以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態にかかる蒸気発生システムを示す概略図である。図1において、蒸気発生システムS1は、作動媒体(第1媒体)が流れるヒートポンプ10と、被加熱媒体(第2媒体)の供給経路20と、圧縮機30,31とを備える。本実施形態において、被加熱媒体は水である。蒸気発生システムS1の構成は、蒸気発生システムS1の設計要求に応じて様々に変更可能である。
ヒートポンプ10は、蒸発、圧縮、凝縮、及び膨張の各工程からなるサイクルにより、低温の物体から熱を汲み上げ、高温の物体に熱を与える装置である。ヒートポンプは一般に、エネルギー効率が比較的高く、結果として、二酸化炭素等の排出量が比較的少なく、環境に優しいという利点を有する。
具体的に、ヒートポンプ10は、吸熱部11、圧縮部12、放熱部13A〜13D、及び膨張部14を有し、これらは配管を介して接続されている。
吸熱部11では、主経路15内を流れる作動媒体がサイクル外の熱源(例えば大気)の熱を吸収する。圧縮部12は、圧縮機等によって作動媒体を圧縮する。この際、通常、作動媒体の温度が上がる。
本実施形態において、圧縮部12は、作動媒体を単段で圧縮する構造を有する。後述する他の実施形態において、圧縮部12は、作動媒体を複数段で圧縮する構造を有することができる。圧縮部12は、軸流圧縮機、遠心圧縮機、レシプロ式圧縮機、ロータリー式圧縮機などの様々な圧縮機のうち、作動媒体の圧縮に適する圧縮機を有する。圧縮機には動力が供給される。圧縮部12の圧縮比(圧力比)は、蒸気発生システムS1の仕様に応じて設定される。
放熱部13A〜13Dは、圧縮部12で圧縮された作動媒体が流れる配管を有し、主経路15内を流れる作動媒体の熱をサイクル外の熱源に与える。本実施形態において、作動媒体の流れ方向に沿って、4つの放熱部13A〜13Dが直列に配置されている。作動媒体の流れ方向に沿って、放熱部13A、放熱部13B、放熱部13C、及び放熱部13Dがその順に並んでいる。放熱部の数は、蒸気発生システムS1の仕様に応じて設定され、3、4、5、6、7、8、9、10、あるいは11以上である。
膨張部14は、減圧弁またはタービン等によって作動媒体を膨張させる。この際、通常、作動媒体の温度が下がる。タービンを使用した場合には膨張部14から動力を取り出すことができ、その動力を例えば圧縮部12に供給してもよい。ヒートポンプ10に使用される作動媒体として、フロン系媒体(HFC 245faなど)、アンモニア、水、二酸化炭素、空気などの公知の様々な熱媒体が、蒸気発生システムS1の仕様及び熱バランスなどに応じて用いられる。
本実施形態において、ヒートポンプ10はさらに、バイパス経路17と、再生器18とを有する。バイパス経路17の入口端がヒートポンプ10の主経路15における放熱部13Cと放熱部13Dとの間の配管に接続される。バイパス経路17の出口端が主経路15における放熱部13Dと膨張部14との間の配管に接続される。バイパス経路17の入口に、作動媒体のバイパス流量を制御する流量制御弁を設けることができる。バイパス経路17において、放熱部13Cからの作動媒体の一部が、放熱部13Dを迂回する。迂回した作動媒体は、膨張部14の手前で放熱部13Dからの作動媒体と合流する。放熱部13Cからの残りの作動媒体は、放熱部13Dを流れ、第1熱交換器41においてその作動媒体と供給経路20内の水とが熱交換する。
再生器18は、バイパス経路17の配管の一部と、ヒートポンプ10の主経路15の配管(吸熱部11と圧縮部12との間の配管)の一部とが、互いに隣接して配置された構成を有する。ヒートポンプ10において、吸熱部11からの作動媒体に比べて、放熱部13Cからの作動媒体は高温である。再生器18において、バイパス経路17を流れる放熱部13Cからの作動媒体と、ヒートポンプ10の主経路15を流れる吸熱部11からの作動媒体とが熱交換する。この熱交換により、バイパス経路17内の作動媒体の温度が降下し、主経路15内の作動媒体の温度が上昇する。再生器18は、低温の流体(主経路15内の作動媒体)と高温の流体(バイパス経路17内の作動媒体)とが対向して流れる向流型の熱交換方式を有することができる。再生器18は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換方式を有してもよい。
供給経路20は、第1及び第2加温部21A,21Bと、第1及び第2蒸発部22A,22Bと、蒸発部22A,22Bと圧縮機30,31とを流体的に接続するダクト23A,23Bとを有する。本実施形態において、供給経路20は、分岐部24Aと、分岐部24Aからの水を第1蒸発部22Aに導く分岐経路25Aと、分岐部24Aからの水を第2蒸発部22Bに導く分岐経路25Bとを有する。
第1加温部21Aは、ヒートポンプ10の放熱部13Dに隣接して配置されかつ供給源(不図示)からの水が流れる配管を含む。第1加温部21Aと放熱部13Dとを含んで第1熱交換器41が構成される。第1加温部21Aにおいて、ヒートポンプ10の放熱部13Dからの熱伝達によって、供給経路20内の水が温度上昇する。
