JP2009100429A - ドハティ増幅器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 入力信号のレベルに応じてピーク増幅回路の増幅素子のゲートバイアス電圧を制御するアダプティブ回路を備え、アダプティブ回路に、合成点からの出力に対して歪の周波数特性を低減する周波数特性を備えた補正回路を設けたドハティ増幅器であり、補正回路の種類や周波数特性を適宜選択することによって、増幅器出力に含まれる歪の周波数特性を相殺し、広帯域無線信号に対して十分な歪補償を実現する。
【選択図】 図1
Description
従来、CDMA信号やマルチキャリア信号のような無線周波数信号を電力増幅する場合、共通増幅器に歪補償手段を付加し、共通増幅器の動作範囲を飽和付近まで広げることで低消費電力化を図っている。
歪補償手段としては、フィードフォワード歪補償や、前置歪補償(プリディストーション)などがあるが、歪補償だけでは低消費電力化に限界が近づいている。そのため近年、高効率増幅器としてドハティ増幅器が注目されている。
図12に示すように、ドハティ増幅器は、入力端子1と、分配器2と、位相器3と、キャリア増幅器4と、ピーク増幅器5と、ドハティ合成部6と、λ/4変成器7と、出力端子8とから構成され、出力負荷9に接続されている。
また、ドハティ合成部6は、λ/4変成器61と、ノード(合成点)62とから構成されている。
分配器2は、入力端子1から入力された信号を、2つに分配するものである。
位相器3は、分配器21で分配された一方の信号の位相を、λ/4変成器61によって生じる位相の遅れと同じだけ遅らせるものである。
キャリア増幅器4の入力整合回路41は、増幅素子42の入力側との整合をとるものである。増幅素子42は、AB級にバイアスされた増幅素子であり、入力電力レベルが低いときから動作するものである。出力整合回路43は、増幅素子42からの出力側とλ/4変成器61との整合をとるものである。
λ/4変成器7は、ノード61での合成信号をインピーダンス変換して、出力負荷9に整合させるものである。
上記構成のドハティ増幅器における動作について説明する。
入力端子1から入った信号は、分配器2で分配される。分配された一方の信号は、キャリア増幅器4に入力され、増幅素子42で増幅される。キャリア増幅器4の出力は、λ/4変成器61でインピーダンス変換される。
合成された信号は、λ/4変成器7でインピーダンス変換され、出力端子9を介して出力負荷10に接続される。このようにして従来のドハティ増幅器における動作が行われるものである。
ここで、ドハティ増幅器の動作効率について説明する。
キャリア増幅器4とピーク増幅器5は、増幅素子42がAB級にバイアスされ、増幅素子52がB又はC級にバイアスされている点で異なる。
そのため、入力レベルがピーク増幅器5の増幅素子52が動作するレベルに達するまでは、キャリア増幅器4の増幅素子42は単独で動作し、増幅素子42が飽和領域に入る(増幅素子42の線形性が崩れ始める)と、増幅素子52が動作し始め、増幅素子52の出力が負荷に供給され、増幅素子42とともに負荷を駆動する。
次に、ドハティ増幅器の効率−出力電力特性について図13を用いて説明する。図13は、ドハティ増幅器と通常のB級増幅器の効率−出力電力特性を示す説明図である。図13では、点線は、一般的なB級増幅器の効率を示し、実線は、簡単なモデルにおけるドハティ増幅器の理論効率を示している。図13のグラフでは、横軸はバックオフ(dB)を示しており、縦軸は効率(%)を示している。
ここで、バックオフは、両方の増幅素子42,52が飽和する最小の入力レベル(入力端子1の入力レベル)、すなわちコンプレッションポイント、を0dBとして、入力レベルがコンプレッションポイントに対してどれだけ余裕を持つかを示す数値である。
図13に示すように、入力レベルがA区間にあるときは、基本的にキャリア増幅器4のみが動作する。低入力レベルにおいては、ドハティ増幅器の効率は、通常のB級増幅器の2倍の値を示す。後述するように、このときのキャリア増幅器4は、その負荷インピーダンスが本来の値の2倍となっているので、出力は本来の半分となるものである。
次に、再び図12を用いてドハティ増幅器の各部のインピーダンスについて説明する。
図12に示すように、出力負荷インピーダンスZ0は一定に規定されているので、これを起点とする。
ノード62からλ/4変成器7をみたインピーダンスZ7は、λ/4変成器7の特性インピーダンスをZ2とすると、Z7=Z2 2/Z0となる。
