本発明は、光配線を備えた電子装置及びその光配線に関し、特に、配線密度が高く且つクロストークの小さい光配線を備えた電子装置及びその光配線に関する。
LSI等の半導体装置の信号処理速度は、著しく向上している。その結果、半導体装置自体の信号処理速度は、半導体装置の間(例えば、CPUとメモリの間)を接続する電気配線の信号伝送速度を越えるまでになっている。
このため、複数の半導体装置が電気配線によって接続された電子装置の信号処理速度は、半導体装置間を接続する電気配線の伝送速度によって律速されるようになっている。
このような電子装置の信号処理速度の限界を超える技術として、光配線(光インターコネクション)が注目されている(特許文献1)。
特開平11−264912号公報
池上徹彦、土屋治彦、三上修:半導体フォトニクス工学、コロナ社(1995年)、p.55。
(1)光配線を備えた電子装置
図14は、半導体装置2の間で交わされる信号を光信号10で伝送する光配線4を備えた電子装置6の平面図である。図15は、この電子装置6のA−A´線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図である。
また、図16(a)は、図14に図示する電子装置6を構成する光配線4の平面図である。図16(b)は、光配線4のA−A´線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図である。
電子装置6は、図14及び図15に示すように、基板8と、基板8の上に形成された、電気信号を処理する複数の半導体装置2と、基板8の上に形成された複数の光導波路12によって構成される光配線4を備えている。ここで、光導波路12は、半導体装置2の間で交わされる信号が電気から光に変換されてなる光信号10を伝送するチャネルとして機能する。
尚、光信号10は光配線4を構成する全ての光導波路12を伝播するが、図面が複雑になるにならないように、図14には、一つの光導波路12を伝播する光信号10のみを代表として記載した。以下の図面でも、同様である。良く知られているように、光導波路はコアとクラッドで構成される。上記光配線4では複数の光導波路12によって一のクラッドが共有されるので、図14乃至図16では、各光導波路を表す符号はそのコアに付した。以下で説明する図面においても、同様である。
光配線4では、図16(a)に示すように、光導波路12が互いに平行に形成されている。また、図16(b)に示すように、光導波路12のコアの断面が矩形に形成されている。更に、光導波路12は、コア及びクラッドの屈折率が等しく形成される。
但し、光配線4は、必ずしも、全ての領域に於いて光導波路12が互いに平行に形成されていなくてもよい。例えば、半導体装置間の配線を容易にするため、夫々の光導波路12が部分的に適宜屈曲して、平行でなくなる領域が存在してもよい。
更に、電子装置6は、例えば面発光レーザからなる発光素子14と、面型の受光素子16と、45°ミラー18を備えている。尚、発光素子14及び受光素子16は、夫々半導体装置2によって駆動される。
ここで、発光素子14及び受光素子16は、半導体装置2と共に、電気配線が施された基板20に搭載されている。基板20には、上記光信号10が通過するためのビアホール(図示せず)が開口している。
また、電気配線の施された基板20は、支持体21と光配線4によって保持され、基板8との間に隙間を開けた状態で固定される。この隙間に45°ミラー18が配置され、発光素子14又は受光素子16と光導波路12を光学的に結合する。
半導体装置2の間に於ける信号の伝送は、以下のように行われる。
まず、一方の半導体装置2によって生成された電気信号が、発光素子14によって光信号10に変換される。発光素子14によって光に変換された光信号10は、基板8に向かって放射され、45°ミラー18によって進行方向が変えられ光導波路12に入射する。光導波路12を伝播した光信号10は、45°ミラー18によって基板8に垂直な方向に進行方向が変えられ、面型の受光素子16に入射する。受光素子16に入射した光信号10は電気信号に変換され、他方の半導体装置2に受信される。
このようにして、光配線を備えた電子装置では、半導体装置間の信号伝送が行われる。
(2)光配線を備えた電子装置の高速化及びその課題
(光配線を備えた電子装置内に於ける)半導体装置間の伝送速度の向上は、光配線4を構成する光導波路12の本数を増加させることによって可能になる。
長距離光伝送では、波長の異なる多数の光信号を一本の光ファイバで伝送する波長多重化技術が、伝送速度の向上に有効であった。
しかし、光配線技術に、この光多重化技術を適用することは困難である。光配線4は、縦及び横が高々20〜30cm程度の基板8の上に形成される。このような小さな基板上で、半導体装置毎に、波長多重化のための光学部品(合波器、分波器等)を配置することは困難である。
このため、光配線技術では、例えば図14のように光導波路12を多数備えた光配線4を用いて、空間的に光信号を多重化して伝送速度の向上を実現している。
従って、半導体装置間の信号伝送速度を向上させようとすると、光導波路12の間隔を狭めて伝送チャネルを増やすことが必要になる。例えば、最も一般的な光配線4では光導波路12の間隔は250μmである。
しかし、光導波路間隔をこれ以上狭くしようとすると、まず隣接した光導波路間でクロストークが著しく増大する。更に光導波路間隔を狭くすると、遂には、図16(a)に示すように、光信号10が完全に隣の光導波路に乗り移ってしまう。
このような状況下では、もはや半導体装置間における光信号の伝送は困難である。このため、光配線内に於ける光導波路12の間隔を、現状の250μmから大きく狭めることは困難である。このように、従来の光配線の構造のまま単に光導波路間隔を狭めて伝送速度を向上させる手法は、限界に達している。
そこで、発明の目的は、光導波路12の間隔を狭くしても隣接する光導波路間のクロストークが大きくならない光導波路構造を構築することによって光配線の高密度化を可能にし、もって光配線によって半導体装置間の信号伝送を行う電子装置の信号処理速度を向上させることである。
(第1の側面)
