JP3541766B2 - プリプレグ及び積層板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品を搭載する回路基板等を形成するのに用いられるプリプレグ及び積層板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化・高密度化に伴って、電子部品を搭載する回路基板も従来の片面基板から両面基板、多層基板の採用が進み、より高密度配線及び高密度集積可能な回路基板の開発が行われている。
【0003】
高密度配線及び高密度集積可能な回路基板においては、従来、広く用いられてきたドリル加工による基板への穴(スルーホール)加工に代わって、より高速で微細な加工(穴径:200μm以下)が可能なレーザ等のエネルギービームを用いた加工法の採用が浸透している。また、基板材料としては、未硬化分を含むBステージ状態の熱硬化性樹脂フィルムや、有機繊維あるいは無機繊維の織物または不織布の基材と熱硬化性樹脂の複合材料であるプリプレグなどが用いられている。
【0004】
図1にプリプレグAを用いた回路基板の製造工程フローを示す。回路基板10の製造工程は穴開け加工工程と接続手段形成工程を具備するものである。プリプレグAに穴開け加工を行う目的は、回路基板10の表裏あるいは内層に形成された回路11を相互に接続するためであり、穴開け加工を行った後に導電ペーストの充填やめっきなどの電気的な接続手段6の形成が行われる。
【0005】
例えば、プリプレグAに形成した貫通穴12に導電性粒子を含む導電ペーストを印刷法等を用いて充填し、プリプレグAの表裏に銅箔などの金属箔13を配置して加熱加圧することにより一体化後、金属箔13をパターンニングして両面に回路11が形成される。この場合、加熱加圧時にプリプレグAに含まれている樹脂成分15が軟化、溶融することが必要なので、プリプレグAの樹脂成分15として未硬化成分を含むBステージの熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂などが用いられる。
【0006】
このようなプリプレグAに対してレーザ等のエネルギービーム14を照射して穴開け加工を行なうと、プリプレグA中の樹脂成分15および基材の繊維16がエネルギービーム14の熱により昇華して周囲に飛散して貫通穴12が形成される。しかし、貫通穴12の周辺部分においては、穴開け加工には寄与しない低エネルギーのビーム熱により樹脂成分15が軟化、溶融し、この軟化、溶融した樹脂成分15が貫通穴12の内壁ににじみ出し、図2に示すように、貫通穴12の内壁面に薄い樹脂膜25として部分的あるいは全面に形成される。
【0007】
さらに、プリプレグAの樹脂成分15は吸湿するとエネルギービーム14の熱により更に軟化、溶融しやすくなり、樹脂成分15がにじみ出す量も多くなる。そして、吸湿量が大きくなると、にじみ出した樹脂成分が互いに接触して融着し、その後の冷却に伴う凝固収縮により薄い樹脂膜25を形成して貫通穴12を塞いでしまうものである。この現象は、特に加工穴径が小さくなるほど顕著になる。
【0008】
図3は従来のプリプレグAの吸水率と樹脂膜25の形成による回路基板10の不良率との関係について示した概念図(グラフ)であり、吸水率が大きくなると、ある吸水率(プリプレグAの質量に対する吸湿水分の質量比、以下単位をwt%と表示)を境にして急激に不良率が大きくなる(発明者による実験値では0.5wt%)。また、不良率および吸水率のしきい値は、貫通孔12の穴径の違いによって変わる。このような樹脂膜25の形成された貫通穴12においては、後工程で施される電気的な接続手段6が形成されにくいために、例えば、導電物質やめっきが反対面まで形成されない、あるいは十分な量の導電物質が充填されないために、回路基板10の表裏あるいは内層に形成された回路11との電気的接続がなされない、または接続抵抗が高くなるという課題があった。更に、プリプレグAの吸湿を抑えるために、製造や保管場所の環境整備に莫大な資金が必要であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、レーザによる穴開け加工工程における樹脂膜の形成を減少あるいは防止して回路基板の歩留まり向上を図ることができ、また、保管や製造場所の湿度管理が安易で、且つレーザによる高品質の穴開け加工を実現することにより回路の接続等の信頼性が高い回路基板を得ることができるプリプレグを提供することを目的とするものである。
【0010】
