以下、本発明の光導波路、光電気混載基板および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の光導波路の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の光導波路の第1実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す光導波路のうち、光反射部およびコア部の輪郭を透視して示す図である。図3(a)は、図1に示す光導波路の平面図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A線断面図である。図4は、図3に示す光導波路のうち、光反射部を太線で強調して示す図である。図5、6は、それぞれ従来の光導波路を示す平面図および断面図である。なお、以下の説明では、図3(b)における下方を「下」といい、図3(b)における上方を「上」という。また、図3、4では、コア部に対してドットを付している。
図1に示す光導波路1は、帯状をなしており、光入射部と光出射部との間で光信号を伝送し、光通信を行う。
光導波路1は、図3(b)に示すように、下からクラッド層11、コア層13およびクラッド層12を積層してなる積層体10を備えている。コア層13中には、長尺状のコア部14とその側面に隣接して設けられた側面クラッド部15とが形成されている。なお、図2〜4では、クラッド層12越しにコア層13を透視したときに見えるコア部14や側面クラッド部15を図示している。
コア部14の幅および高さ(コア層13の厚さ)は、特に限定されないが、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましい。これにより、コア部14の伝送効率を高めつつコア部14の高密度化を図ることができる。すなわち、単位面積当たりに敷設可能なコア部14の数を多くすることができるので、小面積であっても大容量の光通信を行うことができる。
また、光導波路1の幅方向における屈折率分布および厚さ方向における屈折率分布は、それぞれ、屈折率が不連続的に変化したいわゆるステップインデックス(SI)型の分布であってもよく、屈折率が連続的に変化したいわゆるグレーデッドインデックス(GI)型の分布であってもよい。
また、コア部14は、平面視で直線状であっても曲線状であってもよい。さらに、コア部14は、途中で分岐していたり互いに交差していたりしてもよい。
さらに、コア部14の横断面形状は、特に限定されず、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形であってもよいが、四角形(矩形状)であることにより、安定した品質のコア部14を効率よく製造することができる。
一方、クラッド層11は、コア層13の下方に設けられ、クラッド層12は、コア層13の上方に設けられている。
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さの0.05〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.1〜1.25倍程度であるのがより好ましい。具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、それぞれ1〜200μm程度であるのが好ましく、3〜100μm程度であるのがより好ましく、5〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に厚膜化するのを防止しつつ、クラッド部としての機能が確保される。
なお、クラッド層11、12は、必要に応じて設けられればよく、省略することもできる。この場合でも、例えば外気がクラッド層として機能する。
光導波路1には、その一部を除去することによって形成された凹部170が設けられている。すなわち、光導波路1は、積層体10とそれに形成された凹部170とを備えたものである。図1に示す凹部170は、コア部14の長手方向の途中に位置している。凹部170の内側面の一部は、コア部14の光軸C1(図3(b)参照)に対して傾斜しつつ接する傾斜面171になっている。すなわち、凹部170のうち、コア層13に対応する部分(コア層13の延長に含まれる部分)の内側面が、傾斜面171である。この傾斜面171は、凹部170とコア部14との境界面といえる。
また、凹部170内は、空洞になっている。換言すれば、凹部170は、コア部14より屈折率が低い空気で満たされているといえる。したがって、凹部170のうち、コア層13に対応する部分を「空洞部170A」とすると、この空洞部170Aとコア部14との境界面では、凹部170の構成材料とコア部14の構成材料との屈折率差に基づいて光の反射が生じる。その結果、かかる境界面を面内に含んでいる傾斜面171は、コア部14の光路を変換するミラーとして機能する。すなわち、傾斜面171は、例えばコア部14内において図3(b)の右端から入射して左方に向かう光を、下に向けて反射することにより、伝搬方向を変換することができる。したがって、空洞部170Aは、「光反射部」であるといえる。なお、図4では、空洞部170A(光反射部)の輪郭を太線で示すとともに、空洞部170A(光反射部)の空間を互いに交差する斜線により示している。
凹部170の縦断面形状は、図3(b)に示すように、上底が下底より長い台形をなしている。なお、この縦断面形状は、特に限定されず、例えば三角形や平行四辺形等であってもよい。
また、傾斜面171は、図1、2に示すように、クラッド層12からコア層13を経てクラッド層11の途中に至るまでの間に連続して形成された平坦面である。また、凹部170の内側面のうち、傾斜面171に対向する位置には、別の傾斜面172が設けられている。この傾斜面172も、傾斜面171と同様、クラッド層12からコア層13を経てクラッド層11の途中に至るまでの間に連続して形成された平坦面である。
一方、凹部170の内側面のうち、コア部14の光軸とほぼ平行な2つの面は、それぞれクラッド層12の上面に対してほぼ垂直な直立面173、174である。
上述したような2つの傾斜面171、172と2つの直立面173、174とにより、凹部170の内側面が構成されている。
また、凹部170の開口の形状は、図3(a)に示すように長方形をなしている。なお、この開口の形状は、特に限定されず、例えばその他の四角形(台形、平行四辺形等を含む。)、五角形、六角形のような多角形であってもよく、長円形のような円形であってもよい。
なお、傾斜面171および傾斜面172とクラッド層12の上面とが接してなる線分(稜線)は、それぞれ凹部170の長方形をなす開口の短辺に相当する。一方、直立面173および直立面174とクラッド層12の上面とが接してなる線分(稜線)は、それぞれ凹部170の長方形をなす開口の長辺に相当する。
傾斜面171は、上述したように、コア部14の光軸に対して傾斜しつつ接しているが、傾斜面171の傾斜角度に応じて光軸の変換方向が変わることになる。このため、傾斜面171の傾斜角度は、光導波路1の外部に設けられコア部14と光学的に接続される光学部品の位置に応じて適宜設定される。
