JP4430922B2 - 光学用熱可塑性樹脂成形材の製造方法 - Google Patents

光学用熱可塑性樹脂成形材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、光学用途に好適な熱可塑性樹脂成形材の製造方法に関する。詳しくは、透明性・光学等方性に優れるとともに、機械的強度に非常に優れる、光学用熱可塑性樹脂成形材の製造方法に関する。
近年、液晶表示装置やプラズマディスプレイ、有機EL表示装置等のフラットディスプレイや赤外線センサー、光導波路等の進歩に伴い、光学用透明高分子材料に対する要請が高まっている。光学用透明高分子材料に要求される特性としては、まず、透明性、光学等方性が高いことが挙げられ、それらと共に用途に応じた機能も要求される。例えば、フラットパネルディスプレイ用の保護層として用いるフィルムには、単に透明性が高いだけでなく、高度な屈折率等方性、低い光学弾性率、耐熱性、耐光性、高い表面硬度、高い機械的強度などが要求される。一方、例えば、光導波路に用いる場合には、使用するレーザーの波長域での高い透明性、屈折率の均一性、低光学弾性率、高い機械的強度などが要求される。
他方、透明性と耐熱性とを共に有し、さらに、機械的強度や成形加工性などの各種特性をも備えた透明性耐熱樹脂として、最近、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体をラクトン環化縮合反応させることによって得られるラクトン環含有重合体がいくつか提案されている(例えば、特許文献1、2、3、4参照。)。
上記ラクトン環含有重合体は、フィルム化やシート化することによって、高透明性かつ高耐熱性を有する熱可塑性樹脂成形材を与えることが可能である。しかしながら、このような熱可塑性樹脂成形材は従来、機械的強度に乏しく、また、耐光性、表面硬度も十分でない場合があり、さらに、光学等方性が十分に発現できない場合も多かったため、光学用フィルム、光学用シートなど、光学用透明高分子材料への適用ができなかった。
特開2000−230016号公報 特開2001−151814号公報 特開2002−120326号公報 特開2002−254544号公報
本発明が解決しようとする課題は、高透明性かつ高光学等方性を有するとともに機械的強度に非常に優れた、光学用熱可塑性樹脂成形材の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、ラクトン環含有重合体を主成分として含む熱可塑性樹脂材料に対して延伸処理を施すことにより、伸度が著しく高くなって靭性が向上し、高透明性かつ高耐熱性を維持したまま、引張強度が100MPa以上という従来にはない優れた機械的強度を有する新規な熱可塑性樹脂成形材を提供できることを見出した。
すなわち、本発明にかかる光学用熱可塑性樹脂成形材(以下、単に「熱可塑性樹脂成形材」と言う。)の製造方法は、透明性・光学等方性に優れるとともに機械的強度にも優れる熱可塑性樹脂成形材を得る方法であって、下記一般式で表されるラクトン環構造を有するラクトン環含有重合体を60〜100重量%含む熱可塑性樹脂材料を用いることとし、ラクトン環含有重合体を主成分として含む当該熱可塑性樹脂材料を延伸する、ことを特徴とする。
Figure 0004430922
(式中、R 、R 、R は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいても良い。)
以下では、本発明の製造方法によって得られる熱可塑性樹脂成形材を「本発明にかかる熱可塑性樹脂成形材」と言うことがある。
本発明によれば、高透明性かつ高耐熱性を維持したまま、従来にはない優れた機械的強度を有する熱可塑性樹脂成形材の製造方法を提供することができる。また、好ましくは、耐光性、表面硬度に十分に優れるとともに光学等方性が十分に発現できる。
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔熱可塑性樹脂成形材〕
本発明にかかる熱可塑性樹脂成形材は、ラクトン環含有重合体を主成分として含み、引張強度が100MPa以上である。
熱可塑性樹脂成形材中のラクトン環含有重合体の含有割合は、60〜100重量%、好ましくは70〜100重量%である。60重量%よりも少ないと、本発明の効果を十分に発揮できないおそれがある。
熱可塑性樹脂成形材中のラクトン環含有重合体は、下記一般式で表されるラクトン環構造を有する。
Figure 0004430922
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいても良い。)
本発明にかかる熱可塑性樹脂成形材は、ラクトン環含有重合体を主成分として含むが、ラクトン環含有重合体以外のその他の重合体を含んでいてもよい。
その他の重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体;などが挙げられる。
本発明にかかる熱可塑性樹脂成形材は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系の酸化防止剤や安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;フェニルサリチレート、(2,2´−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;フィラーや他の樹脂改質剤;などが挙げられる。
本発明にかかる熱可塑性樹脂成形材は、優れた機械的強度を有し、ASTM−D−882−61Tに基づいて測定した引張強度が100MPa以上である。引張強度は、好ましくは110MPa以上、より好ましくは120MPa以上、さらに好ましくは130MPa以上、特に好ましくは140MPa以上、最も好ましくは150MPa以上である。引張強度が100MPa未満の場合は、従来と同様、十分な機械的強度を発現できない。引張強度の上限は特に限定されないが、通常は、例えば、300MPa以下である。
本発明にかかる熱可塑性樹脂成形材は、ASTM−D−882−61Tに基づいて測定した伸び率が、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。伸び率が5%未満の場合は、靭性に欠けるために好ましくない。伸び率の上限は特に限定されないが、通常は、例えば、200%以下である。
本発明にかかる熱可塑性樹脂成形材は、高透明性を有するので、可視光透過率が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上である。
本発明にかかる熱可塑性樹脂成形材は、好ましくは光学等方性が十分に発現されるため、屈折率異方性(リタデーション:Re)が、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。
本発明にかかる熱可塑性樹脂成形材は、どのような形態の成形材であってもよいが、本発明の効果を十分に活用できる形態として、フィルム状やシート状が好ましい。
本発明においては、フィルム状熱可塑性樹脂成形材とシート状熱可塑性樹脂成形材とを定義上で区別するため、膜厚が350μm未満のものをフィルム状熱可塑性樹脂成形材、膜厚が350μm以上のものをシート状熱可塑性樹脂成形材と定義する。
フィルム状熱可塑性樹脂成形材の膜厚は、1μm以上350μm未満が好ましく、より好ましくは10μm以上350μm未満である。膜厚が1μmよりも薄いフィルム状熱可塑性樹脂成形材は、強度に乏しいため好ましくないし、延伸時に破断等が起こりやすいために製造も困難である。