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面は、基板と、前記基板の上に形成された、電気信号を処理する複数の半導体装置と、前記半導体装置の間で交わされる信号が電気から光に変換されてなる光信号を伝送する、前記基板の上に形成された複数の光導波路によって構成される光配線を備え、前記光配線が、前記光導波路が互いに平行に形成された領域を具備する電子装置において、前記領域に於いて、前記光導波路のコアの断面が矩形に形成され、隣接する前記光導波路からなる第1及び第2の光導波路は、コア及びクラッドの屈折率が等しく、且つ前記第1及び第2の光導波路の間で、前記断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方が異なることを特徴とする。
第1の側面によれば、隣接する光導波路の幅及び厚さの何れか一方又は双方が異なるので、当該光導波路間の伝播定数が異なる。従って、第1の側面によれば、光配線を構成する光導波路の間隔を狭くしても隣接する光導波路間のクロストークを小さくすることができるので、光配線の高密度化が可能になり、光配線によって半導体装置間の信号伝送を行う電子装置の信号処理速度を飛躍的に向上させることができる。
(第2の側面)
上記の目的を達成するために、本発明の第2の側面は、第1の側面において、前記幅及び前記厚さの何れか一方又は双方を異ならせることにより、前記第1及び第2の光導波路の間のクロストークを、−30dB以下にしたことを特徴とする。
(第3の側面)
上記の目的を達成するために、本発明の第3の側面は、基板と、前記基板の上に形成された、電気信号を処理する第1及び第2の半導体装置と、前記第1及び第2の半導体装置の間で交わされる信号が電気から光に変換されてなる光信号を伝送する、前記基板の上に形成された複数の光導波路によって構成される光配線を備え、前記光配線が、前記光導波路が互いに平行に形成された領域を具備する電子装置において、前記領域に於いて、前記光導波路のコアの断面が矩形に形成され、前記光配線は、コア及びクラッドの屈折率が等しく且つ隣接する前記光導波路からなる第1及び第2の光導波路が交互に配置され、且つ、前記第1及び第2の光導波路の間で、前記断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方が異なるように構成されており、前記第1の光導波路が、前記第1の半導体装置から前記第2の半導体装置に送信される前記光信号を伝送し、前記第2の光導波路が、前記第2の半導体装置から前記第1の半導体装置に送信される前記光信号を伝送することを特徴とする。
第3の側面によれば、同一方向に伝播する光信号は、コアの幅及び厚さが同一の光導波路を伝播するので、第1の側面に係わる光配線に於いて生じるスキュー(光導波路間に於ける、光信号の到達時間の差)を解消することができる。
(第4の側面)
上記の目的を達成するために、本発明の第4の側面は、基板と、前記基板の上に形成された、電気信号を処理する複数の半導体装置と、前記半導体装置の間で交わされる信号が電気から光に変換されてなる光信号を伝送する、前記基板の上に形成された複数の光導波路によって構成される光配線を備え、前記光配線が、前記光導波路が互いに平行に形成された領域を具備する電子装置において、前記領域に於いて、前記光導波路のコアの断面が矩形に形成され、隣接する前記光導波路からなる第1及び第2の光導波路は、コア及びクラッドの屈折率が等しく、且つ、前記断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方が異なる複数通りの短光導波路が複数縦列接続されてなり、前記第1及び第2の光導波路を夫々構成し且つ互いに隣接する前記短光導波路は、前記断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方が異なることを特徴とする。
第4の側面によれば、コア断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方が異なる短光導波路を縦列接続して光導波路を構成するので、当該光導波路からなる光配線の光導波路密度を高くすることができると同時に、スキュー(光導波路間に於ける、光信号の到達時間の差)のない光配線を構成することが容易になる。従って、第4の側面によれば、光配線によって半導体装置間の信号伝送を行う電子装置の信号処理速度を飛躍的に向上させると同時に、当該電子装置に於いてスキューのない信号処理を実現することが容易になる。
(第5の側面)
上記の目的を達成するために、本発明の第5の側面は、第4の側面において、前記断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方が異なる前記短光導波路毎に、前記短光導波路の長さの総和を取った値が、前記第1及び第2の光導波路の間で等しいことを特徴とする。
第5の側面によれば、信号処理速度が飛躍的に高く且つスキュー(光導波路間に於ける、光信号の到達時間の差)のない、光配線を備えた電子装置を実現することができる。
本発明では、隣接する光導波路のコア断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方を異ならせることによって、隣接する光導波路の伝播定数を異ならせ、光導波路の間隔を狭くしても隣接する光導波路間のクロストークが大きくならないようにする。このため、本発明によれば、光配線を構成する光導波路の密度を高くすることができる。
従って、本発明によれば、光配線によって半導体装置間の信号伝送を行う電子装置の信号処理速度を、飛躍的に向上させることができる。
また、本発明では、コア断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方が異なる短光導波路を縦列接続して光導波路を構成する。このため、当該光導波路からなる光配線の光導波路密度を高くすることができると同時に、スキュー(光導波路間に於ける、光信号の到達時間の差)のない光配線を構成することができる。
従って、本発明によれば、光配線によって半導体装置間の信号伝送を行う電子装置の信号処理速度を飛躍的に向上させことができ、且つ半導体装置間の信号伝送をスキューのない状態で行うことができる。
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。なお、図面が異なっても対応する部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
(実施の形態1)
