以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図面に付したX軸及びY軸は水平面内の直交する2軸であり、Z軸は重力方向を示している。
図1は、蒸発器10を示す断面模式図である。図1に示すように、蒸発器10は、チャンバ20と、熱交換チューブ40と、散液機構60とを備える。本実施形態において、蒸発器10は、必要に応じて、ミストセパレータ80などの他の要素を備えることができる。本実施形態において、被加熱媒体は水である。
本実施形態において、チューブ40には、熱を有する流体を供給する不図示の供給源(熱源)が流体的に接続される。本実施形態において、チャンバ20は、不図示の水の供給源に流体的に接続される。散液機構60は、チューブ40に向けて水を散布する。他の実施形態において、散液機構60が、水の供給源に対して直接的に流体的に接続することができる。
蒸発器10において、熱を有する流体がチューブ40内を流れるとともに、散液機構60からの水がチューブ40の外表面に供給される。チューブ40を介して熱流体の熱がチューブ40の外面に付着した水に伝わる。チューブ40の外面において、加熱された水が蒸発する。すなわち、チャンバ20の内部空間において、チューブ40の外で水が蒸発する。蒸気は、例えばチャンバ20に設けられた開口22から排出される。
このような形態の蒸発器10は、被加熱媒体(水)が管内を流れる形態に比べて、水−蒸気の界面を広くできる。これは、比較的低温度レベルの熱源を用いた蒸発プロセスに有利である。
また、このような形態の蒸発器10は、水又は蒸気の流れに対する圧力損失が小さいという利点を有する。水側の圧力損失に起因した蒸発温度の変化が抑制されることにより、ピンチ温度に対する懸念を抑え、蒸発プロセスの安定性の向上が図られる。
また、蒸発器10では、被加熱媒体(水)がチューブ40の外を流れるので、水側で発生したスケール(scale)による詰まりが生じにくい。
チャンバ20の内部空間は、大気圧と同等にでき、これは、チャンバ20の薄肉化・軽量化に有利である。本実施形態において、チャンバ20の内圧は、例えば約0.1MPa(1atm)である。本実施形態において、チャンバ20の内圧は、大気圧に比べて高く、又は低くすることもできる。負圧の場合、その内圧は、例えば、約0.09、0.08、0.07、又は0.06MPa以下にできる。高圧の場合、その内圧は、例えば、約0.12、0.14、0.16、0.2、0.4、0.8、1.0、又は2.0MPa以上にできる。
チャンバ20の外形は、丸みを帯びた角を必要に応じて有する、概略的な筒形状を有することができる。本実施形態において、筒形状を有するチャンバ20の軸方向は重力方向(Z方向)に実質的に一致する。チャンバ20の周面に、周方向に延びる波形あるいは凹凸を設けることにより、高い耐圧強度を有するチャンバ20を、比較的薄い材料を用いて形成することが可能である。薄い材料で形成されたチャンバ20は、装置コスト低減に有利である。例えば、チャンバ20の構成部材の厚さは、10mm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、又は1mm以下である。他の実施形態において、チャンバ20の横断面形状は、円状、楕円状、矩形状、又は他の形状を有することができる。
チューブ40は、チャンバ20内に、チャンバ20の軸方向(重力方向)に沿って多段の層状に配置される。チャンバ20内には、ヘッダパイプ42,44が設けられている。ヘッダパイプ42,44は、チャンバ20の軸方向に沿って延びた筒形状を有し、互いに離間して配置されている。
各層のチューブ40の一端が第1ヘッダパイプ42に流体的に接続され、各層のチューブ40の他端が第2ヘッダパイプ44に流体的に接続されている。第1ヘッダパイプ42に供給された高温の熱流体が分岐し、各層のチューブ40を流れる。チューブ40からの熱流体が第2ヘッダパイプ44で合流する。チューブ40の構成部材としては、高い熱伝導率を有する金属チューブ(例えば、銅チューブ、アルミニウムチューブ)が好ましく用いられる。
また、チューブ40は、表面が滑らかな素チューブ、表面に網状の部材が配設された網付チューブ、多数の溝が表面に形成された溝付チューブ、多数のフィンが表面に設けられたフィンチューブのいずれでもよい。網、溝、及びフィンなどがチューブ40の表面に設けられることにより、チューブ40における表面積の拡大、及び熱交換の促進が図られる。また、チューブ40の表面に対して熱交換に適した処理を施してもよい。チューブ40の表面の少なくとも1部を親液処理してもよく、撥液処理してもよい。例えば、チューブ40の表面のうち、上方領域を親液処理し、下方領域を撥液処理してもよい。
図2A、図2B、図2C、及び図2Dは、チューブ40の構成例を模式的に示す平面図である。図2A〜2Dにおいて、X方向及びY方向を含む面(XY平面)は水平面に実質的に一致する。
図2Aにおいて、チューブ40は、X方向に沿って延びかつY方向に沿って互いに並ぶ複数の線要素51と、線要素51同士を流体的につなぐ屈曲要素53とを有する。線要素51は、互いに実質的平行でもよく、互いに非平行でもよい。図2Aにおいて、チャンバ20は、矩形の断面形状を有する。第1ヘッダパイプ42は、チャンバ20における1つの角に隣接して配置される。第2ヘッダパイプ44は、第1ヘッダパイプ42に隣接する角と対向するチャンバ20における別の角に隣接して配置される。例えば、折り曲げ加工あるいは溶接加工を用いることにより、線要素51及び屈曲要素53を有するチューブを形成することができる。重力方向(Z方向)の各層において、チューブ40は、同様の形状を有することができる。
