JP4763174B2 - タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関する。さらに詳しくは、低燃費性を保持するとともに、とくにウェット(湿潤)路面でのグリップ性能を大幅に改善し得るタイヤトレッド用ゴム組成物、および、このゴム組成物をトレッドゴムに用いた空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
近年、自動車タイヤに要求される特性は、低燃費性のほか、操縦安定性、耐摩耗性、乗り心地など多岐にわたり、これらの性能を向上するために種々の工夫がなされている。
【0003】
たとえば、高速走行時のウェット路面での制動性能や操縦安定性などの諸性能を向上させるために、路面とのグリップ力を高めること、タイヤトレッドパターンのブロック剛性を大きくして、コーナリング時のブロック変形を防止し、コーナリング特性をよくすること、タイヤトレッドに形成された溝部の変形を防止して排水をスムーズに行ない、ハイドロプレーニングを防止することなどが工夫されている。最近では、このような要求特性に対して、ハイスチレンSBR(スチレン−ブタジエンゴム)にシリカを配合することによって、ウェット路面でのグリップ性能を高めている。
【0004】
しかし、前記の方法では、路面温度が15℃以下の低温域でのグリップ力を高めることはできるが、15℃をこえる高温域でのウェット路面またはセミウェット(半乾き)路面では、充分なグリップ力を発現できないといわれている。さらに、シリカを配合したゴム組成物は、走行を重ねるとゴムの剛性が低下し、大幅にグリップ力が低下することが判明している。また、シリカ配合ゴム組成物は、ゴム中へのシリカ粒子の分散が不充分であるとゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、押出しなどの加工性に劣るなどの問題が生じる。
【0005】
これらの問題点を解決すべく、従来から種々の提案がなされている。たとえばジエン系ゴムに焼成クレーを配合したゴム組成物、特定のジエン系ゴムにジエン系ゴムとカオリナイトからなる加硫ゴム粉末を配合したゴム組成物、特定のスチレン含有量を有するSBRに特定の組成を有する無機化合物粉体とカーボンブラックとを配合したゴム組成物、ブタジエン部分中の1,2−結合の含有率が特定の範囲内にあるジエン系ゴムにカオリナイトを主成分とするクレーを配合したゴム組成物などが提案されており、グリップ性能の向上などに効果があることがわかっている。
【0006】
しかしながら、加工性、耐摩耗性を低下させることなく低発熱性を維持しウェットグリップ性能に優れたゴム組成物は、未だに存在しないのが現状である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、耐摩耗性および転がり抵抗特性を低下させることなく、ウェットスキッド性能を大幅に改善し得るタイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【0008】
すなわち、本発明は、
(A)スチレン−ブタジエンゴム100重量部に対して、(B)水酸化アルミニウム、(C)チッ素吸着比表面積が70〜300m2/gのカーボンブラック5〜150重量部、および、(D)チッ素吸着比表面積が100〜300m2/gのシリカ10重量部を含み、さらに、水酸化アルミニウム(B)とシリカ(D)との合計重量に対して、(E)ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド1〜20重量%を含むことを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物に関する。
【0009】
また、前記のゴム組成物からなるトレッドゴムを有する空気入りタイヤに関する。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、(A)ジエン系ゴム、(B)無機化合物粉体、(C)カーボンブラック、(D)シリカおよび(E)シランカップリング剤からなる。
【0012】
ジエン系ゴム(A)としては、ジエン系合成ゴムまたはジエン系合成ゴムと天然ゴムとの混合物が用いられる。ジエン系合成ゴムとしては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などがあげられる。これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
ジエン系ゴム(A)は、作業性の面から、SBRを含有することが望ましい。ジエン系ゴム(A)中のSBRの含有量は、好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上である。SBRは、乳化重合法、溶液重合法など、いかなる重合法によって製造されたものでも用いることができる。
【0014】
前記SBRに含まれるスチレン単位量は、20〜50重量%であることが好ましい。スチレン単位量が20重量%未満では充分なグリップ性能が得られない傾向がある。スチレン単位量が50重量%をこえると耐摩耗性が低下する傾向がある。グリップ性能と耐摩耗性の両立の点から、スチレン単位量は25〜40重量%であることがより好ましい。
【0015】
無機化合物粉体(B)は、下記一般式(1)で表される。
kM1・xSiOy・zH2O (1)
式(1)中、M1はAl、Mg、Ti、Caからなる群より選ばれた少なくとも1つの金属、該金属の酸化物または該金属の水酸化物であり、kは1〜5の整数、xは0〜10の整数、yは2〜5の整数、zは0〜10の整数である。