ここで、図3(a)に示すように、コア部14は、その左端が傾斜面171に接しており、傾斜面171における光の反射に基づいてコア部14の光路が変換される。傾斜面171は、前述したように、凹部170の内側面の一部である。凹部170近傍では、空洞(あるいは低屈折率材料)とコア部14や側面クラッド部15とが隣接しているため、応力が発生したとき、応力の分布が複雑になり易い。そして、光導波路1が置かれた環境の温度が変化した場合には、凹部170近傍の応力分布がより変化し易くなり、その結果、コア部14において大きな応力変化が生じるおそれがある。このような応力変化は、特に傾斜面171における光の反射効率に悪影響を及ぼすことが懸念される。
そこで、本発明者は、凹部170が積層体10に及ぼす機械的な影響について鋭意検討を重ねた。そして、凹部170のうち、特にコア層13に対応する部分の空洞部170Aと、コア部14の端部との位置関係を最適化することにより、空洞部170Aが積層体10に及ぼす機械的な影響を低減させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、光導波路1では、周囲の温度が変化した場合に、図4に太線で示す空洞部170Aの輪郭近傍において特に応力分布が変化し易い。その結果、空洞部170Aの輪郭近傍におけるこの応力分布の変化がコア部14に波及し、傾斜面171における光の反射効率の低下といった不具合を招くおそれがある。
そこで、本発明では、図3(a)に示すように、光導波路1を平面視したとき(コア層13をその厚さ方向から平面視したとき)、コア部14の端部141のうち、コア部14の長手方向(図3では左右方向)の端141aと、短手方向(図3(a)では上下方向)の端141bとが、それぞれ空洞部170A(光反射部)の内側に位置するようにしている。このようにすれば、図4に太線で示す空洞部170Aの輪郭とコア部14の端部141との距離を、比較的長く確保することができる。上述したように、空洞部170Aの輪郭近傍では特に応力分布が変化し易く、しかも、コア部14の端部141は傾斜面171に隣接することになるため、凹部170の輪郭とコア部14の端部141との距離を長くとることにより、応力分布の変化が側面クラッド部15等を伝わってコア部14の端部141に波及するのを抑制することができる。その結果、傾斜面171における光の反射効率の低下を抑制することができる。
なお、コア部14の長手方向とは、コア部14が延在する方向のことを指し、短手方向とは、長手方向に直交する方向のことを指す。
ここで、コア部14の端部141とは、コア部14の長手方向における一方の端およびその近傍の部分のことをいう。具体的には、図3に示すコア部14の長手方向の端141aから、コア部14の長手方向に沿って長さL1の範囲を指す。コア部14の端部141とは、コア部14の長手方向の端141aから、コア部14の厚さtの距離の部分と定義される。この端部141は、傾斜面171に隣接する部分に近いことから、この部分に応力分布の変化が及ぶと、傾斜面171における反射特性に大きく影響してしまう。したがって、本発明によれば、コア部14の端部141に生じる応力変化を抑えることにより、傾斜面171における反射特性の低下を最小限に抑えられる。
なお、本発明では、上述したように、光導波路1を平面視したとき、コア部14の端部141における長手方向の端141aと短手方向の端141bとが、それぞれ空洞部170Aの内側にあればよいが、コア部14と空洞部170Aとがこのような位置関係にあるとき、傾斜面171にはコア部14が露出することになる。したがって、傾斜面171は、側面クラッド部15に比べて屈折率が高いコア部14と空気とが隣接する境界面を含むことになるので、十分な反射特性が確保される。
よって、本発明によれば、温度が変化した場合等に傾斜面171における反射特性が低下するのを抑制するとともに、傾斜面171において十分な屈折率差を確保してそれによる高い反射特性を得ることができる。その結果、光導波路1では、外部の光学部品と光学的に接続する際、高い光結合効率で接続することが可能になる。
また、形成方法にもよるが、側面クラッド部15は、コア部14に比べて屈折率が低い反面、機械的強度がコア部14に比べて高いことが多い。このため、コア部14の端部141を空洞部170Aの内側に設けることは、機械的強度が高い側面クラッド部15に空洞部170Aの輪郭を対応させることになる。したがって、応力変化による耐性を高めるという観点からも、前述した長手方向の端141aおよび短手方向の端141bを空洞部170Aの内側に位置させることは有用である。
なお、光導波路を平面視したとき、コア部の端部における長手方向の端と短手方向の端とが、それぞれ空洞部の内側にない場合というのは、例えば、図5、6に示すような場合である。
このうち、図5に示す光導波路9は、空洞部970Aとコア部94の端部941との位置関係が異なる以外、図3に示す光導波路1と同様である。この光導波路9は、図5(a)に示すように、コア部94の端部941のうち、コア部94の長手方向の端941aと、短手方向の端941bとが、それぞれ空洞部970A(光反射部)の外側(左側)に位置している。このような位置関係であると、コア部94は、傾斜面971だけでなく傾斜面972にも露出することとなる。その結果、光導波路9を平面視した場合に空洞部970Aの輪郭がコア部94と交差する長さは、光導波路1を平面視した場合に空洞部170Aがコア部14と交差する長さの2倍になる。そして、傾斜面972側に発生する応力変化は、側面クラッド部15を介して傾斜面971側にも波及し、傾斜面971における光の反射効率の低下を招くおそれがある。
一方、図6に示す光導波路9も、空洞部970Aとコア部94の端部941との位置関係が異なる以外、図3に示す光導波路1と同様である。この光導波路9では、図6(a)に示すように、コア部94の端部941のうち、コア部94の長手方向の端941aと、短手方向の端941bとが、それぞれ空洞部970A(光反射部)の外側(右側)に位置している。このような位置関係であると、コア部94は、傾斜面971に露出しないこととなる。その結果、傾斜面971では、コア部94に比べて屈折率が低い側面クラッド部95と空気とが隣接する境界面を含むことになるので、図1に示す光導波路1に比べて反射特性は相対的に低い。
以上のことから、本発明によれば、応力変化に伴う傾斜面171における反射特性の低下を抑制し、かつ、傾斜面171における十分な屈折率差に基づいて高い反射特性を得ることができるので、外部の光学部品との間で高い光結合効率での接続を可能にする。
なお、本発明では、光導波路1を平面視したとき、コア部14の端部141における長手方向の端141aと短手方向の端141bとが、それぞれ空洞部170Aの内側にあればよいが、どの程度内側に位置しているか等、端部141と空洞部170Aとの位置関係の最適化についても考慮されているのが望ましい。
