以下に、本発明の各実施の形態について図を用いて説明する。
なお、以下の各実施の形態の図においては、同一ないしは同様なものについては同一ないしは同様の番号を付け、各実施の形態の説明においてその説明を一部省略する場合がある。
また、図の各要素は、本発明を説明するために便宜的に分割したものであり、その実装形態は図の構成、分割、名称等に限定されない。また、分割の仕方自体も図に示した分割に限定されない。
また、図中および以下の説明の記載における「・・部」は、例えば「・・手段」、「・・機能単位」、「・・回路」、「・・装置」、「・・処理」、「・・ステップ」と置換えてもよい。また、「・・回路」は、例えば「・・装置」と置換えてもよい。
実施の形態1.
以下に、本発明の各実施の形態1について図2ないし図7を用いて説明する。
なお、本発明を分かりやすくするために、以下の説明においては電力増幅部130において主たる歪が発生するものと仮定し、その歪を主として補償する場合を例に説明する。従って、その他の構成要素における歪の発生は、電力増幅部130に比べて無視できる、あるいは、歪を発生しないいわゆる線形動作をする場合について説明する。
但し、上記場合に限定されるものではなく、例えば他の構成要素の歪を併せて補償することも可能である。
図2は、本発明の実施の形態1における歪補償回路の概略構成を示す図である。
図において、100は信号生成部、110は第1補償部、120は第2補償部、130は電力増幅部、140は温度検出部、150は電力検出部、Pinは第2補償部の入力電力、Tempは検出温度、Pdetは検出電力、Poutは電力増幅部の出力電力、また、矢印は各種信号および情報の伝送方向を示す。
また、図において、第1補償部110および第2補償部120における補償処理が予歪補償処理に対応し、電力増幅部130に入力される信号が予歪信号に対応する。
なお、図中の要素に一部を含まない狭義の歪補償回路を各種定義することが可能であり、例えば、信号生成部100、電力増幅部130、温度検出部140、電力検出部150のうち少なくとも1つを含めない歪補償回路を定義することができる。
また、図示しない要素を含む広義の歪補償回路を各種定義することも可能であり、例えば特許文献1の図5に記載の各種構成要素を含むことが可能である。
また、Pin、Temp、Pdet、Poutは、各種の表現形式が使用可能であり、また、値そのものを表す場合のほか、値を表す信号、値を表す情報または値を表すためのパラメータなどでもよい。
信号生成部100は、電力増幅部130の増幅対象となる信号を生成する。
信号生成部100で生成する信号は、本発明の歪補償回路を実装する各種電子装置の仕様に応じて波形が異なってもよく、例えば特許文献1に記載の変調信号を生成することができる。
第1補償部110は、信号生成部100で生成された信号を入力する。
また、第1補償部110は、基準温度における電力増幅部130の入出力特性の非線形性を補償するための、第1の補償用データ(図示しない)を有する。また、第1の補償用データにより補償した入力信号を出力する。
ここで、電力増幅部130の入出力特性の非線形性とは、例えば下記の図3に示す特性を指す。
また、第1補償部110は、電力検出部150で検出された検出電力Pdetから、電力増幅部130の出力電力Poutを推定する。
さらに、第1補償部110は、電力検出部150で検出された検出電力Pdetを元に、電力検出部130の出力電力が目標出力電力に収束するように、いわゆる閉ループ制御を行う。
ここで、目標出力電力値は、本発明の回路を実装する各種電子装置に依存して決定または設定される。例えば、無線送信装置では、通信環境に応じた通信品質が得られるように、装置単独で、あるいは他の装置からの指示に従って、目標出力電力値が決定または設定される。
第2補償部120は、第1補償部110で補償処理された信号を入力する。
また、第2補償部120は、基準温度以外における電力増幅部130の入出力特性の利得偏差特性と基準温度における利得偏差特性との間の特性差を補償するための第2の補償用データを有する。
また、第2補償部120は、第2の補償用データのうち検出温度Tempに対応するデータに従って、利得偏差特性の補償処理を行なって、補償処理された信号を出力する。
ここで、電力増幅部130の入出力特性の利得偏差特性とは、例えば下記の図4に示す特性を指す。
また、第2補償部120は、温度検出部140からの検出温度Tempから、電力増幅部130の温度を推定する。
電力増幅部130は、入力した信号の電力を増幅する。
