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タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ Download PDF

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Description

本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、自動車の低燃費性を保持するとともに、とくに湿潤路面でのタイヤのグリップ性能を大幅に改善するタイヤトレッド用ゴム組成物、およびこのタイヤトレッド用ゴム組成物をトレッドに用いてなる空気入りタイヤに関するものである。
近年、自動車タイヤに要求される特性は低燃費性のほか、操縦安定性、耐摩耗性、乗り心地など多岐にわたり、これらの性能を向上させるために種々の工夫がなされている。たとえば、高速走行時のウェット路面での制動性能や操縦安定性などの諸性能を向上させる方法としては、路面とのグリップ力を高めること、タイヤトレッドパターンのブロック剛性を大きくして、コーナリング時のブロック変形を防止し、コーナリング特性をよくすること、タイヤトレッドに形成された溝部の変形を防止して排水をスムーズに行ない、ハイドロプレーニングを防止することなどがあげられる。最近ではこのような要求特性に対して、ハイスチレンSBRにシリカを配合したゴム組成物をタイヤトレッドに用いることによって、湿潤路面でのタイヤのグリップ性能を高めている。
しかし、前記のようなタイヤトレッド用ゴム組成物は、路面温度が15℃以下の低温域でのグリップ力を高めることはできるが、15℃をこえる高温域でのウェット路面またはセミウェット(半乾き)路面では、充分なグリップ力を発現できないといわれている。さらに、シリカを配合したゴム組成物は、走行を重ねるとゴムの剛性が低下し、大幅にグリップ力が低下することが判明している。また、シリカ配合ゴム組成物は、ゴム中へのシリカ粒子の分散が不充分であるとゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、押し出しなどの加工性に劣るなどの問題が生じる。
これらの問題点を解決すべく、従来から種々の提案がなされている。たとえば特開平7−133375号公報、特開平8−311245号公報には、ジエン系ゴムに焼成クレーを配合したゴム組成物が、特開平8−3373号公報には、特定のジエン系ゴムにジエン系ゴムとカオリナイトからなる加硫ゴム粉末を配合したゴム組成物がそれぞれ開示されており、タイヤのグリップ性能の向上などに効果があることが記載されている。また、特開平8−59893号公報には、特定のスチレン含有量を有するSBRに特定の組成を有する無機化合物粉体とカーボンブラックとを配合したゴム組成物が、特開平7−149954号公報、特開平9−31250号公報には、ブタジエン部分中の1,2−結合の含有率が特定の範囲内であるジエン系ゴムにカオリナイトを主成分とするクレーを配合したゴム組成物が開示されており、同様の効果があることが記載されている。
しかしながら、加工性および耐摩耗性を低下させることなく、また低発熱性を維持しながらウェットグリップ性能に優れたゴム組成物は、未だに存在しないのが現状である。
発明が解決しようとする課題
本発明の目的は、タイヤの耐摩耗性および転がり抵抗特性を低下させることなく、ウェットグリップ性能を大幅に改善できるトレッド用ゴム組成物および空気入りタイヤを提供することにある。
課題を解決するための手段
すなわち本発明は、
(A)ジエン系合成ゴムまたはジエン系合成ゴムと天然ゴムとの混合物からなり、かつスチレン−ブタジエンゴムを少なくとも20重量%含有するゴム成分100重量部、(B)クレー5〜50重量部、(C)チッ素吸着比表面積が100〜300m2/gであるシリカ5重量部以上および(D)チッ素吸着比表面積が70〜300m2/gであるカーボンブラック1重量部以上を含有し、(B)クレーと(C)シリカとの合計量が30重量部以上、(B)クレーと(C)シリカと(D)カーボンブラックとの合計量が100重量部以下であることを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物、
(A)ゴム成分中のスチレン−ブタジエンゴムの含有量が35重量%以上である前記のタイヤトレッド用ゴム組成物、
(B)クレーの平均粒子径が10μm以下である前記のタイヤトレッド用ゴム組成物、および、
(E)シラン系カップリング剤を含有する前記の各タイヤトレッド用ゴム組成物に関する。
さらに、前記の各タイヤトレッド用ゴム組成物をトレッドに用いてなる空気入りタイヤに関する。
本発明において用いられるゴム成分は、ジエン系合成ゴムまたはジエン系合成ゴムと天然ゴムとの混合物からなる。本発明において用いられるジエン系合成ゴムとしては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などがあげられる。
これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、ゴム成分中に少なくとも20重量%のSBRを含有することが必要である。SBRの含有量が20重量%未満のゴム成分では、タイヤ製造時の作業性が低下するだけでなく、低燃費性とウェットグリップ性能の両立が図れない。ゴム成分中のSBR含有量は、好ましくは35重量%以上、さらに好ましくは35〜100重量%、とくに好ましくは40〜100重量%である。
前記SBRのスチレン含有率は、15〜60%であることが好ましい。スチレン含有率が15%未満では、低温域および高温域における所望のグリップ性能を得ることができず、60%をこえるとブロック剛性が必要以上に高くなるために所望のグリップ性能を得ることができない。
前記SBRは、乳化重合法、溶液重合法など、いかなる重合法によって製造されたものであってもよい。