シート状熱可塑性樹脂成形材の膜厚は、350μm〜5mmが好ましく、より好ましくは350μm〜2mmである。膜厚が5mmよりも厚いシート状熱可塑性樹脂成形材は、シート厚が均一になりにくいために好ましくない。
ラクトン環含有重合体を主成分とする従来の熱可塑性樹脂成形材は、高透明性かつ高耐熱性を有するものの、機械的強度に乏しく、また、耐光性、表面硬度も十分でない場合があり、さらに、光学等方性が十分に発現できない場合も多かったため、光学用フィルム、光学用シートなど、光学用透明高分子材料への適用ができなかった。
しかしながら、本発明にかかる熱可塑性樹脂成形材は、高透明性かつ高耐熱性を維持したまま、引張強度が100MPa以上という従来にはない優れた機械的強度を有し、さらに好ましくは、耐光性、表面硬度にも優れ、光学等方性が十分に発現できるので、光学用透明高分子材料用途に特に好適である。
特に、光学等方性が高いことは、光学フィルムや光学シートなどの光学用の透明高分子材料に特に要求される性能である。例えば、一般にディスプレイに用いられているPC(ポリカーボネート)フィルムは、わずかに応力がかかると配向に基づく屈折率異方性が生じるため、位相差フィルムには適するものの、保護フィルムとしては好ましくない。
〔熱可塑性樹脂成形材の製造方法〕
本発明にかかる熱可塑性樹脂成形材の製造方法、以下に示すように、ラクトン環含有重合体を主成分として含む熱可塑性樹脂材料を延伸することによって製造する方法である
熱可塑性樹脂材料は、ラクトン環含有重合体を主成分として含む。熱可塑性樹脂材料中のラクトン環含有重合体の含有割合は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは60〜100重量%、さらに好ましくは70〜100重量%である。50重量%よりも少ないと、本発明の効果を十分に発揮できないおそれがある。
ラクトン環含有重合体は、分子鎖中にラクトン環構造が導入された重合体であれば特に限定されず、その製造方法についても限定されないが、好ましくは、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を重合によって得た(重合工程)後に、得られた重合体(a)を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入する(ラクトン環化縮合工程)ことによって得られる。
重合工程においては、下記一般式で表される単量体(1)を含む単量体成分の重合反応を行うことにより、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得る。
Figure 0004430922
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。)
単量体(1)としては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ターシャリーブチルなどが挙げられる。これらの中でも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、耐熱性向上効果が高い点で、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが特に好ましい。これらの単量体(1)は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
重合に供する単量体成分中の単量体(1)の含有割合は、5〜90重量%が好ましく、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。単量体(1)の含有割合が5重量%よりも少ないと、得られるラクトン環含有重合体の耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が低下するおそれがある。単量体(1)の含有割合が90重量%よりも多いと、前記ラクトン環構造を形成する際に架橋反応が起こってゲル化し易くなり、流動性が低下して溶融成型しにくくなる場合があったり、未反応の水酸基が残りやすくなるために成型の際にさらに縮合反応が進行して揮発性物質が発生してシルバーストリークが入りやすくなったりするなどのおそれがある。
重合に供する単量体成分は、単量体(1)以外の単量体を含むことが好ましい。このような単量体としては、本発明の効果を損なわない範囲で選択すれば特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式で表される単量体(2)が好ましく挙げられる。単量体(1)以外の単量体は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
Figure 0004430922
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R基、または−C−O−R基を表し、Ac基はアセチル基を表し、RおよびRは水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。)
(メタ)アクリル酸エステルとしては、単量体(1)以外の(メタ)アクリル酸エステルであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;が挙げられ、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも特に、耐熱性、透明性の点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
単量体(1)以外の(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、重合に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは40〜90重量%、特に好ましくは50〜90重量%である。
水酸基含有単量体としては、単量体(1)以外の水酸基含有単量体であれば特に限定されないが、例えば、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸;などが挙げられ、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
単量体(1)以外の水酸基含有単量体を用いる場合、重合に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、0〜30重量%が好ましく、より好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸などが挙げられ、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
不飽和カルボン酸を用いる場合、重合に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、0〜30重量%が好ましく、より好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
単量体(2)としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
単量体(2)を用いる場合、重合に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、0〜30重量%が好ましく、より好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
