JP2009167290A - ジエン系ゴム組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】瀝青炭粉砕物およびカーボンブラックとを併用して配合したジエン系ゴム組成物において、空気入りタイヤのスタッドレス用キャップトレッド部の加硫成形材料として用いた場合に、氷上性能、発熱性および耐摩耗性のいずれをもすべて満足し得るものを提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100重量部に対し、瀝青炭粉砕物5〜30重量部、珪藻土1〜10重量部およびヨウ素吸着量が80〜140g/kgであるカーボンブラック40〜60重量部を配合したジエン系ゴム組成物。本発明に係るジエン系ゴム組成物を加硫成形して得られた加硫物は、氷上制動性などの氷上性能、発熱性が低いことを示す発熱性および耐摩耗性にすぐれており、すなわち氷上性能を低下させることなく、発熱性および耐摩耗性をバランスさせることができるので、本発明のジエン系ゴム組成物は空気入りタイヤのスタッドレス用キャップトレッド部の加硫成形材料として有効に使用することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ジエン系ゴム組成物に関する。さらに詳しくは、空気入りタイヤのスタッドレス用キャップトレッド部の加硫成形材料などとして好適に用いられるジエン系ゴム組成物に関する。
スタッドレス用空気入りタイヤは、氷上性能を上げるため種々の配合剤を組合わせて配合しているが、一般には配合剤の配合により発熱性や耐摩耗性の悪化を避けることができない。
スタッドレス用空気入りタイヤに関しては、平均粒径が0.5〜200μmの(表面化学修飾)炭素質微粉末をゴム100重量部当り3〜150重量部配合したゴム組成物から、表面粗さ(JIS B0601準拠;中心線平均粗さRa)を2μm以上とした防滑性にすぐれたトレッド部が形成され、かかるトレッド部を有する空気入りタイヤは、ゴム材料の持つすぐれた弾性や耐久性を損なうことなく、防滑性、特に氷雪上での摩擦係数を著しく改善させるので、スタッドレスタイヤとして好適に使用し得るとされている。また、ここで用いられる炭素質微粉末として、瀝青炭を微粉砕したものが例示として挙げられている。
特開平4−117439号公報
同様に、空気入りタイヤにおいて、氷雪上および通常路面の走行時における操縦安定性を損なうことなく、発泡ゴムトレッドタイヤの氷上摩擦特性を改善するために、平均粒径が0.5〜500μmの炭素質微粉体をゴム100重量部当り3〜100重量部含有し、かつ3〜35%の発泡率の独立気泡を有する発泡ゴムがトレッドに配設された空気入りタイヤも提案されており、キャップベース構造を有するトレッド部のキャップ部に配設される該発泡ゴムにおいて、炭素質微粉体として、瀝青炭を微粉砕したものが例示として挙げられている。
特開平4−368206号公報
また、空気入りタイヤのトレッド部を形成させるジエン系ゴム組成物中に瀝青炭粉砕物を配合することも種々提案されており、またソリッドタイヤに関しては、例えば瀝青炭粉砕物に1/20〜20/1の重量比のカーボンブラック(窒素吸着比表面積が50〜200m2/g、DBP吸油量が50〜130ml/100g、CTAB吸着比表面積が50〜170m2/gのものが好ましく、例えばHAF、ISAF、SAF等のチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどが用いられる)を併用したジエン系ゴム組成物などが提案されている。
特開2007−161196号公報
しかるに、ジエン系ゴム組成物中に瀝青炭粉砕物あるいはこれとカーボンブラックとを併用して配合したものからスタッドレス用キャップトレッド部を形成させた場合には、スタッドレス用空気入りタイヤに要求される氷上性能、発熱性および耐摩耗性のいずれをもすべて満足させることはできない。
本発明の目的は、瀝青炭粉砕物およびカーボンブラックとを併用して配合したジエン系ゴム組成物において、空気入りタイヤのスタッドレス用キャップトレッド部の加硫成形材料として用いた場合に、氷上性能、発熱性および耐摩耗性のいずれをもすべて満足し得るものを提供することにある。
かかる本発明の目的は、ジエン系ゴム100重量部に対し、瀝青炭粉砕物5〜30重量部、珪藻土1〜10重量部およびヨウ素吸着量が80〜140g/kgであるカーボンブラック40〜60重量部を配合したジエン系ゴム組成物によって達成される。
