以下、本発明の光導波路、光電気混載基板および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の光導波路の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の光導波路の第1実施形態を示す(一部透過して示す)斜視図、図2は、図1に示す光導波路の縦断面図である。なお、図1は、光導波路の一端部のみを図示したものであり、この一端部以外の部位については図示を省略している。
図1に示す光導波路1は、帯状をなしており、その長手方向の一端部と他端部との間で光信号を伝送し、光通信を行うことができる。
図1に示す光導波路1は、上側から第1クラッド層11、コア層13および第2クラッド層12を積層してなる導波部10を備えている。コア層13中には長尺状のコア部14とその側面に隣接して設けられた側面クラッド部15とが形成されている。
また、光導波路1は、導波部10の上面に積層された第1カバーフィルム(第1保護層)2と、導波部10の下面に積層された第2カバーフィルム(第2保護層)3とを備えている。
以下、光導波路1の各部について詳述する。
(コア層)
図1に示すコア層13中に形成されているコア部14は、クラッド部(側面クラッド部15、第1クラッド層11および第2クラッド層12)で囲まれており、コア部14に光を閉じ込めて伝搬することができる。
コア部14の屈折率は、クラッド部の屈折率より大きければよいが、その差は0.3%以上であるのが好ましく、0.5%以上であるのがより好ましい。なお、上限値は特に設定されないが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率差が前記下限値未満の場合、光を伝搬する効果が低下するおそれがあり、一方、屈折率差が前記上限値を上回る場合、光の伝送効率のそれ以上の向上は期待できない。
また、前記屈折率差とは、コア部14の屈折率をA、クラッド部の屈折率をBとしたとき、次式で表される。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
また、コア部14の横断面における幅方向の屈折率分布は、いかなる形状の分布であってもよい。この屈折率分布は、屈折率が不連続的に変化したいわゆるステップインデックス(SI)型の分布であってもよく、屈折率が連続的に変化したいわゆるグレーデッドインデックス(GI)型の分布であってもよい。SI型の分布であれば屈折率分布の形成が容易であり、GI型の分布であれば屈折率の高い領域に信号光が集まる確率が高くなるため伝送効率が向上する。
また、コア部14は、平面視で直線状であっても曲線状であってもよい。さらに、コア部14は途中で分岐または他のコア部と交差していてもよい。
なお、コア部14の横断面形状は特に限定されず、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形であってもよいが、四角形(矩形状)であることにより、コア部14を形成し易い利点がある。
また、コア部14の幅および高さ(コア層13の厚さ)は、特に限定されないが、それぞれ1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜70μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1の伝送効率の低下を抑えつつコア部14の高密度化を図ることができる。
上述したようなコア層13の構成材料(主材料)は、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料等を用いることができる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料であってもよい。
(クラッド層)
第1クラッド層11および第2クラッド層12の平均厚さは、コア層13の平均厚さの0.05〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.1〜1.25倍程度であるのがより好ましい。具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、それぞれ1〜200μm程度であるのが好ましく、3〜100μm程度であるのがより好ましく、5〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に厚膜化するのを防止しつつ、クラッド部としての機能が確保される。
また、第1クラッド層11および第2クラッド層12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特に(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましく、(メタ)アクリル系樹脂またはエポキシ系樹脂がより好ましい。
また、光導波路1の横断面の厚さ方向の屈折率分布についても、特に限定されず、例えばSI型、GI型の分布が挙げられる。
光導波路1の幅は、特に限定されないが、2〜100mm程度であるのが好ましく、5〜50mm程度であるのがより好ましい。
また、コア層13中には、複数のコア部14が並列するように、あるいは互いに交差するように形成することができる。光導波路1中に形成されるコア部14の数は、特に限定されないが、2〜100本程度であるのが好ましい。なお、コア部14の数が多い場合は、必要に応じて、光導波路1を多層化してもよい。具体的には、図1に示す第2クラッド層12上に、さらにコア層とクラッド層とを交互に重ねることにより多層化することができる。
なお、第1クラッド層11とコア層13との間、および、第2クラッド層12とコア層13との間は、それぞれ圧着、融着、一方の上に他方を成膜等の方法で接着されている。
