以下、本発明の光導波路用部材、光導波路、光導波路の製造方法および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路用部材>
まず、本発明の光導波路用部材の実施形態について説明する。
図1は、本発明の光導波路用部材の実施形態を示す(一部透過して示す)斜視図、図2は、本発明の光導波路の実施形態を示す(一部透過して示す)斜視図、図3は、図2に示す光導波路の縦断面図である。なお、図1〜3は、それぞれ光導波路用部材または光導波路の一端部のみを図示したものであり、この一端部以外の部位については図示を省略している。
図1に示す光導波路用部材1は、帯状をなしており、その長手方向の一端部と他端部との間で光信号を伝送し、光通信を行うことができる。
図1に示す光導波路用部材1は、下側からクラッド層11、コア層13およびクラッド層12を積層してなる導波部10を備えている。コア層13中には長尺状のコア部14とその側面に隣接して設けられた側面クラッド部15とが形成されている。
また、光導波路用部材1は、導波部10の下面に積層された第1カバーフィルム(第1の保護層)2と、導波部10の上面に積層された第2カバーフィルム(第2の保護層)3とを備えている。
このような光導波路用部材1は、第2カバーフィルム3側から凹部170をレーザー加工し、その凹部170の内壁面としてコア部14を斜めに横断する傾斜面171を形成することにより、光導波路100となる。すなわち、光導波路用部材1は、光導波路100を製造するために供される部材である。この傾斜面171は、コア部14の光路を変換するミラー(光路変換部)として機能し、このミラーを介してコア部14と他の光学部品とを光学的に接続することができる。例えば、図3に示すコア部14を右側から左側へ伝搬する光は、傾斜面171で下方に反射され、第1カバーフィルム2を透過して光導波路100の外部に導かれる。
以下、光導波路用部材1の各部について詳述する。
(コア層)
図1に示すコア層13中に形成されているコア部14は、クラッド部(側面クラッド部15および各クラッド層11、12)で囲まれており、コア部14に光を閉じ込めて伝搬することができる。
コア部14の屈折率は、クラッド部の屈折率より大きければよいが、その差は0.3%以上であるのが好ましく、0.5%以上であるのがより好ましい。なお、上限値は特に設定されないが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率差が前記下限値未満の場合、光を伝搬する効果が低下するおそれがあり、一方、屈折率差が前記上限値を上回る場合、光の伝送効率のそれ以上の向上は期待できない。
また、前記屈折率差とは、コア部14の屈折率をA、クラッド部の屈折率をBとしたとき、次式で表される。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
また、コア部14の横断面における幅方向の屈折率分布は、いかなる形状の分布であってもよい。この屈折率分布は、屈折率が不連続的に変化したいわゆるステップインデックス(SI)型の分布であってもよく、屈折率が連続的に変化したいわゆるグレーデッドインデックス(GI)型の分布であってもよい。SI型の分布であれば屈折率分布の形成が容易であり、GI型の分布であれば屈折率の高い領域に信号光が集まる確率が高くなるため伝送効率が向上する。
また、コア部14は、平面視で直線状であっても曲線状であってもよい。さらに、コア部14は途中で分岐または他のコア部と交差していてもよい。
なお、コア部14の横断面形状は特に限定されず、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形であってもよいが、四角形(矩形状)であることにより、コア部14を形成し易い利点がある。
また、コア部14の幅および高さ(コア層13の厚さ)は、特に限定されないが、それぞれ1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜70μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路100の伝送効率の低下を抑えつつコア部14の高密度化を図ることができる。
上述したようなコア層13の構成材料(主材料)は、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料等を用いることができる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料であってもよい。
(クラッド層)
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さの0.05〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.1〜1.25倍程度であるのがより好ましい。具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、それぞれ1〜200μm程度であるのが好ましく、3〜100μm程度であるのがより好ましく、5〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路100が必要以上に厚膜化するのを防止しつつ、クラッド部としての機能が確保される。
また、クラッド層11、12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特に(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましく、(メタ)アクリル系樹脂またはエポキシ系樹脂がより好ましい。
また、光導波路用部材1の横断面の厚さ方向の屈折率分布についても、特に限定されず、例えばSI型、GI型の分布が挙げられる。
光導波路用部材1の幅は、特に限定されないが、2〜100mm程度であるのが好ましく、5〜50mm程度であるのがより好ましい。
