JPWO2010076845A1 - ポーラ変調装置及び通信機器 - Google Patents

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Abstract

電力増幅器の出力特性を補償するポーラ変調装置を提供する。データ生成器(11)は、ベースバンド信号から振幅成分信号と位相成分信号とを生成する。位相変調器(12)は、位相成分信号に位相変調を施した位相変調信号を生成する。加算器(16)は、振幅成分信号に振幅オフセット電圧を加算する。電力増幅器(13)は、第1のヘテロ接合バイポーラトランジスタから構成されると共に、位相変調信号を振幅成分信号で増幅する。モニタ部(14)は、電力増幅器(13)をモニタし、モニタ電圧を出力する。制御部(15)は、モニタ電圧に応じた振幅オフセット電圧を算出し、加算器(16)に出力する。モニタ部(14)は、第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタから構成されると共に、当該第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタのコレクタ−エミッタ間電圧をモニタ電圧として出力する。

Description

本発明は、携帯電話や無線LAN等の通信機器に用いられるポーラ変調装置に関し、より特定的には、高線形かつ高効率に動作するポーラ変調装置、及びそれを用いた通信機器に関する。
近年、送信変調装置において高線形性と高効率性との両立を可能とする技術として、ポーラ変調方式が注目されている(例えば、特許文献1参照)。図15は、従来のポーラ変調方式を用いた送信変調装置(以下、ポーラ変調装置)の構成例を示す図である。図15において、従来のポーラ変調装置は、位相変調信号を増幅する電力増幅器(PA)51と、振幅成分信号に基づいて電力増幅器51の電源電圧を制御する電源制御部52とで構成される。電力増幅器51には位相変調信号が入力され、電源制御部52には振幅成分信号が入力される。このように、ポーラ変調方式を用いると、電力増幅器51に入力される位相変調信号を、振幅方向の変動成分をもたない定包絡線信号とすることができる。これにより、電力増幅器51として高効率の非線形増幅器を用いることができるようになる。一方で、振幅成分信号の電圧値と電力増幅器51の出力電圧とが比例関係になることが求められる。
また、電力増幅器51に使用される素子として、FET系デバイスよりも高いゲインが得られ、小型化が容易なHBT(Hetero-junction Bipolar Transistor:ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)系デバイスが使用されるようになった。しかし、HBT系デバイスは、異種半導体層を重ね合わせた界面でバンドオフセットが発生し、電源電圧と出力電圧との間に振幅オフセット電圧という特有のパラメータが存在する。
図16は、電力増幅器51の振幅オフセット電圧について説明する図である。図16の横軸は電力増幅器51の電源電圧Vccを示し、縦軸は電力増幅器51の出力電圧Voutを示す。図16に示すように、電力増幅器51としてHBT系デバイスを使用した場合、電源電圧Vccと出力電圧Voutとの関係は、直線的に変化するが原点を通過せずに、比例関係にならない。すなわち、電源電圧Vccと出力電圧Voutとの関係は、原点付近で非線形となる。この非線形部分において適切な補正を行なわないと、理想的な特性からずれることになり、そのずれ分は歪成分として現れる。この場合、問題となるのは隣接チャネルや受信帯域への影響であり、これらは規格により厳格に規定されている。
上記した理由により、電力増幅器51としてHBT系デバイスを用いる場合には、振幅オフセット電圧を考慮する必要がある。振幅オフセット電圧とは、電力増幅器51の出力が立ち上がるときの電源電圧値Vccのことである。例えば、図16に示すように、電源電圧Vccと出力電圧Voutとの関係を直線近似して、その直線とVcc軸との交点電圧Vcosを、振幅オフセット電圧と擬制することができる。加算器53は、振幅オフセット電圧を振幅成分信号に加算することで、電力増幅器51での歪みの発生を回避する。
また、振幅成分信号に実際に加算される振幅オフセット電圧をVosとし、電力増幅器51に最適な振幅オフセット電圧をVamoとする。図17は、最適な振幅オフセット電圧Vamoについて説明する図である。最適な振幅オフセット電圧Vamoの定義は、システムに要求される仕様に応じて任意に決定することができる。ここでは、図17に示すように、隣接チャネル漏洩電力比(ACLR/Adjacent Channel Leakage Power Ratio)が最小となるときの振幅オフセット電圧をVamoと定義する。また、受信帯域ノイズやEVM(Error Vector Magnitude)が最小となるときの振幅オフセット電圧をVamoと定義してもよい。
このように定義されたVamoと、Vcosとの間には強い相関関係があることが知られている。このため、電力増幅器51のVcosを算出し補償することで、出力信号の歪みを抑制すると共に、隣接チャネル漏洩電力(ACLR)や受信帯域ノイズを所望の範囲に抑えることができる。
米国特許第6256482号明細書
しかしながら、電力増幅器51の電源電圧Vccと出力電圧Voutとの関係は電力増幅器51の入力電力や、動作温度、固体ばらつき等の特性によって変化し、これに伴って、電力増幅器51の振幅オフセット電圧Vcosも変化する。このような全特性をROM等に記憶しておき、それを読み出して振幅オフセット電圧Vcosを補償する方法(すなわち、振幅ループによる補償)も考えられるが、メモリ使用量の増大はコストの増大につながるという課題がある。また、上述したような振幅ループによる補償動作を常時実行しなければならず、動作が遅延したり、消費電力が増大するといった課題も発生する。
それ故に、本発明の目的は、電力増幅器の個体ばらつきや温度変化等に影響されず、最適な振幅オフセット電圧を算出して、電力増幅器の出力特性を補償するポーラ変調装置を提供することである。