以上のような第1クラッド層11、コア層13および第2クラッド層12からなる導波部10によれば、前述したように光信号を伝搬することができる。すなわち、導波部10では、コア層13中のコア部14に入射された光が、コア部14とクラッド部との界面近傍で反射を繰り返しながら伝搬する。この反射は、上述したように、コア部14とクラッド部との屈折率差に基づくものである。
また、光導波路1では、図1に示すように、コア層13中に2本のコア部14が形成されている。各コア部14では、互いに独立の光信号を伝搬させることができるので、コア層13に形成されるコア部14の数を増やすことにより、同時に伝搬可能な光信号の量を増やすことができる。これにより、通信容量の増大を図ることができる。
このような導波部10の複数のコア部14に対して同時に光信号を入射する全モード励振をしたとき、複数のコア部14(図1では、2つのコア部14)からそれぞれ光が出射する。この出射光を出射端面近傍において撮影し、得られた出射光像が「近視野像(NFP:Near Field Pattern)」である。
本実施形態に係る光導波路1では、この全モード励振した際の近視野像の形状が、隣り合うコア部14同士において互いに異なっている。換言すれば、光導波路1は、隣り合うコア部14同士において、この近視野像の形状が互いに異なるよう構成されている。このような光導波路1では、隣り合うコア部14同士の間で、漏洩光の混信、すなわちクロストークの発生が抑制される。その結果、光通信のS/N比の低下が抑制され、高品質な光通信を実現可能な光導波路1が得られる。
このような効果が得られる理由としては、以下のようなことが考えられる。
図3は、光導波路においてクロストークが発生する原理およびクロストークの発生を抑制する原理を説明するための縦断面図である。なお、図3(a)は、従来の光導波路について説明するための図であり、図3(b)は、図1に示す光導波路について説明するための図である。
コア部14に入射された光は、通常、第1クラッド層11と第2クラッド層12との界面近傍で反射を繰り返しながら伝搬するが、このとき、コア部14と第1クラッド層11との界面近傍で反射せず、第1カバーフィルム2側へ漏洩してしまう光もある。このような漏洩光のうち、少なくとも一部は、第1カバーフィルム2の上面21で反射される。
従来の光導波路1’では、このようにして第1カバーフィルム2’の上面21’で反射した漏洩光が、再び第1クラッド層11’を透過し、漏洩前に伝搬してきたコア部14’の隣にあるコア部14”へ意図せず侵入してしまうことがあった。このようにして侵入した光は、侵入を許したコア部14”を伝搬する光信号にとっては「雑音」となるため、そのコア部14”における光通信のS/N比が低下する原因となり得る。
これに対し、本実施形態のように、隣り合うコア部14同士で近視野像の形状が互いに異なっていると、互いにモード結合が起こり難いため、一方から漏洩した光が他方に結合し難くなる。その結果、S/N比の低下を招き難いという効果がもたらされる。
図4は、図2に示す光導波路から出射した光の近視野像の一例を示す強度分布図である。なお、図4に示す近視野像の等高線は、出射光の光強度の大きさの分布を示すものである。
近視野像の形状とは、このような光強度の大きさが等しい点を結んでできる等高線の形状として規定することができる。そして、形状が異なる状態とは、面積が異なっている状態、高さ(コア層13の厚さ方向の長さ)が異なっている状態、幅(コア部14の幅方向の長さ)が異なっている状態等が挙げられる。
また、近視野像の形状は、複数の等高線のうち、どの線の形状で規定されてもよいが、好ましくはピーク強度比が5%である点を結んでできる等高線の形状として規定される。このような等高線は、各コア部14の屈折率分布の状態を比較的反映し易いと考えられるため、クロストークの発生を左右する因子となり得る。
なお、ピーク強度とは、近視野像のうち、最も高い光強度のことをいう。近視野像では、通常、中央部の光強度が最も高く、周辺に向かうにつれて光強度が徐々に低下するため、このような近視野像について光強度の等高線を描くと、図4に示すように、同心状で等間隔の等高線が描かれることとなる。
このような近視野像は、例えば、シナジーオプトシステムズ株式会社製のNFP計測装置やNFP光学系により観察、撮像することができる。また、入射光の波長は850nm、撮像倍率は100倍とする。
具体的には、隣り合うコア部14同士において、近視野像のうち、ピーク強度比が5%である領域の面積が小さい方の面積を1としたとき、大きい方の面積は1.01〜1.25程度であるのが好ましく、1.02〜1.2程度であるのがより好ましく、1.05〜1.15程度であるのがさらに好ましい。隣り合うコア部14同士において近視野像の形状を前記範囲内の条件を満たすように異ならせることで、光導波路1と他の光学部品との光結合効率を低下させることなく、クロストークの発生を抑制することができる。
したがって、面積比が前記下限値を下回ると、隣り合うコア部14同士で近視野像の形状の差が小さくなり過ぎるため、クロストークの発生を十分に抑制することができなくなるおそれがある。一方、面積比が前記上限値を上回ると、隣り合うコア部14同士で近視野像の形状の差が大きくなり過ぎるため、光導波路1と他の光学部品とを光結合しようとするとき、一方のコア部14と他方のコア部14とで自ずと光結合効率に差が生じ、これらを揃えることは困難になるおそれがある。このため、光結合効率のバラツキを抑え難くなるという懸念が生じる。