【0016】
一般式(1)で表される無機化合物の例としては、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、チタン白、チタン黒、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウムマグネシウム、クレー、カオリン、パイロフィライト、ベントナイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムカルシウム、ケイ酸マグネシウムカルシウムなどがあげられる。これらの無機化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらの無機化合物のうち、グリップ力向上という点から、水酸化アルミニウム、アルミナ、クレーなどが好ましい。
【0017】
無機化合物粉体(B)の平均粒子径は0.01〜10μmであることが好ましい。無機化合物粉体の平均粒子径が0.01μm未満では作業性が低下する傾向があり、10μmをこえると耐摩耗性が低下する傾向がある。作業性と耐摩耗性の点から、無機化合物粉体の平均粒子径の上限は8μm、下限は0.02μmであることがより好ましい。
【0018】
無機化合物粉体(B)の配合量は、ジエン系ゴム(A)100重量部に対して5〜150重量部である。前記配合量が5重量部未満ではウェットグリップ性能の改善効果が小さく、150重量部をこえると、耐摩耗性が低下するわりに充分なウェットグリップ性能が得られない。無機化合物粉体(B)の配合量の上限は120重量部、下限は10重量部であることが好ましい。
【0019】
また、無機化合物粉体(B)の配合量は、無機化合物粉体(B)、カーボンブラック(C)およびシリカ(D)の合計量に対して、10〜80重量%であることが好ましい。無機化合物粉体の配合量が10重量%未満ではウェットグリップ性能の改善効果が小さい傾向があり、80重量%をこえると耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0020】
カーボンブラック(C)のチッ素吸着比表面積(N2SA)は、70〜300m2/gである。カーボンブラックのN2SAが70m2/g未満であると充分な補強性や耐摩耗性が得られにくく、300m2/gをこえると分散性がわるくなり、発熱性が増大する。カーボンブラックのN2SAの上限は250m2/g、下限は90m2/gであることが好ましい。前記カーボンブラックの例としては、HAF、ISAF、SAFなどがあげられるが、とくに制限されるものではない。
【0021】
カーボンブラック(C)の配合量は、ジエン系ゴム(A)100重量部に対して5〜150重量部以上である。カーボンブラックの配合量が5重量部未満では補強性や耐摩耗性が低下し、150重量部をこえると分散性が低下するうえ、所望の特性が得られない。カーボンブラックの配合量の上限は120重量部、さらには100重量部、下限は10重量部、さらには15重量部であることが好ましい。
【0022】
また、カーボンブラック(C)の配合量は、無機化合物粉体(B)、カーボンブラック(C)およびシリカ(D)の合計量に対して、10〜80重量%であることが好ましい。カーボンブラックの配合量が10重量%未満では補強性や耐摩耗性が低下する傾向があり、80重量%をこえると分散性が低下する傾向がある。
【0023】
シリカ(D)としては、とくに制限はなく、従来ゴム補強用として慣用されているもの、たとえば乾式シリカ、湿式法シリカなどの中から適宜選択して用いることができる。
【0024】
シリカ(D)は、チッ素吸着比表面積(N2SA)が100〜300m2/gである。シリカのN2SAが100m2/gでは、補強効果が小さく、300m2/gをこえると分散性が低下し、ゴム組成物の発熱性が増大する。シリカのN2SAの上限は280m2/g、下限は130m2/gであることが好ましい。
【0025】
シリカ(D)の配合量は、ジエン系ゴム(A)100重量部に対して1〜15重量部である。シリカの配合量が1重量部未満ではシリカを配合する充分なメリットが得られず、15重量部をこえると加工性が低下する。シリカの配合量の下限は5重量部であることがより好ましい。
【0026】
また、シリカ(D)の配合量は、無機化合物粉体(B)、カーボンブラック(C)およびシリカ(D)の合計量に対して、1〜30重量%であることが好ましい。シリカの配合量が1重量%未満ではシリカを配合する充分なメリットが得られない傾向があり、30重量%をこえると加工性が低下する傾向がある。
【0027】
シランカップリング剤(D)としては、従来からシリカ充填剤と併用される任意のシランカップリング剤が好適に使用される。具体的には、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系;γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系;3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系;3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。カップリング剤添加効果とコストの両立からビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが好適に用いられる。これらのシランカップリング剤は1種で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