第2加温部21Bは、分岐経路25Bに配置される。第2加温部21Bは、ヒートポンプ10の放熱部13Bに隣接して配置されかつ第1加温部21Aからの水が流れる配管を含む。第2加温部21Bと放熱部13Bとを含んで第2熱交換器42が構成される。第2加温部21Bにおいて、ヒートポンプ10の放熱部13Bからの熱伝達によって、分岐経路25B内の水が温度上昇する。
第1及び第2熱交換器41,42は、低温の流体(供給経路20内の水)と高温の流体(ヒートポンプ10内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換方式を有することができる。第1及び第2熱交換器41,42は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換方式を有してもよい。第1及び第2熱交換器41,42の熱交換構造として、公知の様々なものを採用することができる。例えば、ヒートポンプ10の放熱部13D又は放熱部13Bの配管を、第1加温部21A又は第2加温部21Bの配管の外周面及び/又は内部に配設することができる。
本実施形態において、分岐経路25Bにおける分岐部24Aと第2加温部21Bとの間にポンプ26が配置されている。ポンプ26及び/又は不図示の流量制御装置(制御バルブ等)によって、分岐経路25A及び分岐経路25Bを流れる単位時間あたりの水の量(蒸発部22A,22Bに対する水の分配量)が制御される。ポンプ26の配置位置は、分岐部24Aと第2加温部21Bとの間に限定されない。
第1蒸発部22Aは、少なくとも液状の被加熱媒体(水)を貯溜する第1タンク47Aと、第1タンク47Aに流体的に接続された第1循環配管48Aとを有する。すなわち、第1循環配管48Aの入口端と出口端とが第1タンク47Aに流体的に接続される。第1タンク47Aには、第1加温部21Aからの水の供給口と、蒸気の排出口とが設けられる。第1タンク47Aは、必要に応じて、液面を計測するレベルセンサ50Aと、気液分離器(不図示)とを有する。第1循環配管48Aは、ヒートポンプ10の放熱部13Cに隣接して配置される蒸発管51Aと、必要に応じてポンプ52Aとを有する。
第2蒸発部22Bは、第1蒸発部22Aと同様に、少なくとも液状の被加熱媒体(水)を貯溜する第2タンク47Bと、第2タンク47Bに流体的に接続された第2循環配管48Bとを有する。すなわち、第2循環配管48Bの入口端と出口端とが第2タンク47Bに流体的に接続される。第2タンク47Bには、第2加温部21Bからの水の供給口と、蒸気の排出口とが設けられる。第2タンク47Bは、必要に応じて、液面を計測するレベルセンサ50Bと、気液分離器(不図示)とを有する。第2循環配管48Bは、ヒートポンプ10の放熱部13Aに隣接して配置される蒸発管51Bと、必要に応じてポンプ52Bとを有する。
本実施形態において、第1蒸発部22A(第1タンク47A、蒸発管51A)と第2蒸発部22B(第2タンク47B、蒸発管51B)とが、供給経路20に対して実質的に並列に配置される。なお、前述したように、ヒートポンプ10における作動媒体の流れ方向に対して、第2蒸発部22Bが上流位置、第1蒸発部22Aが下流位置である。被加熱媒体(水)の熱対流及び/又は差圧などを利用してポンプ52A,52Bの少なくとも1つを省いてもよい。
蒸発管51Aと放熱部13Cとを含んで第3熱交換器43が構成される。同様に、蒸発管51Bと放熱部13Aとを含んで第4熱交換器44が構成される。第3及び第4熱交換器43,44は、低温の流体(蒸発管51A,51B内の水)と高温の流体(ヒートポンプ10内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換方式を有することができる。第3及び第4熱交換器43,44は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換方式を有してもよい。第3及び第4熱交換器43,44の熱交換構造として、公知の様々なものを採用することができる。例えば、ヒートポンプ10の各放熱部13C,13Aの配管を、蒸発管51A,51Bの外周面及び/又は内部に配設することができる。
第1蒸発部22Aにおいて、第1加温部21Aで温度上昇した水が供給口を介して第1タンク47Aに供給され、第1タンク47A及び第1循環配管48A内に水が貯溜される。第1タンク47A内の液面が所定範囲内になるように、第1タンク47Aへの水の供給量が制御される。例えば、レベルセンサ50Aの計測結果に基づいて、第1タンク47Aへの水の供給量が制御される。ヒートポンプ10の放熱部13Cからの熱伝達によって蒸発管51A内の水が加熱され、その水の少なくとも一部が蒸発する。第1タンク47Aは、ダクト23Aを介して圧縮機30に流体的に接続されている。第1タンク47Aの内部空間は、第1タンク47Aの排出口及びダクト23Aを介して圧縮機30によって吸引される。第1タンク47A内の蒸気は、ダクト23A内を圧縮機30に向けて流れる。
第2蒸発部22Bにおいて、第1及び第2加温部21A,21Bで温度上昇した水が供給口を介して第2タンク47Bに供給され、第2タンク47B及び第2循環配管48B内に水が貯溜される。第2タンク47B内の液面が所定範囲内になるように、第2タンク47Bへの水の供給量が制御される。例えば、レベルセンサ50Bの計測結果に基づいて、第2タンク47Bへの水の供給量が制御される。
