JP2009015076A - 光学ローパスフィルタ及びそれを具備する撮像装置 - Google Patents

光学ローパスフィルタ及びそれを具備する撮像装置 Download PDF

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Abstract

【課題】防塵性及び赤外カット性に優れた光学ローパスフィルタ及びそれを具備する撮像装置を提供する。
【解決手段】(1) 少なくとも一枚の複屈折板34及び赤外カット板36を積層してなる光透過性基板300と、(2) 光透過性基板300の光入射面に設けられ、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜31と、(3) 防塵膜31と光透過性基板300の間又は光透過性基板300の光出射面に設けられた赤外カットコート膜33とを少なくとも有する光学ローパスフィルタ。
【選択図】図1

Description

本発明は、防塵性及び赤外カット性に優れた光学ローパスフィルタ及びそれを具備する撮像装置に関する。
近年、光学像を電気信号に変換するデジタルスチルカメラや画像入力装置(例えばファクシミリ、スキャナ等)等の電子撮像装置が広く普及しているが、これら電子撮像装置では、光電変換素子(例えばCCD)等の撮像素子の受光面に至る光路上に塵埃等の異物が存在すると、画像に写り込みを生じてしまう。
例えば、一眼レフ式で撮影レンズの交換が可能なデジタルスチルカメラでは、撮影レンズを外したときに塵埃等がミラーボックス内に侵入しやすい。またミラーボックス内でミラーや撮影レンズの絞りを制御する機構が作動するため、ミラーボックス内部でゴミが発生することもある。ファクシミリやスキャナ等の画像入力装置では、原稿が送られる際や原稿読取ユニットが移動する際に塵埃等の異物を生じ、これがCCDの受光面近傍や原稿載置用のプラテンガラス等に付着することがある。そこでブロワ等の空気吹き付け手段を用いて撮像素子表面等に付着した異物を吹き飛ばしているが、吹き飛ばされた異物が機器内部に留まることがある。
特にデジタルスチルカメラには空間周波数特性を制御するための光学フィルタが撮像素子の近傍に配設されているが、光学フィルタとして複屈折特性を有する水晶板が一般的に用いられている。しかし水晶は圧電効果を有しているため、振動等により帯電し易く、電荷が逃げにくいという性質を有する。そのためカメラ作動に伴い生じる振動や空気の流れ等により異物がカメラ中を浮遊すると、帯電した光学フィルタに付着することがある。このために空気吹き付け手段による清掃を頻繁に行う必要がある。
そこで特開2001-298640号(特許文献1)は、CCD受光面、CCDの受光面側に配設されたローパスフィルタの表面、又はCCD受光面に至る光路を密閉した防塵構造ユニットの最外側の光学部材面を拭くワイパを有するデジタルスチルカメラを提案している。また特開2002-204379号(特許文献2)及び特開2003-319222号(特許文献3)は、CCD及びローパスフィルタが配置され、開口部が防塵部材(ガラス板等)で覆われた密封ホルダと、防塵部材を振動させる手段(圧電素子)とを具備するカメラを提案している。このカメラでは、ホルダ内に密封されたCCD及びローパスフィルタに塵埃が付着せず、防塵部材に付着した塵埃は振動手段で除去できる。しかし特許文献1〜3に記載のような塵埃の機械的な除去には、高コスト化、装置の重量の増加、消費電流の増大等の問題がある。
そこで本出願人は、撮像素子の受光面側に配置されるローパスフィルタであって、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜を少なくとも光入射面に有する光透過性基板からなるローパスフィルタを提案した(特願2006-000921号)。しかし、撮像素子の受光面側に配置される光透過性部材には、防塵性のみならず、優れた赤外カット性も要求される。
そこで、特開2006-71851号(特許文献4)は、一面に透明導電性膜及び反射防止膜を有し、他面に赤外カットコート又は紫外・赤外カットコートを有する複屈折圧電性結晶板からなる光学ローパスフィルタを提案している。このローパスフィルタは、透明導電性膜により帯電を防止できるので、塵埃の付着を防止できる。
特開2006-163275号(特許文献5)は、(1) 光学ローパスフィルタ及び赤外カット板からなる基板と、(2) 基板の光入射面に設けられ、フッ素を含む材料からなる異物付着防止膜と、(3) 異物付着防止膜と基板の間に設けられた赤外カットコートと、(4) 基板の光出射面に設けられた反射防止膜とを有する光学物品を提案している。しかし、特許文献4に記載の光学ローパスフィルタ及び特許文献5に記載の光学物品は、防塵性が不十分であった。
特開2001-298640号公報 特開2002-204379号公報 特開2003-319222号公報 特開2006-71851号公報 特開2006-163275号公報
従って、本発明の目的は、防塵性及び赤外カット性に優れた光学ローパスフィルタ及びそれを具備する撮像装置を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、(1) 複屈折板及び赤外カット板を積層してなる光透過性基板の光入射面に、微細な凹凸を表面に有する防塵膜を形成するとともに、防塵膜と光透過性基板の間又は光透過性基板の光出射面に赤外カットコート膜を形成するか、(2) 複屈折板及び赤外カット板を光入射側から順にほぼ平行に配置し、微細な凹凸を表面に有する防塵膜を複屈折板の光入射面に形成するとともに、防塵膜と複屈折板の間又は赤外カット板の光出射面に赤外カットコート膜を形成するか、(3) 赤外カット板及び複屈折板を光入射側から順にほぼ平行に配置し、微細な凹凸を表面に有する防塵膜を赤外カット板の光入射面に形成するとともに、防塵膜と赤外カット板の間又は複屈折板の光出射面に赤外カットコート膜を形成すると、塵埃の付着防止性及び赤外カット性に優れた光学ローパスフィルタが得られることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の第一の光学ローパスフィルタは、防塵性及び赤外カット性を有し、撮像素子の受光面側に配置されるものであって、(1) 少なくとも一枚の複屈折板及び赤外カット板を積層してなる光透過性基板と、(2) 前記光透過性基板の光入射面に設けられ、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜と、(3) 前記防塵膜と前記光透過性基板の間又は前記光透過性基板の光出射面に設けられた赤外カットコート膜とを少なくとも有することを特徴とする。
本発明の第二の光学ローパスフィルタは、防塵性及び赤外カット性を有し、撮像素子の受光面側に配置されるものであって、(1) 光入射側から順にほぼ平行に配置された複屈折板及び赤外カット板と、(2) 前記複屈折板の光入射面に設けられ、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜と、(3) 前記防塵膜と前記複屈折板の間又は前記赤外カット板の光出射面に設けられた赤外カットコート膜とを少なくとも有することを特徴とする。
本発明の第三の光学ローパスフィルタは、防塵性及び赤外カット性を有し、撮像素子の受光面側に配置されるものであって、(1) 光入射側から順にほぼ平行に配置された赤外カット板及び複屈折板と、(2) 前記赤外カット板の光入射面に設けられ、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜と、(3) 前記防塵膜と前記赤外カット板の間又は前記複屈折板の光出射面に設けられた赤外カットコート膜とを少なくとも有することを特徴とする。
第一〜第三の光学ローパスフィルタは、いずれも最表面に撥水性又は撥水撥油性を有する膜を具備するのが好ましい。前記撥水性又は撥水撥油性を有する膜の下地層としてシリカ膜を有してもよい。
第一の光学ローパスフィルタは、前記撥水性又は撥水撥油性を有する膜と前記防塵膜の間又は前記防塵膜と前記光透過性基板の間に、帯電防止膜を有してもよい。前記光透過性基板の光出射面に反射防止膜を有してもよい。
第二の光学ローパスフィルタは、前記撥水性又は撥水撥油性を有する膜と前記防塵膜の間又は前記防塵膜と前記複屈折板の間に、帯電防止膜を有してもよい。前記赤外カット板の光出射面に反射防止膜を有してもよい。
第三の光学ローパスフィルタは、前記撥水性又は撥水撥油性を有する膜と前記防塵膜の間又は前記防塵膜と前記赤外カット板の間に、帯電防止膜を有してもよい。前記光学ローパスフィルタの光出射面に反射防止膜を有してもよい。
第一〜第三の光学ローパスフィルタにおいて、前記防塵膜はアルミナ、アルミニウム水酸化物、亜鉛酸化物及び亜鉛水酸化物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含むのが好ましい。前記防塵膜の凹凸は、不規則に分布する多数の微細な形状の凸部とそれらの間の溝状の凹部とからなるのが好ましい。
本発明の好ましい実施態様による第一〜第三の光学ローパスフィルタは、最表面の三次元平均表面粗さ(SRa)が1〜100 nmであり、最表面の凹凸の最大高低差(P-V)が5〜1,000 nmであり、最表面の比表面積が1.05以上である。
第一〜第三の光学ローパスフィルタは、機械的防塵手段を具備してもよい。前記機械的防塵手段としては、前記光学ローパスフィルタを振動させる圧電素子又はステージ装置が好ましい。ステージ装置としては、(1) 磁石を有する第一の支持板と、(2) 軟磁性材からなる第二の支持板と、(3) 前記第一及び第二の支持板の間に相対移動可能に挟持され、前記第一の支持板の磁石の対向位置にコイルを有し、前記光学ローパスフィルタを支持するステージ板とを有し、前記第一支持板の磁石と前記第二支持板における対向部位との間に磁気回路が形成されており、もって前記ステージ板のコイルに交流電圧を印加することにより、前記ステージ板が振動するものが好ましい。
本発明の光学ローパスフィルタは、撮像装置用の光学ローパスフィルタとして有用である。
複屈折板、赤外カット板、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜及び赤外カットコート膜を有する本発明の光学ローパスフィルタは、防塵膜により、付着した塵埃粒子の分子間力及び接触帯電付着力を低減できる。そのため赤外カット性のみならず、耐異物付着性に優れており、機械的防塵手段が不要であり、撮像装置の低コスト化、軽量化及び低消費電力化を実現することができる。特に撥水/撥油性膜を最表面に有する光学ローパスフィルタは、塵埃粒子と光学ローパスフィルタ間の液架橋力も低減できるので、一層優れた耐異物付着性を有する。さらに帯電防止膜も有する光学ローパスフィルタは、塵埃粒子と光学ローパスフィルタの防塵膜との間の静電付着力及び電気映像力も低減できるので、一層優れた耐異物付着性を有する。
[1] 第一の光学ローパスフィルタの層構成
第一の光学ローパスフィルタは、(1) 少なくとも一枚の複屈折板及び赤外カット板を積層してなる光透過性基板と、(2) 光透過性基板の光入射面に設けられ、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜と、(3) 防塵膜と光透過性基板の間又は光透過性基板の光出射面に設けられた赤外カットコート膜とを少なくとも有する。第一の光学ローパスフィルタは、最表面に撥水性又は撥水撥油性を有する膜(以下特段の断りがない限り、「撥水/撥油性膜」と表記する)を具備するのが好ましい。撥水/撥油性膜と防塵膜の間又は防塵膜と光透過性基板の間に、帯電防止膜を有してもよい。光透過性基板の光出射面に反射防止膜を有してもよい。撥水/撥油性膜の下地層としてシリカ膜を有してもよい。