インピーダンスZ4は、入力信号レベルが小さいとき(A区間)のインピーダンス値に対して、入力信号レベルが大きいとき(C区間)には1/2倍となり、別の言い方をすれば、2倍の負荷変動を起こす。例えば、Z7=25Ω、Z1=50Ωとすると、Z4は、100〜50Ωの間で変化する。したがって、キャリア増幅器4の増幅素子42の負荷インピーダンスも変動している。
ここで、ドハティ増幅器の利得低下について図14を用いて説明する。図14は、ドハティ増幅器の入出力特性を示す説明図である。
図14に示すように、ドハティ増幅器において、キャリアアンプはAB級で動作し、ピークアンプはC級で動作するため、点線で示したドハティ増幅器の出力は、入力レベルが高い領域においては通常のAB級増幅器に比べて1dB程度低下する(1dB圧縮レベル)。
ピークアンプのバイアス電圧を制御し、利得低下の改善を図るアダプティブドハティ増幅器がある。
アダプティブドハティ増幅器の基本構成について図15を用いて説明する。図15は、アダプティブドハティ増幅器の模式説明図である。
図15に示すように、アダプティブドハティ増幅器は、ドハティ増幅器70とアダプティブ回路80とから構成されている。アダプティブ回路80は、入力信号を分配する分配器81と、入力信号を検波する検波ダイオード82とを備えている。
検波ダイオード82は、そのダイオード特性によって入力信号のレベルに応じた電圧を出力し、入力信号のレベルに応じてピーク増幅器5の増幅素子52のゲート電圧を制御するようになっている。具体的には、入力レベルが高い時に、増幅素子52をAB級に制御して、図14に示したドハティ合成後の出力の利得低下を防ぐものである。
ドハティ増幅器の歪特性について図16を用いて説明する。図16は、ドハティ増幅器の広帯域における歪特性を示す模式説明図である。
ピーク増幅器5の増幅素子52の周波数特性は広帯域であるため、ドハティ増幅器の歪特性を広帯域でみると、歪が周波数特性を持つ。
図16では、上の3本のラインは周波数を変化させた場合の出力電力に対する利得の変化であり、下の3本のラインは出力電力に対する位相の変化を示している。いずれも水平な直線となるのが最も望ましいが、歪が発生すると直線からのずれを生じる。この例では、1dB圧縮レベル付近における歪は、利得、位相共にf1が最も小さく、f3は最も大きい。また、f3は、出力電力レベルが小さい段階から歪が発生していることが認められる。
ここで、歪補償方式の一つであるプリディストーションについて説明する。
プリディストーションは、電力増幅器で発生する歪の逆特性を前段において予め付加することで相互変調歪を低減する方法であり、この逆特性を、温度変化や個体差に応じて適応的に制御する。
図17に示すように、従来の電力増幅装置は、プリディストータ101と、D/A変換器102と、直交変調器103と、発振器104と、電力増幅器105と、方向性結合器106と、ミキサ107と、発振器108と、A/D変換器109と、歪検出部112と、制御部118とから構成されている。歪検出部112は更に、FFT演算部(図ではFFT)110と、IM演算部(図ではIM演算)111とから構成されている。
D/A変換器102は、歪補償されたディジタル入力信号をアナログ信号に変換するものである。
発振器104は、RF周波数を発振するものである。
直交変調器103は、入力されたアナログ信号を直交変調して発振器104の周波数でアップコンバートするものである。
電力増幅器105は、入力されたRF信号を所定の増幅率で増幅して出力するものである。
ミキサ107は、発振器108からの信号と方向性結合器106から分岐された信号とを合成してIF周波数にダウンコンバートするものである。
A/D変換器109は、ダウンコンバートされた信号をクロック2(CLK2)でA/D変換してサンプリングするものである。
歪検出部112のFFT演算部110は、入力された信号をFFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)によってスペクトラムを求めるものである。
IM演算部111は、変調信号のキャリア数とその離調周波数から相互変調歪の周波数を算出し、スペクトラムに基づいて、当該周波数における電力値を歪値として制御部118に出力するものである。
そして、制御部118は、入力された歪値が小さくなるようにプリディストータを適応的に制御するものである。
デジタルI/Q形式で入力されたIF周波数の入力信号は、プリディストータ101で非線形歪が歪補償されて、D/A変換器102でアナログ信号に変換され、直交変調器103で直交変調されると共にRF周波数にアップコンバートされ、電力増幅器105で所定の増幅率で増幅されて出力される。