また、コア層13中には、複数のコア部14を並列して、あるいは互いに交差するように形成することができる。光導波路用部材1中に形成されるコア部14の数は、特に限定されないが、1〜100本程度であるのが好ましい。なお、コア部14の数が多い場合は、必要に応じて、光導波路用部材1を多層化してもよい。具体的には、図1に示すクラッド層12上に、さらにコア層とクラッド層とを交互に重ねることにより多層化することができる。
(カバーフィルム)
また、図1に示す光導波路用部材1は、最下層として第1カバーフィルム(第1の保護層)2を、最上層として第2カバーフィルム(第2の保護層)3を、それぞれ備えている。
光導波路用部材1は、前述したように、第2カバーフィルム3側から凹部170がレーザー加工されることにより、光導波路100を製造するのに用いられる。レーザー加工に供された第2カバーフィルム3では、レーザーの積算光量に応じて、その材料が気化し、空間の形成等の加工がなされる。同様の加工が、クラッド層12、コア層13およびクラッド層11にも順次なされることにより、凹部170が形成される。
一方、第1カバーフィルム2は、前述したように、傾斜面171で反射した光が透過するよう用いられる。また、その反対に、外部から入射する光が第1カバーフィルム2を透過し、傾斜面171を介してコア部14に入射する。
ここで、本発明に係る光導波路用部材1では、第1カバーフィルム2が、ポリイミド系樹脂またはポリエチレンナフタレート系樹脂を主材料とするものであって、その平均厚さが25μmであるときの全光線透過率が80〜99.5%となるようなフィルムである。
ところで、光導波路のカバーフィルムとして、このように全光線透過率が高いフィルムを用いた例は、これまで知られていなかった。
これに対し、本発明者は、カバーフィルムとして全光線透過率が高いフィルムを用いることにより、光導波路における他の光学部品との光結合効率が際立って高くなることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
具体的には、上述したような第1カバーフィルム2は、導波部10を外力や外部環境から保護するという機能を発揮しつつ、第1カバーフィルム2を透過する光路の伝送損失を十分に小さく抑えることができる。より具体的には、ポリイミド系樹脂およびポリエチレンナフタレート系樹脂は、それぞれ弾性率が大きく、熱分解温度も高いことから、外力や外部環境に対する十分な耐久性を有しており、このため、導波部10を確実に保護することができる。また、このように機械的特性が優れているだけでなく、第1カバーフィルム2は全光線透過率も高いという特長を備えている。したがって、このような光導波路用部材1は、第1カバーフィルム2が設けられているのとは反対側、すなわち第2カバーフィルム3側から凹部170を加工してミラーとなる傾斜面171を形成することにより、他の光学部品との間で高い光結合効率を有する光導波路100となる。
また、第1カバーフィルム2の全光線透過率は、好ましくは85〜99.0%程度とされ、より好ましくは87〜98.5%程度とされる。
なお、第1カバーフィルム2の全光線透過率が前記下限値を下回ると、第1カバーフィルム2を透過する光路の伝送損失が増大し、光導波路100と他の光学部品との光結合効率が低下するおそれがある。一方、第1カバーフィルム2の全光線透過率が前記上限値を上回ると、第1カバーフィルム2の熱膨張率が大きくなる等、機械的特性が悪化したり、耐光性が低下する等、耐久性が悪化したりするおそれがある。
したがって、第1カバーフィルム2の全光線透過率を最適化することにより、第1カバーフィルム2を透過する光信号の透過性、第1カバーフィルム2の導波部10を保護する能力といった、相互に関係性を有する複数の要素を総合的に改善することができる。このため、このような光導波路用部材1を用いることで、最終的に、光結合効率が良好な光導波路100を製造することができる。
なお、本発明では、特定波長ではなく、後述する広い波長域における全光線透過率を指標として用いることで、光結合効率をより高め得ることを見出した。すなわち、本発明では、全光線透過率を指標として用いることで、複数の要素を総合的に改善し得ることを見出したといえる。
一方、第2カバーフィルム3の全光線透過率は、第1カバーフィルム2の全光線透過率より高くても同程度であってもよいが、好ましくは第1カバーフィルム2の全光線透過率よりも低くなっている。これにより、光導波路用部材1の第2カバーフィルム3側からレーザー加工で傾斜面171を形成する際、その傾斜面171を介した他の光学部品との光結合において良好な結合効率を示す光導波路100を容易に製造することができる。
すなわち、上述したような条件を満たす第2カバーフィルム3は、レーザー加工性に富んだものとなり、加工により得られる傾斜面171は、面精度の高いものとなる。このような傾斜面171は、反射効率に優れることから、傾斜面171を介してコア部14と他の光学部品とを光結合する際に、良好な結合効率の実現に寄与する。加えて、第2カバーフィルム3のレーザー加工性が高くなると、レーザーアブレーションが円滑に生じるため、加工に要する時間を短縮することができる。このため、光導波路100の製造効率を高めることができる。
この場合、第2カバーフィルム3の全光線透過率は、第1カバーフィルム2の全光線透過率の0.5〜0.99倍程度であるのが好ましく、0.6〜0.97倍程度であるのがより好ましい。第2カバーフィルム3の全光線透過率を前記範囲内に収めることにより、光結合効率がより良好な光導波路100を製造可能な光導波路用部材1が得られる。
なお、第2カバーフィルム3の全光線透過率が前記下限値を下回る場合、導波部10の構成にもよるが、第2カバーフィルム3を透過してコア部14を視認しようとしたとき、その視認性が低下するため、レーザー加工を行う際の位置決め精度が低下するおそれがある。また、全光線透過率は、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の機械的特性(例えば弾性率、熱膨張率等)にも相関を有していることから、第2カバーフィルム3の全光線透過率が前記下限値を下回る場合、第1カバーフィルム2と第2カバーフィルム3とで全光線透過率が大きく異なることとなり、それに応じて機械的特性の差が大きくなるため、光導波路用部材1に意図しない反り等が発生するおそれがある。一方、第2カバーフィルム3の全光線透過率が前記上限値を上回る場合、第2カバーフィルム3のレーザー加工性が低下し、それに伴って形成される傾斜面171の面精度が低下するため、傾斜面171の反射効率が低下するおそれがある。