また、本発明は、レーザによる高品質の穴開け加工を実現することにより回路の接続等の信頼性が高い回路基板を得ることができる積層板を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るプリプレグAは、レーザ加工用のプリプレグAであって、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、エポキシ化合物の硬化剤としてメチレン結合のオルソ率が少なくとも60%以上のハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂とを、有機繊維の織物あるいは有機繊維の不織布の基材に含有して成ることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項2に係るプリプレグAは、請求項1の構成に加えて、ハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂として、軟化点が80〜140℃のものを用いて成ることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項3に係るプリプレグAは、請求項1又は2の構成に加えて、ハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂として、ビスフェノールノボラック樹脂を用いて成ることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項4に係るプリプレグAは、請求項1乃至3の構成に加えて、エポキシ化合物と硬化剤の当量比が、フェノール性水酸基当量/エポキシ当量=0.5〜1.5であることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項5に係るプリプレグAは、請求項1乃至4の構成に加えて、エポキシ化合物の骨格が、ジシクロペンタジエン類であることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項6に係るプリプレグAは、請求項1乃至5の構成に加えて、エポキシ化合物の骨格が、ナフタレン類であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項7に係る積層板Bは、請求項1乃至6のいずれかに記載のプリプレグAを加熱加圧成型して成ることを特徴とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
本発明で使用するエポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものであればどのようなものでもよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂及びこれらのエポキシ樹脂構造体中の水素原子の一部をハロゲン化することにより難燃化したエポキシ樹脂等の単独、変性物、混合物が挙げられる。
【0020】
特に、エポキシ化合物(エポキシ樹脂)の主骨格がジシクロペンタジエン類あるいはナフタレン類であると、耐熱性および吸湿特性に優れた積層板Bが得られるので好ましい。具体的には、例えば、下記一般式(1)で示されるジシクロペンタジエン・フェノール類変性エポキシ樹脂や1,5−シグリシジルナフタレン、1,6−シグリシジルナフタレン、1,7−シグリシジルナフタレン、1,8−シグリシジルナフタレン、2,5−シグリシジルナフタレン、2,6−シグリシジルナフタレン、2,7−シグリシジルナフタレン、2,8−シグリシジルナフタレンなどを用いることができる。
【0021】
【化1】
【0022】
本発明で使用する硬化剤であるハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂は、ビスフェノールA、ビフェニル、フェノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドの反応物であって、オルソ位でのメチレン結合が多くパラ位でのメチレン結合が少ないオルソ率が60%以上のものをいう。尚、オルソ率は赤外吸収スペクトルにより以下の計算式で算出した。
【0023】
オルソ率(%)=(D760cm-1/(D820cm-1×1.44+D760cm-1))×100
ハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂のオルソ率が60%未満であれば、貫通穴12を形成するための穴開け加工で樹脂膜25が発生する恐れがある。尚、ハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂のオルソ率は高い方が好ましいので、その上限は100%である。また、2,2ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)はホルムアルデヒドとフェノール性水酸基のオルソ位にしか反応位を有していないので、ビスフェノールAのホルムアルデヒド樹脂もハイオルソフェノール樹脂に含まれる。
【0024】
