JP2012041232A - 酸化イットリウム粒子を含む水性分散液 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸化イットリウム粒子を含有し、高透明性であり、長期保存しても安定性の高い水性分散液を提供すること。
【解決手段】本発明の水性分散液は、酸化イットリウムの粒子を含む。該粒子の最大粒径Dmaxが100nm以下であり、該水性分散液のpHが1〜7である。この水性分散液の可視光の波長領域(400〜800nm)における透過率は好適には80%以上である。前記粒子の体積換算平均粒径D50が1〜70nmであることも好適である。この水性分散液は、BET比表面積が10〜150m2/gである酸化イットリウム粒子を水性媒体に分散させることで好適に製造される。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の水性分散液は、酸化イットリウムの粒子を含む。該粒子の最大粒径Dmaxが100nm以下であり、該水性分散液のpHが1〜7である。この水性分散液の可視光の波長領域(400〜800nm)における透過率は好適には80%以上である。前記粒子の体積換算平均粒径D50が1〜70nmであることも好適である。この水性分散液は、BET比表面積が10〜150m2/gである酸化イットリウム粒子を水性媒体に分散させることで好適に製造される。
【選択図】図1
Description
本発明は、酸化イットリウム粒子を含む水性分散液に関する。本発明の水性分散液は、例えば電子部品製造装置等のプラズマ処理装置のチャンバ内に露出する膜を形成するための原料として好適に用いられる。
半導体デバイスや液晶ディスプレイを製造する工程として、半導体ウエハやガラス基板の表面に、プラズマ処理による成膜工程やドライエッチング工程がある。これらの工程を行うチャンバ内は、ハロゲン系ガスやそのプラズマに曝されることから、高い耐食性が要求される。この目的のため、チャンバ内に、アルミニウムや酸化アルミニウムの基板の表面に酸化イットリウムを溶射した膜を形成することが行われている。この溶射膜がクラックやポアを有する場合には、該クラックやポアを通じてハロゲン系ガスやプラズマが溶射膜内に浸透して基板が冒されてしまう。また、クラックやポアの存在に起因してパーティクルが発生するという問題もある。したがって、酸化イットリウムの溶射膜にクラックやポアを生じさせないようにすることが重要である。この目的のために、酸化イットリウムのゾルをクラックやポアに流し込んでこれらを埋める方法が種々提案されている。
例えば特許文献1においては、基材上に溶射法によって酸化イットリウムの溶射膜を形成する工程と、該溶射膜上にゾルゲル法によって酸化イットリウムのゾルゲル膜を形成する工程を有するプラズマ処理装置用部材の製造方法が提案されている。また特許文献2においては、酸化イットリウムの球状粒子を含むスラリーを、基材の表面に塗布して焼成する耐食性部材の製造方法が提案されている。しかし、これらの文献には、酸化イットリウムのゾルやスラリーの性状や調製方法についての詳細はない。
酸化イットリウムのゾルに関しては、例えば特許文献3に、メジアン径が10〜300nmであり、ヒドロキシカルボン酸を含有するイットリウムの酸化物又は水酸化物のゾルが記載されている。このゾルは、1ヶ月の保存安定性が良好で、増粘や沈殿物の発生がなかったと、同文献には記載されている。しかし同文献に記載の技術では、Y2O3ゾルを得るために、Y2O3前駆体ゲルをオートクレーブによって加圧熱処理しなければならないので、工業化の際に装置が大型化してしまう。また、安全面にも十分に配慮しなければならない。更に、得られたY2O3ゾルを限外濾過によって洗浄しなければならないところ、これには長時間を要するので非効率である。
したがって本発明の課題は、各種の用途に用いられる酸化イットリウムの薄膜の形成に有用な酸化イットリウムの粒子を含む分散液を提供することにある。
本発明は、酸化イットリウムの粒子を含む水性分散液であって、該粒子の最大粒径Dmaxが100nm以下であり、該水性分散液のpHが1〜7であることを特徴とする水性分散液を提供するものである。
また本発明は、前記の水性分散液の好適な製造方法であって、BET比表面積が10〜150m2/gである酸化イットリウム粒子を水性媒体に分散させることを特徴とする水性分散液の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、酸化イットリウム粒子を含有し、高透明性であり、長期保存しても安定性の高い水性分散液が提供される。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の水性分散液は、分散質として酸化イットリウム粒子を含む。本明細書で言う「酸化イットリウム」とは、Y2O3で表される狭義の酸化イットリウムのみならず、酸化イットリウムの含水物や、酸化イットリウムに水酸化イットリウムやオキシ水酸化イットリウムが一部含まれているものを広く包含する。