具体的には、コア部14の長手方向において、コア部14の長手方向の端141aと空洞部170Aの外縁(輪郭)との最短距離をL2(図3参照)とし、空洞部170Aの最大長さをL3(図3参照)としたとき、最短距離L2は最大長さL3の5〜90%程度であるのが好ましく、7〜85%程度であるのがより好ましく、10〜70%程度であるのがさらに好ましい。最大長さL3に対する最短距離L2の割合をこのように設定することで、少なくとも傾斜面172側における応力変化の影響がコア部14の端部141に波及し難くなる。このため、傾斜面171における反射特性の低下をより確実に抑制することができる。なお、最短距離L2が前記下限値を下回ると、各部の寸法によっては、上述した効果が限定的になってしまうおそれがあり、一方、最短距離L2が前記上限値を上回ると、各部の寸法によっては、傾斜面171に十分な空間が確保できないおそれがある。
なお、最短距離L2とは、光導波路1を平面視したとき、コア部14の長手方向において、コア部14の端部141の先端側(図3では端部141から左側)に位置する空洞部170Aの外縁と端部141の長手方向の端141aとの最短距離のことである。また、最大長さL3とは、光導波路1を平面視したとき、コア部14の長手方向において空洞部170Aがとり得る最も長い部分の長さのことである。
また、光導波路1の平面視において、端部141における短手方向の端141bと空洞部170Aの外縁(輪郭)との最短距離をL4(図3(a)参照)とする。ここで、前述した最短距離L2は、最短距離L4よりも長いことが好ましい。最短距離L2と最短距離L4とをこのように設定することで、傾斜面171における応力変化を、より反射特性に影響し難いパターンの変化にすることができる。すなわち、光導波路1に応力変化が生じる場合、通常、短手方向よりも長手方向における伸縮に基づく応力変化がより支配的になるため、最短距離L2と最短距離L4との大小関係を前述のように規定することで、仮に傾斜面171近傍において応力変化が生じたとしても、それが反射特性に及ぼす影響をより小さく抑えることができる。その結果、光導波路1と外部の光学部品との間の光結合効率が著しく低下するのを抑制することができる。また、コア部14の短手方向における空洞部170Aの長さ、すなわち空洞部170Aの幅が抑えられるので、例えば、後述するようにコア層13中に複数のコア部14を並列に形成する場合でも、空洞部170Aの配置密度を上げることができ、コア部14の高密度化に寄与することができる。
なお、最短距離L4とは、光導波路1を平面視したとき、コア部14の短手方向において、空洞部170Aの外縁と端部141の短手方向の端141bとの最短距離のことである。
また、最短距離L4は、最短距離L2の5〜300%程度であるのが好ましく、7〜200%程度であるのがより好ましく、10〜100%程度であるのがさらに好ましい。最短距離L2に対する最短距離L4の割合をこのように設定することで、傾斜面171の反射特性低下の抑制とコア部14の高密度化とを両立させることができる。
さらに、光導波路1の平面視において、コア部14の端部141における短手方向の長さ(端部141の幅)をwとすると、端部141における短手方向の端141bと空洞部170Aの外縁(輪郭)との最短距離L4は、端部141の幅wの5〜200%程度であるのが好ましく、10〜100%程度であるのがより好ましい。
なお、凹部170内には、必要に応じて、コア部14より屈折率が低い材料(低屈折率材料)が充填されていてもよい。この場合でも、傾斜面171では、凹部170の構成材料とコア部14の構成材料との屈折率差に基づいて光が反射する。また、低屈折率材料が固体である場合、凹部170内に異物が侵入するのを防止したり、光導波路1の外部環境の影響が直接凹部170近傍に及び難くすることができるので、光導波路1の耐候性を高めることができる。
低屈折率材料は、コア部14の屈折率に応じて適宜選択され、何ら限定されないが、例えば、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂のような各種樹脂材料等が挙げられる。低屈折率材料の屈折率は、コア部14の屈折率より低ければ低いほどよく、0.01以上低いことが好ましい。なお、本明細書では、低屈折率材料に空気等の気体も含むものとする。
また、傾斜面171には、必要に応じて、光反射性を有する材料、例えば金属光沢を有する金属材料等が成膜されていてもよい。この場合は、凹部170内に各種材料が充填されていてもよく、その材料の屈折率等は何ら限定されない。
金属材料としては、例えば、アルミニウム、銀、ニッケルのような金属の単体または化合物等が挙げられる。
なお、凹部170内が空洞であることにより、凹部170内を何らかの固体材料で充填する場合に比べて、傾斜面171において隣接する材料同士の屈折率差を最大化することができるので、傾斜面171における反射効率を特に高めることができる。
また、傾斜面171は、前述したようにコア部14と光学的に接続される光学部品の位置に応じて適宜設定されるが、コア層13の下面を基準面としたとき、基準面と傾斜面171とがなす角度(鋭角側)は、30〜60°程度であるのが好ましく、40〜50°程度であるのがより好ましい。傾斜角度を前記範囲内に設定することにより、傾斜面171においてコア部14の光路を効率よく変換し、光路変換に伴う損失を抑制することができる。
また、基準面と傾斜面172とがなす角度(鋭角側)は、特に限定されないが、20〜90°程度であるのが好ましく、傾斜面171の傾斜角度と同じにするのがより好ましい。これにより、凹部170近傍に応力が発生したとき、応力が偏在し難くなり、応力集中による不具合の発生を特に抑制することができる。なお、基準面と傾斜面171、172とがなす角度(鋭角側)とは、基準面と傾斜面171、172とがなす角度のうち、凹部170側とは反対側における角度のことをいう。
一方、基準面と直立面173、174とがなす角度(鋭角側)は、それぞれ好ましくは60〜90°程度とされ、より好ましくは70〜90°程度とされ、さらに好ましくは80〜90°程度とされる。基準面と直立面173、174とがなす角度を前記範囲内に設定することにより、特にクラッド層11とコア層13との界面にかかる応力を抑制することができる。なお、各図では、ほぼ90°として図示している。また、基準面と直立面173、174とがなす角度(鋭角側)とは、基準面と直立面173、174とがなす角度のうち、凹部170側とは反対側における角度のことをいう。
また、直立面173、174を備える凹部170は、その占める幅が最小限に抑えられるので、複数の凹部170を隣り合わせて形成したとき、その間隔を最小化することができる。したがって、基準面と直立面173、174とがなす角度を前記範囲内に収めることは、狭いピッチで併設されたコア部14に対しても凹部170を高密度に配置し得るという点で有用である。また、基準面と直立面173、174とがなす角度を前記範囲内に収めることにより、直立面173、174近傍において各層を構成する材料の物性差による応力集中が特に抑えられるため、光導波路1の信頼性を特に高めることができる。