また、ハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂がビスフェノールノボラック樹脂であると、貫通穴12に樹脂膜25の発生がより起こり難くて好ましい。また、ハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂の軟化点(固型分軟化点)が80〜140℃であると、基材(後述の有機繊維の織布あるいは不織布)への含浸性が良好なために好ましい。つまり、ハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂の軟化点が80℃未満であったり140℃より大きいと、基材へ樹脂組成物の樹脂成分15が含浸しにくくなって成型不良等を起こす恐れがある。
【0025】
本発明で使用する基材は、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、ポリアクリル繊維等の有機繊維(図1に符号16で示す)を使用した織物もしくは不織布などを使用することができる。アラミド繊維としてはポリパラフェニレンテレフタルアミドや、コポリパラフェニレン−3,4'−オキシドフェニレンテレフタルアミド等の繊維が挙げられる。また、液晶ポリエステル繊維としては、p−オキシベンゾイルと6−オキシ−2−ナフトールの共重合体等の全芳香族ポリエステルの繊維が挙げられる。また、有機繊維が芳香族アラミド繊維であると、レーザー加工性、耐熱性、面内の寸法安定性を両立することができて好ましい。
【0026】
そして、本発明のプリプレグAを形成するにあたっては、次のようにして行なう。まず、エポキシ化合物と硬化剤と溶剤を混合して樹脂組成物(樹脂ワニス)を調製する。この時、必要に応じて2−エチル−4−メチルイミダゾールなどの硬化促進剤やタルクなどの充填剤を樹脂組成物に配合しても良い。また、溶剤としてはメチルエチルケトン(MEK)などの有機溶剤を用いることができる。エポキシ化合物と硬化剤は、その当量比がフェノール性水酸基当量/エポキシ当量=0.5〜1.5となるように配合することが好ましい。フェノール性水酸基当量がエポキシ樹脂当量に対して0.5未満あるいは1.5を超える場合は、得られる硬化物(積層板の絶縁層など)の耐熱性が低下する場合がある。
【0027】
次に、上記の樹脂組成物を基材に塗布したり、基材を上記の樹脂組成物に浸漬したりして基材に樹脂組成物を含浸させる。含浸させる樹脂組成物の量は、樹脂組成物中の固形分(エポキシ化合物と硬化剤と硬化促進剤と充填材)及び基材の合計質量100質量部に対し、樹脂組成物中の固形分が40〜70質量部となるようにすると好ましい。40質量部未満の場合は、基材に含有させる固形分の量の面内ばらつきが生じて、得られる積層板の耐熱性が低下したり電気特性にばらつきが生じる場合があり、70質量部を超える場合は、得られた積層板の板厚のばらつきが大きくなる場合がある。
【0028】
この後、樹脂組成物を含浸させた基材を加熱することにより、溶剤を蒸発除去して乾燥させると共にエポキシ化合物と硬化剤の反応を進めてBステージ状態にすることによって、エポキシ化合物と硬化剤を樹脂成分15として基材に含有する図1(a)に示すような本発明のプリプレグAを形成することができる。尚、プリプレグAの製造時の加熱条件は、エポキシ化合物と硬化剤の種類等によって異なるが、温度が120〜170℃で時間が3〜20分である。
【0029】
上記のプリプレグを用いて本発明の積層板を形成するにあたっては、従来と同様に図1(a)〜(e)の工程に基づいて行なうことができる。すなわち、まず、図1(b)に示すように、プリプレグAに対してレーザ等のエネルギービーム14を照射して穴開け加工を行なうことによって貫通穴12を形成する。次に、図1(c)に示すように、貫通穴12に導電性粒子を含む導電ペーストを印刷法等を用いて充填することによって電気的な接続手段6を形成する。次に、図1(d)に示すように、プリプレグAの表裏に銅箔などの金属箔13を配置した後、これを加熱加圧成型することにより、プリプレグA中の樹脂成分15を硬化させて絶縁層20を形成すると共に樹脂成分15の硬化で絶縁層20と金属箔13を一体化する。このようにして図1(e)に示すような本発明の積層板Bを形成することができる。そして、積層板Bの最外にある金属箔13にエッチング等の回路11の形成工程を施すことによって、図1(f)に示すような回路基板(プリント配線板)10を形成することができる。
【0030】
尚、上記の積層板の製造工程において、プリプレグAは1枚であっても良いし、複数枚重ねて使用しても良い。また、貫通穴12は必要がなければ形成する必要はない。また、金属箔13は必要がなければ用いる必要はない。さらに、上記の加熱加圧成型の際の条件はプリプレグA中の樹脂成分15の種類や含有量などで異なるが、温度が160〜200℃、時間が60〜180分、圧力が2〜5MPaに設定することができる。
【0031】
【実施例】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
エポキシ化合物としては、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名「EPICLON HP−7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)の55質量部と、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名「EPICLON153」(難燃タイプのエポキシ樹脂)の45質量部とを配合したものを用いた(この混合物をエポキシ化合物1とする)。