そして、制御部118が、歪値を小さくするよう、プリディストータ101を適応的に制御するようになっている。
y=x+α・|x|2・x+β・|x|4・x+γ・|x|6・x 式(1)
ここで、x、yはプリディストータの入力信号及び出力信号であり、複素数である。制御部13は、歪検出部12で得られた歪値が小さくなるように、摂動法を用いてα、β、γの値を制御する。
図18に示すように、プリディストータ101は、複数の乗算器と加算器を備え、入力信号(x)から、3乗、5乗、7乗の成分を算出し、各々に係数α、β、γを乗算して式(1)に基づいて出力信号(y)を得る構成となっている。
α = A3・exp(j*Φ3)
β = A5・exp(j*Φ5)
γ = A7・exp(j*Φ7) 式(2)
と表される。
つまり、αはA3とΦ3とで決まり、βはA5とΦ5とで決まり、γはA7とΦ7とで決まる。
そこで、制御部13ではこれらの係数を、Φ3→A3→Φ5→A5→Φ7→A7→Φ3…の順番で変化させ、歪値が小さくなるようにα、β、γの値を更新する(摂動法)。
図10に示すように、制御部118は、処理が開始されると、まず初期設定として更新対象係数(K、ここではまずΦ3)の設定、設定回数、前回の歪値の読み込みを行う(100)。
また、処理101において歪値が大きくなっていれば(Noの場合)、制御部118は、更新方向を反転(Step=Step * (−1))させて(102)、処理103に移行して係数の更新を行う。
そして、制御部118は、記憶されている更新回数と処理100の初期設定において設定しておいた設定回数とを比較し(106)、更新回数が設定回数以下であれば処理101に戻って、Φ3の係数更新を繰り返す。
制御部118では、このような摂動法を用いた制御によって歪値が小さくなるようにプリディストータの係数を制御する。このようにして、電力増幅器における非線形の逆特性を、べき級数を用いたプリディストータで近似することができ、歪補償が可能となるものである。
尚、ドハティ増幅器に関する先行技術としては、平成19年5月31日公開の特開2007−134977号公報「歪制御機能付き増幅装置」(出願人:株式会社日立国際電気、発明者:武田康弘他、特許文献1)がある。
特許文献1は、ドハティ増幅器にプリディストーション歪補償回路を備えて高効率の増幅装置を構成すると共に、プリディストーション歪補償回路の制御部から出力される信号をD/A変換してピーク増幅回路の増幅素子のゲート電圧として供給するようにしたものであり、歪補償後の相互変調歪が目標値になるよう、ゲート電圧を変化させて歪のばらつきを吸収するものであり、効率を限界まで引き出すことができるものである。
特許文献2には、キャリア増幅器の出力段に、異なる電気長を備えた伝送線路から成るインピーダンス変換器を備え、入力信号の周波数に応じていずれかの伝送線路に接続を切り替え可能である増幅器が記載されている。
特許文献4には、周囲の温度情報に基づいて、キャリア増幅部及びピーク増幅部のバイアス点を調整するドハティ増幅装置が記載されている。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の第1の実施の形態に係る増幅器は、ピーク増幅器のバイアス電圧の適応制御を行うアダプティブ回路を備えたアダプティブドハティ増幅器において、増幅器で発生する歪の周波数特性を相殺する周波数特性を備えた補正回路をアダプティブ回路に組み込み、検波ダイオードの出力電圧を調整することにより、ピーク増幅器のバイアス電圧が、増幅器での歪の周波数特性を相殺する周波数特性を備えるようにして、歪の周波数特性を改善し、広帯域無線信号に対しても十分な歪補償を行うことができるものである。
本発明の第1の実施の形態に係る増幅器(第1の増幅器)について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るドハティ増幅器の構成ブロック図である。
図1に示すように、第1の実施の形態に係るドハティ増幅器(本増幅器)は、図15に示した従来のアダプティブドハティ増幅器と同様の部分として、ドハティ増幅器70とアダプティブ回路80とから構成されており、更に、アダプティブ回路80は、分配器81と、入力信号を検波する検波ダイオード82とを備えている。また、第1の増幅装置の特徴部分として、歪の周波数特性を補正する補正回路90(以下、「補正回路90」と称する)を備えている。