温度検出部140は、電力増幅部130の温度を検出し、検出温度Tempを出力する。本実施の形態においては、主たる波形歪を生じさせる部位としての電力増幅部130の温度を測定する。
温度検出部140の実装としては各種素子が使用可能であり、例えば、(1)電力増幅部130と独立した一般的な温度センサ、(2)電力増幅部130内の増幅用半導体基板内に接合を形成したダイオード、を用いることができる。
また、温度の検出方法として各種方法が適用可能であり、例えば(1)電力増幅部130全体の温度を検出する、(2)波形歪を生じさせる主たる要因となる部位を検出する、(3)1つの部位の温度を検出する、(4)複数の部位の温度を検出する、(5)検出した値に対し統計処理などの演算処理を施す、ようにしてもよく、第2補償部の実装に合わせて適宜選択可能である。
電力検出部150は、電力増幅部130の出力電力Poutを検出し、検出電力Pdetを出力する。
なお、本発明の歪補償回路を各種電子装置に適用する際に、電力増幅部130の後段に別途素子が想定される場合は、Poutとしてその素子の出力電力を定義してもよい。例えば、無線送受信装置において、送信アンテナからの放射電力をPoutとして定義してもよい。
電力検出部150の実装としては、各種素子が使用可能であり、例えば、(1)出力の電力を一部分岐するための方向性結合器(カプラ:Coupler)と、包絡線検波用のダイオードとの組合せ、(2)デジタルサンプラ(Digital Sampler)と、電力計算用デジタル回路、を用いることができる。
次に、歪補償回路の動作原理について、図3ないし図7を用いて説明する。
動作原理をわかりやすくするために、電力増幅部130、第2補償部120、第1補償部110の順に説明する。
また、説明の簡略化のため、電力増幅器130の非線形性は利得の非線形性およびその温度依存性を考慮し、位相特性の非線形性および偏差特性は温度に依存しない場合を仮定した場合について説明する。また、増幅対象の信号の周波数に依存しないものと仮定する。
さらに、基準温度として摂氏25度、基準温度以外の温度として摂氏75度の場合を例に説明する。但し、図に示した温度の値に限定されない。
図3は、本発明の実施の形態1における、電力増幅部130の入出力特性を示す図である。これは、図2において第2補償部120で補償されていない場合の出力電力PoutのPin依存性に相当する。
図4は、本発明の実施の形態1における、電力増幅部130の利得偏差特性を示す図である。これは、図2において第2補償部120で補償されていない場合の、PinからPoutまでの総利得のPin依存性における、利得偏差特性に相当する。
図3および図4において、Pin(PA)(dBm)は、電力増幅部130の入力電力(dBm表示)を、Pout(PA)(dBm)は、電力増幅部130の出力電力(dBm表示)を、実線は摂氏25度における特性曲線を、点線は摂氏75度における特性曲線を示す。
また、図4において、ΔGain(PA)(dB)は、図3の低出力領域、即ちほぼ線形動作領域と看做せる出力電力領域、における特性(図3では利得)を基準(利得=0dB)とした利得偏差(dB表示)を示す。なお、図4では、Pinが20dBmの値を基準として示しているが、即ちほぼ線形動作領域と看做せる出力電力を基準とすればよく、特定の値に限定されない。
なお、本実施の形態において温度に依存しないとして省略した位相偏差特性について、図4と同様な図で表すことができる。
まず、第2の補償部120の動作について説明する。
第2補償部120は、第2の補償用データのうち温度検出部140によって検出された検出温度Tempに対応するデータ、に従って、第1補償部110で補償処理がされた信号に対し、利得偏差特性の温度依存性に対する補償処理を行なう。
ここで、第2の補償部120が有する第2の補償用データは、基準温度以外の温度における利得偏差特性を基準温度における利得偏差特性との特性差を補償するためのデータであり、図4においては、摂氏75度における利得偏差特性を摂氏25度における利得偏差特性に補償するためのデータである。
本実施の形態では、第2の補償用データは、入力電力Pin(PA)に依存せず、各温度について一意に決定される補償データを用いる。
例えば、(1)XおよびYを任意の値とし、検出温度Tempに対する一次式Vcnt2=XxTemp+Y ・・数式1、(2)多項式、(3)事前に作成して保持した補償テーブル、を用いて特性差を近似することができる。
このように、温度依存性を補償するためのデータ(第2の補償用データ)は、温度による変化分のみを表す簡単な数式またはデータ量の少ないテーブルによって表現できる。
