JP5233007B2 - 透明導電材用塗料および透明導電膜の製造方法 - Google Patents
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ところが、ITO粉末を塗料化するにあたり、当該ITO粉末が非常に微細でかつ高分散であることが求められる。これは当該ITO粒子を含む塗料中に、粗いITO粒子が存在すると、塗布時におけるムラの発生や、インクジェットにおける目詰まりの原因となり好ましくないからである。さらに、当該ITO粉末の分散性が悪く一次粒子が凝集し易い場合も、同様の問題点が起こる。その為、ITO粒子を微細化する技術、および、粒子形状や大きさ均一で、分散性の良いITO粉末が求められている。
粉末を構成する粒子のうち、50vol%以上が立方体または直方体の形状であり、粉末の平均粒径が、0.05μm以上、5.0μm以下であるITO粉末が溶媒に分散している透明導電材用塗料の製造方法であって、
In塩溶液へ塩基性沈殿剤を添加して水酸化In沈殿溶液を得る工程と、
当該水酸化In沈殿溶液を50℃以上、110℃以下に加熱して30分間以上保ち、立方体または直方体の水酸化In粒子を生成させる工程と、
当該立方体または直方体の水酸化In粒子へSn塩を添加し、さらに塩基性沈殿剤を添加して水酸化In・水酸化Sn沈殿物を得る工程と、
当該水酸化In・水酸化Sn沈殿物を110℃以上、300℃以下にて30分間以上水熱処理して水酸化In・水酸化Snスラリーを得る工程と、
当該水酸化In・水酸化Snスラリーを200℃以上、700℃以下にて10分間以上焼成して焼成物を得る工程と、
当該焼成物を粉砕してITO粉末を得る工程と、
当該ITO粉末を溶媒に分散させる工程とを、有することを特徴とする透明導電材用塗料の製造方法である。
粉末を構成する粒子のうち、50vol%以上が立方体または直方体の形状であり、粉末の平均粒径が、0.05μm以上、5.0μm以下であるITO粉末が溶媒に分散している透明導電材用塗料の製造方法であって、
In塩溶液へ塩基性沈殿剤を添加して水酸化In沈殿溶液を得る工程と、
当該水酸化In沈殿溶液を50℃以上、110℃以下に加熱して30分間以上保ち、立方体または直方体の水酸化In粒子を生成させる工程と、
当該水酸化In粒子を110℃以上、300℃以下にて30分間以上水熱処理して水酸化Inスラリーを得る工程と、
当該水酸化InスラリーへSn塩を添加し、さらに塩基性沈殿剤を添加して水酸化In・水酸化Snスラリーを得る工程と
当該水酸化In・水酸化Snスラリーを200℃以上、700℃以下にて10分間以上焼成して焼成物を得る工程と、
当該焼成物を粉砕してITO粉末を得る工程と、
当該ITO粉末を溶媒に分散させる工程とを、有することを特徴とする透明導電材用塗料の製造方法である。
第1または第2の構成に記載の透明導電材用塗料の製造方法により製造された透明導電材用塗料を基板に塗布して成膜する工程とを、有することを特徴とする透明導電膜の製造方法である。
図1は、本発明に係るITO粉末を構成するITO粒子の1例(後述する実施例1)の
TEM像(175,000倍)である。また、図2は、従来の技術に相当するITO粉末を構成するITO粒子の1例(後述する比較例2)のTEM像(175,000倍)である。
両者を比較すると、その形状の差異は明確である。図1に示す本発明に係るITO粒子は、立方体または直方体の形状を有する粒子である。即ち、本発明に係るITO粒子は、単なる板状、多角形状、円盤状といった形状ではなく、各稜がほぼ直角を成した6面体構造を有している。
これに対し、図2に示す従来の技術に係るITO粒子は、各結晶の構造が不定型で且つ凝集している。
この為、本発明に係るITO粉末とは、上述したITO粒子(一次粒子)が数個から数十個程度凝集して0.05μm以上、5.0μm以下の平均粒子径となったものであると考えられる。従って、ITO粉末の平均粒径は、TEM像等で観察されるITO粒子(一次粒子)が凝集した二次粒子の平均粒子径を示している。
まず、In濃度が0.1〜4.0mol/L、好ましくは0.3〜3.0mol/LのIn塩溶液を準備する。
ここで、当該In塩溶液は、In2(C2O4)3、InCl3、In(NO3)3およびIn2(SO4)3の群から選ばれる少なくとも1種のIn塩溶液であるのが好ましい。当該群は、InメタルをH2C2O4、HNO3、HCl、H2SO4などに溶解することによって得ることができるが、HNO3を使用するのが好ましい。
ましくは0.3〜3.0mol/Lになるように調整する。これは、In濃度が0.1mol/L以上であれば生産性の観点から好ましいからである。また、In濃度が4.0mol/L以下であれば、水酸化Inの粒子形状および粒度分布が均一となり、後述する加熱処理後の水酸化Inの粒子形状および粒度分布も均一となり、均一な粒径の粒子を作製することが容易になるからである。
っても良いし、後述する水熱工程後に行っても良い。ただし、生産性の観点からSn添加剤の添加は、当該加熱後の時点で行うのが、好ましい構成である。