本実施の形態は、隣接する光導波路のコア断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方を異ならせることによって、光導波路の間隔を狭くしてもクロストークが大きくならないようにした光配線を備えた電子装置に係るものである。
(1)装置構成
本実施の形態に係る電子装置の構成は、図14及び図15に示した電子装置(関連技術)と殆ど同じである。
但し、本実施の形態に係る電子装置を構成する光配線24は、図6に示すように、隣接する光導波路26,28の間で、コアの断面の幅W1,W2及び厚さD1,D2の何れか一方又は双方が異なる点で、図14及び図15に示した電子装置6と相違する(図6では、コアの断面の幅W1及びW2が異なっている。)。尚、図6(a)は光配線24の平面図であり、図6(b)は、図6(a)のA−A´線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図である。
ここで、第1及び第2の光導波路26,28のコアの構成は、第1及び第2の光導波路26,28のコアの断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方を異ならせることにより、第1及び第2の光導波路26,28の間のクロストークを−30dB以下にしたものであることが好ましい。
また、第1及び第2の光導波路26,28のコアの構成は、第1及び第2の光導波路26,28のコアの断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方を異ならせることにより、第1及び第2の光導波路26,28の間のクロストークを−50dB以下にしたものが更に好ましい。更には、第1及び第2の光導波路26,28のコアの構成は、第1及び第2の光導波路26,28のコアの断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方を異ならせることにより、第1及び第2の光導波路26,28の間のクロストークを−70dB以下にしたものが最も好ましい。
但し、クロストークを小さくし過ぎると第1及び第2の光導波路26,28のコアの断面の非対称性が大きくなり、第1及び第2の光導波路26,28の特性(例えば、伝送速度)の違いが大きくなり過ぎるので、クロストークを必要以上に小さくすることは好ましくない。このような観点から、クロストークの下限としては、−120dB以上が好ましく、更に好ましくは−100dB以上であり、更に好ましくは−80dB以上であり、最も好ましくは−40dB以上である。
(2)原 理
まず、隣接する光導波路のコア断面の幅及び厚さが等しい場合、光導波路間隔が狭くなるとクロストークが大きくなる理由について説明する。尚、以下の説明では、隣接する光導波路のコアとクラッドの比屈折率差は等しいものとする
図1に示すように近接して平行に配置された2本の光導波路30,32を伝播する光信号は、これら近接する光導波路の間を交互に往復しながら伝播する。
ここで、光信号10が入射された光導波路30に於ける光信号のパワーをP1(z)、他方の光導波路32における信号光のパワーをP2(z)とすると、光導波路30,32の伝播定数が等しい場合、光信号のパワーP1(z),P2(z)は、伝播方向に於ける位置座標zに対して図2のように交互に大きくなる。ここで、図2の縦軸は、規格化された光信号のパワーである。また、横軸は、光の伝播方向における位置座標zである。
近接する光導波路のコア断面の幅及び厚さが等しい場合、両光導波路の伝播定数β1及びβ2は等しくなる。この場合、一方の光導波路を伝播する光信号(P1(z))は、図2に示すように、除々に他方の光導波路(P2(z))に乗り移りやがて光信号全体が他方の光導波路を伝播するようになる。完全に他方に乗り移った光信号は、今度は元の光導波路に除々乗り移りやがて光信号全体が再び元の光導波路を伝播するようになる(例えば、非特許文献1)。
光信号10は、このような往復運動を近接した2本の光導波路30,32の間で繰り返す。
この往復運動の周期の半分すなわち一方の光導波路から他方の光導波路に完全にパワーが移行する距離は、結合長Lと呼ばれる(図2参照)。この結合長は、2本の光導波路が近接するほど短くなる。
一例としてコア及びクラッドの比屈折率差が0.5%で、一方のコアの幅を3μmその厚さが3μmの光導波路では、その間隔が100μm〜200μmである場合、結合長は1km以上の長距離に及ぶ。従って、長さが高々20〜30cmの光配線では、隣接する光導波路12を100μm〜200μm離すことによって、光導波路間の光パワーの移行すなわちクロストークはさほど問題にならなくなる。
しかし、光導波路の間隔を100μm以下に狭めると、その結合長が光配線を構成する光導波路の長さに近づいてくる。その結果、信号光が入射した光導波路(一方の光導波路30)から他方の光導波路32への光パワーの移行すなわちクロストークが大きくなり、無視し得なくなる。
さらに、光導波路の間隔が狭まり20〜30μm程度になると、結合長は30cm程度まで縮小する。このような状況下では、光信号が隣接する光導波路30,32の間を移動するようになり、もはや光配線はその機能を果し得なくなる。
一方、本実施の形態では、隣接する光導波路26,28の間で、コア断面の幅W1,W2及び厚さD1,D2の何れか一方又は双方を異ならせる。図6には、隣接する光導波路26,28の間で、コアの幅W1,W2が異なる例を示した。この場合、両光導波路26,28の伝播定数β1及びβ2は異なった値になる。
隣接する光導波路の間で伝播定数が異なると、光導波路間の光パワーの移行は不完全なものになる。
図3は、隣接する光導波路の伝播定数が異なる場合に、光導波路30,32を伝播する光のパワーの変化を説明する図である。縦軸は、規格化された光信号のパワーである。また、横軸は、光の伝播方向における位置座標zである。
図3に示すように、隣接する光導波路30,32の伝播定数が異なる場合、信号光が入射した光導波路(一方の光導波路30、図1参照)を伝播する光信号のパワーをP1(z)は、結合長Lに於いても零にはならない。一方、(他方の)光導波路32に乗り移る信号光のパワーをP2(z)は、結合長Lに於いても、最初に信号光10が光導波路30に入射した時の光信号光強度(=1)までは大きくならない(P2<1)。