図2Bにおいて、チャンバ20は、円形の断面形状を有する。チューブ40は、図2Aと同様に、X方向に沿って延びかつY方向に沿って互いに並ぶ複数の線要素55と、線要素51同士を流体的につなぐ屈曲要素57とを有する。線要素51は、互いに実質的平行でもよく、互いに非平行でもよい。第1ヘッダパイプ42は、チャンバ20の内周面に隣接して配置される。第2ヘッダパイプ44は、第1ヘッダパイプ42に対向する、チャンバ20の内周面に隣接する位置に配置される。例えば、折り曲げ加工あるいは溶接加工を用いることにより、線要素55及び屈曲要素57を有するチューブを形成することができる。図2Bにおいて、第1ヘッダパイプ42と第2ヘッダパイプ44とを結ぶ線は、チューブ40の線要素55の軸と交差する。チューブ40の屈曲要素57は、チャンバ20の内周面に隣接して配置される。重力方向(Z方向)の各層において、チューブ40は、同様の形状を有することができる。
図2Cにおいて、チャンバ20は、円形の断面形状を有する。チューブ40は、スパイラル状に延びる湾曲要素59を有する。湾曲要素59のスパイラルの中心は、チャンバ20の軸心に概ね一致することができる。換言すると、チャンバ20の径方向に沿って、チューブ40の要素が同心円状に並ぶ。例えば、折り曲げ加工あるいは溶接加工を用いることにより、湾曲要素59を有するチューブを形成することができる。第1ヘッダパイプ42は、チャンバ20の軸心付近に配置される。第2ヘッダパイプ44は、チャンバ20の内周面に隣接して配置される。重力方向(Z方向)の各層において、チューブ40は、同様の形状を有することができる。
図2Dにおいて、チューブ40は、水平方向に並びかつ水がそれぞれ流れる複数の水平群40A,40Bを有する。各水平群40A,40Bは、X方向に沿って延びかつY方向に沿って互いに並ぶ複数の線要素51と、線要素51同士を流体的につなぐ屈曲要素53とを有する。線要素51は、互いに実質的平行でもよく、互いに非平行でもよい。図2Dにおいて、チャンバ20は、矩形の断面形状を有する。例えば、折り曲げ加工あるいは溶接加工を用いることにより、線要素51及び屈曲要素53を有するチューブを形成することができる。
第1ヘッダパイプ42からの熱流体の一部は、第2ヘッダパイプ44に向けて水平群40Aを流れる。第1ヘッダパイプ42からの熱流体の別の一部は、第2ヘッダパイプ44に向けて水平群40Bを流れる。ある層において、チューブ40の流路が複数の水平群40A,40Bに分かれていることにより、所定領域内における、第1ヘッダパイプ42から第2ヘッダパイプ44までのチューブ40の軸長さ、すなわち熱交換長さを比較的短くできる。これにより、チューブ40を流れる熱流体が放熱に伴って温度変化する場合における、チューブ40の下流領域での熱流体の温度低下が抑制される。これは、チューブ40の下流領域での熱伝達の低下を抑制するのに有利である。
チューブ40の複数の水平群は、X方向、Y方向、及びその傾き方向のいずれに沿って並んでもよい。他の実施形態において、複数の水平群は、X方向、Y方向の両方に沿って並ぶことができる。水平群40A,40Bの数は2に限定されない。水平群の数は、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10以上にできる。また、水平群40A,40Bは、図2Dに示される形態に限定されず、様々な形態が適用可能である。
図2Dにおいて、重力方向(Z方向)の各層において、チューブ40は、同様の形状を有することができる。チューブ40の複数の層の間で、チューブ40の分割形態が異なっていてもよい。あるいは、チューブ40は、複数の水平群に分割された流路を有する層と、非分割の層との両方を有することができる。
図2A〜2Dにおいて、最も高い位置の層に属するチューブ40の真下に、次の層に属するチューブ40の少なくとも1部が位置する。同様に、他の隣接する2つの層の間でもチューブ40同士が少なくとも部分的に重なる。本実施形態において、高い位置の層に属するチューブ40の真下に次の層に属するチューブ40の概ねすべてが位置する。他の実施形態において、その真下の位置からチューブ40の一部がずれて配置できる。すなわち、隣接する2つの層の間で概ねチューブ40全体の配列位置(線要素51の配列位置)が一致してもよく、部分的に不一致でもよい。
なお、図2A〜2Dに示されるチューブ40の構成は例であって、他の構成も適用可能である。
図1に戻り、本実施形態において、チューブ40の層の数は、装置仕様に応じて設定される。層の数は、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10以上にできる。あるいは、層の数は、15、20、25、30、35、40、45、又は50以上にできる。