本発明のゴム組成物はクレーを含む。本発明に使用されるクレーとしては、平均粒子径10μm以下のものが好ましく用いられる。平均粒子径が10μmをこえると補強効果が充分に発揮されず、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、平均粒子径があまり小さすぎると粒子同士の凝集が強くなり、ゴム成分への良好な分散が困難となり、所望の性能を有するゴム組成物が得られない場合がある。補強性、ウェットグリップ性能、低燃費性のバランスなどの面から、クレーの平均粒子径は、さらに0.1〜10μm、さらには0.5〜10μmであることが好ましい。
本発明のゴム組成物中に含まれるクレーの配合量は、前記ゴム成分100重量部に対して5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部である。前記配合量が5重量部未満ではウェットグリップ性能の改善効果が小さく、50重量部をこえると、耐摩耗性が低下する。
本発明のゴム組成物はシリカを含む。このシリカは、前記クレーでは不充分な補強性を補うとともに転がり抵抗の低減をはかるために使用される。前記シリカはチッ素吸着比表面積(N2SA)が100〜300m2/g、好ましくは130〜280m2/gである。シリカのN2SAが100m2/g未満になると補強効果が小さく、300m2/gをこえると分散性が低下し、発熱性が増大する。
前記シリカの例としてはとくに制限はなく、従来ゴム補強用として慣用されているもの、たとえば乾式法シリカ、湿式法シリカなどのなかから適宜選択して用いることができる。
本発明のゴム組成物中に含まれるシリカの配合量は、前記ゴム成分100重量部に対して5重量部以上、好ましくは5〜85重量部である。シリカの配合量が5重量部未満では補強効果および転がり抵抗を低下させる効果が充分に得られず、85重量部をこえると発熱性が増大し、作業性が低下するために好ましくない。
本発明のゴム組成物はカーボンブラックを含む。本発明に使用されるカーボンブラックは、チッ素吸着比表面積(NSA)が70〜300m2/g、好ましくは90〜250m2/gである。カーボンブラックのN2SAが70m2/g未満であると充分な補強性や耐摩耗性が得られにくく、300m2/gをこえると分散性がわるくなり、発熱性が増大する。前記カーボンブラックの例としては、HAF、ISAF、SAFなどがあげられるが、とくに制限されるものではない。
本発明のゴム組成物中に含まれるカーボンブラックの配合量は、前記ゴム成分100重量部に対して1重量部以上、好ましくは1〜70重量部、さらに好ましくは5〜65重量部である。カーボンブラックの配合量が1重量部未満になると補強性や耐摩耗性が低下し、70重量部をこえると分散性が低下するうえ、所望の特性が得られない傾向がある。
本発明のゴム組成物においては、前記クレー(B)と前記シリカ(C)との合計含有量が、前記ゴム成分100重量部に対して30〜99重量部である。前記合計量が30重量部未満では充分な補強効果が得られず、99重量部をこえると分散性が低下し、発熱性が増大する。配合効果および物性などの面から、前記合計量は、さらに40〜79重量部であることが好ましい。
また、前記クレー(B)と前記シリカ(C)と前記カーボンブラック(D)の合計含有量は、31〜100重量部であることが好ましい。前記合計量が31重量部未満では充分な補強効果が得られず、100重量部をこえると分散性が低下し、発熱性が増大する。配合効果および物性などの面から、前記合計量は、さらに41〜80重量部未満であることが好ましい。
本発明のゴム組成物は、充填剤とゴム成分の結合を強め、耐摩耗性を向上させるために、シランカップリング剤を含んでいてもよい。本発明で好適に使用できるシランカップリング剤は、一般式Y3−Si−Cn2nAで表わされる化合物であり、式中のYは炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシル基または塩素原子で3個のYは同一でも異なっていてもよく、nは1〜6の整数を示し、Aは−Smn2nSi−Y3基、ニトロソ基、メルカプト基、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、塩素原子、イミド基および−SmZ基(ここでmは1〜6の整数であり、nおよびYはそれぞれ前述のとおりであり、またZは以下の式(1)、(2)または(3)で表わされる基である)よりなる群から選ばれた基である。
Figure 0005236138
具体的には、たとえば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどがあげられる。また、3個のYが同一でない例としては、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3−ニトロプロピルジメトキシメチルシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどがあげられる。カップリング剤添加効果とコストの両立からビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどが好ましい。
前記シランカップリング剤は1種のみで、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、シランカップリング剤の配合量は前記クレーとシリカとの合計重量に対して1〜20重量%が好ましい。シランカップリング剤の配合量が1重量%未満ではシランカップリング剤を入れた効果が充分でなく、20重量%をこえると、コストが上がる割にカップリング効果が得られず、補強性、耐摩耗性が低下する傾向がある。分散効果、カップリング効果の面から、シランカップリング剤の配合量は、さらに2〜15重量%であることが望ましい。
なお、本発明のゴム組成物には、前記ゴム成分、クレー、シリカ、カーボンブラック、シランカップリング剤以外に、必要に応じて、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤などの通常のゴム工業で使用される配合剤を適宜配合することができる。