本実施形態において、放熱部13Aと13Cの間で、作動媒体の状態(圧力など)が異なる。各放熱部13A,13Cに対応する蒸発管51A,51Bを流れる水の単位時間あたりの流量が個々に制御されることにより、熱バランス制御の向上が図られる。
図2は、蒸発管51Bにおける水の流量を制御する構成の一例を示す。ヒートポンプ10において、蒸発管51Bに対応する放熱部13Aの出口温度を計測するセンサ71が設けられている。制御装置70は、センサ71の計測結果に基づいて、蒸発管51B用のポンプ52Bを介して蒸発管51Bを流れる単位時間あたりの水の流量を制御する。これにより、放熱部13Aにおける作動媒体の出口温度を目標値に設定することができる。放熱部13Aの入口温度を計測するセンサ72を用いてもよい。図1に示す蒸発管51A及び対応する放熱部13Cもこれと同様の構成を採用することができる。
図1に戻り、ヒートポンプ10の放熱部13Aからの熱伝達によって蒸発管51B内の水が加熱され、その水の少なくとも一部が蒸発する。第2タンク47Bは、ダクト23Bを介して圧縮機31に流体的に接続されている。第2タンク47Bの内部空間は、第2タンク47Bの排出口及びダクト23Bを介して圧縮機31によって吸引される。第2タンク47B内の蒸気は、ダクト23B内を圧縮機31に向けて流れる。
圧縮機30は、供給経路20の分岐経路25A上に配置され、その配置位置は第1タンク47Aに対して下流である。圧縮機31は、供給経路20の分岐経路25B上に配置され、その配置位置は第2タンク47Bに対して下流である。圧縮機30,31としては、軸流圧縮機、遠心圧縮機、レシプロ式圧縮機、ロータリー式圧縮機などの様々な圧縮機が適用され、蒸気圧縮に適するものが用いられる。圧縮機30は、第1タンク47Aからの蒸気を圧縮し、昇圧した蒸気を下流に流す。圧縮機31は、第2タンク47Bからの蒸気を圧縮し、昇圧した蒸気を下流に流す。
圧縮機30(または分岐経路25A)には、蒸気に対して水を供給するノズル35Aが、必要に応じて配設される。同様に、圧縮機31(または分岐経路25B)には、ノズル35Bが必要に応じて配設される。ノズル35A,35Bの配設位置は、例えば、圧縮機30,31の入口及び/又は出口である。圧縮機30,31が多段式である場合には、ノズル35A,35Bを各圧縮機30,31の段間に配設することもできる。ノズル35Aと第1タンク47Aの液相位置とが配管36Aを介して流体的に接続された配管構成を採用することができる。この配管構成では、比較的高温である第1タンク47A内の液体がノズル35Aへの供給に有効利用される。同様に、ノズル35Bと第2タンク47Bの液相位置とが配管36Bを介して流体的に接続された配管構成を採用することができる。ノズル35A,36Bからの液体の排出(スプレイ)には、ポンプ37A,37Bなどの動力源を用いてもよく、配管36A,36Bの入口と出口との圧力差を利用してもよい。
圧縮機30による吸引作用により、供給経路20におけるヒートポンプ10による加熱部位での内部空間、すなわち第1タンク47Aの内部空間が減圧される。第1タンク47Aの内部圧力が大気圧(1atm=約0.1MPa)に比べて低い負圧(陰圧)となるように、供給経路20(分岐経路25A)上の制御弁(流量制御弁など。不図示)、圧縮機30等が制御される。この制御は、例えば、第1タンク47Aの内部圧力を計測するセンサ(不図示)の計測結果に基づいて行われる。
第1タンク47A及びヒートポンプ10は、第1タンク47Aの内部空間が負圧状態において、水が蒸発するように設計(容量設計、能力設計など)されている。第1タンク47A内の水の温度は標準沸点よりも低い。ヒートポンプ10の成績係数は、被加熱媒体(水)の入力温度と出力温度との差に応じて変化し、その温度差が過度に大きいと成績係数(COP)が低下する場合がある。第1タンク47Aの内部空間が負圧状態であるという条件により、加熱温度領域(入出力温度差)を比較的狭く設定し、高いCOPでのヒートポンプ10の使用が可能である。例えば、第1加温部21Aへの水の入口温度は約20℃であり、第1加温部21Aからの水の出口温度(第1蒸発部22Aへの水の入口温度)は約90℃である。また、例えば、第1蒸発部22Aからの水(蒸気)の出口温度は約90℃である。
第2タンク47Bの内部圧力は、第2蒸発部22Bへの水の入力温度に応じて設定される。本実施形態において、第1タンク47Aに比べて、第2タンク47Bへの水の入口温度が高い。第1及び第2加温部21A,21Bで加熱された水の温度(第2加温部21Bからの水の出口温度、第2蒸発部22Bへの水の入口温度)は例えば約120℃である。第1タンク47Aに比べて、第2タンク47Bの内部圧力が高く設定される。供給経路20(分岐経路25B)上の制御弁(流量制御弁など。不図示)、ポンプ26、圧縮機31等の制御によって、第2タンク47Bの内部圧力が設定される。この制御は、例えば、第2タンク47Bの内部圧力を計測するセンサ(不図示)の計測結果に基づいて行われる。上記した各部位での入口及び出口温度は一例である。供給源の水の温度、気温、蒸気の要求仕様などの条件に応じて、各部位における水の入口及び出口温度が変化する。
