JP2008302304A - 貴金属担持方法および貴金属担持装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 一方の端部から他方の端部に向けて貫通孔が形成されてなるモノリス基材22に対し、一方の端部24に、貴金属を含む所定量の貴金属錯体溶液10を供給し、その貴金属錯体溶液10をモノリス基材20の他方の端部26から吸引する。このような貴金属担持方法によると、貫通孔22表面のコート層における吸着速度の影響を受けず、モノリス基材20に担持される貴金属量を容易に調整することができるため、モノリス基材20への貴金属担持量のばらつきを低減することができる。
【選択図】図1
Description
このような貴金属担持方法によると、貴金属溶液の粘度を調整した後に長時間放置しても粘度の変化が小さいので、貴金属溶液を調製した直後でなくとも適切な貴金属の担持作業を行うことができる。
また、請求項8に記載の貴金属担持装置は、少なくとも一方の端部Aに開口を有する孔を複数備え、前記孔は他方の端部Bと連通する基材へ貴金属を担持させる貴金属担持装置であって、前記貴金属および増粘剤を含む貴金属溶液を前記端部Aへ所定量供給する供給部材と、前記端部Aに供給された前記貴金属溶液を前記端部Bから吸引することで、前記孔の表面に該貴金属溶液を伸展させる吸引部材と、を備えることを特徴とする。
[実施例1]
(貴金属担持装置)
本実施例1における貴金属担持装置1を、図1に基づいて説明する。
また、吸引部材40は、内部空間42を有する基材受け部44と、内部空間42と配管46を介して繋がる図示しない減圧装置と、配管46の開閉を行うバルブ48と、から構成される。基材受け部44は、モノリス基材20を挿入可能な開口が形成されている。この開口にモノリス基材20を挿入すると、基材受け部44とモノリス基材20の側面との間に隙間がなくなるように密着し、端部26が内部空間42に到達する。
(貴金属錯体溶液の調製)
上述した貴金属錯体溶液10は、次に示す白金錯体の水溶液に、増粘剤を添加してなるものである。
増粘剤:HEC(ヒドロキシルエチルセルロース)1wt%
上記組成の貴金属錯体溶液10の粘度は、せん断速度380sec-1(以降「高せん断速度」はこの値を指すこととする)において100mPa・s、せん断速度4sec-1(以降「低せん断速度」はこの値を指すこととする)において1000mPa・sであった。これらの粘度は、粘度計TVE−30H(東機産業株式会社製)を用いて測定した。
(貴金属担持方法)
本実施例1においては、まず、モノリス基材20の一方の端部24に保持部材30が被さり、他方の端部26が基材受け部44に挿入されるようにセットした。
次に、バルブ48を開放して内部空間42を減圧し、端部24上に保持された貴金属錯体溶液10を貫通孔22に吸引した。貴金属錯体溶液10は、吸引により貫通孔22において端部24から端部26まで拡がり、その一部が端部26から排出された。
(結果)
セルの貫通孔22全域(155mm)に亘ってPtを担持させることができた。また、吸引により担持されずに排出されたPtは、供給量の0.5%未満(Pt0.005g未満)であった。
[実施例2]
(貴金属担持装置)
本実施例2においては、実施例1と同様の貴金属担持装置1を用いた。
(貴金属錯体溶液の調製)
本実施例2における貴金属錯体溶液10は、基本的には実施例1と同様であるが、HECの添加量を1.5wt%とした。貴金属錯体溶液10の粘度は、高せん断速度において200mPa・s、低せん断速度において3000mPa・sであった。
(貴金属担持方法)
本実施例2においては、実施例1と同様の貴金属担持方法を用いて20個のモノリス基材20にそれぞれPtを担持させ、モノリス基材20間の担持量のばらつきを調べた。
(結果)
全てのモノリス基材20において、セルの貫通孔22全域(155mm)に亘ってPtを担持させることができた。また、吸引により担持されずに排出されたPtは、供給量の0.5%未満(Pt0.005g未満)であった。
[実施例3]
(貴金属担持装置)
本実施例3においては、実施例1と同様の貴金属担持装置1を用いた。
(貴金属錯体溶液の調製)
本実施例3における貴金属錯体溶液10は、基本的には実施例1と同様であるが、HECの添加量を2wt%とした。貴金属錯体溶液10の粘度は、高せん断速度において300mPa・s、低せん断速度において7000mPa・sであった。
(貴金属担持方法)