したがって、第1カバーフィルム2と第2カバーフィルム3との間で、全光線透過率の関係を最適化することにより、第1カバーフィルム2を透過する光信号の透過性、第2カバーフィルム3から透けて見えるコア部14の視認性、第2カバーフィルム3のレーザー加工性、および光導波路用部材1の反りの程度といった、相互に関係性を有する複数の要素を総合的に改善することができる。このため、このような光導波路用部材1を用いることで、最終的に、光結合効率が良好な光導波路100を製造することができる。
また、第2カバーフィルム3の全光線透過率は、第1カバーフィルム2の全光線透過率に応じて上記の範囲内に設定されるものの、60〜98%程度であるのが好ましく、65〜97%程度であるのがより好ましく、70〜96%程度であるのがさらに好ましい。第2カバーフィルム3の全光線透過率を前記範囲内に設定することにより、レーザー加工時のコア部14の視認性を確保しつつ、良好な加工性を示し得る光導波路用部材1が得られる。
なお、第2カバーフィルム3の全光線透過率が前記下限値を下回る場合、第2カバーフィルム3を介したコア部14の視認性が低下し、凹部170を形成する際の加工位置を正確に決めるのが困難になるおそれがある。一方、第2カバーフィルム3の全光線透過率が前記上限値を上回る場合、第2カバーフィルム3のレーザー加工性が低下し、傾斜面171の面精度が低下するため、傾斜面171の反射効率が低下するおそれがある。
第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の全光線透過率は、JIS K 7375に規定された全光線透過率の求め方に準拠して測定され、測定波長は600〜1800nmの範囲である。また、上記全光線透過率は、平均厚さ25μmの試験片についての測定値である。
また、第1カバーフィルム2は、特に波長850nmにおける光線透過率が90%以上99.5%以下であるのが好ましく、91%以上99%以下であるのがより好ましい。これにより、光導波路100において第1カバーフィルム2を透過する光路の伝送効率が特に向上し、とりわけ良好な結合効率の実現に寄与する。
一方、第2カバーフィルム3は、特に波長850nmにおける光線透過率が60%以上92%以下であるのが好ましく、65%以上91%以下であるのがより好ましい。これにより、光導波路用部材1において第2カバーフィルム3を介したコア部14の視認性が特に高まるため、傾斜面171の形成における位置精度が特に高くなる。その結果、他の光学部品との光結合効率がとりわけ良好な光導波路100を容易に製造可能な光導波路用部材1が得られる。
第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の波長850nmにおける光線透過率は、JIS K 7375に規定された全光線透過率の求め方に準拠して測定される。また、上記光線透過率は、平均厚さ25μmの試験片についての測定値である。
このような第1カバーフィルム2は、前述したように、ポリイミド系樹脂またはポリエチレンナフタレート系樹脂(PEN)を主材料とするものである。これらの樹脂材料は、前述したように、弾性率が大きく、熱分解温度も高いものであるので、これらの樹脂材料で構成された第1カバーフィルム2は、導波部10を確実に保護し得るものとなる。また、これらの樹脂材料は、熱膨張率が小さい。このため、これらの樹脂材料が第1カバーフィルム2の構成材料として用いられたとき、光導波路100に反り等の変形が生じるのを抑制することができる。さらには、これらの樹脂材料は、耐光性が高い。このため、第1カバーフィルム2を透過する光路において長期にわたる光伝送が行われた場合でも、第1カバーフィルム2が劣化したり破れたりすることが防止される。
なお、ポリイミド系樹脂としては、特に、下記式(1)および式(2)で表される繰り返し単位を含むものが好ましく用いられる。
なお、上記式(1)および式(2)中のnは、それぞれポリイミド系樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量が2万〜40万程度となる値に設定される。
一方、第2カバーフィルム3の構成材料としては、特に限定されないものの、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられる。
なお、第2カバーフィルム3の構成材料は、第1カバーフィルム2の構成材料と同じであっても異なっていてもよい。
また、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の構成材料には、必要に応じて、フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、劣化防止剤、帯電防止剤等が添加されていてもよい。
このうち、フィラーを添加することにより、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の熱膨張率を調整することができ、熱膨張率差に伴う光導波路用部材1の反り等をより確実に抑制することができる。
