JP4628175B2 - 増幅器 - Google Patents

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本発明は、携帯電話システムの基地局の送信機などに用いられる増幅器に係り、特に、低歪で高リニアリティの増幅器に関する。
携帯電話システムの基地局などにおいては、RF(Radio Frequency:無線周波)信号を送信するために、このRF送信信号を電力増幅器で電力増幅する。この場合、かかる高周波信号の電力増幅器で歪みが生ずるため、この電力増幅器の前段に振幅補償のための減衰器と位相補償のための移相器とを設け、この電力増幅器による電力増幅前の送信信号と電力増幅後の送信信号とから振幅歪みと位相歪みとを検出し、検出した振幅歪みに応じて減衰器の補償特性を調整し、検出した位相歪みに応じて移相器の補償特性を調整するようにすることにより、電力増幅器の振幅,位相歪みを抑えるようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
これに対し、最近では、かかる高周波信号の高出力電力増幅器として、高効率なドハーティ増幅器(Doherty Amplifier)が注目されている。これは、高周波出力の電力増幅器の出力効率を改善するものとして最初に提案されたものである(例えば、非特許文献1参照)。
図2はドハーティ増幅器の回路構成を示す図であって、1は入力端子、2は入力分配回路、3はキャリア増幅器、4はピーク増幅器、5は出力合成回路、6は出力端子である。
同図において、ドハーティ増幅器は、入力端子1から入力される信号を2つに分配する入力分配回路2と、この入力分配回路2の一方の出力信号を増幅するキャリア増幅器3と、この入力分配回路2の他方の出力信号を増幅するピーク増幅器4と、キャリア増幅器3とピーク増幅器4との出力信号を合成し、出力端子6から出力させる出力合成回路5とから構成されている。
入力分配回路2は入力端子1からの入力信号を2つに分配し、分配した一方の信号をキャリア増幅器3に供給するとともに、分配した他方の信号を1/4波長(λ/4)の伝送路2aを介してピーク増幅器4に供給する。
キャリア増幅器3とピーク増幅器4は同一の特性を有するが、キャリア増幅器3はA級やAB級,B級で動作し、ピーク増幅器4はC級で動作するようにして、キャリア増幅器3が飽和するとともに、ピーク増幅器4が増幅動作を行なうようにしている。即ち、入力分配回路2から供給される信号がキャリア増幅器3で飽和しない振幅範囲のときには、キャリア増幅器3をこの信号を増幅して出力するが、ピーク増幅器4は、オフ状態にあって、信号を出力しない。入力信号のレベルがキャリア増幅器3が飽和するレベルに達すると、ピーク増幅器4は入力信号のキャリア増幅器3が飽和するレベル以上の部分(これを、以下、ピーク部分という)について増幅を開始する。そして、キャリア増幅器3が飽和するレベル以上では、キャリア増幅器3は出力インピーダンスの低下によって飽和を保ったまま、さらに、出力を増大し、ピーク増幅器4はピーク部分を増幅して出力する。
キャリア増幅器3の出力信号は、出力合成回路5において、1/4波長の伝送路5aを介してピーク増幅器4の出力信号と合成され、出力端子6から出力される。この1/4波長の伝送路5aは、キャリア増幅器3の出力信号を効率良くピーク増幅器4の出力信号と合成するためのものであり、このとき、キャリア増幅器3の出力信号とピーク増幅器4の出力信号とが同相で合成されるように、上記のように、入力分配回路2に1/4波長の伝送路2aが設けられている。
このように、ドハーティ増幅器は、主として作用する増幅器(上記のキャリア増幅器3)が飽和しても、それ以上のレベルのピーク部分を補助増幅器としての他の増幅器(上記のピーク増幅器4)で増幅し、これら2つの増幅器の出力信号を合成して出力する構成をなすものであるから、増幅効率が優れ、低周波からミリ波にわたって利用可能な高出力の電力増幅器として注目されている。