このことは、図4において、基準温度以外の温度(摂氏75度)における利得偏差特性が、基準温度(25度)における利得偏差特性を横方向に平行移動した特性に近似できるものとして、特性差を補償することに相当する。
図3および図4をみると、摂氏75度の特性のほうが、摂氏25の特性に比べて、低い入力電力領域から利得が飽和し始めているのがわかる。
そこで、この場合には、第2補償部は、信号を増幅するような利得制御を行ない、電力増幅部130の入力電力を増加させる。
なお、各実施の形態の説明において、「増幅」とは、増幅率が正の場合のみならず、ゼロの場合および負の場合を含むことが可能な概念として用いる。
一般的に、各温度において、電力増幅部130の飽和出力電力は入力電力に依存しなくなるので、第2補償部120と電力増幅部を合わせた利得偏差特性の摂氏75度における特性曲線の形状は、図5に示すように、高出力側における利得偏差が増加し、摂氏25度の特性曲線に近づくことになる。
図5は、本発明の実施の形態1における、利得偏差補償後の、第2補償部120と電力増幅部130をと合わせた利得偏差特性を示す図である。図の見方は図4と同様である。
図に示した例において、両特性曲線がほぼ一致していることがわかる。
図6は、本発明の実施の形態1における、利得偏差補償後の、第2補償部120と電力増幅部130とを合わせた入出力特性を示す図である。図の見方は図3と同様である。
図において、Pin(dBm)は、図2におけるPin(dBm表示)を、Pout(dBm)は図2におけるPout(dBm表示)を、実線は摂氏75度における特性曲線を、点線は摂氏25度における特性曲線を示す。
図5において利得偏差特性の特性曲線が一致しているということは、第2補償部120と電力増幅部とを合わせた入出力特性、即ち図2のPoutのPin依存性、は図6に示すように特性曲線が相似形に近づくことを意味する。
図においては、低電力領域側において摂氏75度における出力が増加し、両特性曲線がほぼ相似形になっていることがわかる。
即ち、第2補償部120による補償によって、第2補償部120と電力増幅部130とを、図5および図6に示すような近似的に単一な特性を有する1つの増幅器モジュールとみなすことができる。
次に、第1の補償部110の動作について説明する。
第1補償部110は、電力検出部150の検出電力Pdetを元に、電力検出部130の出力電力Poutが目標出力電力値に収束するように、いわゆる閉ループ制御を行う。
図6を参照し、基準となる動作点として、摂氏25度においてPin=30dBm、Pout=42.5dBmの場合を考える。
目標出力電力を同じ値(42.5dBm)とすると、追加の制御がない場合、摂氏75度では、出力電力Poutが41.5dBmに低下する。
また、第1補償部110は、目標出力電力と実際の出力電力との差(1dB)を補償するように増幅利得を調整する。即ち、図6においては、Pinが31dBmになるように第1補償部110の出力電力を増加させる。
即ち、第1補償部110は、第1の補償用データのうちで電力増幅部130の出力電力の検出値Pdetに対応するデータに従って、信号生成部100で生成された信号に対し、上記電力差を補償する処理を行い、処理された信号を出力する。
さらに、第1補償部110は、電力検出部150で検出した検出電力Pdetを元に、基準温度における入出力特性の非線形性の補償処理を行う。
図7は、本発明の実施の形態1における、第1補償部の補償特性を示す図である。
ここで、第1補償部110が有する第1の補償用データは、図3または図6に示す基準温度(摂氏25度)の入出力特性の非線形性を補償するためのデータである。また、第1の補償用データは、図7に示す特性曲線を表すデータに相当する。
図7を参照すると、摂氏25度において動作点がPin=30dBmであり、基準温度における前記電力増幅部の入出力特性の非線形性を補償するための第1の補償用データの値(ΔGain)は1.2dBである。
摂氏75度においては、上記閉ループ制御によりPin=31dBmとなるので、75度における非線形性を補償するための補償量(ΔGain)は1.7dBとなるよう補償処理を行う。これは、非線形補償動作における動作点を変更させることに相当する。
第2補償部120において、電力増幅部130の温度の違いによる利得偏差特性の特性差を補償する補償動作が行なわれ、異なる温度の利得偏差特性曲線が相似形に近づくことにより、電力増幅部130の入出力特性の非線形特性の補償動作において、図7に示すように、基準となる非線形性特性に対する単一の補正曲線に集約することができる。