つまり、補正回路90は、検波ダイオード82の出力電圧を入力周波数に応じて適切に調整するものである。検波ダイオード82の出力信号は、ドハティ増幅器70のピーク増幅器5の増幅素子52のバイアス電圧となっている。
ここで、第1の増幅器におけるアダプティブドハティ増幅器の入力電力と、検波ダイオード82の出力電圧との関係について図2を用いて説明する。図2は、入力電力と検波ダイオード82の出力電圧との関係を示す模式説明図である。
図2に示すように、アダプティブ回路に補正回路90を挿入することにより、周波数f1,f2,f3によって検波ダイオード82の出力電圧特性が異なるものとなる。これにより、検波ダイオード82の出力電圧特性が、ドハティ増幅器の歪の周波数特性を相殺するような周波数特性を持つことになる。
また、補正回路90の種類や特性を変えることにより、種々の要求に応じた特性の信号を出力させることができるものである。
次に、補正回路90の例について具体的に説明する。
周波数特性を改善するための補正回路90としては、伝送路に、コンデンサ、インダクタンスといった不整合回路を追加して、伝送路の不整合により周波数特性を持たせる方法や、容量可変のコンデンサを用いて周波数特性を変化させる方法、ローパスフィルタ又はハイパスフィルタといった減衰帯域を利用して周波数特性を持たせる方法、また増幅器を追加するといった方法がある。
本発明の第1の実施の形態に係るドハティ増幅器によれば、アダプティブ回路80の検波ダイオード82の入力段に、ドハティ増幅器70で発生する歪の周波数特性を補償する周波数特性を有する歪の周波数特性補正回路90を備え、ピーク増幅器52のバイアス電圧となる検波ダイオード82の出力に周波数特性を持たせるものであり、歪の周波数特性補正回路90の特性を適切に選択することにより、ドハティ増幅器70の歪の周波数特性を低減することができ、プリディストータによって広帯域信号に対応して十分な歪補償を行うことができる効果がある。
次に、本発明の第2の実施の形態に係るドハティ増幅器について説明する。
従来のドハティ増幅器では、図15に示したように、効率を向上させる目的で、ピーク増幅器のゲートバイアス電圧を制御して、ピーク増幅器の動作し始める入力レベルの調整を行った場合、ピーク増幅器の最大出力レベルが低下するという問題がある。
ここで、ピーク増幅器の最大出力レベルの低下について図4を用いて説明する。図4は、ドハティ増幅器のピーク増幅器においてゲートバイアス電圧を変化させた場合のピーク増幅器の入出力特性を示す説明図である。
図4において、(A)はゲート電圧制御を行ってピーク増幅器が動作し始める入力レベルを高くした場合の特性であり、(B)はゲートバイアス制御を行っていない場合の特性である。図4に示すように、(A)は(B)よりも最大出力レベル(飽和レベル)が低くなってしまう。
[第2の増幅器の構成:図3]
図3は、本発明の第2の実施の形態に係るドハティ増幅器の構成ブロック図である。
図3に示すように、第2の増幅器の基本的な構成は、図12に示した従来のドハティ増幅器とほぼ同様であって、入力端子1と、分配器2と、位相器3と、キャリア増幅器4と、ピーク増幅器5と、ドハティ合成部6と、λ/4変成器7と、出力端子8とから構成され、出力負荷9に接続されている。
キャリア増幅器4は、入力整合回路41と、増幅素子42と、出力整合回路43とから構成され、ピーク増幅器5は、入力整合回路51と、増幅素子52と、出力整合回路53とから構成されている。
また、ドハティ合成部6は、λ/4変成器61と、ノード(合成点)62とから構成されている。
これらの各部分の構成及び動作は従来のドハティ増幅器と同じである。
可変減衰器10は、ピーク増幅器5への入力信号の入力レベルを低く調整するものである。
可変減衰器10を設けることにより、ピーク増幅器5の増幅素子52に対するゲートバイアス電圧の制御を行って増幅素子52の特性そのものを変化させなくても、ピーク増幅器5が動作し始める入力レベルを大きくすることができ、増幅素子52の最大出力レベルの低下を防ぐことができるものである。
第2の増幅器のピーク増幅器の入出力特性について図4を用いて説明する。
第2の増幅器のピーク増幅器ではゲートバイアス制御がなされないので、本来、入出力特性そのものは、図4の(B)に示した入出力特性と一致する。しかし、可変減衰器10を挿入したことにより、第2の増幅器の入力レベルに比べてピーク増幅器5への入力レベルは低くなるため、第2の増幅器におけるピーク増幅器5の特性は、図4の(B)の特性カーブを右に平行移動したものとなり、例えば、図4の(A)と同じレベルからピーク増幅器5が動作し始めるように(B)のグラフを右に移動しても、最大出力レベルの低下は起こらないことは明らかである。