このことは、光導波路の密度を高くした結果、結合長が光導波路の長さと同程度或いはそれより短くなったとしても、例えば図6のように、隣接する光導波路26,28の間でコア断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方を異ならせておけば、隣接する光導波路26,28間に於ける光パワーの移行を小さくできることを示している。この場合のクロストークは、高々、結合長Lに於いて他方の光導波路32に移行した光パワー(P2(z))でしかならない。
従って、光配線4を高密度化しても、隣接する光導波路26,28の間でコア断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方を異ならせることにより、光導波路間のクロストークを小さくすることが可能になる。
図3に示した例では、コア断面の幅又は厚さの非対称性があまり大きくないので、隣接した光導波路に移行する光パワーはまだ大きい。しかし、コア断面の幅又は厚さの非対称性を適宜大きくすれば、隣接した光導波路に移行する光パワーすなわちクロストークの値を、実用上無視し得る程度まで小さくすることができる。
例えば、コア及びクラッドの比屈折率差が0.5%で、一方のコアの幅を3μmその厚さを3μmとし、他方のコアの幅を2μmその厚さを3μmとすると、光導波路の間隔を20μmに近づいても隣接する光導波路間のクロストークは-30dB以下になる。
このように、本実施の形態によれば、光配線4を構成する光導波路26,28の間隔を狭くしても隣接する光導波路間のクロストークを小さくすることができるので、光配線の高密度化が可能になり、光配線によって半導体装置間の信号伝送を行う電子装置の信号処理速度を飛躍的に向上させることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態に係る電子装置は、実施の形態1に係る電子装置22で問題となるスキュー(光導波路間に於ける、光信号の到達時間の差)をなくした電子装置である。
図7は、本実施の形態における電子装置34を説明する平面図である。
本実施の形態に係る電子装置34の構成は、実施の形態1に示した電子装置と殆ど同じである。すなわち、本実施の形態に係る電子装置34では、図7のように、コア及びクラッドの屈折率が等しく且つ隣接する光導波路からなる第1及び第2の光導波路26,28が交互に配置され、第1及び第2の光導波路26,28の間で、断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方が異なるように構成されている。
但し、本実施の形態に係る電子装置34は、第1の光導波路26が、(発光素子14及び受光素子16を介して)第1の半導体装置36から第2の半導体装置38に送信される光信号40を伝送し、第2の光導波路28が、(発光素子14及び受光素子16を介して)第2の半導体装置38から第1の半導体装置36に送信される光信号42を伝送する点を特徴とする。
上述した実施の形態1では、隣接する光導波路26,28の断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方が異なるようにして、両者の伝播定数が一致しないようにした。このような場合、隣接する光導波路26,28を伝播する信号光の速度に違いが生じてしまう。更に、実施の形態1に係わる電子装置22は、図4に示すように、中央で隣接する光導波路86,88を除き、隣接する光導波路が同一方向に光信号を伝送するように構成されている。尚、図4は、実施の形態1における電子装置22の構成を説明する平面図である。
このため、実施の形態1に係わる電子装置22では、第1の半導体装置36から第2の半導体装置38に光信号が到達する時間が光導波路間で異なってしまうスキューが生じてしまう。
これに対して、本実施の形態では、上述したように、第1の半導体装置36から第2の半導体装置38に光信号40を伝送する第1の光導波路26は、例えば、図7のように、全て幅の広い光導波路で構成されている。一方、第2の半導体装置38から第1の半導体装置36に光信号42を伝送する第2の光導波路28は、例えば、図7のように、全て幅の狭い光導波路42によって構成されている。
このように、一方の半導体装置から他方の半導体装置に光信号を伝送する光導波路のコア形状を同じにしておけば、これらの光導波路の伝播定数が等しくなるのでスキューは生じない。一方、隣接する光導波路間では、コアの形状が異なるのでクロストークが小さくなり、光配線の高密度化が可能になる。
従って、本実施によれば、実施の形態1に係わる光配線に於いて生じるスキュー(光導波路間に於ける、光信号の到達時間の差)を解消することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態に係る電子装置は、実施の形態1と同じように、光導波路の間隔を狭くしてもクロストークが大きくないようにした光配線を備えた電子装置に係るものである。
本実施の形態に係る電子装置は、光配線の構成が、実施の形態1に示した電子装置とは異なる。その他の点は、実施の形態1に係る電子装置22と同じである。このような光配線を採用することにより、実施の形態2のように光の伝送方向を隣接する光導波路の間で逆向きにしなくても、容易にスキューを解決することができる。但し、この点に関しては、下記実施の形態4で詳しく説明する。
図8は、本実施の形態に係る光配線44の一例を説明する図である。図8(a)は平面図である。図8(b)は、図8(a)に示したA−A´線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図である。
図8(b)のように、本実施の形態でも、光導波路46,48のコアの断面が矩形に形成される。
ここで、本実施の形態に係わる電子装置44は、図8(a)のように、隣接する光導波路からなる第1及び第2の光導波路46,48が、コア及びクラッドの屈折率が等しく、且つ、コアの断面の幅W1,W2及び厚さD1,D2の何れか一方又は双方(図8の例では、コアの幅W1,W2)が異なる複数通りの光導波路50,52(以下、短光導波路と呼ぶ)が複数縦列接続されてなることを特徴とする。ここで、縦列接続とは、光の伝播方向に於いて光導波路を接続することを意味する。
更に、本実施の形態の電子装置は、第1及び第2の光導波路46,48を夫々構成し且つ互いに隣接する短光導波路50,52が、そのコアの断面の幅W1,W2及び厚さD1,D2の何れか一方又は双方(図8の例では、コアの幅W1,W2)が異なることを特徴とする。