シランカップリング剤(D)の配合量は、無機化合物粉体(B)とシリカ(D)との合計重量に対して1〜20重量%である。シランカップリング剤の配合量が1重量%未満ではシランカップリング剤を入れた効果が充分でなく、20重量%をこえると、コストが上がるわりにカップリング効果が得られず補強性、耐摩耗性が低下する。分散効果、カップリング効果の面から、シランカップリング剤の配合量の上限は15重量%、下限は2重量%であることが望ましい。
【0029】
なお、本発明のゴム組成物には、ジエン系ゴム(A)、無機化合物粉体(B)、カーボンブラック(C)、シリカ(D)、シランカップリング剤(E)以外に、必要に応じて、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤などの通常のゴム工業で使用される配合剤を適宜配合することができる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0031】
以下に実施例および比較例で用いた各種薬品をまとめて示す。
SBR:ジェイエスアール(株)製のSBR1502(スチレン単位量:23.5重量%)
カーボンブラック:昭和キャボット(株)製のショウブラックN220(N2SA:125m2/g)
水酸化アルミニウム:昭和電工(株)製のハイジライトH−43(平均粒子径0.5〜2μm)
クレー:サウスイースタン(South Eastern)製のクラウンクレー(粒子径:2μm以下)
シリカ:デグッサ製のウルトラジルVN3(N2SA:210m2/g)
シランカップリング剤:デグッサ製のSi69
(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のJOMOプロセスX140
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0032】
実施例1〜および比較例1〜
表1に示す配合処方にしたがって、混練り配合し、各種供試ゴム組成物を得た。これらの配合物を170℃で20分間プレス加硫して加硫物を得、これらについて以下に示す各特性の試験を行なった。
【0033】
(摩耗試験)
ランボーン摩耗試験機にて、温度20℃、スリップ率20%、試験時間5分間の条件でランボーン摩耗量を測定し、各配合の容積損失を計算し、比較例1の損失量を100として下記計算式により指数表示した(摩耗指数)。指数が大きいほど耐摩耗性が優れる。
(摩耗指数)=(比較例1の損失量)÷(各配合の損失量)×100
【0034】
(転がり抵抗指数)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%の条件下で各配合の損失正接(tanδ)を測定し、比較例1のtanδを100として、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど転がり抵抗特性が優れる。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)÷(各配合のtanδ)×100
【0035】
(ウェットスキッド試験)
スタンレー製のポータブルスッキドテスターを用いてASTM E303−83の方法にしたがってウエットスキッドレジスタンスを測定し、比較例1の測定値を100として下記計算式により指数表示した(ウェットスキッド指数)。指数が大きいほどウェットスキッド性能が優れる。
(ウェットスキッド指数)=(各配合のウエットスキッドレジスタンス)
÷(比較例1のウエットスキッドレジスタンス)×100
【0036】
(ムーニー粘度指数)
JIS K6300に定められたムーニー粘度の測定方法にしたがい、130℃で測定した。比較例1のムーニー粘度(ML1+4)を100とし、下記計算式により指数表示した(ムーニー粘度指数)。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れる。
(ムーニー粘度指数)=(比較例1のML1+4)÷(各配合のML1+4
【0037】
(ゴム肌)
混練押出し直後のシート性状を目視により以下の基準で評価した。シート性状がわるいほど、作業性が低いことを示す。
○:シート形状良好。
△:シート表面に凹凸あり。
×:シート形状はボロボロ。
【0038】
結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
Figure 0004763174
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、耐摩耗性および転がり抵抗特性を低下させることなく、ウェットスキッド性能を大幅に改善し得るタイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。

Claims (2)

  1. (A)スチレン−ブタジエンゴム100重量部に対して、(B)水酸化アルミニウム5〜20重量部、(C)チッ素吸着比表面積が70〜300m2/gのカーボンブラック5〜40重量部、および、(D)チッ素吸着比表面積が100〜300m2/gのシリカ5〜10重量部を含み、さらに、水酸化アルミニウム(B)とシリカ(D)との合計重量に対して、(E)ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド1〜20重量%を含むことを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物。
  2. 請求項1記載のゴム組成物からなるトレッドゴムを有する空気入りタイヤ。
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