後述するとおり、本発明の水性分散液は透明性の高いものであるところ、該水性分散液を透明なものとするためには、該水性分散液に含まれる酸化イットリウム粒子の最大粒径Dmaxが重要となる。詳細には、酸化イットリウム粒子の最大粒径Dmaxを100nm以下とすることが必要であり、好ましくは70nm以下、更に好ましくは50nm以下とする。最大粒径Dmaxが100nmを超えると、可視光の散乱によって水性分散液の透明性が低下する。最大粒径Dmaxの下限値に特に制限はなく、小さければ小さいほど好ましいが、20nm程度に最大粒径Dmaxが小さくなれば、水性分散液の透明性は十分に高くなる。酸化イットリウム粒子の最大粒径Dmaxは、光子相関法を利用した動的光散乱法によって測定される。例えば日機装株式会社製のナノトラック粒度分布測定装置を用いて測定される。
水性分散液に含まれる酸化イットリウム粒子の最大粒径Dmaxは上述のとおりであるところ、該粒子の体積換算平均粒径D50は1〜70nm、特に1〜30nmであることが好ましい。最大粒径Dmaxが上述の範囲であることに加えて、平均粒径D50がこの範囲であることによって、水性分散液の透明性が一層向上する。平均粒径D50は、最大粒径Dmaxと同様の方法で測定される。
水性分散液に含まれる酸化イットリウム粒子の濃度は、1〜50重量%、特に1〜30重量%であることが好ましい。この濃度範囲に調整することで、酸化イットリウム粒子が高度に分散し、長時間保存しても沈殿の生成等が認められなくなる。
水性分散液には、酸化イットリウム粒子に加え、高屈折率を有する金属酸化物の粒子を更に含んでいてもよい。そのような金属酸化物としては、例えばMg、Ti、Zn、Zr、Al、La、Ta、Nb、Ga、Ge、Sn、In、Hf、Luなどの金属の酸化物が挙げられる。また、そのような金属複合酸化物としては、SrTiO3、BaTiO3、LiNbO3、KNbO3、LiTaO3、PbZrO3、Pb(ZrxTi1-x)O3(式中、xは0超1未満の数を表す)、PbMoO4、PbMoO5が挙げられる。これらの金属酸化物は、1種又は2種以上を用いることができる。また、これらの金属酸化物は、水性分散液に含まれる固形分としての金属酸化物全体に対して、0.1〜50重量%程度添加することができる。
本発明の水性分散液は、長期保存したときに安定性の高いものであることによっても特徴づけられる。水性分散液の安定性を高めるために、本発明においては水性分散液のpHを1〜7に設定し、好ましくは2〜6、更に好ましくは3〜6に設定する。水性分散液のpHが1未満の場合には、酸化イットリウム粒子が溶解してしまうおそれがある。pHが7超の場合には、酸化イットリウム粒子を高度に分散させることが容易でなく、直ちに又は長期間保存すると沈殿を生じる。
水性分散液のpHを上述の範囲内に調整するためには、水性分散液にpH調整剤を添加すればよい。pH調整剤としては、例えば無機酸や有機酸を用いることができる。無機酸としては、例えばフッ酸、硝酸、塩酸及び硫酸などが挙げられる。有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸及び吉草酸などが挙げられる。これらのうち、特に酢酸を用いることが好ましい。酢酸は、劇物でないので取り扱い性がよく、また弱酸であるのでpH調整が行いやすいからである。水性分散液へのpH調整剤の添加量は、水性分散液のpHが上述の範囲となるような量とすればよい。
水性分散液は、水性液を媒体とするものである。水性液としては、水そのものの他、水に水溶性有機溶媒を添加したものを用いることができる。水溶性有機溶媒としては、例えばアルコール類や、ポリオール類、セロソルブ、カルビトール、ケトン類を用いることができる。これらの有機溶媒は、2種以上混合して使用してもよい。アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、ペンタノールが挙げられる。ポリオール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセロール、ヘキサントリオール、ブタントリオール、ペトリオール、グリセリンが挙げられる。セロソルブとしては、例えばメトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノールが挙げられる。カルビトールとしては、例えばメトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノール、プロポキシエトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノールが挙げられる。ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。これらの有機溶媒は、水性液全体に対して、0.1〜50重量%程度添加することができる。