(1) 光透過性基板
(a) 複屈折板
複屈折板として、例えば複屈折材料からなる板、複屈折回折格子を有する光透過板等が挙げられる。複屈折材料板としては、例えば水晶、ニオブ酸リチウム、四ホウ酸リチウム等の公知の複屈折性無機材料からなるもの、及び一軸延伸した高分子フィルム(位相差フィルム)からなるもの等が挙げられる。複屈折回折格子を有する光透過板として、例えば特開平7-198921号に記載のものが利用できる。
光透過性基板は複屈折板を複数有してもよい。その場合、同じ複屈折板を組合せてもよいし、異なる複屈折板を組合せてもよい。例えば、水晶板とニオブ酸リチウム板とを組合せることができる。複数の複屈折板は、それぞれの複屈折による光線分離方向が異なるように配置するのが好ましい(例えば、直交する二方向にずれを生じるように二枚の複屈折板を積層する)。
(b) 赤外カット板
赤外カット板は、公知の赤外吸収ガラス、赤外吸収樹脂等からなるものでよいが、赤外吸収ガラスからなるのが好ましい。赤外吸収ガラスとして、例えば銅イオン等の色素を分散させた青色ガラスが掲げられる。赤外吸収ガラスは、赤外吸収性を有するガラス成分のみからなるものに限定されず、赤外吸収性を有するガラス成分と、それ以外のガラス成分との混合物であってもよい。赤外カット板は一枚でよい。
(c) 層構成
複屈折板と赤外カット板の積層構成は特に制限されない。積層構成例として、例えばそれぞれ光入射側から順に、(1〜4枚の複屈折板)/(赤外カット板)、(赤外カット板)/(1〜4枚の複屈折板)、(1〜4枚の複屈折板)/(赤外カット板)/(1〜4枚の複屈折板)等が挙げられる。
(d) 光透過性基板の形成方法
光透過性基板は、所望の積層構成となるように複屈折板及び赤外カット板を接着することにより形成する。接着剤は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されない。
(2) 防塵膜
防塵膜は、光透過性基板の光入射面に設けられ、微細な凹凸が表面に形成されてなる。一般的に防塵膜の三次元平均表面粗さ(SRa、微細凹凸の面密度の指標である)が大きいほど、防塵膜に付着した塵埃粒子の分子間力を低減する効果が高い。また均一に帯電した球形塵埃粒子と光学ローパスフィルタ間の接触帯電付着力F1は、下記一般式(1):

Figure 2009015076
[ただしε0は真空の誘電率8.85×10-12(F/m)であり、Vcは光学ローパスフィルタの防塵膜と塵埃粒子との接触電位差であり、AはHamaker定数(van der Waals 相互作用の大きさを表す量)であり、kは下記式:k=k1 + k2(ただしk1及びk2は各々k1=(1−ν1 2)/E1及びk2=(1−ν2 2)/E2であり、ν1及びν2は各々光学ローパスフィルタの防塵膜及び塵埃粒子のPoisson比であり、E1及びE2は各々光学ローパスフィルタの防塵膜及び塵埃粒子のYoung率である。)により表される係数であり、Dは塵埃粒子径であり、Z0は光学ローパスフィルタの防塵膜と塵埃粒子との間の距離であり、bは光学ローパスフィルタの防塵膜のSRaである。]により表され、化学的なポテンシャルの差により発生する。式(1)から明らかなように、b(光学ローパスフィルタの防塵膜のSRa)を大きくすることにより、接触帯電付着力F1を小さくできる。
具体的には、防塵膜のSRaが1nm以上であると、防塵膜に付着した塵埃粒子の分子間力及び接触帯電付着力F1が十分に小さい。ただしSRaが100 nmを超えると光の散乱が発生し、撮像装置には不適になる。よってSRaは1〜100 nmであるのが好ましく、8〜80 nmであるのがより好ましく、10〜50 nmであるのが特に好ましい。SRaは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いてJIS B0601により求められる中心線平均粗さ(Ra:算術平均粗さ)を三次元に拡張したものであって、下記式(2):

Figure 2009015076
(ただしXL〜XRは測定面のX座標の範囲であり、YB〜YTは測定面のY座標の範囲であり、S0は測定面がフラットであるとした場合の面積|XR−XL|×|YT−YB|であり、XはX座標であり、YはY座標であり、F(X,Y)は測定点(X,Y)における高さであり、Z0は測定面内の平均高さである。)により表される。
上記式(1)中のHamaker定数Aは屈折率の関数で近似され、屈折率が小さいほど小さくなる。具体的には、防塵膜が最表層の場合、又は後述する撥水/撥油性膜を表面に有する場合のいずれでも、防塵膜の屈折率は1.50以下であるのが好ましく、1.45以下であるのがより好ましい。限定的ではないが、防塵膜の微細な凹凸の最大高低差(P-V)は5〜1,000 nmであるのが好ましく、50〜500 nmであるのがより好ましく、100〜300 nmであるのが特に好ましい。P-V値が5〜1,000 nmであると、特に優れた反射防止性が得られ、50〜500 nmであると高い透過率も得ることが出来る。ここでP-V値はAFMにより求める。
限定的ではないが、防塵膜の比表面積(SR)は1.05以上であるのが好ましく、1.15以上であるのがより好ましい。SRは、下記式(3):
SR=S/S0 ・・・(3)
(ただしS0は測定面がフラットであるとした場合の面積であり、Sは表面積測定値である。)により求める。Sは次のようにして求める。まず測定する領域を最も近接した3つのデ−タ点(A,B,C)よりなる微小三角形に分割し、次いで各微小三角形の面積ΔSをベクトル積、すなわちΔS(ΔABC)=|AB×AC|/2(但しABおよびACは各辺の長さ)を用いて求める。ΔSの総和を求め、Sとする。ただしSRは、光の散乱が発生しない程度の大きさであるのが好ましい。
防塵膜として、例えばアルミナを含むゲル膜、あるいはアルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物からなる蒸着膜を熱水で処理してなる膜、及び亜鉛化合物を含むゲル膜を20℃以上の温度の水で処理してなる膜が挙げられる。前者は、上記ゲル膜又は蒸着膜の表層部分が熱水の作用を受けたときに生じた多数の微細な不規則な形状の凸部と、それらの間の溝状の凹部とが不規則に集合した凹凸を表面に有する。以下特段の断りがない限り、この膜を微細凹凸アルミナ膜とよぶ。後者は、亜鉛化合物を含むゲル膜の表層部分が20℃以上の温度の水の作用を受けたときに生じた析出物からなる凸部と、それらの間の凹部とが不規則に集合した凹凸を表面に有する。このような凸部の形状は亜鉛化合物の種類により異なるが、非常に微細である。以下特段の断りがない限り、この膜を微細凹凸亜鉛化合物膜とよぶ。
微細凹凸アルミナ膜は、アルミナ、アルミニウム水酸化物又はこれらの混合物を主成分とするのが好ましく、アルミナのみからなるのがより好ましいが、必要に応じてジルコニア、シリカ、チタニア、亜鉛酸化物及び亜鉛水酸化物からなる群から選ばれた少なくとも一種の任意成分を含んでもよい。任意成分の含有量は、上記ゲル膜又は蒸着膜を熱水で処理した時に微細な凹凸が形成され、かつ透明性を損なわない範囲内である限り特に制限されないが、防塵膜全体を100質量%として0.01〜50質量%が好ましく、0.05〜30質量%がより好ましい。
微細凹凸亜鉛化合物膜は、亜鉛酸化物及び/又は亜鉛水酸化物を主成分とするのが好ましく、これらのいずれかのみからなるのがより好ましいが、必要に応じてアルミナ、ジルコニア、シリカ及びチタニアからなる群から選ばれた少なくとも一種の任意成分を含んでもよい。任意成分の含有量は、亜鉛化合物を含むゲル膜を20℃以上の水で処理した時に微細な凹凸が形成され、かつ透明性を損なわない範囲内である限り特に制限されないが、防塵膜全体を100質量%として0.01〜50質量%が好ましく、0.05〜30質量%がより好ましい。
防塵膜として、アルミナ、亜鉛酸化物、ジルコニア、シリカ、チタニア等の透明な金属酸化物からなる膜を、フォトリソグラフィー法でパターニングした膜も挙げられる。
防塵膜の凹凸形状は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)により表層や断面を観察したり、AFMにより表層を観察したりすることにより(特に斜視による観察)、調べることができる。防塵膜の厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜設定すればよいが、0.05〜3μmであるのが好ましい。なおこの厚さは、表面の微細な凹凸を含めたものである。
(3) 赤外カットコート膜
赤外カットコート膜は、防塵膜と光透過性基板の間又は光透過性基板の光出射面に設けられる。赤外カットコート膜は紫外線もカットできるものであってもよい。赤外カットコート膜及び紫外・赤外カットコート膜として、例えばTiO2、ZrO2、Ta2O5、Nb2O5、(ZnO+Ga)等の高屈折率物質と、SiO2、MgF2等の低屈折率物質とを交互に積層した誘電体多層膜が掲げられる。赤外カットコート膜として、例えば特開2007-101729号に記載のものを利用することができる。紫外・赤外カットコート膜として、例えば2005-126813号に記載のものを利用することができる。
(4) 撥水/撥油性膜
光学ローパスフィルタは撥水/撥油性膜を最表面に有するのが好ましい。球形の塵埃粒子と光学ローパスフィルタ間の液架橋力F2は、
下記一般式(4):
F2=−2πγD ・・・(4)
(ただしγは液の表面張力であり、Dは塵埃粒子の粒径である。)により表され、光学ローパスフィルタと塵埃粒子の接触部に液体が凝集することによりできる液架橋により生じる力である。よって防塵膜上に撥水/撥油性膜を形成し、水や油の付着を低減すると、液架橋力F2による塵埃粒子の付着を低減できる。
また一般的に凹凸面での水の接触角と、平滑面での水の接触角には下記式(5):
cosθγ=γcosθ ・・・(5)
(ただしθγは凹凸面での接触角であり、γは表面積倍増因子であり、θは平滑面での接触角である。)により近似される関係が有る。通常γ>1であるので、θγは、θ<90°である時にはθより小さく、θ>90°である時にはθより大きい。よって、親水性表面の面積を凹凸化により大きくすると親水性が一層強まり、撥水性表面の面積を凹凸化により大きくすると撥水性が一層強くなる。そのため微細な凹凸を有する防塵膜上に、凹凸を保持するように撥水膜を形成すると、高い撥水効果が得られる。最表面に撥水/撥油性膜を形成した場合も、最表面の三次元平均表面粗さ(SRa)、凹凸の最大高低差(P-V)及び比表面積(SR)は各々上記の範囲内であるのが好ましい。
撥水/撥油性膜の材質は無色で透明性が高いものである限り特に制限されず、公知のものが使用できる。撥水/撥油性膜の材質として、例えばフッ素を含有する無機又は有機の化合物、フッ素を含有する有機−無機ハイブリッドポリマー、フッ化ピッチ[例えばCFn(n:1.1〜1.6)]、フッ化グラファイト等が挙げられる。
フッ素含有無機化合物として、例えばLiF、MgF2、CaF2、AlF3、BaF2、YF3、LaF3及びCaF3からなる群から選ばれた少なくとも一種が挙げられる。これらのフッ素含有無機化合物は、例えばキャノンオプトロン株式会社から入手できる。