単量体成分を重合して分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得るための重合反応の形態としては、溶剤を用いた重合形態であることが必要であり、溶液重合が特に好適である。
重合温度、重合時間は、使用する単量体の種類、使用比率等によって異なるが、好ましくは、重合温度0〜150℃、重合時間0.5〜20時間であり、さらに好ましくは、重合温度80〜140℃、重合時間1〜10時間である。
重合に供する単量体成分の初期仕込み濃度は特に限定されないが、例えば、高分子量のラクトン環含有重合体を得ることを目的とする場合には、好ましくは55〜95重量%であり、より好ましくは55〜90重量%、さらに好ましくは55〜80重量%、特に好ましくは55〜70重量%である。
重合溶剤は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンケトンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;などが挙げられ、これらの1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。重合に供する単量体成分の初期仕込み濃度が高濃度の場合には、重合反応液のゲル化を抑制するために、ケトン系溶剤および/またはエーテル系溶剤を用いることが好ましい。また、使用する溶剤の沸点が高すぎると、最終的に得られるラクトン環含有重合体の残存揮発分が多くなることから、沸点が50〜200℃のものが好ましい。
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられ、これらは1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。なお、重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや反応条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
重合を行う際には、反応液のゲル化を抑止するために、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50重量%以下となるように制御することが好ましい。具体的には、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50重量%を超える場合には、重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加して50重量%以下となるように制御することが好ましい。重合反応混合物中の生成した重合体の濃度は、より好ましくは45重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下である。なお、重合反応混合物中の重合体の濃度があまりに低すぎると生産性が低下するため、重合反応混合物中の重合体の濃度下限としては、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましい。重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加する形態としては、特に限定されず、連続的に重合溶剤を添加しても良いし、間欠的に重合溶剤を添加しても良い。このように重合反応混合物中の生成した重合体の濃度を制御することによって、反応液のゲル化をより十分に抑止することができ、特に、ラクトン環含有割合を増やして耐熱性を向上させるために分子鎖中の水酸基とエステル基の割合を高めた場合であってもゲル化を十分に抑制できる。添加する重合溶剤としては、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤であっても良いし異なる種類の溶剤であっても良いが、好ましくは、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤を用いる。また、添加する重合溶剤は、1種のみの溶剤であっても良いし、2種以上の混合溶剤であっても良い。
以上の重合反応を終了した時点で得られる重合反応混合物中には、得られた重合体以外に溶剤が含まれているが、溶剤を完全に除去して重合体を固体状態で取り出す必要はなく、溶剤を含んだ状態で続くラクトン環化縮合工程に導入することが好ましい。また、必要な場合は、固体状態で取り出した後に、続くラクトン環化縮合工程に好適な溶剤を再添加してもよい。
重合工程で得られた重合体は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)であり、重合体(a)の重量平均分子量は、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。重合工程で得られた重合体(a)は、続くラクトン環化縮合工程において、加熱処理されることによりラクトン環構造が重合体に導入され、ラクトン環含有重合体となる。
重合体(a)へラクトン環構造を導入するための反応は、加熱により、重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基が環化縮合してラクトン環構造を生じる反応であり、その環化縮合によってアルコールが副生する。ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、高い耐熱性が付与される。ラクトン環構造を導く環化縮合反応の反応率が不十分であると、耐熱性が十分に向上しなかったり、成形時の加熱処理によって成形途中に縮合反応が起こり、生じたアルコールが成形品中に泡やシルバーストリークとなって存在してしまったりするので好ましくない。
ラクトン環化縮合工程において得られるラクトン環含有重合体は、好ましくは、下記一般式で表されるラクトン環構造を有する。
Figure 0004430922
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいても良い。)
重合体(a)を加熱処理する方法については特に限定されず、公知の方法が利用できる。例えば、重合工程によって得られた、溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。また、溶剤の存在下で、必要に応じて閉環触媒を用いて加熱処理してもよい。また、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を持つ加熱炉や反応装置、脱揮装置のある押出機等を用いて加熱処理を行うこともできる。
環化縮合反応を行う際に、重合体(a)に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。また、環化縮合反応を行う際には、必要に応じて、環化縮合反応の触媒として一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いてもよいし、特開昭61−254608号公報や特開昭61−261303号公報に示されている様に、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などを用いてもよい。
環化縮合反応を行う際には、有機リン化合物を触媒として用いることが好ましい。触媒として有機リン化合物を用いることにより、環化縮合反応率を向上させることができるとともに、得られるラクトン環含有重合体の着色を大幅に低減することができる。さらに、有機リン化合物を触媒として用いることにより、後述の脱揮工程を併用する場合において起こり得る分子量低下を抑制することができ、優れた機械的強度を付与することができる。