ところで、増幅器には、入力信号のレベルに対して利得や位相が変化し、これによって歪みが発生するが、ドハーティ増幅器の場合、キャリア増幅器3とピーク増幅器4が同一特性の増幅器であっても、キャリア増幅器3はA級,AB級もしくはB級で動作させ、ピーク増幅器4はC級で動作させるように、これら2つの増幅器のクラスが異なるため、夫々の増幅器に生ずる歪みが異なり、これら増幅器の出力信号を合成して得られるドハーティ増幅器の出力信号は入力信号に対するリニアリティが損なわれることになる。
ドハーティ増幅器において、信号レベルに対する増幅器の利得変化に伴うリニアリティの劣化を改善する方法として、従来、ピーク増幅器4の前段に利得補償器を設けるようにし、信号レベルに応じたピーク増幅器4の利得変化をこの利得補償器で補償するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、ドハーティ増幅器において、信号レベルに対する増幅器の出力位相の変化(以下、この位相歪みをAM(振幅)ーPM(位相)歪みという)によるリニアリティの劣化を改善する方法として、従来、キャリア増幅器3とピーク増幅器4夫々毎に、それらの前段に前置歪み補償回路を設け、信号レベルに応じたキャリア増幅器及びピーク増幅器のAM−PM歪みをこれら前置歪み増幅回路で補償し、ドハーティ増幅器のリニアリティを改善するようにした技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
このように、ドハーティ増幅器は、歪みを低減することにより、高リニアリティの高出力が得られるものであることから、携帯電話システムの基地局などの送信機の電力増幅器への適用が注目されている。
特開2003ー273659 W.H.Doherty著 "A New High Efficiency Power Amplifier for Modulated Waves",Proc.IRE,Vol.24,No.9,Sept.1936 特開2004ー221646 特開2004ー222151
ところで、上記特許文献2に記載の技術は、キャリア増幅器とピーク増幅器とが同一特性としており、このため、ピーク増幅器の利得が理想の利得よりも小さくなってしまうため、利得補償器でこのピーク増幅器の利得の不足を補うものである。
一方、増幅器では、その処理する信号のレベルに応じてAM−PM歪みが生ずる。このため、キャリア増幅器とピーク増幅器との2つの増幅器を用いるドハーティ増幅器では、これら夫々の増幅器にAM−PM歪みが生ずることになる。上記特許公報3に記載の技術では、キャリア増幅器,ピーク増幅器夫々毎に前置歪み補償回路を設けることにより、これらキャリア増幅器,ピーク増幅器のAM−PM歪みを抑えるようにしているものである。
しかしながら、キャリア増幅器がA級,AB級あるいはB級で動作するのに対し、ピーク増幅器がC級で動作するため、キャリア増幅器に比べてピーク増幅器のAM−PM歪みが大きい(即ち、入力レベルによって位相が大きく変化する)。このために、上記特許文献3に記載の技術では、ピーク増幅器のAM−PM歪みを補正する前置歪み補償回路としては、かかる大きく変動するAM−PM歪みを補正する必要があり、大型の前置歪み補償回路を必要として、ドハーティ増幅器の構成が大型化し、高コストで高消費電力のものとなるという問題がある。
本発明の目的は、かかる問題を解消し、AM−PM歪みを効果的に抑制することができ、小型で低コスト,低消費電力の高出力電力増幅器を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、入力信号を分配する入力分配回路と、この入力分配回路の一方の出力信号を増幅するキャリア増幅器と、この入力分配回路の他方の出力信号で該キャリア増幅器が飽和する入力レベル以上のレベルのピーク分を増幅するピーク増幅器と、キャリア増幅器の出力信号とピーク増幅器の出力信号とを合成する出力合成回路とを備えた増幅器であって、入力分配回路の入力側に、キャリア増幅器で生ずるAM−PM歪みをキャンセルする第1の補償用歪みを入力信号に付加して、入力分配回路に供給する第1の歪み補償回路を設け、かつ、入力分配回路とピーク増幅器との間に、第1の歪み補償回路で第1の補償用歪みが付加された入力分配回路の他方の出力信号に、第1の補償用歪みとでピーク増幅器で生ずるAM−PM歪みをキャンセルする第2の補償用歪みを付加して、ピーク増幅器に供給する第2の歪み補償回路を設け、第1及び第2の歪み補償回路は、入力レベルの増加に伴い、同じ向きの位相を与えるものである。