本発明は、ポーラ変調装置に向けられている。そして、上記目的を達成させるために、本発明のポーラ変調装置は、ベースバンド信号から振幅成分信号と位相成分信号とを生成するデータ生成器と、位相成分信号に位相変調を施した位相変調信号を生成する位相変調器と、振幅成分信号に振幅オフセット電圧を加算する加算器と、第1のヘテロ接合バイポーラトランジスタから構成されると共に、位相変調信号を振幅成分信号で増幅する電力増幅器と、電力増幅器をモニタし、モニタ電圧を出力するモニタ部と、モニタ電圧に応じた振幅オフセット電圧を算出し、加算器に出力する制御部とを備える。モニタ部は、第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタから構成されると共に、第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタのコレクタ−エミッタ間電圧をモニタ電圧として出力する。
これにより、ポーラ変調装置は、電力増幅器の振幅オフセット電圧を補正することにより、出力信号の歪みを抑制することができる。
また、第1のヘテロ接合バイポーラトランジスタと、第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタとは、同一半導体基板上に構成される。これにより、電力増幅器とモニタ部の動作温度を実質的に同一とできるので、オフセット電圧を電力増幅器の温度変化に合わせて自動的に調整できる。
好ましくは、第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタは、第1のヘテロ接合バイポーラトランジスタよりもサイズが小さい。これにより、モニタ部の消費電力を削減することができる。
また、モニタ部は、第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタのベース電流及びコレクタ電流を所定の値に固定したときのコレクタ−エミッタ間電圧を、モニタ電圧として出力する。
制御部は、所定の一次関数式を用いた演算によって、モニタ部が出力したモニタ電圧から振幅オフセット電圧を算出する。これにより、電力増幅器の個体ばらつき等による影響を抑制することができる。
また、一次関数式の各パラメータは、制御部が、隣接チャネル漏洩電力が最小となる振幅オフセット電圧を出力するように選択される。これによって、隣接チャネル漏洩電力(ACLR)を所望の範囲に抑えることができる。
また、一次関数式の各パラメータは、制御部が、受信帯域ノイズが最小となる振幅オフセット電圧を出力するように選択される。これによって、受信帯域ノイズを所望の範囲に抑えることができる。
また、ポーラ変調装置は、モニタ電圧に対応した振幅オフセット電圧が予め記憶されたLUTをさらに備えてもよい。この場合、制御部は、LUTを参照して、モニタ電圧に対応した振幅オフセット電圧を算出する。これによって、制御部での演算が必要なくなり、制御部の負荷を軽減することができる。
また、ポーラ変調装置は、加算器と電力増幅器との間に、振幅オフセット電圧が加算された振幅成分信号を所定の増幅率Gで増幅する電源制御部をさらに備えてもよい。この場合、制御部は、加算器に出力する振幅オフセット電圧を所定の増幅率1/Gで増幅する。これによって、出力信号のパワーを増幅した場合も、出力信号の歪みを抑制することができる。
また、本発明は、上述したポーラ変調装置を備える通信機器にも向けられている。通信機器は、送信信号を生成する送信回路と、送信回路で生成された送信信号を出力するアンテナとを備える。送信回路は、上述したポーラ変調装置から構成される。また、通信機器は、アンテナから受信した受信信号を処理する受信回路と、送信回路で生成された送信信号をアンテナに出力し、アンテナから受信した受信信号を受信回路に出力するアンテナ共用部とをさらに備えてもよい。
以上のように、本発明のポーラ変調装置によれば、モニタ部は、電力増幅器が備えるHBTと同一基板上に設けられたモニタ用のHBTを用いて、ベース電流IBB及びコレクタ電流ICを任意の値に固定したときのコレクタ−エミッタ間電圧VCEをモニター電圧Vivosとして出力する。モニタ電圧Vivosと理想の振幅オフセット電圧Vamoとは強い相関関係があるので、制御部は、モニタ電圧Vivosから、振幅成分信号に加算する振幅オフセット電圧Vosを算出することができる。これによって、出力信号の歪みを抑制すると共に、隣接チャネル漏洩電力(ACLR)や受信帯域ノイズを所望の範囲に抑えることができる。また、電力増幅器とモニタ部とを同一の半導体基板上に形成したので、電力増幅器とモニタ部の動作温度とは実質的に同一であり、振幅オフセット電圧Vos(したがって、理想の振幅オフセット電圧Vamo)を電力増幅器の温度変化に合わせて自動的に調整することができる。
また、本発明の通信機器によれば、上述したポーラ変調装置を用いることで、広い出力電力の範囲に渡って、低歪みかつ低ノイズに動作することができる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るポーラ変調装置1の構成の一例を示すブロック図である。 図2は、モニタ部14の構成例を示す回路図である。 図3は、モニタ部14が備えるトランジスタ141のVCE−IC特性を示す図である。 図4は、コレクタ電流ICの立ち上がり領域を拡大した図である。 図5は、VivosとVamoとの相関関係を示す図(IBB1,IC1)である。 図6は、VivosとVamoとの相関関係を示す図(IBB2,IC2)である。 図7は、代表的なVamoについて説明する図である。 図8は、電圧源243を備えるモニタ部14の構成例を示す回路図である。 図9は、モニタ部14が備えるトランジスタ141のIC−VCE特性を示す図である。 図10は、LUT17を備えるポーラ変調装置1bの構成の一例を示すブロック図である。 図11は、LUT17の記憶内容の一例を示す図である。 図12は、電源制御部18を備えるポーラ変調装置1cの構成の一例を示すブロック図である。 図13は、LUT17と電源制御部18とを備えるポーラ変調装置1dの構成の一例を示すブロック図である。 図14は、本発明の第2の実施形態に係る通信機器200の構成の一例を示すブロック図である。 図15は、従来のポーラ変調方式を用いたポーラ変調装置の構成例を示す図である。 図16は、電力増幅器51の振幅オフセット電圧について説明する図である。 図17は、最適な振幅オフセット電圧Vamoについて説明する図である。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るポーラ変調装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1において、ポーラ変調装置1は、データ生成器11と、位相変調器12と、電力増幅器(PA)13と、モニタ部14と、制御部15と、加算器16とを備える。データ生成器11は、ベースバンド信号から振幅成分信号と位相成分信号とを生成する。位相変調器12は、位相成分信号に位相変調を施した位相変調信号を生成する。