第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3中のフィラーの含有率は、特に限定されないが、0.05〜5質量%程度であるのが好ましく、0.1〜3質量%程度であるのがより好ましい。フィラーの含有率を前記範囲内に設定することにより、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の熱膨張率を最適化することができる。また、第2カバーフィルム3については、前述したフィラーの含有率の範囲は、熱膨張率を最適化するのに必要かつ十分な量であるとともに、レーザー加工により形成された傾斜面171の面精度が低下するのを抑制し得る範囲でもある。これは、フィラーがレーザーを散乱させることによって、加工精度が低下するおそれがあるところ、フィラーの含有率を前記範囲内に設定することにより、加工精度の低下が最小限に抑えられるからである。
これらを踏まえると、第2カバーフィルム3中のフィラーの含有率は、第1カバーフィルム2中のフィラーの含有率より小さくなるよう設定されるのが好ましい。これにより、第2カバーフィルム3にレーザー加工が施されたとき、フィラーによるレーザーの散乱が相対的に小さく抑えられ、加工精度の低下が抑えられる。
この場合、第2カバーフィルム3中のフィラーの含有率は、第1カバーフィルム2中のフィラーの含有率の0.1〜0.95倍程度であるのが好ましく、0.2〜0.9倍程度であるのがより好ましい。第2カバーフィルム3中のフィラーの含有率を前記範囲内に設定することにより、第1カバーフィルム2と第2カバーフィルム3との間で熱膨張率の著しい差を生じさせることなく、第2カバーフィルム3のレーザー加工性を確保するとともに、第1カバーフィルム2を透過する光路の伝送効率が著しく低下するのを抑制することができる。
また、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の厚さは、前述した光線透過率や後述するその他の物性等に応じて適宜設定されるが、平均厚さが5〜500μm程度であるのが好ましく、10〜400μm程度であるのがより好ましい。これにより、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3は、導波部10を保護するのに必要かつ十分な機械的特性を有するものとなる。また、光導波路用部材1は、適度な可撓性を有するものとなり、湾曲または屈曲させた状態でも高い信頼性を示す光導波路100を製造することができる。
また、第2カバーフィルム3の引張強さは、第1カバーフィルム2の引張強さより小さくても同程度であってもよいが、好ましくは第1カバーフィルム2の引張強さより大きくなるよう設定される。これにより、第2カバーフィルム3側から凹部170が形成され、その分、引張強さが低下したとしても、第2カバーフィルム3はもともと引張強さが大きいため、それによって相殺される。このため、光導波路用部材1は、第1カバーフィルム2が外側になるよう折り曲げられた場合でも、反対に第2カバーフィルム3が外側に折り曲げられた場合でも、同程度の耐久性を有するものとなるため、湾曲または屈曲させた状態でも高い信頼性を示す光導波路100を製造し得るものとなる。
この場合、第2カバーフィルム3の引張強さは、第1カバーフィルム2の引張強さの1.03〜2倍程度であるのが好ましく、1.1〜1.5倍程度であるのがより好ましい。第2カバーフィルム3の引張強さが前記下限値を下回ると、凹部170の形成後、第2カバーフィルム3の引張強さが低下するため、引張強さの差が大きくなって、製造される光導波路100の信頼性が低下するおそれがある。一方、第2カバーフィルム3の引張強さが前記上限値を上回ると、凹部170を形成しても引張強さの差を相殺し切れず、やはり製造される光導波路100の信頼性が低下するおそれがある。
また、第1カバーフィルム2の引張強さは、200〜800MPa程度であるのが好ましく、250〜750MPa程度であるのがより好ましい。第1カバーフィルム2の引張強さを前記範囲内に設定することにより、十分な耐久性を有する光導波路100が得られる。
なお、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の引張強さは、JIS K 7127(ASTM D882)に規定された引張特性の試験方法に準拠して測定される。また、上記引張強さは、平均厚さ25μmの試験片についての測定値である。
これと同様に、第2カバーフィルム3の引張弾性率は、第1カバーフィルム2の引張弾性率より小さくても同程度であってもよいが、好ましくは第1カバーフィルム2の引張弾性率より大きくなるよう設定される。これにより、湾曲または屈曲させた状態でも高い信頼性を示す光導波路100を製造し得る光導波路用部材1が得られる。
また、第2カバーフィルム3の引張弾性率は、第1カバーフィルム2の弾性率の1.1〜3倍程度であるのが好ましく、1.3〜2.5倍程度であるのがより好ましい。
また、第1カバーフィルム2の引張弾性率は、3000〜12000MPa程度であるのが好ましく、4000〜11000MPa程度であるのがより好ましい。第1カバーフィルム2の引張弾性率を前記範囲内に設定することにより、十分な耐久性を有する光導波路100が得られる。
なお、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の引張弾性率は、JIS K 7127(ASTM D882)に規定された引張特性の試験方法に準拠して測定される。また、上記引張弾性率は、平均厚さ25μmの試験片についての測定値である。
一方、第2カバーフィルム3の伸び率は、第1カバーフィルム2の伸び率より大きくても同程度であってもよいが、好ましくは第1カバーフィルム2の伸び率よりも小さくなるよう設定される。これにより、第2カバーフィルム3に凹部170が形成されたとき、傾斜面171の加工精度をより高めることができる。
この場合、第2カバーフィルム3の伸び率は、第1カバーフィルム2の伸び率の0.5〜0.95倍程度であるのが好ましく、0.6〜0.9倍程度であるのがより好ましい。第2カバーフィルム3の伸び率が前記下限値を下回ると、光導波路用部材1の可撓性が低下するおそれがある。一方、第2カバーフィルム3の伸び率が前記上限値を上回ると、伸び率の差がほとんどなくなるので、上述した効果が十分に得られないおそれがある。