本実施形態においては、供給経路20内の水が、ヒートポンプ10からの熱伝達によって蒸気になる。まず、第1熱交換器41(第1加温部21A)において、供給経路20内の水がヒートポンプ10の放熱部13Dからの熱伝達によって温度上昇する。第1加温部21Aからの水の流れは、分岐部24Aを介して、分岐経路25Aと分岐経路25Bとに分かれる。分岐経路25Aを流れる水は、第1蒸発部22A(第1タンク47A)に向かう。第1タンク47Aにおいて、水は沸点(第1沸点)に近い温度を有する。第3熱交換器43において、放熱部13Cからの熱伝達によって蒸発管51A内の水が相変化して蒸発する。
分岐経路25Bを流れる水は、第2熱交換器42(第2加温部21B)に向かう。第2熱交換器42(第2加温部21B)において、分岐経路25B内の水がヒートポンプ10の放熱部13Bからの熱伝達によってさらに温度上昇する。第2タンク47Bの内部圧力は第1タンク47Aに比べて高い。第2タンク47Bにおいて、水は沸点(第2沸点)に近い温度を有する。第2タンク47B内の水の温度は、第1タンク47A内の水に比べて高い。第4熱交換器44において、放熱部13Aからの熱伝達によって蒸発管51A内の水が相変化して蒸発する。
本実施形態において、第1及び第2熱交換器41,42(第1及び第2加温部21A,21B)において水が顕熱加熱され、第3及び第4熱交換器43,44(第1及び第2蒸発管51A,51B)において水が潜熱加熱される。第1及び第2熱交換器41,42が顕熱交換に適した形態であり、第3及び第4熱交換器43,44が潜熱交換に適した形態であるといった、装置構成の最適化が図られることにより、好ましい加熱プロセスを経て蒸気が発生する。
ボイラのエネルギー効率が一般に約0.7〜0.8(70〜80%)であるのに対して、ヒートポンプのエネルギー効率としての成績係数(COP:coefficient of performance)は一般に2.5〜5.0である。ヒートポンプの成績係数は、被加熱媒体(水)の入出力温度差に応じて変化し、比較的高い入出力温度差においてその成績係数が低下する傾向がある。本実施形態において、顕熱交換及び潜熱交換に対応してヒートポンプが個別の加熱部を有することにより、入出力温度差を抑え、ボイラに比べて高いエネルギー効率で蒸気を発生させることができる。
本実施形態において、供給経路20内の水が、ヒートポンプ10(放熱部13A〜13D)からの熱伝達によって比較的低圧力かつ低温度の蒸気となり、圧縮機30,31による圧縮で比較的高圧力かつ高温度の蒸気となる。すなわち、ヒートポンプ10で加熱された水が、圧縮機30,31による圧縮によってさらに加熱され、これにより、100℃以上の高温蒸気が発生する。
図3は、図1に示す第1蒸発部22A及び圧縮機30における水の状態変化の一例を示す T-s 線図である。図3に示すように、水は、沸点近くまで温度上昇した後、温度一定のまま相変化する。このとき、大気圧(P1=1atm=約0.1MPa)に比べて低い負圧P0の状態において、飽和蒸気d0が発生する。飽和蒸気d0の温度は標準沸点よりも低い、例えば約90℃である。
次に、その飽和蒸気d0は、圧縮機30(図1参照)による圧縮で比較的高圧力かつ高温の蒸気(過熱蒸気e2)になる。すなわち、その圧縮に伴って、蒸気が温度上昇する。過熱蒸気e2の圧力P2は大気圧よりも高い、例えば0.8MPaである。
0.8MPaの過熱蒸気e2を定圧下で冷却することにより、約160℃の飽和蒸気を得ることができる(図3の破線a)。同様に、大気圧(約0.1MPa)の過熱蒸気を定圧下で冷却することにより、約100℃の飽和蒸気d1を得ることができる。
過熱蒸気から飽和蒸気への冷却に、液状の水または温水を直接混入することにより、蒸気のボリュームが増加する。この場合、例えば、圧縮機30の出口において蒸気に対して水または温水が供給される。
水または温水の供給量及びタイミングの最適化により、比較的低圧力かつ低温度の飽和蒸気d0から比較的高圧力かつ高温度の飽和蒸気d2への変化を、より直接的にできる。例えば、圧縮機30の入口で適量の水または温水が蒸気に供給されることにより、圧縮機30の入口での飽和蒸気d0が、圧縮機30の出口で飽和蒸気d2に変化する(図3の破線c1(スプレー)及びc2(圧縮))。または、圧縮機30の中間で圧縮機30の段落ごとに適量の水または温水が蒸気に供給されることにより、圧縮機30の入口での飽和蒸気d0が、圧縮機30の出口で飽和蒸気d2に変化する(図3の破線b)。すなわち、圧縮機30による圧縮と水または温水による冷却との組み合わせの最適化により、効率良く圧縮機30から飽和状態に近い蒸気を排出することができる。
図1に示す第2蒸発部22B及び圧縮機31においても、同様に、ヒートポンプ10及び圧縮機31による順次加熱により、飽和蒸気及び過熱蒸気のいずれも容易に発生させることができる。つまり、蒸気発生システムS1は、蒸気仕様に対する柔軟性が高い。蒸気発生システムS1からの蒸気は、外部の所定施設、例えば製造プラント、調理施設、空調設備、発電プラントなどに供給される。
さらに、本実施形態において、異なる環境に設定された複数の蒸発部22A,22Bが設けられている点からも、蒸気仕様に対する柔軟性向上が図られる。第1蒸発部22Aの第1タンク47Aでは比較的低い圧力下で飽和蒸気が発生し、第2蒸発部22Bの第2タンク47Bでは比較的高い圧力下で飽和蒸気が発生する。第1及び第2蒸発部22A,22Bの各蒸気排出量(混合比)を制御することにより、出力蒸気の仕様を変化させることができる。