このように構成することにより、第1及び第2の光導波路46,48を構成し互いに隣接する短光導波路50,52は、コアの断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方(図8の例では、コアの幅W1,W2)が異なることになる。従って、隣接する短光導波路50,52の伝播定数が異なった値になるので、隣接する短光導波路50,52の間に於ける光の移行は、たとえ短光導波路50,52の長さが結合長又は以上であっても僅かなものにしかならない。このため、短光導波路50,52が縦列接続されてなる第1及び第2の光導波路46,48の間に於ける信号光10の移行も、僅かなものにしかならない。
例えば、短光導波路50,52のコア及びクラッドの比屈折率差が0.5%で、短光導波路50のコアの幅が3μmその厚さが3μmであり、短光導波路52のコアの幅が2μmその厚さが3μmである場合、第1及び第2の光導波路50,52の間隔が20μmに近づいても、短光導波路50,52のクロストークは-30dB以下である。
故に、本実施の形態によれば、光配線44を構成する光導波路46,48の間隔を狭くしても隣接する光導波路間のクロストークを小さくすることができるので、光配線の高密度化が可能になり、光配線によって半導体装置間の信号伝送を行う電子装置の信号処理速度を飛躍的に向上させることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態に係る電子装置は、実施の形態3に係る電子装置においてスキュー(光導波路間に於ける、光信号の到達時間の差)をなくした電子装置である。
本実施の形態に係る電子装置の構成は、略実施の形態3に於ける電子装置と同じである。
但し、本実施の形態に係る電子装置の光配線44は、その光導波路46,48のコア断面の幅W1,W2及び厚さD1,D2の何れか一方又は双方が異なる短光導波路50,52毎に、短光導波路の長さの総和を取った値が、第1及び第2の光導波路46,48の間で等しいことを特徴とする。
例えば、図8に示す光配線44を備えた電子装置では、第1の光導波路46に於いて幅の広い短光導波路50の長さの総和を取った値L1が第2の光導波路48に於いて幅の広い短光導波路50の長さの総和を取った値L2に等しく(L1=L2)、且つ、第1の光導波路46に於いて幅の狭い短光導波路52の長さの総和を取った値M1が第2の光導波路48に於いて幅の狭い短光導波路52の長さの総和を取った値M2に等しい(M1=M2)。
光信号10が第1の光導波路46の端から端に伝播するために要する時間T1は、光信号10が第1の光導波路46を構成する全ての短光導波路50を伝播するのに要する時間t11と、光信号10が第1の光導波路46を構成する全ての短光導波路52を伝播するのに要する時間t12の和である(すなわち、T1=t11+t12)。尚、短光導波路50,52間の遷移領域54を光信号10が伝播する時間は、短光導波路50,52を光信号10が伝播するのに要する時間に比べ十分短いと考えられるので、ここでは無視した。
一方、光信号10が第2の光導波路48の端から端に伝播するために要する時間T2は、光信号10が第2の光導波路48を構成する全ての短光導波路50を伝播するのに要する時間t21と、光信号10が第2の光導波路48を構成する全ての短光導波路52を伝播するのに要する時間t22の和である(すなわち、T2=t21+t22)。
ところで、光信号10が第1の光導波路46を構成するコア幅の広い全ての短光導波路50を伝播するのに要する時間t11は、第1の光導波路46に於いて幅の広い短光導波路50の長さの総和を取った値L1と短光導波路50の伝播定数β1で決まる。
すなわち、信号光10の角周波数をωとすると、t11=L1×β1/ωとなる。
同様に、光信号10が第1の光導波路46を構成するコア幅の広い全ての短光導波路52を伝播するのに要する時間t12は、t12=M1×β2/ωとなる。
従って、光信号10が第1の光導波路46の端から端に伝播するために要する時間T1は、T1=t11+t12=L1×β1/ω+M1×β2/ωとなる。
同様に、光信号10が第2の光導波路48の端から端に伝播するために要する時間T2は、T2=t21+t22=L2×β1/ω+M2×β2/ωとなる。
ここで、上述したようにL1=L2であり且つM1=M2なので、T1=T2となる。
すなわち、光信号10が第1の光導波路46の端から端に伝播するために要する時間T1は、光信号10が第1の光導波路48の端から端に伝播するために要する時間T2に等しくなる。
故に、本実施の形態によれば、実施の形態1に係わる光配線に於いて生じるスキュー(光導波路間に於ける、光信号の到達時間の差)を解消することができる。
本実施例は、隣接する光導波路のコア断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方を異ならせることによって、光導波路の間隔を狭くしてもクロストークが大きくならないようにした光配線を備えた電子装置に係るものである。
(1)装置構成
図4は、半導体装置2の間で交わされる信号を光10で伝送する光配線24を備えた電子装置22の平面図である。図5は、図4のA−A´線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図である。
また、図6(a)は、光配線24の平面図である。図6(b)は、図6(a)のA−A´線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図である。
電子装置22は、図4及び図5に示すように、例えば、石英、ガラス、シリコン、セラミック、及び樹脂の何れかからなる基板8と、基板8の上に形成された、例えば、CPUやメモリからなる電気信号を処理する複数の半導体装置2と、基板8の上に形成された複数の光導波路26,28からなる光配線24を備えている。ここで、光導波路26,28は、半導体装置2の間で交わされる信号が電気から光に変換されてなる光信号10を伝送するチャネルとして機能する。
本実施例に於ける光導波路26,28は、ポリイミド樹脂(日立化成工業、商品名OPI)によって形成される。但し、光導波路26,28を形成する材料は、特定の材料に限定されるものではなく、例えば、石英、ガラス、シリコン、及び樹脂(エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等)の何れかであってもよい。