フッ素を含有する有機−無機ハイブリッドポリマーとして、フルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体及び不飽和シラン単量体の共重合体、及びフルオロカーボン基を有する有機珪素ポリマーが挙げられる。
フルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体及び不飽和シラン単量体の共重合体として、特開2002-146271号に記載の、下記式(6):
Figure 2009015076
(ただしRf1は少なくとも一部がフッ素化された脂肪族基であり、R1は他の原子団を有してもよいアルキレン基であり、R2は水素基又は低級アルキル基である)により表されるフルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体と、下記式(7):
Figure 2009015076
[ただしR3及びR4はそれぞれ独立に水素基又は低級アルキル基であり、X1はアルコキシ基、ハロゲン基又は-OC(=O)R5基(R5は水素基又は低級アルキル基である)であり、Y1は単結合又は-CH2-基であり、nは0〜2の整数である]により表される不飽和シラン単量体との共重合体が好ましい。
フルオロカーボン基を有する有機珪素ポリマーとして、フルオロカーボン基を有するフッ素含有シラン化合物を加水分解して得られるポリマーが挙げられる。フッ素含有シラン化合物としては下記式(8):
CF3(CF2)a(CH2)2SiRbXc ・・・(8)
(ただしRはアルキル基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子であり、aは0〜7の整数であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、かつb + c = 3である。)により表される化合物が挙げられる。式(8)により表される化合物の具体例として、CF3(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CH2)2SiCl3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5(CH2)2SiCl3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2SiCl3、CF3(CF2)7(CH2)3SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3Cl2等が挙げられる。有機珪素ポリマーとして市販品を用いてもよく、例えばXC98-B2472(GE東芝シリコーン株式会社製)等が挙げられる。
フッ素含有有機化合物として、例えばフッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂としては、フッ素含有オレフィン系化合物の重合体、並びにフッ素含有オレフィン系化合物及びこれと共重合可能な単量体からなる共重合体が挙げられる。そのような(共)重合体として、ポリテトラフルオロエチレン、テトラエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエ−テル共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリフッ化ビニル等が挙げられる。フッ素樹脂として市販のフッ素含有組成物を重合させたものを使用してもよい。市販のフッ素含有組成物として例えばオプスター(ジェイエスアール株式会社製)、サイトップ(旭硝子株式会社製)等が挙げられる。
撥水/撥油性膜の厚さは0.4〜100 nmであるのが好ましく、10〜80 nmであるのがより好ましい。撥水/撥油性膜の厚さを0.4〜100 nmとすると、防塵膜のSRa、P-V値及びSRを上記範囲に保持できる。よって0.4〜100 nmの厚さの撥水/撥油性膜を最表面に形成すると、防塵膜の微細な凹凸による分子間力及び接触帯電付着力F1の低減に加えて、液架橋力F2の低減により耐塵埃付着性が一層向上する。撥水/撥油性膜の厚さが0.4 nm未満であると、撥水/撥油性が不十分である。一方100 nm超とすると、防塵膜の微細な凹凸が吸収されてしまい、耐塵埃付着性が低下する。撥水/撥油性膜の屈折率も1.5以下であるのが好ましく、1.45以下であるのがより好ましい。
(5) 帯電防止膜
光学ローパスフィルタは撥水/撥油性膜と防塵膜の間又は防塵膜と光透過性基板の間に帯電防止膜を有してもよく、これにより塵埃付着の原因の一つであるクーロン力を低減でき、耐塵埃付着性が一層向上する。
均一に帯電した球形塵埃粒子と光学ローパスフィルタ間の静電付着力F3は下記一般式(9):

Figure 2009015076
(ただしq1及びq2は各々光学ローパスフィルタの防塵膜及び塵埃粒子の電荷(C)であり、rは粒子半径であり、ε0は真空の誘電率8.85×10-12(F/m)である。)により表される。式(9)から明らかなように、光学ローパスフィルタの防塵膜及び塵埃粒子帯電量を低減することにより静電付着力F3を低減できるため、帯電防止膜により除電するのは効果的である。
また均一に帯電した球形塵埃粒子と光学ローパスフィルタの防塵膜との間の電気映像力F4は下記一般式(10):

Figure 2009015076
(ただしε0は真空の誘電率8.85×10-12(F/m)であり、εは光学ローパスフィルタの防塵膜の誘電率であり、qは塵埃粒子の電荷であり、rは粒子半径である。)により表され、帯電していない光学ローパスフィルタの防塵膜に電荷を持った塵埃粒子が近づくと防塵膜に異符号等価の電荷が誘起されることにより発生する力である。電気映像力F4は、ほぼ塵埃粒子の帯電率に依存するため、付着した塵埃粒子を帯電防止膜により除電することにより小さくすることができる。
帯電防止膜の表面抵抗は、1×1014Ω/□以下であるのが好ましく、1×1012Ω/□以下であるのがより好ましい。帯電防止膜の屈折率は特に制限されないが、基板と防塵膜の屈折率の中間程度とすると、一層高い反射防止効果が期待できる。帯電防止膜の厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜設定すればよいが、0.01〜3μmであるのが好ましい。
帯電防止膜の材質は無色で透明性が高いものである限り特に制限されず、公知のものが使用できる。帯電防止膜は、例えば酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、スズドープ酸化インジウム(ITO)及びアンチモンドープ酸化スズ(ATO)からなる群から選ばれた少なくとも一種の導電性無機材料により形成できる。帯電防止膜は、上記導電性無機材料からなる微粒子(導電性無機微粒子)と、バインダとからなる複合膜であってもよいし、上記導電性無機材料からなる緻密膜(例えば蒸着膜等)であってもよい。バインダ成分は重合によりバインダとなるモノマー又はオリゴマーであり、金属アルコキシド又はそのオリゴマーや、紫外線硬化性又は熱硬化性の化合物(例えばアクリル酸エステル等)が挙げられる。
(6) 反射防止膜
光透過性基板の光出射面に反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜を形成する材料は特に限定されず、SiO2、TiO2、MgF2、SiN、CeO2、ZrO2等を用いることができる。反射防止膜は単層でも多層でもよいが、多層が好ましい。多層の反射防止膜を形成する場合、各層の界面で生じた反射光と、各層に入射する光線とが干渉によって相殺し合うように設計するのが好ましい。具体的には、屈折率の異なる複数の膜を適宜組合せることにより、反射防止効率をより高めることが可能である。例えばSiO2とTiO2とを真空蒸着法により交互に5〜10層コートした膜が挙げられる。
(7) シリカ膜
撥水/撥油性膜の下地層としてシリカ膜を有してもよい。シリカ膜を介して撥水/撥油性膜を形成すると、撥水/撥油性膜の防塵膜に対する良好な接着性が得られる。シリカ膜は真空蒸着法により形成すればよい。シリカ膜の厚さは5〜100 nmが好ましい。
(8) 層構成例
第一の光学ローパスフィルタの好ましい層構成例として、
(a) 撥水/撥油性膜/防塵膜/帯電防止膜/赤外カットコート膜/光透過性基板(複屈折板/接着層/赤外カット板)/反射防止膜、
(b) 撥水/撥油性膜/防塵膜/帯電防止膜/赤外カットコート膜/光透過性基板(赤外カット板/接着層/複屈折板)/反射防止膜、
(c) 撥水/撥油性膜/防塵膜/赤外カットコート膜/帯電防止膜/光透過性基板(複屈折板/接着層/赤外カット板)/反射防止膜、
(d) 撥水/撥油性膜/防塵膜/赤外カットコート膜/帯電防止膜/光透過性基板(赤外カット板/接着層/複屈折板)/反射防止膜、
(e) 撥水/撥油性膜/防塵膜/帯電防止膜/光透過性基板(複屈折板/接着層/赤外カット板)/赤外カットコート膜、
(f) 撥水/撥油性膜/防塵膜/帯電防止膜/光透過性基板(赤外カット板/接着層/複屈折板)/赤外カットコート膜、
(g) 撥水/撥油性膜/防塵膜/光透過性基板(赤外カット板/接着層/複屈折板)/赤外カットコート膜、
(h) 撥水/撥油性膜/防塵膜/光透過性基板(複屈折板/接着層/赤外カット板)/赤外カットコート膜、
(i) 撥水/撥油性膜/防塵膜/赤外カットコート膜/光透過性基板(複屈折板/接着層/赤外カット板)/反射防止膜、
(j) 撥水/撥油性膜/防塵膜/赤外カットコート膜/光透過性基板(赤外カット板/接着層/複屈折板)/反射防止膜、
(k) 撥水/撥油性膜/帯電防止膜/防塵膜/赤外カットコート膜/光透過性基板(赤外カット板/接着層/複屈折板)/反射防止膜、
(l) 撥水/撥油性膜/防塵膜/赤外カットコート膜/光透過性基板(複屈折板/接着層/赤外カット板/接着層/複屈折板/接着層/複屈折板)/反射防止膜、
(m) 撥水/撥油性膜/防塵膜/赤外カットコート膜/光透過性基板(複屈折板/接着層/複屈折板/接着層/赤外カット板/接着層/複屈折板)/反射防止膜、
(n) 撥水/撥油性膜/シリカ膜/防塵膜/紫外・赤外カットコート膜/光透過性基板(複屈折板/接着層/赤外カット板)/反射防止膜、
(o) 撥水/撥油性膜/シリカ膜/防塵膜/紫外・赤外カットコート膜/光透過性基板(複屈折板/接着層/複屈折板/接着層/赤外カット板/接着層/複屈折板)/反射防止膜等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
[2] 第一の光学ローパスフィルタの製造方法
(1) 防塵膜の形成
(a) 微細凹凸アルミナ膜の形成方法
微細凹凸アルミナ膜は、アルミニウム化合物を含む塗布液を基板に塗布してアルミナを含むゲル膜を形成するか、アルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物からなる蒸着膜を形成した後、得られたいずれかの膜を熱水で処理することにより得られる。
(i) アルミナを含むゲル膜の形成方法
アルミニウム化合物としては、アルミニウムアルコキシド、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等が挙げられる。好ましくはアルミニウムアルコキシドである。アルミニウムアルコキシドを用いて微細凹凸アルミナ膜を形成する方法として、例えば特開平9-202649号、特許第3688042号及び特開平9-202651号に記載の方法が挙げられる。これらの方法に従えば、アルミニウムアルコキシドと水と安定化剤とを含む塗布液を基板に塗布し、ゾルゲル法によりアルミナゲル膜を形成し、得られたアルミナゲル膜を熱水で処理することにより、微細凹凸アルミナ膜が得られる。アルミニウムアルコキシドを用いて微細凹凸アルミナ膜を形成する方法について詳細に説明する。