図4は、蒸気発生システムS1におけるヒートポンプ10の作動媒体の状態変化の一例を示す T-s 線図である。図5は、第1実施形態における水とヒートポンプの作動媒体との温度変化の一例を模式的に示している。
図5に示すように、第1加温部21A(図1参照)において、作動媒体との熱交換により、供給源からの水の温度が第1沸点近くに上昇する(図5の矢印m1)。第1蒸発部22Aにおいて、作動媒体との熱交換により、第1沸点近くの温度で、水が液体から蒸気に相変化する(矢印m2)。第2加温部21Bにおいて、作動媒体との熱交換により、水の温度が第2沸点近くに上昇する(矢印m3)。第2蒸発部22Bにおいて、作動媒体との熱交換により、第2沸点近くの温度で、水が液体から蒸気に相変化する(矢印m4)。
また、図5に示すように、水との熱交換により、圧縮部12(図1参照)からの作動媒体(蒸気)の温度が降下する(矢印n1)。その作動媒体(蒸気)は、水との熱交換により、液体に相変化する(矢印n2)。さらに、水との熱交換により、作動媒体(液体)の温度が降下する(矢印n3)。
このように、異なる環境に設定された2つの蒸発部を用いて蒸気を発生させることにより、熱交換時の作動媒体と水との温度差を抑制し、熱交換効率を高めることができる。図5において、水の温度を示す線と、作動媒体の温度を示す線とで囲まれた領域の面積が小さいほど、熱交換効率が高いと考えることができる。
図6は、図1の蒸気発生システムS1の変形例である第2実施形態を示す概略図である。以下の説明では、蒸気発生システムS2について、図1に示す蒸気発生システムS1と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
図6に示すように、蒸気発生システムS2は、3つの蒸発部22A,22B,22Cと、3つの圧縮機30,31,32とを有する。供給経路20は、第1、第2、及び第3加温部21A,21B,21Cと、第1、第2、及び第3蒸発部22A,22B,22Cと、蒸発部22A,22B,22Cと圧縮機30,31,32とを流体的に接続するダクト23A,23B,23Cとを有する。本実施形態において、供給経路20は、分岐部24A,24Bと、分岐経路25A,25B,25C,25Dとを有する。供給経路20において、第2加温部21Bと第2タンク47Bとの間に、分岐部24Bが位置する。分岐経路25Cは、分岐部24Bからの水を第2蒸発部22Bに導く。分岐経路25Dは、分岐部24Bからの水を第3蒸発部22Cに導く。
本実施形態において、作動媒体の流れ方向に沿って、6つの放熱部13A〜13Fが直列に配置されている。作動媒体の流れ方向に沿って、放熱部13E、放熱部13F、放熱部13A、放熱部13B、放熱部13C、及び放熱部13Dがその順に並んでいる。
第3加温部21Cは、分岐経路25Dに配置される。第3加温部21Cは、ヒートポンプ10の放熱部13Fに隣接して配置されかつ第2加温部21Bからの水が流れる配管を含む。第3加温部21Cと放熱部13Fとを含んで第5熱交換器45が構成される。第3加温部21Cにおいて、ヒートポンプ10の放熱部13Fからの熱伝達によって、分岐経路25D内の水が温度上昇する。
本実施形態において、分岐経路25Dにおける分岐部24Bと第3加温部21Cとの間にポンプ27が配置されている。ポンプ27及び/又は不図示の流量制御装置(制御バルブ等)によって、分岐経路25C及び分岐経路25Dを流れる単位時間あたりの水の量(蒸発部22B,22Cに対する水の分配量)が制御される。ポンプ27の配置位置は、分岐部24Bと第3加温部21Cとの間に限定されない。
第3蒸発部22Cは、第1及び第2蒸発部22A,22Bと同様に、少なくとも液状の被加熱媒体(水)を貯溜する第3タンク47Cと、第3タンク47Cに流体的に接続された第3循環配管48Cとを有する。すなわち、第3循環配管48Cの入口端と出口端とが第3タンク47Cに流体的に接続される。第3タンク47Cには、第3加温部21Cからの水の供給口と、蒸気の排出口とが設けられる。第3タンク47Cは、必要に応じて、液面を計測するレベルセンサ50Cと、気液分離器(不図示)とを有する。第3循環配管48Cは、ヒートポンプ10の放熱部13Eに隣接して配置される蒸発管51Cと、必要に応じてポンプ52Cとを有する。
本実施形態において、第1蒸発部22A(第1タンク47A、蒸発管51A)と第2蒸発部22B(第2タンク47B、蒸発管51B)と第3蒸発部22C(第3タンク47C、蒸発管51C)とが、供給経路20に対して実質的に並列に配置される。第1、第2、及び第3加温部21A,21B,21Cは、供給経路20に対して実質的に直列に配置される。なお、ヒートポンプ10における作動媒体の流れ方向に対して、第3蒸発部22Cが上流位置、第2蒸発部22Bが中間位置、第1蒸発部22Aが下流位置である。被加熱媒体(水)の熱対流及び/又は差圧などを利用してポンプ52A,52B,52Cの少なくとも1つを省いてもよい。蒸発管51Cと放熱部13Eとを含んで第6熱交換器46が構成される。