また、近視野像のうち、特に、ピーク強度比が50%である領域の面積が隣り合うコア部14同士において互いに異なっていることが好ましい。これにより、隣り合う2つのコア部14の近視野像は、ピーク強度比が5%である領域の面積のみならず、ピーク強度比が50%である領域の面積も異なるものとなる。このような状態にある2つのコア部14は、一方から漏洩した光が他方に対して特にモード結合し難いものとなる。このため、クロストークの発生がより確実に抑制された光導波路1が得られる。
また、ピーク強度比が50%である領域の面積についても、ピーク強度比が5%である領域の面積と同様の条件を満たすことが好ましい。すなわち、隣り合うコア部14同士において、近視野像のうち、ピーク強度比が50%である領域の面積が小さい方の面積を1としたとき、大きい方の面積は1.01〜1.25程度であるのが好ましく、1.02〜1.2程度であるのがより好ましく、1.05〜1.15程度であるのがさらに好ましい。
なお、隣り合うコア部14同士において、特に近視野像の高さが異なっていると、クロストークの発生を特に抑制することができる。
また、隣り合うコア部14同士において、特に近視野像の幅が異なっている場合、高さが異なっている場合に比べてクロストークの発生を抑制する効果はやや低下するものの、近視野像の形状が異なっているというコア部14を形成し易い利点がある。
なお、隣り合うコア部14同士において近視野像の形状を異ならせる方法は、特に限定されず、例えば近視野像の幅を異ならせるには、従来の光導波路の製造方法においてコア部14の形状を異ならせるのと同様にすればよい。例えば、フォトリソグラフィー法を用いる場合、露光する領域を変えることにより、コア部14の幅を変え、ひいては近視野像の幅を変えることができる。
一方、近視野像の高さを異ならせるには、例えば、インプリント法を用いる場合、隣り合うコア部を形成するための溝を形成する際、溝の深さを変えることにより、最終的に得られるコア部14の高さを変え、ひいては近視野像の高さを変えることができる。
さらに、特開2006−323316号公報等に記載されている方法によれば、露光領域と非露光領域との間でモノマーの濃度に差を形成することで、屈折率差を形成し、コア部を形成することができる。この方法では、コア層においてモノマーの濃度差を形成することによりコア部とクラッド部とを形成するため、モノマーの種類を適宜選択することによって、コア部ごとにモノマーの濃度を変えることができる。その結果、モノマーの濃度差に基づく体積変化を生じさせ、コア部の幅や高さを自在に変えることができる。
(カバーフィルム)
また、図1に示す光導波路1は、最上層として第1カバーフィルム2を、最下層として第2カバーフィルム3を、それぞれ備えている。なお、このような第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3は、必要に応じて設けられればよく、省略されてもよい。
第1カバーフィルム2は、特に波長850nmにおける光線透過率が90%以上99.5%以下であるのが好ましく、91%以上99%以下であるのがより好ましい。これにより、例えば光導波路1に対してコア部14の光路を90度変換するミラーを形成し、光導波路1外の光学部品とコア部14とを光結合させる際、第1カバーフィルム2を透過する光路の伝搬効率が向上するため、とりわけ良好な結合効率の実現を図ることができる。
第1カバーフィルム2の波長850nmにおける光線透過率は、JIS K 7375に規定された全光線透過率の求め方に準拠して測定される。また、上記光線透過率は、平均厚さ25μmの試験片についての測定値である。
また、第1カバーフィルム2の全光線透過率は、80〜99.5%であるのが好ましく、85〜99.0%であるのがより好ましく、87〜98.5%であるのがさらに好ましい。第1カバーフィルム2の全光線透過率を前記範囲内に設定することにより、上述したように、例えば光導波路1に対してコア部14の光路を90度変換するミラーを形成し、光導波路1外の光学部品とコア部14とを光結合させる際、第1カバーフィルム2を透過する光路の伝搬効率が向上する。また、例えばコア層13中に形成されたコア部14や図示しないアライメントマークを第1カバーフィルム2越しに視認するとき、その視認性が向上するため、コア部14等を位置の基準にした各種加工や処理を、高い位置精度で行うことができる。
なお、第1カバーフィルム2の全光線透過率が前記下限値を下回る場合、第1カバーフィルム2を透過する光路の伝搬効率が低下し、光導波路1と他の光学部品との結合効率が低くなるおそれがある。一方、第1カバーフィルム2の全光線透過率が前記上限値を上回る場合、例えば第1カバーフィルム2側から入射させる方法で照明したとき、コア部14やアライメントマーク等で反射する光の光量が多くなり過ぎて、コア部14等の視認性が低下するおそれがある。このため、コア部14等を基準にした加工等の位置精度が低下するおそれがある。
第1カバーフィルム2の全光線透過率は、JIS K 7375に規定された全光線透過率の求め方に準拠して測定され、測定波長は600〜1800nmの範囲である。また、上記全光線透過率は、平均厚さ25μmの試験片についての測定値である。
このような第1カバーフィルム2を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられるが、これらの中でもポリイミド系樹脂またはポリエチレンナフタレート系樹脂(PEN)を主材料とするものが好ましく用いられる。これらの樹脂材料は、前述したように、弾性率が大きく、熱分解温度も高いものであるので、これらの樹脂材料で構成された第1カバーフィルム2は、導波部10を確実に保護し得るものとなる。また、これらの樹脂材料は、熱膨張率が小さい。このため、これらの樹脂材料が第1カバーフィルム2の構成材料として用いられたとき、光導波路1に反り等の変形が生じるのを抑制することができる。さらには、これらの樹脂材料は、耐光性が高い。このため、第1カバーフィルム2を透過する光路において長期にわたる光伝送が行われた場合でも、第1カバーフィルム2が劣化したり破れたりすることが防止される。