環化縮合反応の際に触媒として用いることができる有機リン化合物としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等のアルキル(アリール)亜ホスホン酸(但し、これらは、互変異性体であるアルキル(アリール)ホスフィン酸になっていてもよい)およびこれらのジエステルあるいはモノエステル;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸等のジアルキル(アリール)ホスフィン酸およびこれらのエステル;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、トリフルオルメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等のアルキル(アリール)ホスホン酸およびこれらのジエステルあるいはモノエステル;メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸等のアルキル(アリール)亜ホスフィン酸およびこれらのエステル;亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニル等のリン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;メチルホスフィン、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のモノあるいはジあるいはトリアルキル(アリール)ホスフィン;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、フェニルジクロロホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジフェニルクロロホスフィン等のアルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化メチルホスフィン、酸化エチルホスフィン、酸化フェニルホスフィン、酸化ジメチルホスフィン、酸化ジエチルホスフィン、酸化ジフェニルホスフィン、酸化トリメチルホスフィン、酸化トリエチルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィン等の酸化モノあるいはジあるいはトリアルキル(アリール)ホスフィン;塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム等のハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム;などが挙げられる。これらの中でも、触媒活性が高くて低着色性のため、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステル、アルキル(アリール)ホスホン酸が好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステルがより好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、リン酸ジエステルあるいはモノエステルが特に好ましい。これら有機リン化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
環化縮合反応の際に用いる触媒の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、重合体(a)に対して0.001〜5重量%、より好ましくは0.01〜2.5重量%であり、さらに好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。触媒の使用量が0.001重量%未満であると、環化縮合反応の反応率の向上が十分に図れないおそれがあり、一方、5重量%を超えると、着色の原因となったり、重合体の架橋により溶融賦形しにくくなったりするので、好ましくない。
触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加しても良い。
環化縮合反応を溶剤の存在下で行い、且つ、環化縮合反応の際に、脱揮工程を併用することが好ましい。この場合、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態、および、脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに過程の一部においてのみ併用する形態が挙げられる。脱揮工程を併用する方法では、縮合環化反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に有利となる。
脱揮工程とは、溶剤、残存単量体等の揮発分と、ラクトン環構造を導く環化縮合反応により副生したアルコールを、必要により減圧加熱条件下で、除去処理する工程をいう。この除去処理が不十分であると、生成した樹脂中の残存揮発分が多くなり、成形時の変質等によって着色したり、泡やシルバーストリークなどの成形不良が起こったりする問題等が生じる。
環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、使用する装置については特に限定されないが、本発明をより効果的に行うために、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置やベント付き押出機、また、前記脱揮装置と前記押出機を直列に配置したものを用いることが好ましく、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置またはベント付き押出機を用いることがより好ましい。
前記熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲が好ましく、200〜300℃の範囲がより好ましい。反応処理温度が150℃より低いと、環化縮合反応が不十分となって残存揮発分が多くなるおそれがあり、350℃より高いと、着色や分解が起こるおそれがある。
前記熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場合の、反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲が好ましく、798〜66.5hPa(600〜50mmHg)の範囲がより好ましい。上記圧力が931hPaより高いと、アルコールを含めた揮発分が残存し易いという問題があり、1.33hPaより低いと、工業的な実施が困難になっていくという問題がある。
前記ベント付き押出機を用いる場合、ベントは1個でも複数個でもいずれでもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。
前記ベント付き押出機を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲が好ましく、200〜300℃の範囲がより好ましい。上記温度が150℃より低いと、環化縮合反応が不十分となって残存揮発分が多くなるおそれがあり、350℃より高いと、着色や分解が起こるおそれがある。
前記ベント付き押出機を用いる場合の、反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲が好ましく、798〜13.3hPa(600〜10mmHg)の範囲がより好ましい。上記圧力が931hPaより高いと、アルコールを含めた揮発分が残存し易いという問題があり、1.33hPaより低いと、工業的な実施が困難になっていくという問題がある。
