JP2009249295A - 安定なエダラボン注射剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】
長期保存した場合において、経時的な着色が認められず、さらに不溶性異物や不純物の生成を抑制したエダラボンを有効成分として含有する注射剤を提供する。
【解決手段】
アルファチオグリセリン、チオグリコール酸ナトリウム又はグルタチオンのいずれか一つと、亜硫酸水素ナトリウム、等張化剤、pH調整剤及びエダラボンを含有する注射剤。
【選択図】 なし

Description

長期保存した場合において、経時的な溶液の着色が認められず、さらに不溶性異物や不純物の生成を抑制したエダラボンを有効成分として含有する注射剤に関する。
エダラボン(3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン)は固体状態では極めて安定な化合物である。しかし、水溶液として長期間保存すると、溶液中の溶存酸素により容易に酸化され、水溶液の着色や不溶性異物の生成が認められることが知られている(特許文献1、2、3及び4)。したがって、注射剤として用いる場合には、溶液の着色や不溶性異物の生成を抑制することが不可欠であり、長期保存安定性に優れたエダラボン注射剤の開発が求められている。
このため、経時安定性を高め、長期保存を可能とするために、種々の検討がなされている。
特許文献1には、亜硫酸塩、亜硫酸水素及びピロ硫酸の中から選ばれる一種以上の化合物及びシステイン類を含有するエダラボンの水溶液であって、かつ該溶液のpHが2.5〜6.0の範囲にあるエダラボンを有効成分とする注射剤が開示されている。
特許文献2には溶液補助剤としてエタノールを用いることにより高濃度(3〜60mg/mL)のエダラボンを含有し、さらに化学的な安定性を高めるために安定化剤としてエチエンジアミン、エデト酸カルシウム2ナトリウム、或いはエデト酸2ナトリウムのキレート化剤を含む注射剤が開示されている。
特許文献3には、エダラボン濃度が1.5〜3.5w/w%の範囲であり、溶解補助剤としてエタノールを含有し、さらに着色を抑制し、かつ化学的安定性を高めるための安定剤として亜硫酸水素ナトリウム及びピロ亜硫酸ナトリウムから選ばれる一種以上を含有する注射剤が開示されている。
特許文献4には、エダラボン、エチレンジアミンテトラアセテート、アルコール及び水溶液中で亜硫酸水素イオンを発生する化合物を含有する、長期保存した場合における経時的な溶液の着色を抑制した安定な水溶液が開示されている。
特開昭63−132833号公報 再公表2002−092082号公報 特開2006−257020号公報 特開2008−1605号公報
しかしながら、注射剤の添加剤としてエタノールを使用した場合、投与すると血中エタノール濃度が高くなり、必ずしも安全性の高い医薬品とはならなかった。また、キレート化剤は、生体内の必須金属であるカルシウム等をキレート化するため、副作用の可能性がある点も考えられる。
そこで、より安全性が高く、かつ、長期の保存安定性に優れたエダラボン注射剤の開発が求められている。
本発明の課題は、注射剤の添加剤として好ましくないエタノールやキレート化剤を使用することなく、長期保存した場合に、経時的な溶液の着色が認められず、さらに不溶性異物や不純物の生成を抑制したエダラボンを有効成分として含有する新たな注射剤を提供することである。
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、(1)アルファチオグリセリン、チオグリコール酸ナトリウム又はグルタチオンのいずれかから選ばれる1種以上の化合物と(2)亜硫酸、亜硫酸水素塩又はピロ亜硫酸塩のいずれかから選ばれる1種以上の化合物と、等張化剤及びpH調整剤を組み合わせた溶解液を調製することにより、長期保存において、経時的な着色が認められず、さらに不溶性異物や不純物の生成を抑制したエダラボンを有効成分として含有する新たな注射剤を見出し、本発明を完成した。
第一の発明は、(1)有効成分としてのエダラボンと、(2)アルファチオグリセリン、チオグリコール酸ナトリウム又はグルタチオンのいずれかから選ばれる1種以上の化合物と、(3)亜硫酸、亜硫酸水素塩又はピロ亜硫酸塩のいずれかから選ばれる1種以上の化合物と、を含有することを特徴とするエダラボン注射剤である。
第二の発明は、第一の発明のアルファチオグリセリンの濃度が0.1〜0.7mg/mLであることを特徴とするエダラボン注射剤である。
第三の発明は、第一の発明のチオグリコール酸ナトリウムの濃度が0.05〜0.5mg/mLであることを特徴とするエダラボン注射剤の発明である。