光配線24には、図6(a)に示すように、第1及び第2の光導波路26,28が互いに平行に形成されている。また、光導波路26,28の間隔は20μmである。
また、図6(b)に示すように、第1及び第2光導波路26,28のコアの断面は、矩形に形成される。ここで、第1の光導波路26のコアの幅W1は3μmで、その厚さD1は3μmである。また、第2の光導波路28のコアの幅W2は2μmで、その厚さD2は3μmである。また、第1及び第2の光導波路26,28は互いにコア及びクラッドの屈折率が等しく、コアとクラッドの比屈折率差は0.5%である。
電子装置22は、更に、面発光レーザからなる発光素子14と、面型の受光素子16と、45°ミラー18を備えている(図4及び図5参照)。尚、半導体装置2は、発光素子14及び受光素子16の駆動回路を備えている。
また、発光素子14及び受光素子16は、半導体装置2と共に、電気配線が施されたシリコン基板20の上に搭載されている。シリコン基板20には、発光素子14から出射された光信号10が通過し又は受光素子16に入射する光信号10が通過するビアホール(図示せず)が開口されている。
また、電気配線の施された基板20は、図5に示すように、支持体21と光配線4によって保持され、基板8との間に隙間を開けた状態で固定される。この隙間に45°ミラー18が配置され、45°ミラー18は発光素子14又は受光素子16と光導波路12を光学的に結合する。
以上のように構成された電子装置22では、光配線24のクロストークは−30dB以下である。
すなわち、本実施例の電子装置22では、光配線24を構成する光導波路26,28の間隔が20μmと、従来の光配線の光導波路間隔100〜200μmより一桁狭くなっているが、光導波路26,28間のクロストークは-30dB以下と実用上問題のない程度に小さい。
(2)動 作
本実施例に於ける電子装置24は、以下のように動作する。
まず、一方の半導体装置2によって生成された電気信号が、発光素子14によって光信号10に変換される。発光素子14によって光電変換された光信号10は、図5のように、基板8に向かって放射され45°ミラー18によって進行方向が変えられ光導波路26,28に入射する。光信号10は光導波路26,28を伝播し、45°ミラー18によって基板8に垂直な方向に進行方向が変えられ、面型の受光素子16に入射する。受光素子16に入射した光信号10は電気信号に変換され、他方の半導体装置2に受信される。
ここで、光導波路26,28は、夫々のコアの幅が2μmと3μmと異なって形成されているので、両光導波路26,28の間でパワーの移行は殆ど起こらず、クロストークは-30dB以下と実用上問題にならない小さな値にしかならない。
本実施例に係る電子装置は、実施例1に係る電子装置22で問題となるスキュー(光導波路間に於ける、光信号の到達時間の差)をなくした電子装置である。
図7は、本実施例に係る電子装置34の構成を説明する平面図である。
本実施例に係る電子装置34の構成は、実施例1に示した電子装置と殆ど同じである。
但し、本実施例に係る電子装置34は、交互に配置された第1の光導波路26が、(発光素子14及び受光素子16を介して)第1の半導体装置36から第2の半導体装置38に送信される光信号40を伝送し、交互に配置された第2の光導波路42が、(発光素子14及び受光素子16を介して)第2の半導体装置38から第1の半導体装置36に送信される光信号42を伝送する点を特徴とする。
図4に示した実施例1に係わる電子装置22では、発光素子14と受光素子16は、互いに混じり合わずに、半導体装置2が搭載された基板20の右半分又は左半分に配置されている。従って、例えば、上側の半導体装置2によって生成された信号は、光信号10に変換されて、コア幅の広い光導波路26及びコア幅の狭い光導波路28の双方を伝播して下側の半導体装置2に向かって伝送される。
第1及び第2の光導波路24,26は、コアの幅が異なっている。このため、第1及び第2の光導波路26,28ではその伝播定数が異なる。従って、第1の光導波路26を伝播し上側から下側に向かう光信号の到達時間と、第2の光導波路28を伝播し同じく上側から下側に向かう光信号の到達時間には差が生じてしまう。すなわち、スキューが発生する。
一方、図7に示す本実施例の電子装置34では、発光素子14と受光素子16が、半導体装置36,38が搭載された基板20の上に交互に配置されている。従って、例えば、上側の半導体装置36によって生成された信号が光電変換された光信号1
40は、全て、コアの幅が広い光導波路26伝播して下側の半導体装置38に向かって伝送される。
従って、電子装置34の上側から下側に向かう光信号40は、伝播定数の同じ幅広の光導波路26を伝播することになる。同様に、電子装置34の下側から上側に向かう光信号42も、伝播定数の同じ幅狭の光導波路28を伝播することになる。
このため、本実施例の電子装置34では、光信号が到達する時間が光導波路間で異なるスキューは発生しない。また、隣接する光導波路間でコアの形状が異なるので、光導波路の間隔が狭くなってもクロストークが大きくなることはない。従って、光配線を高密度化することができる。
本実施例に係る電子装置は、実施例1と同じように、光導波路の間隔を狭くしてもクロストークが大きくならないようにした光配線を備えた電子装置に係るものである。
但し、本実施例に係る電子装置によれば、実施例2のように光の伝送方向を隣接する光導波路間で逆向きにしなくても、光導波路間の光信号の到達時間の差すなわちスキューを容易になくすことができる
(1)構 成
本実施例に係る電子装置は、光配線の構成が、実施例1に示した電子装置とは異なる。その他の点は、実施例1に係る電子装置22と同じである。
図8は、本実施例に係る光配線44の構成を説明する図である。図8(a)は平面図である。図8(b)は、図8(a)のA−A´線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図である。
図8(b)のように、本実施例でも、光導波路46,48のコアの断面が矩形に形成される。
本実施例に於ける光導波路46,48も、実施例1に係わる光配線24と同様、ポリイミド樹脂(日立化成工業、商品名OPI)によって形成される。但し、光導波路26,28を形成する材料は、特定の材料に限定されるものでなく、例えば、石英、ガラス、シリコン、及び樹脂(エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂)の何れかであってもよい。