図1に示すように、散液機構60は、ポンプ62と、複数のノズル64を有する散液配管66と、ポンプ62と配管66とを流体的につなぐ供給配管68とを有する。ポンプ62は、チャンバ20に貯溜した水を汲み上げ、供給配管68を介して散液配管66にその水を送る。配管66のノズル64から水が出る。配管66のノズル64から落下した水がチューブ40の表面(外面)に付着する。チューブ40内の高温流体の熱が、チューブ40の表面に付着した水に伝わり、水の一部がチャンバ20内で蒸発する。
ノズル64は、スプレーノズルでもよく、液柱用ノズル(例えば、孔)でもよい。スプレータイプでは、比較的広い範囲に水を散布することができる。液柱タイプは、液柱の調整(液柱の径、流速、空間密度などの調整)が容易であるという利点を有する。スプレータイプと液柱タイプ以外のタイプのノズルを用いてもよい。複数タイプのノズルを組み合わせてもよい。
散液配管66は、最も高い位置の層に属するチューブ40に向けて水を供給する上部配管66Aと、別の層に属するチューブ40に向けて水を供給する中間配管66B,66C,66D,...とを有する。
本実施形態において、上部配管66Aから最上層に属するチューブ40の外面に向けて水が供給される。最上層のチューブ40で蒸発した水の残りは落下し、次の層のチューブ40の外面に付着する。また、最上層のチューブ40からの水に加えて、次の層に属するチューブ40の外面に向けて中間配管66Bから水が供給される。残りの層に属するチューブ40についても同様に、上段のチューブ40からの水と、中間配管66C,66D,...からの水とがその外面に供給される。
チューブ40の外面に存在する水の膜厚が適正値に比べて小さいと、チューブ40の外面に濡れていない部分が生じる可能性がある。水の膜厚が適正値に比べて大きいと、チューブ40の外面から水が蒸発しにくくなる可能性がある。これらは、熱効率の点で不利である。散液機構60からの水の適切な散布が、高い熱伝達と効率的な蒸気生成とをもたらす。
本実施形態において、中間配管66B,66C,66D,...から水が補充されることにより、各層のチューブ40の外面における水の量の最適化が図られる。高い位置の層に属するチューブ40の外面からの水の蒸発量に応じて、低い位置の層に属するチューブ40に対する中間配管66B,66C,66D,...からの水の供給量が設定される。例えば、ある中間層のチューブ40に対して、その上の層のチューブ40で蒸発した水の量に比べて同程度または多い量の水が中間配管66B,66C,66D,...から供給される。その結果、チューブ40の外表面における部分的な渇きが防止される。適切な量の水が供給された各層のチューブ40の外表面において、水が好ましく蒸発する。
本実施形態において、チューブ40の2つの層に対して1つの中間配管66B,66C,66D,...が配置されている。すなわち、チューブ40の2つの層ごとに、層同士の間のスペースに中間配管66B,66C,66D,...が配置されている。他の実施形態において、チューブ40の層同士の間の各スペースに中間配管が配置することができる。
また、散液配管66(上部配管66A,中間配管66B,66C,66D,...)は、チューブ40から離間して配置されてもよく、チューブ40に近接あるいは密着してもよい。散液配管66とチューブ40とが、抱き合わせ構造及び/又は密着構造を有することにより、散液配管66のノズル64が確実にチューブ40の真上に配置されるとともに、散液配管66のノズル64からの水がチューブ40の表面(外面)に確実に付着する。
図3は、ノズル64の配置の一例を示す模式図であり、二次元平面(水平面)内でのノズル64のそれぞれの位置を示している。図3において、ノズル64は、チューブ40に面しかつ互いに離間して配置されている。各ノズル64は、チューブ40のいずれかの部分の真上に位置することができる。こうしたノズル64の配置により、配管66からの水が確実にチューブ40上に落下する。できるだけ多くのノズル64がチューブ40の真上の位置に配置されることが好ましいが、一部のノズル64がチューブ40の真上の位置からずれていてもよい。
本実施形態において、散液機構60は、チューブ40の少なくとも一部の領域においてチューブ40の軸方向において水の供給量がさまざまとなるような(異なるような)形態を有する。すなわち、チューブ40の少なくとも一部の領域に対して、チューブ40内を流れる熱流体の流れ方向に沿って散液機構60からの水の供給量が変化する。本実施形態において、チューブ40における上流側の部分では水の供給量が比較的多く、チューブ40における下流側の部分では水の供給量が比較的少ない。
図3に示すように、チューブ40の軸方向において、ノズル64の配列ピッチがさまざまである。具体的には、チューブ40における熱流体の上流側(第1ヘッダパイプ42に近い側の部分)に配置されるノズル64(水の出口)は、比較的狭い配列ピッチを有し、下流側(第2ヘッダパイプ44に近い側の部分)に配置されるノズル64(水の出口)は、比較的広い配列ピッチを有する。図3において、各ノズル64の散液量(所定の圧力に対する時間あたりの散液量)が実質的に同程度である場合、チューブ40における上流側の部分では水の供給量が比較的多く、下流側の部分では水の供給量が比較的少ない。