本発明に係るジエン系ゴム組成物を加硫成形して得られた加硫物は、氷上制動性などの氷上性能、発熱性が低いことを示す発熱性および耐摩耗性にすぐれており、すなわち氷上性能を低下させることなく、発熱性および耐摩耗性をバランスさせることができるので、本発明のジエン系ゴム組成物は空気入りタイヤのスタッドレス用キャップトレッド部の加硫成形材料として有効に使用することができる。
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が単独であるいはブレンドゴムとして用いられ、好ましくはNR、BR、SBRまたはこれらのブレンドゴムが用いられる。SBRとしては、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)のいずれをも用いることができる。
粘結炭または非粘結炭である瀝青炭粉砕物は、石炭の一種で高品位炭と呼ばれる瀝青炭(JIS M1002の石炭分類でB1、B2、C)を含む石炭一般を、平均粒径(ASTM D1511準拠;average 測定機Microtrac SRA 150を用いて測定)約0.01〜100μm、好ましくは約0.05〜50μmに粉砕したものであり、その比重が1.6以下、好ましくは1.35以下のものが用いられる。平均粒径をこの範囲に設定することにより、空気入りタイヤの転がり抵抗を十分に低減することができ、また比重を小さくすることにより、空気入りタイヤを装着した車体の燃費を十分に低減することができる。
瀝青炭粉砕物は、ジエン系ゴム100重量部当り5〜30重量部、好ましくは10〜20重量部の割合で用いられる。瀝青炭粉砕物の配合割合がこれよりも少ないと、氷上性能、発熱性および耐摩耗性のいずれの改善も達成されず、特に熱伝導性のよい瀝青炭粉砕物の効果が発揮されず、一方これよりも多い割合で用いられると、発熱が大きくなり発熱性の点で満足されなくなる。
珪藻土は、単細胞生物である珪藻の殻から主としてなる軟質の岩石もしくは土壌であり、純粋な珪藻殻はおよそSiO2 94%、H2O 6%の化学組成を有するが、天然の珪藻土は一般に不純物を含んでいる。本発明で用いられる珪藻土は、円筒状または円柱状の多孔質体であって、その高さ(100μm以下、好ましくは1〜30μm)をL、底面の直径をDとしたときのL/Dが0.2〜3.0、好ましくは0.3〜2.0のものが用いられる。具体的には、Melosira Granulate Curbataと呼ばれる種類であって、均一な多孔質でユニークなハニカム構造を有しており、それの典型的な化学組成はSiO2 89.2%、Al2O3 4.0%、Fe2O3 1.5%、CaO 0.5%、MgO 0.3%である。実際には、園芸用等の用途に一般的に用いられている平板状の珪藻土とは異なり、例えばメロシア属の特殊な円筒状または円柱状の珪藻土であるが、かかる珪藻土は公知であり、上市もされているので、本発明ではそのような市販品を用いることもできる。
珪藻土は、ジエン系ゴム100重量部に対し1〜10重量部、好ましくは3〜8重量部の割合で用いられる。珪藻土の配合割合がこれよりも少ないと、氷上性能がかえって無配合の場合よりも低下し、一方これよりも多い配合割合で用いられると、発熱性および耐摩耗性が悪化するようになる。
また、カーボンブラックとしては、そのヨウ素吸着量(JIS K6217準拠)が80〜140g/kg、好ましくは80〜100g/kgのものが、ジエン系ゴム100重量部当り40〜60重量部、好ましくは45〜55重量部の配合割合で用いられる。
かかるヨウ素吸着量を有するカーボンブラックとしては、S-212(ISAF-LS-SC;117g/kg)、N-219(ISAF-LS;118g/kg)、N-220(ISAF-HM;121g/kg)、N-231(ISAF-LM;125g/kg)、N-234(118g/kg)、N-242(ISAF-HS;123g/kg)、S-315(HAF-LS-SC;86g/kg)、N-326(HAF-LS;82g/kg)、N-330(HAF;82g/kg)、N-339(92g/kg)、N-347(HAF-HS;90g/kg)、N-356(HAF-VHS;90g/kg)、N-358(HAF-VHS;84g/kg)等が用いられる。ヨウ素吸着量がこれ未満のカーボンブラックを用いると、特に耐摩耗性の低下が著しくなり、一方これを超えるヨウ素吸着量のカーボンブラックを用いると、発熱性が悪化するようになる。