なお、ポリイミド系樹脂としては、特に、下記式(1)および式(2)で表される繰り返し単位を含むものが好ましく用いられる。
なお、上記式(1)および式(2)中のnは、それぞれポリイミド系樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量が2万〜40万程度となる値に設定されるのが好ましい。
また、第1カバーフィルム2の構成材料には、必要に応じて、フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、劣化防止剤、帯電防止剤等が添加されていてもよい。
このうち、フィラーを添加することにより、第1カバーフィルム2の熱膨張率を調整することができ、熱膨張率差に伴う光導波路1の反り等をより確実に抑制することができる。
第1カバーフィルム2中のフィラーの含有率は、特に限定されないが、0.05〜5質量%程度であるのが好ましく、0.1〜3質量%程度であるのがより好ましい。フィラーの含有率を前記範囲内に設定することにより、第1カバーフィルム2の熱膨張率を最適化することができる。
また、第1カバーフィルム2の厚さは、前述した光線透過率や後述するその他の物性等に応じて適宜設定されるが、平均厚さが5〜500μm程度であるのが好ましく、10〜400μm程度であるのがより好ましい。これにより、第1カバーフィルム23は、導波部10を保護するのに必要かつ十分な機械的特性を有するものとなる。また、光導波路1は、適度な可撓性を有するものとなり、湾曲または屈曲させた状態でも高い信頼性を示す光導波路1を製造することができる。
また、第1カバーフィルム2の引張強さは、200〜800MPa程度であるのが好ましく、250〜750MPa程度であるのがより好ましい。第1カバーフィルム2の引張強さを前記範囲内に設定することにより、十分な耐久性を有する光導波路1が得られる。
なお、第1カバーフィルム2の引張強さは、JIS K 7127(ASTM D882)に規定された引張特性の試験方法に準拠して測定される。また、上記引張強さは、平均厚さ25μmの試験片についての測定値である。
また、第1カバーフィルム2の引張弾性率は、3000〜12000MPa程度であるのが好ましく、4000〜11000MPa程度であるのがより好ましい。第1カバーフィルム2の引張弾性率を前記範囲内に設定することにより、十分な耐久性を有する光導波路1が得られる。
なお、第1カバーフィルム2の引張弾性率は、JIS K 7127(ASTM D882)に規定された引張特性の試験方法に準拠して測定される。また、上記引張弾性率は、平均厚さ25μmの試験片についての測定値である。
また、第1カバーフィルム2の伸び率は、30〜100%程度であるのが好ましく、35〜95%程度であるのがより好ましい。第1カバーフィルム2の伸び率を前記範囲内に設定することにより、十分な耐久性を有する光導波路1が得られる。
なお、第1カバーフィルム2の伸び率は、JIS K 7127(ASTM D882)に規定された引張特性の試験方法に準拠して測定される。また、上記伸び率は、平均厚さ25μmの試験片についての測定値である。
また、第1カバーフィルム2の吸水率は、0.7〜2.5%程度であるのが好ましく、0.9〜2.1%程度であるのがより好ましく、1.3〜1.9%程度であるのがさらに好ましい。第1カバーフィルム2の吸水率を前記範囲内に設定することにより、第1カバーフィルム2には適度な吸水性に伴う密着性が高くなり、第1カバーフィルム2を透過する光路の伝送効率がより高くなる。
なお、第1カバーフィルム2の吸水率は、JIS K 7209(ASTM D570)に規定された吸水率の試験方法に準拠して、23℃、24時間水中浸漬により測定される。
また、第1カバーフィルム2の耐屈曲回数MITの試験結果は、それぞれ10000回以上であるのが好ましく、20000回以上であるのがより好ましい。これにより、信頼性の高い光導波路1が得られる。
また、第1カバーフィルム2の熱収縮率は、0.01〜0.2%程度であるのが好ましい。これにより、反り等の変形が少ない光導波路1が得られる。
また、第1カバーフィルム2の熱膨張係数は、特に限定されないが、5〜25ppm/℃程度であるのが好ましく、7〜20ppm/℃程度であるのがより好ましい。これにより、熱変形が少ない光導波路1が得られる。
なお、第1カバーフィルム2の屈折率は、特に限定されないが、第1クラッド層11の屈折率より大きいのが好ましい。これにより、コア部14から漏洩した光が第1クラッド層11を透過した後、第1カバーフィルム2側へ移行し易くなる。その結果、この光を第1カバーフィルム2の上面21から漏洩させ易くなり、クロストークの発生をより確実に抑制することができる。また、上面21から漏洩させられなくても、第1カバーフィルム2内に光を閉じ込め易くなるので、漏洩した光が再びコア層13に戻り難くなる。その結果、クロストークの発生をさらに抑制することができる。
より具体的には、第1カバーフィルム2の屈折率をRbとし、第1クラッド層11の屈折率をRcとしたとき、Rb−Rcは0.001〜0.5であるのが好ましく、0.005〜0.3であるのがより好ましい。Rb−Rcを前記範囲内に設定することで、クロストークの発生を十分に抑制することができる。なお、Rb−Rcが前記下限値を下回ると、第1クラッド層11から第1カバーフィルム2側へと光が伝搬し難くなるため、空気中へ漏洩させたり第1カバーフィルム2中に閉じ込めたりする光量も少なくなり、クロストークの発生を十分に抑制することができなくなるおそれがある。一方、Rb−Rcが前記上限値を上回ると、屈折率差は十分に大きくなるが、それ以上の効果が期待できないばかりか、第1カバーフィルム2を構成する材料を選択するときの選択肢が狭まる。このため、構成材料によっては、第1カバーフィルム2と第1クラッド層11との間の密着性が低下し、コア部14から漏洩した光が第1カバーフィルム2に到達し難くなり、その結果、クロストークの発生を十分に抑制することができないおそれがある。