以上のように、本実施の形態の歪補償回路によれば、電力増幅部130の利得偏差特性の温度依存性分を、電力増幅部130より前段にある第2補償部120において補償しているので、異なる温度における入出力特性の形状が相似形に近くなる、すなわち、入出力特性の非線形性が類似してくる。従って、第2補償部よりも前段にある第1補償部において、非線形性を補償するために必要な補償データ(第1の補償用データ)は、基準温度における入出力特性の非線形性を補償するために必要な1種類のデータがあればよい。
従って、補償テーブルを記憶するためのメモリ量を少なくすることができ、補償テーブルの回路規模、製作コスト、消費電力を低減した歪補償回路を提供することができる。
また、第1の補償データは、入出力特性においてすべての動作領域が線形領域と看做せる場合と実際の入出力特性との差分で表現可能であるので、その場合、補償データを表現するための情報量を少なくでき、回路規模、製作コスト、消費電力をさらに低減した歪補償回路を提供することができる。
同様に、第2の補償用データは、基準温度以外における特性と基準温度における特性の差分で表現可能であるので、第1の補償用データと同様に、データを表現するための情報量を少なくでき、回路規模、製作コスト、消費電力をさらに低減した歪補償回路を提供することができる。
また、入出力特性を、基準となる特定の特性曲線に近づけることにより、AM−PM変調歪に起因する位相変化も、基準となる入出力電力特性における位相変化に近づくので、第2補償部120による利得偏差の補償動作に伴って、位相偏差特性の温度変化に起因する歪の発生も低減することができる。
即ち、第2補償部120は、「第2の補償データのうち電力増幅部の検出温度Tempに対応するデータに従って、第1補償部で非線形性の補償処理がされた信号に対し、利得偏差特性および位相偏差特性の補償処理を行なう」と言い換えることもできる。
また、第1補償部110において閉ループ制御を行っているが、検出電力Pdetの増減に従った簡単な利得制御でよく、複雑な制御が不要である。
なお、本発明の実施の形態おいては、単一の基準温度における電力増幅部130の非線形特性に近づけるように補償しているが、想定する温度範囲で単一の特性に近似しにくい場合は、例えば、複数の基準温度を設定してもよい。
なお、本発明の実施の形態おいては、摂氏25度において補償時に使用する第1の補償用データの値(ΔGain)が各温度で特定の1つの値となっているが、例えば信号生成部100から出力される信号が変調信号のような信号の場合には、(1)平均電力が同じで瞬時電力の範囲が異なる、(2)平均電力が同じでPAR(Peak to Average Ratio)が異なることがある。
その場合に、上記説明の動作点が平均電力に対応する点であるとし、上記説明の補償処理を動作点同士の関係の処理とした補償処理を行ってもよい。即ち、上記特性図に示した例の場合、平均電力に対応する補償量(ΔGain)を、摂氏25度では1.2dBとし、摂氏75度では1.7dBとして補償処理を行なう。
そして、第1補償部110は、動作点の補償量を中心として、信号生成部100で生成された信号の瞬時電力に応じて補償量を変化させる、従って補償量(ΔGain)に変動幅を持たせて変化させる、ようにしてもよい。
なお、この場合、異なる温度における変動幅が同じである必要はない。
この場合、信号生成部100から受け取る信号の信号電力を求める方法としては、各種方法が使用可能であり、例えば(1)信号生成部100で信号電力を求めて第1補償部110に通知する、(2)第1補償部110内で信号電力を求める、(3)各部の制御情報および検出情報を第1補償部110で受け取り信号電力を求める、方法が使用可能である。
また、本発明の実施の形態おいては、利得偏差特性のみが温度により変化する場合、即ち電力増幅部130の利得偏差特性の温度依存性に注目して、利得偏差特性を補償するデータを第2の補償用データとしているが、上記の場合に限定されない。
一般的に、上記AM−PM変調歪のように、利得に関する非線形性と位相に関する非線形性との間には相関関係がある場合が多いので、例えば、(1)位相偏差特性に注目し、位相偏差特性の特性差が主として補償されるような利得偏差補償データを第2の補償用データとして用いて、第2補償部120において補償処理を行なう、(2)利得偏差特性と位相偏差特性の両方に着目し、着目する程度に応じて両方が補償されるような利得偏差補償データを第2の補償用データとして用いて、第2補償部120において補償処理を行なうようにしてよい。
実施の形態2.