なお、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、後述するように、厳しい熱処理条件では得られるラクトン環含有重合体の物性が悪化するおそれがあるので、好ましくは、上述した脱アルコール反応の触媒を使用し、できるだけ温和な条件で、ベント付き押出機等を用いて行うことが好ましい。
また、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、好ましくは、重合工程で得られた重合体(a)を溶剤とともに環化縮合反応装置系に導入するが、この場合、必要に応じて、もう一度ベント付き押出機等の上記反応装置系に通してもよい。
脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに、過程の一部においてのみ併用する形態を行っても良い。例えば、重合体(a)を製造した装置を、さらに加熱し、必要に応じて脱揮工程を一部併用して、環化縮合反応を予めある程度進行させておき、その後に引き続いて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行い、反応を完結させる形態である。
先に述べた環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態では、例えば、重合体(a)を、2軸押出機を用いて、250℃近い、あるいはそれ以上の高温で熱処理する時に、熱履歴の違いにより環化縮合反応が起こる前に一部分解等が生じ、得られるラクトン環含有重合体の物性が悪くなるおそれがある。そこで、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う前に、予め縮合環化反応をある程度進行させておくと、後半の反応条件を緩和でき、得られるラクトン環含有重合体の物性の悪化を抑制できるので好ましい。特に好ましい形態としては、脱揮工程を環化縮合反応の開始から時間をおいて開始する形態、すなわち、重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基をあらかじめ環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態が挙げられる。具体的には、例えば、予め釜型の反応器を用いて溶剤の存在下で環化縮合反応をある程度の反応率まで進行させておき、その後、脱揮装置のついた反応器、例えば、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置や、ベント付き押出機等で、環化縮合反応を完結させる形態が好ましく挙げられる。特にこの形態の場合、環化縮合反応用の触媒が存在していることがより好ましい。
上述のように、重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基を予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う方法は、本発明においてラクトン環含有重合体を得る上で好ましい形態である。この形態により、ガラス転移温度がより高く、環化縮合反応率もより高まり、耐熱性に優れたラクトン環含有重合体が得られる。この場合、環化縮合反応率の目安としては、実施例に示すダイナッミクTG測定における、150〜300℃間での重量減少率が2%以下である事が好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際に採用できる反応器は特に限定されないが、好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置等が挙げられ、さらに、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に好適なベント付き押出機も使用できる。より好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器である。しかしながら、ベント付き押出機等の反応器を使用するときでも、ベント条件を温和にしたり、ベントをさせなかったり、温度条件やバレル条件、スクリュウ形状、スクリュウ運転条件等を調整することで、オートクレーブや釜型反応器での反応状態と同じ様な状態で環化縮合反応を行うことが可能である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、好ましくは、重合工程で得られた重合体(a)と溶剤とを含む混合物を、(i)触媒を添加して、加熱反応させる方法、(ii)無触媒で加熱反応させる方法、および、前記(i)または(ii)を加圧下で行う方法が挙げられる。
なお、ラクトン環化縮合工程において環化縮合反応に導入する「重合体(a)と溶剤とを含む混合物」とは、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま使用してもよいし、一旦溶剤を除去したのちに環化縮合反応に適した溶剤を再添加してもよいことを意味する。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前にあらかじめ行う環化縮合反応の際に再添加できる溶剤としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;クロロホルム、DMSO、テトラヒドロフランなどでもよいが、好ましくは、重合工程で用いることができる溶剤と同じ種類の溶剤である。
上記方法(i)で添加する触媒としては、一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒またはエステル交換触媒、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などが挙げられるが、本発明においては、前述の有機リン化合物を用いることが好ましい。触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加しても良い。添加する触媒の量は特に限定されないが、重合体(a)の重量に対し、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.01〜2.5重量%、さらに好ましくは0.01〜0.1重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。方法(i)の加熱温度と加熱時間は特に限定されないが、加熱温度としては、好ましくは室温以上、より好ましくは50℃以上であり、加熱時間としては、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応率が低下するので好ましくない。また、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こる場合があるので好ましくない。
上記方法(ii)としては、例えば、耐圧性の釜などを用いて、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま加熱する方法等が挙げられる。加熱温度としては、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。加熱時間としては、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応率が低下するので好ましくない。また、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こる場合があるので好ましくない。