なお、凹部170の最大深さは、積層体10の厚さから適宜設定されるものであり、特に限定されないが、光導波路1の機械的強度や可撓性といった観点から、好ましくは1〜500μm程度とされ、より好ましくは5〜400μm程度とされる。そして、凹部170は、少なくともコア層13に達していればよく、クラッド層11には達していなくてもよい。
また、コア部14のピッチは、3〜500μm程度であるのが好ましく、5〜300μm程度であるのがより好ましい。これにより、コア部14同士の間でのクロストークを十分に抑えつつ、コア部14が高密度に集積された光導波路1が得られる。
上述したようなコア層13およびクラッド層11、12の構成材料(主材料)は、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料等を用いることができる。なお、環状オレフィン系樹脂としては、例えば、特開2010−090328号公報に記載されたものが用いられる。
また、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料であってもよい。これらは、比較的加工が容易であるため、凹部170が形成されるコア層13やクラッド層11、12の構成材料として好適である。
なお、上述した端部141は、コア部14の長手方向の少なくとも一方の端部に適用されていればよく、双方の端部に適用されていてもよい。また、上述した端部141がコア部14の一方の端部に適用され、他方の端部にはコネクター等が装着されコネクターを介して外部の光学部品に接続されていてもよい。
また、光導波路1には、複数のコア部14と複数の凹部170とが形成されていてもよい。コア部14の本数は、特に限定されないが、例えば1〜100本程度とされる。
なお、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを形成する方法としては、例えば、露光により屈折率が変化する屈折率変調能(例えばフォトブリーチングやモノマーディフュージョンによる屈折率変調)を有する組成物を用い、この組成物からなる膜に所望のパターンで露光処理を施す方法等が挙げられる。なお、フォトブリーチングとは、エネルギー付与に伴って分子中の結合が切れることにより屈折率が変化する現象であり、モノマーディフュージョンとは、互いに屈折率が異なるポリマーとモノマーとを用い、エネルギー付与に伴って、ポリマー中に分散したモノマーを偏在させて屈折率の分布を形成する現象のことである。
≪第2実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第2実施形態について説明する。
図7は、本発明の光導波路の第2実施形態を示す斜視図であって、光反射部およびコア部の輪郭を透視して示す図である。図8(a)は、図7に示す光導波路の平面図であり、図8(b)は、図8(a)のA−A線断面図である。なお、以下の説明では、図8(b)における下方を「下」といい、図8(b)における上方を「上」という。また、図8では、コア部に対してドットを付している。
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
第2実施形態に係る光導波路1は、コア部14の平面視形状が異なる以外、第1実施形態に係る光導波路1と同様である。
すなわち、図7、8に示す光導波路1は、平面視においてコア部14の端部141の幅が、コア部14の長手方向において端部141に隣接する部位の幅よりも広くなっている。ここで、図7、8に示す端部141を「広幅部145」とし、この広幅部145に隣接する部位を、広幅部145より相対的に幅が狭い部位であることから「狭幅部146」とする。換言すれば、本実施形態では、コア部14の端部141の全部が広幅部145に対応している。なお、図8(a)では、クラッド層12を透過するように図示している。
このような光導波路1では、広幅部145(端部141)が、コア部14に光を入射する入射部またはコア部14からの光が出射する出射部として機能する。一方、狭幅部146は、コア部14に入射した光が伝搬する機能を有する。本実施形態のように、コア部14に対して、相対的に幅が広い広幅部145と相対的に幅が狭い狭幅部146とを設けることにより、コア部14に対する光の入出射効率と伝送効率とを両立させることができる。すなわち、光が入射する広幅部145では、広い入射面を有するので、拡散する光であっても受光し易く、受光漏れを減少させ易い。また、広幅部145に隣接するように狭幅部146が設けられているため、広幅部145から出射する光についても、それほど拡散することなく出射し、外部の光学部品に対する光結合効率の著しい低下を抑えることができる。一方、狭幅部146では、伝搬角が小さくなるため、いわゆる高次モードの発生を抑えることができ、漏れ光が減少させ易い。このため、より長距離での伝送効率を高めることができる。したがって、広幅部145と狭幅部146とを備えることで、外部の光学部品に対する光結合効率と伝送効率とが両立した光導波路1が得られる。
また、広幅部145の幅(短手方向の長さ)は、狭幅部146の幅の1.01〜5倍程度であるのが好ましく、1.05〜3倍程度であるのがより好ましい。これにより、広幅部145の幅と狭幅部146の幅とのバランスが最適化されるため、広幅部145における光結合効率を維持しつつ、狭幅部146における伝送効率の低下を抑えることができる。また、光導波路1にコア部14を複数形成する場合に、その形成密度が低下し難くなる。したがって、広幅部145の幅が前記下限値を下回ると、広幅部145を設ける意味が薄れてしまうので、光結合効率の向上が不十分になるおそれがある。一方、広幅部145の幅が前記上限値を上回ると、狭幅部146の幅によっては、広幅部145と狭幅部146との間で幅の差が大きくなり過ぎて伝送損失が発生し易くなるとともに、広幅部145の幅が広くなり過ぎて、コア部14の形成可能な密度が低下するおそれがある。
なお、本実施形態においても、光導波路1を平面視したとき、コア部14の端部141のうち、コア部14の長手方向の端141aと、短手方向の端141bとが、それぞれ空洞部170Aの内側に位置している。これにより、光導波路1の周囲の温度が変化した場合であっても、傾斜面171における光の反射効率の低下を抑制し、外部の光学部品に対する光結合効率の低下をより確実に抑えることができる。
その他、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用、効果が得られる。
≪第3実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第3実施形態について説明する。
図9(a)は、本発明の光導波路の第3実施形態を示す平面図であり、図9(b)は、図9(a)のA−A線断面図である。なお、以下の説明では、図9(b)における下方を「下」といい、図9(b)における上方を「上」という。また、図9では、コア部に対してドットを付している。
以下、第3実施形態について説明するが、以下の説明では、第1、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