また、第1カバーフィルム2の伸び率は、30〜100%程度であるのが好ましく、35〜95%程度であるのがより好ましい。第1カバーフィルム2の伸び率を前記範囲内に設定することにより、十分な耐久性を有する光導波路100が得られる。
なお、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の伸び率は、JIS K 7127(ASTM D882)に規定された引張特性の試験方法に準拠して測定される。また、上記伸び率は、平均厚さ25μmの試験片についての測定値である。
また、第2カバーフィルム3の吸水率は、第1カバーフィルム2の吸水率より大きくても同程度であってもよいが、好ましくは第1カバーフィルム2の吸水率よりも小さくなるよう設定される。これにより、第2カバーフィルム3のレーザー加工性がより良好になるとともに、第1カバーフィルム2を透過する光路の伝送効率が高くなる。このような効果が得られる理由は明確ではないが、吸水性が低いことにより、レーザー照射に伴う材料の気化が比較的円滑に進むこと、および、第1カバーフィルム2の適度な吸水性によって第1カバーフィルム2と導波部10との密着性が向上し、光路上で光散乱を生じる因子(例えば界面剥離、空隙等)が減少すること等が理由として考えられる。
この場合、第2カバーフィルム3の吸水率は、第1カバーフィルム2の吸水率の0.5〜0.95倍程度であるのが好ましく、0.6〜0.9倍程度であるのがより好ましい。第2カバーフィルム3の吸水率が前記下限値を下回ると、第2カバーフィルム3と導波部10との密着性が不十分になるおそれがある。一方、第2カバーフィルム3の吸水率が前記上限値を上回ると、第2カバーフィルム3のレーザー加工性が低下し、形成される傾斜面171の面精度が低下するおそれがある。
また、第1カバーフィルム2の吸水率は、0.7〜2.5%程度であるのが好ましく、0.9〜2.1%程度であるのがより好ましく、1.3〜1.9%程度であるのがさらに好ましい。第1カバーフィルム2の吸水率を前記範囲内に設定することにより、第1カバーフィルム2には適度な吸水性に伴う密着性が高くなり、第1カバーフィルム2を透過する光路の伝送効率がより高くなる。
なお、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の吸水率は、JIS K 7209(ASTM D570)に規定された吸水率の試験方法に準拠して、23℃、24時間水中浸漬により測定される。
さらには、第1カバーフィルム2の表面の算術平均粗さRaは、0.001〜0.5μm程度であるのが好ましく、0.001〜0.3μm程度であるのがより好ましい。第1カバーフィルム2の表面の算術平均粗さRaが前記範囲内であることにより、第1カバーフィルム2を透過する光路が、第1カバーフィルム2とそれに隣接する空気との界面および第1カバーフィルム2と導波部10との界面を通過するときに生じる散乱を最小限に抑えることができ、他の光学部品との光結合効率が良好な光導波路100が得られる。また、ある程度の粗さを残すことにより、第1カバーフィルム2と導波部10との間に必要かつ十分な密着性を確保し、光路上で光散乱を生じる因子(例えば界面剥離、空隙等)に伴う光結合効率のさらなる低下を抑制することができる。
また、第2カバーフィルム3の表面の算術平均粗さRaも、第1カバーフィルム2の表面の算術平均粗さRaと同程度であるのが好ましい。第2カバーフィルム3の表面の算術平均粗さRaが前記範囲内であることにより、第2カバーフィルム3にレーザーが照射されたときの意図しない散乱等が抑えられるため、第2カバーフィルム3のレーザー加工性が高くなり、面精度の高い傾斜面171を形成することができる。
なお、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の表面の算術平均粗さRaは、JIS B 0601ー2001に規定されたものであり、触針式表面形状測定器または光学式表面形状測定器を用いて測定される。
この他、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の耐屈曲回数MITの試験結果は、それぞれ10000回以上であるのが好ましく、20000回以上であるのがより好ましい。これにより、信頼性の高い光導波路100を製造可能な光導波路用部材1が得られる。
また、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の熱収縮率は、0.01〜0.2%程度であるのが好ましい。これにより、反り等の変形が少ない光導波路用部材1が得られる。
また、第1カバーフィルム2および第2カバーフィルム3の熱膨張係数は、特に限定されないが、5〜25ppm/℃程度であるのが好ましく、7〜20ppm/℃程度であるのがより好ましい。これにより、熱変形が少ない光導波路用部材1が得られる。
なお、導波部10と第1カバーフィルム2との間、および、導波部10と第2カバーフィルム3との間は、それぞれ双方またはいずれか一方の粘着力により接着されていてもよく、あるいは、接着剤、粘着剤、接着シート、粘着シート等の部材を介して、または熱圧着により接着されていてもよい。
<光導波路>
次に、本発明の光導波路の実施形態について説明する。
図2、3に示す光導波路100は、前述したように、光導波路用部材1と、光導波路用部材1の一部を除去することにより形成された凹部170と、を備えている。図2に示す凹部170は、コア部14の長手方向の途中に位置している。凹部170の内側面の一部は、コア部14の光軸に対して傾斜する傾斜面171になっている。換言すれば、コア層13の下面を基準面としたとき、傾斜面171は、この基準面に対して傾斜しつつ交差している。このような傾斜面171は、コア部14の光路を変換するミラー(光路変換部)として機能する。
また、図2に示す凹部170は、第2カバーフィルム3の上面に直交しかつコア部14の光軸を含む平面で切断されたとき、その断面形状は、図3に示すように、底の長さが短く、開口の長さが長い台形をなすよう構成されている。