【0032】
硬化剤としては、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名「フェノライトLF−4711」(ビスフェノールA型フェノールノボラック樹脂)を用いた(これを硬化剤1とする)。
【0033】
基材としては、アラミド繊維による不織布(デュポン帝人アドバンスドペーパー社製の商品名「N718#100」)を用いた(これを有機繊維1とする)。
【0034】
そして、フェノール性水酸基当量対エポキシ当量が1対1になるようにエポキシ化合物1と硬化剤1を配合し、これに硬化促進剤として、2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製)を0.1質量部(エポキシ化合物1と硬化剤1の合計質量に対して)加え、さらに、この混合物にMEKを用いて固形分が60質量%の樹脂組成物(樹脂ワニス)を調製した。
【0035】
次に、この樹脂組成物を基材に含浸し、150℃、10分の条件で乾燥硬化させることによりBステージ状態のプリプレグA(固形分の含有量が53質量%)を作製した。
(実施例2)
エポキシ化合物1の代わりに、ダウケミカル株式会社製の商品名「DER511」の70質量部と、東都化成株式会社製の商品名「YDCN702」の30質量部とを配合したものを用いた(この混合物をエポキシ化合物2とする)。
【0036】
これ以外は実施例1と同様にしてプリプレグAを作製した。
(実施例3)
エポキシ化合物1の代わりに、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名「EPICLON HP−4032」(ナフタレン骨格を含有する特殊エポキシ樹脂)の55質量部と、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名「EPICLON153」の45質量部とを配合したものを用いた(この混合物をエポキシ化合物3とする)。
【0037】
硬化剤1の代わりに、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名「フェノライトLF−4871」(ビスフェノールA型フェノールノボラック樹脂)を用いた(これを硬化剤2とする)。
【0038】
これら以外は実施例1と同様にしてプリプレグAを作製した。
(実施例4)
硬化剤1の代わりに、油化シェルエポキシ株式会社製の商品名「エピキュアYLH129B65」(ビスフェノールA型フェノールノボラック樹脂)を用いた(これを硬化剤3とする)。
【0039】
これ以外は実施例1と同様にしてプリプレグAを作製した。
(実施例5)
硬化剤1の代わりに、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名「フェノライトVH−4240」(ビスフェノールA型フェノールノボラック樹脂)を用いた(これを硬化剤4とする)。
【0040】
これ以外は実施例1と同様にしてプリプレグAを作製した。
(実施例6)
エポキシ化合物1の代わりに、エポキシ化合物3を用いた。
【0041】
硬化剤1の代わりに、オルソ率が70%のフェノールノボラック樹脂を用いた(これを硬化剤5とする)。硬化剤5は、フェノール940g、パラホルムアルデヒド250g、酢酸亜鉛12gを窒素ガスを流しながら4時間120℃加熱した後、150℃で2時間加熱し常圧濃縮し、この後、未反応のフェノールを除去するために水蒸気蒸留した後、減圧脱水することにより得た。
【0042】
有機繊維1の代わりに、アラミド繊維による不織布(王子製紙社製の商品名「テクノーラ」)を用いた(これを有機繊維2とする)。
【0043】
これ以外は実施例1と同様にしてプリプレグAを作製した。
(実施例7)
フェノール性水酸基当量対エポキシ当量が0.8対1になるようにエポキシ化合物1と硬化剤1を配合した。
【0044】
これ以外は実施例1と同様にしてプリプレグAを作製した。
(実施例8)
エポキシ化合物としては上記のエポキシ化合物3を、硬化剤としては上記の硬化剤1をそれぞれ用いた。また、フェノール性水酸基当量対エポキシ当量が1.3対1になるようにエポキシ化合物3と硬化剤1を配合し、上記と同様にして硬化促進剤と溶剤を用いて樹脂組成物を調製した。
【0045】
有機繊維1の代わりに、2.5デニールの全芳香族ポリエステル繊維(株式会社クラレ製の商品名「ベクトラン」)を織機を用いて織成することによって作製された、坪量70g/平方mの織物を用いた(これを有機繊維3とする)。
【0046】
これら以外は実施例1と同様にしてプリプレグAを作製した。
(実施例9)
エポキシ化合物としては上記のエポキシ化合物3を、硬化剤としては上記の硬化剤1をそれぞれ用いた。また、フェノール性水酸基当量対エポキシ当量が1対1になるようにエポキシ化合物3と硬化剤1を配合し、上記と同様にして硬化促進剤と溶剤を用いて樹脂組成物を調製した。
