JP2009241586A - 画像記録方法、インクセット、及びインクジェット記録物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ブリストー法による、接触時間900msecにおける水の吸収量が14ml/m2以下の記録媒体上に、SP値13以下の水溶性有機溶剤を10質量%以上と樹脂粒子を1.5質量%以上と水とを含む水性処理液を付与する処理液付与工程12と、付与された前記水性処理液を、前記処理液付与工程での水性処理液の付与開始から900msecが経過するまでの間に、前記水性処理液中に含まれる水の70質量%以上が蒸発するように乾燥させ、前記記録媒体上に遮断層を形成する遮断層形成工程13と、前記遮断層の上に、顔料、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、及び水を含む水性インクをインクジェット法により吐出して画像を記録する画像記録工程14とを有している。
【選択図】図1
Description
また、インクジェット記録の高速化も図られてきており、シャトルスキャン方式ではなく、1回のヘッド操作で記録可能なシングルパス方式で高速記録する場合の記録適性が求められている。この場合、速やかにインクを吸収することが求められるが、例えばベタ画像部などのように多量のインクが付与される等の場合には、多量のインク溶媒が吸収されることになり、カールの発生も生じやすくなる。
<1> ブリストー法による、接触時間900msecにおける水の吸収量が14ml/m2以下の記録媒体上に、SP値13以下の水溶性有機溶剤を10質量%以上と樹脂粒子を1.5質量%以上と水とを含む水性処理液を付与する処理液付与工程と、付与された前記水性処理液を、前記処理液付与工程での水性処理液の付与開始から900msecが経過するまでの間に、前記水性処理液中に含まれる水の70質量%以上が蒸発するように乾燥させ、前記記録媒体上に遮断層を形成する遮断層形成工程と、前記遮断層の上に、顔料、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、及び水を含む水性インクをインクジェット法により吐出して画像を記録する画像記録工程と、を有する画像記録方法である。
<3> 前記水性処理液中における固定化剤(F)と樹脂粒子(L)との比率(F/L;質量比)が0.5〜6.5の範囲であることを特徴とする前記<2>に記載の画像記録方法である。
<4> 前記固定化剤が、2価以上の酸であることを特徴とする前記<2>又は前記<3>に記載の画像記録方法である。
<6> 前記水性処理液中の樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)が、50℃以上であることを特徴とする前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載の画像記録方法である。
<7> 前記記録媒体が、コート紙であることを特徴とする前記<1>〜前記<6>のいずれか1つに記載の画像記録方法である。
<9> 前記<1>〜前記<7>のいずれか1つに記載の画像記録方法により記録されたインクジェット記録物である。
本発明の画像記録方法は、ブリストー法による、接触時間900msec(ミリ秒)における水の吸収量が14ml/m2以下の記録媒体上に、SP値13以下の水溶性有機溶剤を10質量%以上と樹脂粒子を1.5質量%以上と水とを含む水性処理液を付与する処理液付与工程と、記録媒体上に付与された水性処理液を、前記処理液付与工程での水性処理液の付与開始から900msecが経過するまでの間に、前記水性処理液中に含まれる水の70質量%以上が蒸発するように乾燥させ、前記記録媒体上に遮断層を形成する遮断層形成工程と、形成された遮断層の上に、顔料、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、及び水を含む水性インクをインクジェット法により吐出して画像を記録する画像記録工程と、を少なくとも設けて構成したものである。