アルミニウムアルコキシドとして、例えばアルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ-n-ブトキシド、アルミニウムトリ-sec-ブトキシド、アルミニウムトリ-tert-ブトキシド、アルミニウムアセチルアセテート、これらを部分加水分解して得られるオリゴマー等が挙げられる。
微細凹凸アルミナ膜を上記任意成分を含むものとする場合、ジルコニウムアルコキシド、アルコキシシラン、チタニウムアルコキシド及び亜鉛化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の任意成分原料を、塗布液に添加する。
ジルコニウムアルコキシドとして、例えばジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ-n-プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド、ジルコニウムテトラ-t-ブトキシド等が挙げられる。
アルコキシシランは、下記一般式(11):
Si(OR6)x (R7)4-x ・・・(11)
により表される。一般式(11)中のR6としては、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アセチル基等が挙げられる。R7としては、炭素数1〜10の有機基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-デシル基、フェニル基、ビニル基、アリル基等の無置換の炭化水素基、及びγ-クロロプロピル基、CF3CH2-基 、CF3CH2CH2-基、C2F5CH2CH2-基 、C3F7CH2CH2CH2-基、CF3OCH2CH2CH2-基、C2F5OCH2CH2CH2-基 、C3F7OCH2CH2CH2-基 、(CF3)2CHOCH2CH2CH2-基 、C4F9CH2OCH2CH2CH2-基、3-(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル、H(CF2)4CH2OCH2CH2CH2-基、H(CF2)4CH2CH2CH2-基、γ-グリシドキシプロピル基、γ-メルカプトプロピル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基、γ-メタクリロイルオキシプロピル基等の置換炭化水素基が挙げられる。xは2〜4の整数を表す。
チタニウムアルコキシドとしては、例えばテトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ-n-プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン等が挙げられる。
亜鉛化合物としては、例えば酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛等が挙げられる。中でも酢酸亜鉛及び塩化亜鉛が好ましい。
アルミニウムアルコキシド及び任意成分原料の合計を100質量%として、任意成分原料の割合は0.01〜50質量%であるのが好ましく、0.05〜30質量%であるのがより好ましい。
塗布液には、安定化剤として、例えばアセチルアセトン、アセト酢酸エチル等のβ-ジケトン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;金属アルコキシド等を添加するのが好ましい。
塗布液には、溶媒を使用してもよい。溶媒として、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等が挙げられる。
金属アルコキシド、溶媒、安定化剤及び水の好ましい混合割合は、モル比で、(アルミニウムアルコキシド+任意成分原料):溶媒:安定化剤:水=1:10〜100:0.5〜2:0.1〜5である。
塗布液には、アルコキシ基の加水分解を促進したり、脱水縮合を促進したりするための触媒を添加することができる。触媒としては、例えば硝酸、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、アンモニア等が挙げられる。触媒の添加量は、金属アルコキシドに対して、モル比で0.0001〜1であるのが好ましい。
必要に応じて、塗布液に水溶性有機高分子を添加してもよい。水溶性有機高分子を含む塗布液を用いて得られたアルミナゲル膜を、熱水処理すると、アルミナゲル膜に含有される水溶性有機高分子が容易に溶出して、アルミナゲル膜と熱水との反応表面積が増大する。そのため比較的低温かつ短時間での微細凹凸アルミナ膜の生成が可能になる。添加する水溶性有機高分子の種類や分子量を選択することにより、形成される微細凹凸アルミナ膜の凹凸形状を制御することができる。水溶性高分子として、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。水溶性高分子の添加量は、アルミニウムアルコキシドが全てアルミナに変化すると仮定して計算されるアルミナに対して、0.1〜10質量%でよい。
塗布法としては、例えばディップコート法、スピンコート法、スプレー法、フローコート法、ロールコーティング法、リバースコート法、フレキソ法、スクリーン印刷法及びこれらを併用する方法等の慣用の塗布法が挙げられる。中でもディップコート法は、膜の均一性、膜厚の制御等が容易であるので好ましい。得られるゲル膜の厚さは、例えば、ディップコート法における引き上げ速度やスピンコート法における基板回転速度の調整、塗布液の濃度の調整等により制御することができる。ディップコート法における引き上げ速度は、例えば約0.1〜3.0 mm/秒程度とするのが好ましい。
塗布膜の乾燥条件は特に制限されず、基板の耐熱性等に応じて適宜選択すればよい。一般的には、塗布後の基板を、室温〜400℃の温度で5分〜24時間処理する。
(ii) 蒸着膜の形成方法
アルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物からなる蒸着膜は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、熱CVD、プラズマCVD、光CVD等の化学蒸着法等により形成することができる。経済性の観点から、真空蒸着法が好ましい。均一な蒸着膜を形成し、かつ三次元平均表面粗さが好ましい範囲にある防塵膜を得るために、蒸着膜の厚さは5〜500 nmとするのが好ましい。
真空蒸着法では、高真空下(例えば1×10-4〜1×10-2 Pa程度)でアルミニウム、アルミナ又はこれらの混合物からなる蒸着材の蒸気を光透過性基板上に凝縮させて蒸着膜を形成する。蒸着材を蒸気にする方法は特に制限されず、例えば通電加熱型ソースを用いる方法、E型電子銃により電子ビームを当てる方法、ホローカソード放電により大電流電子ビームを当てる方法、レーザパルスを当てるレーザアブレーション等が挙げられる。基板はその膜形成面が蒸着材に対向するように設置し、その状態で蒸着中に回転させるのが好ましい。蒸着時間等を適宜設定することにより、所望の厚さを有する層を形成することができる。
アルミニウム蒸着膜は、蒸着材としてアルミニウムを用いて形成する。均一なアルミニウム蒸着膜を形成するために、限定的ではないが、蒸着速度は1〜10 nm/秒が好ましく、蒸着中の基板の温度は20〜80℃が好ましい。
アルミナ蒸着膜を形成する方法として、(i) 蒸着材としてアルミナを用いる方法、及び(ii) 蒸着材としてアルミニウムを用い、蒸着装置内に少量の酸素を導入しながら反応性蒸着を行う方法がある。方法(i)を用いる場合、均一なアルミナ蒸着膜を形成するために、限定的ではないが、蒸着速度は0.1〜1.0 nm/分が好ましく、蒸着中の基板の温度は20〜300℃が好ましい。方法(ii)を用いる場合、圧力が1×10-4〜1×10-2 Paとなる範囲で酸素を導入するのが好ましい。
化学気相蒸着法(CVD法)の場合、低温で薄膜を形成できるプラズマCVD法が好ましい。プラズマCVD法では、ソースガスのプラズマを発生させ、基板表面で分解、還元、酸化、置換等の化学反応を起こさせてアルミニウム蒸着層を形成する。ソースガスとして、例えばハロゲン化アルミニウム(例えばAlCl3等)、有機アルミニウム[例えばAl(CH3)3、Al(i-C4H9)3、(CH3)2AlH等]、有機アルミニウム錯体、アルミニウムアルコラート等が挙げられる。ソースガスは、ヘリウム、アルゴン等の置換ガスとともに基板表面に送給するのが好ましい。ソースガスに、水素、窒素、アンモニア、一酸化二窒素、酸素、一酸化炭素、メタン等の反応性ガスを混合してもよい。
(iii) 熱水処理
得られたゲル膜又は蒸着膜を、40〜100℃の温度に加熱した水又は水と有機溶媒との混合液で熱水処理する。ゲル膜又は蒸着膜を形成した基板を、上記温度の水又は上記混合液に浸漬するのが好ましい。浸漬温度は50〜100℃が好ましい。浸漬時間は1〜240分間が好ましい。
必要に応じて、水に塩基を添加してもよく、これにより防塵膜の形成が早くなる。塩基は有機塩基及び無機塩基のいずれでもよい。有機塩基の例としてアミンが挙げられる。好ましいアミンの例としてアルコールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、アルキルアミン(例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン)等が挙げられる。無機塩基の例としてアンモニア、NaOH及びKOHが挙げられる。塩基の含有量は特に制限されないが、水と塩基の合計を100質量%として0.1〜1質量%が好ましい。
水と有機溶媒との混合液を用いる場合、有機溶媒としてはアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等)が好ましい。有機溶媒の添加量は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されない。
上記ゲル膜又は蒸着膜を熱水処理すると、その表層部分に、多数の微細な形状の凸部と、それらの間の溝状の凹部とが不規則に集合した凹凸が形成される。このような凹凸が形成される理由は定かではないが、熱水処理により上記ゲル膜及び蒸着膜の少なくとも表層部分がアルミニウムの水酸化物(例えばベーマイト等)に変化し、アルミニウム水酸化物の溶出と、溶出したアルミニウム水酸化物の析出とが同時に起こることによるものと推測される。
(iv) 乾燥
上記ゲル膜又は蒸着膜に凹凸を形成した後、室温〜500℃の温度で乾燥するのが好ましく、100〜450℃の温度で焼成するのがより好ましい。乾燥(焼成)時間は10分〜36時間とするのが好ましい。乾燥により、上記凹凸を有し、アルミナ、アルミニウム水酸化物又はこれらの混合物を主成分とする防塵膜が得られる。アルミニウム蒸着膜を熱水処理した場合でも、通常はアルミナ、アルミニウム水酸化物又はこれらの混合物を主成分とする防塵膜が得られる。
(b) 微細凹凸亜鉛化合物膜の形成方法
微細凹凸亜鉛化合物膜は、亜鉛化合物を含む溶液又は分散液を基板に塗布し、乾燥してゲル膜を形成し、得られたゲル膜を20℃以上の温度の水で処理することにより得られる。
亜鉛化合物としては、例えば酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛等が挙げられる。中でも酢酸亜鉛及び塩化亜鉛が好ましい。微細凹凸亜鉛化合物膜を上記任意成分を含むものとする場合、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、アルコキシシラン及びチタニウムアルコキシドからなる群から選ばれた少なくとも一種の任意成分原料を、塗布液に添加する。
アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、アルコキシシラン及びチタニウムアルコキシドは各々上記と同じでよい。亜鉛化合物及び任意成分原料の合計を100質量%として、任意成分原料の割合は0.01〜50質量%であるのが好ましく、0.05〜30質量%であるのがより好ましい。
微細凹凸亜鉛化合物膜の塗布液の溶媒及び塗布法も、微細凹凸アルミナ膜を形成する場合と同じでよい。塗布液の配合割合は、モル比で、(亜鉛化合物+任意成分原料):溶媒=1:10〜20とするのが好ましい。塗布液には、必要に応じて、上記の安定化剤、触媒及び水を添加してもよい。塗布後は室温で30分程度乾燥させればよいが、必要に応じて加熱乾燥してもよい。
乾燥したゲル膜を20℃以上の温度の水で処理する。この処理により、ゲル膜の表層が解膠作用を受け、構造の再配列が起こり、亜鉛酸化物及び/もしくは亜鉛水酸化物又はそれらの水和物がゲル膜の表層に析出し、成長する。水の温度は20〜100℃とするのが好ましい。水による処理時間は約5分間〜約24時間とするのが好ましい。以上のようにして形成される微細凹凸亜鉛化合物膜は通常無色で透明性が高い。
(c) フォトリソグラフィー法による形成方法
アルミナ、亜鉛酸化物、ジルコニア、シリカ、チタニア等の透明な金属酸化物からなる膜を、フォトリソグラフィー法でパターニングする。金属酸化物膜は、上記と同様にして、ゾル−ゲル法等の湿式成膜法や、蒸着法により形成すればよい。
金属酸化物膜にフォトレジストを塗布し、マスクを重ね、露光し、現像し、感光した部分又は感光してない部分を除去してレジストパターン形成し、エッチングする。マスクは、エッチング後の膜のSRaが上記範囲内となるように、微細なパターンを有するものを使用する。パターンの形状は特に制限されない。
エッチング方法としては異方性ドライエッチング法が好ましい。異方性ドライエッチング法としては、高速原子線エッチング(Fast Atom Beam,FAB)法、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching,RIE)法、反応性イオンビームエッチング(Reactive Ion Beam Etching,RIBE)等が挙げられる。中でも方向選択性(異方性)に優れたFAB法及びRIE法が好ましく、FAB法がより好ましい。高速原子線は、中性のエネルギー粒子ビームであり、イオンビームのように電荷が蓄積したり、イオン同志が反発したりすることを防止できるので、指向性が非常に優れている。そのためFABを用いて異方性ドライエッチングを施すと、微細な凹凸を高い精度で形成できる。
(2) 撥水/撥油性膜の形成
(a) フッ素含有無機化合物膜の形成方法
フッ素含有無機化合物からなる膜は、蒸着材やソースガスとして上記フッ素含有無機化合物用のものを用いる以外上記防塵膜用の蒸着膜を形成する場合と同様にして、真空蒸着法等の物理蒸着法、化学蒸着法等により形成することができる。
(b) フルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体・不飽和シラン単量体の共重合体膜の形成方法
フルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体及び不飽和シラン単量体の共重合体の膜を形成するには、(i) 少なくとも両単量体を共重合させ、得られた共重合体を含有する溶液(共重合体溶液)を基板に塗布した後で乾燥させる方法(共重合体塗布法)を用いても良いし、(ii) 両単量体及びこれらのオリゴマーのいずれかを含有する溶液(単量体/オリゴマー溶液)を基板に塗布し、乾燥した後、重合させる方法(重合法)を用いても良い。
(i) 共重合体塗布法を用いる場合
フルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体及び不飽和シラン単量体の共重合体の製造は、公知のラジカル重合法を用いて行うことができる。例えば、少なくとも両単量体を適当な溶媒に溶解させ、アゾビスイソブチロニトリル等の公知のラジカル重合開始剤の存在下60〜75℃で10〜20時間加熱することにより共重合体が得られる。溶媒としては、例えばC3F7OCH3、C3F7OC2H5、C4F9OCH3、C4F9OC2H5等のハイドロフルオロエーテルや、CF3CFHCFHCF2CF3、C5F11H等のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
得られた共重合体を溶媒に溶解又は分散させて共重合体溶液を調製する。溶媒としては、例えば上記ハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボン;C4F9OCF3,C4F9OC2F5等のパーフルオロエーテル;三フッ化エタン,C6F14,C7F16等の鎖状フルオロカーボン;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルi-ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等の易揮発性溶媒が挙げられる。中でもハイドロフルオロエーテル及びパーフルオロエーテルが好ましい。
共重合体溶液の濃度は、0.1〜150 g/Lが好ましく、1〜50 g/Lがより好ましい。共重合体溶液として市販品を用いてもよい。市販品として、例えばノベックEGC-1700、同EGC-1720(住友スリーエム株式会社製)等が挙げられる。
共重合体溶液の塗布は、上記慣用の方法により行うことができる。共重合体溶液を塗布した後、乾燥により溶媒を除去する。乾燥方法としては、風乾、熱風乾燥、オーブン内での加熱乾燥等慣用の方法でよい。必要に応じて減圧乾燥してもよい。風乾方法として、例えば強制的に低湿度のガスを吹き付ける方法を挙げることができる。
(ii) 重合法を用いる場合
重合法では、単量体/オリゴマー溶液を基板に塗布し、放射線重合させるのが好ましい。放射線としては紫外線、X線又は電子線が好ましい。以下紫外線を用いる重合法について説明する。両単量体又はこれらのオリゴマーと、ラジカル重合開始剤とを溶媒に溶解又は分散させて単量体/オリゴマー溶液を調製する。ラジカル重合開始剤及び溶媒は上記と同じで良い。単量体/オリゴマー溶液の濃度は、0.1〜150 g/Lが好ましく、1〜50 g/Lがより好ましい。
単量体/オリゴマー溶液は上記の成分に限られず、安定剤(例えばアセトニトリル、尿素類、スルホオキサイド、アミド類等)、重合禁止剤(例えばハイドロキノンモノメチルエーテル等)等を含有してもよい。
単量体/オリゴマー溶液の塗布は、上記慣用の方法により行うことができる。塗布後、乾燥により溶媒を除去する。乾燥方法は上記と同じで良い。塗布した両単量体又はこれらのオリゴマーに紫外線を照射し、共重合させる。紫外線照射強度は、単量体の種類、膜厚等に応じて適宜設定し得るが、500〜2,000 mJ/cm2程度で良い。紫外線ランプは、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、超高圧水銀灯、フュージョン紫外線ランプ等から適宜選択してよい。
(iii) 架橋
必要に応じて、共重合体膜を架橋してもよい。架橋方法としては、電離放射線を照射する方法、架橋剤を用いる方法、加硫する方法等が挙げられる。電離放射線としてはα線、β線(電子線)、γ線等を用いることができる。架橋剤としては、不飽和結合を2つ以上有する化合物、例えばブタジエン、イソプレン等が挙げられる。架橋剤は、共重合体塗布法を用いる場合、共重合前の両単量体を含む溶液に添加し、重合法を用いる場合、単量体/オリゴマー溶液に添加する。
(c) フルオロカーボン基含有有機珪素ポリマー膜の形成方法
フッ素含有シラン化合物を加水分解して得られるポリマーからなる膜を形成する方法は、アルコキシド原料として上記式(8)により表される化合物を使用する以外、上記の金属アルコキシドからゾルゲル法により膜を形成する方法と同じでよい。
(d) フッ素樹脂膜の形成方法
フッ素樹脂膜は、真空蒸着法又は塗布法等のウェット法で形成可能である。塗布法によりフッ素樹脂層を作製する方法を説明する。塗布法によりフッ素樹脂膜を形成するには、(i) 少なくともフッ素含有オレフィン系化合物を重合させ、得られた(共)重合体を含有する溶液を基板に塗布した後で乾燥させる方法を用いても良いし、(ii) フッ素含有オレフィン系化合物及びそのオリゴマーのいずれかを含有する溶液を基板に塗布し、乾燥した後、重合させる方法を用いても良い。いずれの方法も、フッ素含有オレフィン系化合物もしくはそのオリゴマー又はその両方を用いる以外フルオロ脂肪族基含有不飽和エステル単量体及び不飽和シラン単量体の共重合体の膜を形成する場合と同じでよいので、説明を省略する。ただしフッ素含有オレフィン系化合物等が熱硬化型の場合、100〜140℃に30〜60分程度加熱するのが好ましい。
(3) 帯電防止膜の形成
導電性無機材料のみからなる膜は、蒸着材やソースガスとして上記導電性無機材料用のものを用いる以外上記防塵膜用の蒸着膜を形成する場合と同様にして、真空蒸着法等の物理蒸着法、化学蒸着法等により形成することができる。導電性無機微粒子−バインダ複合層はディップコート法等の湿式の方法で形成することができる。以下、塗布法により導電性無機微粒子−バインダ複合層を作製する方法を説明する。
(a) 導電性無機微粒子含有スラリーの調製
導電性無機微粒子の平均粒径は5〜80 nm程度であるのが好ましい。平均粒径が80 nm超であると、得られる帯電防止膜の透明性が低く過ぎる。また平均粒径が5nm未満の導電性無機微粒子は作製が困難である。
導電性無機微粒子/バインダ成分の質量比は0.05〜0.7とするのが好ましい。この質量比が0.7超であると、均一に塗布するのが困難な上、得られる層が脆過ぎる。質量比0.05未満であると、得られる層の導電性が低下する。
バインダ成分としては、金属アルコキシド又はそのオリゴマー、及び紫外線硬化性又は熱硬化性の化合物が好ましい。金属アルコキシドもしくはそのオリゴマー、又は紫外線硬化性の化合物を用いると、基板が非耐熱性の場合でも、バインダを含有する帯電防止膜を設けることができる。
金属アルコキシドとしては、上記アルコキシシラン、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド及びアルミニウムアルコキシドが好ましく、アルコキシシランがより好ましい。
紫外線硬化性又は熱硬化性の化合物の例としてラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物が挙げられる。これらの化合物を併用しても良い。
ラジカル重合性化合物としてはアクリル酸又はそのエステルが好ましく、その具体例として、(メタ)アクリル酸;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;並びにこれらが重合したオリゴマーが挙げられる。
カチオン重合性化合物としてはエポキシ化合物が好ましく、その具体例としてはフェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、1,2,8,9-ジエポキシリモネン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及びビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペートが挙げられる。