図4は、ノズル64の配置の別の例を示す模式図である。図4に示すように、チューブ40の軸方向において、ノズル64の種類及び/又は特性がさまざまである。具体的には、チューブ40における熱流体の上流側(第1ヘッダパイプ42に近い側の部分)には、散液量(所定の圧力に対する時間あたりの散液量)が比較的多いノズル64(水の出口)が配置され、熱流体の下流側(第2ヘッダパイプ44に近い側の部分)には、散液量が比較的少ないノズル64(水の出口)が配置される。図4において、チューブ40の軸方向に沿ったノズル64の配列ピッチが実質的にほぼ一様である場合、チューブ40における上流側の部分では水の供給量が比較的多く、下流側の部分では水の供給量が比較的少ない。
図5は、散液機構60の別の例を示す模式図である。図5に示すように、散液機構60は、チューブ40の軸方向における複数の位置での水の供給量を変化させることができる制御装置70を有する。図5において、散液配管66及びノズル64は、複数の群(ノズル群71A〜71D)にグループ化されている。制御装置70は、第1ノズル群71Aに供給される水量及び/又は圧力を調整する弁72Aと、第2ノズル群71Bに供給される水量及び/又は圧力を調整する弁72Bと、第3ノズル群71Cに供給される水量及び/又は圧力を調整する弁72Cと、第4ノズル群71Dに供給される水量及び/又は圧力を調整する弁72Dと、各弁72A〜72Dを制御するコントローラ74とを有する。
図5において、第1ノズル群71Aは、チューブ40における熱流体の上流側(第1ヘッダパイプ42に近い側の部分)に対応しており、第4ノズル群72Bは、熱流体の下流側(第2ヘッダパイプ44に近い側の部分)に対応している。コントローラ74は、第1ノズル群71Aからの時間あたりの散液量が比較的多く、第2ノズル群71B、第3ノズル群71C、及び第4ノズル群71Dの順に散液量が少なくなるように、各弁71A〜71Dを制御する。
図3〜図5の例で示された1つの形態、または2つ以上を組み合わせた形態を用いることにより、チューブ40内を流れる熱流体の流れ方向に沿って散液機構60からの水の供給量が変化する。すなわち、散液機構60は、チューブ40の少なくとも一部の領域に対して、チューブ40における上流側の部分では水の供給量が比較的多く、チューブ40における下流側の部分では水の供給量が比較的少なくなるように、チューブ40に向けて水を供給する。
本実施形態において、チューブ40の少なくとも一部の領域に対して熱流体が流れるチューブ40の軸方向において水の供給量がさまざまであることにより、比較的低温度レベルの熱源であっても、効率的に水を蒸発させることができる。すなわち、チューブ40の軸方向に沿った全体にわたり、チューブ40の単位長さあたりの水の散布量が適正化され、その結果、熱利用効率の向上が図られる。
チューブ40を流れる熱流体が放熱に伴って温度変化する場合、温度が比較的高いチューブ40の外面部分には、比較的多い量の水が供給され、温度が比較的低いチューブ40の外面部分には、比較的少ない量の水が供給されることができる。例えば、チューブ40を流れる熱流体の少なくとも一部が超臨界流体、もしくは気体である場合には、放熱に伴って熱流体の温度が比較的漸次的に低下しやすい。熱流体の温度変化に応じて、チューブ40の部分ごとに水の供給量が適正化されることにより、高い熱伝達と効率的な蒸気生成とがもたらされる。
本実施形態において、チューブ40に対する水の供給量のプロファイルは、層ごとに変化させることができる。すなわち、低い位置に属するチューブ40に対する軸方向における水の供給量の変化を、高い位置の層に属するチューブ40に対するそれと異なるように設定できる。これにより、チューブ40の軸方向に加え、重力方向においても、チューブ40の全体にわたり、チューブ40の単位長さあたりの水供給量が適正化され、その結果、熱利用効率の向上が図られる。
例えば、最も高い位置の層に属するチューブ40において、軸方向における水の供給量が実質的に一定であり、少なくとも1つの他の層に属するチューブ40において、軸方向における水の供給量がさまざまであるように設定できる。最上段の層に軸方向に一定供給量の水を供給しかつチューブ40を流れる熱流体が放熱に伴って温度変化する場合、その層から落下する水の量(供給量−蒸発量)は、軸方向で異なる。これに対応して、下段の層において、散液機構60は、落下水量が比較的少ない領域に比較的多い量の水を供給することができる。これにより、チューブ40の単位長さあたりの水供給量が適正化され、その結果、熱利用効率の向上が図られる。
次に、本実施形態に応じたモデルを解析した結果について説明する。
モデルにおいて、チューブ40(伝熱管)内を熱流体が流れ、チューブ40にシャワーされた水がチューブ40の外で蒸発する。熱流体が最初に流入するチューブ40の部分(単位長さ部分)において伝熱量を計算し、伝熱(放熱)による温度低下、及び水側の伝熱(受熱)による蒸発量を計算する。次の単位長さ部分において、温度低下した熱流体が流れるという条件で、同様の伝熱計算を行う。
ここで、
NOMENCLATURE
A:伝熱面積[m2]
Cp:定圧比熱[J/kg・K]
d:伝熱管直径[m]
F:汚れ係数[m2K/W]
G:質量流量[kg/s]
h:エンタルピ[J/kg]
N u:ヌッセルト数N u = αi・di /λ[−]
KAo:熱貫流率[W/K]
L:伝熱管長さ[m]
P:圧力[Pa]
Pr:プラントル数Pr:=νρCp/λ[−]
Re:レイノルズ数Re = u・di /ν[−]
T:温度[℃]
u:管内平均流速[m/s]
W:伝熱量[W]