また、第1カバーフィルム2の光学膜厚をDbとし、第1クラッド層11の光学膜厚をDcとしたとき、Dc/Dbが0.1〜10であるのが好ましく、0.5〜5であるのがより好ましい。Dc/Dbを前記範囲内に設定することで、クロストークの発生を抑制する効果がより顕著になる。
また、第1カバーフィルム2と第1クラッド層11との間、および、第2カバーフィルム3と第2クラッド層12との間は、それぞれ圧着、融着、一方の層に他方の層を成膜等の方法で接着されている。
(クロストークの定量化)
なお、このような光導波路1におけるクロストークの程度は、下記のようにして定量化することができる。
図5は、図1に示す光導波路の他の例であって、12本のコア部14を有する光導波路の縦断面図である。
図5に示す光導波路1のコア層13には、前述したコア部14と同様の第1のコア部141、第2のコア部142、第3のコア部143、第4のコア部144、第5のコア部145、第6のコア部146および第7のコア部147がこの順序で並列している。この光導波路1のうち、第1のコア部141に光を入射すると、漏洩した光が第2のコア部142から第7のコア部147の6本を含むその他のコア部14に漏洩し、この漏洩した光は、これらのコア部14の出射端でそれぞれ観察することができる。
そこで、第1のコア部141に光を入射した状態で、光導波路1の出射端に沿って光検出器を走査する。そして、走査距離Xにおいて検出した光の強度YをX−Yグラフにプロットすることにより、クロストークを評価するためのデータを取得する。
図6(a)は、横軸に走査距離(Scanned distance)をとり、縦軸に規格化された光強度(Normalized intensity)をとったグラフの一例を示す。また、図6(b)は、横軸に走査距離をとり、縦軸に各コア部14で測定された光強度の基準値に対する強度比(クロストークの大きさ)をとったグラフの一例を示す。
図6(a)は、光導波路1の出射端に沿って光検出器を走査しつつ、光強度を測定して得られたグラフであり、最も高いピークが第1のコア部141から出射した光強度である。これを基準値として、第2のコア部142ないし第7のコア部147から出射した光強度を規格化し、図6(a)のグラフにプロットしている。図6(a)の矢印で指し示す極小値は、左側から順に、第2のコア部142からの光強度、第3のコア部143からの光強度、第4のコア部144からの光強度、第5のコア部145からの光強度、第6のコア部146からの光強度および第7のコア部147からの光強度を示している。
図6(b)は、図6(a)の矢印で指し示した極小値を黒丸でプロットしたグラフである。図6(b)から明らかなように、6つの黒丸はほぼ直線状に並んでおり、各コア部14のピッチとクロストークの大きさとの間に、一定の相関関係(比例関係)があることを見出すことができる。
そこで、光導波路1の出射端における第1のコア部141と第2のコア部142との離間距離をx2[μm]とし、第1のコア部141と第3のコア部143との離間距離をx3[μm]とする。
また、第1のコア部141の入射端に光が入射され、第1のコア部141の出射端から出射する光の規格化前の強度をP1とし、第2のコア部142の出射端から出射する光の規格化前の強度をP2とし、第3のコア部143の出射端から出射する光の規格化前の強度をP3とするとき、10log10(P1/P2)をy2[dB]とし、10log10(P1/P3)をy3[dB]とする。これらのy2[dB]およびy3[dB]が、第2のコア部142から出射した光の強度P2を前述した強度P1を基準値として規格化された強度比、および、第3のコア部143から出射した光の強度P3を前述した強度P1を基準値として規格化された光の強度比である。
さらに、(y3−y2)/(x3−x2)をaとする。このaは、図6(b)に見出すことができる近似直線の傾きに相当する。
本発明に係る光導波路は、このaが−0.005[dB/μm]以下であるのが好ましく、−0.01[dB/μm]以下であるのがより好ましく、−0.03[dB/μm]以下であるのがさらに好ましい。aの値は、光導波路1におけるクロストークの波及し易さを示す指標であるといえ、aの値がこのような範囲内であれば、光導波路1はクロストークの波及し易さが十分に小さいものであるといえる。換言すれば、このような光導波路1は、第1のコア部141から漏洩した光が、第2のコア部142や第3のコア部143といった他のコア部14に漏洩し難いという特徴を有するものであるといえる。このため、コア部14のピッチを十分に小さくした場合、一例としてピッチを100μm以下にした場合であっても、S/N比に悪影響を及ぼさない程度にクロストークの程度が小さいといえる。したがって、このような光導波路1は、高密度化しても高品質の光通信を実現可能なものとなる。
また、図6(b)の横軸をX軸とし、縦軸をY軸としたとき、座標(x2:y2)と座標(x3:y3)とを結ぶ直線の切片(Y軸との交点)をbとしたとき、このbは、第1のコア部141から漏洩した光の最大値を示す指標、すなわち第1のコア部141から離れるにつれて徐々に減少していくクロストークの初期値であるといえる。したがって、bの値が小さければ小さいほどクロストークの初期値が小さいといえる。
具体的には、bの値が−20[dB]以下であるのが好ましく、−25[dB]以下であるのがより好ましい。
≪第2実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第2実施形態について説明する。