ここで、本実施例の電子装置は、図8(a)のように、隣接する光導波路からなる第1及び第2の光導波路46,48が、そのコア及びクラッドの屈折率が等しく、且つ、矩形に形成されたコアの断面の幅W1,W2が異なる二通りの光導波路50,52(以下、短光導波路と呼ぶ)が複数縦列接続されて構成されている。
第1の短光導波路50は、幅が3μmで厚さが3μmである。一方、第2の短光導波路52は、幅が2μmであり厚さが3μmである。そして、隣接する第1及ぶ第2の光導波路46,48の間隔は20μmである。また、第1及ぶ第2の光導波路46,48の比屈折率差は、共に0.5%である。
更に、本実施例の電子装置は、第1及び第2の光導波路46,48を構成し且つ互いに隣接する短光導波路50,52が、そのコアの断面の幅及び厚さの何れか一方又は双方(図8の例では、コアの幅w1,w2)が異なることを特徴とする。
このように、第1及び第2の光導波路46,48を構成し互いに隣接する短光導波路50,52は、そのコアの断面の幅が異なっている。このため、隣接する短光導波路50,52の伝播定数β1,β2は、異なった値になる。
従って、隣接する短光導波路50,52間に於ける光の移行は、短導波路50,52の長さが結合長と同程度又はそれ以上になっても、大きな値にはならない。例えば、本実施例に於ける短光導波路46,48間のクロストークは、−30dB以下である。
このため、短光導波路50,52が複数縦列接続されてなる第1及び第2の光導波路46,48の間に於ける信号光の移行はごく僅かである。
故に、本実施例によれば、光配線44を構成する光導波路46,48の間隔を狭くしても隣接する光導波路46,48の間のクロストークを小さくすることができるので、光配線の高密度化が可能になり、光配線によって半導体装置間の信号伝送を行う電子装置の信号処理速度を向上させることができる。
更に、本実施例では、第1の光導波路46を構成する幅の広い2本の短光導波路50の光導波路長の和(l1+l3)と、第2の光導波路48を構成する幅の広い2本の短光導波路50の光導波路長の和(l6+l8)が等しい(l1、l3、l6、及びl8は、図8(a)参照)。また、第1の光導波路46を構成する幅の狭い2本の短光導波路52の光導波路長の和(l2+l4)と、第2の光導波路48を構成する幅の狭い2本の短光導波路52の光導波路長(l5+l7)の和が等しい(l2、l4、l5、及びl7は、図8(a)参照)。
短光導波路50,52は夫々コア幅が異なるので、伝播定数が異なっている。従って、夫々の短光導波路に於ける光の伝播速度が異なる。しかし、上述したように、第1の光導波路46を構成するコア幅の広い短光導波路50の光導波路長の和(l1+l3)が、第2の光導波路48を構成するコア幅の広い短光導波路50の光導波路長の和(l6+l8)に等しい。また、第1の光導波路46を構成するコア幅の狭い短光導波路52の光導波路長の和(l2+l4)が、第2の光導波路48を構成するコア幅の狭い短光導波路52の光導波路長l5+l7)の和に等しい。
このため、信号光が第1の光導波路を伝播するために要する時間と、信号光が第2の光導波路を伝播するために要する時間は等しくなる。すなわち、本実施例に係る電子装置では、スキューは発生しない。尚、短光導波路50及び短光導波路52の遷移領域54は短光導波路50,52に比べて短いので、以上の説明では、この遷移領域54を伝播する光の時間は無視した。
(2)動 作
本実施例に係る電子装置の動作は、実施例1に於ける電子装置と基本的には同じである。
但し、信号光が、コア幅の異なる短光導波路50,52を交互に伝播する点で相違する。
本実施例に係る電子装置は、光導波路が多層に形成されてなる光配線を備えた電子装置に係るものである。また、本実施例に係る電子装置は、光導波路のコアの幅でなくコアの厚さが、隣接する光導波路間で異なる場合がある例である。
本実施例に係る電子装置は、光配線の断面構造が、実施例1又は2に係る電子装置とは異なる。その他の点は、実施例1又は2に係る電子装置と同じである。従って、光配線の構造についてのみ説明し、その他の説明は省略する。
図9は、本実施例に係る電子装置が備える光配線56の構成を説明する図である。
また、図9(a)は、光配線56の平面図である。図9(b)は、図9(a)のA−A´線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図である。
図9(b)に示すように、光配線56は、第1の光導波路層66に上に第2の光導波路層68が積層されている。
そして、第1の光導波路層66は、コアの幅が3μmで厚さが2μmの第1の光導波路62と、コアの幅が2μmで厚さが2μmの第2の光導波路64が交互に配置されて構成されている。ここで、光導波路62と光導波路64の間隔は20μmである。
また、第2の光導波路層68は、コアの幅が3μmで厚さが3μmの第3の光導波路58と、コアの幅が2μmで厚さが3μmの第4の光導波路60が交互に配置されて構成されている。ここで、光導波路58と光導波路60の間隔は20μmである。
そして、第1の光導波路層66を構成する第1の光導波路62,64と第2の光導波路層68を構成する第1の光導波路58,60の間隔も20μmである。
すなわち、同一光導波路層内では、例えば第1の光導波路62と第2の光導波路64のように、コア幅の異なる光導波路が隣接する。一方、異なる光導波路層66,68の間では、例えば第1の光導波路62と第3の光導波路58のように、コアの厚さが異なる光導波路が隣接する。
従って、本実施例に於ける光配線56では、隣接する光導波路の間で、コアの断面の幅及び厚さの何れか一方が異なっている。
従って、本実施例に係る電子装置では、光導波路間での信号光の移行は殆ど起こらない。また、光導波路が積層されているので、実施例1乃至3の電子装置より高密度化された光配線が可能になる。
尚、図9の例では、光導波路58,60,62,64のコア断面の幅及び厚さの何れか一方が異なっている。しかし、光導波路層の積層構造はこの様な構成に限られず、例えば、図10のように、夫々が異なる光導波路層66,68に属し且つ隣接する光導波路(光導波路60及び光導波路62、光導波路58及び光導波路64)のコアの厚さ及び幅の双方が異なるようにしてもよい。