本発明のトレッド用ゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッドを構成するための材料として好適に用いることができ、耐摩耗性および転がり抵抗を低下させることなくウェットグリップ性能を大幅に改善することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
以下に実施例および比較例で用いた試験方法をまとめて示す。
天然ゴム:RSS#3グレード
ジエン系ゴム(SBR):ジェイエスアール(株)製のSBR1502
(スチレン含有率:23.5%)
クレー:サウスイースタン製のクラウンクレー
(粒度2μm以下:86%、5μm以下:4%)
シリカ:デグッサ製のウルトラジルVN3
(N2SA:210m2/g)
カーボンブラック:昭和キャボット(株)製のショウブラックN220
(N2SA:125m2/g)
シランカップリング剤:デグッサ製のSi69
(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のJOMOプロセスX140
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤 TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラー NS
(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤 DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラー D
(N,N’−ジフェニルグアニジン)
以下に、実施例および比較例で用いた試験方法をまとめて示す。
(摩耗試験)
ランボーン摩耗試験機にて、温度20℃、スリップ率20%、試験時間5分間の条件でランボーン摩耗試験を行なった。各配合の容積損失量を計算し、比較例1の指数を100として下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど耐摩耗性が優れる。
(ランボーン摩耗指数)=(比較例1の容積損失量)
÷(各配合の容積損失量)×100
(転がり抵抗指数)
粘弾性スペクトロメーター VES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%の条件下で各配合の損失正接tanδを測定し、比較例1の指数を100として、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど転がり抵抗特性が優れる。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)
÷(各配合のtanδ)×100
(ウェットスキッド試験)
スタンレー製のポータブルスキッドテスターを用いてASTM E303−83の方法にしたがって25℃でスキッドレジスタンスを測定し、比較例1の指数を100として、下記計算式により指数表示した(ウェットスキッド指数)。指数が大きいほどウェットスキッド性能が優れる。
(ウェットスキッド指数)=(各配合のスキッドレジスタンス)
÷(比較例1のスキッドレジスタンス)×100
実施例1〜4および比較例1〜6
表1に示す配合内容にしたがって混練りし、各種供試ゴム組成物を得た。これらのゴム組成物を170℃で20分間プレス加硫して加硫ゴム組成物を得、これらについて前記各特性の試験を行なった。
結果を表1に示す。
Figure 0005236138
クレー(B)、シリカ(C)およびカーボンブラック(D)を規定の量配合した実施例1〜4では、耐摩耗性および転がり抵抗特性を低下させることなく、ウェットスキッド性能を改善することができた。
一方、シリカ(C)のみ、カーボンブラック(D)のみまたはシリカ(A)とカーボンブラック(C)のみの比較例1〜3では実施例1〜4と比較して充分なウェットスキッド性能および転がり抵抗特性を得ることができなかった。
また、クレー(B)、シリカ(C)およびカーボンブラック(D)のすべてを使用しても、クレー(B)とシリカ(C)の合計量がゴム成分100重量部に対して30重量部に満たない比較例4〜5、クレー(B)とシリカ(C)とカーボンブラック(D)との合計量が100重量部をこえる比較例6も、同様に充分なウェットスキッド性能および転がり抵抗特性を得ることができなかった。
発明の効果
本発明によれば、タイヤの耐摩耗性および転がり抵抗特性を低下させることなく、ウェットグリップ性能を大幅に改善することができるトレッド用ゴム組成物および空気入りタイヤを提供することができる。

Claims (4)

  1. (A)ジエン系合成ゴムまたはジエン系合成ゴムと天然ゴムとの混合物からなり、かつスチレン−ブタジエンゴムを少なくとも35重量%含有するゴム成分100重量部、
    (B)平均粒子径が0.5〜10μmであるクレー5〜50重量部、
    (C)チッ素吸着比表面積が100〜300m2/gであるシリカ5重量部以上および
    (D)チッ素吸着比表面積が70〜300m2/gであるカーボンブラック1重量部以上を含有し、
    (B)クレーと(C)シリカとの合計量が30重量部以上、
    (B)クレーと(C)シリカと(D)カーボンブラックとの合計量が100重量部以下であることを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物。
  2. (A)ゴム成分中のスチレン−ブタジエンゴムの含有量が100重量%である請求項1記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
  3. さらに、(E)シラン系カップリング剤を含有する請求項1または2記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
  4. 請求項1、2または3記載のタイヤトレッド用ゴム組成物をトレッドに用いてなる空気入りタイヤ。
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