以下に、本発明の各実施の形態2について図8ないし図10を用いて説明する。
なお、上記実施の形態1の図2の構成と同一または同様な要素については、その説明を省略する場合がある。
上記実施の形態1と異なる点は、第1補償部110および第2補償部120の内部の概略構成が示されている点である。
図8は、本発明の実施の形態2における、歪補償回路の概略構成を示す図である。
図9は、本発明の実施の形態2における、第1制御部の概略構成を示す図である。
図10は、本発明の実施の形態2における、第2制御部の概略構成を示す図である。
図8ないし図10において、111は歪補償部、112は第1可変増幅部、113は第1制御部、121は第2可変増幅部、122は第2制御部、1131は補償調整部、1133は第1ゲイン調整部、1221は第2ゲイン調整部、Vcont0、Vcont1、Vcont2は制御信号を示す。
なお、Vcont0、Vcont1、Vcont2、Pdet、Poutは、各種の表現形式が使用可能であり、例えば、値そのものを表す場合のほか、値を表す信号、値を表す情報、または値を表すパラメータでもよい。
また、実施の形態1と同様に、図において、第1補償部110および第2補償部120における補償処理が予歪補償処理に対応し、電力増幅部130に入力される信号が予歪信号に対応する。
第1補償部110(図8参照)は、歪補償部111、第1可変増幅部112、第1制御部113を有する。
歪補償部111は、電力増幅部130の入出力特性の非線形特性を補償するための、第1の補償用データ(図示しない)を有する。
第1制御部113は、検出電力Pdetに従って、歪補償部111および第1可変増幅部112を制御するため、制御信号Vcont0およびVcont1を出力する。
また、第1制御部113は、電力検出部150で検出した検出電力Pdetを元に、電力検出部130の出力電力Poutが目標出力電力に収束するように、いわゆる閉ループ制御を行う。
第1制御部113内の第1ゲイン調整部1133(図9参照)は、第1可変増幅部112の利得と制御信号Vcont1との間の対応関係を表す利得制御特性データ(図示しない)を有する。
また、第1ゲイン調整部1133は、電力検出部150で検出した検出電力Pdetと上記利得制御特性データとを元に、電力検出部130の出力電力Poutが目標出力電力に収束するように、閉ループ制御のための制御信号Vcont1を第1可変増幅部112に出力する。
また、第1ゲイン調整部1133は、制御信号Vcont1の変化量に対応する、第1可変増幅部112での利得調整量(ΔG)を補償調整部1131に出力する。
さらに、第1制御部113(図8参照)は、電力検出部150の検出電力Pdetを元に、電力増幅部130の入出力特性の非線形性を補償するように、歪補償部111に制御信号Vcont0を出力する。
第1制御部113内の補償調整部1131(図9参照)は、第1ゲイン調整部1133からの利得調整量(ΔG)情報に従って、非線形補償動作における動作点を変更させるための制御信号Vcont0を、歪補償部1131に出力する。
歪補償部111(図8参照)は、信号生成部100で生成された信号を入力する。
また、第1の補償用データ(図示しない)を元に、第1制御部113からの制御信号Vcont0に従って、電力増幅部130の入出力特性の非線形性の補償(実施の形態1の図7のΔGain参照。)処理を行い、補償処理された信号を出力する。
第1可変増幅部112(図8参照)は、歪補償部111で補償された信号を増幅する。また、第1制御部113からの制御信号Vcont1に従って、増幅利得を調節する。
第2補償部120(図8参照)は、第2可変増幅部121および第2制御部122を有する。
第2制御部122(図8参照)は、基準温度以外における電力増幅部130の入出力特性の利得偏差特性と基準温度における利得偏差特性との間の特性差を補償するための第2の補償用データ(図示しない)を有する。
また、第2の補償用データのうち検出温度Tempに対応するデータに従って、利得偏差特性の補償処理を行なうための制御信号Vcont2を出力し、第2可変増幅部121を制御する。
第2制御部122内の第2ゲイン調整部1221(図10参照)は、第2可変増幅部121の利得と制御信号Vcont2との間の対応関係を表す利得制御特性データ(図示しない)を有する。