金属アルコキシドをバインダ成分として使用する場合、無機微粒子含有スラリーに水及び触媒を添加する。触媒は、微細凹凸アルミナ膜を形成する場合と同じでよい。水及び触媒の添加量も、微細凹凸アルミナ膜を形成する場合と同じでよい。
ラジカル重合性化合物又はカチオン重合性化合物をバインダ成分として使用する場合、無機微粒子含有スラリーにラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤を添加する。ラジカル重合開始剤としては紫外線照射によりラジカルを発生する化合物を用いる。好ましいラジカル重合開始剤の例としてベンジル類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類及びアシルホスフィンオキサイド類が挙げられる。ラジカル重合開始剤の添加量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して0.1〜20質量部程度である。
カチオン重合開始剤としては、紫外線照射によりカチオンを発生する化合物が用いられる。カチオン重合開始剤の例としてジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。カチオン重合開始剤の添加量は、カチオン重合性化合物100質量部に対して0.1〜20質量部程度である。
スラリーに配合する無機微粒子及びバインダ成分はそれぞれ2種以上でも良い。また物性を損なわない範囲であれば、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤等、一般的な添加剤を使用することができる。
スラリーの濃度は形成する層の厚さに影響する。溶媒の例としてメタノール、エタノール等のアルコール類、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール等のアルコキシアルコール類、ジアセトンアルコール等のケトール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。溶媒の使用量は無機微粒子とバインダ成分の合計100質量部あたり、20〜10,000質量部程度である。
(b) コーティング
導電性無機微粒子含有スラリーの塗布方法は、微細凹凸アルミナ膜を形成する場合と同じでよい。
導電性無機微粒子含有スラリー層中のバインダ成分を重合させる。バインダ成分が金属アルコキシド又はそのオリゴマーである場合、硬化条件は、80〜400℃の温度で30分〜10時間とすればよい。バインダ成分が紫外線硬化性の場合、UV照射装置を用いて50〜3,000 mJ/cm2程度でUV照射すると、バインダ成分が重合し、導電性無機微粒子とバインダからなる層が形成する。層の厚さにも拠るが、照射時間は通常0.1〜60秒程度である。
導電性無機微粒子含有スラリーの溶媒を揮発させる。溶媒を揮発させるには、スラリーを室温で保持しても良いし、30〜100℃程度に加熱しても良い。
(4) 赤外カットコート膜、反射防止膜及びシリカ膜の形成
赤外カットコート膜(紫外・赤外カットコート膜を含む)、反射防止膜及びシリカ膜は、真空蒸着法又は湿式成膜法(ゾル−ゲル法等)を用いて形成することができる。
(5) その他の処理
防塵膜、赤外カットコート膜、撥水/撥油性膜、帯電防止膜及びシリカ膜を形成する前に、これら各膜の下地である基板又は膜に対して、コロナ放電処理又はプラズマ処理を施し、吸着水分や不純物を除去するとともに表面を活性化してもよく、これにより各膜の固着強度が向上する。
[3] 第二の光学ローパスフィルタ
第二の光学ローパスフィルタは、(1) 光入射側から順にほぼ平行に配置された複屈折板及び赤外カット板と、(2) 複屈折板の光入射面に設けられ、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜と、(3) 防塵膜と複屈折板の間又は赤外カット板の光出射面に設けられた赤外カットコート膜とを少なくとも有する。第二の光学ローパスフィルタは、最表面に撥水/撥油性膜を具備するのが好ましい。撥水/撥油性膜と防塵膜の間又は防塵膜と複屈折板の間に、帯電防止膜を有してもよい。赤外カット板の光出射面に反射防止膜を有してもよい。撥水/撥油性膜の下地層としてシリカ膜を有してもよい。
第二の光学ローパスフィルタは、複屈折板と赤外カット板が空隙を介して平行に配置されている以外第一の光学ローパスフィルタと同じでよいので、各層の詳細な説明を省略する。ただし第二の光学ローパスフィルタは、複屈折板を複数有してもよい。具体的には、複屈折板の光入射面に別の複屈折板が積層されていてもよいし、赤外カット板の光射出面に複屈折板が積層されていてもよい。複屈折板と赤外カット板の配置例として、(1〜4枚の複屈折板)/(空隙)/(赤外カット板)、(1〜4枚の複屈折板)/(空隙)/(赤外カット板)/(1〜4枚の複屈折板)等が挙げられる。
第二の光学ローパスフィルタの好ましい層構成例として、
(a) 撥水/撥油性膜/防塵膜/帯電防止膜/赤外カットコート膜/複屈折板/(空隙)/赤外カット板/反射防止膜、
(b) 撥水/撥油性膜/防塵膜/赤外カットコート膜/帯電防止膜/複屈折板/(空隙)/赤外カット板/反射防止膜、
(c) 撥水/撥油性膜/防塵膜/帯電防止膜/複屈折板/(空隙)/赤外カット板/赤外カットコート膜、
(d) 撥水/撥油性膜/防塵膜/複屈折板/(空隙)/赤外カット板/赤外カットコート膜、
(e) 撥水/撥油性膜/防塵膜/赤外カットコート膜/複屈折板/(空隙)/赤外カット板/反射防止膜、
(f) 撥水/撥油性膜/防塵膜/赤外カットコート膜/複屈折板/(空隙)/赤外カット板/複屈折板/複屈折板/反射防止膜、
(g) 撥水/撥油性膜/防塵膜/赤外カットコート膜/複屈折板/複屈折板/(空隙)/赤外カット板/複屈折板/反射防止膜、
(h) 撥水/撥油性膜/シリカ膜/防塵膜/紫外・赤外カットコート膜/複屈折板/(空隙)/赤外カット板/反射防止膜、
(i) 撥水/撥油性膜/シリカ膜/防塵膜/紫外・赤外カットコート膜/複屈折板/複屈折板/(空隙)/赤外カット板/複屈折板/反射防止膜等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
[4] 第三の光学ローパスフィルタ
第三の光学ローパスフィルタは、(1) 光入射側から順にほぼ平行に配置された赤外カット板及び複屈折板と、(2) 赤外カット板の光入射面に設けられ、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜と、(3) 防塵膜と赤外カット板の間又は複屈折板の光出射面に設けられた赤外カットコート膜とを少なくとも有する。第三の光学ローパスフィルタは、最表面に撥水/撥油性膜を具備するのが好ましい。撥水/撥油性膜と防塵膜の間又は防塵膜と赤外カット板の間に、帯電防止膜を有してもよい。複屈折板の光出射面に反射防止膜を有してもよい。撥水/撥油性膜の下地層としてシリカ膜を有してもよい。
第三の光学ローパスフィルタは、赤外カット板と複屈折板が空隙を介して平行に配置されている以外第一の光学ローパスフィルタと同じでよいので、各層の詳細な説明を省略する。ただし第三の光学ローパスフィルタは、複屈折板を複数有してもよい。具体的には、赤外カット板の光入射面に複屈折板が積層されていてもよいし、複屈折板の光出射面に別の複屈折板が積層されていてもよい。複屈折板と赤外カット板の配置例として、(赤外カット板)/(空隙)/(1〜4枚の複屈折板)、(1〜4枚の複屈折板)/(赤外カット板)/(空隙)/(1〜4枚の複屈折板)等が挙げられる。
第三の光学ローパスフィルタの好ましい層構成例として、
(a) 撥水/撥油性膜/防塵膜/帯電防止膜/赤外カットコート膜/赤外カット板/(空隙)/複屈折板/反射防止膜、
(b) 撥水/撥油性膜/防塵膜/赤外カットコート膜/帯電防止膜/赤外カット板/(空隙)/複屈折板/反射防止膜、
(c) 撥水/撥油性膜/防塵膜/赤外カットコート膜/赤外カット板/(空隙)/複屈折板/反射防止膜、
(d) 撥水/撥油性膜/防塵膜/帯電防止膜/赤外カット板/(空隙)/複屈折板/赤外カットコート膜、
(e) 撥水/撥油性膜/防塵膜/赤外カット板/(空隙)/複屈折板/赤外カットコート膜、
(f) 撥水/撥油性膜/シリカ膜/防塵膜/赤外カット板/(空隙)/複屈折板/赤外カットコート膜、
(g) 撥水/撥油性膜/シリカ膜/防塵膜/赤外カット板/(空隙)/複屈折板/紫外・赤外カットコート膜等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
[5] 撮像装置
以上のような第一〜第三の光学ローパスフィルタは、電子撮像装置の撮像素子用のローパスフィルタとして好適である。第一〜第三の光学ローパスフィルタを用いることができる電子撮像装置は特に制限されず、例えばデジタル一眼レフカメラ等のデジタルスチルカメラ;デジタルビデオカメラ;ファクシミリ、スキャナ等の画像入力装置等が挙げられる。
第一〜第三の光学ローパスフィルタは、いずれも撮像素子(CCD、CMOS、LiveMOS等)の受光面側に配置する。図1(a)及び(b)は、第一の光学ローパスフィルタを具備するデジタルスチルカメラの一例を示す。この例のカメラは、カメラ本体1に設けられたケーシング10の中央部に設けられた撮像素子2と、その受光面側に配置された光学ローパスフィルタ3と、撮像素子2に至る光路6上に設けられた複数のレンズ5a,5b・・・5nとを有する。撮像素子2はケーシング10の縁部100より低くなっており、保護カバー4が縁部100に載置されている。そのため撮像素子2と保護カバー4との間に空隙が設けられている。光学ローパスフィルタ3は、光入射側から順に、撥水/撥油性膜30、防塵膜31、帯電防止膜32、赤外カットコート膜33、光透過性基板300(複屈折板34/接着層35/赤外カット板36)及び反射防止膜37が一体化しており、支持柱11により保持されている。また支持柱11に連結した板12により、光学ローパスフィルタ3と保護カバー4との間に空隙が設けられている。
図2は、第二の光学ローパスフィルタを具備するデジタルスチルカメラの一例を示す。この例のカメラは、光学ローパスフィルタ3が、光入射側から順に、撥水/撥油性膜30、防塵膜31、複屈折板34、赤外カット板36及び赤外カットコート膜33を有し、複屈折板34と赤外カット板36との間に、支持柱11に連結した板12'により空隙が設けられている以外、図1のカメラと同じである。
図3は、第三の光学ローパスフィルタを具備するデジタルスチルカメラの一例を示す。この例のカメラは、光学ローパスフィルタが、光入射側から順に、撥水/撥油性膜30、防塵膜31、帯電防止膜32、赤外カット板36、複屈折板34及び赤外カットコート膜33を有し、赤外カット板36と複屈折板34との間に、支持柱11に連結した板12'により空隙が設けられている以外、図1のカメラと同じである。