図7は、本発明の光導波路の第2実施形態を示す(一部透過して示す)斜視図、図8は、図7に示す光導波路の縦断面図である。なお、図7は、光導波路の一端部のみを図示したものであり、この一端部以外の部位については図示を省略している。
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
本実施形態に係る光導波路1は、第1カバーフィルム2と導波部10との間が第1接着層4で接着されており、また、第2カバーフィルム3と導波部10との間が第2接着層5で接着されている以外、第1実施形態と同様である。
このような本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用、効果が得られる。
(接着層)
図7、8に示すように、導波部10と第1カバーフィルム2との間は、第1接着層4を介して接着されており、一方、導波部10と第2カバーフィルム3との間は、第2接着層5を介して接着されている。
第1接着層4は、いかなる材料で構成されていてもよく、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、オレフィン系接着剤、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)、各種熱硬化性樹脂を主成分とするボンディングシート等の硬化物で構成される、
これらの中でも、第1接着層4の構成材料は、環状オレフィン系樹脂、すなわち、ノルボルネン系化合物、単環の環状オレフィン、環状共役ジエンおよびビニル脂環式炭化水素から選択される少なくとも一種の化合物をモノマーとして含む(共)重合体またはかかる(共)重合体の水素化物等であるのが好ましい。これらの環状オレフィン系樹脂は、光透過性が高く、かつ、耐熱性および耐候性に優れている。このため、環状オレフィン系樹脂で構成された第1接着層4を含む光導波路1は、クロストークの発生をより確実に抑制しつつ、耐熱性および耐候性に優れたものとなる。
また、第1接着層4の平均厚さは、特に限定されないが、1〜200μm程度であるのが好ましく、3〜100μm程度であるのがより好ましく、5〜60μm程度であるのがさらに好ましい。第1接着層4の平均厚さを前記範囲内に設定することで、第1接着層4は、十分な接着性を有するとともに、コア部14から漏洩した光を第1カバーフィルム2へと十分に透過させることができるので、クロストークの発生をさらに確実に抑制することができる。
なお、第1接着層4の厚さが前記下限値を下回ると、第1接着層4や被着体の構成材料によっては、接着力が低下するおそれがある。一方、第1接着層4の厚さが前記上限値を上回ると、光導波路1の機械的特性において第1接着層4が及ぼす影響が大きくなり、光導波路1の耐折性等が低下するおそれがある。
また、第1接着層4の引張弾性率は、特に限定されないが、200〜2000MPa程度であるのが好ましく、300〜1800MPa程度であるのがより好ましく、500〜1600MPa程度であるのがさらに好ましい。第1接着層4の引張弾性率を前記範囲内に設定することにより、光導波路1において、第1接着層4の接着性と応力集中の緩和性とを両立させることができる。
なお、第1接着層4の引張弾性率は、第1接着層4の硬化物についてJIS K 7127に規定された方法に準拠して測定され、測定温度は25℃とする。また、第1接着層4の引張弾性率を測定するときは、光導波路1から第1接着層4を剥離した上で測定するようにしてもよい。
また、第1クラッド層11、コア層13および第2クラッド層12を積層してなる導波部10では、コア層13中のコア部14に入射された光が、コア部14とクラッド部との界面近傍で反射を繰り返しながら伝搬する。この反射は、上述したように、コア部14とクラッド部との屈折率差に基づくものである。
第1接着層4は、その屈折率が第1クラッド層11の屈折率よりも高くなるよう構成されているのが好ましい。これにより、コア部14から第1クラッド層11へと漏洩した光が、第1接着層4を透過して第1カバーフィルム2へと抜け易くなる。その結果、クロストークの発生をより確実に抑制することができる。
より具体的には、第1接着層4の屈折率をRbとし、第1クラッド層11の屈折率をRcとしたとき、Rb−Rcが0.001〜0.5であるのが好ましく、0.005〜0.3であるのがより好ましい。Rb−Rcを前記範囲内に設定することで、クロストークを十分に抑制することができる。
また、第1接着層4の光学膜厚をDbとし、第1クラッド層11の光学膜厚をDcとしたとき、Dc/Dbが0.1〜10であるのが好ましく、0.5〜5であるのより好ましい。Dc/Dbを前記範囲内に設定することで、クロストークの発生を抑制する効果がより顕著になる。
以上、第1接着層4について説明したが、第2接着層5の構成については特に限定されないものの、第2接着層5についても第1接着層4と同様に構成することができる。例えば、第2接着層5は、その屈折率が第2クラッド層12の屈折率よりも高くなるよう構成されているのが好ましい。このように第2接着層5の屈折率を第2クラッド層12の屈折率よりも高くすることで、クロストークの発生をさらに抑制し得る。したがって、第1接着層4のみならず、第2接着層5についても上記のように構成することで、クロストークの発生がより確実に抑制されることにより、通信速度等の通信品質をさらに高めることができる。
≪第3実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第3実施形態について説明する。
図9は、本発明の光導波路の第3実施形態を示す(一部透過して示す)斜視図、図10は、図9に示す光導波路の縦断面図である。なお、図9は、光導波路の一端部のみを図示したものであり、この一端部以外の部位については図示を省略している。