第2可変増幅部121(図8参照)は、第2制御部からの制御信号Vcont2に従って増幅利得を調整し、増幅された信号を電力増幅部130に向けて出力する。
即ち、図において、第2可変増幅部121から出力され、電力部130に入力する信号が予歪信号に相当する。
図8ないし図10において、上記実施の形態1と異なる点は、第1補償部110および第2補償部120の内部の概略構成が示されている点であり、上記実施の形態1の第1補償部110および第2補償部120の各動作の主体を個別ブロックとして明示的に分解して記載しているが、歪補償回路の動作、さらに第1補償部110および第2補償部120の動作については、上記実施の形態1と同様であるので、詳細な動作説明は省略する。
以上のように、本実施の形態の歪補償回路によれば、上位機実施の形態1と同様な効果を奏する。
なお、本実施の形態においては、歪補償部111が第1の補償用データを有するとしているが、実施の形態に限定されず、例えば補償調整部1131が有するようにしてもよい。その場合、歪補償部111と補償調整部1131との間の動作区分、および、制御信号Vcont0の定義が変更される。
実施の形態3.
以下に、本発明の各実施の形態3について図11および図12を用いて説明する。
なお、上記各実施の形態の図の構成と同一または同様な要素については、その説明を省略する場合がある。
図11は、本発明の実施の形態3における、歪補償回路の概略構成を示す図である。
図12は、本発明の実施の形態3における、制御部の概略構成を示す図である。
図において、123が制御部、210が歪制御部、220が可変増幅部、1231が加算部、Vcont12が制御信号を示す。
本実施の形態が上記実施の形態2の図8ないし図10と異なる点は、図8の第1可変増幅部112および第2可変増幅部121の代わりに、可変増幅部220が存在し、図8の第1制御部113および第2制御部122の代わりに、制御部123が存在し、制御信号Vcont1およびVcont2の代わりに、制御信号Vcont12が存在し、さらに、加算部1231が追加されている点である。
その他については、上記実施の形態2と同様である。
図において、歪補償部210、可変増幅部220および制御部123における補償処理が予歪補償処理に対応し、電力増幅部130に入力される信号が予歪信号に対応する。
また、図において、歪補償部210と制御部123の一部とが、上記実施の形態1における第1補償部110に対応し、可変増幅部220と制御部123の一部とが、上記実施の形態1における第2補償部120に対応する。即ち、本実施の形態は、上記実施の形態1の第1補償部の制御と第2補償部の制御とが1つの制御部123に統合されている場合に相当する。
可変増幅部220(図11参照)は、上記実施の形態2の図8の第1補償部110における閉ループ制御の調整利得および第2補償部120における利得偏差補償の補償利得を合わせた利得で、歪補償部210から出力された信号に対する増幅を行う。
即ち、可変増幅部220は、上記実施の形態2の図9の第1可変増幅部112と第2可変増幅部の合体した利得調整量のもとに、増幅を行う。
このために、制御部123から制御信号Vcont12を入力する。
制御部123(図11参照)は、上記実施の形態2の図8の第1制御部113および第2制御部122に相当する制御を行い、制御信号Vcont0およびVcont12を出力する。
制御部123内の加算部1231(図12参照)は、第1ゲイン調整部1133における利得調整量と第2ゲイン調整部1221における利得調整量とを合算し、合算した利得調整量に対応する制御信号Vcont12を可変増幅部220に出力する。
このために、制御部123において、第1ゲイン調整部1133による利得制御量と第2ゲイン調整部1221による利得制御量とを、加算部1231により合算し、合算した利得制御量に対応した制御信号Vcont12により、可変増幅部220の利得を制御する。
本実施の形態の歪補償回路の動作は、可変増幅部220および加算部1231において、上記実施の形態2の利得調整に基づく増幅が一体化されている点が異なるのみであるので、動作説明は省略する。
以上のように、本実施の形態の歪補償回路によれば、上記実施の形態1と同様な効果を奏することができる。
実施の形態4.