第1には、遮断性の皮膜を形成するにあたって均一な皮膜を形成するには、塗布など、皮膜形成する素材を予め希釈して均一に付与する必要があり、希釈に用いる溶媒がやはり紙に浸透して紙の構造に影響を及ぼす。希釈溶媒が水もしくは水溶性有機溶剤の場合、水性インクに含まれる溶媒と同様にカールを引き起こす。希釈溶媒がセルロースの水素結合を切断しない又は切断しにくい有機溶媒の場合はカールの発生は抑えられるが、有機溶媒の浸透による白色度の低下(空隙を有機溶媒が満たすため反射が抑制されて発生)、紙の強度の低下が発生してしまう。なお、遮断性の皮膜を形成する素材は、その機能から疎水的性質を有する必要があるため、これを均一に希釈、分散するには疎水的な有機溶媒は分散安定性の観点で不利となる。第2には、遮断性の皮膜を形成した上に水性インクで画像記録を行なうと、画像の固定化が著しく抑制されることがある。通常、水性インクによる画像の固定は、溶媒が紙に浸透することにより、色材の分散したインク中で固化が起こることによるところが大きい。これは、顔料インクの場合に顕著である。つまり、遮断性の皮膜を形成した上に水性インクにより画像を記録すると、溶媒の紙への浸透が抑止されるため、脱溶媒による固化反応がほとんど期待できず、画像の固定化が抑制される結果、インクの滲み、着弾干渉によるドット移動、インクドット合一によるムラの発生などの問題が生じる。したがって、画像の固定化を高めるには、遮断性の皮膜の形成とは別に固定化を促進する固定化剤を遮断性の皮膜上に水性インクの打滴に先立って付与することが有効になるが、系が複雑化すること、皮膜上に付与される溶媒量(固定化剤付与時の溶媒+インク溶媒)が多くなり、乾燥に負荷がかかる等の問題が発生する。
以上から本発明においては、遮断性の皮膜を形成する所定量の樹脂粒子を用いて、SP値13以下の水溶性有機溶剤を10質量%以上含有する水性溶媒中に樹脂粒子が分散した水性処理液を作製し、これを溶媒の浸透が比較的遅い記録媒体に付与し、水性処理液中の水分の浸透が進行もしくは拡大する前に乾燥により水性処理液中の水を70%以上蒸発させる。
−処理液付与工程−
処理液付与工程は、ブリストー法による、接触時間900msecにおける水の吸収量が14ml/m2以下の記録媒体上に、SP値13以下の水溶性有機溶剤を10質量%以上と樹脂粒子を1.5質量%以上と水とを含む水性処理液を付与する。本工程では、溶媒吸収の遅い記録媒体上に水性インクに先立って、樹脂粒子を付与することで皮膜化を可能にし、SP値13以下の比較的極性の大きくない水溶性有機溶剤を付与する。
処理液付与工程で用いる水性処理液は、SP値13以下の水溶性有機溶剤と樹脂粒子と水とを少なくとも含んでなり、必要に応じて他の成分を用いて構成することができる。
本発明における水性処理液は、SP値13以下の水溶性有機溶剤の少なくとも1種を10質量%以上となるように含有する。SP値が13以下の水溶性有機溶剤を10質量%以上含有することによって、後述の遮断層形成工程での水の蒸発(乾燥)で記録媒体である紙(例えばコート紙等ではこれを構成するセルロース層)に浸透する溶媒中のSP値13以下の水溶性有機溶剤の比率が水に比べて高くなり、カールの発生が抑制される。
SP値13以下の水溶性有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
上記のうち、水溶性有機溶剤のSP値としては、10.3以上13以下の範囲がより好ましく、更に好ましくは10.5以上13以下の範囲である。
SP値は、ハンセン(Hansen)溶解度パラメータを用いる。ハンセン(Hansen)溶解度パラメータは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメータを、分散項δd,極性項δp,水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に表したものであるが、本発明においてはSP値をδ[(cal/cm3)0.5]で表し、下記式を用いて算出される値を用いる。
δ[(cal/cm3)0.5]=(δd2+δp2+δh2)0.5
なお、この分散項δd,極性項δp,水素結合項δhは、ハンセンやその研究後継者らにより多く求められており、Polymer Handbook (fourth edition)、VII-698〜711に詳しく掲載されている。
また、多くの溶媒や樹脂についてのハンセン溶解度パラメータの値が調べられており、例えば、Wesley L.Archer著、Industrial Solvents Handbookに記載されている。水性処理液が2種以上の水溶性有機溶剤を含む場合には、少なくとも1種のSP値が13以下であればよい。
本発明における水性処理液は、樹脂粒子の少なくとも1種を含有する。樹脂粒子を含むので、記録媒体上に付与された後に皮膜化できる。これより、後述の遮断層形成工程での乾燥により遮断層を形成できる。
1/Tg=Σ(Xk/Tgk)