第3実施形態に係る光導波路1は、凹部170の平面視形状が異なる以外、第1、第2実施形態に係る光導波路1と同様である。
すなわち、図9に示す光導波路1は、平面視において凹部170の開口の形状が丸みを帯びている。より具体的には、図9に示す凹部170の開口は、角部が丸みを帯びた長方形をなしている。凹部170の開口がこのような丸みを帯びた形状をなしていることにより、光導波路1の周囲の温度が変化した場合に、開口近傍における応力分布の変化がより抑えられる。このため、コア部14に波及する応力分布の変化量の低減が図られ、傾斜面171における光の反射効率の低下をより小さく抑えることができる。
また、図9に示す凹部170では、クラッド層12とコア層13との界面における凹部170の断面形状、コア層13とクラッド層11との界面における凹部170の断面形状、および、凹部170の底面の形状も、それぞれ丸みを帯びた形状であるのが好ましい。これにより、各界面や底面においても、応力分布の変化をより抑えることができる。その結果、傾斜面171における光の反射効率の低下をより小さく抑えることができる。
なお、凹部170の開口形状、断面形状および底面形状の最小曲率半径は、それぞれ1〜500μm程度であるのが好ましく、3〜400μm程度であるのがより好ましく、10〜350μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、傾斜面171における光の反射効率の低下をより十分に抑えることができる。また、開口形状等の最小曲率半径が前記上限値を上回った場合には、開口等の面積が広くなり過ぎて、複数の凹部170を形成する場合の形成密度が低下するおそれがある。
また、第3実施形態においても、第1、第2実施形態と同様の作用、効果が得られる。
≪第4実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第4実施形態について説明する。
図10は、本発明の光導波路の第4実施形態を示す平面図である。なお、図10では、コア部に対してドットを付している。
以下、第4実施形態について説明するが、以下の説明では、第1〜第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
第4実施形態に係る光導波路1は、コア部14の本数と凹部170の平面視形状とが異なる以外、第1〜第3実施形態に係る光導波路1と同様である。
すなわち、図10に示す光導波路1は、2本のコア部14を備えている。各コア部14は、広幅部145と狭幅部146とを備えている。また、コア部14の端部141と広幅部145とが一致している。
一方、光導波路1は、その平面視において、2本のコア部14の端部141が、いずれも図10に示す空洞部170Aの内側に位置するように構成されている。すなわち、1つの空洞部170Aが、複数のコア部14の端部141に跨るように設けられている。そして、各コア部14の端部141のうち、コア部14の長手方向の端141aと、短手方向の端141bとが、それぞれ空洞部170A(光反射部)の内側に位置している。これにより、光導波路1の周囲の温度が変化した場合であっても、傾斜面171における光の反射効率の低下を抑制し、外部の光学部品に対する光結合効率の低下をより確実に抑えることができる。
また、本実施形態では、1つの空洞部170Aにおいて、複数のコア部14の光路変換を担っている。このため、傾斜面171の傾斜角度や表面粗さ等が、コア部14ごとで揃い易くなり、コア部14ごとの光路変換角度のバラツキが抑えられる。その結果、各コア部14における外部の光学部品に対する光結合効率の均一化を図り、光導波路1の信頼性をより高めることができる。また、空洞部170Aの形成作業の回数が削減されるので、光導波路1の製造工程の簡略化を図ることができる。
なお、1つの空洞部170Aが跨るコア部14の本数は、特に限定されず、3本以上であってもよい。
また、第4実施形態においても、第1〜第3実施形態と同様の作用、効果が得られる。
≪第5実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第5実施形態について説明する。
図11は、本発明の光導波路の第5実施形態を示す平面図である。なお、図11では、コア部に対してドットを付している。
以下、第5実施形態について説明するが、以下の説明では、第1〜第4実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
第5実施形態に係る光導波路1は、コア部14の端部141(広幅部145)の平面視形状が異なる以外、第4実施形態に係る光導波路1と同様である。
すなわち、図11に示す光導波路1も、図10に示す光導波路1と同様、2本のコア部14を備えているものの、この2本のコア部14の端部141同士が繋がっている点で相違している。これにより、第2実施形態に比べて、この端部141(広幅部145)の幅をより広げることができる。その結果、広幅部145における入出射効率が高くなり、外部の光学部品に対する光結合効率をより高めることができる。
また、前記各実施形態と同様、端部141(広幅部145)が、空洞部170Aの内側に位置している。これにより、端部141のうち、コア部14の長手方向の端141aと、短手方向の端141bとが、それぞれ空洞部170Aの内側に位置している。これにより、光導波路1の周囲の温度が変化した場合であっても、傾斜面171における光の反射効率の低下を抑制し、外部の光学部品に対する光結合効率の低下をより確実に抑えることができる。
さらに、傾斜面171の多くの領域がコア部14の断面で占められることになる。このため、例えば機械加工やレーザー加工等により凹部170を形成する場合に、構成材料の違いによる加工レートのバラツキが発生し難くなる。その結果、より面精度の高い傾斜面171が得られることとなり、傾斜面171における光の反射効率を高めることに寄与する。
なお、第5実施形態においても、第1〜第4実施形態と同様の作用、効果が得られる。
≪第6実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第6実施形態について説明する。
図12は、本発明の光導波路の第6実施形態を示す平面図である。なお、図12では、コア部に対してドットを付している。
以下、第6実施形態について説明するが、以下の説明では、第1〜第5実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
第6実施形態に係る光導波路1は、コア部14の広幅部145の平面視形状が異なる以外、第3実施形態に係る光導波路1と同様である。
すなわち、図12に示す広幅部145は、図9に示す広幅部145に比べて、コア部14の長手方向における長さが長くなっている。このため、光導波路1の平面視において、広幅部145の一部は空洞部170Aの輪郭から外側にはみ出すことになっている。しかしながら、この場合であっても、コア部14の端部141は、空洞部170Aの内側に位置している。すなわち、本実施形態では、端部141が広幅部145の一部と重なっており、端部141(広幅部145の一部)は空洞部170Aの内側に位置しているものの、広幅部145の他部は空洞部170Aの外側にはみ出している。このため、本実施形態においても、第3実施形態と同様の作用、効果が得られる。