本実施例3においては、実施例1と同様の貴金属担持方法を用いてモノリス基材20に対する貴金属の担持操作を行った。貴金属錯体溶液10は、吸引により貫通孔22において端部24から端部26まで拡がり、その一部が端部26から排出された。
(結果)
セルの貫通孔22全域(155mm)に亘ってPtを担持させることができた。また、吸引により担持されずに排出されたPtは、供給量の0.5%未満(Pt0.005g未満)であった。
[実施例4]
(貴金属担持装置)
本実施例4においては、実施例1と同様の貴金属担持装置1を用いた。
(貴金属錯体溶液の調製)
本実施例4においては、実施例1と同様の貴金属錯体溶液10を用いた。
(貴金属担持方法)
本実施例4においては、まず、モノリス基材20の一方の端部24に保持部材30が被さり、他方の端部26が基材受け部44に挿入されるようにセットした。
次に、バルブ48を開放して内部空間42を減圧し、貴金属錯体溶液10を貫通孔22に吸引した。貴金属錯体溶液10は、吸引により貫通孔22における端部24から78±12mmの位置まで拡がった。端部26から排出された貴金属錯体溶液10はなかった。
次に、供給部材50より貴金属錯体溶液10を所定量(Pt0.5g相当)供給し、保持部材30により、モノリス基材20の他方の端部26に保持した。
(結果)
セルの貫通孔22における端部24から78±12mmの位置までPtを担持させることができ、端部26から78±12mmの位置までPtを担持させることができた。つまり、セルの貫通孔22全域(155mm)に亘ってPtを担持させることができた。また、吸引によりモノリス基材20に担持されずに排出されたPtはなかった。
[実施例5]
(貴金属担持装置)
本実施例5においては、実施例1と同様の貴金属担持装置1を用いた。
(貴金属錯体溶液の調製)
本実施例5においては、実施例2と同様の貴金属錯体溶液10を用いた。
(貴金属担持方法)
本実施例5においては、実施例4と同様の貴金属担持方法を用いてモノリス基材20に対する貴金属の担持操作を行った。その際、端部24に保持された貴金属錯体溶液10は、吸引により貫通孔22における端部24から78±12mmの位置まで拡がった。また、端部26に保持された貴金属錯体溶液10は、吸引により端部26から78±12mmの位置まで拡がった。端部24または端部26から排出された貴金属錯体溶液10はなかった。
(結果)
セルの貫通孔22における端部24から78±12mmの位置までPtを担持させることができ、端部26から78±12mmの位置までPtを担持させることができた。つまり、セルの貫通孔22全域(155mm)に亘ってPtを担持させることができた。また、吸引によりモノリス基材20に担持されずに排出されたPtはなかった。
[実施例6]
(貴金属担持装置)
本実施例6においては、実施例1と同様の貴金属担持装置1を用いた。
(貴金属錯体溶液の調製)
本実施例6における貴金属錯体溶液10は、基本的には実施例2と同様であるが、貴金属錯体溶液10中のPt濃度を20%増加させることで、貴金属錯体溶液10の粘度を、高せん断速度において300mPa・s、低せん断速度において7000mPa・sに調整した。
(貴金属担持方法)
本実施例6においては、実施例1と同様の貴金属担持方法を用いてモノリス基材20に対する貴金属の担持操作を行った。なお、貴金属錯体溶液10中のPt濃度が高い分、供給する貴金属錯体溶液10の量を少なくして、供給される総Pt量を実施例1と同様に1gとした。貴金属錯体溶液10は、吸引により貫通孔22における端部24から20±3mmの位置まで拡がった。端部26から排出された貴金属錯体溶液10はなかった。
(結果)
セルの貫通孔22における端部24から20±3mmの位置までPtを担持させることができた。また、吸引によりモノリス基材20に担持されずに排出されたPtはなかった。
[実施例7]
(貴金属担持装置)
本実施例7においては、実施例1と同様の貴金属担持装置1を用いた。
(貴金属錯体溶液の調製)
本実施例7における貴金属錯体溶液10は、基本的には実施例2と同様であるが、貴金属錯体溶液10中のPt濃度を20%減少させることで、貴金属錯体溶液10の粘度を、高せん断速度において100mPa・s、低せん断速度において1000mPa・sに調整した。
(貴金属担持方法)
本実施例7においては、実施例1と同様の貴金属担持方法を用いてモノリス基材20に対する貴金属の担持操作を行った。なお、貴金属錯体溶液10中のPt濃度が低い分、供給する貴金属錯体溶液10の量を多くして、供給される総Pt量を実施例1と同様に1gとした。貴金属錯体溶液10は、吸引により貫通孔22における端部24から100±15mmの位置まで拡がった。端部26から排出された貴金属錯体溶液10はなかった。