また、傾斜面171は、図2、3に示すように、第2カバーフィルム3からクラッド層12とコア層13とを経てクラッド層11に至るまでの間に連続して形成された平坦面である。また、凹部170の内側面のうち、傾斜面171に対向する位置には、別の傾斜面172が設けられている。この傾斜面172も、傾斜面171と同様、第2カバーフィルム3からクラッド層12とコア層13とを経てクラッド層11に至るまでの間に連続して形成された平坦面である。
一方、凹部170の内側面のうち、コア部14の光軸とほぼ平行な2つの面は、それぞれクラッド層11の下面に対して垂直な直立面173、174である。
このような2つの傾斜面171、172と2つの直立面173、174とにより、凹部170の内側面が構成されている。
なお、凹部170の開口の形状は、長方形に限定されず、いかなる形状であってもよいが、例えば、四角形、五角形、六角形のような多角形、長円形のような円形等であってもよい。
また、傾斜面171は、ミラーとして機能するものであるため、コア部14の光路を変換する方向に応じてその傾斜角度が適宜設定されるが、コア層13の下面を基準面としたとき、基準面と傾斜面171とがなす角度(鋭角側)は、30〜60°程度であるのが好ましく、40〜50°程度であるのがより好ましい。傾斜角度を前記範囲内に設定することにより、傾斜面171においてコア部14の光路を効率よく変換し、光路変換に伴う損失を抑制することができる。
また、基準面と傾斜面172とがなす角度(鋭角側)は、特に限定されないが、20〜90°程度であるのが好ましく、傾斜面171の傾斜角度と同じにするのがより好ましい。これにより、凹部170近傍に応力が発生したとき、応力が偏在し難くなり、やはり応力集中による不具合の発生を特に抑制することができる。また、傾斜面171、172の傾斜角度を高い精度に維持しながら、凹部170を効率よく製造することができる。
一方、基準面と直立面173、174とがなす角度(鋭角側)は、それぞれ好ましくは60〜90°程度とされ、より好ましくは70〜90°程度とされ、さらに好ましくは80〜90°程度とされる。基準面と直立面173、174とがなす角度を前記範囲内に設定することにより、特にクラッド層11とコア層13との界面にかかる応力を抑制することができる。なお、各図では、ほぼ90°として図示している。
なお、凹部170の最大深さは、導波部10の厚さから適宜設定されるものであり、特に限定されないが、光導波路100の機械的強度や可撓性といった観点から、好ましくは1〜500μm程度とされ、より好ましくは5〜400μm程度とされる。
また、凹部170の最大長さ、すなわち図3の左右方向における凹部170の最大長さは、特に限定されないが、クラッド層11、12やコア層13の厚さや傾斜面171の傾斜角度との関係から、好ましくは2〜1200μm程度とされ、より好ましくは10〜1000μm程度とされる。
さらに、凹部170の最大幅、すなわち図3の紙面厚さ方向における凹部170の最大長さは、特に限定されず、コア部14の幅等に応じて適宜設定されるが、好ましくは1〜600μm程度とされ、より好ましくは5〜500μm程度とされる。
なお、コア層13に複数本のコア部14が形成されている場合、凹部170は、1本のコア部14に対して1つ設けられていてもよいが、複数本のコア部14に対してこれらに跨るように1つの凹部170が設けられていてもよい。
また、複数個の凹部170を形成する場合、それらの形成位置は、コア部14の長手方向において互いに同じ位置であっても、互いにずれていてもよい。
また、凹部170の最深部の位置は、図3に示す位置に限定されず、例えば、コア層13の途中であってもよく、クラッド層11の途中であってもよく、第1カバーフィルム2の途中であってもよい。さらには、凹部170の一部が第1カバーフィルム2を貫通していてもよい。
また、図2に示す光導波路100では、コア部14の途中に凹部170が形成されているが、この形成位置は限定されるものではなく、コア部14の延長線上であってもよい。すなわち、コア部14が、コア層13の端面に露出せずに途中で途切れていて、その部位に側面クラッド部15が形成されており、この側面クラッド部15のうちコア部14の延長線上に位置する部位を加工することにより凹部170を形成するようにしてもよい。
<光導波路の製造方法>
次に、図3に示す光導波路を製造する方法の一例について説明する。
図4は、図3に示す光導波路を製造する方法の一例を説明するための断面図である。
図3に示す光導波路100を製造する方法は、第1カバーフィルム2、クラッド層11、コア層13、クラッド層12および第2カバーフィルム3を順次積層して光導波路用部材1を得る工程と、光導波路用部材1の一部を除去する加工を施すことにより、凹部170を形成する工程と、を有する。
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、(a)クラッド層11を形成するための組成物、コア層13を形成するための組成物、およびクラッド層12を形成するための組成物を、順次成膜して製造する方法、(b)各組成物を用いてクラッド層11、コア層13およびクラッド層12をそれぞれ形成した後、積層する方法、(c)3種の組成物を同時に押出成形して積層体を製造する方法等により、導波部10を得る。
この際、コア層13を形成するための組成物として、露光により屈折率が変化する屈折率変調能(例えばフォトブリーチングやモノマーディフュージョンによる屈折率変調)を有するものを用い、このコア層形成層に露光処理を施すことのみで、所望のパターンで敷設されたコア部14を含むコア層13を得ることができる。
なお、コア層13の製造方法は、このような方法に限定されず、例えば成膜工程と、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術とを組み合わせたパターニング工程と、を繰り返し行うことにより、所望のパターンで敷設されたコア部14を含むコア層13を得ることができる。
次いで、導波部10の一方の面に第1カバーフィルム2を積層するとともに、他方の面に第2カバーフィルム3を積層する。これにより、光導波路用部材1を得る。