ここで、ポリマーがk=1〜nのn個のモノマー成分が共重合しているとした場合、Xkはk番目のモノマーの重量分率(ΣXk=1)を表し、Tgkはk番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)を表す。但し、Σはkが1からnまでの和である。なお、各モノマーの単独重合体のガラス転移温度(Tgk)は、Polymer Handbook (3rd Edition) [J.Brandrup, E. H. Immergut著 (Wiley-Interscience, 1989)]などに記載されており、広く一般に知られている。
樹脂粒子の含有量としては、上記の点から1.5質量%以上50質量%未満の範囲が好ましい。樹脂粒子の含有量の上限が50質量%であると、画像の耐擦過性の点で有利である。樹脂粒子の含有量は、好ましくは2質量%以上40質量%以下の範囲であり、より好ましくは2質量%以上30質量%未満の範囲である。
水性処理液は、上記の水溶性有機溶剤及び樹脂粒子以外に、水性インク中の成分を固定化できる固定化剤を含有することが好ましい。固定化剤を予め記録媒体上に存在させることにより、付与された水性インク中の成分が凝集しあるいは水性インクが増粘することで、水性処理液が皮膜形成した場合に生じやすい水性インクの着弾干渉、滲みが防止され、付与された水性インク中の成分を固定化してラインや微細像などを均質に描画することができる。これより、高品位な画像が得られる。
2価以上の酸としては、その第1pKaが4.0以下の酸が好ましく、より好ましくは3.5以下の酸である。具体的には、燐酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、フタル酸などが挙げられ、pKa、溶解度が類似した他の酸も使用可能である。
これらの酸の中で、クエン酸は、保水力が高く、固定化された水性インクの物理強度が高くなる傾向にあり、機械特性がより要求される系で好ましく用いられる。一方、マロン酸は逆に保水力が低く、水性処理液の乾燥を速めたい系で場合に好ましく用いられる。また、フタル酸は、併用する樹脂粒子(特にポリエステル系樹脂粒子)との親和性が高く、固定化された水性インクの遮断層との密着力を強化することができる。
このように、固定化剤は、他の副次的因子に応じて適宜選択して用いることが可能である。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
本発明の画像記録方法には、ブリストー法による、接触時間900msecにおける水の吸収量(以下、「900msec吸水量」と略記することがある。)が14ml/m2以下の記録媒体を用いる。ブリストー法による水の吸収量が14ml/m2以下の比較的少ない記録材料を選択し、後述の遮断層形成工程での所定の乾燥を終えるまでに要する時間(水性処理液の付与開始から900msec)内での溶媒の浸透量を抑える。
中でも、カール防止の点で、900msec吸水量は、12ml/m2以下が好ましい。また、900msec吸水量の下限は、耐擦過性の向上、画像の解像度向上の点で、3ml/m2が好ましい。
ブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も利用されている方法であり、日本紙パルプ技術協会(J’TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細については、J’TAPPI No.51「紙及び板紙の液体吸収性試験方法」(ブリストー法)の記載を参照することができる。また、簡易的には、紙パ技協誌、第48巻、1994年5月、第88〜92頁 記載の動的走査吸収液計でも試験することが可能である。ここでは、上記に記載の動的走査吸収液計を用いて、接触時間900ミリ秒に定めて測定する。なお、記録媒体の裏側に水性インクが抜けてしまう点は計算から除外する。
中でも、コート紙が好ましい。コート紙には、セルロース層で形成された原紙の表面に塗工層が施された加工紙等が含まれる。
遮断層形成工程は、前記処理液付与工程で記録媒体上に付与された水性処理液を、処理液付与工程での水性処理液の付与開始から900msecが経過するまでの間に、水性処理液中に含まれる水(水全量)の70質量%以上が蒸発するように乾燥させ、記録媒体上に遮断層を形成する。
また、皮膜化した状態で少量の水、水溶性溶媒が含有されていてもよい。
さらに、乾燥(蒸発)させることにより、後述の水性インク中の成分が凝集した後に記録媒体と接着せずに水性処理液中に浮遊する現象(色材浮遊)も防止され、画像を構成するドット(水性インクの液滴)を所望の位置に固定することができる。