電力増幅器13には、位相変調器12から位相変調信号が入力される。また、電力増幅器13には、加算器16を介して、振幅成分信号が電源電圧として供給される。電力増幅器13は、電源電圧として供給された振幅成分信号を用いて、位相変調信号を増幅する。電力増幅器13は、HBT(Hetero-junction Bipolar Transistor:ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)から構成される。
モニタ部14は、電力増幅器13のHBTの振幅オフセット電圧を擬似的にモニターし、モニター電圧Vivosを出力する。なお、電力増幅器13とモニタ部14とを合わせた構成をPAモジュールと記してもよい。以下、モニタ部14の詳細について説明する。
図2は、モニタ部14の構成の一例を示す回路図である。図2を参照して、モニタ部14は、トランジスタ141と、電流源142と、電流源143とを備える。トランジスタ141は、HBT(Hetero-junction Bipolar Transistor:ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)である。トランジスタ141は、電力増幅器13を構成するトランジスタ(HBT)と特性を近づけるため、同一半導体基板上に構成されることが望ましい。また、トランジスタ141は、消費電力を低減するため、電力増幅器13を構成するトランジスタ(HBT)よりもサイズが小さいことが望ましい。電流源142は、トランジスタ141にコレクタ電流ICを供給する。電流源143は、トランジスタ141にベース電流IBBを供給する。
図3は、モニタ部14が備えるトランジスタ141のVCE−IC特性を示す図である。電圧源142及び電流源143を用いて、ベース電流IBBを任意の値に固定して、コレクタ−エミッタ間電圧VCEを変化させたとき、トランジスタ141のコレクタ電流ICは、図3に示すように変化する。次に、図3のコレクタ電流ICの立ち上がり領域を拡大したものを図4に示す。図4において、ベース電流IBB及びコレクタ電流ICを任意の値に固定すると、Vivosは、一意に決定できることがわかる。すなわち、モニタ部14は、ベース電流IBB及びコレクタ電流ICを任意の値に固定したときのコレクタ−エミッタ間電圧VCEをモニター電圧Vivosとして出力する。
図5は、ベース電流IBBをIBB1に、コレクタ電流ICをIC1に固定したときのVivosとVamoとの相関関係を示す図である。図6は、ベース電流IBBをIBB2に、コレクタ電流ICをIC2に固定したときのVivosとVamoとの相関関係を示す図である。図5及び図6に示す各点は、ベース電流IBB及びコレクタ電流ICを固定した上で、電力増幅器13の温度や固体ばらつき等の条件が変化したときのVivosとVamoとの関係をプロットしたものである。
ここで、Vamoは、電力増幅器13に最適な振幅オフセット電圧である。最適な振幅オフセット電圧Vamoの定義は、システムに要求される仕様に応じて任意に決定することができる。図7は、代表的なVamoについて説明する図である。図7に示す例は、ポーラ変調装置1がUMTSに適用された場合に、5MHz離調時のACLRを表している。図7に示すように、隣接チャネル漏洩電力比(ACLR)が最小となるときの電力増幅器13の振幅オフセット電圧を、最適なオフセット電圧Vamoと定義することができる。また、受信帯域ノイズが最小になるときの電力増幅器13の振幅オフセット電圧を、最適なオフセット電圧Vamoと定義してもよい。あるいは、EVMが最小になるときの電力増幅器13の振幅オフセット電圧を、最適なオフセット電圧Vamoと定義してもよい。
図5を参照して、ベース電流IBBをIBB1に、コレクタ電流ICをIC1で固定したとき、VivosとVamoとの相関関係は、例えば、各プロット点を最小自乗法によって直線近似すると、一次関数の(式1)を用いて表すことができる。ただし、IBB1とIC1とは、VivosとVamoとが(式1)の関係を満たすように、任意の組み合わせから選択されたものである。また、一次関数式の各パラメータA、Bは任意の数値を表す。ただし、各パラメータA、Bは、(式1)を用いた演算の結果、モニタ電圧Vivosから理想の振幅オフセット電圧Vamoを算出できるように決定される。
Vamo=A・Vivos+B ・・・(式1)
また、図6を参照して、ベース電流IBBをIBB2に、コレクタ電流ICをIC2で固定したとき、VivosとVamoとの相関関係は、例えば、各プロット点を最小自乗法によって直線近似すると、(式2)を用いて表すことができる。すなわち、ベース電流IBB及びコレクタ電流ICの選択の仕方によっては、Vivos=Vamoとすることもできる。この場合は、ポーラ変調装置1は、モニター電圧Vivosを調整する必要がなくなるので、制御部15を備える必要がなくなる。このように、VamoとVivosとの相関関係を表す式は、ベース電流IBB及びコレクタ電流ICの値に依存して決定される。
Vamo=Vivos ・・・(式2)
制御部15は、モニタ部14が算出したモニター電圧Vivosを所定の演算式に代入して、振幅成分信号に加算する振幅オフセット電圧Vosを算出する。上述した理由から、制御部15は、所定の演算式として、(式3)や(式4)を用いることができる。加算器16は、振幅成分信号に振幅オフセット電圧Vosを加算して、電力増幅器13に出力する。
Vos=A・Vivos+B ・・・(式3)
Vos=Vivos ・・・(式4)