本発明の水性分散液は、可視光の波長領域(400〜800nm)において高透明性であることによって特徴づけられる。詳細には、可視光の波長領域における透過率が好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上という高透明性のものである。このように透明性の高い、いわゆる小粒径の粒子が単分散した水性分散液を用いて基板の表面に塗膜を形成すると、乾燥後は該基板の表面にナノ粒子が配列した緻密な塗膜となる。この塗膜は、基板のY2O3溶射膜形成粒子の滑落を防ぎ、発塵を効果的に防止する。また、この塗膜は凸凹のない緻密な膜となることから、塗膜の透明性が極めて高くなる。したがって、本発明の水性分散液は透明膜の製造に非常に有用である。水性分散液の透明性は、例えば(株)日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U−4000によって測定することができる。
高透明性を有することに加え、本発明の水性分散液は、長期保存しても安定性が高いものである。例えば、室温下に1ヶ月間保存しても沈殿が生じない程度の安定性を有している。
次に、本発明の水性分散液の好適な製造方法について説明する。本製造方法は、(i)酸化イットリウム粒子の製造工程及び(ii)水性分散液の製造工程に大別される。これら両工程についてそれぞれ説明する。
まず、(i)の酸化イットリウム粒子の製造工程について説明する。酸化イットリウム粒子は、イットリウムを含む水溶液とアルカリ(塩基性化合物)とを混合して中和を行い、イットリウムの沈殿物を生成させ、該沈殿物を焼成することで得られる。イットリウムを含む水溶液は、例えば水溶性のイットリウム塩を水に溶解することで得られる。あるいは、特許文献3に記載されているように、酸化イットリウムを塩酸等の鉱酸に溶解することで得ることもできる。いずれの方法を採用する場合であっても、水溶液中でのイットリウムイオンの濃度は、0.001〜1mol/リットル、特に0.01〜0.5mol/リットルとすることが好ましい。
イットリウムを含む水溶液に添加するアルカリ(塩基性化合物)としては、例えばアンモニア水;水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物の水溶液;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の炭酸塩;などが挙げられる。アルカリの添加量は、Y(OH)3を形成する当量を100として80〜300とすることが経済性の点から好ましい。
イットリウムを含む水溶液の中和は、イットリウムを含む水溶液と塩基とを混合することで行われる。この場合、イットリウムを含む水溶液にアルカリの水溶液を添加してもよいが、アルカリの水溶液中にイットリウムを含む水溶液を添加することで行うことが一層好ましい。イットリウムを含む水溶液の添加は、一括添加でもよく、逐次添加でもよい。添加は加熱下に行ってもよいが、通常は室温(25℃)下に行えば十分である。
前記の中和によって、液中に沈殿物が生じる。この沈殿物を、本発明者らがXRD測定したところ、アモルファス状態のものであることが判明した。したがって、この沈殿物の詳細については現在のところ十分に明らかになっていないが、イットリウムの酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物若しくは含水酸化物又はそれらの混合物ではないかと本発明者らは考えている。この沈殿物を用い、次に述べる焼成操作によって目的とする酸化イットリウムを得る。したがって、以下の説明では、この沈殿物のことを「前駆体」と呼ぶこととする。
前駆体は、常法に従い固液分離された後、1回又は複数回水洗される。水洗は、液の導電率が例えば1000μS/cm以下になるまで行うことが好ましい。前駆体の固液分離を例えばデカンテーションで行う場合には、前駆体を効率的に沈殿させる観点から、液にアンモニア水を少量添加してもよい。
水洗された前駆体は、乾燥に付され水分が除去された後、解砕工程に付される。前駆体の解砕には、簡易的には例えば乳鉢を用いることができる。解砕は、解砕物の大きさが、例えば目開き100μmや75μmのメッシュの篩を通過する程度とすることが好ましい。