第3蒸発部22Cにおいて、第1、第2、及び第3加温部21A,21B,21Cで温度上昇した水が供給口を介して第3タンク47Cに供給され、第3タンク47C及び第3循環配管48C内に水が貯溜される。第3タンク47C内の液面が所定範囲内になるように、第3タンク47Cへの水の供給量が制御される。例えば、レベルセンサ50Cの計測結果に基づいて、第3タンク47Cへの水の供給量が制御される。ヒートポンプ10の放熱部13Eからの熱伝達によって蒸発管51C内の水が加熱され、その水の少なくとも一部が蒸発する。第3タンク47Cは、ダクト23Cを介して圧縮機32に流体的に接続されている。第3タンク47Cの内部空間は、第3タンク47Cの排出口及びダクト23Cを介して圧縮機32によって吸引される。第3タンク47C内の蒸気は、ダクト23C内を圧縮機32に向けて流れる。
圧縮機32は、供給経路20の分岐経路25D上に配置され、その配置位置は第3タンク47Cに対して下流である。圧縮機32は、第3タンク47Cからの蒸気を圧縮し、昇圧した蒸気を下流に流す。
第3タンク47Cの内部圧力は、第3蒸発部22Cへの水の入力温度に応じて設定される。本実施形態において、第1及び第2タンク47A,47Bに比べて、第3タンク47Cへの水の入口温度が高い。第1、第2、及び第3加温部21A,21B,21Cで加熱された水の温度(第3加温部21Cからの水の出口温度、第3蒸発部22Cへの水の入口温度)は例えば約150℃である。第1及び第2タンク47A,47Bに比べて、第3タンク47Cの内部圧力が高く設定される。供給経路20(分岐経路25D)上の制御弁(流量制御弁など。不図示)、ポンプ27、圧縮機32等の制御によって、第3タンク47Cの内部圧力が設定される。この制御は、例えば、第3タンク47Cの内部圧力を計測するセンサ(不図示)の計測結果に基づいて行われる
本実施形態において、分岐経路25Dを流れる水は、第5熱交換器45(第3加温部21C)に向かう。第5熱交換器45(第3加温部21C)において、分岐経路25D内の水がヒートポンプ10の放熱部13Fからの熱伝達によってさらに温度上昇する。第3タンク47Cの内部圧力は第1及び第2タンク47A,47Bに比べて高い。第3タンク47Cにおいて、水は沸点(第3沸点)に近い温度を有する。第3タンク47C内の水の温度は、第1及び第2タンク47A,47B内の水に比べて高い。第6熱交換器46において、放熱部13Eからの熱伝達によって蒸発管51C内の水が相変化して蒸発する。
本実施形態において、第1蒸発部22Aの第1タンク47Aでは比較的低い圧力下で飽和蒸気が発生し、第3蒸発部22Cの第3タンク47Cでは比較的高い圧力下で飽和蒸気が発生し、第2蒸発部22Bの第2タンク47Bでは中間の圧力下で飽和蒸気が発生する。第1、第2、及び第3蒸発部22A,22B,22Cの各蒸気排出量(混合比)を制御することにより、出力蒸気の仕様を変化させることができる。
図7は、第2実施形態における水とヒートポンプの作動媒体との温度変化の一例を模式的に示す。
図7に示すように、第1及び第2加温部21A,21B(図6参照)を介して上昇した水の温度が、第3加温部21Cにおいて、作動媒体との熱交換により、第3沸点近くにさらに上昇する(図7の矢印m5)。第3蒸発部22Cにおいて、作動媒体との熱交換により、第3沸点近くの温度で、水が液体から蒸気に相変化する(矢印m6)。
このように、異なる環境に設定された3つの蒸発部を用いて蒸気を発生させることにより、熱交換時の作動媒体と水との温度差を抑制し、熱交換効率を高めることができる。図7において、水の温度を示す線と、作動媒体の温度を示す線とで囲まれた領域の面積が小さいほど、熱交換効率が高いと考えることができる。
上記各実施形態において、蒸発部の数(タンク及び循環配管(蒸発管)の数)は、蒸気発生システムの仕様に応じて設定され、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上である。
また、上記各実施形態において、蒸気発生のための加熱過程の一部を圧縮機(30,31,32)が補うから、高いCOPでヒートポンプ10が使用され、したがって、蒸気発生システムは、全体としての一次エネルギーの節減が期待される。すなわち、被加熱媒体(水)に対する比較的高温域の加熱に圧縮機を利用することは、熱伝達のみを利用した加熱と比較して、温度上昇の短時間化及び熱損失の抑制に有利である。
また、上記各実施形態において、供給経路20が複数の蒸発管(51A,51B,51C)を有することからも、エネルギー効率の向上が図られる。蒸発管では、水の流れの方向に沿って、液体に対する気体(蒸気)の比率が高くなり、蒸気発生の進行に伴って、熱伝達率が低下する。蒸発管内では、質量及びボリュームとして水が支配的であるのが好ましい。供給経路20が複数の蒸発管を有することにより、気体の比率が高い水に対する加熱が回避され、その結果、蒸気発生に伴う熱伝達率の低下が抑制される。熱交換面積の拡大のために蒸発管の長さを長くすると、蒸発管の入口部と出口部との圧力差が大きくなり、蒸発管に水を流すための必要動力が増える可能性がある。複数の蒸発管が個々に独立していると差圧が小さくて済み、熱交換面積の拡大に伴う水輸送動力の増加が抑制される。
また、上記各実施形態において、バイパス経路17を介して作動媒体の一部が第1熱交換器41を迂回するから、第1熱交換器41に入る作動媒体の流量の最適化が図られる。これは、作動媒体の保有熱を有効に使う上で有利である。