≪第7実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第7実施形態について説明する。
図13は、本発明の光導波路の第7実施形態を示す平面図である。なお、図13では、コア部に対してドットを付している。
以下、第7実施形態について説明するが、以下の説明では、第1〜第6実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
第7実施形態に係る光導波路1は、凹部170の幅(短手方向の長さ)が、凹部170の開口から底面に向かうにつれて徐々に短くなるように構成されている。これに対し、第3実施形態に係る光導波路1は、凹部170の幅が、凹部170の開口から底面に向かうにつれて一定になるように構成されている。
すなわち、図9に示す凹部170では、その内側面が傾斜面171、172と直立面173、174とに分かれているのに対し、図12に示す凹部170では、その内側面が全て傾斜面になっており、図9における直立面173、174に対応して、傾斜面173’、174’が設けられている。このような図12に示す凹部170は、比較的形成し易いことから、製造効率の観点から有用である。
なお、このような第7実施形態においても、第1〜第6実施形態と同様の作用、効果が得られる。
≪第8実施形態≫
次に、本発明の光導波路の第8実施形態について説明する。
図14(a)は、本発明の光導波路の第8実施形態を示す平面図であり、図14(b)は、図14(a)のA−A線断面図である。なお、図14では、コア部に対してドットを付している。
以下、第8実施形態について説明するが、以下の説明では、第1〜第7実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
前述した第3実施形態に係る光導波路1(図9)では、平面視において傾斜面171と対向するように傾斜面172が設けられているのに対し、第8実施形態に係る光導波路1(図14)では、傾斜面172に対応して、直立面172’が設けられている。このような図14に示す凹部170は、凹部170を形成する際に、加工量が少なくて済むことから、製造効率の観点から有用である。
なお、このような第8実施形態においても、第1〜第7実施形態と同様の作用、効果が得られる。
<光電気混載基板>
次に、本発明の光電気混載基板の実施形態について説明する。
図15は、本発明の光電気混載基板の実施形態を示す縦断面図である。
図15に示す光電気混載基板100は、光導波路1と、その上方に積層された電気配線基板5と、これらの間に介挿され両者を接着する接着層90と、を有している。以下、光電気混載基板100の各部の構成について順次説明する。
なお、図15に示す光導波路1は、積層体10に加え、積層体10の下方に設けられた支持フィルム2と、積層体10の上方に設けられたカバーフィルム3と、を備えている。これらのフィルムを設けることで、積層体10を外部環境や外力から保護することができ、光導波路1の信頼性をより高めることができる。
支持フィルム2およびカバーフィルム3の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料が挙げられる。
また、支持フィルム2およびカバーフィルム3の平均厚さは、特に限定されないが、5〜500μm程度であるのが好ましく、10〜400μm程度であるのがより好ましい。これにより、外力や外部環境から積層体10をより確実に保護することができる。
図15に示す電気配線基板5は、コア基板51とその両面に積層されたビルドアップ層52とを備えた多層基板50と、この多層基板50を貫通する貫通孔53と、を有している。
コア基板51の構成材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、各種ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられる。この他、紙、ガラス布、樹脂フィルム等を基材とし、この基材に、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂材料を含浸させたもの、具体的には、ガラス布・エポキシ銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板等のコンポジット銅張積層板に使用される絶縁性基板の他、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板等の耐熱・熱可塑性の有機系リジッド基板や、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板等のセラミックス系リジッド基板等であってもよい。
また、コア基板51には、その両面に積層されたビルドアップ層52同士を電気的に接続する貫通配線が形成されている。
一方、ビルドアップ層52は、絶縁層521と導体層522とを交互に積層することにより形成される。導体層522にはパターニングが施され、電気配線が形成されている。また、絶縁層521には、その両面に設けられた電気配線同士を接続する貫通配線が形成されている。
これらの導体層522および貫通配線は、それぞれ、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、亜鉛、錫、金、銀のような金属単体、またはこれらの金属元素を含む合金等の導電性材料で構成される。
また、絶縁層521は、酸化ケイ素、窒化ケイ素のようなケイ素化合物、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂のような樹脂材料等により構成される。
このようにして、ビルドアップ層52内には、面方向のみでなく厚さ方向にも広がる電気回路を構築することができ、電気回路の高密度化を図ることができる。
なお、このような多層基板50は、いかなる工法で形成されたものであってもよいが、一例としてアディティブ法、セミアディティブ法、サブトラクティブ法等の各種ビルドアップ工法により形成される。
また、本発明の光電気混載基板が備える電気配線基板は、上述した電気配線基板5のような多層基板を含むものに限定されず、例えば多層基板を単層の電気配線基板(リジッド基板)で代替したものであってもよく、ポリイミド基板、ポリエステル基板、アラミドフィルム基板のような各種フレキシブル基板で代替したものであってもよい。また、多層基板50は、コア基板51を含まないコアレスの多層基板で代替することもできる。なお、フレキシブル基板の場合、それ自体が十分な光透過性を有しているので、光スルーホールとして機能する貫通孔53は形成されていなくてもよい。
また、図15に示す電気配線基板5は、多層基板50の上面に設けられたソルダーレジスト層54を有している。なお、ソルダーレジスト層54のうち、導体層522との接続部には開口が形成されている。