また、積層する光導波路層66,68の平面構造も、図9(a)にように幅の異なるストライプ状の光導波路が交互に配置された構造に限られるものではなく、例えば図8(a)のように幅の異なる短光導波路50,52が縦列接続されてなる光導波路46,48が、夫々を構成する幅の異なる短光導波路(短光導波路50及び短光導波路52)が対向するように配置された構造であってもよい。
本実施例は、上記実施例1乃至4に係わる電子装置を構成する光配線の製造方法に係わるものである。
図11乃至図13は、実施例1乃至3に係わる光配線22,24,44の製造方法を説明する断面工程図である。実施例4に係わる光配線56は、光導波路層を二度形成して積層する点で、下記製造工程とは相違するが、その他の点では共通する。
まず、例えば、石英、ガラス、シリコン、セラミック、及び樹脂の何れかからなる平坦な基板8の上に、クラッド形成用のポリイミド樹脂溶液(日立化成、商品名:OPI-N3205)をスピンコートによって塗布し、350℃で加熱して硬化させる。硬化したポリイミド樹脂溶液は、ポリイミドからなる下部クラッド70を形成する(図11(a))。
次に、下部クラッド70の上に、コア形成用のポリイミド樹脂溶液(日立化成、商品名:OPI-N3305又はOPI-N3405)をスピンコートによって塗布し、350℃で加熱して硬化させる。硬化したポリイミド樹脂溶液は、ポリイミドからなるコア用樹脂層72を形成する(図11(b))。
次に、スパッタ法又は蒸着法により金属薄膜74をコア用樹脂層72の上に堆積する(図11(c))。
次に、この金属薄膜74の上に、フォトレジスト膜を塗布し、形成すべき光配線のコア形状に応じたレジストパター76に形成する(図12(d))。
次に、このレジストパター76をマスクとして、金属薄膜74をウェットエッチングして、金属薄膜パターン78を形成する(図12(e))。
次に、この金属薄膜パターン78をマスクとして、コア用樹脂72をドライエッチングして、コアを形成する(図12(f))。
次に、金属薄膜パターン78を除去し、再度、クラッド形成用のポリイミド樹脂溶液(日立化成、商品名:OPI-N3205)をスピンコートによって塗布し、350℃で加熱して硬化させる。硬化したポリイミド樹脂溶液は、ポリイミドからなる上部クラッド82を形成する(図13)。
以上の工程により、基板8の上に、ポリイミドからなるクラッド70,82とコア80を備え、所定のコア形状を有する光配線が形成さえる。
以上の例では、光配線を構成する光導波路のコアの幅及び厚さは、2μm又は3μmである。従って、これらの光導波路はシングルモード光導波路である。しかし、上記光配線を構成する光導波路は、必ずしもシングルモード光導波路である必要はなく、マルチモード光導波路であってもよい。
また、以上の例では、半導体装置2が送信する電気信号を光信号に変換する発光素子14及び光信号を電気信号に変換して半導体装置2に供給する受光素子16は、夫々面型の発光素子(面発光レーザ)及び面型の受光器であった。
しかし、発光素子14又は受光素子16は、面型の光素子に限られるものではなく、導波型の光素子であってもよい。例えば、発光素子14としては、例えば、ファブリペロー型レーザであってもよい。また、受光素子16としては、導波路型フォトダイオードであってもよい。この場合には、45°ミラー18を用いることなく直接、光配線を構成する光導波路に発光素子14及び受光素子16を光学的に結合することができる。
更に、上述した例では、本発明に係わる光配線を半導体装置間の光信号伝送(光による信号の伝送)に用いている(ボード内光配線)。しかし、本発明に係わる光配線の適用範囲は、半導体装置間の光信号伝送に限られるものではなく、複数の半導体装置からなる電子装置の間の信号伝送(ボード間光配線)または半導体装置内の信号伝送(チップ内光配線)にも適用可能である。
本発明は、複数の半導体装置からなる電子装置の製造業または半導体装置の製造業において利用可能である。
実施の形態1の原理を説明する図(その1)である。
実施の形態1の原理を説明する図(その2)である。
実施の形態1の原理を説明する図(その3)である。
実施例1に於ける電子装置の構成を説明する平面図である。
実施例1に於ける電子装置の構成を説明する断面図である。
実施の形態1及び実施例1に於ける光配線の構成を説明する図である。
実施の形態2及び実施例2に係る電子装置の構成を説明する平面図である。
本実施の形態3及び実施例3に係る光配線の構成を説明する図である。
実施例4に係る光配線の構成を説明する図である(その1)。
実施例4に係る光配線の構成を説明する図である(その2)。
実施例5に係わる光配線の製造方法を説明する断面図である(その1)。
実施例5に係わる光配線の製造方法を説明する断面図である(その2)。
実施例5に係わる光配線の製造方法を説明する断面図である(その3)。
半導体装置の間で交わされる信号を光で伝送する光配線を備えた電子装置を説明する平面図である(関連技術)。
光配線を備えた電子装置を説明する断面図である(関連技術)。
電子装置を構成する光配線の構成を説明する図である(関連技術)。
符号の説明
2・・・半導体装置 4・・・光配線 6・・・電子装置(関連技術)
8・・・基板 10・・・光信号 12・・・光導波路
14・・・発光素子 16・・・受光素子 18・・・45°ミラー
20・・・電気配線の施された基板 22・・・電子装置(実施の形態1)
21・・・支持体
24・・・光配線(実施の形態1) 26・・・第1の光導波路(実施の形態1)
28・・・第2の光導波路(実施の形態1)
30,32・・・近接し平行に配置された光導波路
34・・・電子装置(実施の形態2) 36・・・第1の半導体装置
38・・・第2の半導体装置
40・・・第1の半導体装置から第2の半導体装置に伝送される光信号
42・・・第2の半導体装置から第1の半導体装置に伝送される光信号
44・・・光配線(実施の形態3) 46,48・・・光導波路(実施の形態3)
50,52・・・短光導波路 54・・・遷移領域
56・・・光配線(実施例4)
58,60,62,64・・・光導波路(実施例4)
66・・・第1の導波路層 68・・・第2の導波路層
70・・・下部クラッド 72・・・コア用樹脂層 74・・・金属薄膜
76・・・レジストパターン 78・・・金属薄膜パターン
80・・・コア 82・・・上部クラッド
84,86・・・中央で隣接する光導波