バイパス経路17を流れる作動媒体は、再生器18において、ヒートポンプ10の主経路15を流れる吸熱部11からの作動媒体と熱交換する。この熱交換により、バイパス経路17内の作動媒体の温度が降下し(例えば約20℃)、ヒートポンプ10の主経路15内の作動媒体の温度が上昇する(例えば約95℃)。圧縮部12に対する作動媒体の入力温度の上昇により、圧縮部12の動力の低減化が図られる。作動媒体のバイパス量は、被加熱媒体及び作動媒体の各物性値(比熱など)に応じて定められる。
また、上記各実施形態において、再生器18で温度降下したバイパス経路17内の作動媒体(例えば約20℃)は、膨張部14の手前で、ヒートポンプ10の主経路15を流れる第1熱交換器41(放熱部13D)からの作動媒体と合流する。前述したように、第1熱交換器41からの作動媒体の出力温度は比較的低く設定される(例えば約30℃)。膨張部14に対する作動媒体の入力温度の降下により、作動媒体の液ガス比の最適化が図られ、その結果、吸熱部11においてサイクル外の熱源(例えば大気)から有効に熱が吸収される。
このように、上記各実施形態において、作動媒体の熱が水の蒸発、水の加温、及び作動媒体の再生に用いられ、熱の有効利用が図られる。
図8は、図1の蒸気発生システムS1の別の変形例である第3実施形態を示す概略図である。以下の説明では、蒸気発生システムS3について、図1に示す蒸気発生システムS1と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
蒸気発生システムS3において、図8に示すように、圧縮部12が作動媒体を複数段(本例では2段)で圧縮する構造を有する。本実施形態において、圧縮部12は、放熱部13Aの前に配置される第1圧縮部12Aと、放熱部13Aの中段に配置される第2圧縮部12Bとを有する。第2圧縮部12Bに代えてあるいは加えて、放熱部13Cの中段に圧縮部を設けることができる。圧縮の段数は、蒸気発生システムの仕様に応じて設定され、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上である。圧縮部12は、各圧縮部12A,12Bに対応する回転数が個々に制御される多軸圧縮構造を有することができる。あるいは、圧縮部12は、同軸圧縮構造を有することができる。各圧縮部12A,12Bの圧縮比(圧力比)は、蒸気発生システムの仕様に応じて設定される。
本実施形態において、圧縮部12が多段式である点から、エネルギー効率の向上が図られる。すなわち、多段式の圧縮部12の段間の熱が奪われることによって、作動媒体の圧縮過程における作動媒体の温度上昇が抑制され、その結果、圧縮部12の圧縮効率の向上及び圧縮機の動力の低減化が図られる。また、本実施形態において、多段式の圧縮部12に対する作動媒体の入力温度が再生器18によって高められている点も、圧縮部12の動力低減に有利である。
図9は、図6の蒸気発生システムS2の変形例である第4実施形態を示す概略図である。以下の説明では、蒸気発生システムS4について、図6に示す蒸気発生システムS2と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
蒸気発生システムS4において、図9に示すように、圧縮部12が作動媒体を複数段(本例では2段)で圧縮する構造を有する。本実施形態において、圧縮部12は、放熱部13Eの前に配置される第1圧縮部12Aと、放熱部13Eの中段に配置される第2圧縮部12Bとを有する。第2圧縮部12Bに代えてあるいは加えて、放熱部13Aの中段及び/又は放熱部Cの中段に圧縮部を設けることができる。
図10は、図1の蒸気発生システムS1の別の変形例である第5実施形態を示す概略図である。以下の説明では、蒸気発生システムS5について、図1に示す蒸気発生システムS1と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
蒸気発生システムS5において、図10に示すように、圧縮部12が作動媒体を複数段(本例では2段)で圧縮する構造を有する。本実施形態において、圧縮部12は、放熱部13Aの前に配置される第1圧縮部12Aと、放熱部13Bと放熱部13Cとの間に配置される第2圧縮部12Cとを有する。第2圧縮部12Cに加えて、放熱部13A及び/又は放熱部13Cの中段に圧縮部を設けることもできる。圧縮の段数は、蒸気発生システムの仕様に応じて設定され、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上である。圧縮部12は、各圧縮部12A,12Cに対応する回転数が個々に制御される多軸圧縮構造を有することができる。あるいは、圧縮部12は、同軸圧縮構造を有することができる。各圧縮部12A,12Cの圧縮比(圧力比)は、蒸気発生システムの仕様に応じて設定される。
図11は、図6の蒸気発生システムS2の別の変形例である第6実施形態を示す概略図である。以下の説明では、蒸気発生システムS6について、図6に示す蒸気発生システムS2と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
蒸気発生システムS6において、図11に示すように、圧縮部12が作動媒体を複数段(本例では2段)で圧縮する構造を有する。本実施形態において、圧縮部12は、放熱部13Eの前に配置される第1圧縮部12Aと、放熱部13Fと放熱部13Aとの間に配置される第2圧縮部12Cとを有する。第2圧縮部12Cに代えてあるいは加えて、放熱部13Bと放熱部13Cとの間に圧縮部を設けることができる。また、第2圧縮部12Cに加えて、放熱部13E、放熱部13A、及び/又は放熱部13Cの中段に圧縮部を設けることもできる。