当該本発明に係る透明導電膜塗料は、本発明に係るITO粉末を純水中に分散させることで製造することが出来る。この際、当該透明導電膜塗料におけるITO粉末の濃度は、例えば5wt%とすればよい。
また、本発明に係るITO粉末を分散させる液状媒体としては、上述した純水の他に、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、トルエン、シクロヘキサン等の有機溶媒でも良く、さらに界面活性剤またはカップリング剤などの分散剤を併用してもよい。
例えば、ガラス基板上に成膜する場合は、当該ガラス基板をスピンコーターにより回転させる。そこへ、本発明に係る透明導電膜塗料を滴下してコートする。当該コート後、ガラス基板を取り出し乾燥させた後、再度、スピンコーターにより回転させ、オーバーコート材を滴下する。得られたオーバーコート後のガラス基板を乾燥後、窒素雰囲気で例えば200℃まで昇温させて、例えば1時間保持した後、自然冷却して透明導電膜が形成されたガラス基板を得ることが出来る。得られた透明導電膜が形成されたガラス基板は、加熱温度が200℃程度であるにも拘わらず、良好な導電性を示した。
硝酸Inに純水を加えてIn濃度が0.5mol/Lになるように硝酸In溶液を調製する。ここで液温が60℃を超えないようにしながら、当該硝酸In溶液20mlへ、塩基性沈殿剤として8.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液20mlを添加して反応させ、水酸化Inの沈殿溶液40mlを得た。
この沈殿溶液を密閉容器に入れ、100℃で12時間加熱した。加熱後の沈殿溶液から遠心分離器を用いて沈殿物を分離採集した。そして採集した沈殿物を水洗した後、再び、当該沈殿物を20mlの純水溶液に分散させた。当該分散液中へ、Inに対してSnの濃度が5at%となるように、0.25mol/Lの塩化Sn溶液2.1mlを加え、さらに水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH5.0になるように調整し、Sn含有水酸化Inを沈殿させた沈殿溶液とした。
TEM(透過電子顕微鏡)で形状観察を行ったところ、生成した粒子の90vol%は、平均粒子径33nmの、立方体形状または直方体形状の粒子であった。当該ITO粒子のTEM像(175,000倍)を図1に示す。なお、粒子の平均粒子径は、TEM写真上の粒子の長さが最大となる部分測定し、その測定値を直径(粒径)とした。なお、測定対象とするITO粒子(一次粒子)の数は100個とした。
実施例1と同様に、0.5mol/Lの硝酸In溶液20mlに、8.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液20mlを添加して反応させ、水酸化Inの沈殿溶液40mlを得た。
そして、当該沈殿溶液を密閉容器に入れ、100℃で12時間加熱した。
当該加熱後の沈殿溶液から遠心分離器を用いて沈殿物を分離し、当該沈殿物を水洗した後、再び沈殿物を20mlの純水溶液に分散させた。当該分散液中に0.25mol/Lの塩化Sn溶液2.1mlを加え、さらに水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH5.0になるように調整し、Sn含有水酸化Inを沈殿させた。得られた沈殿溶液は、水熱処理を行わずに、遠心分離器を用いて沈殿物を分離した。当該沈殿物を水洗した後、80℃で空気中乾燥した、ITO粉末の前駆体であるSn含有水酸化Inを得た。得られたSn含有水酸化In粉末のD50は3.19μmであった。
得られたITO粉末のBET比表面積は88.7m2/g、粒度分布測定においてD50は1.37μmで、粒子の個数統計値を取ったところ、最も個数の多い粒子の粒子径(最頻径)は0.067μmであった。さらにTEMで形状観察を行ったところ、実施例1と同様に、生成したITO粒子(一次粒子)の90vol%は、平均粒子径35nmの、立方体形状または直方体形状の粒子であった。さらにXRDスペクトルを測定したところ、酸化Inの単一組成であり、結晶子径は37.6nmであることが判明した。
100℃での12時間加熱を行なわない以外は、実施例1と同様の操作を行って、40mlのSn含有水酸化In沈殿溶液を得た。
ここで、当該Sn含有水酸化In沈殿溶液を加熱処理することなく、オートクレーブに設置し、実施例1と同様の水熱処理を施した。得られた沈殿物を遠心分離器で沈殿物を分離・水洗した後、80℃で空気中乾燥し、Sn含有水酸化Inを得た。得られたSn含有水酸化In粉末の粒度分布測定を行ったところ、D50は5.41μmであった。
100℃での12時間加熱を行なわない以外は、実施例1と同様の操作を行って、40mlのSn含有水酸化In沈殿溶液を得た。
ここで、当該Sn含有水酸化In沈殿溶液を、遠心分離器を用いて固液分離して沈殿物を採集した。当該沈殿物を水洗後、さらに0.25mol/L塩化Sn溶液2.1mlを加えpH5.0になるように調整し40mlのSn含有水酸化In沈殿溶液を得た。