尚、所望の特性を得るために、可変減衰器10だけでなく、ピーク増幅器5の増幅素子52に対するバイアス電圧制御を合わせて行うようにすることも可能であり、更に、第1の増幅器のようにアダプティブ回路に周波数特性を備えた回路を設けてもよく、調整箇所を多くして特性を合わせ込むことができる。
本発明の第2の実施の形態に係るドハティ増幅器によれば、AB級で動作する増幅素子を備えたキャリア増幅回路と、B級又はC級で動作する増幅素子を備えたピーク増幅回路を備え、キャリア増幅回路からの出力とピーク増幅回路からの出力とを合成点で合成して出力するドハティ増幅器であって、ピーク増幅回路5の入力段にピーク増幅回路5への入力信号レベルを調整する可変減衰器10を設けたドハティ増幅器としているので、ピーク増幅回路5の増幅素子52への入力信号レベルを抑圧することにより、バイアス電圧の制御を行わずに増幅素子52が動作を開始する入力レベルを上げることができ、増幅素子52の特性を変化させずにすみ、最大出力レベル(飽和レベル)の低下を防ぐことができる効果がある。
次に、本発明の第3の実施の形態に係るドハティ増幅器について説明する。
一般に、増幅器では、周囲の温度や、周波数が変化することによって特性が変化する。ドハティ増幅器においても同様であり、アダプティブバイアス制御を行う従来のアダプティブドハティ増幅器では、周囲の温度や周波数に応じたきめ細かいバイアス電圧の制御を行うことができないという問題点があった。
第3の増幅器の構成について図5を用いて説明する。図5は、本発明の第3の実施の形態に係るドハティ増幅器の構成ブロック図である。
図5に示すように、第3の増幅器は、ドハティ増幅器に、図17に示した増幅装置のプリディストーションを行う構成と、アダプティブバイアス制御を行う構成を組み込んだものであり、図17と同様の部分として、プリディストータ101と、D/A変換器102と、直交変調器103と、発振器104と、電力増幅器105と、方向性結合器106と、ミキサ107と、発振器108と、A/D変換器109と、歪検出部112と、制御部118とから構成されている。歪検出部112は更に、FFT演算部(図ではFFT)110と、IM演算部(図ではIM演算)111とを備え、更に第3の増幅器の特徴部分として、遅延補正回路115と、方向性結合器109と、アダプティブバイアス制御回路130と、ソフト制御部120と、温度検出部121と、周波数検出部122と、電力検出部123とを備えている。
遅延補正回路115は、直交変調器103から出力された信号を、アダプティブバイアス制御回路130におけるバイアス制御の処理に要する時間分遅延するものである。
方向性結合器109は、直交変調器103の出力を一部分岐する。
周波数検出部122は、入力信号の周波数を検出する。
電力検出部123は、入力信号の電力を検出する。
周波数検出部122及び電力検出部123には入力端子から信号が供給されているが、図示は省略する。
ソフト制御部120は、温度検出部121、周波数検出部122、電力検出部123からの検出結果に基づいて、アダプティブバイアス制御回路130を制御する制御信号を出力する。
次に、アダプティブバイアス制御回路130及びソフト制御部120の構成及び動作について図6を用いて具体的に説明する。図6は、アダプティブバイアス制御回路130及びソフト制御部120の構成ブロック図である。
図6に示すように、アダプティブバイアス制御回路130は、レベル調整回路131と、A領域電圧制御回路132と、B領域電圧制御回路133と、C領域電圧制御回路134とを備えている。
ソフト制御部120は、検出された温度、周波数、電力のデータに基づいて、アダプティブバイアス制御回路のレベル調整回路131,各制御回路132〜134を適応制御する制御信号を出力する。
具体的には、ソフト制御部120には、温度、周波数、電力の条件に応じて、アダプティブバイアス制御回路130からの出力が当該条件下で最も適切なバイアス電圧となるよう、温度、周波数、電力の検出値に応じて、レベル調整回路131及び各電圧制御回路132〜134に出力するデータがテーブルに対応付けられて記憶されており、ソフト制御部120は、温度、周波数、電力の検出値に対応する制御データを読み出して出力する、といった方法が考えられる。
ソフト制御部120からの制御データは、D/A変換されてアダプティブバイアス制御回路130に与えられる。