上記方法(i)、(ii)ともに、条件によっては加圧下となっても何ら問題はない。
脱揮工程を同時に併用した縮合環化反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、溶剤の一部が反応中に自然に揮発しても何ら問題ではない。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の終了時、すなわち、脱揮工程開始直前における、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での重量減少率は、2%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。重量減少率が2%より高いと、続けて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行っても、環化縮合反応率が十分高いレベルまで上がらず、得られるラクトン環含有重合体の物性が低下するおそれがある。なお、上記の環化縮合反応を行う際に、重合体(a)に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。
重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基を予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態の場合、予め行う環化縮合反応で得られた重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)と溶剤を、そのまま脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に導入してもよいし、必要に応じて、前記重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)を単離してから溶剤を再添加する等のその他の処理を経てから脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に導入しても構わない。
脱揮工程は環化縮合反応と同時に終了することには限らず、環化縮合反応の終了から時間をおいて終了しても構わない。
好ましくは以上の方法で得られたラクトン環含有重合体は、透明性と耐熱性とを共に有し、さらに、機械的強度や成形加工性などの各種特性をも備えたラクトン環含有重合体である。
ラクトン環含有重合体は、重量平均分子量が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。
ラクトン環含有重合体は、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での重量減少率が1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下上、さらに好ましくは0.3%以下である。
ラクトン環含有重合体は、環化縮合反応率が高いので、成形後の成形品中に泡やシルバーストリークが入るという欠点が回避できる。さらに、高い環化縮合反応率によってラクトン環構造が重合体に十分に導入されるため、得られたラクトン環含有重合体が十分に高い耐熱性を有している。
ラクトン環含有重合体は、15重量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が6以下となるものが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。着色度(YI)が6を越えると、着色により透明性が損なわれ、本来目的とする用途に使用できない場合がある。
ラクトン含有重合体中のラクトン環構造の占める割合は、ラクトン環構造が5〜50重量%含まれることが好ましく、より好ましくは10〜40重量%、さらにより好ましくは10〜30重量%である。
ラクトン環含有重合体は、熱重量分析(TG)における5%重量減少温度が、330℃以上であることが好ましく、より好ましくは350℃以上、さらに好ましくは360℃以上である。熱重量分析(TG)における5%重量減少温度は、熱安定性の指標であり、これが330℃未満であると、十分な熱安定性を発揮できないおそれがある。
ラクトン環含有重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上、最も好ましくは140℃以上である。
ラクトン環含有重合体は、それに含まれる残存揮発分の総量が、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下である。残存揮発分の総量が1500ppmよりも多いと、成形時の変質等によって着色したり、発泡したり、シルバーストリークなどの成形不良の原因となる。
ラクトン環含有重合体は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定された全光線透過率が、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は、透明性の目安であり、これが85%未満であると、透明性が低下し、本来目的とする用途に使用できないおそれがある。
ラクトン環含有重合体は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定された曇価が、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。曇価は、透明性の目安であり、これが5%を越えると、透明性が低下し、本来目的とする用途に使用できないこととなる。
ラクトン環含有重合体は、射出成形により得られる成形品において、ノッチ(notch)のない試験片を用いた以外はASTM−D−256に準じた方法で測定された衝撃強度(アイゾット値)が、147N・cm/cm(15kgf・cm/cm)以上であることが好ましく、より好ましくは196N・cm/cm(20kgf・cm/cm)以上、さらに好ましくは、235N・cm/cm(24kgf・cm/cm)以上である。
熱可塑性樹脂材料は、ラクトン環含有重合体を主成分として含むが、ラクトン環構造を有する重合体以外のその他の重合体を含んでいてもよい。
その他の重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体;などが挙げられる。
熱可塑性樹脂材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系の酸化防止剤や安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;フェニルサリチレート、(2,2´−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;フィラーや他の樹脂改質剤;などが挙げられる。
熱可塑性樹脂材料は、ラクトン環含有重合体に、必要により、その他の重合体やその他の添加剤を、従来公知の混合方法にて混合することによって得ることができる。
以上のようにして得られた熱可塑性樹脂材料を延伸することによって、本発明にかかる熱可塑性樹脂成形材を得ることができる。
フィルム状の熱可塑性樹脂成形材を得るためには、熱可塑性樹脂材料をフィルム成形するとともに延伸してもよいが、未延伸のフィルムを一旦成形した後に延伸を行うことが好ましい。
シート状の熱可塑性樹脂成形材を得るためには、熱可塑性樹脂材料をシート成形するとともに延伸してもよいが、未延伸のシートを一旦成形した後に延伸を行うことが好ましい。