図12は、図11の蒸気発生システムS6の別の変形例である第7実施形態を示す概略図である。以下の説明では、蒸気発生システムS7について、図1に示す蒸気発生システムS6と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
蒸気発生システムS7において、図12に示すように、供給経路20に対して、第2加温部21Bと第3加温部21Cとが実質的に並列に配置される。なお、ヒートポンプ10における作動媒体の流れ方向に対して、第3加温部21Cが上流位置、第2加温部21Bが下流位置である。
本実施形態において、供給経路20は、分岐部24A,24Cと、分岐経路25A,25F,25G,25Hとを有する。供給経路20において、分岐部24Aから、分岐経路25Aと分岐経路25Fとが分かれている。分岐経路25Aは、前述したように、分岐部24Aからの水を第1蒸発部22Aに導く。分岐部24Aからの分岐経路25Fに分岐部24Cが位置する。分岐部24Cから、分岐経路25Gと分岐経路25Hとが分かれている。分岐経路25Gは、分岐部24Cからの水を第2加温部21Bに導く。分岐経路25Hは、分岐部24Bからの水を第3加温部21Cに導く。
本実施形態において、分岐経路25Fにポンプ28が配置されている。ポンプ28及び/又は不図示の流量制御装置(制御バルブ等)によって、分岐経路25A,25F,25G,25Hを流れる単位時間あたりの水の量(蒸発部22A,22B,23Cに対する水の分配量)が制御される。ポンプ28の配置位置は、分岐経路25F上に限定されない。他の実施形態において、分岐経路25G及び/又は25H上に、ポンプを配置することができる。
第2蒸発部22Bにおいて、第1及び第2加温部21A,21Bで温度上昇した水が供給口を介して第2タンク47Bに供給される。同様に、第3蒸発部22Cにおいて、第1及び第3加温部21A,21Cで温度上昇した水が供給口を介して第3タンク47Cに供給される。
本実施形態において、ヒートポンプ10の圧縮部12が多段式であるから、放熱部13Bから第2加温部21Bに伝達される熱は、放熱部13Eから第3加温部21Cに伝達される熱と同程度にすることができる。第2及び第3加温部21B,21Cが実質的に並列に配置されるから、第2蒸発部22Bへの水の入口温度(第2加温部21Bからの水の出口温度)は、第1及び第3加温部21A,21Cで加熱された水の温度(第3加温部21Cからの水の出口温度、第3蒸発部22Cへの水の入口温度)と同程度にすることができる。
第2及び第3タンク47B,47Cの内部圧力は、第2及び第3蒸発部22B,22Cへの水の入力温度に応じて設定される。本実施形態において、第1タンク47Aに比べて、第2及び第3タンク47B,47Cへの水の入口温度が高い。第1タンク47Aに比べて、第2及び第3タンク47B,47Cの内部圧力が高く設定される。供給経路20(分岐経路25H,25G)上の制御弁(流量制御弁など。不図示)、ポンプ28、圧縮機31,32等の制御によって、第2及び第3タンク47B,47Cの内部圧力が設定される。この制御は、例えば、第2及び第3タンク47B,47Cの内部圧力を計測するセンサ(不図示)の計測結果に基づいて行われる。
本実施形態において、第1蒸発部22Aの第1タンク47Aでは比較的低い圧力下で飽和蒸気が発生し、第2及び第3蒸発部22B,22Cの第2及び第3タンク47B,47Cでは比較的高い圧力下で飽和蒸気が発生する。第1、第2、及び第3蒸発部22A,22B,22Cの各蒸気排出量(混合比)を制御することにより、出力蒸気の仕様を変化させることができる。本実施形態において、同程度の内部圧力に設定可能な複数の蒸発タンク(第2及び第3タンク47B,47C)が設けられているから、その圧力に応じた条件に対応する蒸気を比較的多く発生させることができる。
上記説明において使用した数値は一例であって、本発明はこれに限定されない。
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。上記説明において使用した数値は一例であって、本発明はこれに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の請求の範囲によってのみ限定される。
S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7…蒸気発生システム、10…ヒートポンプ、11…吸熱部、12…圧縮部、13A〜13F…放熱部、14…膨張部、15…主経路、17…バイパス経路、18…再生器、20…供給経路、21A〜21C…加温部、22A〜22C…蒸発部、23A〜23C…ダクト、24A,24B,24C…分岐部、25A,25B,25C,25D,25F,25G,25H…分岐経路、26〜28…ポンプ、30,31,32…圧縮機、35A〜35C…ノズル、41〜46…熱交換器、47A〜47C…タンク、48A〜48C…循環配管、50A〜50C…レベルセンサ、51A〜51C…蒸発管、70…制御装置、71,72…センサ。