Xo:伝熱管外面の濡れている面積の割合[−]
α:熱伝達率[W/m2・K]
Γ:伝熱管単位長さ当たりの散布水片側流量(液膜流量)[kg/m・s]
λ:熱伝導率[W/m・K]
ξ:管内摩擦係数[−]
ρ:密度[kg/m3]
ν:動粘性係数[m2/s]
Subscript
evap:蒸発
f:フロン
i:管内
n:伝熱管における単位長さ部分の順番
o:管外
s:水蒸気
w:水
熱交換量Wは式(1)から計算することができる。
W = K Ao X o( Tf − Tw )・・・・・・(1)
熱貫流率KAoは式(2)から計算することができる。
KAo = 1 /(1/αoAo + 1/αiAi + ln(do/d i)/(2πλL)+ F/Ai)・・・・・・(2)
ここで、伝熱面積A0 =πdoL、Ai =πdiL
次に、管外蒸発熱伝達率αoは式(3)の実験式から計算することができる。
αo = −1.18921・107Γ2 + 1.51564・105Γ + 8394 ・・・・・・(3)
(適用範囲:Γ≧0.005 kg/m・s)
一方、式(4)からヌッセルト数N uを計算することができる。
N u = 0.57 Re 0.8 Pr 0.4 ・・・・・・(4)
管内蒸発熱伝達率αiはヌッセルト数の定義式である式(5)から計算することができる。
N u = αi・di /λ ・・・・・・(5)
次に管内摩擦係数ξは式(6)のブラジウスの式から計算することができる。
ξ = 0.092・4・ Re −0.25 ・・・・・・(6)
そして、単位長さ当たりの管内圧力損失ΔPは式(7)のように計算することができる。
ΔP = ξ/2・ρ・u2・ΔL/d i ・・・・・・(7)
ここで、伝熱管におけるある単位長さ部分における圧力をPnとすると、次の単位長さ部分における圧力Pn+1は式(8)ように計算することができる。
Pn+1 = Pn−ΔP ・・・・・・(8)
また、伝熱管におけるある単位長さ部分におけるエンタルピhnは式(9)ように物性計算式から計算することができる。
hn = h(Pn, Tn)・・・・・・(9)
そして、次の単位長さ部分におけるエンタルピhn+1は式(10)ように計算することができる。
hn+1 = hn − ΔW・(ΔL/u)/(π・d i 2/4・ρ) ・・・・・・(10)
そして、次の単位長さ部分における温度Tn+1は式(11)ように物性計算式から計算することができる。
Tn+1 = T(Pn+1, hn+1)・・・・・・(11)
次に管外において蒸発量ΔGevapは式(12)ように計算することができる。
ΔGevap = ΔW・(ΔL/u)/( hs −hw )・・・・・・(12)
所定の条件に基づく解析結果を図6、図7、図8、及び図9に示す。図6は、チューブの軸方向に沿ったチューブ内の熱流体の平均流速を示す。図7は、チューブの軸方向に沿ったチューブ内の圧力を示す。図8は、チューブの軸方向に沿ったチューブ内の温度を示す。図9は、チューブの軸方向に沿ったチューブ外の蒸発量(累積値)を示す。解析結果から、比較的低温度レベルの熱源において、本実施形態に応じたモデルが、蒸気生成に適していることが確認された。
図10は1段目(最上段)のチューブに軸方向に一定量の水供給をした場合における各段の水供給量(=上段への供給量−上段での蒸発量)を示す。この場合、下段に行くほど、また、管の上流であるほど、水供給量が低下することがわかった。水供給量が少なすぎるとドライアウトしてしまうため、中間段での追加供給が供給量の適正化に有効であることが確認された。
図11は、上記の蒸発器10が好ましく適用される蒸気生成システムの一例を示す概略図である。
図11において、蒸気生成システムS1は、作動流体(作動媒体、第1流体)が流れるヒートポンプ110と、被加熱流体(被加熱媒体、第2流体)の供給ユニット120と、制御装置70とを備える。本実施形態において、被加熱流体は水である。制御装置70は、システム全体を統括的に制御する。蒸気生成システムS1の構成は、蒸気生成システムS1の設計要求に応じて様々に変更可能である。
ヒートポンプ110は、蒸発、圧縮、凝縮、及び膨張の各工程からなるサイクルにより、低温の物体から熱を汲み上げ、高温の物体に熱を与える装置である。ヒートポンプは一般に、エネルギー効率が比較的高く、結果として、二酸化炭素等の排出量が比較的少ないという利点を有する。
本実施形態において、ヒートポンプ110は、吸熱部111、圧縮部112、放熱部(第1放熱部113A、第2放熱部113B)、及び膨張部114を有し、これらは導管を介して接続されている。
吸熱部111では、主経路115内を流れる作動流体がサイクル外の熱源の熱を吸収する。本実施形態において、ヒートポンプ110の吸熱部111は、大気の熱を吸収する。ヒートポンプ110の吸熱部111が外部の装置からの熱(排熱など)を吸収する構成とすることもできる。
圧縮部112は、圧縮機等によって作動流体を圧縮する。この際、通常、作動流体の温度が上がる。圧縮部112は、作動流体を単段又は複数段に圧縮する構造を有する。圧縮の段数は、蒸気生成システムS1の仕様に応じて設定され、1、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上である。圧縮部112は、軸流圧縮機、遠心圧縮機、レシプロ式圧縮機、ロータリー式圧縮機などの様々な圧縮機のうち、作動流体の圧縮に適するものが適用される。圧縮機には動力が供給される。圧縮部112の圧縮比(圧力比)は、蒸気生成システムS1の仕様に応じて設定される。