第一〜第三の光学ローパスフィルタはいずれも、機械的に塵埃を除去する手段を具備してもよい。機械的な防塵手段として、例えば加振手段が挙げられる。加振手段として、例えば圧電素子、ステージ装置等が挙げられる。図4(a)及び(d)は、圧電素子を設けた第一の光学ローパスフィルタを具備するデジタルスチルカメラの一例を示す。この例のカメラは、矩形板状の光学ローパスフィルタ3が、その短手方向の両端部に、長手方向に延在する圧電素子7,7を有し、長手方向の一端部に電気端子70を有する以外、図1のカメラと同じである。電気端子70は、導電性物質を接着、蒸着、めっき等の方法により固着させることにより設けることができる。電気端子70は圧電素子7,7用の一方の電極と、アース用の電極とを兼ねている。発振器71により、圧電素子7,7に交流電圧を印加し、圧電素子7,7を同周期で伸縮させると、図4(b)(図4(a)の部材をA方向から俯瞰した図)に示すように、光学ローパスフィルタ3が屈曲振動する。図4(c)に示すように、長手方向両端部近傍が振動の節301,301となるように、光学ローパスフィルタ3を屈曲振動させると、光学ローパスフィルタ3に付着した塵埃を、光軸方向(ローパスフィルタ3面と垂直な方向)へ弾き飛ばすことができる。印加電圧及び周波数は適宜設定すればよい。圧電素子7,7を駆動させるための回路構成は特に制限されず、例えば特開2002-204379号や特開2003-319222号に記載のもので良い。なお図4(a)に示すようにアースを設けて、光学ローパスフィルタ3からカメラ本体1に導通させることにより、光学ローパスフィルタ3の帯電を常時防止することができるので、耐塵埃付着性が一層向上する。
図5(a)は、圧電素子を設けた第一の光学ローパスフィルタを具備するデジタルスチルカメラの別の例を示す。この例のカメラは、矩形板状の光学ローパスフィルタ3が、その短手方向の両端部に、長手方向に延在する三連の圧電素子7a,7b,7cを有する以外、図1のカメラと同じである。圧電素子7a,7b,7cは水平方向に交互に分極方向が異なっている(+と一で表示)。発振器71により、圧電素子7a,7b,7cに同一位相の交流電圧を印加すると、図5(b)(図5(a)の部材をB方向から俯瞰した図)に示すように、光学ローパスフィルタ3が波状に屈曲振動する。そして図5(c)に示すように、光学ローパスフィルタ3の長手方向両端部近傍及びその間に振動の節301,301,301,301が生じるので、適宜周波数を変化させて、振動の節301の位置を変化させると、光学ローパスフィルタ3に付着した塵埃を、光学ローパスフィルタ3の光軸方向(ローパスフィルタ3面と垂直な方向)に弾き飛ばすことができる。印加電圧は適宜設定すればよい。
図6に示すデジタルスチルカメラは、光学ローパスフィルタ3の光入射側に空隙を介して保護カバー4'が設けられており、その両端部に圧電素子7,7が設けられている以外、図1に示すデジタルスチルカメラと同じである。圧電素子7,7の振動による塵埃除去作用は上記の通りである。
図7は、ステージ装置を設けた第一の光学ローパスフィルタを具備するデジタルスチルカメラの一例を示す。この例のカメラは、光入射側から順に配置された第一支持板8a、ステージ板8b及び第二支持板8cを有するステージ装置8を有し、光学ローパスフィルタ3が撮像素子2とともに支持部81bによりステージ板8bに固定されている以外、図1に示すデジタルスチルカメラと同じである。ステージ装置8はカメラ本体1に固定されている。
図8に示すように、第一支持板8aは、長方形状を有し、上部両側に長方形状の突片80a,80aが設けられており、(i) ステージ板8bに固定された撮像素子2及び光学ローパスフィルタ3を収容する長方形状の開口部81a、(ii) 後面において開口部81aの両側に左右対称的に配設され、上下方向に延在する長方形状の磁石82a,82a、(iii) 後面において下部に左右対称的に配設され、左右方向に延在する長方形状の磁石83a,83a、(iv) 後面において突片80a,80aの下部に設けられた位置センサ84a,84a、及び(v) 下端中央部及び突片80a,80aの上部に設けられた孔85a,85a,85aを有する。
磁石82a,82aは、S極とN極が左右方向に並ぶように配設されている。磁石83a,83aは、S極とN極が上下方向に並ぶように配設されている。孔85aは、光入射側から大径部85a'と小径部85a''とを有する。第一支持板8aは軟磁性材からなるのが好ましい。
図9に示すように、ステージ板8bは、長方形状を有し、上部両側に長方形状の突片80b,80bが設けられており、(i) 撮像素子2及び光学ローパスフィルタ3を固定するために中央部に設けられた支持部81b、(ii) 支持部81bの両側において、第一支持板8aの磁石82a,82aに対向する位置に設けられた左右方向駆動用コイル82b,82b、(iii) 下部において、第一支持板8aの磁石83a,83aに対向する位置に設けられた上下方向駆動用コイル83b,83b、(iv) 突片80b,80bの下部において第一支持板8aの位置センサ84a,84aに対向する位置に設けられた位置センサ84b,84b、(v) 下端中央部及び突片80b,80bの上部に設けられた方形状の孔85b,85b,85b、及び(vi) 下部中央部(支持部81bと下端中央部の孔85bとの間)及び突片80b,80bの中央部(位置センサ84bと孔85bとの間)に設けられた回転部材86b,86b,86bを有する。ステージ板8bは非磁性材からなるのが好ましい。
左右方向駆動用コイル82b,82b及び上下方向駆動用コイル83b,83bは、ステージ板8bに平行な平面コイルである。左右方向駆動用コイル82b,82bは、渦巻き状をなしており、右辺82b'及び左辺82b''が上下方向に延在している。上下方向駆動用コイル83b,83bは、渦巻き状をなしており、上辺83b'及び下辺83b''が左右方向に延在している。図9では便宜上、左右方向駆動用コイル82b,82b及び上下方向駆動用コイル83b,83bを、電気線を数回巻いたものとして示しているが、実際は数十回巻かれている。
回転部材86bは、第二支持板8cの凹部86cに接して回転するようにステージ板8bの後面に取り付けられている。回転部材86bを用いることにより、ステージ板8bと第二支持板8cとの摩擦が小さくなり、ステージ板8bを滑らかに振動させることができる。回転部材86bの数は3以上の整数であれば特に限定されない。
図10に示すように、回転部材86bは、円筒状孔861bを有する支持体860b、円筒状孔861bに螺合された調整部材862b及びボール863bを有する。円筒状孔861bの末端が内側に向かって僅かに湾曲しており、ボール863bが遊嵌されている。調整部材862bの凹部に、一端がボール863bに当接し、他端が調整部材862bに当接する圧縮コイルばね864bが配設されており、ボール863bは圧縮コイルばね864bにより付勢されている。
図11に示すように、第二支持板8cは、凹字形状を有し、上部両側に長方形状の突片80c,80cが設けられており、(i) ステージ板8bの各回転部材86bに対向する位置に設けられた凹部86c,86c,86c、及び(ii) 第一支持板8aの各孔85aに対向する位置に突設された円柱状突起85c,85c,85cを有する。突起85cは、第一支持板8aの孔85aの小径部85a''に密着する先端部850c、及びネジ85を螺合するための雌ネジ孔851cを有する。第二支持板8cは軟磁性材からなるのが好ましい。
図12に示すように、ステージ装置8は、第一及び第二の支持板8a,8cの間にステージ板8bが挟持されている。第一及び第二の支持板8a,8cは、第二支持板8cの各突起85cの先端部850cが第一支持板8aの各孔85aの小径部85a''に係合し、第二支持板8cの各突起85cの孔851cにネジ85が螺合されることにより、固定されている。突起85cは、第一及び第二の支持板8a,8cの間に空隙を設けるスペーサーとして機能している。ステージ板8bは、各孔85bに突起85cを貫通させた状態で、第一及び第二の支持板8a,8cの間に挟持されている。ステージ板8bの方形状の孔85bの辺長は、突起85cの径に比べて大きいので、ステージ板8bは第一及び第二の支持板8a,8cに対して相対的に移動することができるが、孔85bの縁部が突起85cに当接することにより、移動が制限される。すなわち、突起85cは、ステージ板8bの移動を制限するストッパとしても機能する。
第一支持板8aの磁石82a,82aと第二支持板8cにおける対向部位との間に左右方向駆動用磁気回路が形成されている。第一支持板8aの磁石83b,83bと第二支持板8cにおける対向部位との間に上下方向駆動用磁気回路が形成されている。すなわち、第一及び第二の支持板8a,8cはヨークとして機能している。ステージ板8bは、左右方向駆動用コイル82b,82b及び左右方向駆動用磁気回路により左右方向に駆動され、上下方向駆動用コイル83b,83b及び上下方向駆動用磁気回路により上下方向に駆動される。
突起85cのストッパとしての機能によって、左右方向駆動用コイル82bの右辺82b'と、磁石82aのN極とは常に対向し、左辺82b''と磁石82aのS極とは常に対向するようになっている。上下方向駆動用コイル83bの上辺83b'と、磁石83aのN極とは常に対向し、下辺83b''と磁石83aのS極とは常に対向するようになっている。
図13に示すように、各上下方向駆動用コイル83bに、矢印で示す方向の電流を流すと、矢印Fで示す方向(上方向)に電磁力が生じる。従って、ステージ板8bは、図14に示す初期位置から、図15に示すように第一及び第二の支持板8a,8cに対して上方に移動する。一方、各上下方向駆動用コイル83bに、図13の矢印と逆向きの電流を流すと、下方向に電磁力が生じる。従って、ステージ板8bは、図16に示すように第一及び第二の支持板8a,8cに対して下方に移動する。よって、各上下方向駆動用コイル83bに交流電圧を印加することにより、ステージ板8bを上下方向に振動させることができる。ステージ板8bは、振動して突起85cに衝突するので、その衝撃で光学ローパスフィルタ3に付着した塵埃を除去することができる。
上記と同様にして各左右方向駆動用コイル82bに交流電圧を印加すると、ステージ板8bを左右方向に振動させ、突起85cに衝突させることができるので、その衝撃で光学ローパスフィルタ3に付着した塵埃を除去することができる。
上下方向駆動用コイル83b,83b及び左右方向駆動用コイル82b,82bにかける交流の電圧及び周波数を制御することにより、衝撃力、振動方向、振動周期等を制御することができる。例えば、上下方向の振動と、左右方向の振動とを順に生じさせたり、この組合せを繰り返したりするといったシーケンスが挙げられる。重力による衝撃も利用できる点から、上下方向の振動が主となるようにステージ板8bを振動させるのが好ましい。
二対の位置センサ84a,84bにより、ステージ板8bの初期位置(図14参照)からのずれが検出されるので、除塵を終了した後、ステージ板8bが初期位置に戻るように、各コイル82b,83bに電流を流すようにシーケンスを設定すればよい。位置センサ84a,84bとしては、発光素子と受光素子とからなる光学式位置センサ、磁場を利用するホール素子センサ等が挙げられる。ステージ装置8を駆動させるには、従来のカメラにおいて一般的に利用されている各種回路(電源回路、カメラ全体を統括的に制御するCPU、画像信号処理回路、表示回路等)に加えて、ステージ装置8を駆動させるための回路を設ければよく、その回路構成自体は特に制限されない。例えば、除塵用スイッチを設けて、これを押すとステージ装置8が駆動する回路構成や、カメラをONにした時にステージ装置8が駆動するような回路構成が挙げられる。
以上の通り図面を参照して本発明を説明したが、本発明はそれらに限定されず、本発明の趣旨を変更しない限り種々の変更を加えることができる。