第四の発明は、第一の発明のグルタチオンの濃度が0.1〜1.2mg/mLであることを特徴とするエダラボン注射剤である。
第五の発明は、第一の発明ないし第四の発明の亜硫酸水素塩が亜硫酸水素ナトリウムであることを特徴とするエダラボン注射剤である。
第六の発明は、第一の発明ないし第五の発明に等張化剤及びpH調整剤を更に含むことを特徴とするエダラボン注射剤である。
本発明により、注射剤の添加剤としての適用が望ましくないエタノール及びキレート化剤を使用することなく、長期保存した場合における経時的な溶液の着色が認められず、さらに不溶性異物や不純物の生成を抑制したエダラボンを有効成分として含有する新たな注射剤を提供することが可能となった。
また、従来から安定化剤として使用されているシステイン類に比して、有意に不純物量を抑制することが可能であり、長期保存した場合に、経時的な溶液の着色が認められず、さらに不溶性異物の生成を抑制したエダラボンを有効成分として含有する新たな注射剤を提供することが可能となった。
本発明の注射剤には、安定化剤として抗酸化作用を有する亜硫酸塩、亜硫酸水素塩又はピロ亜硫酸塩が含まれる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウムなどが挙げられ、亜硫酸水素塩としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウムなどが挙げられる。また、ピロ亜硫酸塩としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウムなどが挙げられる。亜硫酸塩、亜硫酸水素塩及びピロ亜硫酸塩の注射剤における濃度は、安定化を得られる濃度であれば、どのような濃度でも良いが、一般的には0.5〜1.5mg/mLが好ましく、さらに好ましくは、0.8〜1.2mg/mLである。
本発明の注射剤に用いられる、アルファチオグリセリン、チオグリコール酸ナトリウム及びグルタチオンの濃度は、一般的には0.05〜1.5mg/mLが好ましく、より好ましくはアルファチオグリセリンでは、0.3〜0.7mg/mL、チオグリコール酸ナトリウムでは、0.05〜0.3mg/mL、グルタチオンでは0.8〜1.2mg/mLである。
所望により含めることのできる等張化剤は、一般的に用いられるものであれば制限はないが、例えば塩化ナトリウムが挙げられる。また、注射剤のpH調整剤として一般的に用いられるものであれば制限はないが、例えば水酸化ナトリウム又はリン酸が使用される。
本発明における注射剤は、一般的な注射剤の製造方法により製造することができる。例えば、精製水には亜硫酸水素塩などの安定化剤を溶解し、加熱下でエダラボンを溶解し、その後アルファチオグリセリン、チオグリコール酸ナトリウム又はグルタチオン、及び等張化剤を加え、最後にpH調整剤を加えることにより製造することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
精製水80mLに亜硫酸水素ナトリウム100mgを溶解した。次に、エダラボン150mg加え、60℃に加温しながら撹拌溶解後、室温まで冷却した。これに塩化ナトリウム675mg及びアルファチオグリセリン50mgを加え溶解した。水酸化ナトリウム溶液及びリン酸水溶液を用いて、pHが3.8〜4.0になるよう調整し、精製水を加えて100mLとした。この溶液をろ過滅菌後、容量20mLのガラスアンプルに充填し、ヘッドスペースの空気を窒素で置換した。その後、ガラスアンプルの開口部を熔閉し、エダラボンを1.5mg/mL含有する注射剤を製した。
実施例1のアルファチオグリセリンの代わりに、チオグリコール酸ナトリウム10mgを用い、他は実施例1と同様の方法で注射剤を製した。
実施例1のアルファチオグリセリンの代わりに、グルタチオン100mgを用い、他は実施例1と同様の方法で注射剤を製した。
比較例1
精製水80mLに亜硫酸水素ナトリウム100mgを溶解した。次に、エダラボン150mgを加え、60℃に加温しながら撹拌溶解後、室温まで冷却した。これに塩化ナトリウム675mg及びL‐システイン塩酸塩第一水和物50mgを加え溶解した。水酸化ナトリウム溶液及びリン酸水溶液を用いて、pHが3.8〜4.0になるよう調整し、精製水を加えて100mLとした。この溶液をろ過滅菌後、容量20mLのガラスアンプルに充填し、ヘッドスペースの空気を窒素で置換した。その後、ガラスアンプルの開口部を熔閉し、エダラボンを1.5mg/mL含有する注射剤を製した。
比較例2
比較例1のL−システイン塩酸塩第一水和物の代わりにEDTA5mgを用い、他は比較例1と同様の方法で注射剤を製した。
比較例3
比較例2のEDTAの濃度を10mgとし、他は比較例1と同様の方法で注射剤を製した。