(結果)
セルの貫通孔22における端部24から100±15mmの位置までPtを担持させることができた。また、吸引によりモノリス基材20に担持されずに排出されたPtはなかった。
[実施例8]
(貴金属担持装置)
本実施例8においては、実施例1と同様の貴金属担持装置1を用いた。
(貴金属錯体溶液の調製)
本実施例8においては、次に示す組成の貴金属錯体溶液10Aおよび10Bを調製した。
(貴金属錯体溶液10A)
パラジウム(Pd)錯体の水溶液:Pd0.5g相当
増粘剤:HEC1wt%
上記組成の貴金属錯体溶液10Aの粘度は、高せん断速度において100mPa・s、低せん断速度において1000mPa・sであった。
(貴金属錯体溶液10B)
Ptおよびロジウム(Rh)錯体の水溶液:Pt・Rh合計0.5g相当
増粘剤:HEC1wt%
上記組成の貴金属錯体溶液10Aの粘度は、高せん断速度において100mPa・s、低せん断速度において1000mPa・sであった。
(貴金属担持方法)
本実施例8においては、まず、モノリス基材20の一方の端部24に保持部材30が被さり、他方の端部26が基材受け部44に挿入されるようにセットした。
次に、バルブ48を開放して内部空間42を減圧し、貴金属錯体溶液10Aを貫通孔22に吸引した。貴金属錯体溶液10Aは、吸引により貫通孔22における端部24から78±12mmの位置まで拡がった。端部26から排出された貴金属錯体溶液10Aはなかった。
次に、供給部材50より貴金属錯体溶液10Bを所定量(Pt・Rh合計0.5g相当)供給し、保持部材30により、モノリス基材20の他方の端部26に保持した。
(結果)
セルの貫通孔22における端部24から78±12mmの位置までPdを担持させることができ、端部26から78±12mmの位置までPtおよびRhを担持させることができた。また、吸引によりモノリス基材20に担持されずに排出された貴金属はなかった。
[実施例9]
(貴金属担持装置)
本実施例9においては、実施例1と同様の貴金属担持装置1を用いた。
(貴金属錯体溶液の調製)
本実施例9においては、基本的に実施例8と同様の貴金属錯体溶液10Aおよび10Bを用いたが、HECの添加量を2wt%とした。貴金属錯体溶液10Aおよび10Bの粘度は、いずれも高せん断速度において300mPa・s、低せん断速度において7000mPa・sであった。
(貴金属担持方法)
本実施例9においては、実施例8と同様の貴金属担持方法を用いてモノリス基材20に対する貴金属の担持操作を行った。その際、端部24に保持された貴金属錯体溶液10Aは、吸引により貫通孔22における端部24から78±12mmの位置まで拡がった。また、端部26に保持された貴金属錯体溶液10Bは、吸引により貫通孔22における端部26から78±12mmの位置まで拡がった。貴金属錯体溶液10Aおよび10Bのいずれも、端部24または端部26から排出されなかった。
(結果)
セルの貫通孔22における端部24から78±12mmの位置までPdを担持させることができ、端部26から78±12mmの位置までPtおよびRhを担持させることができた。また、吸引によりモノリス基材20に担持されずに排出された貴金属はなかった。
[実施例10]
本実施例10においては、まず、実施例2と同様の貴金属錯体溶液10を7個準備した。そして、その貴金属錯体溶液10のpHを1,2,4,6,8,10,11に調整して24時間放置し、それぞれの粘度の変化を調べると共に、実施例1と同様の貴金属担持装置1および貴金属担持方法を用いて貴金属の担持操作を行った。
(結果)
各pHの貴金属錯体溶液10を24時間放置した後の粘度を図2に示す。図2(a)は高せん断速度における粘度を示し、図2(b)は低せん断速度における粘度を示す。
[参考例1]
(貴金属担持装置)
本参考例1においては、実施例1と同様の貴金属担持装置1を用いた。
(貴金属錯体溶液の調製)
本参考例1における貴金属錯体溶液10は、基本的には実施例1と同様であるが、HECの添加量を0.5wt%とした。貴金属錯体溶液10の粘度は、高せん断速度において50mPa・s、低せん断速度において600mPa・sであった。
(貴金属担持方法)
本参考例1においては、実施例1と同様の貴金属担持方法を用いてモノリス基材20に対する貴金属の担持操作を行った。貴金属錯体溶液10は、吸引により貫通孔22において端部24から端部26まで拡がり、その一部が端部26から排出された。
(結果)