以上のように、本発明の第1の実施形態に係るポーラ変調装置1によれば、モニタ部14は、電力増幅器13が備えるHBTと同一基板上に設けられたモニタ用のHBTを用いて、ベース電流IBB及びコレクタ電流ICを任意の値に固定したときのコレクタ−エミッタ間電圧VCEをモニター電圧Vivosとして出力する。モニタ電圧Vivosと理想の振幅オフセット電圧Vamoとは強い相関関係があるので、制御部15は、モニタ電圧Vivosから、振幅成分信号に加算する振幅オフセット電圧Vosを算出することができる。これよって、出力信号の歪みを抑制すると共に、隣接チャネル漏洩電力(ACLR)や受信帯域ノイズを所望の範囲に抑えることができる。また、電力増幅器13とモニタ部14とを同一の半導体基板上に形成したので、電力増幅器13とモニタ部14との動作温度は実質的に同一であり、振幅オフセット電圧Vos(したがって、理想の振幅オフセット電圧Vamo)を電力増幅器13の温度変化に合わせて自動的に調整できる。
なお、モニタ部14は、図8に示すように、電流源143の代わりに電圧源243を備える構成であってもよい。図8は、電圧源243を備えるモニタ部14の構成例を示す回路図である。図8を参照して、電圧源243は、トランジスタ141にベース−エミッタ間電圧VBEを供給する。図9は、モニタ部14が備えるトランジスタ141のIC−VCE特性を示す図である。電流源142及び電圧源243を用いて、ベース−エミッタ間電圧VBEを任意の値に固定して、コレクタ電流ICを変化させたとき、トランジスタ141のコレクタ−エミッタ間電圧VCEは、図9に示すように変化する。ここで、ベース−エミッタ間電圧VBE及びコレクタ電流ICを任意の値に固定すると、Vivosは、一意に決定できることがわかる。
また、ポーラ変調装置1bは、図10に示すように、さらにLUT17を備える構成であってもよい。図10は、LUT17を備えるポーラ変調装置1bの構成の一例を示すブロック図である。LUT17には、図11に示すように、Vivosに対応したVosが予め記憶されているものとする。図10を参照して、制御部15は、LUT17からVivosに対応したVosを読み出して、加算器16に出力する。その他の構成は、図1に示すポーラ変調装置1と同様である。
また、ポーラ変調装置1cは、図12に示すように、加算器16と電力増幅器13との間に電源制御部18をさらに備える構成であってもよい。図12は、電源制御部18を備えるポーラ変調装置1cの構成の一例を示すブロック図である。図12を参照して、電源制御部18は、任意の利得Gで増幅した振幅振幅成分信号を、電力増幅器13に電源電圧として供給する。制御部15は、任意の利得1/Gで増幅したVosを加算器16に出力する。この理由は、振幅成分信号に加算されたVosが電源制御部18で増幅されるため、増幅される前に予めVosを減衰しておくためである。その他の構成は、図1に示すポーラ変調装置1と同様である。ポーラ変調装置1cは、電源制御部18を備えることによって、より大きなパワーを出力できる。
また、ポーラ変調装置1dは、図13に示すように、LUT17と電源制御部18とをさらに備える構成であってもよい。図13は、LUT17と電源制御部18とを備えるポーラ変調装置1dの構成の一例を示すブロック図である。図13を参照して、電源制御部18は、任意の利得Gで増幅した振幅振幅成分信号を、電力増幅器13に電源電圧として供給する。LUT17には、図11に示すように、Vivosに対応したVosが予め記憶されている。制御部15は、LUT17からVivosに対応したVosを読み出して、任意の利得1/Gで増幅したVosを加算器16に出力する。また、ポーラ変調装置は、個々の利得G毎にLUTを備える構成であってもよい。この場合、制御部15は、利得Gに対応したLUTからVosを読み出して、演算することなくそのまま加算器16に出力する。
(第2の実施形態)
図14は、本発明の第2の実施形態に係る通信機器200の構成の一例を示すブロック図である。図14を参照して、第2の実施形態に係る通信機器200は、送信回路210、受信回路220、アンテナ共用器230、及びアンテナ240を備える。送信回路210は、第1の実施形態に係る送信回路1,1b,1c,1dのいずれかが用いられる。アンテナ共用器230は、送信回路210から出力された送信信号をアンテナ240に伝達し、受信回路220に送信信号が漏れるのを防ぐ。また、アンテナ共用器230は、アンテナ240から入力された受信信号を受信回路220に伝達し、受信信号が送信回路210に漏れるのを防ぐ。
従って、送信信号は、送信回路210から出力され、アンテナ共用器230を介してアンテナ240から空間に放出される。受信信号は、アンテナ240で受信され、アンテナ共用器230を介して受信回路220で受信される。第2の実施形態に係る通信機器200は、第1の実施形態に係る送信回路を用いることで、送信信号の線形性および低ノイズ性を確保しつつ、かつ無線装置としての低歪みおよび低ノイズを実現することができる。また、送信回路210の出力に方向性結合器などの分岐がないため、送信回路210からアンテナ240までの損失を低減することが可能であり、送信時の消費電力を低減することができ、無線通信機器として、長時間の使用が可能となる。なお、通信機器200は、送信回路210とアンテナ240とのみを備えた構成であってもよい。
本発明に係るポーラ変調装置は、携帯電話や無線LAN等の通信機器等に適用することができる。
1,1b,1c,1d ポーラ変調装置
11 データ生成器
12 位相変調器
13 電力増幅器
14 モニタ部
15 制御部
16 加算器
17 LUT
18 電源制御部
141 トランジスタ
142,143 電流源
243 電圧源
51 電力増幅器
52 電源制御部
53 加算器
200 通信機器
210 送信回路
220 受信回路
230 アンテナ共振器
240 アンテナ
本発明は、携帯電話や無線LAN等の通信機器に用いられるポーラ変調装置に関し、より特定的には、高線形かつ高効率に動作するポーラ変調装置、及びそれを用いた通信機器に関する。
近年、送信変調装置において高線形性と高効率性との両立を可能とする技術として、ポーラ変調方式が注目されている(例えば、特許文献1参照)。図15は、従来のポーラ変調方式を用いた送信変調装置(以下、ポーラ変調装置)の構成例を示す図である。図15において、従来のポーラ変調装置は、位相変調信号を増幅する電力増幅器(PA)51と、振幅成分信号に基づいて電力増幅器51の電源電圧を制御する電源制御部52とで構成される。電力増幅器51には位相変調信号が入力され、電源制御部52には振幅成分信号が入力される。このように、ポーラ変調方式を用いると、電力増幅器51に入力される位相変調信号を、振幅方向の変動成分をもたない定包絡線信号とすることができる。これにより、電力増幅器51として高効率の非線形増幅器を用いることができるようになる。一方で、振幅成分信号の電圧値と電力増幅器51の出力電圧とが比例関係になることが求められる。