ソルダーレジスト層54は、各種樹脂材料で構成され、必要に応じて無機フィラーを含む。ソルダーレジスト層54の平均厚さは、特に限定されないが10〜100μm程度であるのが好ましく、20〜50μm程度であるのがより好ましい。
以上のような光導波路1と電気配線基板5とが接着層90を介して接着されることにより、光電気混載基板100が得られる。
また、この光電気混載基板100に光素子6を搭載することにより、光モジュール1000が得られる。図15に示す光素子6は、素子本体60と、素子本体60の下面に設けられた受発光部61および端子62と、端子62から下方に突出するよう設けられたバンプ63と、を有している。なお、受発光部とは、受光部または発光部、あるいはその双方の機能を有するものを指す。
光素子6は、受発光部61の光軸とコア部14の光軸とが傾斜面171を介して一致するよう配置されている。これにより、光導波路1と光素子6とが光学的に接続され、光導波路1を伝搬する光信号を光素子6に受光させたり、光素子6から出射された光信号を光導波路1に入射したりすることができる。
また、バンプ63は、導体層522に接続されている。これにより、光素子6が機械的に固定されるとともに、光素子6の端子62と導体層522とが電気的に接続され、光素子6の動作を電気配線基板5側から制御し得るよう構成されている。
光素子6としては、例えば、面発光レーザー(VCSEL)、発光ダイオード(LED)、有機EL素子等の発光素子、フォトダイオード(PD、APD)等の受光素子が挙げられる。
また、図15に示す光電気混載基板100には、図示しない電気素子が搭載されていてもよい。電気素子としては、例えば、IC、LSI、RAM、ROM、コンデンサー、コイル、抵抗、ダイオード等が挙げられる。
なお、接着層90は、光路上にあるため、透光性を有しているものが好ましい。接着層90の構成材料としては、例えば、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
このような光電気混載基板100および光モジュール1000では、傾斜面171を介して受発光部61とコア部14とを光学的に接続する際、光結合効率を高めることができる。これにより、光通信におけるS/N比の低下を抑制し、高品質な光通信を実現することができる。したがって、光電気混載基板100および光モジュール1000は、信頼性の高いものとなる。
<電子機器>
上述したような本発明に係る光導波路は、外部の光学部品に対する光結合効率が高いものとなる。このため、本発明の光導波路を備えることにより、高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器)が得られる。
本発明の光導波路を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が図られ、また、電子機器の低コスト化に貢献することができる。
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
以上、本発明の光導波路、光電気混載基板および電子機器について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、前記各実施形態に係る光導波路および光電気混載基板には、任意の構成物が付加されていてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.光導波路の製造
(実施例1)
(1)ノルボルネン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
次に、100mLバイアルビン中にNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
このNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
(2)コア層形成用組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、重合開始剤(光酸発生剤) RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(0.025g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。
(3)クラッド層形成用組成物の製造
精製した上記ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位80mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位20mol%にそれぞれ変更したものを、前記ポリマー#1に代えて用いるようにした以外はコア層形成用組成物と同様にしてクラッド層形成用組成物を得た。
(4)第1クラッド層の作製
離型層を形成した基材フィルム上に、(3)で製造したクラッド層形成用組成物をドクターブレードにより均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去した後、UV露光機で全面に紫外線を照射し、塗布した組成物を硬化させた。これにより、厚さ10μmの無色透明な第1クラッド層を得た。なお、紫外線の積算光量は500mJ/cm2とした。
(5)コア層の作製
離型層を形成した基材フィルム上に、コア層樹脂組成物をドクターブレードにより均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去して被膜とした後、得られた被膜上に、ライン、スペースの直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着した。そして、フォトマスク上から平行露光機により紫外線を照射した。なお、紫外線の積算光量は1300mJ/cm2とした。
次いで、フォトマスクを取り去り、150℃のオーブンに30分間投入した。オーブンから取り出すと、被膜には鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、得られたコア部の幅および厚さはそれぞれ50μm、コア部の本数は8本とした。
(6)第2クラッド層の作製
離型層を形成した基材フィルム上に、(4)と同様にしてクラッド層形成用組成物を塗布し、厚さ10μmの無色透明な第2クラッド層を得た。
(7)積層体の製造
次いで、第1クラッド層上にコア層を重ねた。そして、コア層に付いていた基材フィルムを剥離した。
次いで、コア層上に第2クラッド層を重ねた。そして、第2クラッド層に付いていた基材フィルムを剥離した。
その後、第1クラッド層、コア層および第2クラッド層を加圧し、各層を互いに圧着した。これにより、積層体を得た。
(8)凹部の形成
次に、レーザー加工によりコア部の両端部にそれぞれ空洞部(光反射部)を形成した。これにより、全長10cmの光導波路を得た。なお、形成した空洞部の形状は、図1〜3に示す通りである。また、空洞部とコア部との位置関係に基づく各部の寸法は、以下に示す通りである。
<空洞部とコア部との位置関係に基づく各部の寸法>