画像記録工程は、前記遮断層形成工程で形成された遮断層の上に、顔料、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、及び水を含有する水性インクをインクジェット法により吐出して画像を記録する。インクジェット法の詳細については、処理液付与工程の項において既述した通りである。
上記の各色調のインク組成物は、着色剤として用いる顔料の色相を所望により変更することにより調製できる。
なお、水性インクの詳細については後述する。
前記画像記録工程の後には、水性インク中の溶媒(特に水)を乾燥除去する乾燥工程を更に設けることができる。また、水性インク中の溶媒を乾燥除去することに代えて又は乾燥除去すると共に、記録媒体の表面に多孔質体のローラー等を接触させて水性インク中の溶媒を吸収除去する工程を設けてもよい。
次に、本発明の画像記録方法を実施するのに好適なインクジェット記録装置について、図1を参照して具体的に説明する。図1は、インクジェット記録装置の全体構成の一例を示す概略構成図である。
また、溶媒除去ローラー等を用いて溶媒除去を行なってもよい。他の態様として、エアナイフで余剰な溶媒を記録媒体から取り除く方式も用いられる。
画像定着部16は、インク乾燥ゾーン15の記録媒体搬送方向の更に下流側に配置されている。画像定着部16には、定着ローラ40A,40Bが互いに圧接するローラ対が設けられており、定着ローラ40A及び40Bの間を記録媒体が通過することにより、記録媒体上に形成された画像は加圧、加熱され、記録媒体上に記録された画像の定着性を向上させることができる。なお、定着ローラ40A、40Bとしては、1個の加圧ローラと1個の加熱ローラからなるローラ対が好ましいが、これに限定されるものではない。
本発明のインクセットは、既述の本発明の画像記録方法に用いられるものであり、少なくとも、SP値13以下の水溶性有機溶剤を10質量%以上と、樹脂粒子を1.5質量%以上と、水とを含む水性処理液、及び顔料と樹脂粒子と水溶性有機溶剤と水とを含む水性インクを設けて構成したものである。
水性インクは、顔料、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、及び水を含んでなり、必要に応じて、分散剤やその他の添加剤などの他の成分を更に用いて構成することができる。
以下、本発明における水性インクの構成成分について詳細に説明する。
本発明の水性インクは、樹脂粒子の少なくとも1種を含有する。樹脂粒子を含有することにより、主に水性インクの記録媒体への定着性及び耐擦過性をより向上させることができる。また、樹脂粒子は、既述の固定化剤と接触した際に凝集又は分散不安定化して水性インクを増粘させることにより、水性インク、すなわち画像を固定化させる機能を有する。このような樹脂粒子は、水及び含水有機溶媒に分散されているものが好ましい。
また、2価以上の金属イオンにより不安定化するアニオン性官能基を粒子表面に有する樹脂粒子(特にラテックス)も好適である。粒子表面にカチオン性の官能基とアニオン性の官能基とを有し、pH変化によりその極性が変換する極性変換樹脂粒子(特にラテックス)も好適である。
更には、ソープフリーラテックスも、反応性が高く好適である。
なお、Tgの算出は、既述の水性処理液において記載の方法と同様に下記式により算出される値である。
1/Tg=Σ(Xk/Tgk)
また、単分散の粒径分布を持つポリマー微粒子を2種以上混合して使用してもよい。
本発明の水性インクは、顔料の少なくとも1種を含有する。顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。
本発明の水性インクは、分散剤の少なくとも1種を含有することができる。前記顔料の分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
また、疎水性基は、炭素数2〜24の炭化水素基が好ましく、炭素数4〜24の炭化水素基がより好ましく、炭素数6〜20の炭化水素基がさらに好ましい。
本発明における水性インクは、水溶性有機溶媒の少なくとも1種を含有する。水溶性有機溶媒は、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒が好ましい。また、浸透促進には、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
このうち、乾燥防止剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。
乾燥防止剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。乾燥防止剤の含有量は、水性インク中に10〜50質量%の範囲とするのが好ましい。