これらのカーボンブラックは、ジエン系ゴム100重量部当り40〜60重量部、好ましくは45〜55重量部の割合で用いられる。カーボンブラックの配合割合がこれよりも少ないと、氷上性能および耐摩耗性に劣るようになり、一方これよりも多い配合割合で用いられると、発熱が高くなり、発熱性が損なわれるようになる。
以上の各成分を必須成分とするジエン系ゴム組成物中には、ゴムの配合剤として一般的に用いられている配合剤、例えばジエン系ゴムの種類に応じて硫黄等の加硫剤、チアゾール系、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系等の加硫促進剤、シリカ、タルク、クレー、グラファイト、珪酸カルシウム等の補強剤または充填剤、ステアリン酸、パラフィンワックス、アロマオイル等の加工助剤、酸化亜鉛、老化防止剤、可塑剤などが必要に応じて適宜配合されて用いられる。
補強作用を有するシリカの配合は特に好ましく、シリカとしては、一般にBET法比表面積が30〜200m2/g、好ましくは50〜150m2/gのものが用いられる。これらは、ハロゲン化けい酸または有機けい素化合物の熱分解法やけい砂を加熱還元し、気化したSiOを空気酸化する方法などで製造される乾式法シリカやけい酸ナトリウムの熱分解法などで製造される湿式法シリカなどであり、コストおよび性能の面からは、湿式法シリカが好んで用いられる。実際には、ゴム工業用として上市されている市販品をそのまま用いることができる。その配合割合は、ジエン系ゴム100重量部当り25重量部以下、好ましくは10〜20重量部であり、シリカの配合により低転がり抵抗性や耐湿潤性能が十分に発揮されるようになるが、これよりも多い配合割合で用いられると、加工性が悪化するようになる。
このようにシリカに求められる特性およびジエン系ゴムとの分散性(シリカはゴムポリマーとの親和性に乏しく、またゴム中でシリカ同士がシラノール基を通して水素結合を生成し、シリカのゴム中への分散性を低下させる性質を有する)を高めるために、シランカップリング剤がシリカ重量に対して2〜15重量%、好ましくは5〜10重量%の割合で用いられる。シランカップリング剤としては、シリカ表面のシラノール基と反応するアルコキシシリル基とポリマーと反応する硫黄連鎖を有するポリスルフィド系シランカップリング剤、例えばビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等が好んで用いられる。シランカップリング剤の使用割合がこれよりも少ないと、シリカに求められる特性やジエン系ゴムとの分散性が十分に発揮されず、一方これよりも多い配合割合で用いられると、加工性が悪化するようになる。
組成物の調製は、ニーダ、バンバリーミキサ等の混練機およびオープンロール等を用いる一般的な方法で混練することによって行われ、得られた組成物は、用いられたジエン系ゴム、加硫剤、加硫促進剤の種類およびその配合割合に応じた加硫温度で加硫され、ベーストレッド部(アッパートレッド部)上方に位置するキャップトレッド部を形成する。かかるキャップトレッド部は、空気入りタイヤのスタッドレス用キャップトレッド部を形成する。
次に、実施例について本発明を説明する。
標準例
天然ゴム(SIR-20) 60.0重量部
ポリブタジエンゴム(日本ゼオン製品Nipol BR 1220) 40.0 〃
カーボンブラック-I(キャボットジャパン製品ショウブラックN339; 50.0 〃
ヨウ素吸着量92[g/kg]、DBP吸収量121[ml/100g])〔CB-I〕
シリカ(デグッサ製品Ultrasil VN3GR) 15.0 〃
珪藻土(Eagle-Picher Filtration & Minerals社製品Celaton LOS-3) 5.0 〃
瀝青炭粉砕物(Coal Fillers Incorporated社製品Austin Black 325; −
平均粒径5.50μm、比重1.31±0.03)
亜鉛華(正同化学工業製品酸化亜鉛3種) 5.0 〃
カップリング剤(デグッサ製品Si69) 1.5 〃
硫黄(鶴見化学工業製品金華印油入微粉硫黄) 1.5 〃
加硫促進剤(大内新興化学工業製品ノクセラーCZ-G) 1.5 〃
以上の各成分の内、加硫促進剤と硫黄を除く各成分を3L密閉型ミキサで5分間混練し、150℃に達したとき放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄を加え、オープンロールで混練し、ジエン系ゴム組成物を得た。
得られたジエン系ゴム組成物を150℃で30分間加硫して所定の加硫ゴム試験片を得、得られた加硫ゴム試験片について、次の各項目の測定を行った。