本発明によれば、キャリア増幅器の歪みを補償する第1の歪み補償回路を、ピーク増幅器の歪みを補償するために設けられた第2の歪み補償回路とともに、ピーク増幅器の歪みを補償するために用いるものであるから、第2の歪み補償回路としては、それ自体だけでピーク増幅器の歪みを補償するような大型の回路構成とする必要がなく、ピーク増幅器の歪みも効果的に抑圧することが可能となる。
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明による増幅器の一実施形態を示す回路構成図であって、7は前置歪み補償回路、8はドライブ増幅器、9は前置歪み補償回路、10,11はドライブ増幅器であり、図2に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図において、入力端子1と入力分配回路2との間には、前置歪み補償回路7とドライブ増幅器8とが直列に設けられ、入力分配回路2とキャリア増幅器3との間にドライブ増幅器10が設けられ、入力分配器2とピーク増幅器4との間に前置歪み補償回路9とドライブ増幅器11とが直列に設けられている。
前置歪み補償回路7は、少なくとも非飽和状態におけるキャリア増幅器3でのAM−PM歪みを補償する歪み補償特性を有するものであって、入力端子1から入力された信号にキャリア増幅器3で生ずるAM−PM歪みをキャンセルする(つまり、反対の)AM−PM歪み(以下、補償用歪みという)を付加する。また、前置歪み補償回路9は、前置歪み補償回路7とともに、ピーク増幅器4で生ずるAM−PM歪みを補償する補償特性を有するものであって、前記歪み補償回路7で補償用歪みが付加されて歪み補償された信号に、ピーク増幅器4で生ずるAM−PM歪みをキャンセルできるように、AM−PM歪み(以下、補償用歪みという)を付加する。かかる前置歪み補償回路7,9としては、例えば、ショットキーダイオードや小信号トランジスタ,FETなどで構成する小電流回路とすることができる。
かかる構成において、入力端子1から入力された信号は、前置歪み補償回路7でキャリア増幅器3で生ずるAM−PM歪みをキャンセルする補償用歪みが付加され、ドライブ増幅器8でレベルが調整された後、入力分配回路2に供給されてキャリア増幅器3側とピーク増幅器4側とに分配される。キャリア増幅器3側に分配された信号Aは、ドライブ増幅器10でレベル調整された後、キャリア増幅器3で増幅される。また、ピーク増幅器4側に分配された信号Bは、前置歪み補償回路9に供給される。この前置歪み補償回路9では、前置歪み補償回路7で補償用歪みが付加された信号Bに、ピーク増幅器4で生ずるAM−PM歪みがキャンセルされるように、さらに、補償用歪みが付加される。前置歪み補償回路9から出力される信号Bは、ドライブ増幅器11でレベルが調整された後、ピーク増幅器4に供給される。
ここで、キャリア増幅器3はA級,AB級またはB級で動作し、また、ピーク増幅器4はC級で動作するように、夫々バイアスが設定されていて、キャリア増幅器3が飽和するまでは、ピーク増幅器4はカットオフ状態にあるが、キャリア増幅器3が飽和に達すると、ピーク増幅器4は急激に出力を増加させ、キャリア増幅器3の利得の不充分を補うように動作する。
なお、キャリア増幅器3とピーク増幅器4とは、例えば、同種(同型名)の半導体デバイスにより増幅を行ない、バイアスが異なっても、AM−PM特性は同じ傾向(例えば、レベルの増大に伴い、位相が単調に同じ向きにシフトする)を示す。例えば、LDMOSの場合、入力レベルが小さいときには、AM−PM特性は平坦であるが、ある値を越えた辺りから位相の遅れが顕著になる。
また、キャリア増幅器3で生ずるAM−PM歪みは前置歪み補償回路7で付加された補償用歪みによってキャンセルされ、ピーク増幅器4で生ずるAM−PM歪みは前置歪み補償回路7,9で付加された補償用歪みによってキャンセルされる。