なお、あらかじめ第1カバーフィルム2とクラッド層11、および、第2カバーフィルム3とクラッド層12、をそれぞれ積層しておいた後、これらをコア層13の各面に積層することにより光導波路用部材1を得るようにしてもよい。
[2]次に、第2カバーフィルム3側からレーザーを照射することにより、光導波路用部材1の一部を除去する加工を施す。これにより、凹部170が形成され、光導波路100が得られる。
レーザー加工においては、形成しようとする凹部170より面積の小さい横断面を有するレーザー光束L1を用い、これを光導波路用部材1上において徐々にずらしながら加工を行う。
具体的には、まず、光導波路用部材1の第2カバーフィルム3の表面に対し、図4(a)に示すようなレーザー光束L1を一定時間照射する。これにより、レーザー光束L1の横断面に応じた領域に対し、光量(エネルギー)に応じた深さの凹部1701が形成される。
レーザー光源は、発振するレーザーの波長に応じて適宜選択されるが、例えば、YAGレーザー、YVO4レーザー、Ybレーザー、半導体レーザーのような各種固体レーザー、CO2レーザー、He−Neレーザー、エキシマーレーザーのような各種気体レーザー等が挙げられる。
また、レーザーの波長は、例えば100〜950nm程度とされる。
次いで、図4(b)に示すように、レーザー光束L1の位置を左側にずらした後、一定時間照射する。これにより、凹部1701の左側が新たに加工されるとともに、凹部1701の底部に対しても追加的に加工が施され、凹部1702が形成される。
このようなレーザー光束L1の移動と照射とを繰り返すことにより、図4(c)に示すように、凹部1703、凹部1704、凹部1705および凹部1706がそれぞれ形成される。
これらのプロセスをさらに繰り返すことで、図3に示す凹部170が形成され、光導波路100が得られる。
また、第2カバーフィルム3側からレーザー加工を施すことにより、前述したような理由から、形成される傾斜面171は面精度の高いものとなる。このような傾斜面171は、反射効率に優れることから、傾斜面171を介してコア部14と他の光学部品とを光結合する際に、良好な結合効率の実現に寄与する。また、第2カバーフィルム3のレーザー加工性が高いため、レーザーアブレーションが円滑に生じ、加工に要する時間を短縮することができるので、光導波路100の製造効率を高めることができる。さらには、第1カバーフィルム2を透過する光路の伝送効率が高くなるため、他の光学部品との光結合効率に優れた光導波路100を製造することができる。
なお、凹部170の形成は、レーザー加工法以外の方法、具体的には、切削加工等の機械加工法の他、電子線加工法、インプリント法等により行われてもよい。
<電子機器>
上述したような本発明の光導波路は、他の光学部品との光結合効率に優れたものである。このため、本発明の光導波路を備えることにより、内部において高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器が得られる。
本発明の光導波路を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
以上、本発明の光導波路用部材、光導波路、光導波路の製造方法および電子機器について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、本発明の光導波路を備える光電気混載基板や光モジュールは、光導波路と光素子との間で高い光結合効率による光接続が可能になるため、高品質な光通信を行い得るものとなる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.光導波路の製造
(実施例1)
(1)ポリオレフィン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
次に、100mLバイアルビン中にNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
このNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
(2)コア層形成用組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、重合開始剤(光酸発生剤) RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(0.025g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。なお、ポリマー#1は、活性放射線の照射により離脱性基が離脱する機能を有しており、いわゆるフォトブリーチング現象が生じるものである。
(3)クラッド層形成用組成物の製造
精製した上記ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位80mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位20mol%にそれぞれ変更したものを、前記ポリマー#1に代えて用いるようにした以外はコア層形成用組成物と同様にしてクラッド層形成用組成物を得た。
(4)下側クラッド層の作製
クラッド層形成用組成物をドクターブレードにより厚さ25μmのポリイミドフィルム上に均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去した後、UV露光機で全面に紫外線を照射し、塗布した組成物を硬化させた。これにより、厚さ10μmの無色透明な下側クラッド層および第1カバーフィルム(ポリイミドフィルム)を得た。なお、紫外線の積算光量は500mJ/cm2とした。また、第1カバーフィルムの特性は表1に示す通りである。
(5)コア層の作製
作製した下側クラッド層上にコア層形成用組成物をドクターブレードにより均一に塗布した後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去して被膜とした後、得られた被膜上に、ライン、スペースの直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着した。そして、フォトマスク上から平行露光機により紫外線を照射した。なお、紫外線の積算光量は1300mJ/cm2とした。