また、電力増幅器51に使用される素子として、FET系デバイスよりも高いゲインが得られ、小型化が容易なHBT(Hetero-junction Bipolar Transistor:ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)系デバイスが使用されるようになった。しかし、HBT系デバイスは、異種半導体層を重ね合わせた界面でバンドオフセットが発生し、電源電圧と出力電圧との間に振幅オフセット電圧という特有のパラメータが存在する。
図16は、電力増幅器51の振幅オフセット電圧について説明する図である。図16の横軸は電力増幅器51の電源電圧Vccを示し、縦軸は電力増幅器51の出力電圧Voutを示す。図16に示すように、電力増幅器51としてHBT系デバイスを使用した場合、電源電圧Vccと出力電圧Voutとの関係は、直線的に変化するが原点を通過せずに、比例関係にならない。すなわち、電源電圧Vccと出力電圧Voutとの関係は、原点付近で非線形となる。この非線形部分において適切な補正を行なわないと、理想的な特性からずれることになり、そのずれ分は歪成分として現れる。この場合、問題となるのは隣接チャネルや受信帯域への影響であり、これらは規格により厳格に規定されている。
上記した理由により、電力増幅器51としてHBT系デバイスを用いる場合には、振幅オフセット電圧を考慮する必要がある。振幅オフセット電圧とは、電力増幅器51の出力が立ち上がるときの電源電圧値Vccのことである。例えば、図16に示すように、電源電圧Vccと出力電圧Voutとの関係を直線近似して、その直線とVcc軸との交点電圧Vcosを、振幅オフセット電圧と擬制することができる。加算器53は、振幅オフセット電圧を振幅成分信号に加算することで、電力増幅器51での歪みの発生を回避する。
また、振幅成分信号に実際に加算される振幅オフセット電圧をVosとし、電力増幅器51に最適な振幅オフセット電圧をVamoとする。図17は、最適な振幅オフセット電圧Vamoについて説明する図である。最適な振幅オフセット電圧Vamoの定義は、システムに要求される仕様に応じて任意に決定することができる。ここでは、図17に示すように、隣接チャネル漏洩電力比(ACLR/Adjacent Channel Leakage Power Ratio)が最小となるときの振幅オフセット電圧をVamoと定義する。また、受信帯域ノイズやEVM(Error Vector Magnitude)が最小となるときの振幅オフセット電圧をVamoと定義してもよい。
このように定義されたVamoと、Vcosとの間には強い相関関係があることが知られている。このため、電力増幅器51のVcosを算出し補償することで、出力信号の歪みを抑制すると共に、隣接チャネル漏洩電力(ACLR)や受信帯域ノイズを所望の範囲に抑えることができる。
米国特許第6256482号明細書
しかしながら、電力増幅器51の電源電圧Vccと出力電圧Voutとの関係は電力増幅器51の入力電力や、動作温度、固体ばらつき等の特性によって変化し、これに伴って、電力増幅器51の振幅オフセット電圧Vcosも変化する。このような全特性をROM等に記憶しておき、それを読み出して振幅オフセット電圧Vcosを補償する方法(すなわち、振幅ループによる補償)も考えられるが、メモリ使用量の増大はコストの増大につながるという課題がある。また、上述したような振幅ループによる補償動作を常時実行しなければならず、動作が遅延したり、消費電力が増大するといった課題も発生する。
それ故に、本発明の目的は、電力増幅器の個体ばらつきや温度変化等に影響されず、最適な振幅オフセット電圧を算出して、電力増幅器の出力特性を補償するポーラ変調装置を提供することである。
本発明は、ポーラ変調装置に向けられている。そして、上記目的を達成させるために、本発明のポーラ変調装置は、ベースバンド信号から振幅成分信号と位相成分信号とを生成するデータ生成器と、位相成分信号に位相変調を施した位相変調信号を生成する位相変調器と、振幅成分信号に振幅オフセット電圧を加算する加算器と、第1のヘテロ接合バイポーラトランジスタから構成されると共に、位相変調信号を振幅成分信号で増幅する電力増幅器と、電力増幅器をモニタし、モニタ電圧を出力するモニタ部と、モニタ電圧に応じた振幅オフセット電圧を算出し、加算器に出力する制御部とを備える。モニタ部は、第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタから構成されると共に、第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタのコレクタ−エミッタ間電圧をモニタ電圧として出力する。
これにより、ポーラ変調装置は、電力増幅器の振幅オフセット電圧を補正することにより、出力信号の歪みを抑制することができる。
また、第1のヘテロ接合バイポーラトランジスタと、第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタとは、同一半導体基板上に構成される。これにより、電力増幅器とモニタ部の動作温度を実質的に同一とできるので、オフセット電圧を電力増幅器の温度変化に合わせて自動的に調整できる。
好ましくは、第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタは、第1のヘテロ接合バイポーラトランジスタよりもサイズが小さい。これにより、モニタ部の消費電力を削減することができる。
また、モニタ部は、第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタのベース電流及びコレクタ電流を所定の値に固定したときのコレクタ−エミッタ間電圧を、モニタ電圧として出力する。
制御部は、所定の一次関数式を用いた演算によって、モニタ部が出力したモニタ電圧から振幅オフセット電圧を算出する。これにより、電力増幅器の個体ばらつき等による影響を抑制することができる。
また、一次関数式の各パラメータは、制御部が、隣接チャネル漏洩電力が最小となる振幅オフセット電圧を出力するように選択される。これによって、隣接チャネル漏洩電力(ACLR)を所望の範囲に抑えることができる。