セルの貫通孔22全域(155mm)に亘ってPtを担持させることができた。しかし、吸引により約70%のPt(Pt0.7g相当)が担持されずに排出された。
[参考例2]
(貴金属担持装置)
本参考例2においては、実施例1と同様の貴金属担持装置1を用いた。
(貴金属錯体溶液の調製)
本参考例2における貴金属錯体溶液10は、基本的には実施例1と同様であるが、HECの添加量を2.5wt%とした。貴金属錯体溶液10の粘度は、高せん断速度において450mPa・s、低せん断速度において10000mPa・sであった。
(貴金属担持方法)
本参考例2においては、実施例1と同様の貴金属担持方法を用いてモノリス基材20に対する貴金属の担持操作を行った。貴金属錯体溶液10は、吸引により貫通孔22における端部24から130±20mmの位置まで拡がった。排出された貴金属錯体溶液10はなかった。
(結果)
セルの貫通孔22における端部24から130±20mmの位置までPtを担持させることができたが、貫通孔22全域にはPtを担持できなかった。また、吸引によりモノリス基材20に担持されずに排出されたPtはなかった。
[比較例]
本比較例においては、Ptを含む貴金属錯体溶液の槽に20個のモノリス基材20を浸漬させて、Ptを担持させ、モノリス基材20間の担持量のばらつきを調べた。
(結果)
20個のモノリス基材20におけるPt担持量のばらつきの度合を示す値4σは8%であった。
[効果]
実施例1〜9,参考例1,2および比較例の結果一覧を表1に示す。
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることは言うまでもない。
また、上記各実施例においては、貴金属錯体溶液10を、モノリス基材20の端部(端部24または端部26)に供給して保持した後、吸引を行う方法を例示した。しかし、端部に供給された貴金属錯体溶液10を吸引するタイミングは特に限定されない。例えば、端部に貴金属錯体溶液10が供給されている際に、同時に吸引を行うこととしてもよい。
Claims (8)
- 少なくとも一方の端部Aに開口を有する孔を複数備え、前記孔は他方の端部Bと連通する基材へ貴金属を担持させる貴金属担持方法であって、
前記貴金属および増粘剤を含む貴金属溶液を前記端部Aに所定量供給し、前記端部Aに供給された前記貴金属溶液を前記端部Bから吸引することで、前記孔の表面に前記貴金属溶液を伸展させる第1伸展工程を有する
ことを特徴とする貴金属担持方法。 - 貴金属および増粘剤を含む貴金属溶液を前記端部Bに所定量供給し、前記端部Bに供給された前記貴金属溶液を前記端部Aから吸引することで、前記孔の表面に前記貴金属溶液を伸展させる第2伸展工程を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の貴金属担持方法。 - 前記第1伸展工程において前記孔の表面に伸展される前記貴金属溶液と、前記第2伸展工程において前記孔の表面に伸展される前記貴金属溶液とが、それぞれ異なる貴金属を含んでいる
ことを特徴とする請求項2に記載の貴金属担持方法。 - 前記貴金属溶液として、せん断速度380sec-1における粘度が100〜300mPa・sであるものを用いる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の貴金属担持方法。 - 前記貴金属溶液として、せん断速度4sec-1における粘度が1000〜7000mPa・sであるものを用いる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の貴金属担持方法。 - 前記貴金属溶液のpHを2〜10とする
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の貴金属担持方法。 - 前記貴金属は、白金,パラジウム,ロジウムのいずれか1種または2種以上である
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の貴金属担持方法。 - 少なくとも一方の端部Aに開口を有する孔を複数備え、前記孔は他方の端部Bと連通する基材へ貴金属を担持させる貴金属担持装置であって、
前記貴金属および増粘剤を含む貴金属溶液を前記端部Aに所定量供給する供給部材と、
前記端部Aに供給された前記貴金属溶液を前記端部Bから吸引することで、前記孔の表面に該貴金属溶液を伸展させる吸引部材と、を備える
ことを特徴とする貴金属担持装置。
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