キャリア増幅器3が飽和していないときには、ピーク増幅器4はオフ状態にあるので、キャリア増幅器3の出力信号が、出力合成回路5を介して、出力端子6からドハーティ増幅器の出力信号として出力端子6から出力される。また、キャリア増幅器3が飽和したときには、ピーク増幅器4から急激に増加する信号が出力され、キャリア増幅器3の飽和した出力信号とその不足分を補うピーク増幅器4の出力信号とが出力合成回路5で合成されて、ドハーティ増幅器の出力信号として出力端子6から出力される。
このようにして、この実施形態によると、キャリア増幅器3やピーク増幅器4でのAM−PM歪みを効率良く補正することができて、低歪でリニアリティが改善された低消費電力かつ高出力電力の増幅器を実現でき、例えば、携帯電話システムの基地局での送信機の電力増幅器などに用いることにより、低消費電力で低歪のリニアリティが優れた高出力の電力増幅が可能となる。
ここで、前置歪み補償回路7は入力信号の全レベルにわたってAM−PM歪みを補償するものであり、前置歪み補償回路9は少なくともキャリア増幅器3が飽和するレベル以上でAM−PM歪みを補償する歪み特性を有している。ドハーティ増幅器では、ピーク増幅器4が動作し始めるレベル付近で、出力インピーダンスの変化などの影響により、通常とは反対向きに位相がずれることがあるので、前置歪み補償回路9は、バイアスなどの調整により、前置歪み増幅器7よりも大きなレベル(例えば、ピーク増幅器4が動作し始めるレベルより0〜10dB大きいレベル)以上で前置歪みを発生するようにするとよい場合がある。
また、簡易的には、これら前置歪み補償回路7,9が同一のAM−PM歪み補償特性を持つ回路構成としてもよく、その場合には、ピーク増幅器4では、キャリア増幅器3でのAM−PM歪みの補償の2倍の歪み補償がなされることになる。このために、ピーク増幅器4のAM−PM歪みの補償には、上記特許文献3に記載の技術のような大きな歪み特性を有する前置歪み補償回路が不要として、低歪で高リニアリティの高出力信号が得られることになる。勿論、前置歪み補償回路9と前置歪み補償回路7とで補償量が異なる場合でも、前置歪み補償回路9としては、上記特許文献3に記載の技術でのピーク増幅器のAM−PM歪みを補償する前置歪み補償回路よりも低補償量の小型で低消費電力の構成のものとすることができる。
なお、図1において、ドライブ増幅器8,10,11は、上記のように、信号レベルを調整するためのものであって、必ずしも必要なものではない。
本発明による増幅器の一実施形態を示す回路構成図である。 ドハーティ増幅器を示す回路構成図である。
符号の説明
1 入力端子
2 入力分配回路
2a 1/4波長の伝送路
3 キャリア増幅器
4 ピーク増幅器
5 出力合成回路
6 出力端子
7 前置歪み補償回路
8 ドライブ増幅器
9 前置歪み補償回路
10,11 ドライブ増幅器

Claims (1)

  1. 入力信号を分配する入力分配回路と、該入力分配回路の一方の出力信号を増幅するキャリア増幅器と、該入力分配回路の他方の出力信号での該キャリア増幅器が飽和する入力レベル以上のレベルのピーク分を増幅するピーク増幅器と、該キャリア増幅器の出力信号と該ピーク増幅器の出力信号とを合成する出力合成回路とを備えた増幅器において、
    該入力分配回路の入力側に、該キャリア増幅器で生ずるAM−PM歪みをキャンセルする第1の補償用歪みを該入力信号に付加して、該入力分配回路に供給する第1の歪み補償回路を設け、
    かつ、該入力分配回路と該ピーク増幅器との間に、該第1の歪み補償回路で該第1の補償用歪みが付加された該入力分配回路の該他方の出力信号に、該第1の補償用歪みとで該ピーク増幅器で生ずるAM−PM歪みをキャンセルする第2の補償用歪みを付加して、該ピーク増幅器に供給する第2の歪み補償回路を設け、
    該第1及び第2の歪み補償回路は、入力レベルの増加に伴い、同じ向きの位相を与える
    ことを特徴とする増幅器。
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