フィルム成形の方法としては、公知のフィルム成形方法を適用することができる。例えば、乾式成膜法、湿式成膜法、溶融成膜法によって得ることができ、溶融成膜法の場合は、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形などを適用することができる。成形温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
シート成形の方法は、公知のシート成形方法を適用することができる。例えば、乾式成膜法、湿式成膜法、溶融成膜法によって得ることができ、溶融成膜法の場合は、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形などを適用することができる。成形温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
延伸を行う方法としては、従来公知の延伸方法が適用できる。
フィルム状やシート状の熱可塑性樹脂成形材を製造する場合には、例えば、一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸などを用いることができる。光学的異方性を抑える点からは同時二軸延伸を用いることが特に好ましいが、フィルム状やシート状の場合は、一軸延伸、逐次二軸延伸でも屈折率異方性が小さいために好ましく用いることができる。
延伸温度としては、熱可塑性樹脂材料のガラス転移温度近辺で行うことが好ましく、具体的には、(ガラス転移温度−30)℃〜(ガラス転移温度+100)℃で行うことが好ましく、より好ましくは(ガラス転移温度−20)℃〜(ガラス転移温度+80)℃である。(ガラス転移温度−30)℃よりも低いと、延伸に伴って結晶化に基づく白化が生じるために好ましくない。(ガラス転移温度+100)℃よりも高いと、樹脂の流動(フロー)が起こり安定な延伸が行えなくなるために好ましくない。
面積比で定義した延伸倍率は、好ましくは1.3〜10倍の範囲、より好ましくは1.5〜5倍の範囲で行われる。1.3倍よりも小さいと、延伸に伴う靭性の向上につながらないために好ましくない。10倍よりも大きいと、延伸倍率を上げるだけの効果が認められない。
延伸速度(一方向)としては、好ましくは100〜20000%/分の範囲、より好ましくは100〜10000%/分の範囲である。100%/分よりも遅いと、十分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなるために好ましくない。20000%/分よりも早いと、延伸フィルムの破断等が起こるおそれがあるために好ましくない。
フィルムやシートの光学等方性や力学特性を安定化させるため、延伸処理後に熱処理(アニーリング)などを行うこともできる。
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。
<重合反応率、重合体組成分析>
重合反応時の反応率および重合体中の特定単量体単位の含有率は、得られた重合反応混合物中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、装置名:GC17A)を用いて測定して求めた。
<ダイナミックTG>
重合体(もしくは重合体溶液あるいはペレット)を一旦テトラヒドロフランに溶解もしくは希釈し、過剰のヘキサンもしくはメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1mmHg(1.33hPa)、80℃、3時間以上)することによって揮発成分などを除去し、得られた白色固形状の樹脂を以下の方法(ダイナミックTG法)で分析した。
測定装置:Thermo Plus2 TG−8120 Dynamic TG((株)リガク社製)
測定条件:試料量 5〜10mg
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素フロー 200ml/min
方法:階段状等温制御法(60℃〜500℃の間で重量減少速度値0.005%/sec以下で制御)
<脱アルコール反応率とラクトン環構造の占める割合>
脱アルコール反応率を、重合で得られた重合体組成からすべての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる重量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において重量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による重量減少から求めた。
すなわち、ラクトン環構造を有した重合体のダイナミックTG測定において150℃から300℃までの間の重量減少率の測定を行い、得られた実測重量減少率を(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり脱アルコールすると仮定した時の理論重量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した重量減少率)を(Y)とする。なお、理論重量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体のモル比、すなわち当該重合体組成における前記原料単量体の含有率から算出することができる。これらの値(X、Y)を脱アルコール計算式:
1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))
に代入してその値を求め、%で表記すると、脱アルコール反応率が得られる。そして、この脱アルコール反応率だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、ラクトン環化に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体の当該重合体組成における含有量(重量比)に、脱アルコール反応率を乗じることで、当該重合体中のラクトン環構造の占める割合を算出することができる。
例として、後述の実施例1で得られるペレットにおいてラクトン環構造の占める割合を計算する。この重合体の理論重量減少率(Y)を求めてみると、メタノールの分子量は32であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの重合体中の含有率(重量比)は組成上25.0重量%であるから、(32/116)×25.0≒6.90重量%となる。他方、ダイナミックTG測定のよる実測重量減少率(X)は0.22重量%であった。これらの値を上記の脱アルコール計算式に当てはめると、1−(0.22/6.90)≒0.968となるので、脱アルコール反応率は96.8%である。そして、重合体ではこの脱アルコール反応率分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの当該重合体中における含有率(25.0重量%)に、脱アルコール反応率(96.8%=0.968)を乗じると、当該重合体中のラクトン環構造の占める割合は24.2(25.0×0.968)重量%となる。
<重量平均分子量>
重合体の重量平均分子量は、GPC(東ソー社製GPCシステム)のポリスチレン換算により求めた。
<樹脂の熱分析>
樹脂の熱分析は、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50cc/minの条件で、DSC((株)リガク社製、装置名:DSC−8230)を用いて行った。なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に従い、中点法で求めた。