放熱部113A,113Bは、圧縮部112で圧縮された作動流体が流れる導管を有し、主経路115内を流れる作動流体の熱をサイクル外の熱源に与える。本実施形態において、作動流体の流れ方向に沿って、第1放熱部113A、及び第2放熱部113Bがその順に並んでいる。放熱部の数は、蒸気生成システムS1の仕様に応じて設定され、2、3、4、5、6、7、8、9、10、あるいは11以上である。
膨張部114は、減圧弁またはタービン等によって作動流体を膨張させる。この際、通常、作動流体の温度が下がる。タービンを使用した場合には膨張部114から動力を取り出すことができ、その動力を例えば圧縮部112に供給してもよい。ヒートポンプ110に使用される作動流体として、フロン系媒体、アンモニア、水、二酸化炭素、空気などの公知の様々な熱媒体が、蒸気生成システムS1の仕様及び熱バランスなどに応じて用いられる。
供給ユニット120は、加温部121と、蒸発ユニット122と、圧縮機130とを有する。
加温部121は、ヒートポンプ110の第2放熱部113Bに熱的に接続されかつ供給源(不図示)からの水が流れる導管を含む。例えば、加温部121の導管が第2放熱部113Bの導管に接触あるいは隣接して配置される。加温部121と第2放熱部113Bとを含んで第1熱交換器141が構成される。第1熱交換器141は、低温の流体(供給ユニット120内の水)と高温の流体(ヒートポンプ110内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換方式を有することができる。あるいは、第1熱交換器141は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換方式を有してもよい。本実施形態において、ヒートポンプ110の第2放熱部113Bの導管の内部に、加温部121の導管が配設されている。加温部121において、ヒートポンプ110の第2放熱部113Bからの伝達熱によって、供給ユニット120内の水が温度上昇する。なお、他の実施形態において、第1熱交換器141は、別の熱交換構造を採用することができる。例えば、第2放熱部113Bの導管を、加温部121の導管の外周面に配設することができる。
蒸発ユニット122は、図1に示した蒸発器10を備える。すなわち、蒸発ユニット122は、チャンバ20と、散液機構60とを備える。蒸発ユニット122は、必要に応じて、ミストセパレータ80などの他の要素を備えることができる。
本実施形態において、ヒートポンプ110の第1放熱部113Aの導管の一部(熱交換チューブ40)がチャンバ20内に配置される。散液機構60は、チューブ40に向けて水を散布する。
蒸発ユニット122において、熱を有する作動流体がチューブ40内を流れるとともに、散液機構60からの水がチューブ40の外表面に供給される。チューブ40を介して熱流体の熱がチューブ40の外面に付着した水に伝わる。チューブ40の外面において、加熱された水が蒸発する。すなわち、チャンバ20の内部空間において、チューブ40の外で水が蒸発する。蒸気は、例えばチャンバ20に設けられた開口22からダクト137を介して外部に排出される。
ここで、チャンバ20における水の飽和温度(沸騰温度)と熱源であるチューブ40(第1放熱部113A)を流れる作動流体との温度差は、比較的小さく、例えば約5℃〜15℃、約15℃〜25℃、約25℃〜35℃、約35℃〜45℃、約45℃〜55℃、約55℃〜約65℃、約65℃〜約75℃、約75℃〜約85℃、約85℃〜約95℃、又は約95℃以上である。
前述したように、このような形態の蒸発ユニット122は、被加熱媒体(水)が管内を流れる形態に比べて、水−蒸気の界面を広くできる。これは、比較的低温度レベルの熱源を用いた蒸発プロセスに有利である。
このような蒸気生成システムS1において、供給源からの水が第1熱交換器141でヒートポンプ110の第2放熱部113Bからの熱によって沸点近くまで温度上昇する。その温水は散液機構60に供給される。チャンバ20において、ヒートポンプ110の第1放熱部113Aからの熱によって水が相変化して蒸発する。
ボイラのエネルギー効率が一般に約0.7〜0.8(70〜80%)であるのに対して、ヒートポンプのエネルギー効率としての成績係数(COP:coefficient of performance)は一般に2.5〜5.0である。ヒートポンプの成績係数は、被加熱媒体(水)の入出力温度差に応じて変化し、その温度差が過度に大きいと成績係数(COP)が低下する場合がある。本実施形態において、被加熱媒体及び作動流体の状態に応じて、ヒートポンプが個別の加熱部(放熱部)を有する点などにより、入出力温度差を抑え、ボイラに比べて高いエネルギー効率で蒸気を発生させることができる。加温部121への水の供給温度は例えば約20℃であり、加温部121からの水の出口温度(蒸発ユニット122への水の入口温度)は例えば約90〜95℃である。上記数値は理解のための一例であって本発明はこれに限定されない。
なお、ヒートポンプ110の放熱部及び供給ユニット120の蒸発部の数は、作動流体の特性に応じて適宜設定される。また、供給源からの水の供給温度が比較的高い場合など、加温部121(第2放熱部113B)を省略することも可能である。