また、一次関数式の各パラメータは、制御部が、受信帯域ノイズが最小となる振幅オフセット電圧を出力するように選択される。これによって、受信帯域ノイズを所望の範囲に抑えることができる。
また、ポーラ変調装置は、モニタ電圧に対応した振幅オフセット電圧が予め記憶されたLUTをさらに備えてもよい。この場合、制御部は、LUTを参照して、モニタ電圧に対応した振幅オフセット電圧を算出する。これによって、制御部での演算が必要なくなり、制御部の負荷を軽減することができる。
また、ポーラ変調装置は、加算器と電力増幅器との間に、振幅オフセット電圧が加算された振幅成分信号を所定の増幅率Gで増幅する電源制御部をさらに備えてもよい。この場合、制御部は、加算器に出力する振幅オフセット電圧を所定の増幅率1/Gで増幅する。これによって、出力信号のパワーを増幅した場合も、出力信号の歪みを抑制することができる。
また、本発明は、上述したポーラ変調装置を備える通信機器にも向けられている。通信機器は、送信信号を生成する送信回路と、送信回路で生成された送信信号を出力するアンテナとを備える。送信回路は、上述したポーラ変調装置から構成される。また、通信機器は、アンテナから受信した受信信号を処理する受信回路と、送信回路で生成された送信信号をアンテナに出力し、アンテナから受信した受信信号を受信回路に出力するアンテナ共用部とをさらに備えてもよい。
以上のように、本発明のポーラ変調装置によれば、モニタ部は、電力増幅器が備えるHBTと同一基板上に設けられたモニタ用のHBTを用いて、ベース電流IBB及びコレクタ電流ICを任意の値に固定したときのコレクタ−エミッタ間電圧VCEをモニター電圧Vivosとして出力する。モニタ電圧Vivosと理想の振幅オフセット電圧Vamoとは強い相関関係があるので、制御部は、モニタ電圧Vivosから、振幅成分信号に加算する振幅オフセット電圧Vosを算出することができる。これによって、出力信号の歪みを抑制すると共に、隣接チャネル漏洩電力(ACLR)や受信帯域ノイズを所望の範囲に抑えることができる。また、電力増幅器とモニタ部とを同一の半導体基板上に形成したので、電力増幅器とモニタ部の動作温度とは実質的に同一であり、振幅オフセット電圧Vos(したがって、理想の振幅オフセット電圧Vamo)を電力増幅器の温度変化に合わせて自動的に調整することができる。
また、本発明の通信機器によれば、上述したポーラ変調装置を用いることで、広い出力電力の範囲に渡って、低歪みかつ低ノイズに動作することができる。
本発明の第1の実施形態に係るポーラ変調装置1の構成の一例を示すブロック図 モニタ部14の構成例を示す回路図 モニタ部14が備えるトランジスタ141のVCE−IC特性を示す図 コレクタ電流ICの立ち上がり領域を拡大した図 VivosとVamoとの相関関係を示す図(IBB1,IC1) VivosとVamoとの相関関係を示す図(IBB2,IC2) 代表的なVamoについて説明する図 電圧源243を備えるモニタ部14の構成例を示す回路図 モニタ部14が備えるトランジスタ141のIC−VCE特性を示す図 LUT17を備えるポーラ変調装置1bの構成の一例を示すブロック図 LUT17の記憶内容の一例を示す図 電源制御部18を備えるポーラ変調装置1cの構成の一例を示すブロック図 LUT17と電源制御部18とを備えるポーラ変調装置1dの構成の一例を示すブロック図 本発明の第2の実施形態に係る通信機器200の構成の一例を示すブロック図 従来のポーラ変調方式を用いたポーラ変調装置の構成例を示す図 電力増幅器51の振幅オフセット電圧について説明する図 最適な振幅オフセット電圧Vamoについて説明する図
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るポーラ変調装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1において、ポーラ変調装置1は、データ生成器11と、位相変調器12と、電力増幅器(PA)13と、モニタ部14と、制御部15と、加算器16とを備える。データ生成器11は、ベースバンド信号から振幅成分信号と位相成分信号とを生成する。位相変調器12は、位相成分信号に位相変調を施した位相変調信号を生成する。
電力増幅器13には、位相変調器12から位相変調信号が入力される。また、電力増幅器13には、加算器16を介して、振幅成分信号が電源電圧として供給される。電力増幅器13は、電源電圧として供給された振幅成分信号を用いて、位相変調信号を増幅する。電力増幅器13は、HBT(Hetero-junction Bipolar Transistor:ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)から構成される。
モニタ部14は、電力増幅器13のHBTの振幅オフセット電圧を擬似的にモニターし、モニター電圧Vivosを出力する。なお、電力増幅器13とモニタ部14とを合わせた構成をPAモジュールと記してもよい。以下、モニタ部14の詳細について説明する。
図2は、モニタ部14の構成の一例を示す回路図である。図2を参照して、モニタ部14は、トランジスタ141と、電流源142と、電流源143とを備える。トランジスタ141は、HBT(Hetero-junction Bipolar Transistor:ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)である。トランジスタ141は、電力増幅器13を構成するトランジスタ(HBT)と特性を近づけるため、同一半導体基板上に構成されることが望ましい。また、トランジスタ141は、消費電力を低減するため、電力増幅器13を構成するトランジスタ(HBT)よりもサイズが小さいことが望ましい。電流源142は、トランジスタ141にコレクタ電流ICを供給する。電流源143は、トランジスタ141にベース電流IBBを供給する。
図3は、モニタ部14が備えるトランジスタ141のVCE−IC特性を示す図である。電圧源142及び電流源143を用いて、ベース電流IBBを任意の値に固定して、コレクタ−エミッタ間電圧VCEを変化させたとき、トランジスタ141のコレクタ電流ICは、図3に示すように変化する。次に、図3のコレクタ電流ICの立ち上がり領域を拡大したものを図4に示す。図4において、ベース電流IBB及びコレクタ電流ICを任意の値に固定すると、Vivosは、一意に決定できることがわかる。すなわち、モニタ部14は、ベース電流IBB及びコレクタ電流ICを任意の値に固定したときのコレクタ−エミッタ間電圧VCEをモニター電圧Vivosとして出力する。