【0047】
有機繊維3の代わりに、2.5デニールの全芳香族ポリエステル繊維(株式会社クラレ製の商品名「ベクトラン」)を約5mm長に切断し、この短繊維を用いて製紙法で抄造することによって作製された、坪量70g/平方mの不織布を用いた(これを有機繊維4とする)。
【0048】
これ以外は実施例1と同様にしてプリプレグAを作製した。
(比較例1)
有機繊維1の代わりに、Eガラスからなるガラス繊維織物(日東紡績株式会社製の商品名「WEA−116E」)を用いた(これをガラスクロス1とする)。
【0049】
これ以外は実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。
(比較例2)
硬化剤1の代わりに、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名「フェノライトTD−2090」(フェノールノボラック樹脂)を用いた(これを硬化剤6とする)。
【0050】
これ以外は実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。
(比較例3)
比較例2のプリプレグ中の水分量を少なくしてプリプレグを作製した。
【0051】
そして、上記の実施例1〜9及び比較例1〜3のプリプレグについて下記の評価を行なった。尚、実施例1〜9及び比較例1〜3のプリプレグはレーザー穴開け加工する前に、表中の所定量まで吸湿させて試料とした。また、プリプレグ中の水分量はカールフィッシャー法により測定を行った。
【0052】
(レーザー加工性評価)
レーザー加工性は、所定量の水分を吸収させたプリプレグを試料とし、レーザー加工機を用いて、炭酸ガスレーザーにて直径0.15mmの穴開け加工を行った。加工性評価としては、その貫通穴12を顕微鏡で観察し、貫通穴12の形状がほぼ円形の場合を「○」とし、変形している場合を「×」とした。また、樹脂膜張り性評価は、その貫通穴12を顕微鏡で観察し、樹脂膜25が観察されないものを「○」とし、観察されたものを「×」とした。
【0053】
(接続信頼性評価)
レーザービームで0.2mmの穴開けを行ったプリプレグに、導電ペースト(接続手段6)を貫通穴12に印刷法により埋め込み、その両側に銅箔(金属箔13)を配し、成型を行なった。成型条件は温度200℃、圧力3.9MPa、時間120分の条件で加熱加圧成型し、その後、導電ペーストが埋め込まれた各貫通穴12の表裏面に銅箔が独立して残るように銅箔をエッチングし、導電ペーストが埋め込まれた各貫通穴12の抵抗値を測定するようにした。判定基準は抵抗値が1.5Ω以下のものを「○」とし、1.5Ωを超えたものは「×」とした。
【0054】
(耐熱性評価)
耐熱性評価は、得られたプリプレグを成型したもののガラス転移温度により、評価を行った。ガラス転移温度は、得られたプリプレグを各5枚重ね、更にその両外側に離型シートを配して積層し、次いで、この積層物を金属プレートで挟み、温度200℃、圧力3.9MPa、時間120分の条件で加熱加圧した後、離型シートを剥離して得られた積層板を試験片とした。そして、その試験片の動的粘弾性の温度分散を測定し、得られたtanσのピーク温度よりガラス転移温度を求めた。
【0055】
上記の各評価の測定結果を表1〜3に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
表1、表2にみられるように、各実施例のものは硬化剤のオルソ率の低い(60%以下)比較例2のものに比べて樹脂膜張り性が良好(樹脂膜25の形成がない)であり、接続信頼性に優れることが確認される。また、比較例2、3に比べてプリプレグ中の水分量が多くても樹脂膜25が発生しにくいことが確認される(プリプレグ中の飽和水分量は、樹脂組成・基材の種類にもよるが約1.2wt%である)。つまり、実施例1〜9のプリプレグAでは吸湿率が高くなっても、穴開け加工を良好に行えるものであり、製造や保管場所の環境整備(湿度の調整等)に莫大な資金が必要でない。
【0060】
また、実施例2のものに比べ、骨格にナフタレン類やジシクロペンタジエン類を有するエポキシ化合物を用いた実施例1及び実施例3〜9のものは耐熱性に優れることが確認される。また、ガラスクロスを基材に用いた比較例1に比べ、有機繊維を基材に用いた実施例1〜9は良好なレーザー加工性が得られることが確認される。
【0061】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1の発明は、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、エポキシ化合物の硬化剤としてメチレン結合のオルソ率が少なくとも60%以上のハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂とを、有機繊維の織物あるいは有機繊維の不織布の基材に含有するので、レーザによる穴開け加工工程における樹脂膜の形成を減少あるいは防止することができ、高品質の穴開け加工を実現することができて回路基板の歩留まり向上を図ることができるものであり、また、吸湿して水分量が高くなってもレーザによる穴開け加工工程における樹脂膜の形成を減少あるいは防止することができ、保管や製造場所の湿度管理が安易で、且つ高品質の穴開け加工を実現することにより回路の接続等の信頼性が高い回路基板を得ることができるものである。