浸透促進剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。浸透促進剤の含有量は、水性インク中に5〜30質量%の範囲であるのが好ましい。また、浸透促進剤は、画像の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない量の範囲内で使用することが好ましい。
本発明における水性インクは、上記成分以外にその他の添加剤を用いて構成することができる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、水性インクの場合はインクに直接添加し、また、油性染料を分散物として用いる場合は染料分散物の調製後に分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
表面張力調整剤の添加量は、水性インクの表面張力を20〜60mN/mに調整できる範囲が好ましく、20〜45mN/mに調整できる範囲がより好ましく、25〜40mN/mに調整できる範囲が更に好ましい。添加量が前記範囲内であると、インクジェット法で良好に打滴することができる。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)に界面活性剤として挙げられたものも用いることができる。
また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載のフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を用いることにより、耐擦性を良化することもできる。
[水性インクの調製]
《シアンインクC1−1の調製》
−シアン分散液C1の調製−
反応容器に、スチレン6部、ステアリルメタクリレート11部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成(株)製)4部、プレンマーPP−500(日本油脂(株)製)5部、メタクリル酸5部、2−メルカプトエタノール0.05部、及びメチルエチルケトン24部を加え、混合溶液を調液した。
得られたシアン分散液C1の体積平均粒子径(二次粒子)を、Micorotrac粒度分布測定装置(Version 10.1.2−211BH(商品名)、日機装(株)製)で動的光散乱法により測定したところ、77nmであった。
・シアン顔料(Pigment Blue 15:3、大日精化(株)製)・・・4質量%
・ポリマー分散剤溶液 ・・・2質量%
・アクリル系ラテックス(ジョンクリル537(Tg:49℃)、BASFジャパン(株)製)・・・8質量%
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル・・・10質量%
(SP値:10.9;和光純薬(株)製)
・グリセリン(和光純薬(株)製)・・・20質量%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製)・・・1質量%
・イオン交換水・・・55質量%
前記インクC1−1の調製において、ジョンクリル537(アクリル系ラテックス)をジョンクリル551(Tg:9℃、BASFジャパン(株)製)に代えたこと以外は、インクC1−1の調製と同様の方法で下記組成のシアンインクC1−2を調製した。
Cabojet250(キャボット社製;15%シアン顔料分散液)26.7g、アクリル系ラテックスを固形分換算で8g、グリセリン20g、ジエチレングリコールモノエチルエーテル10g、オルフィンE1010(日信化学(株)製)1gを混合し、最後にイオン交換水で総量が100gになるようにメスアップし、下記組成のシアンインクC2−1を調製した。
・シアン顔料分散液(Cabojet250、キャボット社製)・・・4質量%
・アクリル系ラテックス(ジョンクリル537(Tg:49℃)、BASFジャパン(株)製)・・・8質量%
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル・・・10質量%
(SP値:10.9;和光純薬(株)製)
・グリセリン(和光純薬(株)製)・・・20質量%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製)・・・1質量%
・イオン交換水・・・57質量%