以下、第3実施形態について説明するが、以下の説明では第1、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図9、10に示す第3実施形態に係る光導波路1は、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3が省略されている以外、第1実施形態に係る光導波路1と同様である。
以上のような第3実施形態においても第1実施形態と同様の作用、効果が得られる。
<光電気混載基板>
次に、本発明の光電気混載基板の実施形態について説明する。
本実施形態に係る光電気混載基板は、内部または表面に電気配線が敷設された電気配線基板と、電気配線基板上に積層された光導波路(本発明の光導波路)1と、を備える積層体である。
このような光電気混載基板には、さらに光素子や電気素子を搭載することにより、光信号と電気信号の相互変換を行い得る光モジュールが得られる。
電気配線基板は、例えば、絶縁性基板と、その表面または内部に敷設された電気配線と、を備えている。
このうち、絶縁性基板としては、例えば、樹脂基板、セラミックス基板、複合基板等が用いられる。
また、電気配線は、絶縁性基板上に設けられたランド部と接続されている。このランド部は、光素子や電気素子を搭載するための端子として機能する。
発光素子としては、例えば、面発光レーザー(VCSEL)、発光ダイオード(LED)、有機EL素子等の発光素子が挙げられる。
また、受光素子としては、例えば、フォトダイオード(PD、APD)等の受光素子が挙げられる。
また、電気素子としては、例えば、ドライバーIC、トランスインピーダンスアンプ(TIA)、リミッティングアンプ(LA)、またはこれらの素子を複合したコンビネーションIC、CPU(中央演算処理装置)、MPU(マイクロプロセッサーユニット)、LSI、IC、RAM、ROM、コンデンサー、コイル、抵抗、ダイオード等が挙げられる。
<電子機器>
上述したような本発明の光導波路は、他の光学部品との光結合効率に優れたものである。このため、本発明の光導波路を備えることにより、内部において高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器が得られる。
本発明の光導波路を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
以上、本発明の光導波路、光電気混載基板および電子機器について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、本発明の光導波路を備える光電気混載基板や光モジュールは、光導波路と光素子との間で高い光結合効率による光接続が可能になるため、高品質な光通信を行い得るものとなる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.光導波路の製造
(実施例1)
(1)ポリオレフィン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
次に、100mLバイアルビン中にNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
このNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
(2)コア層形成用組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、重合開始剤(光酸発生剤) RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(0.025g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。なお、ポリマー#1は、活性放射線の照射により離脱性基が離脱する機能を有しており、いわゆるフォトブリーチング現象が生じるものである。
(3)クラッド層形成用組成物の製造
精製した上記ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位80mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位20mol%にそれぞれ変更したものを、前記ポリマー#1に代えて用いるようにした以外はコア層形成用組成物と同様にしてクラッド層形成用組成物を得た。
(4)第1クラッド層の作製
クラッド層形成用組成物をドクターブレードにより厚さ25μmのポリイミドフィルム上に均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去した後、UV露光機で全面に紫外線を照射し、塗布した組成物を硬化させた。これにより、厚さ10μmの無色透明な第1クラッド層および第1カバーフィルム(ポリイミドフィルム)を得た。なお、紫外線の積算光量は500mJ/cm2とした。また、第1カバーフィルムの構成は表1に示す通りである。
(5)コア層の作製
作製した第1クラッド層上にコア層樹脂組成物をドクターブレードにより均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去して被膜とした後、得られた被膜上に、ライン、スペースの直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着した。そして、フォトマスク上から平行露光機により紫外線を照射した。なお、紫外線の積算光量は1300mJ/cm2とした。
次いで、フォトマスクを取り去り、150℃のオーブンに30分間投入した。オーブンから取り出すと、被膜には鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、得られたコア部の幅および厚さはそれぞれ50μm、コア部の本数は8本とした。