氷上インサイド試験:加硫シートを偏平円柱状の台ゴムに貼り付け、インサイドドラム型氷上摩擦試験機を用い、測定温度-3.0℃および-1.5℃、荷重0.54MPa(5.5kg/cm2)、ドラム回転速度25km/hrの条件下で氷上摩擦を測定し、標準例で得られた値を100とする指数で示した(氷上性能を示すこの値の大きい程氷上制動制にすぐれている)
発熱性:東洋精機製作所製粘弾性スペクトロメーターを用い、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、60℃におけるtanδを測定し、標準例で得られた値を100とする指数で示した(発熱性を示すこの値が大きい程良く、発熱が低いことを示している)
耐摩耗性:ランボーン摩耗試験機を用い、JIS K-6214に準拠して摩耗量を測定し、標準例で得られた値を100とする指数で示した(この値が大きい程耐摩耗性にすぐれている)
実施例1〜2、比較例1〜8
標準例において、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、シリカ、亜鉛華、カップリング剤、硫黄および加硫促進剤をそれぞれ同量用い、カーボンブラック、珪藻土および瀝青炭粉砕物量(重量部)をそれぞれ表1に示される如く変更して用いた。なお、カーボンブラック-II〔CB-II〕は、三菱化学製品ダイアブラックE(FEF;ヨウ素吸着量45g/kg、DBP吸収量115[ml/100g])である。
表1
CB-I CB-II 珪藻土 瀝青炭粉砕物
実施例1 50.0 5.0 10.0
〃 2 50.0 5.0 20.0
比較例1 50.0 5.0 20.0
〃 2 50.0 20.0 5.0
〃 3 30.0 5.0 20.0
〃 4 70.0 5.0 20.0
〃 5 50.0 0.5 20.0
〃 6 50.0 15.0 20.0
〃 7 50.0 5.0 3.0
〃 8 50.0 5.0 40.0
以上の標準例、実施例1〜2および比較例1〜8で得られた結果は、次の表2に示される。
表2
氷上性能 発熱性 耐摩耗性
標準例 100 100 100
実施例1 100 105 103
〃 2 100 110 108
比較例1 105 160 70
〃 2 105 95 105
〃 3 95 110 90
〃 4 105 90 110
〃 5 95 102 105
〃 6 110 95 95
〃 7 100 100 100
〃 8 105 95 105
以上の結果から、次のようなことがいえる。
(1) 本発明の要件を満足させている実施例1〜2は、氷上性能、発熱性および耐摩耗性のいずれをも満足させている。
(2) 規定範囲外のヨウ素吸着量を示すカーボンブラックを用いた場合(比較例1)、規定範囲内のヨウ素吸着量を示すカーボンブラックを用いてはいるが、その配合割合が少ない場合(比較例3)、珪藻土の配合割合が多すぎる場合(比較例6)には、耐摩耗性に劣るようになる。
(3) 瀝青炭粉砕物を用いず、また規定範囲外のヨウ素吸着量を示すカーボンブラックを併用した場合(比較例2)、規定範囲内のヨウ素吸着量を示すカーボンブラックを用いてはいるが、その配合割合が多すぎる場合(比較例4)、珪藻土の配合割合が多すぎる場合(比較例6)、瀝青炭の配合割合が多すぎる場合(比較例8)には、発熱性の点で満足されなくなる。
(4) 珪藻土の配合割合が少ない場合(比較例5)には、氷上性能に劣るようになる。
(5) 瀝青炭の配合割合が少ない場合(比較例7)には、氷上性能、発熱性および耐摩耗性のいずれの改善も達成されない。

Claims (6)

  1. ジエン系ゴム100重量部に対し、瀝青炭粉砕物5〜30重量部、珪藻土1〜10重量部およびヨウ素吸着量が80〜140g/kgであるカーボンブラック40〜60重量部を配合してなるジエン系ゴム組成物。
  2. 珪藻土が円筒状または円柱状の多孔質体である請求項1記載のジエン系ゴム組成物。
  3. 円筒体または円柱体の高さをL、底面の直径をDとしたとき、L/Dが0.2〜3.0の多孔質体が用いられた請求項2記載のジエン系ゴム組成物。
  4. さらに25重量部以下のシリカが配合された請求項1記載のジエン系ゴム組成物。
  5. 空気入りタイヤのスタッドレス用キャップトレッド部の加硫成形材料として用いられる請求項1、2、3または4記載のジエン系ゴム組成物。
  6. 請求項5記載のジエン系ゴム組成物から加硫成形されたスタッドレス用キャップトレッド部を有する空気入りタイヤ。
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