【0062】
また、レーザによる穴開け加工により形成された穴径が小さくなるほど、にじみ出す樹脂が溶融しやすくなるので樹脂膜形成不良が発生しやすくなるが、本発明により加工穴の小径化限界が向上してより小さい穴においても高品質の穴加工が可能となり、高密度な回路基板を歩留まりよく形成することができるものである。
【0063】
また本発明の請求項2の発明は、ハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂として、軟化点が80〜140℃のものを用いるので、基材への樹脂組成物の含浸性を高めることができ、成型(成形)不良の発生を低減することができるものである。
【0064】
また、本発明の請求項3の発明は、ハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂として、ビスフェノールノボラック樹脂を用いるので、レーザによる穴開け加工工程における樹脂膜の形成がより起こりにくくなって、高品質の穴開け加工を実現することができて回路基板の歩留まり向上を図ることができるものである。
【0065】
また、本発明の請求項4の発明は、エポキシ化合物と硬化剤の当量比が、フェノール性水酸基当量/エポキシ当量=0.5〜1.5であるので、硬化不良の発生を低減することができ、積層板の耐熱性が低下しないようにすることができるものである。
【0066】
また、本発明の請求項5の発明は、エポキシ化合物の骨格が、ジシクロペンタジエン類であるので、耐熱性および吸湿特性に優れた積層板を形成することができるものである。
【0067】
また、本発明の請求項6に係るプリプレグAは、請求項1乃至5の構成に加えて、エポキシ化合物の骨格が、ナフタレン類であるので、耐熱性および吸湿特性に優れた積層板を形成することができるものである。
【0068】
本発明の請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載のプリプレグを加熱加圧成型するので、レーザによる高品質の穴開け加工を実現することにより回路の接続等の信頼性が高い回路基板を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明及び従来例の回路基板製造工程の一例を示し、(a)〜(f)は断面図である。
【図2】従来例の問題点を示す断面図である。
【図3】プリプレグの吸水率と樹脂膜の形成による不良率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
A プリプレグ
B 積層板
Claims (7)
- レーザ加工用のプリプレグであって、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、エポキシ化合物の硬化剤としてメチレン結合のオルソ率が少なくとも60%以上のハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂とを、有機繊維の織物あるいは有機繊維の不織布の基材に含有して成ることを特徴とするプリプレグ。
- ハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂として、軟化点が80〜140℃のものを用いて成ることを特徴とする請求項1に記載のプリプレグ。
- ハイオルソフェノールホルムアルデヒド樹脂として、ビスフェノールノボラック樹脂を用いて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリプレグ。
- エポキシ化合物と硬化剤の当量比が、フェノール性水酸基当量/エポキシ当量=0.5〜1.5であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプリプレグ。
- エポキシ化合物の骨格が、ジシクロペンタジエン類であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプリプレグ。
- エポキシ化合物の骨格が、ナフタレン類であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のプリプレグ。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載のプリプレグを加熱加圧成型して成ることを特徴とする積層板。
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