マゼンタ顔料(CromophtaL Jet Magenta DMQ、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)400g、オレイン酸ナトリウム(和光純薬(株)製)40g、グリセリン(和光純薬(株)製)200g、及びイオン交換水1360gを混合して乳鉢で1時間混練した後、日本精機(株)製の小型攪拌機付超音波分散機US−600CCVP(600W、超音波発振部50mm)で20分間、粗分散を行なった。
前記シアン分散液の場合と同様の方法で、得られたマゼンタ顔料分散液M1の平均粒径を測定したところ、70nmであった。
・マゼンタ顔料(Cromophtal Jet Magenta DMQ)・・・4質量%
・オレイン酸ナトリウム(分散剤)・・・0.4質量%
・アクリル系ラテックス(ジョンクリル537(Tg:49℃)、BASFジャパン(株)製)・・・8質量%
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル・・・10質量%
(SP値:10.9;和光純薬(株)製)
・グリセリン(和光純薬(株)製)・・・20質量%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製) ・・・1質量%
・下記フッ素系界面活性剤1 ・・・0.1質量%
・イオン交換水・・・56.5質量%
上記で得られたインク、水性処理液を用いて下記のようにして画像を記録し、記録された画像に対して、下記の方法で画像品質、カール性を評価した。
まず、図1に示すように、記録媒体の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、水性処理液を吐出する処理液吐出用ヘッド12Sを備えた処理液付与部12と、付与された水性処理液を乾燥させる処理液乾燥ゾーン13と、各種水性インクを吐出するインク吐出部14と、吐出された水性インクを乾燥させるインク乾燥ゾーン15と、加熱された圧着ロールを備え乾燥後の画像を加熱圧着により定着する画像定着部16とが配設されたインクジェット装置を準備した。
処理液乾燥ゾーン13は、図示しないが、記録媒体の記録面側には乾燥風を送って乾燥を行なう送風器を備え、記録媒体の非記録面側には赤外線ヒータを備えており、処理液付与部で処理液の付与を開始した後900msecが経過するまでに、温度・風量を調節して水性処理液中の水の70質量%以上を蒸発(乾燥)できるように構成されている。また、インク吐出部14は、搬送方向方向(矢印方向)にブラックインク吐出用ヘッド30K、シアンインク吐出用ヘッド30C、マゼンタインク吐出用ヘッド30M、及びイエローインク吐出用ヘッド30Yが順次配置されており、各ヘッドは1200dpi/10inch幅フルラインヘッド(駆動周波数:25kHz、記録媒体の搬送速度530mm/sec)であり、各色をシングルパスで主走査方向に吐出して記録できるようになっている。また、圧着ロール40A,40Bは、80℃に調温されている。
画像の記録に際し、水性処理液、シアンインク、及びマゼンタインクは、解像度1200dpi×600dpi、インク滴量3.5plにて吐出した。このとき、ライン画像は、1200dpiの幅1ドットのライン、幅2ドットのライン、幅4ドットのラインをシングルパスで主走査方向に吐出して記録し、ベタ画像は、記録媒体をA5サイズにカットしたサンプルの全面にインクを吐出してベタ画像とした。
画像の記録はまず、記録媒体上に処理液吐出用ヘッド12Sから水性処理液をシングルパスで吐出した後、水性処理液の乾燥は処理液乾燥ゾーン13で行ない、処理液乾燥ゾーンを水性処理液の吐出開始から900msec迄に通過するようにした。処理液乾燥ゾーン13では、着滴した水性処理液を着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで膜面温度が40〜45℃となるように加熱しながら、送風器により記録面に120℃の温風をあて、風量を変えて所定の乾燥量になるように調整した。続いて、シアンインク吐出用ヘッド30C及びマゼンタインク吐出用ヘッド30Mにより、シアンインク、マゼンタインクを各々シングルパスで吐出して画像を記録した後、前記同様にインク着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで加熱しながら、送風器により120℃、5m/secの温風を記録面に15秒間あてて乾燥させた。画像乾燥後、80℃に調温されたPFA(テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体である完全フッ素化の熱可塑性フッ素樹脂)製の圧着ローラ40A,40Bでニップ圧1.0mPaにて加熱圧着する操作(工程)を3回繰り返して画像を定着した。