本実施形態において、水の顕熱加熱が主に第1熱交換器141(加温部121)で行われ、水の潜熱加熱が主に蒸発ユニット122で行われる。そのため、第2放熱部113Bを含む第1熱交換器141が顕熱交換に適した形態であり、第1放熱部113A、蒸発ユニット122などを含む熱交換ユニットが潜熱交換に適した形態であるといった、装置構成の最適化が図られ、これに応じて、好ましい加熱プロセスを経て蒸気が発生する。蒸気生成システムS1からの蒸気は、外部の所定施設、例えば製造プラント、調理施設、空調設備、発電プラントなどに供給される。
図12は、上記の蒸発器10が好ましく適用される蒸気生成システムの別の例を示す概略図である。以下の説明では、図11のシステムと同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
図12に示すように、蒸気生成システムS2において、蒸発ユニット122のチャンバ20の内部空間が、ダクト123を介して圧縮機130によって吸引される。チャンバ20内で発生した蒸気は、ダクト123を介して圧縮機130に導かれる。
圧縮機130は、ダクト123及びチャンバ20の開口22を介してチャンバ20の気相空間に流体的に接続されている。圧縮機130としては、軸流圧縮機、遠心圧縮機、レシプロ式圧縮機、ロータリー式圧縮機などの様々な圧縮機が適用され、蒸気圧縮に適するものが用いられる。圧縮機130は、チャンバ20からの蒸気を圧縮し、昇圧した蒸気を下流に流す。
圧縮機130による吸引作用により、チャンバ20の内部空間が減圧される。チャンバ20の内部圧力が大気圧に比べて低い負圧(陰圧)となるように、不図示の制御弁(流量制御弁など)や圧縮機130が制御される。この制御は、例えば、チャンバ20の内部圧力を計測するセンサ(不図示)の計測結果に基づいて行われる。
圧縮機130及び/又は供給ユニット120には、蒸気に対して水(温水)を供給するノズル135が、必要に応じて配設される。ノズル135の配設位置は、例えば、圧縮機130の入口及び/又は出口である。圧縮機130が多段式である場合には、ノズル135を圧縮機130の段間に配設することができる。圧縮機130の多段圧縮構造は、蒸気の高温・高圧化に有利である。圧縮機130は、多段の各圧縮部に対応する回転数が個々に制御される多軸圧縮構造を有することができる。あるいは、圧縮機130は、同軸の多段圧縮構造を有することができる。各圧縮部の圧縮比(圧力比)は、蒸気生成システムS2の仕様に応じて設定される。ノズル135からの液体の排出には、ポンプなどの動力源を用いてもよく、液体が流れる導管の入口と出口との圧力差を利用してもよい。
本実施形態において、供給源からの水が、ヒートポンプ110(放熱部113A,113B)による加熱で比較的低圧力かつ低温度の蒸気となり、圧縮機130による圧縮で比較的高圧力かつ高温度の蒸気となる。すなわち、ヒートポンプ110で加熱された水が、圧縮機130による圧縮によってさらに加熱され、これにより、100℃以上の高温蒸気が発生する。
図13は、図12に示す蒸発ユニット122及び圧縮機130における水の状態変化の一例を示す T-s 線図である。図13に示すように、水は、沸点近くまで温度上昇した後、温度一定のまま相変化する。このとき、大気圧(P1=1atm=約0.1MPa)に比べて低い負圧P0の状態において、飽和蒸気d0が発生する。飽和蒸気d0の温度は標準沸点よりも低い、例えば約90℃である。
次に、その飽和蒸気d0は、圧縮機130(図12参照)による圧縮で比較的高圧力かつ高温の蒸気(過熱蒸気e2)になる。すなわち、その圧縮に伴って、蒸気が温度上昇する。過熱蒸気e2の圧力P2は大気圧よりも高い、例えば0.8MPaである。
0.8MPaの過熱蒸気e2を定圧下で冷却することにより、約160℃の飽和蒸気を得ることができる(図12の破線a)。同様に、大気圧(約0.1MPa)の過熱蒸気を定圧下で冷却することにより、約100℃の飽和蒸気d1を得ることができる。上記数値は理解のための一例であって本発明はこれに限定されない。
過熱蒸気から飽和蒸気への冷却に、液状の水または温水を直接混入することにより、蒸気のボリュームが増加する。この場合、例えば、圧縮機130の出口において蒸気に対して水または温水が供給される。
水または温水の供給量及びタイミングの最適化により、比較的低圧力かつ低温度の飽和蒸気d0から比較的高圧力かつ高温度の飽和蒸気d2への変化を、より直接的にできる。例えば、圧縮機130の入口で適量の水または温水が蒸気に供給されることにより、圧縮機130の入口での飽和蒸気d0が、圧縮機130の出口で飽和蒸気d2に変化する(図12の破線c1(スプレー)及びc2(圧縮))。または、圧縮機130の中間で圧縮機130の段落ごとに適量の水または温水が蒸気に供給されることにより、圧縮機130の入口での飽和蒸気d0が、圧縮機130の出口で飽和蒸気d2に変化する(図12の破線b)。すなわち、圧縮機130による圧縮と水または温水による冷却との組み合わせの最適化により、効率良く圧縮機130から飽和状態に近い蒸気を排出することができる。