解砕された前駆体は、次いで焼成工程に付される。これによって、酸化イットリウム粒子が得られる。焼成工程は、最終的に得られる酸化イットリウム粒子を水性液に分散させたときに、水性分散液の透明性を高める点から重要な工程である。詳細には、焼成工程によって得られる酸化イットリウム粒子のBET比表面積が好ましくは10〜150m2/g、更に好ましくは20〜150m2/g、一層好ましくは20〜100m2/gとなるように焼成を行うことで、透明性の高い水性分散液が容易に得られる。この範囲のBET比表面積を有する酸化イットリウム粒子を得るための好適な焼成条件としては、例えば大気雰囲気下、温度が400〜1200℃、特に400〜700℃で、時間が1〜24時間、特に1〜10時間である。なお、BET比表面積は、例えば島津製作所社製の「フローソーブII2300」を用い、N2吸着法で測定することができる。本明細書では、測定粉末の量を0.3gとし、予備脱気条件は大気圧下、120℃で10分間とした。
上述の条件で焼成されることによって、上述の好適な範囲のBET比表面積を有する酸化イットリウム粒子が得られる。この酸化イットリウム粒子の比表面積換算粒径は、好ましくは50nm以下、更に好ましくは40nm以下、一層好ましくは30nm以下である。この酸化イットリウム粒子は、前駆体と異なり、XRD測定すると、主として酸化イットリウムに由来する回折ピークが観察され、結晶構造を有していることが確認される。
次に、(ii)の水性分散液の製造工程について説明する。焼成によって得られた酸化イットリウム粒子を粉砕する。粉砕は、乾式でも湿式でもよいが、湿式粉砕することが、水性分散液を簡便に得る点から好ましい。湿式粉砕を行う場合には、酸化イットリウム粒子と水性液とを混合してスラリーとなし、ビーズミル等のメディアミルによって粉砕を行う。水性液としては、水又は水に水溶性有機溶媒を添加したものが用いられる。使用するビーズとしては、例えばジルコニアビーズやアルミナビーズ等が挙げられる。この場合、各種のpH調整剤をスラリーに添加して粉砕操作を行うことで、酸化イットリウム粒子を単分散状態に近づけやすくなる。pH調整剤としては、液のpHを好ましくは1〜7、更に好ましくは2〜6に調整できるものを用いることが好ましい。そのようなpH調整剤としては、例えば、先に述べた無機酸や有機酸を用いることができ、特に好ましいものは酢酸である。
上述のpH調整剤は、これを湿式粉砕時にスラリーに添加することに代えて、湿式粉砕して得られた水性分散液に添加してもよい。pH調整剤を水性分散液に添加する場合、その添加量は、水性分散液のpHが、好ましくは1〜7、更に好ましくは2〜6となるようにする。
湿式粉砕後、液とビーズとを分離することで、目的とする水性分散液が得られる。このようにして得られた水性分散液は無色透明であり、可視光の透過率が高いものである。また、長期間保存しても沈殿の生じない安定なものである。
このようにして得られた水性分散液は、該水性分散液が有する可視光に対する透明性と酸化イットリウムの高屈折率(nd=1.9)とを利用して、各種の光学材料や電子材料に用いることができる。例えば、レンズ等の光学系部品、反射防止膜等に用いることができる。具体的には、水性分散液又は該分散液と樹脂とを混合したものを各種の基板、例えば透明基板やレンズ等の表面に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させることで、高透明性を有する薄膜を形成することができる。乾燥後の薄膜を、必要に応じて不活性雰囲気下、大気等の酸化性雰囲気下又は弱還元性雰囲気下(例えば爆発限界濃度以下の含水素雰囲気下)に焼成してもよい。更に、酸化イットリウムを始めとする各種の金属酸化物の溶射膜に、本発明の水性分散液を塗布することで、該溶射膜に存在しているクラックやポアを埋めることができ、該溶射膜からはパーティクルの発塵を防止することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味する。
〔実施例1〕
(1)酸化イットリウム粒子の製造
ガラス容器に458gの水をはかり取り90℃に加熱した。この中へ、36%塩酸32.3gを添加した。更に、Y2O3(日本イットリウム株式会社製)10.0gを添加し、これを完全に溶解させた。その後、液を90℃に調整した(以下、この液を「酸化イットリウム水溶液」という・)。
(1)酸化イットリウム粒子の製造
ガラス容器に458gの水をはかり取り90℃に加熱した。この中へ、36%塩酸32.3gを添加した。更に、Y2O3(日本イットリウム株式会社製)10.0gを添加し、これを完全に溶解させた。その後、液を90℃に調整した(以下、この液を「酸化イットリウム水溶液」という・)。
別のガラス容器に379gの水をはかり取り、21.26gの水酸化ナトリウムを添加した。この水溶液に、酸化イットリウム水溶液を添加した。添加速度は5ml/分とした。この操作によって、液中に沈殿物が生成した。この液を、減圧濾過しケーキを得た。このケーキを1Lの水にリパルプし、減圧濾過した。濾液の導電率が1000μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し析出粒子を得た。