図5は、ベース電流IBBをIBB1に、コレクタ電流ICをIC1に固定したときのVivosとVamoとの相関関係を示す図である。図6は、ベース電流IBBをIBB2に、コレクタ電流ICをIC2に固定したときのVivosとVamoとの相関関係を示す図である。図5及び図6に示す各点は、ベース電流IBB及びコレクタ電流ICを固定した上で、電力増幅器13の温度や固体ばらつき等の条件が変化したときのVivosとVamoとの関係をプロットしたものである。
ここで、Vamoは、電力増幅器13に最適な振幅オフセット電圧である。最適な振幅オフセット電圧Vamoの定義は、システムに要求される仕様に応じて任意に決定することができる。図7は、代表的なVamoについて説明する図である。図7に示す例は、ポーラ変調装置1がUMTSに適用された場合に、5MHz離調時のACLRを表している。図7に示すように、隣接チャネル漏洩電力比(ACLR)が最小となるときの電力増幅器13の振幅オフセット電圧を、最適なオフセット電圧Vamoと定義することができる。また、受信帯域ノイズが最小になるときの電力増幅器13の振幅オフセット電圧を、最適なオフセット電圧Vamoと定義してもよい。あるいは、EVMが最小になるときの電力増幅器13の振幅オフセット電圧を、最適なオフセット電圧Vamoと定義してもよい。
図5を参照して、ベース電流IBBをIBB1に、コレクタ電流ICをIC1で固定したとき、VivosとVamoとの相関関係は、例えば、各プロット点を最小自乗法によって直線近似すると、一次関数の(式1)を用いて表すことができる。ただし、IBB1とIC1とは、VivosとVamoとが(式1)の関係を満たすように、任意の組み合わせから選択されたものである。また、一次関数式の各パラメータA、Bは任意の数値を表す。ただし、各パラメータA、Bは、(式1)を用いた演算の結果、モニタ電圧Vivosから理想の振幅オフセット電圧Vamoを算出できるように決定される。
Vamo=A・Vivos+B ・・・(式1)
また、図6を参照して、ベース電流IBBをIBB2に、コレクタ電流ICをIC2で固定したとき、VivosとVamoとの相関関係は、例えば、各プロット点を最小自乗法によって直線近似すると、(式2)を用いて表すことができる。すなわち、ベース電流IBB及びコレクタ電流ICの選択の仕方によっては、Vivos=Vamoとすることもできる。この場合は、ポーラ変調装置1は、モニター電圧Vivosを調整する必要がなくなるので、制御部15を備える必要がなくなる。このように、VamoとVivosとの相関関係を表す式は、ベース電流IBB及びコレクタ電流ICの値に依存して決定される。
Vamo=Vivos ・・・(式2)
制御部15は、モニタ部14が算出したモニター電圧Vivosを所定の演算式に代入して、振幅成分信号に加算する振幅オフセット電圧Vosを算出する。上述した理由から、制御部15は、所定の演算式として、(式3)や(式4)を用いることができる。加算器16は、振幅成分信号に振幅オフセット電圧Vosを加算して、電力増幅器13に出力する。
Vos=A・Vivos+B ・・・(式3)
Vos=Vivos ・・・(式4)
以上のように、本発明の第1の実施形態に係るポーラ変調装置1によれば、モニタ部14は、電力増幅器13が備えるHBTと同一基板上に設けられたモニタ用のHBTを用いて、ベース電流IBB及びコレクタ電流ICを任意の値に固定したときのコレクタ−エミッタ間電圧VCEをモニター電圧Vivosとして出力する。モニタ電圧Vivosと理想の振幅オフセット電圧Vamoとは強い相関関係があるので、制御部15は、モニタ電圧Vivosから、振幅成分信号に加算する振幅オフセット電圧Vosを算出することができる。これよって、出力信号の歪みを抑制すると共に、隣接チャネル漏洩電力(ACLR)や受信帯域ノイズを所望の範囲に抑えることができる。また、電力増幅器13とモニタ部14とを同一の半導体基板上に形成したので、電力増幅器13とモニタ部14との動作温度は実質的に同一であり、振幅オフセット電圧Vos(したがって、理想の振幅オフセット電圧Vamo)を電力増幅器13の温度変化に合わせて自動的に調整できる。
なお、モニタ部14は、図8に示すように、電流源143の代わりに電圧源243を備える構成であってもよい。図8は、電圧源243を備えるモニタ部14の構成例を示す回路図である。図8を参照して、電圧源243は、トランジスタ141にベース−エミッタ間電圧VBEを供給する。図9は、モニタ部14が備えるトランジスタ141のIC−VCE特性を示す図である。電流源142及び電圧源243を用いて、ベース−エミッタ間電圧VBEを任意の値に固定して、コレクタ電流ICを変化させたとき、トランジスタ141のコレクタ−エミッタ間電圧VCEは、図9に示すように変化する。ここで、ベース−エミッタ間電圧VBE及びコレクタ電流ICを任意の値に固定すると、Vivosは、一意に決定できることがわかる。
また、ポーラ変調装置1bは、図10に示すように、さらにLUT17を備える構成であってもよい。図10は、LUT17を備えるポーラ変調装置1bの構成の一例を示すブロック図である。LUT17には、図11に示すように、Vivosに対応したVosが予め記憶されているものとする。図10を参照して、制御部15は、LUT17からVivosに対応したVosを読み出して、加算器16に出力する。その他の構成は、図1に示すポーラ変調装置1と同様である。
また、ポーラ変調装置1cは、図12に示すように、加算器16と電力増幅器13との間に電源制御部18をさらに備える構成であってもよい。図12は、電源制御部18を備えるポーラ変調装置1cの構成の一例を示すブロック図である。図12を参照して、電源制御部18は、任意の利得Gで増幅した振幅振幅成分信号を、電力増幅器13に電源電圧として供給する。制御部15は、任意の利得1/Gで増幅したVosを加算器16に出力する。この理由は、振幅成分信号に加算されたVosが電源制御部18で増幅されるため、増幅される前に予めVosを減衰しておくためである。その他の構成は、図1に示すポーラ変調装置1と同様である。ポーラ変調装置1cは、電源制御部18を備えることによって、より大きなパワーを出力できる。