・長さL1 : 50μm
・最短距離L2:100μm
・最大長さL3:150μm
・最短距離L4: 20μm
(実施例2)
コア層の作製に際し、紫外線を照射するのに用いるフォトマスクを変更し、図7、8に示す形状のコア部を形成するようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。なお、コア部の端部の寸法は、広幅部の長さ50μm、広幅部の幅70μm、狭幅部の幅50μmとした。
(実施例3)
空洞部の作製に際し、レーザー加工用マスクの形状を変更し、図9に示す形状の空洞部を形成するようにした以外は、実施例2と同様にして光導波路を得た。
(実施例4〜8)
コア部の寸法、および、空洞部とコア部との位置関係に基づく各部の寸法が表1、2に示す値になるようにした以外は、それぞれ実施例3と同様にして光導波路を得た。
(実施例9)
凹部にシリコーン材料を充填するようにした以外は、実施例3と同様にして光導波路を得た。なお、シリコーン材料には、コア部より屈折率が約0.1小さいものを用いた。
(実施例10)
(1)クラッド層形成用組成物の製造
ダイセル化学工業(株)製の脂環式エポキシ樹脂、セロキサイド2081 20g、(株)ADEKA製のカチオン重合開始剤、アデカオプトマーSP−170 0.6g、およびメチルイソブチルケトン80gを撹拌混合して溶液を調製した。
次いで、得られた溶液を0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明なクラッド層形成用組成物を得た。
(2)感光性樹脂組成物の製造
エポキシ系ポリマーとして新日鐵化学(株)製のフェノキシ樹脂、YP−50S 20g、光重合性モノマーとしてダイセル化学工業(株)製のセロキサイド2021P 5g、および重合開始剤として(株)ADEKA製のアデカオプトマーSP−170 0.2gを、メチルイソブチルケトン80g中に投入し、撹拌溶解して溶液を調製した。
次いで、得られた溶液を0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明な感光性樹脂組成物を得た。
(3)下側クラッド層の作製
クラッド層形成用組成物をドクターブレードにより厚さ25μmのポリイミドフィルム上に均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去した後、UV露光機で全面に紫外線を照射し、塗布した樹脂組成物を硬化させた。これにより、厚さ10μmの無色透明な下側クラッド層を得た。なお、紫外線の積算光量は500mJ/cm2とした。
(4)コア層の作製
作製した下側クラッド層上に感光性樹脂組成物をドクターブレードにより均一に塗布した後、40℃の乾燥機に5分間投入した。溶媒を完全に除去して被膜とした後、得られた被膜上に、ライン、スペースの直線パターンを描くように、マスクレス露光装置により紫外線を照射した。なお、紫外線の積算光量は1000mJ/cm2とした。
次いで、露光後の被膜を150℃のオーブンに30分間投入した。オーブンから取り出すと、被膜には鮮明な複数の導波路パターンが現れているのが確認された。また、得られたコア部の幅および厚さはそれぞれ50μm、コア部の本数は8本とした。
(5)上側クラッド層の作製
作製したコア層上に、(3)と同様にしてクラッド層形成用組成物を塗布し、厚さ10μmの無色透明な上側クラッド層を得た。
(6)凹部の形成
次に、レーザー加工によりコア部の両端部にそれぞれ空洞部(光反射部)を形成した。これにより、全長10cmの光導波路を得た。なお、形成した空洞部の形状は表2に示す通りである。また、空洞部とコア部との位置関係に基づく各部の寸法も表2に示す通りである。
(比較例1)
空洞部とコア部との位置関係が図5に示す関係になるようにした以外は、実施例10と同様にして光導波路を得た。
(比較例2)
空洞部とコア部との位置関係が図6に示す関係になるようにした以外は、実施例10と同様にして光導波路を得た。
2.光導波路の評価
2.1 挿入損失およびミラー損失の評価
各実施例および各比較例で得られた光導波路について、社団法人 日本電子回路工業会が規定した「高分子光導波路の試験方法(JPCA−PE02−05−01S−2008)」の4.6.1挿入損失の測定方法に準拠して傾斜面(ミラー)を介した光路の挿入損失を測定した。
次いで、各実施例および各比較例で得られた光導波路について、上記試験方法の4.6.2単位長さあたりの光伝搬損失の測定方法に準拠して光伝搬損失を測定した。
その結果、各実施例および各比較例で得られた光導波路のいずれにおいても、光伝搬損失はほぼ同等であることが認められた。
光導波路の挿入損失は、光伝搬損失とミラー損失との和であると考えられることから、各実施例および各比較例で得られた光導波路についてミラー損失を求めた。そして、求めたミラー損失は、以下の評価基準にしたがって評価した。
<ミラー損失の評価基準>
A:ミラー損失が小さい(0.5dB未満)
B:ミラー損失がやや小さい(0.5dB以上1.0dB未満)
C:ミラー損失がやや大きい(1.0dB以上1.5dB未満)
D:ミラー損失が大きい(1.5dB以上2dB未満)
E:ミラー損失が非常に大きい(2dB以上)
以上の評価結果を表1、2に示す。
2.2 温度に対する耐久性の評価
各実施例および各比較例で得られた光導波路を温度サイクル試験に供した。なお、温度サイクル試験の試験条件は以下に示す通りである。
<温度サイクル試験の試験条件>
・温度 :−60〜150℃
・サイクル数 :500サイクル(高温、低温各30分間)
・評価特性 :挿入損失
次いで、試験前と試験後とで挿入損失を比較した。そして、試験後の挿入損失の増分を以下の評価基準にしたがって評価した。なお、試験後の被検体について、単位長さあたりの光伝搬損失を測定したところ、試験前とほとんど変化が認められなかったことから、挿入損失の増分のほとんどはミラー損失の増加によるものと考えられる。
<温度サイクル試験による挿入損失の増分の評価基準>
A:増分が非常に小さい(0.2dB未満)
B:増分が小さい(0.2dB以上0.5dB未満)
C:増分がやや小さい(0.5dB以上1.0dB未満)
D:増分がやや大きい(1.0dB以上1.5dB未満)
E:増分が大きい(1.5dB以上2dB未満)
F:増分が非常に大きい(2dB以上)
以上の評価結果を表1、2に示す。
表1、2から明らかなように、各実施例で得られた光導波路は、ミラー損失が比較的小さく、また、温度サイクル試験に供された後でもミラー損失の増加量が比較的小さいことが認められた。
一方、比較例1で得られた光導波路は、ミラー損失は小さいものの、温度サイクル試験に供されたことによるミラー損失の増加量が大きかった。また、比較例2で得られた光導波路は、ミラー損失が大きく、温度サイクル試験に供されたことによるミラー損失の増加量が大きかった。このように各比較例で得られた光導波路において、温度サイクル試験後のミラー損失の増加量が大きい理由は、温度変化に伴う応力変化の影響によって、ミラー(傾斜面)の形状や構成材料に何らかの変化が生じたためと考えられる。