ここで、ピーク増幅素子のゲート電圧の制御例について図7を用いて説明する。図7は、ピーク増幅素子のゲート電圧の制御例を示す説明図である。
図7に示すように、入力レベルの低いほうから順に、A領域、B領域、C領域となっており、図6に示したアダプティブバイアス制御回路130のA領域電圧制御回路132、B領域電圧制御回路133と、C領域電圧制御回路134は、それぞれ対応する入力レベルにおけるピーク増幅素子のゲート電圧を制御する。図7のカーブは制御の一例を示す。
第3の増幅器のAM−AM変換特性について図8を用いて説明する。図8は第3の増幅器のAM−AM変換特性の一例を示す説明図である。
図8では、一般的なABクラス増幅器と、一般的なドハティ増幅器と、ピーク増幅素子のゲート電圧を図7のように制御した場合のドハティ増幅器のAM−AM変換特性を示している。図8に示すように、ドハティ増幅器は、飽和付近のゲインがABクラス増幅器と比べて低下しているが、第3の増幅器のように、ドハティ増幅器であってもピーク増幅素子のゲート電圧を図7のように制御した場合には、ABクラス増幅器とほぼ同等にできる。
第3の増幅器の歪補償特性について図9を用いて説明する。図9は、第3の増幅器の歪補償特性の一例を示す説明図である。
図9では、ABクラス増幅器と、ドハティ増幅器と、ピーク増幅素子のゲート電圧を図7のように制御した場合のドハティ増幅器について、歪補償器で歪補償を行った場合の歪補償特性を示している。図9に示すように、ドハティ増幅器の歪補償量は、ABクラス増幅器に比べて劣化するが、第3の増幅器のように、ピーク増幅素子のゲート電圧を図7のように制御したドハティ増幅器は、ABクラス増幅器とほぼ同等の歪補償量が得られる。
第3の増幅器の温度補償について図10を用いて説明する。図10は、第3の増幅器の温度特性を示す説明図である。
通常、増幅器は、温度が上がると飽和特性や歪量等の無線特性が劣化する傾向にある。そのため、第3の増幅器のソフト制御部130は、図10に示すように、高温時には、常温時よりも低レベルから立ち上がるよう、アダプティブバイアス回路のA,B,C領域毎の電圧制御回路の各電源電圧を適応制御して、温度補償を含むピーク増幅素子のバイアス制御を行う。尚、図10のA′、B′、C′領域は図7に示したA領域、B領域、C領域と同じである。
第3の増幅器のAM−AM温度特性について図11を用いて説明する。図11は、第3の増幅器のAM−AM温度特性を示す説明図である。
図11に示すように、高温時に温度補償の適応制御を行わない場合には、常温時の特性に比べて飽和付近のゲイン低下等の劣化が確認できるが、図10に示したように、電圧制御カーブを高温用に調整してピーク増幅素子のゲート電圧を制御することにより、常温に近い特性を得ることができる。これにより、周波数特性劣化及び温度特性劣化のない歪補償を結果が得られる。
本発明の第3の実施の形態に係るドハティ増幅器によれば、AB級で動作する増幅素子を備えたキャリア増幅回路と、B級又はC級で動作する増幅素子を備えたピーク増幅回路を備え、キャリア増幅回路からの出力とピーク増幅回路からの出力とを合成点で合成して出力するドハティ増幅器であって、入力信号のレベルに応じてピーク増幅素子のバイアス電圧を出力するアダプティブバイアス制御回路130と、周囲の温度を検出する温度検出部121、入力信号の周波数を検出する周波数検出部122と、入力信号の電力を検出する電力検出部123と、各検出部で検出された温度、周波数、電力に応じてアダプティブバイアス制御回路130内部の電源を適応的に制御するソフト制御部120を備えたドハティ増幅器としているので、入力レベルだけでなく、温度や周波数に応じて入力ピーク増幅素子のバイアス電圧を微調整して、最適なバイアス電圧を供給することができ、温度や周波数に関わらず安定した歪補償を行って良好な特性を得ることができる効果がある。
Claims (1)
- AB級で動作する増幅素子を備えたキャリア増幅回路と、B級又はC級で動作する増幅素子を備えたピーク増幅回路を備え、
前記キャリア増幅回路からの出力と前記ピーク増幅回路からの出力とを合成点で合成して出力するドハティ増幅器であって、
入力信号のレベルに応じて前記ピーク増幅回路の増幅素子のゲートバイアス電圧を制御するアダプティブ回路を備え、
前記アダプティブ回路に、前記合成点からの出力に対して歪の周波数特性を低減する周波数特性を備えた補正回路を設けたことを特徴とするドハティ増幅器。
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