洗浄終了後、このケーキを大気中で120℃・12時間乾燥し、水分を除去した。このようにして得られた乾燥ケーキを乳鉢で解砕し、次いで目開き75μmのメッシュで分級し、前駆体粒子を得た。この前駆体粒子のXRD回折図を図1に示す。同図から明らかなように、この前駆体粒子はアモルファスのものであった。
この前駆体を大気中で750℃・3時間焼成し、目的とする酸化イットリウム粒子を得た。この酸化イットリウム粒子のXRD回折図を図1に示す。同図から明らかなように、この酸化イットリウム粒子はY2O3に由来する回折ピークを示すものであった。この酸化イットリウム粒子のBET比表面積を測定したところ、45m2/gであった。この酸化イットリウム粒子の比表面積換算粒径は28nmであった。
(2)水性分散液の製造
50mlの樹脂製容器に、前記の(1)で得られた酸化イットリウム粒子2.7gと、純水25gと、酢酸0.5gとを入れた。更に0.1mmφのジルコニアビーズを入れ、容器を密栓した後、ペイントシェーカによって湿式粉砕を行った。このときの液のpHは6であった。湿式粉砕は1時間行った。最後に液を0.2μmのメンブランフィルターに通し粗粒を除去して、目的とする酸化イットリウム粒子の水性分散液(ゾル)を得た。得られた水性分散液は無色透明であり、これに赤色レーザ(波長650nm)を照射したところ、チンダル現象が観察され、酸化イットリウム粒子が高度に分散していることが確認された。
50mlの樹脂製容器に、前記の(1)で得られた酸化イットリウム粒子2.7gと、純水25gと、酢酸0.5gとを入れた。更に0.1mmφのジルコニアビーズを入れ、容器を密栓した後、ペイントシェーカによって湿式粉砕を行った。このときの液のpHは6であった。湿式粉砕は1時間行った。最後に液を0.2μmのメンブランフィルターに通し粗粒を除去して、目的とする酸化イットリウム粒子の水性分散液(ゾル)を得た。得られた水性分散液は無色透明であり、これに赤色レーザ(波長650nm)を照射したところ、チンダル現象が観察され、酸化イットリウム粒子が高度に分散していることが確認された。
得られた水性分散液をコロジオン膜にすくい取り、透過型電子顕微鏡(TEM)観察したところ、酸化イットリウム粒子の一次粒子径は14nmであった。そのTEM像を図2に示す。また、日機装株式会社製のナノトラック粒度分布測定装置を用いた粒度分布の測定結果を図3に示す。酸化イットリウム粒子の最大粒径Dmaxは75nmであり、体積換算平均粒径D50は12nmであった。
この水性分散液を少量はかり取り、200℃で乾燥させた後の酸化イットリウム粒子の固形分濃度は8%であり、ガラス質の透明な固形分が残存することが確認された。また、この水性分散液の可視光に対する透明性を(株)日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U−4000によって測定したところ、可視光の波長領域(波長400〜800nm)における透過率は81%以上であった(最低値がλ=400nmで81%)。透過率のグラフを図4に示す。
更に、この水性分散液を常温(25℃)で1ヶ月保存して保存安定性を調べたところ、沈殿の生成は観察されず、高分散状態が維持されていることが確認された。
(3)酸化イットリウム膜の成形
1cm×1cmのアルミナ基材上に、酸化イットリウムを溶射し、酸化イットリウム溶射膜を形成した。酸化イットリウム溶射膜の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図5(a)に示す。酸化イットリウム溶射膜を形成した基板上に、(2)で得られたイットリウム水性分散液を、スポイトで2滴(約0.5cc)滴下することにより含浸させ、その後、大気中で250℃・1時間乾燥させ、目的とする酸化イットリウム膜を得た。この酸化イットリウム膜のSEM像を図5(b)に示す。図5(b)から、基板の酸化イットリウム溶射膜表面は酸化イットリウム粒子により緻密に覆われており、良好な膜が形成されていることが分かる。したがって、この膜によれば、酸化イットリウム溶射膜粒子の滑落等が防止される。
1cm×1cmのアルミナ基材上に、酸化イットリウムを溶射し、酸化イットリウム溶射膜を形成した。酸化イットリウム溶射膜の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図5(a)に示す。酸化イットリウム溶射膜を形成した基板上に、(2)で得られたイットリウム水性分散液を、スポイトで2滴(約0.5cc)滴下することにより含浸させ、その後、大気中で250℃・1時間乾燥させ、目的とする酸化イットリウム膜を得た。この酸化イットリウム膜のSEM像を図5(b)に示す。図5(b)から、基板の酸化イットリウム溶射膜表面は酸化イットリウム粒子により緻密に覆われており、良好な膜が形成されていることが分かる。したがって、この膜によれば、酸化イットリウム溶射膜粒子の滑落等が防止される。