本発明の光学ローパスフィルタを具備するデジタルスチルカメラの一例を概略的に示し、(a) は断面図であり、(b) は拡大断面図である。 本発明の光学ローパスフィルタを具備するデジタルスチルカメラの別の例を示す要部断面図である。 本発明の光学ローパスフィルタを具備するデジタルスチルカメラのさらに別の例を示す要部断面図である。 本発明の光学ローパスフィルタが圧電素子を具備するデジタルスチルカメラの一例を示し、(a) は光学ローパスフィルタを示す要部斜視図であり、(b)は図4(a)の平面図であり、(c)は図4(a)の光学ローパスフィルタの振動の節を示す概略図であり、(d)は要部断面図である。 本発明の光学ローパスフィルタが圧電素子を具備するデジタルスチルカメラの別の例を示し、(a) は光学ローパスフィルタを示す要部斜視図であり、(b)は図5(a)の平面図であり、(c)は図5(a)の光学ローパスフィルタの振動の節を示す概略図である。 本発明の光学ローパスフィルタを具備するデジタルスチルカメラのさらに別の例を示す要部断面図である。 本発明の光学ローパスフィルタがステージ装置に固定されたデジタルスチルカメラの一例を示し、(a) は部分断面図であり、(b) は図7(a)のステージ装置を示す平面図であり、(c)は図7(b)の光学ローパスフィルタを示す拡大断面図である。 図7のステージ装置の第一支持板を示し、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。 図7のステージ装置のステージ板を示し、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。 図9のステージ板の拡大断面図である。 図7のステージ装置の第二支持板を示し、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。 図7のステージ装置を示し、(a)は組立て前の状態を示す平面図であり、(b)は組立て後の状態を示す平面図である。 図7のステージ装置の通電により生じる電磁力Fの方向を示す拡大正面図である。 図7のステージ装置の初期状態を示す正面図である。 図7のステージ装置のステージ板が上に移動した状態を示す正面図である。 図7のステージ装置のステージ板が下に移動した状態を示す正面図である。
符号の説明
1・・・カメラ本体
10・・・ケーシング
100・・・縁部
11・・・支持柱
12,12'・・・板
2・・・撮像素子
3・・・光学ローパスフィルタ
30・・・撥水/撥油性膜
31・・・防塵膜
32・・・帯電防止膜
33・・・赤外カットコート膜
300・・・光透過性基板
34・・・複屈折板
35・・・接着層
36・・・赤外カット板
37・・・反射防止膜
301・・・振動の節
4,4'・・・保護カバー
5a,5b・・・5n・・・レンズ
6・・・光路
7,7a,7b,7c・・・圧電素子
70・・・電気端子
71・・・発振器
8・・・ステージ装置
8a・・・第一支持板
80a・・・突片
81a・・・開口部
82a・・・磁石
83a・・・磁石
84a・・・位置センサ
85a・・・孔
85a'・・・大径部
85a''・・・小径部
8b・・・ステージ板
80b・・・突片
81b・・・支持部
82b・・・左右方向駆動用コイル
82b'・・・右辺
82b''・・・左辺
83b・・・上下方向駆動用コイル
83b'・・・上辺
83b''・・・下辺
84b・・・位置センサ
85b・・・孔
86b・・・回転部材
860b・・・支持体
861b・・・円筒状孔
862b・・・調整部材
863b・・・ボール
864b・・・圧縮コイルばね
8c・・・第二支持板
80c・・・突片
85c・・・円柱状突起
850c・・・先端部
851c・・・雌ネジ孔
86c・・・凹部

Claims (24)

  1. 防塵性及び赤外カット性を有し、撮像素子の受光面側に配置される光学ローパスフィルタであって、(1) 少なくとも一枚の複屈折板及び赤外カット板を積層してなる光透過性基板と、(2) 前記光透過性基板の光入射面に設けられ、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜と、(3) 前記防塵膜と前記光透過性基板の間又は前記光透過性基板の光出射面に設けられた赤外カットコート膜とを少なくとも有することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  2. 請求項1に記載の光学ローパスフィルタにおいて、最表面に撥水性又は撥水撥油性を有する膜を具備することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  3. 請求項2に記載の光学ローパスフィルタにおいて、前記撥水性又は撥水撥油性を有する膜と前記防塵膜の間又は前記防塵膜と前記光透過性基板の間に、帯電防止膜を有することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の光学ローパスフィルタにおいて、前記光透過性基板の光出射面に反射防止膜を有することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  5. 請求項2〜4のいずれかに記載の光学ローパスフィルタにおいて、前記撥水性又は撥水撥油性を有する膜の下地層としてシリカ膜を有することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  6. 防塵性及び赤外カット性を有し、撮像素子の受光面側に配置される光学ローパスフィルタであって、(1) 光入射側から順にほぼ平行に配置された複屈折板及び赤外カット板と、(2) 前記複屈折板の光入射面に設けられ、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜と、(3) 前記防塵膜と前記複屈折板の間又は前記赤外カット板の光出射面に設けられた赤外カットコート膜とを少なくとも有することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  7. 請求項6に記載の光学ローパスフィルタにおいて、最表面に撥水性又は撥水撥油性を有する膜を具備することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  8. 請求項7に記載の光学ローパスフィルタにおいて、前記撥水性又は撥水撥油性を有する膜と前記防塵膜の間又は前記防塵膜と前記複屈折板の間に、帯電防止膜を有することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  9. 請求項6〜8のいずれかに記載の光学ローパスフィルタにおいて、前記赤外カット板の光出射面に反射防止膜を有することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  10. 請求項7〜9のいずれかに記載の光学ローパスフィルタにおいて、前記撥水性又は撥水撥油性を有する膜の下地層としてシリカ膜を有することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  11. 防塵性及び赤外カット性を有し、撮像素子の受光面側に配置される光学ローパスフィルタであって、(1) 光入射側から順にほぼ平行に配置された赤外カット板及び複屈折板と、(2) 前記赤外カット板の光入射面に設けられ、微細な凹凸が表面に形成された防塵膜と、(3) 前記防塵膜と前記赤外カット板の間又は前記複屈折板の光出射面に設けられた赤外カットコート膜とを少なくとも有することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  12. 請求項11に記載の光学ローパスフィルタにおいて、最表面に撥水性又は撥水撥油性を有する膜を具備することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  13. 請求項12に記載の光学ローパスフィルタにおいて、前記撥水性又は撥水撥油性を有する膜と前記防塵膜の間又は前記防塵膜と前記赤外カット板の間に、帯電防止膜を有することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  14. 請求項11〜13のいずれかに記載の光学ローパスフィルタにおいて、前記光学ローパスフィルタの光出射面に反射防止膜を有することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  15. 請求項12〜14のいずれかに記載の光学ローパスフィルタにおいて、前記撥水性又は撥水撥油性を有する膜の下地層としてシリカ膜を有することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  16. 請求項1〜15のいずれかに記載の光学ローパスフィルタにおいて、前記防塵膜はアルミナ、アルミニウム水酸化物、亜鉛酸化物及び亜鉛水酸化物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含むことを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  17. 請求項1〜16のいずれかに記載の光学ローパスフィルタにおいて、前記防塵膜の凹凸は、不規則に分布する多数の微細な形状の凸部とそれらの間の溝状の凹部とからなることを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  18. 請求項1〜17のいずれかに記載の光学ローパスフィルタにおいて、最表面の三次元平均表面粗さは1〜100 nmであることを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  19. 請求項1〜18のいずれかに記載の光学ローパスフィルタにおいて、最表面の凹凸の最大高低差は5〜1,000 nmであることを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  20. 請求項1〜19のいずれかに記載の光学ローパスフィルタにおいて、最表面の比表面積は1.05以上であることを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  21. 請求項1〜20のいずれかに記載の光学ローパスフィルタにおいて、機械的防塵手段を具備することを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  22. 請求項21に記載の光学ローパスフィルタにおいて、前記機械的防塵手段は、前記光学ローパスフィルタを振動させる圧電素子であることを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  23. 請求項21に記載の光学ローパスフィルタにおいて、前記機械的防塵手段は、(1) 磁石を有する第一の支持板と、(2) 軟磁性材からなる第二の支持板と、(3) 前記第一及び第二の支持板の間に相対移動可能に挟持され、前記第一の支持板の磁石の対向位置にコイルを有し、前記光学ローパスフィルタを支持するステージ板とを有し、前記第一支持板の磁石と前記第二支持板における対向部位との間に磁気回路が形成されており、もって前記ステージ板のコイルに交流電圧を印加することにより、前記ステージ板が振動するステージ装置であることを特徴とする光学ローパスフィルタ。
  24. 請求項1〜23のいずれかに記載の光学ローパスフィルタを具備することを特徴とする撮像装置。
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