以下に、本発明の各実施の形態4について図13を用いて説明する。
なお、上記実施の形態構成と同一または同様な要素については、その説明を省略する場合がある。
図13は、本発明の実施の形態4における、歪補償回路の概略構成を示す図である。
図において、300はデジタル処理回路、310aおよび310bはデジタルアナログ変換回路、320は可変増幅器、330は電力増幅器、340は温度センサ、350は方向性結合器、360aおよび360bはアナログデジタル変換回路、370は記憶回路を示す。
図において、デジタル処理回路の一部、デジタルアナログ変換回路310a、310b、可変増幅器320、アナログデジタル変換回路360a、360b、記憶回路の一部における処理が予歪補償処理に対応し、電力増幅器330に入力される信号が予歪信号に対応する。
また、図において、デジタル処理回路の一部、デジタルアナログ変換回路310a、アナログデジタル変換回路360b、記憶回路の一部が、上記実施の形態1における第1補償部に対応し、また、デジタル処理回路の一部、デジタルアナログ変換回路310b、可変増幅器320、アナログデジタル変換回路360a、記憶回路の一部が、上記実施の形態1における第2補償部に対応する。
上記実施の形態3の図11と異なる点は、信号生成部100、歪補償部210、制御部123、電力増幅部130の代わりに、デジタル回路300、デジタルアナログ変換回路310aおよび310b、電力増幅器330、方向性結合器350、アナログデジタル変換回路360aおよび360b、記憶回路370が存在する点である。
即ち、本実施の形態においては、上記実施の形態3の図11の信号生成部100、歪補償部210、制御部123の処理または回路を、デジタル回路により実現し、その他の要素の動作をアナログ回路により実現する場合に相当する。
なお、図中の各要素は、本発明を説明するために便宜的に分けたものであり、その実装形態は図の構成、分割、名称等に限定されない。例えば実施の形態2の図11に示した処理を図13の構成要素で実現することが可能であり、逆も可能である。
例えば、(1)上記実施の形態2の図11の信号生成部100、歪み補償部210および制御部123を、主に図13のデジタル処理回路300、記憶回路370およびデジタルアナログ変換回路310aにより実現し、(2)図11の可変増幅部220を、図13の可変増幅器320およびデジタルアナログ変換回路310bにより実現し、(3)図11の温度検出部140を図13の温度センサおよびアナログデジタル変換回路360aにより実現し、(4)図11の電力増幅部130を電力増幅器330により実現し、(5)図11の電力検出部150を図13の方向性結合器350およびアナログデジタル変換回路360bにより実現してもよく、また、逆も可能である。
上記例示の図11と図13との対応関係により、図13の各部の動作は説明可能であり、また、デジタルアナログ変換回路310およびアナログデジタル変換回路360の動作は、一般的なデジタル信号とアナログ信号との間の変換動作として理解することが可能であるので、歪補償回路の動作説明は省略する。
以上のように、本実施の形態の歪補償回路によれば、上記各実施の形態と同様な効果を奏することができる。
なお、本実施の形態のデジタル処理回路300は、各種実装形態が可能であり、例えばマイクロプロセッサ(Microprocessor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)といった、演算、制御等の機能を実現可能であればよい。
また、処理方式は、(1)アナログ処理、(2)デジタル処理および(3)両者の混在処理、のいずれであってもよい。
さらに、(1)ハードウェアによる構成、(2)ソフトウェアによる構成、(3)両者の混在による構成、など実装方法は限定されない。
また、記憶回路380は、各種実装形態が可能であり、データを記憶保持可能なものであればよく、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic RAM)、SDRAM(Synchronous DRAM)、DDR−SDRAM(Double Data Rate SDRAM)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Electrical Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、または上記の組合せ、が可能である。
また、記憶回路380についても同様に、(1)ハードウェアによる構成、(3)ソフトウェアによる構成、(3)両者の混在による構成、などが可能である。
また、本実施の形態においては、上記実施の形態3の図11の信号生成部100、歪補償部210、制御部123の回路(または処理)を、デジタル回路(または処理)により実現し、その他の要素の動作をアナログ回路(または処理)により実現する場合に相当しているが、どの範囲をデジタル回路(または処理)とするかは各種の形態が実装可能であり、本実施の形態と同様の効果を奏することができ、本実施の形態に限定されない。
例えば、可変増幅器と電力増幅器との間でデジタル処理とアナログ処理を分けるようにしてもよい。
実施の形態5.