このように、蒸気生成システムS2では、ヒートポンプ110及び圧縮機130による順次加熱により、飽和蒸気及び過熱蒸気のいずれも容易に発生させることができる。つまり、蒸気生成システムS2は、蒸気仕様に対する柔軟性が高い。蒸気生成システムS2からの蒸気は、外部の所定施設、例えば製造プラント、調理施設、空調設備、発電プラントなどに供給される。
また、蒸気生成システムS2において、蒸気発生のための加熱過程の一部を圧縮機130が補うから、高いCOPでヒートポンプ110が使用される。したがって、蒸気生成システムS2は、全体としての一次エネルギーの節減が期待される。
蒸気生成システムS2において、ヒートポンプ110はさらに、バイパス経路117と、再生器118とを有する。バイパス経路117の入口端がヒートポンプ110の主経路115における第1放熱部113Aと第2放熱部113Bとの間の導管に流体的に接続される。バイパス経路117の出口端が主経路115における第2放熱部113Bと膨張部114との間の導管に流体的に接続される。バイパス経路117の入口に、作動流体のバイパス流量を制御する流量制御弁を設けることができる。バイパス経路117において、第1放熱部113Aからの作動流体の一部が、第2放熱部113Bを迂回し、膨張部114の手前で第2放熱部113Bからの作動流体と合流する。第1放熱部113Aからの残りの作動流体は、第2放熱部113Bを流れ、第2放熱部113Bからの熱が供給ユニット120内の水に伝わる。
再生器118は、バイパス経路117の導管の一部と、ヒートポンプ110の主経路115の導管(吸熱部111と圧縮部112との間の導管)の一部とが熱的に接続された構成を有する。例えば、両導管が互いに接触あるいは隣接して配置される。ヒートポンプ110において、吸熱部111からの作動流体に比べて、第1放熱部113Aからの作動流体は高温である。再生器118において、バイパス経路117を流れる第1放熱部113Aからの作動流体と、ヒートポンプ110の主経路115を流れる吸熱部111からの作動流体とが熱交換する。この熱交換により、バイパス経路117内の作動流体の温度が降下し、主経路115内の作動流体の温度が上昇する。再生器118は、低温の流体(主経路115内の作動流体)と高温の流体(バイパス経路117内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換構造を有することができる。あるいは、再生器118は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換構造を有してもよい。
本実施形態において、バイパス経路117を介して作動流体の一部が第1熱交換器141を迂回することにより、第1熱交換器141への作動流体の流入量が制御される。バイパス経路117を流れる作動流体は、再生器118において、ヒートポンプ110の主経路115を流れる吸熱部111からの作動流体と熱交換する。この熱交換により、バイパス経路117内の作動流体の温度が降下し(例えば約20℃)、ヒートポンプ110の主経路115内の作動流体の温度が上昇する(例えば約95℃)。圧縮部112に対する作動流体の入力温度の上昇により、圧縮部112の動力の低減が図られる。なお、作動流体のバイパス量は、被加熱流体及び作動流体の各物性値(比熱など)に応じて定められる。
また、本実施形態において、再生器118で温度降下したバイパス経路117内の作動流体(例えば約20℃)は、膨張部114の手前で、ヒートポンプ110の主経路115を流れる第1熱交換器141(第2放熱部113B)からの作動流体と合流する。前述したように、第1熱交換器141からの作動流体の出力温度は比較的低く設定される(例えば約30℃)。膨張部114に対する作動流体の入力温度の降下により、作動流体の液ガス比の最適化が図られ、その結果、吸熱部111においてサイクル外の熱源(冷熱供給装置90の放熱管191を流れる媒体)から有効に熱が吸収される。
このように、蒸気生成システムS2において、水の蒸発に用いた後の作動流体が水の加温と作動流体の再生とに用いられることにより、熱の有効利用が図られる。
なお、ヒートポンプ110の放熱部及び供給ユニット120の蒸発部の数は、作動流体の特性に応じて適宜設定される。また、供給源からの水の供給温度が比較的高い場合など、加温部121(第2放熱部113B)を省略することも可能である。
上記説明において使用した数値は一例であって、本発明はこれに限定されない。
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。上記説明において使用した数値は一例であって、本発明はこれに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の請求の範囲によってのみ限定される。
10…蒸発器、20…チャンバ、22…開口、40…チューブ、42,44…ヘッダパイプ、60…散液機構、62…ポンプ、64…ノズル、66…配管、66A…上部配管(上部ユニット)、66B,66C,66D…中間配管(中間ユニット)、68…供給配管、70…制御装置、110…ヒートポンプ、111…吸熱部、112…圧縮部、113A,113B…放熱部、114…膨張部、115…主経路、117…バイパス経路、118…再生器、120…供給ユニット、121…加温部、122…蒸発部、130…圧縮機、141,142…熱交換器、170…制御装置、S1,S2…蒸気生成システム。