付近のブロードなピークと50度付近のブロードなピークとで特徴付けられる請求項1に記載の酸化ジルコニウム水和物粒子。
- 前記酸化ジルコニウム水和物粒子の平均一次粒子径は、0.5nm以上5nm以下である請求項1又は2に記載の酸化ジルコニウム水和物粒子。
- 前記一般式中のnは、4以上である請求項1〜3のいずれかに記載の酸化ジルコニウム水和物粒子。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の酸化ジルコニウム水和物粒子を分散媒に分散させたことを特徴とする酸化ジルコニウム水和物粒子分散体。
- 結合剤をさらに含む請求項5に記載の酸化ジルコニウム水和物粒子分散体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の酸化ジルコニウム水和物粒子を分散して含むことを特徴とする酸化ジルコニウム水和物粒子分散膜。
- 結合剤をさらに含む請求項7に記載の酸化ジルコニウム水和物粒子分散膜。
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