以下に、本発明の各実施の形態5について説明する。
なお、歪補償回路の構成は、上記各実施の形態における図の構成と同様な構成が適用可能であるので、構成の説明を省略する。
本実施の形態が上記各実施の形態と異なる点は、上記各実施の形態で補償した入出力特性および利得偏差特性の他に、電力増幅器130で増幅する信号の周波数に対する、電力増幅部130の依存性も補償する点である。
以下の説明では、上記実施の形態1の図2の構成を用いた場合を例に説明する。
本実施の形態においては、基準温度における電力増幅部130の入出力特性が、基準周波数における電力増幅部130の入出力特性でもある。
従って、第1補償部110が有する第1の補償用データは、基準温度かつ基準周波数における、電力増幅部130の入出力特性の非線形特性を補償するためのデータである。
また、第2補償部120が有する第2の補償用データは、基準温度および基準周波数の少なくとも一方が基準値と異なる場合における電力増幅部130の利得偏差特性を、上記基準温度かつ基準周波数における利得偏差特性に近づける補償をするためのデータである。
第2補償部120は、電力増幅部130で増幅する信号(予歪信号)の周波数Freq(図示しない)を検出する周波数検出部(図示しない)を有する。
但し、一般的に、電子機器においては、使用する信号の周波数は設計の段階で予め想定または設定されるので、例えば、(1)信号生成部100に記憶されている周波数情報、または(2)歪補償回路を使用する電子機器に記憶されている周波数情報、を用いるようにしてもよい。
第1補償部110は、第1の補償用データのうち電力増幅部130の出力電力の検出値に対応するデータ、に従って前記入力信号に対し補償処理を行う。
第2補償部120は、第2の補償データのうち電力増幅部130の温度の検出値に対応するデータ、および、第2の補償データのうち周波数検出部(図示しない)の周波数の検出値に対応するデータ、の少なくとも一方に従って、第1補償部110で非線形性の補償処理がされた入力信号に対し、温度および周波数の少なくとも一方について利得偏差特性の補償処理を行なう。
ここで、第2の補償用データは、電力増幅部130の入力電力Pin(PA)に依存せず、各温度および各周波数について一意に決定される補償データを用いる。
また、例えば(1)数式、(2)事前に作成して保持した補償テーブル、を用いて特性差を近似することができる。
以上のように、本実施の形態の歪補償回路によれば、上記各実施の形態と同様な効果を奏することができる。
また、補償する特性(依存性)が増えても、補償用データのデータ量の増加を抑制することができる。
なお、上記各実施の形態で示した図は、わかりやすく説明するため、詳細な機能、内部構造等を省略した図となっている。従って、本発明の処理装置の構成および実装においては、図に示した機能または構成要素のほかの機能または構成要素、例えば(1)表示手段(機能)、(2)通信手段(機能)、を含んでもよい。
また、上記各実施の形態における装置の構成、機能および処理の分割のしかたは一例であり、装置の実装においては、同一または別々のハードウェアまたはソフトウェアまたはそれらの組合せとしてもよく、図に示す分割の仕方に限定されない。また、等価な機能を実現できればよく各本実施の形態に限定されない。
また、図の各部の間を結ぶ矢印によって運ばれる信号、データ、情報の内容は、分割のしかたによってその属性が変わることがあり、その場合、矢印によって運ばれる信号、データ、情報が、明示的に実装される情報か黙示的に実装される情報か、また、明示的に規定される情報か否か、といった属性が異なってもよい。
また、上記各実施の形態における各種処理または動作は、(1)実質的に等価(または相当する)処理(または動作)に変形して実装する、(2)実質的に等価な複数の処理に分割して実装する、(3)複数のブロックに共通する処理はそれらを含むブロックの処理として実装する、(4)あるブロックがまとめて実装する、など本発明の課題及び効果の範囲で各種変形が可能である。
また、上記各実施の形態における各種選択肢および変形例を、他の実施の形態に適用し、新たな実施の形態とすることができる。