〔比較例1〕
(1)酸化イットリウム粒子の製造
ガラス容器に379gの水をはかり取り、14.88gの水酸化ナトリウムを添加した。この水溶液に、実施例1で得られた酸化イットリウム水溶液と同じものを、添加速度5ml/分で添加し沈殿物を得た。その後は、実施例1と同様の操作を行って前駆体粒子を得、該前駆体粒子を大気中で1050℃・3時間焼成し、目的とする酸化イットリウム粒子を得た。この酸化イットリウム粒子のBET比表面積を測定したところ、8m2/gであった。この酸化イットリウム粒子の比表面積換算粒径は155nmであった。
(1)酸化イットリウム粒子の製造
ガラス容器に379gの水をはかり取り、14.88gの水酸化ナトリウムを添加した。この水溶液に、実施例1で得られた酸化イットリウム水溶液と同じものを、添加速度5ml/分で添加し沈殿物を得た。その後は、実施例1と同様の操作を行って前駆体粒子を得、該前駆体粒子を大気中で1050℃・3時間焼成し、目的とする酸化イットリウム粒子を得た。この酸化イットリウム粒子のBET比表面積を測定したところ、8m2/gであった。この酸化イットリウム粒子の比表面積換算粒径は155nmであった。
(2)水性分散液の製造
前記(1)で得られた酸化イットリウム粒子を用い、実施例1と同様にして水性分散液を製造した。得られた水性分散液は白濁しており、また直ちに沈殿が観察された。そのため、日機装株式会社製のナノトラック粒度分布測定装置を用いて該酸化イットリウム粒子の粒度分布、最大粒径Dmax及び体積換算平均粒径D50を測定することが不可能であった。
前記(1)で得られた酸化イットリウム粒子を用い、実施例1と同様にして水性分散液を製造した。得られた水性分散液は白濁しており、また直ちに沈殿が観察された。そのため、日機装株式会社製のナノトラック粒度分布測定装置を用いて該酸化イットリウム粒子の粒度分布、最大粒径Dmax及び体積換算平均粒径D50を測定することが不可能であった。
Claims (7)
- 酸化イットリウムの粒子を含む水性分散液であって、該粒子の最大粒径Dmaxが100nm以下であり、該水性分散液のpHが1〜7であることを特徴とする水性分散液。
- 可視光の波長領域における透過率が80%以上である請求項1記載の水性分散液。
- 前記粒子の体積換算平均粒径D50が1〜70nmである請求項1又は2記載の水性分散液。
- 請求項1記載の水性分散液の製造方法であって、BET比表面積が10〜150m2/gである酸化イットリウム粒子を水性媒体に分散させることを特徴とする水性分散液の製造方法。
- イットリウムを含む水溶液と塩基とを混合してイットリウムの沈殿物を生成させ、該沈殿物を大気雰囲気下に焼成して前記の酸化イットリウム粒子を得る請求項4記載の製造方法。
- 請求項1記載の水性分散液を基板の表面に塗布して塗膜を形成、該塗膜を乾燥させることを特徴とする透明薄膜の製造方法。
- 前記基板が、酸化イットリウムの溶射膜である請求項6記載の製造方法。
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JP2010184102A Pending JP2012041232A (ja) | 2010-08-19 | 2010-08-19 | 酸化イットリウム粒子を含む水性分散液 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2012041232A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN116199514A (zh) * | 2023-02-28 | 2023-06-02 | 常州市卓群纳米新材料有限公司 | 液相等离子喷涂高纯氧化钇悬浮液及其制备方法 |
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2010
- 2010-08-19 JP JP2010184102A patent/JP2012041232A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN116199514A (zh) * | 2023-02-28 | 2023-06-02 | 常州市卓群纳米新材料有限公司 | 液相等离子喷涂高纯氧化钇悬浮液及其制备方法 |
CN116199514B (zh) * | 2023-02-28 | 2024-04-23 | 常州市卓群纳米新材料有限公司 | 液相等离子喷涂高纯氧化钇悬浮液及其制备方法 |
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