(6)第2クラッド層の作製
作製したコア層上に、(4)と同様にしてクラッド層形成用樹脂組成物を塗布し、厚さ10μmの無色透明な第2クラッド層を得た。次いで、その上に、厚さ25μmのポリイミドフィルムを載せ、圧着した。これにより、第2カバーフィルムを得た。以上のようにして光導波路を得た。なお、第2カバーフィルムの構成については、第1カバーフィルムと同じ構成になるようにした。
また、8本のコア部のうち、1つを「第1のコア部」とし、第1のコア部に隣り合うコア部を「第2のコア部」とする。
(実施例2〜13)
第1カバーフィルムの構成を、表1に示すように変更した以外は、それぞれ実施例1と同様にして光導波路を得た。
(比較例1、2)
第1カバーフィルムの構成を、表1に示すように変更した以外は、それぞれ実施例1と同様にして光導波路を得た。
2.光導波路の評価
2.1 近視野像の評価
各実施例および各比較例で得られた光導波路について、入射端に全モード励振方式で光を入射し、出射端において近視野像(NFP)を撮像した。なお、入射した光は波長850nmのLEDであり、撮像倍率は100倍とした。また、近視野像の撮像には、シナジーオプトシステムズ株式会社製のNFP光学系を用いた。
そして、画像処理により、近視野像の光強度分布を求め、ピーク強度比が5%である点を結んだ等高線の高さH、幅Wおよび等高線の内側の面積Sを、それぞれ第1のコア部と第2のコア部について求めた。
また、同様に、ピーク強度比が50%である点を結んだ等高線の内側の面積S’を、それぞれ第1のコア部と第2のコア部について求めた。
2.2 クロストークの評価
各実施例および各比較例で得られた光導波路のうち、1つのコア部の入射面に対向するように、直径50μmの入射側光ファイバーを配置した。この入射側光ファイバーは、光導波路に光を入射するための発光素子に接続されており、その光軸とコア部の光軸とが一致するよう配置されている。
一方、光導波路の出射面には、これに対向するように、直径50μmの出射側光ファイバーを配置した。この出射側光ファイバーは、出射面との離間距離を一定に維持した状態で、出射面に沿って走査し得るよう構成されている。
そして、入射側光ファイバーからコア部の1つに光を入射しつつ、出射側光ファイバーを走査させた。そして、出射側光ファイバーの位置に対して受光素子で測定された出射光の強度を測定することにより、出射面の位置に対する出射光の強度分布を取得した。
次いで、前述したクロストークの定量化方法により、aの値(クロストークの波及し易さ)およびbの値(クロストークの初期値)を求めた。
そして、求めたaの値およびbの値を、それぞれ以下の評価基準にしたがって評価した。
<クロストークの波及し易さ(a)の評価基準>
A:aの値が−0.04[dB/μm]以下である
B:aの値が−0.04[dB/μm]超−0.03[dB/μm]以下である
C:aの値が−0.03[dB/μm]超−0.02[dB/μm]以下である
D:aの値が−0.02[dB/μm]超−0.01[dB/μm]以下である
E:aの値が−0.01[dB/μm]超−0.005[dB/μm]以下である
F:aの値が−0.005[dB/μm]超である
<クロストークの初期値(b)の評価基準>
A:bの値が−30[dB]以下である
B:bの値が−30[dB]超−25[dB]以下である
C:bの値が−25[dB]超−20[dB]以下である
D:bの値が−20[dB]超−15[dB]以下である
E:bの値が−15[dB]超−10[dB]以下である
F:bの値が−10[dB]超である
2.3 光結合効率の評価
2.3.1 光結合損失の大きさ
各実施例および各比較例で得られた光導波路について、社団法人 日本電子回路工業会が規定した「高分子光導波路の試験方法(JPCA−PE02−05−01S−2008)」の4.6.1挿入損失の測定方法に準拠して、光導波路の挿入損失を求めた。なお、使用した光導波路の長さは10cmとし、使用した光の波長は850nmとした。
次いで、「高分子光導波路の試験方法(JPCA−PE02−05−01S−2008)」の4.6.2.1カットバック方法に準拠して、光導波路の単位長さ当たりの光伝搬損失を求めた。
次いで、求めた「挿入損失」から、長さ10cm当たりの「光伝搬損失」を差し引くことにより、光導波路の「光結合損失」を算出した。そして、求めた光結合損失を以下の評価基準にしたがって評価した。
<光結合損失の大きさの評価基準>
A:光結合損失が非常に小さい(0.2dB未満)
B:光結合損失が小さい(0.2dB以上0.5dB未満)
C:光結合損失がやや小さい(0.5dB以上1.0dB未満)
D:光結合損失がやや大きい(1.0dB以上1.5dB未満)
E:光結合損失が大きい(1.5dB以上2dB未満)
F:光結合損失が非常に大きい(2dB以上)
2.3.2 光結合損失のバラツキ
また、隣り合うコア部同士で光結合損失がどの程度異なるかを調べることにより、光結合損失のバラツキを評価した。
<光結合損失のバラツキの評価基準>
A:光結合損失のバラツキが非常に小さい
B:光結合損失のバラツキが小さい
C:光結合損失のバラツキがやや小さい
D:光結合損失のバラツキがやや大きい
E:光結合損失のバラツキが大きい
F:光結合損失のバラツキが非常に大きい
以上の評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、各実施例で得られた光導波路は、いずれも各比較例で得られた光導波路に比べて、光結合効率が高く、かつクロストークが小さいことが認められた。また、各実施例で得られた光導波路については、隣り合うコア部同士で光結合損失のバラツキが十分に小さいことが認められた。