<機械的特性>
フィルムの引張り強度、伸び率は、ASTM−D−882−61Tに基づいて測定した。
<鉛筆硬度>
フィルムの表面硬度を、JIS K−5400に基づいて、鉛筆引っかき試験機を用いて測定した。
<光学特性>
屈折率異方性(リタデーション:Re)は、王子計測器社製KOBRA−21ADHを用いて測定した。可視光透過率は、日本電色工業社製NDH−1001DPを用いて測定した。
〔製造例1〕
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた30Lの反応釜に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル10部、メタクリル酸メチル40部、トルエン50部を仕込み、窒素を通じつつ100℃まで昇温した。還流したところで、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.15部を加えて、還流下(100〜110℃)で溶液重合を行い、5時間かけて熟成を行った。重合の反応率は95.0%、重合体中の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの含有率(重量比)は20.1%であった。また、この重合体の重量平均分子量は150000であった。
得られた重合体成分100部に対して37.5部のメチルイソブチルケトン、および、重合体溶液100部に対して0.1部のリン酸メチル/リン酸ジメチル混合物(東京化成工業社製)を加え、窒素を通じつつ、還流下(95〜100℃)で5時間、環化縮合反応を行った。得られた反応溶液の一部を取り出し、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.62%の重量減少率を検知した。次いで、得られた重合体溶液を、バレル温度250℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa、リアベント数1個とフォアベント数4個のベントタイプスクリュー2軸押出機(直径=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時間の処理速度で導入し、押出機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押し出すことにより、透明な熱可塑性樹脂(1)のペレットを得た。得られたペレットについて、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.2%の重量減少率を検知した。また、このペレットの重量平均分子量は165000であり、ガラス転移温度は134℃であった。
〔製造例2〕
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30Lの反応釜に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル25部、メタクリル酸メチル75部、メチルイソブチルケトン(MIBK)38部、メチルエチルケトン(MEK)9.5部を仕込み、窒素を通じつつ100℃まで昇温し、還流したところで、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.064部を加えると同時に、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.064部、MIBK2.8部、MEK0.7部からなる溶液を4時間かけて滴下しながら95℃〜110℃で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行なった。重合途中、溶液中のポリマー濃度が45%以下となるように、適宜、混合溶媒(MIBK:MEK=4:1)を重合反応開始2時間後から7時間後まで滴下した。
環化縮合反応及び押出し機内での環化縮合反応と脱揮は製造例1と同様に行い、透明な熱可塑性樹脂(2)のペレットを得た。得られたペレットについて、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.18%の重量減少率を検知した。また、このペレットの重量平均分子量は210,000であり、ガラス転移温度は138℃であった。
〔実施例1〕
製造例1で得られた熱可塑性樹脂(1)を260℃の押出温度でシリンダー径が20mmの押出機を用い下記条件で押出成形し、200μmの厚みの未延伸フィルムを作製した。
ダイ:温度260℃、幅1000mm
つや付き3本ロール温度:第1ロール125℃、第2ロール142℃、第3ロール118℃
引き取り速度:1.5m/分
得られた未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機(株)製)により、160℃の延伸温度、一方向1000%/分の延伸速度、一方向2倍の延伸倍率で同時二軸延伸し、45μmの厚みの延伸フィルム(1)を作製した。
得られた延伸フィルム(1)の各種測定結果を表1に示した。
〔実施例2〕
製造例2で得られた熱可塑性樹脂(2)を実施例1と同様の条件で押出しフィルム化を行い、100μmの厚みの未延伸フィルムを作製した。得られた未延伸フィルムを2倍の延伸倍率で一軸延伸し、50μmの厚みの延伸フィルム(2)を作製した。
得られた延伸フィルム(2)の各種測定結果を表1に示した。
〔比較例1〕
製造例1で得られた熱可塑性樹脂(1)を実施例1と同様の条件で押出しフィルム化を行い、50μmの厚みの未延伸フィルム(c1)を作製した。
得られた未延伸フィルム(c1)の各種測定結果を表1に示した。
〔比較例2〕
光学用に用いられているポリカーボネートを実施例1と同様の条件で押出しフィルム化、同時二軸延伸を行い、46μmの厚みの延伸フィルム(c2)を作製した。
得られた延伸フィルム(c2)の各種測定結果を表1に示した。
〔実施例3〕
製造例2で得られた熱可塑性樹脂(2)を260℃の押出温度でシリンダー径が20mmの押出機を用い下記条件で押出成形し、950μmの厚みの未延伸シートを作製した。
ダイ:温度260℃、幅1000mm
つや付き3本ロール温度:第1ロール125℃、第2ロール142℃、第3ロール118℃
引き取り速度:0.3m/分
得られた未延伸シートを二軸延伸試験装置(東洋精機(株)製)により、160℃の延伸温度、一方向200%/分の延伸速度、一方向1.5倍の延伸倍率で同時二軸延伸し、412μmの厚みの延伸シート(3)を作製した。
得られた延伸シート(3)の各種測定結果を表1に示した。
Figure 0004430922
本発明にかかる延伸材は、例えば、液晶表示装置やプラズマディスプレイ、有機EL表示装置等のフラットディスプレイや赤外線センサー、光導波路等に好適な光学用透明高分子材料として使用することができる。


Claims (1)

  1. 透明性・光学等方性に優れるとともに機械的強度にも優れる熱可塑性樹脂成形材を得る方法であって、下記一般式で表されるラクトン環構造を有するラクトン環含有重合体を60〜100重量%含む熱可塑性樹脂材料を用いることとし、ラクトン環含有重合体を主成分として含む当該熱可塑性樹脂材料を延伸する、ことを特徴とする、光学用熱可塑性樹脂成形材の製造方法。
    Figure 0004430922
    (式中、R 、R 、R は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいても良い。)
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