得られたSn含有水酸化In沈殿溶液へ、加熱処理もオートクレーブによる水熱処理も施すことなく遠心分離器を用いて、沈殿物を分離採取した。採取した沈殿を水洗した後、80℃で空気中乾燥してSn含有水酸化Inを得た。得られたSn含有水酸化Inの粒度分布測定を行ったところ、D50は1.62μmであった。
ITO粉末を得た。得られたITO粉末のBET比表面積は40.8m2/g、粒度分布測定においてD50は3.63μmであった。さらに粒子の個数統計値を取ったところ、最も個数の多い粒子の粒子径(最頻径)は0.829μmであった。また、TEMにて形状観察を行ったところ、平均粒子径20nmの丸みをおびたITO粒子(一次粒子)が焼結した凝集体が見られた。さらにXRDスペクトルを測定したところ、ピークが非常にブロードな結果が得られた。当該ITO粒子のTEM像(175,000倍)を図2に示す。
実施例1、参考例1および比較例1、2に係るITO粉末について、XRDスペクトルから求めた生成相、(222)回折ピークから求めた強度、結晶子径と、比表面積(BET)、平均粒径(D50)、最頻径についての測定結果を表1に示す。
さらに、加熱処理も水熱処理も施していない比較例2に係るITO粉末は、XRDスペクトルの結果より結晶性の良い酸化In相が生成していないことが判明した。その上、ITO粒子(一次粒子)同士の焼結や凝集が顕著に起きており、分散性に劣るものであると考えられる。
本実施例2においては、実施例1における初期のIn溶液濃度を変化させてITO粉末を調製した例である。
硝酸In溶液の濃度を0.1mol/Lとし、0.1mol/L硝酸In溶液20mlを、8.0mol/L水酸化ナトリウム溶液20mlを反応させ沈殿溶液を得た以外は、実施例1と同様にして、実施例2の試料1に係るITO粉末を調製した。
本実施例3においては、実施例1における出発原料を変化させてITO粉末を調製した例である。
塩基性沈殿剤を8.0mol/L水酸化ナトリウム溶液から8.0mol/Lアンモニア溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の試料1に係るITO粉末を調製した。
本実施例4においては、実施例1における熱処理温度を変化させてITO粉末を調製した例である。
加熱工程の温度を70℃に変更した以外、実施例1と同様の方法で実施例4の試料1に係るITO粉末を調製した。
実施例2から4に係るITO粉末について、XRDスペクトルから求めた生成相、(222)回折ピークから求めた強度、結晶子径と、比表面積(BET)について測定した結果を表2に示す。
また、実施例1、3のデータより、In塩を塩化物に、塩基性塩をアンモニアに変化させても、実施例1と同等の結晶性の良いITO粉末が得られることが判明した。
Claims (3)
- 粉末を構成する粒子のうち、50vol%以上が立方体または直方体の形状であり、粉末の平均粒径が、0.05μm以上、5.0μm以下であるITO粉末が溶媒に分散している透明導電材用塗料の製造方法であって、
In塩溶液へ塩基性沈殿剤を添加して水酸化In沈殿溶液を得る工程と、
当該水酸化In沈殿溶液を50℃以上、110℃以下に加熱して30分間以上保ち、立方体または直方体の水酸化In粒子を生成させる工程と、
当該立方体または直方体の水酸化In粒子へSn塩を添加し、さらに塩基性沈殿剤を添加して水酸化In・水酸化Sn沈殿物を得る工程と、
当該水酸化In・水酸化Sn沈殿物を110℃以上、300℃以下にて30分間以上水熱処理して水酸化In・水酸化Snスラリーを得る工程と、
当該水酸化In・水酸化Snスラリーを200℃以上、700℃以下にて10分間以上焼成して焼成物を得る工程と、
当該焼成物を粉砕してITO粉末を得る工程と、
当該ITO粉末を溶媒に分散させる工程とを、有することを特徴とする透明導電材用塗料の製造方法。 - 粉末を構成する粒子のうち、50vol%以上が立方体または直方体の形状であり、粉末の平均粒径が、0.05μm以上、5.0μm以下であるITO粉末が溶媒に分散している透明導電材用塗料の製造方法であって、
In塩溶液へ塩基性沈殿剤を添加して水酸化In沈殿溶液を得る工程と、
当該水酸化In沈殿溶液を50℃以上、110℃以下に加熱して30分間以上保ち、立方体または直方体の水酸化In粒子を生成させる工程と、
当該水酸化In粒子を110℃以上、300℃以下にて30分間以上水熱処理して水酸化Inスラリーを得る工程と、
当該水酸化InスラリーへSn塩を添加し、さらに塩基性沈殿剤を添加して水酸化In・水酸化Snスラリーを得る工程と
当該水酸化In・水酸化Snスラリーを200℃以上、700℃以下にて10分間以上焼成して焼成物を得る工程と、
当該焼成物を粉砕してITO粉末を得る工程と、
当該ITO粉末を溶媒に分散させる工程とを、有することを特徴とする透明導電材用塗料の製造方法。 - 請求項1または2に記載の透明導電材用塗料の製造方法により製造された透明導電材用塗料を基板に塗布して成膜する工程とを、有することを特徴とする透明導電膜の製造方法。
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