なお、画像の記録に用いた記録媒体、水性処理液、及びインクの組合せを下記表2に示す。
−1.画像品質(描画性)−
上記のようにして記録媒体上に記録された、幅1ドットのライン、幅2ドットのライン、幅4ドットのラインについて、下記の評価基準にしたがって描画性を評価した。評価結果は下記表2に示す。
<評価基準>
1:全てのラインが均質なラインであった。
2:幅1ドットのラインは均質であったが、幅2ドット及び幅4ドットのラインの一部にライン幅の不均一やラインの切れ、液溜まりが認められた。
3:幅1ドットのラインは均質であったが、幅2ドット及び幅4ドットのラインの全般にライン幅の不均一やラインの切れ、液溜まりが認められた。
4:ライン全体にライン幅の不均一やラインの切れ、液溜まりが顕著に認められた。
全面にベタ画像が形成されたA5サイズのサンプルを23℃、55%RHの環境下に12時間放置した後、平面に置いた際の各サンプルの四隅(4頂点)の浮き上がり(高さ)を測定して、下記の評価基準にしたがって評価した。なお、記録面の中央付近が盛り上がるように紙がカールした場合は、紙をひっくり返して四隅が平面の上方に反り上がるように配置し測定を行なった。
<評価基準>
1:4点の浮き上がりの算術平均が0.3cm未満であった。
2:4点の浮き上がりの算術平均が0.3cm以上0.5cm未満であった。
3:4点の浮き上がりの算術平均が0.5cm以上0.7cm未満であった。
4:4点の浮き上がりの算術平均が0.7cm以上であった。
12S・・・処理液吐出用ヘッド
13・・・処理液乾燥ゾーン
14・・・インク吐出部
15・・・インク乾燥ゾーン
16・・・画像定着部
30K,30C,30M,30Y・・・インク吐出用ヘッド
Claims (9)
- ブリストー法による、接触時間900msecにおける水の吸収量が14ml/m2以下の記録媒体上に、SP値13以下の水溶性有機溶剤を10質量%以上と樹脂粒子を1.5質量%以上と水とを含む水性処理液を付与する処理液付与工程と、
付与された前記水性処理液を、前記処理液付与工程での水性処理液の付与開始から900msecが経過するまでの間に、前記水性処理液中に含まれる水の70質量%以上が蒸発するように乾燥させ、前記記録媒体上に遮断層を形成する遮断層形成工程と、
前記遮断層の上に、顔料、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、及び水を含む水性インクをインクジェット法により吐出して画像を記録する画像記録工程と、
を有する画像記録方法。 - 前記水性処理液が、水性インク中の成分を固定化する固定化剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像記録方法。
- 前記水性処理液中における固定化剤(F)と樹脂粒子(L)との比率(F/L;質量比)が0.5〜6.5の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の画像記録方法。
- 前記固定化剤が、2価以上の酸であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の画像記録方法。
- 前記水性処理液中の樹脂粒子が、ポリエステル系樹脂粒子であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- 前記水性処理液中の樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)が、50℃以上であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- 前記記録媒体が、コート紙であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- SP値13以下の水溶性有機溶剤を10質量%以上と樹脂粒子を1.5質量%以上と水とを含む水性処理液と、顔料、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、及び水を含む水性インクとを備え、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の画像記録方法に用いられるインクセット。
- 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の画像記録方法により記録されたインクジェット記録物。
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