また、ポーラ変調装置1dは、図13に示すように、LUT17と電源制御部18とをさらに備える構成であってもよい。図13は、LUT17と電源制御部18とを備えるポーラ変調装置1dの構成の一例を示すブロック図である。図13を参照して、電源制御部18は、任意の利得Gで増幅した振幅振幅成分信号を、電力増幅器13に電源電圧として供給する。LUT17には、図11に示すように、Vivosに対応したVosが予め記憶されている。制御部15は、LUT17からVivosに対応したVosを読み出して、任意の利得1/Gで増幅したVosを加算器16に出力する。また、ポーラ変調装置は、個々の利得G毎にLUTを備える構成であってもよい。この場合、制御部15は、利得Gに対応したLUTからVosを読み出して、演算することなくそのまま加算器16に出力する。
(第2の実施形態)
図14は、本発明の第2の実施形態に係る通信機器200の構成の一例を示すブロック図である。図14を参照して、第2の実施形態に係る通信機器200は、送信回路210、受信回路220、アンテナ共用器230、及びアンテナ240を備える。送信回路210は、第1の実施形態に係る送信回路1,1b,1c,1dのいずれかが用いられる。アンテナ共用器230は、送信回路210から出力された送信信号をアンテナ240に伝達し、受信回路220に送信信号が漏れるのを防ぐ。また、アンテナ共用器230は、アンテナ240から入力された受信信号を受信回路220に伝達し、受信信号が送信回路210に漏れるのを防ぐ。
従って、送信信号は、送信回路210から出力され、アンテナ共用器230を介してアンテナ240から空間に放出される。受信信号は、アンテナ240で受信され、アンテナ共用器230を介して受信回路220で受信される。第2の実施形態に係る通信機器200は、第1の実施形態に係る送信回路を用いることで、送信信号の線形性および低ノイズ性を確保しつつ、かつ無線装置としての低歪みおよび低ノイズを実現することができる。また、送信回路210の出力に方向性結合器などの分岐がないため、送信回路210からアンテナ240までの損失を低減することが可能であり、送信時の消費電力を低減することができ、無線通信機器として、長時間の使用が可能となる。なお、通信機器200は、送信回路210とアンテナ240とのみを備えた構成であってもよい。
本発明に係るポーラ変調装置は、携帯電話や無線LAN等の通信機器等に適用することができる。
1,1b,1c,1d ポーラ変調装置
11 データ生成器
12 位相変調器
13 電力増幅器
14 モニタ部
15 制御部
16 加算器
17 LUT
18 電源制御部
141 トランジスタ
142,143 電流源
243 電圧源
51 電力増幅器
52 電源制御部
53 加算器
200 通信機器
210 送信回路
220 受信回路
230 アンテナ共振器
240 アンテナ

Claims (11)

  1. ベースバンド信号から振幅成分信号と位相成分信号とを生成するデータ生成器と、
    前記位相成分信号に位相変調を施した位相変調信号を生成する位相変調器と、
    前記振幅成分信号に振幅オフセット電圧を加算する加算器と、
    第1のヘテロ接合バイポーラトランジスタから構成されると共に、前記位相変調信号を前記振幅成分信号で増幅する電力増幅器と、
    前記電力増幅器をモニタし、モニタ電圧を出力するモニタ部と、
    前記モニタ電圧に応じた前記振幅オフセット電圧を算出し、前記加算器に出力する制御部とを備え、
    前記モニタ部は、第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタから構成されると共に、当該第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタのコレクタ−エミッタ間電圧を前記モニタ電圧として出力する、ポーラ変調装置。
  2. 前記第1のヘテロ接合バイポーラトランジスタと、前記第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタとは、同一半導体基板上に構成される、請求項1に記載のポーラ変調装置。
  3. 前記第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタは、前記第1のヘテロ接合バイポーラトランジスタよりもサイズが小さい、請求項1に記載のポーラ変調装置。
  4. 前記モニタ部は、前記第2のヘテロ接合バイポーラトランジスタのベース電流及びコレクタ電流を所定の値に固定したときのコレクタ−エミッタ間電圧を、前記モニタ電圧として出力する、請求項1に記載のポーラ変調装置。
  5. 前記制御部は、所定の一次関数式を用いた演算によって、前記モニタ部が出力したモニタ電圧から前記振幅オフセット電圧を算出する、請求項1に記載のポーラ変調装置。
  6. 前記一次関数式の各パラメータは、前記制御部が、隣接チャネル漏洩電力が最小となる前記振幅オフセット電圧を出力するように選択される、請求項5に記載のポーラ変調装置。
  7. 前記一次関数式の各パラメータは、前記制御部が、受信帯域ノイズが最小となる前記振幅オフセット電圧を出力するように選択される、請求項5に記載のポーラ変調装置。
  8. 前記モニタ電圧に対応した前記振幅オフセット電圧が予め記憶されたLUTをさらに備え、
    前記制御部は、前記LUTを参照して、前記モニタ電圧に対応した前記振幅オフセット電圧を算出する、請求項1に記載のポーラ変調装置。
  9. 前記加算器と前記電力増幅器との間に、前記振幅オフセット電圧が加算された前記振幅成分信号を所定の増幅率Gで増幅する電源制御部をさらに備え、
    前記制御部は、前記加算器に出力する前記振幅オフセット電圧を所定の増幅率1/Gで増幅する、請求項1に記載のポーラ変調装置。
  10. 通信機器であって、
    送信信号を生成する送信回路と、
    前記送信回路で生成された送信信号を出力するアンテナとを備え、
    前記送信回路は、請求項1に記載のポーラ変調装置から構成されることを特徴とする、通信機器。
  11. 前記アンテナから受信した受信信号を処理する受信回路と、
    前記送信回路で生成された送信信号を前記アンテナに出力し、前記アンテナから受信した受信信号を前記受信回路に出力するアンテナ共用器とをさらに備えることを特徴とする、請求項10に記載の通信機器。
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