上記実施例1〜3の組成を表1に、比較例1〜3の組成を表2に示す。
Figure 2009249295
Figure 2009249295
〔試験例:保存安定性の確認〕
実施例1〜3及び比較例1〜3の注射剤を60℃で4週間遮光保存したものについて、肉眼による外観観察と不純物の定量を実施した。不純物量は、HPLC法により測定した一定期間経過後の分解物生成量の合計を表3に示す。
(1)HPLC測定方法
液体クロマトグラフ法により以下の2つの条件で不純物を検出し、クロマトグラム上に確認された全不純物ピークの面積値を合計し、それをクロマトグラム上に確認されたピーク面積値の合計で除し、100を乗じて求めた(面積百分率)。
(2)測定条件
<条件1>
検出器 :紫外吸光光度計(波長:240nm)
カラム :内径4mm、長さ15cmのステンレス管に5μmオクタデシリル化シリカゲルを充填したもの。
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相 :水・メタノール・氷酢酸混液(100:100:1)
流量 :エダラボンの保持時間が約4分になるように調整した。
<条件2>
検出器 :紫外吸光光度計(波長:240nm)
カラム :内径4mm、長さ15cmのステンレス管に5μmオクタデシリル化シリカゲルを充填したもの。
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相 :10mM酢酸水溶液・メタノール混液(3:1)
流量 :エダラボンの保持時間が約11分になるように調整した。
各注射剤を60℃で4時間遮光保存した場合の肉眼による外観観察と不純物の定量に関する結果を表3に示す。
Figure 2009249295
(3)試験結果
表3の結果から、亜硫酸水素ナトリウムとアルファチオグリセリン(実施例1)、亜硫酸水素ナトリウムとチオグリコール酸ナトリウム(実施例2)、並びに亜硫酸水素ナトリウムとグルタチオン(実施例3)の組合せで製した本発明のエダラボン注射剤は長期保存における経時的な着色が認められなかった。一方、比較例2及び3の亜硫酸水素ナトリウムとEDTAを組み合わせたエダラボン注射剤では、経時的な溶液の着色と沈殿物の生成が認められた。
また、亜硫酸水素ナトリウムとアルファチオグリセリン(実施例1)、亜硫酸水素ナトリウムとチオグリコール酸ナトリウム(実施例2)、並びに亜硫酸水素ナトリウムとグルタチオン(実施例3)の組合せで製した本発明のエダラボン注射剤は、いずれも総不純物生成量が1%以下であった。特に、亜硫酸水素ナトリウムとアルファチオグリセリンを組み合わせた実施例1では、総不純物生成量が0.22%と有意な低値を示した。一方、亜硫酸水素ナトリウムとシステイン類又はEDTAを組み合わせた比較例1〜3では総不純物量が1%以上と有意な高値を示した。特に、EDTA濃度が10mgの比較例3では総不純物量が2%を超え高値を示した。
以上の結果から、亜硫酸水素ナトリウムとアルファチオグリセリン、亜硫酸水素ナトリウムとチオグリコール酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムとグルタチオンをそれぞれ組み合わせたエダラボン注射剤は長期保存安定性に優れ、経時的な溶液の着色と、不溶性異物の生成を効果的に抑制することが可能であることが確認された。

Claims (6)

  1. (1)有効成分としてのエダラボンと、
    (2)アルファチオグリセリン、チオグリコール酸ナトリウム又はグルタチオンのいずれかから選ばれる1種以上の化合物と、
    (3)亜硫酸、亜硫酸水素塩又はピロ亜硫酸塩のいずれかから選ばれる1種以上の化合物と、
    を含有することを特徴とするエダラボン注射剤。
  2. 前記アルファチオグリセリン濃度が0.1〜0.7mg/mLの範囲であることを特徴とする請求項1記載のエダラボン注射剤。
  3. 前記チオグリコール酸ナトリウム濃度が0.05〜0.5mg/mLの範囲であることを特徴とする請求項1記載のエダラボン注射剤。
  4. 前記グルタチオン濃度が0.1〜1.2mg/mLの範囲であることを特徴とする請求項1記載のエダラボン注射剤。
  5. 前記亜硫酸水素塩が亜硫酸水素ナトリウムであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のエダラボン注射剤。
  6. 等張化剤及びpH調整剤を更に含むことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のエダラボン注射剤。
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