次いで、フォトマスクを取り去り、150℃のオーブンに30分間投入した。オーブンから取り出すと、被膜には鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。導波路パターンのコア部の幅Lおよび間隔Sをそれぞれ表3に示す。また、得られたコア層の厚さは50μm、コア部の本数は8本とした。
(6)上側クラッド層の作製
作製したコア層上に、(3)と同様にしてクラッド層形成用組成物を塗布し、厚さ10μmの無色透明な上側クラッド層を得た。次いで、その上に、厚さ25μmのポリイミドフィルムを載せ、圧着した。これにより、第2カバーフィルムを得た。以上のようにして光導波路を得た。なお、第2カバーフィルムの特性は表1に示す通りである。
(実施例2〜10)
第1カバーフィルムおよび第2カバーフィルムの特性を、表1に示すように変更した以外は、それぞれ実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例11〜13)
第2カバーフィルムの材料組成をポリエチレンナフタレート系樹脂に変更するとともに、第1カバーフィルムおよび第2カバーフィルムの特性を表1に示すようにした以外は、それぞれ実施例1と同様にして光導波路を得た。
(比較例1〜5)
第1カバーフィルムおよび第2カバーフィルムの材料特性や特性を、表1に示すように変更した以外は、それぞれ実施例1と同様にして光導波路を得た。
2.光導波路の評価
2.1 ミラー損失の評価
各実施例および各比較例で得られた光導波路について、コア部の一端と、傾斜面(ミラー)を介してコア部と結合される光導波路表面との間について、挿入損失P1を測定した。その後、ミラー部をカットし、直線部の挿入損失P0を測定した。そして、挿入損失P1と挿入損失P0との差P1−P0を、ミラー部の損失とした。なお、これらの挿入損失は、社団法人 日本電子回路工業会が規定した「高分子光導波路の試験方法(JPCA−PE02−05−01S−2008)」の4.6.3ミラー損失の測定方法に準拠して測定した。また、測定には、波長850nmの光を用いた。
そして、測定したミラー損失を以下の評価基準にしたがって評価した。
<ミラー損失の評価基準>
A:ミラー損失が非常に小さい(1.5dB未満)
B:ミラー損失が小さい(1.5dB以上2.0dB未満)
C:ミラー損失がやや小さい(2.0dB以上2.5dB未満)
D:ミラー損失がやや大きい(2.5dB以上3.0dB未満)
E:ミラー損失が大きい(3.0dB以上3.5dB未満)
F:ミラー損失が非常に大きい(3.5dB以上)
2.2 曲げ損失の評価
各実施例および各比較例で得られた光導波路について、社団法人 日本電子回路工業会が規定した「高分子光導波路の試験方法(JPCA−PE02−05−01S−2008)」の4.6.4曲げ損失の測定方法の測定2に準拠して360度湾曲させた。このとき、曲げ半径を5mmとした。
次いで、この状態を維持しながら、コア部の一端と、傾斜面(ミラー)を介してコア部と結合される光導波路表面との間について、挿入損失を測定した。その後、光導波路を曲げ、その状態で再び挿入損失を測定した。そして、これらの挿入損失の差を曲げ損失とし、算出した曲げ損失を以下の評価基準にしたがって評価した。また、測定には、波長850nmの光を用いた。
<曲げ損失の評価基準>
A:曲げ損失が非常に小さい(0.2dB未満)
B:曲げ損失が小さい(0.2dB以上0.5dB未満)
C:曲げ損失がやや小さい(0.5dB以上1.0dB未満)
D:曲げ損失がやや大きい(1.0dB以上1.5dB未満)
E:曲げ損失が大きい(1.5dB以上2dB未満)
F:曲げ損失が非常に大きい(2dB以上)
2.3 耐折性の評価
各実施例および各比較例で得られた光導波路について、社団法人 日本電子回路工業会が規定した「高分子光導波路の試験方法(JPCA−PE02−05−01S−2008)」の6.1.2耐折試験に準拠して引張力をかけながら屈曲させる試験を行った。そして、試験前の挿入損失に対する試験後の挿入損失の増分を算出し、これを以下の評価基準に照らして評価した。なお、測定には、波長850nmの光を用いた。また、引張荷重は5N、回転速さは毎分90回、屈曲角度を135°、屈曲回数を1000回、曲げ半径を2mmとした。
<耐折試験による挿入損失の増分の評価基準>
A:増分が非常に小さい(0.2dB未満)
B:増分が小さい(0.2dB以上0.5dB未満)
C:増分がやや小さい(0.5dB以上1.0dB未満)
D:増分がやや大きい(1.0dB以上1.5dB未満)
E:増分が大きい(1.5dB以上2dB未満)
F:増分が非常に大きい(2dB以上)
以上の評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、各実施例で得られた光導波路は、いずれも各比較例で得られた光導波路に比べて、ミラー損失および曲げ損失が小さかった。このことから、本発明によれば、第1カバーフィルムを透過する光路により他の光学部品と光結合する際、その結合効率に優れた光導波路が得られることが認められた。
また、各実施例で得られた光導波路では、耐折試験によっても、挿入損失の著しい増加は認められなかったことから、折り曲げ等に対する耐久性にも優れていることが認められた。一方、各比較例で得られた光導波路では、挿入損失の増分が大きいため、折り曲げ操作の繰り返しによってクラック等が発生し、伝送効率の低下を招いているおそれがある。
なお、ポリイミドフィルムに代えてポリエチレンナフタレートフィルムを用いた以外、上述した各実施例および各比較例と同様にして光導波路を製造するとともに、ミラー損失、曲げ損失および耐折性を評価した。
その結果、ポリエチレンナフタレートフィルムを用いた場合も、ポリイミドフィルムを用いた場合と同様の評価結果が得られた。